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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024124690
(43)【公開日】2024-09-13
(54)【発明の名称】トンネル掘削機
(51)【国際特許分類】
   E21D 9/087 20060101AFI20240906BHJP
【FI】
E21D9/087 A
E21D9/087 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023032553
(22)【出願日】2023-03-03
(71)【出願人】
【識別番号】516308364
【氏名又は名称】JIMテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000936
【氏名又は名称】弁理士法人青海国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西渕 雅之
【テーマコード(参考)】
2D054
【Fターム(参考)】
2D054AC04
2D054BA04
2D054CA09
(57)【要約】
【課題】設置数が少ない簡素な装置を用いて、カッタヘッドの複数の土砂通過部の閉塞を好適に防止する。
【解決手段】トンネル掘削機1は、筒状の掘削機本体10と、第1回転軸13から放射状に延びる複数のカッタスポーク33を有するカッタヘッド11と、カッタスポーク33、33の間に形成される隙間である複数の土砂通過部36と、カッタヘッド11の背面側のチャンバ17内に設けられ、掘削土砂の固着物による土砂通過部36の閉塞を防止するための閉塞防止機構50とを備える。閉塞防止機構50は、第1回転軸13に対して交差する方向に延びる第2回転軸52と、第2回転軸52に設けられる撹拌羽根51とを備え、第1回転軸13を中心としたカッタヘッド11の回転中に、第2回転軸52を中心に撹拌羽根51を回転させることによって、カッタスポーク33、33の間の土砂通過部36に撹拌羽根51を入り込ませる。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状の掘削機本体と、
前記掘削機本体の前端において第1回転軸を中心に回転可能に設けられ、前記第1回転軸から放射状に延びる複数のカッタスポークを有するカッタヘッドと、
前記カッタスポークの間に形成される隙間であり、前記カッタヘッドの前面側から背面側に掘削土砂を通過させるための複数の土砂通過部と、
前記カッタヘッドの背面側のチャンバ内に設けられ、掘削土砂の固着物による前記土砂通過部の閉塞を防止するための閉塞防止機構と、
を備え、
前記閉塞防止機構は、
前記第1回転軸に対して交差する方向に延びる第2回転軸と、
前記第2回転軸に設けられる少なくとも1つの撹拌羽根と、
を備え、
前記第1回転軸を中心とした前記カッタヘッドの回転中に、前記第2回転軸を中心に前記撹拌羽根を回転させることによって、前記カッタスポークの間の前記土砂通過部に前記撹拌羽根を入り込ませる、トンネル掘削機。
【請求項2】
前記第2回転軸に複数の前記撹拌羽根が設けられており、
前記閉塞防止機構は、
前記第2回転軸を中心に前記撹拌羽根を回転させる回転駆動部を備えておらず、
前記第1回転軸を中心として回転する前記カッタヘッドの前記カッタスポークにより、前記土砂通過部に入り込んだ前記撹拌羽根を押すことによって、前記カッタヘッドの回転に従動させて前記撹拌羽根を回転させる、請求項1に記載のトンネル掘削機。
【請求項3】
前記閉塞防止機構は、
前記第2回転軸を中心に前記撹拌羽根を回転させる回転駆動部をさらに備え、
前記回転駆動部は、
前記カッタスポークの間の前記土砂通過部に前記撹拌羽根を入り込ませるように、前記カッタヘッドの回転に合わせて前記撹拌羽根を回転させる、請求項1に記載のトンネル掘削機。
【請求項4】
前記第2回転軸に複数の前記撹拌羽根が設けられており、
前記閉塞防止機構は、
前記第1回転軸を中心とした前記カッタヘッドの回転中に、前記第2回転軸を中心に前記撹拌羽根を回転させることによって、前記カッタスポークの間の前記土砂通過部の各々に前記撹拌羽根の各々を順次、入り込ませる、請求項1~3のいずれか一項に記載のトンネル掘削機。
【請求項5】
前記閉塞防止機構は、
前記チャンバを画成する隔壁に取り付けられ、前記第2回転軸を支持する支持部と、
前記支持部を前後方向に進退させる進退機構と、
をさらに備える、請求項1~3のいずれか一項に記載のトンネル掘削機。
【請求項6】
前記カッタヘッドの中央部において前記カッタスポークの間の前記土砂通過部が楔状に狭くなっている領域に、前記撹拌羽根を入り込ませるように、前記閉塞防止機構は、前記チャンバ内における前記カッタヘッドの中央部側に配置される、請求項1~3のいずれか一項に記載のトンネル掘削機。
【請求項7】
前記第2回転軸を中心に回転する複数の前記撹拌羽根のうち一部の撹拌羽根は、前記土砂通過部に入り込んで、前記固着物による前記土砂通過部の閉塞を防止しつつ、前記土砂通過部に入り込んでいない他の撹拌羽根は、前記チャンバ内の掘削土砂を撹拌する、請求項1~3のいずれか一項に記載のトンネル掘削機。
【請求項8】
前記閉塞防止機構は、前記撹拌羽根が前記土砂通過部に入り込まない範囲で、前記第2回転軸を中心に前記撹拌羽根を搖動させることによって、前記撹拌羽根により前記チャンバ内の掘削土砂を撹拌する、請求項3に記載のトンネル掘削機。
【請求項9】
前記閉塞防止機構は、前記進退機構により前記支持部を後退させ、前記撹拌羽根が前記土砂通過部に入り込まないように、前記チャンバ内で前記撹拌羽根を後方に退避させた状態で、前記第2回転軸を中心に前記撹拌羽根を回転させることによって、前記撹拌羽根により前記チャンバ内の掘削土砂を撹拌する、請求項5に記載のトンネル掘削機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カッタヘッドに形成された土砂通過部を通じてチャンバ内に掘削土砂を取り込みながら掘削するトンネル掘削機に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的なトンネル掘削機は、カッタヘッドを回転させ、そのカッタヘッドの前面に装着された複数のカッタビットが前方の地山を掘削し切羽を形成することにより、トンネルを掘削する。地山の掘削(切羽の切削)により生じた掘削土砂は、カッタヘッドに形成された開口部である土砂通過部を通過し、カッタヘッド背面側のチャンバ内に取り込まれる。その後、チャンバ内の掘削土砂は、トンネル掘削機内に設けられたスクリューコンベヤなどの土砂排出装置によって、トンネル延伸方向後方に向けて運搬および排出される。
【0003】
例えば、トンネル掘削機が泥土圧式シールド掘削機である場合、カッタヘッド前面は、中心部から放射状に延びる複数のカッタスポークで主に構成され、カッタヘッド前面のほとんどが開断面となる。この場合、周方向に相隣接するカッタスポークなどの隙間が土砂通過部となり、当該カッタスポークなどの隙間(土砂通過部)からチャンバ内に掘削土砂が取り込まれる。
【0004】
ところで、チャンバ内に取り込んだ掘削土砂がチャンバの内壁面に付着すると、チャンバから掘削機後方に掘削土砂を排出するためにチャンバの隔壁に設けられた土砂排出口が掘削土砂で閉塞するという問題がある。かかる問題に対処するため、例えば特許文献1には、隔壁に設けられた回転軸周りに回転する撹拌羽根を備えた撹拌装置をチャンバ内に設置し、チャンバ内における掘削土砂の固着を抑制する技術が開示されている。当該特許文献1の技術では、チャンバ内に、カッタヘッドを支持する中間支持ビームが配置されており、上記撹拌羽根の回転軸は、カッタヘッドの回転軸と同一の方向に延びている。そして、カッタヘッドとともに回転する中間支持ビームによって撹拌羽根を同一方向に回転させることで、チャンバの内壁面のうち主に隔壁周辺に対する掘削土砂の固着を抑制する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4848565号公報
【特許文献2】特開2022-96943号公報
【特許文献3】特許第4647891号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来のトンネル掘削機では、上記チャンバの内壁面のみならず、カッタヘッドの複数のカッタスポークなどの隙間である土砂通過部に対して、掘削土砂が滞留および固着して、当該土砂通過部が閉塞してしまうという問題があった。
【0007】
即ち、トンネル掘削機では、上記のようにカッタヘッドにより掘削された掘削土砂が、周方向に相隣接する複数のカッタスポークなどの隙間(開口部)である土砂通過部を通過して、チャンバ内に取り込まれることにより、掘削が進行する。この際、掘削土砂がカッタヘッドの土砂通過部で滞留・固結して、土砂通過部を閉塞してしまうため、掘削土砂をチャンバ内に円滑に取り込んで排出できないケースが生じていた。特に、カッタヘッドの中央部には、面板(塞ぎ板)が設置されるとともに、放射状に配置される複数のカッタスポークが寄せ集まっているので、中央部周辺の土砂通過部の断面積(開口面積)が小さくなっている。したがって、カッタヘッドの中央部周辺において、断面積が小さい土砂通過部で、面板部の掘削土砂も含めて掘削土砂を通過させなければならず、掘削土砂の通過条件が悪い。しかも、カッタヘッドの中央部では回転速度が遅いため、この部分の掘削土砂の撹拌・混練の観点でも、カッタヘッドの中央部周辺の土砂通過部は不利な条件となっている。このため、カッタヘッドの中央部周辺の土砂通過部に対して、掘削土砂が付着・固結して滞留しやすいので、当該土砂通過部が閉塞しやすい。かかる土砂通過部の閉塞の不具合が発生した場合、カッタヘッド中央部の前面部分で掘削土砂が排出されずに滞留し、さらには、この滞留した掘削土砂が蓄積することにより、掘削土砂の圧密が発生してしまう。この掘削土砂の圧密により、カッタヘッド前面における掘削推進の抵抗の増大につながるとともに、当該部分のカッタビットの切削機能が作用しなくなることによるカッタトルクの上昇につながり、当該不具合を放置すれば、カッタヘッドの変形および損傷等の原因になる恐れがある。このため、土砂通過部の閉塞を防止、解消する手段が希求されている。
【0008】
この点、上記特許文献1に記載の従来技術では、掘削土砂の固着を抑制する対象領域が、チャンバの内壁面のうち主に中間支持ビームの周辺の隔壁付近に限定されており、カッタヘッドの内部の土砂通過部の閉塞を抑制することはできなかった。
【0009】
一方、特許文献2には、カッタヘッドの土砂通過部の閉塞を解除する技術として、各々の土砂通過部に面したカッタスポーク等に移動機構を設けることが開示されている。当該移動機構は、各々の土砂通過部において機械的に動作することより、当該土砂通過部に滞留する掘削土砂の固着物を強制的に移動させるものである。しかしながら、カッタヘッドには多数の土砂通過部が存在する。このため、上記特許文献2のように個々の土砂通過部ごとに移動機構を設置する構成であると、多数の土砂通過部の閉塞を抑制するためには、その数に対応した多数の移動機構をカッタヘッドに設置する必要あり、カッタヘッドの装置構成が複雑化するという問題があった。
【0010】
そこで、本発明は、上記従来の問題に鑑みてなされたものであり、設置数が少ない簡素な装置を用いて、カッタヘッドの複数の土砂通過部の閉塞を好適に防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、
筒状の掘削機本体と、
前記掘削機本体の前端において第1回転軸を中心に回転可能に設けられ、前記第1回転軸から放射状に延びる複数のカッタスポークを有するカッタヘッドと、
前記カッタスポークの間に形成される隙間であり、前記カッタヘッドの前面側から背面側に掘削土砂を通過させるための複数の土砂通過部と、
前記カッタヘッドの背面側のチャンバ内に設けられ、掘削土砂の固着物による前記土砂通過部の閉塞を防止するための閉塞防止機構と、
を備え、
前記閉塞防止機構は、
前記第1回転軸に対して交差する方向に延びる第2回転軸と、
前記第2回転軸に設けられる少なくとも1つの撹拌羽根と、
を備え、
前記第1回転軸を中心とした前記カッタヘッドの回転中に、前記第2回転軸を中心に前記撹拌羽根を回転させることによって、前記カッタスポークの間の前記土砂通過部に前記撹拌羽根を入り込ませる、トンネル掘削機が提供される。
【0012】
前記第2回転軸に複数の前記撹拌羽根が設けられており、
前記閉塞防止機構は、
前記第2回転軸を中心に前記撹拌羽根を回転させる回転駆動部を備えておらず、
前記第1回転軸を中心として回転する前記カッタヘッドの前記カッタスポークにより、前記土砂通過部に入り込んだ前記撹拌羽根を押すことによって、前記カッタヘッドの回転に従動させて前記撹拌羽根を回転させるようにしてもよい。
【0013】
前記閉塞防止機構は、
前記第2回転軸を中心に前記撹拌羽根を回転させる回転駆動部をさらに備え、
前記回転駆動部は、
前記カッタスポークの間の前記土砂通過部に前記撹拌羽根を入り込ませるように、前記カッタヘッドの回転に合わせて前記撹拌羽根を回転させるようにしてもよい。
【0014】
前記第2回転軸に複数の前記撹拌羽根が設けられており、
前記閉塞防止機構は、
前記第1回転軸を中心とした前記カッタヘッドの回転中に、前記第2回転軸を中心に前記撹拌羽根を回転させることによって、前記カッタスポークの間の前記土砂通過部の各々に前記撹拌羽根の各々を順次、入り込ませるようにしてもよい。
【0015】
前記閉塞防止機構は、
前記チャンバを画成する隔壁に取り付けられ、前記第2回転軸を支持する支持部と、
前記支持部を前後方向に進退させる進退機構と、
をさらに備えるようにしてもよい。
【0016】
前記カッタヘッドの中央部において前記カッタスポークの間の前記土砂通過部が楔状に狭くなっている領域に、前記撹拌羽根を入り込ませるように、前記閉塞防止機構は、前記チャンバ内における前記カッタヘッドの中央部側に配置されるようにしてもよい。
【0017】
前記第2回転軸を中心に回転する複数の前記撹拌羽根のうち一部の撹拌羽根は、前記土砂通過部に入り込んで、前記固着物による前記土砂通過部の閉塞を防止しつつ、前記土砂通過部に入り込んでいない他の撹拌羽根は、前記チャンバ内の掘削土砂を撹拌するようにしてもよい。
【0018】
前記閉塞防止機構は、前記撹拌羽根が前記土砂通過部に入り込まない範囲で、前記第2回転軸を中心に前記撹拌羽根を搖動させることによって、前記撹拌羽根により前記チャンバ内の掘削土砂を撹拌するようにしてもよい。
【0019】
前記閉塞防止機構は、前記進退機構により前記支持部を後退させ、前記撹拌羽根が前記土砂通過部に入り込まないように、前記チャンバ内で前記撹拌羽根を後方に退避させた状態で、前記第2回転軸を中心に前記撹拌羽根を回転させることによって、前記撹拌羽根により前記チャンバ内の掘削土砂を撹拌するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、設置数が少ない簡素な装置を用いて、カッタヘッドの複数の土砂通過部の閉塞を好適に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の一実施形態に係るトンネル掘削機を示す概略断面図である。
図2】同実施形態に係るカッタヘッドの一例を示す前面図である。
図3】同実施形態に係る土砂通過部の一部が掘削土砂で閉塞した状態を示す部分拡大斜視図である。
図4】本発明の第1の実施形態に係る閉塞防止機構がチャンバに設置されたカッタヘッドを示す背面図である。
図5図4のA-A矢視図である。
図6図4のB-B矢視図である。
図7】同実施形態に係る閉塞防止機構の撹拌羽根が土砂通過部に入り込んだ状態を、カッタヘッドの前面側から見た部分拡大斜視図である。
図8】同実施形態に係る閉塞防止機構の撹拌羽根が土砂通過部に入り込んだ状態を、カッタヘッドの背面側から見た部分拡大斜視図である。
図9】同実施形態に係る閉塞防止機構の撹拌羽根が土砂通過部に入り込んだ状態を、カッタヘッドの背面側から見た部分拡大斜視図である。
図10A】同実施形態に係るカッタヘッドと閉塞防止機構の回転動作を示す模式図である。
図10B】同実施形態に係るカッタヘッドと閉塞防止機構の回転動作を示す模式図である。
図11】本発明の第2の実施形態に係る閉塞防止機構を示すA-A矢視図(図4参照。)である。
図12】本発明の第3の実施形態に係る閉塞防止機構を示すB-B矢視図(図4参照。)である。
図13】同実施形態に係る閉塞防止機構を示す部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値等は、発明の理解を容易とするための例示にすぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0023】
<1.トンネル掘削機の全体構成>
まず、図1図2を参照して、本発明の一実施形態に係るトンネル掘削機1の概略構成について説明する。図1は、本実施形態に係るトンネル掘削機1を示す概略断面図である。図2は、本実施形態に係るカッタヘッド11の一例を示す前面図である。
【0024】
なお、以下の説明では、トンネル掘削機1の進行方向(切羽に向かうトンネル延伸方向)を前方または前面側と称し、当該進行方向の逆方向(坑口に向かうトンネル延伸方向)を後方または背面側と称する場合もある。また、円筒形状を有するトンネル掘削機1の軸方向、径方向、周方向をそれぞれ、単に軸方向、径方向、周方向と称する場合もある。なお、トンネル掘削機1の軸方向は、トンネル掘削機1の進行方向(前方)と一致する。
【0025】
本実施形態に係るトンネル掘削機1は、例えば、土砂層を含む地山を掘削可能な泥土圧式のシールド掘削機である。図1に示すように、本実施形態に係るトンネル掘削機1は、円筒状の掘削機本体10と、円盤状のカッタヘッド11と、カッタヘッド11の後方に配置される隔壁12と、カッタ回転軸13とを備える。
【0026】
カッタヘッド11は、掘削機本体10の前端に設けられる略円盤状の回転体である。カッタヘッド11の中心部には、カッタ回転軸13の前端が嵌入されており、カッタヘッド11は、カッタ回転軸13を中心に回転可能に軸支されている。なお、カッタ回転軸13は、第1回転軸に相当し、掘削機本体10の軸方向(トンネル延伸方向)に対して平行に延びている。
【0027】
図1図2に示すように、カッタヘッド11は、外周リング31と、内周リング32と、カッタスポーク33と、センターカッタ34と、カッタビット35と、土砂通過部36と、補助カッタスポーク(図示せず。)とを有する。なお、説明の便宜上、図2では、内周リング32、センターカッタ34、カッタビット35および補助カッタスポークなどの図示は省略してある。
【0028】
このうち、外周リング31は、カッタヘッド11の外周部を形成しており、内周リング32は、外周リング31よりもカッタ径方向内側に配置されている。また、複数のカッタスポーク33は、カッタヘッド11の前面において、カッタ回転軸13を中心として放射状に配置されている。カッタヘッド11の前面の中心部には、センターカッタ34が装着されている。さらに、カッタスポーク33の前面33aには、多数のカッタビット35が装着されている。
【0029】
そして、カッタヘッド11には、上記外周リング31、内周リング32、複数のカッタスポーク33および複数の補助カッタスポーク等を含む複数の構成部材の間に、複数の土砂通過部36が形成されている。土砂通過部36は、周方向に間隔を空けて放射状に配置された複数のカッタスポーク33等を含む複数の構成部材の間に形成される隙間(開口部)である。かかる土砂通過部36は、カッタヘッド11によって切羽の地山を掘削した際に発生する掘削土砂を、掘削機本体10内(後述するチャンバ17内)に取り込むための掘削土砂取込口として機能する。
【0030】
図2に示すように、カッタヘッド11の前面に例えば6本のカッタスポーク33が放射状に配置されている。また、カッタヘッド11の外周部においては、相隣接するカッタスポーク33、33の間に、補助カッタスポーク(図示せず。)が配置されてもよい。これらのカッタスポーク33および補助カッタスポークは、例えば、中空断面構造を有する四角筒状の構造体であり、カッタヘッド11の回転中心(カッタ回転軸13:第1回転軸)を中心として、放射状に配置されている。具体的には、カッタスポーク33は、カッタヘッド11の中心部から外周部まで、径方向に延在すると共に、当該カッタヘッド11の周方向において等間隔で配置されている。一方、補助カッタスポークは、カッタヘッド11の径方向の中間部から外周部まで、径方向に延在すると共に、当該カッタヘッド11の周方向において等間隔で配置されてもよい。そして、カッタスポーク33と補助カッタスポークとは、周方向において交互に配置されてもよい。
【0031】
カッタスポーク33の前面33aには、複数のカッタビット35(以下、「ビット35」と略称する場合もある。)が装着されている。以下では、カッタスポーク33に装着されるビット35について詳細に説明するが、補助カッタスポークの前面にも同様のビット35が装着されてもよい。
【0032】
カッタビット35は、例えば、先行ビットと、ティースビットを含む。また、他のカッタビットとして、摩耗検知ビット(超音波式、多段式、油圧式等)、シェルビットなどが含まれてもよい。
【0033】
先行ビットは、カッタスポーク33の前面33aに設けられ、切羽前方に向けて突出するビットである。複数の先行ビットが、カッタスポーク33の前面33aの所定の径方向位置に装着される。先行ビットは、切羽の地山をほぐしたり、地山に切れ目を入れたりして、ティースビットよりも先行して地山を掘削することにより、ティースビットの掘削負荷を低減するためのものである。先行ビットは、例えば、支障物切削用の特殊先行ビットであってもよい。
【0034】
先行ビットの刃先位置がティースビットの刃先位置よりも切羽前端側(トンネル前方側)に位置するように、先行ビットがカッタスポーク33に取り付けられている。このため、図1に示すように、本実施形態では、先行ビット(ビット35)は、切羽最前端位置である切羽掘削面2を形成するビットとして配置されている。切羽掘削面2は、カッタヘッド11の複数のビット35により掘削される切羽のうち、ビット35の先端部(刃先位置)により掘削される切羽最前端位置に配置される掘削面である。本実施形態に係る切羽掘削面2は、カッタヘッド11の前面に突設された複数のビット35のうち、複数の先行ビットの先端部(刃先位置)により掘削される略円板形の掘削面を意味する。
【0035】
また、カッタスポーク33の前面33aの幅方向両側部には、左右一対を1組として、複数組のティースビットが装着されている。ティースビットは、主に地山の掘削を行うカッタビット(メインビット)である。ティースビットは、当該掘削によって発生した掘削土砂を土砂通過部36から取り込むように誘導する機能も有する。カッタヘッド11の正逆2方向の回転による掘削を可能とするため、左右一対のティースビットが、カッタスポーク33の幅方向の両側部において径方向同位置に取り付けられる。
【0036】
センターカッタ34(図1参照。)は、カッタヘッド11の回転中心付近の切羽を掘削するカッタビットである。センターカッタ34は、先行ビットおよびティースビットによる掘削よりも先行して、切羽中心部を掘削する。
【0037】
カッタヘッド11の中央部(回転中心部)には、円板状もしくは略多角形板状の面板39が設置される。この面板39は、カッタヘッド11の径方向の中心部に形成された中空空間38を塞ぐように配置される。図1に示すように、トンネル掘削機1の径方向の中央部には、掘削機本体10の後方からカッタ回転軸13(センターシャフト)を通じてカッタヘッド11の中心部まで、各種の配管や配線を挿通するスペースが設けられている。カッタヘッド11の中心部の中空空間38は、当該スペースの一部を構成している。上記カッタ回転軸13(センターシャフト)を通じて延長されてきた複数の配管や配線は、カッタヘッド11の中空空間38の位置で分岐して、放射状に延びる各カッタスポーク33内に挿通される。
【0038】
図1に戻り、トンネル掘削機1の各部の説明を続ける。図1に示すように、掘削機本体10におけるカッタヘッド11よりも後方には、隔壁12が配置されている。隔壁12は、トンネル延伸方向に対して垂直に配置される円板状の壁体であり、隔壁12の外周縁は掘削機本体10の内周面10aに取り付けられる。カッタヘッド11と隔壁12は、トンネル延伸方向(掘削機本体10の軸方向)に所定間隔を空けて配置される。隔壁12の後方には、トンネル掘削機1の各種設備が配置されており、隔壁12は、切羽で生じる掘削土砂から当該設備を隔離する。隔壁12の下部には、掘削土砂を排出するための開口部である排出口12aが形成されている。
【0039】
隔壁12の中心部には、カッタ回転軸13が回転可能に支持されている。さらに、隔壁12には、リング状の回転リング14が、カッタ回転軸13を中心として回転可能に支持されている。回転リング14の前部には、複数の連結ビーム15が周方向に所定の間隔で設けられている。複数の連結ビーム15は、カッタヘッド11と回転リング14を連結する。連結ビーム15の前端は、カッタヘッド11の内周リング32とカッタスポーク33との接続部に連結されている。一方、回転リング14の後部には、外歯式のリングギヤ14aが設けられている。さらに、隔壁12の後方にはカッタ旋回用モータ16が設けられている。このカッタ旋回用モータ16の駆動ギヤ16aは、回転リング14のリングギヤ14aと噛み合っている。
【0040】
カッタ旋回用モータ16を駆動させることにより、その駆動ギヤ16aの回転がリングギヤ14aから回転リング14および連結ビーム15に伝達される。これにより、カッタヘッド11を、カッタ回転軸13を中心として回転させることができる。この結果、回転するカッタヘッド11の前面を切羽の地山に押し付けて、地山を掘削することができる。
【0041】
カッタヘッド11と隔壁12との間には、チャンバ17が画成されている。チャンバ17は、カッタヘッド11の背面と、隔壁12の前面と、掘削機本体10の内周面10aとにより区画された、略円柱状の空間である。カッタヘッド11による地山掘削に伴って発生する掘削土砂は、カッタヘッド11に形成された土砂通過部36(掘削土砂取込口)を通じて、チャンバ17内に取り込まれる。チャンバ17は、掘削土砂を一時的に蓄えるための空間(室)として機能する。チャンバ17内に取り込まれた掘削土砂は、隔壁12の下部にある排出口12aを通じて、チャンバ17から後述のスクリューコンベヤ20内に排出される。
【0042】
また、掘削機本体10の隔壁12よりも後方側には、ビーム18が設けられる。ビーム18の両端は、掘削機本体10の内周面10aに取り付けられる。ビーム18の背面には、エレクタ装置(図示せず。)が設けられる。エレクタ装置は、掘削機本体10の軸方向、径方向および周方向(すなわち、トンネル延伸方向、径方向および周方向)に移動可能に設けられる。かかるエレクタ装置は、覆工部材であるセグメントSを把持可能であり、把持したセグメントSをトンネルTの内壁面(坑壁)に沿って組み立てる。
【0043】
セグメントSは、掘削されたトンネルTの内壁面に沿った湾曲形状を有する環片である。上記エレクタ装置を駆動させることにより、複数のセグメントSをトンネル周方向に沿ってリング状に組み立てることができる。これにより、トンネルTの内壁面が複数のセグメントSにより覆工され、内壁面の崩落を防止できる。
【0044】
さらに、掘削機本体10内には、複数の推進ジャッキ19が、内周面10aに沿って、トンネル延伸方向に延びるよう設けられる。複数の推進ジャッキ19は、内周面10aの周方向に所定の間隔で並設される。これらの推進ジャッキ19は、トンネル延伸方向に伸縮可能な駆動ロッド19aを有している。この駆動ロッド19aの先端は、既設のセグメントSの前端面と対向している。
【0045】
かかる推進ジャッキ19の駆動ロッド19aを、後方に向けて伸長し、セグメントSを押圧することにより、掘削機本体10に推進反力を付与することができる。すなわち、推進ジャッキ19がセグメントSを押圧したときに発生する推進反力によって、掘削機本体10は前進可能である。
【0046】
また、掘削機本体10内における隔壁12の後方側には、スクリューコンベヤ20が設けられる。スクリューコンベヤ20は、スクリュー羽根21と、筒体22と、土砂排出口23と、駆動部25とを備える。スクリューコンベヤ20の筒体22は、掘削機本体10内において、後方側に向かうにつれて上方に位置するように、傾斜して配置される。スクリューコンベヤ20の筒体22の前端の開口部は、上記隔壁12の排出口12aに接続されている。これにより、スクリューコンベヤ20の筒体22の内部空間は、隔壁12の排出口12aを通じてチャンバ17と連通する。筒体22の内部には、スクリュー羽根21が回転可能に設けられている。筒体22の後部の周面下部側には、土砂排出口23が設けられる。土砂排出口23は、スクリュー羽根21により筒体22内の後方側に運搬された掘削土砂を筒体22の外部に排出する開口部である。筒体22の後端には、スクリュー羽根21を回転駆動させるための駆動部25が設置されている。駆動部25によりスクリュー羽根21を回転駆動させることで、チャンバ17内に蓄えられた掘削土砂をスクリューコンベヤ20内に取り込んで、掘削機本体10の後方に向けて運搬し、土砂排出口23から排出することができる。
【0047】
<2.土砂通過部の閉塞>
次に、図2図3を参照して、カッタヘッド11の中心部において土砂通過部36が掘削土砂で閉塞する問題について、より詳細に説明する。図3は、本実施形態に係る土砂通過部36の一部が掘削土砂の固着物3で閉塞した状態を示す斜視図である。
【0048】
本実施形態に係るトンネル掘削機1を用いた泥土圧式シールド工法は、カッタヘッド11により掘削した掘削土砂を切羽掘削面2と隔壁12の間に充満させ、必要に応じて加泥材、気泡材等の添加材を注入、混合して改良土の泥土とし、その土圧により切羽の安定を図りながら掘進し、掘削土砂をスクリューコンベヤ20で排土する工法である。ここで、切羽の安定に必要な土圧を保持し、トンネル掘削機1の掘進量に応じて適切な土量の泥土を排出するためには、チャンバ17内に充満した泥土が適正な流動性を有することと、地下水に対する止水性を有することが求められる。このために、切羽周辺の掘削土砂やチャンバ17内の掘削土砂に、加泥材、気泡材等の掘進用添加材を注入し、掘削土砂と添加材とを混練して、改良土の泥土にする。
【0049】
このように本実施形態に係るトンネル掘削機1では、カッタヘッド11の前面側のカッタビット35で切羽の地山を切削しながら、当該切削により生じた掘削土砂に添加材を注入して混錬し、カッタヘッド11の背面側のチャンバ17内に取り込むことによって、トンネルの掘削が進行する。このとき、カッタヘッド11の前面側の掘削土砂は、カッタヘッド11を前後方向(軸方向)に貫通する土砂通過部36を通過して、カッタヘッド11の背面側のチャンバ17内に取り込まれる。
【0050】
土砂通過部36は、カッタヘッド11を構成する複数の構成部材の間に形成される隙間(開口部)である。カッタヘッド11の複数の構成部材は、具体的には、図1図3に示すように、複数のカッタスポーク33、複数の補助カッタスポーク、外周リング31、内周リング32、およびカッタ回転軸13(センターシャフト)等を含み、土砂通過部36は、これら複数の構成部材の間に形成される隙間である。土砂通過部36は、これらのカッタヘッド11の構成部材で囲まれた正面形状を有し、例えば、略扇形、または円環を径方向に切った形状を有する。
【0051】
従来の泥土圧式シールド掘削機では、掘削土砂がカッタヘッド11の土砂通過部36で滞留・固結して、土砂通過部36を閉塞してしまう場合があり、土砂通過部36を通じて掘削土砂をチャンバ17内に円滑に取り込んで排出することができないという問題が生じていた。特に、カッタヘッド11の中央部周辺の土砂通過部36では、この問題が顕著であった。
【0052】
即ち、図1に示したように、トンネル掘削機1の中央部は、掘削機本体10の後方からカッタ回転軸13(センターシャフト)を通じてカッタヘッド11まで各種の配管や配線を通し、各カッタスポーク33に分岐させるためのスペースが必要になる。このため、図1図3に示すように、カッタヘッド11の中央部には、当該スペースを構成する中空空間38と、その前方を覆う円板状の面板39(塞ぎ板)とが設けられている。したがって、カッタヘッド11の中央部には土砂通過部36を設けることができない。しかも、カッタヘッド11の中央部には、放射状に配置される複数のカッタスポーク33が寄せ集まって結合している。
【0053】
このため、カッタヘッド11の中央部周辺では、外周部よりも土砂通過部36の断面積(開口面積)が小さくなっている。したがって、カッタヘッド11の中央部周辺において、断面積が小さい土砂通過部36で、面板39の部分の掘削土砂も含めて掘削土砂を通過させなければならず、掘削土砂の通過条件が悪い。加えて、カッタヘッド11の中央部では外周部よりもカッタヘッド11の回転速度が遅くなるため、この部分の掘削土砂の撹拌・混練の観点でも、カッタヘッド11の中央部周辺の土砂通過部36は不利な条件となっている。この結果、図3に示すように、カッタヘッド11の中央部周辺の土砂通過部36において、掘削土砂が滞留、固着しやすくなり、掘削土砂の固着物3により当該土砂通過部36が閉塞しやすいという問題があった。
【0054】
さらに、近年では、トンネル掘削機1の大口径化や長距離施工・高速施工等に伴い、カッタビット35の設置数が増加したり、特殊ビットやその交換機構等を装備したりする必要がある。このため、カッタスポーク33の面積を大きくする必要があり、カッタスポーク33が大型化する。また、注入孔や各種装置(カッタ摩耗検出装置、コピーカッタ等)の設置数が増加する傾向にあり、これにより、カッタヘッド11の中央部において各カッタスポーク33に分岐される配管や配線の数が多くなり、当該中央部の面板39の直径が大きくなっている。この結果、カッタヘッド11の中央部で生じた掘削土砂は、当該中央部にある大径の面板39の周辺に流動して、その周辺の土砂通過部36から取り込まれることになる。よって、当該中央部周辺の土砂通過部36に対して掘削土砂が集中するので、前述した中央部周辺の土砂通過部36における掘削土砂の通過条件が益々良くない方向に作用し、当該土砂通過部36において掘削土砂がさらに滞留、固着しやすくなる。
【0055】
ここで、前述のように特殊ビットやその交換機構等を装備するために、カッタスポーク33の面積、即ち、幅方向の寸法(図3に示す幅W)が大型化する。また、当該交換機構の構造体や、前述の配管、配線等を収納するために、カッタスポーク33の前後方向の寸法(図3に示す軸方向の長さL)も大きくなる傾向にある。この結果、隣接する複数のカッタスポーク33間の隙間である土砂通過部36の断面積(開口面積)が小さくなり、かつ、当該小さい開口面積の土砂通過部36を掘削土砂が前後方向(軸方向)に通過する距離も長くなる。したがって、カッタスポーク33の大型化も、掘削土砂の固着物3による土砂通過部36の閉塞の発生を助長する原因になっていた。
【0056】
以上のような理由から、従来では、相隣接する複数のカッタスポーク33などの構成部材の隙間に形成される土砂通過部36が掘削土砂により閉塞してしまい、掘削土砂の円滑な取り込み、排土が阻害されるという問題が生じていた。この閉塞の問題は、特に、カッタヘッド11の中央部周辺における土砂通過部36で、より顕著であった。
【0057】
図3は、カッタヘッド11の中央部周辺における土砂通過部36の特定領域4が、掘削土砂の固着物3により閉塞した状態を示している。ここで、土砂通過部36の特定領域4とは、カッタヘッド11の前面に形成される土砂通過部36のうち、他の領域よりも掘削土砂の固着物3により閉塞しやすい領域を指す。
【0058】
この特定領域4は、例えば、カッタヘッド11の前面視において、カッタヘッド11の中央部周辺の領域である。より具体的には、図2および図3に示すように、特定領域4は、カッタヘッド11の中心部周辺(中央部の面板39の周辺)において複数のカッタスポーク33が寄せ集まって結合することにより、相隣接する複数のカッタスポーク33間の土砂通過部36が楔状に狭くなっている領域(狭窄部の領域)である。
【0059】
かかる楔状の狭窄部からなる特定領域4には、上述した理由により、掘削土砂が滞留して付着、固結しやすく、掘削土砂の固着物3が詰まりやすい。しかも、狭い特定領域4に詰まった固着物3は、掘削中の掘削土砂の流動に伴って自然に離脱しにくい。また、狭い特定領域4に詰まった固着物3に対して液体等を噴射したとしても、特定領域4から固着物3を除去することは困難である。
【0060】
この点、例えば特許文献3(特許第4647891号公報)に記載の従来技術は、チャンバの内壁に付着した掘削土砂に対して、注入液を噴射して洗浄するものである。この特許文献3に記載の注入液の噴射による洗浄方法を、上記のカッタヘッド11の土砂通過部36に適用して、土砂通過部36に固着した掘削土砂を洗浄する手法が考えられる。しかしながら、かかる従来の洗浄方法は、噴射される注入液の液圧のみに依存して洗浄する方法であるため、土砂通過部36に対して掘削土砂の固着物3が強固に固着した場合には、洗浄能力不足となり、固着物3を適切に除去することが困難であるという問題がある。また、土砂通過部36に対する掘削土砂の固着を予防するために、添加材を含む注入液を、掘削土砂が固着して閉塞を起こす可能性の高い土砂通過部36に対して継続的に噴射する方法も考えられる。しかしながら、かかる方法では、閉塞防止のために継続的に添加材を注入することは、掘削土砂の流動性を確保するという添加材の本来の目的よりも過剰に注入することになり掘削土砂の性状を不安定にすること、また、閉塞を起こす可能性の高い土砂通過部36という一部分に対して添加材を過剰に注入することは、掘削土砂に対する添加材の混合の均一性の阻害につながり、掘削土砂の性状を不安定にするので、現実的ではない。
【0061】
このような事情から、従来では、カッタスポーク33などの構成部材の隙間である土砂通過部36の特定領域4に対する掘削土砂の滞留、固着を、より確実に抑制して、土砂通過部36の閉塞を防止でき、掘削土砂の固着物3により特定領域4が閉塞した場合には、当該固着物3を除去することが可能な方法が希求されていた。かかる事情に鑑み、本願発明者は、鋭意努力して、次項で説明する閉塞防止機構を用いて、土砂通過部36の特定領域4において掘削土砂を強制的に移動させて、掘削土砂の滞留、固着を抑制、解消する方法を見出した。
【0062】
<3.閉塞防止機構の概要>
次に、図4図9を参照して、本実施形態に係るトンネル掘削機1のチャンバ17内に設けられる閉塞防止機構50の概要について説明する。
【0063】
上述したカッタヘッド11の土砂通過部36の閉塞の問題を解決するため、本実施形態に係るトンネル掘削機1によれば、チャンバ17内におけるカッタヘッド11の背面側に、閉塞防止機構50が設けられる。閉塞防止機構50は、掘削土砂の固着物3による土砂通過部36の閉塞を防止するための装置である。
【0064】
図4図9に示すように、閉塞防止機構50は、少なくとも1つの撹拌羽根51と、当該撹拌羽根51が取り付けられる回転軸52(第2回転軸)と、当該回転軸52を支持する支持部53とを備える。
【0065】
閉塞防止機構50は、チャンバ17内においてカッタヘッド11の背面側で回転可能な回転体として、撹拌羽根51および回転軸52を備える。撹拌羽根51は、回転軸52(第2回転軸)を中心に回転可能に設けられる。撹拌羽根51の回転軸52(第2回転軸)は、上述したカッタヘッド11のカッタ回転軸13(第1回転軸)に対して交差する方向に延びる。
【0066】
例えば、撹拌羽根51の回転軸52(第2回転軸)は、掘削機本体10の軸方向に延びるカッタ回転軸13(第1回転軸)に対して直交する方向に延びていることが好ましい。この場合、カッタ回転軸13(第1回転軸)は、掘削機本体10の軸方向(前後方向)に対して平行に延びる回転軸となるのに対し、回転軸52(第2回転軸)は、掘削機本体10の径方向に対して平行に延びる回転軸となる。このように2つの回転軸の方向が異なる結果、カッタ回転軸13(第1回転軸)を中心として回転するカッタヘッド11の回転面と、回転軸52(第2回転軸)を中心として回転する撹拌羽根51の回転面は、互いに直交することになる。これにより、カッタヘッド11のカッタスポーク33、33の間の土砂通過部36に対して、直交する回転面で回転する撹拌羽根51を好適に入り込ませることができる。
【0067】
撹拌羽根51は、回転軸52(第2回転軸)の周囲に設けられる。本実施形態では、例えば、1つの回転軸52に対して複数の撹拌羽根51が周方向に均等に配置される。例えば、図4図9の例では、3つの撹拌羽根51が、回転軸52の周囲に120°の円周角で均等に配置されている。ただし、撹拌羽根51は、1つだけ設けられてもよいし、2つもしくは4つ以上設けられてもよい。撹拌羽根51の設置数は、カッタヘッド11に形成されている土砂通過部36の数に合わせて適宜調整されることが好ましい。
【0068】
支持部53は、チャンバ17内において撹拌羽根51および回転軸52を支持する機能を有する。支持部53の後端は、チャンバ17を画成する隔壁12に取り付けられ、支持部53の前端は、回転軸52に接続される。支持部53は、回転軸52を介して撹拌羽根51を回転可能に軸支する。
【0069】
かかる支持部53により撹拌羽根51および回転軸52を支持することで、撹拌羽根51は、チャンバ17内におけるカッタヘッド11の背面側の所定位置に配置される。この際、撹拌羽根51は、カッタヘッド11の中央部周辺における土砂通過部36の特定領域4(図2図3参照。)に隣接する位置に配置されることが好ましい。これにより、カッタヘッド11の中央部周辺における土砂通過部36の特定領域4に対して、撹拌羽根51を入り込ませることが可能になる。
【0070】
撹拌羽根51は、回転軸52から径方向外側に向けて突出する細長い形状(例えば楔形の形状)を有する。そして、当該細長い形状の撹拌羽根51の厚みおよび幅は、土砂通過部36の特定領域4の幅よりも小さい。また、当該細長い形状の撹拌羽根51の長さ(突出長)は、土砂通過部36の軸方向の奥行に対応する長さである。これにより、当該細長い撹拌羽根51を回転させながら、土砂通過部36に好適に入り込ませることが可能になる。
【0071】
以上説明した構成の閉塞防止機構50は、トンネル掘削機1による地山の掘削時に、カッタ回転軸13(第1回転軸)を中心としたカッタヘッド11の回転中に、回転軸52(第2回転軸)を中心に撹拌羽根51を回転させる。これによって、回転する撹拌羽根51をカッタスポーク33、33の間の土砂通過部36に入り込ませる。
【0072】
このようにして土砂通過部36内に入り込んだ撹拌羽根51によって、土砂通過部36内の掘削土砂を強制的に移動させて、土砂通過部36における掘削土砂の滞留や固着を抑制することができる。したがって、掘削土砂の固着物3による土砂通過部36の閉塞を防止できる。また、仮に固着物3により土砂通過部36が閉塞された場合であっても、閉塞防止機構50の撹拌羽根51を土砂通過部36に入り込ませることによって、固着物3を強制的に移動させて、土砂通過部36から除去することができ、土砂通過部36の閉塞を解除することができる。よって、かかる閉塞防止機構50の閉塞防止機能および閉塞解除機能により、カッタヘッド11の前面側から土砂通過部36を通じて背面側のチャンバ17まで、掘削土砂を円滑に移動させて、効率良く排出することができる。
【0073】
特に、土砂通過部36のうち、カッタヘッド11の中央部付近に位置する特定領域4では、狭い空間に対して掘削土砂が滞留、固着しやすい。このため、土砂通過部36の特定領域4が閉塞しやすく、掘削土砂の固着物3が除去されにくい(図3参照。)。
【0074】
そこで、本実施形態では、チャンバ17内におけるカッタヘッド11の中央部側(例えば、カッタヘッド11の径方向の中間位置よりも内周側)の位置であって、土砂通過部36の特定領域4に隣接する位置に、閉塞防止機構50を配置する。そして、土砂通過部36の特定領域4に隣接する位置で、閉塞防止機構50の撹拌羽根51を機械的に回転させることによって、当該狭い特定領域4に対して撹拌羽根51を入り込ませる。これにより、特定領域4に滞留する掘削土砂を強制的に移動させて、カッタスポーク33の側面に対して掘削土砂が固着することを抑制できる。この結果、特定領域4から掘削土砂を確実に排出させて、特定領域4の閉塞を好適に防止および解除することができる。
【0075】
なお、本実施形態に係る閉塞防止機構50では、カッタヘッド11のカッタ回転軸13(第1回転軸)と撹拌羽根51の回転軸52(第2回転軸)とが、90°の交差角度で直交している。これにより、回転軸52を中心に回転する複数の撹拌羽根51を、別の回転軸(第1回転軸)を中心に回転するカッタヘッド11の複数の土砂通過部36に円滑に入り込ませることが可能になる。
【0076】
しかし、本発明は、かかる例に限定されず、回転軸52(第2回転軸)は、カッタヘッド11のカッタ回転軸13(第1回転軸)に対して、90°未満の交差角度で交差する方向に延びていてもよい。この場合、撹拌羽根51を土砂通過部36に好適に入り込ませるためには、両者の交差角度は、好ましくは45°以上、より好ましくは60°以上で、90°に近い角度であることが好ましい。このように、交差角度が90°以外の角度になるように閉塞防止機構50を配置することで、チャンバ17内における閉塞防止機構50の配置の自由度を高めることができる。よって、チャンバ17内に配置される他の各種の部材、装置(例えば、撹拌翼、連結ビーム15、隔壁12から突出形成された固定翼等)に対して、閉塞防止機構50が干渉することを回避でき、閉塞防止機構50のレイアウト上の制約を緩和できる。
【0077】
また、上述したとおり、カッタヘッド11には多数の土砂通過部36が形成されている。例えば、図2図9に示したカッタヘッド11の例では、周方向に6つの扇形の土砂通過部36が形成されている。この点、本実施形態に係る閉塞防止機構50によれば、1つもしくは少数の閉塞防止機構50を用いて、当該多数の土砂通過部36の閉塞を好適に防止することができる。
【0078】
ここで、少数の閉塞防止機構50を用いて多数の土砂通過部36の閉塞を効率的に防止するためには、1つの閉塞防止機構50の回転軸52に複数の撹拌羽根51を設けることが好ましい。そして、当該閉塞防止機構50を用いて、回転軸52を中心に複数の撹拌羽根51を回転させることによって、複数の土砂通過部36の各々に複数の撹拌羽根51の各々を順次、入り込ませることがより好ましい。例えば、複数の土砂通過部36の各々に対して複数の撹拌羽根51の各々を1つずつ順番に入り込ませてもよい。これにより、1つもしくは少数の閉塞防止機構50を用いて、多数の土砂通過部36に撹拌羽根51を効率的かつ円滑に入り込ませることができる。よって、多数の土砂通過部36の閉塞を防止するために必要な閉塞防止機構50の設置数を低減できるとともに、当該閉塞防止機構50の装置構成を簡素化することができる。
【0079】
以上のように、本実施形態によれば、閉塞防止機構50の機械的動作(撹拌羽根51の回転動作)により、土砂通過部36に滞留する掘削土砂を強制的に移動させる動作を行う。以下では、当該動作を「強制移動動作」と称する。かかる強制移動動作により、土砂通過部36における掘削土砂の滞留、固着を抑制、解消して、掘削土砂の固着物3による土砂通過部36の閉塞を好適に防止できる。また、土砂通過部36が閉塞し始めたとき、または閉塞してしまったときに、当該閉塞を素早く解消できる。よって、土砂通過部36を通じてチャンバ17に掘削土砂を円滑に排出して効率的に排土でき、ひいてはトンネル掘削をスムーズかつ効率的に実施できる。
【0080】
以上、本実施形態に係る閉塞防止機構50の概要について説明した。以下では、閉塞防止機構50の具体的構成と動作についてより詳細に説明する。
【0081】
<4.第1の実施形態に係る閉塞防止機構>
まず、図4図10を参照して、本発明の第1の実施形態に係る閉塞防止機構50について説明する。第1の実施形態に係る閉塞防止機構50は、回転駆動源を有さず、カッタヘッド11の回転に従動して撹拌羽根51を回転させることを特徴としている。
【0082】
図4図9に示すように、第1の実施形態に係る閉塞防止機構50は、撹拌羽根51を回転させるための回転駆動部(例えばモータ等)を備えておらず、カッタヘッド11の回転に従動させて、回転軸52を中心に撹拌羽根51を回転させる構造を有する。このために、撹拌羽根51は、回転軸52(第2回転軸)を中心に自由に回転可能に構成されている。そして、カッタ回転軸13(第1回転軸)を中心として回転するカッタヘッド11の複数のカッタスポーク33により、土砂通過部36に入り込んだ撹拌羽根51を押すことによって、カッタヘッド11の回転に従動させて撹拌羽根51を回転させる。
【0083】
このように、第1の実施形態に係る閉塞防止機構50では、撹拌羽根51を能動的に回転させるための専用の回転駆動源は設けられていない。その代わりに、カッタヘッド11を回転させるための回転駆動源の回転駆動力を利用して、撹拌羽根51を従動的に回転させる。このために、回転軸52には複数の撹拌羽根51が設けられており、当該複数の撹拌羽根51は、カッタヘッド11の複数の土砂通過部36の各々に順次入り込み、複数のカッタスポーク33の一部と噛み合った状態で回転する。これにより、カッタ回転軸13(第1回転軸)を中心に回転するカッタヘッド11の回転駆動力を、カッタスポーク33に噛み合った撹拌羽根51に伝達し、回転軸52(第2回転軸)を中心に当該撹拌羽根51を従動的に回転させることができる。
【0084】
このような撹拌羽根51の回転構造により、閉塞防止機構50に回転駆動源(モータ等)を設置する必要がなくなるので、駆動源を有さない簡素な装置構成で閉塞防止機構50を実現することができる。したがって、閉塞防止機構50を小型化、低コスト化、省エネルギー化することができる。また、既存のトンネル掘削機1のチャンバ17に対して閉塞防止機構50を容易に後付けできるようになる。
【0085】
また、複数の撹拌羽根51が複数のカッタスポーク33と噛み合った状態で円滑に回転できるようにするため、図7図9に示すように、カッタヘッド11の各カッタスポーク33の背面には、他の部分よりも小さい断面形状になる部分33c(以下、「小さい断面形状部33c」と称する場合もある。)が形成されている。小さい断面形状部33cは、カッタスポーク33の背面の一部を、撹拌羽根51の回転軌跡に合わせて小さく形成した部分である。この小さい断面形状部33cは、カッタスポーク33の幅方向の中央に位置する平坦部と、当該幅方向の両側に位置する傾斜部とを有する。小さい断面形状部33cの両側に傾斜部を設けることにより、カッタスポーク33の背面の幅方向両側の角部が面取りされる。かかる小さい断面形状部33cをカッタスポーク33の背面に設けることによって、隣り合う2つの撹拌羽根51、51の間の窪み部がカッタスポーク33の背面や角部と干渉しなくなるため、撹拌羽根51をカッタスポーク33と噛み合わせながら円滑に回転させることができる。
【0086】
また、図4図9に示すように、閉塞防止機構50は、チャンバ17内におけるカッタヘッド11の径方向の中央部側(カッタスポーク33の根本周辺)に配置されている。これにより、カッタヘッド11の中央部においてカッタスポーク33、33の間の土砂通過部36が楔状に狭くなっている特定領域4(図2図3参照。)に、撹拌羽根51を入り込ませることができる。したがって、掘削土砂が最も固着して閉塞やすいカッタヘッド11の中央部側における土砂通過部36の閉塞を防止および解除できる。このような閉塞防止機構50の配置に対応するために、上述したカッタスポーク33の背面の小さい断面形状部33cも、カッタヘッド11の中央部側(カッタスポーク33の根本周辺)に形成されている。
【0087】
また、閉塞防止機構50の撹拌羽根51は、上記のような土砂通過部36の閉塞防止機能だけでなく、チャンバ17内の掘削土砂を撹拌する機能も有する。即ち、閉塞防止機構50の複数の撹拌羽根51が回転しているときは、一部の撹拌羽根51は、前方の土砂通過部36に入り込んで、土砂通過部36内の掘削土砂を強制的に移動させ、閉塞を防止する。一方、土砂通過部36に入り込んでいない他の撹拌羽根51は、後方のチャンバ17内において掘削土砂を撹拌する。例えば、図4図9に示す例では、3つの撹拌羽根51のうち1つの撹拌羽根51が、前方の土砂通過部36に入り込んで閉塞防止機能を発揮しつつ、他の2つの撹拌羽根51が、後方のチャンバ17側で回転することで、チャンバ17内に取り込まれた掘削土砂の撹拌機能を発揮する。
【0088】
このように閉塞防止機構50は、閉塞防止機能だけでなく、チャンバ17内の掘削土砂を撹拌する土砂撹拌機構としても機能する。これにより、閉塞防止機構50を用いて、チャンバ17内の掘削土砂を混練して、その流動化を促進したり、チャンバ17の内壁面に対する掘削土砂の固着を防止したりすることもできる。よって、チャンバ17内に設置される閉塞防止機構50を複数の用途に有効利用して、カッタヘッド11、チャンバ17およびスクリューコンベヤ20等を通じた排土機能全体を向上することができる。
【0089】
次に、図10Aおよび図10B(以下、「図10」と総称する。)を参照して、第1の実施形態に係る閉塞防止機構50の撹拌羽根51の従動的な回転動作について、より詳細に説明する。
【0090】
図10の(a)~(i)はそれぞれ、カッタヘッド11の中央部周辺の正面図と、土砂通過部36に入り込んだ撹拌羽根51の側面図とを対応付けて示すものであり、カッタヘッド11の回転角と撹拌羽根51の回転角との対応関係を表している。
【0091】
図10に示すように、本実施形態に係る閉塞防止機構50では、例えば、カッタヘッド11がカッタ回転軸13(第1回転軸)を中心に60°回転する間に、撹拌羽根51は回転軸52(第2回転軸)を中心に120度回転する。つまり、カッタヘッド11が1回転(360°回転)する間に、撹拌羽根51は2回転(720°回転)する。
【0092】
図10(a)に示すように、1つの撹拌羽根51(以下、「第1の撹拌羽根51」と称する。)がカッタヘッド11の1つの土砂通過部36(以下、「第1の土砂通過部36」と称する。)に入り込んだ状態を考える。この状態でカッタヘッド11が回転すると、図10(b)~(d)に示すように、第1の撹拌羽根51の回転上流側(図中の上側)に位置するカッタスポーク33(以下、「第1のカッタスポーク33」と称する。)の下側の側面が第1の撹拌羽根51の上面に当接して、第1の撹拌羽根51を回転下流側(図中の下側)に押す。これにより、第1の撹拌羽根51は、第1のカッタスポーク33の回転に従動して、回転軸52を中心に下向きに回転する。
【0093】
その後、図10(d)~(e)に示すように、第1の撹拌羽根51が第1の土砂通過部36から抜け出るとともに、次の撹拌羽根51(以下、「第2の撹拌羽根51」と称する。)が、隣の土砂通過部36(以下、「第2の土砂通過部36」と称する。)に入り込み始める。そうすると、図10(f)~(h)に示すように、第2の撹拌羽根51の回転上流側(図中の上側)に位置する次のカッタスポーク33(以下、「第2のカッタスポーク33」と称する。)の下側の側面が第2の撹拌羽根51の上面に当接して、第2の撹拌羽根51を回転下流側(図中の下側)に押す。この結果、第2の撹拌羽根51は、第2のカッタスポーク33の回転に従動して、回転軸52を中心に下向きに回転する。その結果、図10(i)に示すように、第2の撹拌羽根51が第2の土砂通過部36に十分に入り込んだ状態となる。
【0094】
以上のような回転動作を繰り返して、回転するカッタヘッド11のカッタスポーク33の各々で、土砂通過部36に入り込んだ撹拌羽根51の各々を押すことにより、カッタヘッド11の回転に従動させて複数の撹拌羽根51を回転させ続けることができる。また、かかる回転動作中は、カッタスポーク33の背面に上述した小さい断面形状部33cが形成されているため、回転途中の撹拌羽根51とカッタスポーク33の背面とが不必要に干渉しないので、複数の撹拌羽根51を円滑に従動回転させることができる。
【0095】
以上のように、本実施形態では、カッタヘッド11の回転に従動させて撹拌羽根51を回転させる。カッタヘッド11が1回転する間に、カッタヘッド11の周方向に並んだ6つの土砂通過部36の各々に対して、3つの撹拌羽根51の各々が順次入り込む。この間に、3つの撹拌羽根51はそれぞれ、6つの土砂通過部36に2回ずつ順次入り込む。このように本実施形態では、6つの土砂通過部36の全てに対して周方向に並んだ順に、撹拌羽根51を1つずつに順番に入り込ませている。これにより、1つの閉塞防止機構50を用いて6つの土砂通過部36の全ての閉塞を好適に防止することができる。
【0096】
しかし、複数の土砂通過部36に撹拌羽根51を入り込ませる手順は、かかる例に限定されない。例えば、周方向に並んだ複数の土砂通過部36に対して、1箇所おき、または複数箇所おきに、複数の撹拌羽根51の各々を順次入り込ませてもよい。これによっても、カッタヘッド11が複数回回転する間に、土砂通過部36の全てに対して撹拌羽根51のいずれかを入り込ませることができる。よって、1つの閉塞防止機構50により複数の土砂通過部36の全ての閉塞を防止することは可能である。
【0097】
なお、必ずしも、複数の土砂通過部36の全てに対して撹拌羽根51を入り込ませなくてもよく、一部の土砂通過部36のみに対して撹拌羽根51を入り込ませるようにしてもよい。
【0098】
また、本実施形態では、撹拌羽根51の数(例えば3つ)を、カッタスポーク33および土砂通過部36の数(例えば6つ)よりも少なくし、例えば半数とした。これにより、撹拌羽根51の回転半径(回転面の外径)を小さくすることができる。したがって、比較的大きいカッタスポーク33の回転に従動させて、比較的小さい撹拌羽根51を円滑に回転させ、土砂通過部36の各々に適切に入り込ませることができる。また、上記のように撹拌羽根51の数を少数にすることで、少数の撹拌羽根51で多数の土砂通過部36の閉塞を効率的に防止することもできる。さらに、上記のように閉塞防止機構50の撹拌羽根51の回転半径を小さくすれば、回転する撹拌羽根51がチャンバ17後方の隔壁12に干渉しにくくなるので、軸方向の奥行きが狭いチャンバ17内にも、閉塞防止機構50を好適に配置することも可能になる。
【0099】
しかし、かかる例に限定されず、撹拌羽根51の数は、カッタスポーク33および土砂通過部36の数と同数であってもよいし、それ以上であってもよい。
【0100】
また、本実施形態では、1つの土砂通過部36に対して1つの撹拌羽根51を順次入り込ませたが、かかる例に限定されない。例えば、1つの土砂通過部36に対して複数の撹拌羽根51を同時に入り込ませるように、撹拌羽根51の数や配置を調整することも可能である。
【0101】
また、本実施形態では、カッタスポーク33の背面に対して、小さい断面形状部33cを設けたが、撹拌羽根51とカッタスポーク33との関係性によっては、カッタスポーク33の背面の断面形状を小さくすることなしに対応してもよい。
【0102】
<5.第2の実施形態に係る閉塞防止機構>
次に、図11を参照して、本発明の第2の実施形態に係る閉塞防止機構50について説明する。第2の実施形態に係る閉塞防止機構50は、撹拌羽根51および回転軸52からなる回転体を、掘削機本体10の軸方向(即ち、前後方向)に進退させるための進退機構54を備えることを特徴としている。
【0103】
図11に示すように、第2の実施形態に係る閉塞防止機構50は、上述した撹拌羽根51、回転軸52および支持部53に加えて、支持部53を前後方向に進退させる進退機構54をさらに備える。
【0104】
第2の実施形態では、支持部53は、軸方向に延びる棒状の部材からなり、隔壁12を貫通するように設けられる。進退機構54は、例えば、隔壁12に取り付けられ、軸方向に延びる支持部53を摺動可能に支持する。進退機構54は、アクチュエータ等の駆動装置と、当該駆動装置の駆動力を支持部53に伝達する伝達機構とを具備しており、支持部53を軸方向に前進もしくは後退(即ち、進退)させることができる。進退機構54により支持部53を進退させることによって、当該支持部53により支持されている回転軸52および撹拌羽根51(回転体)を軸方向に進退させることができる。
【0105】
図11の二点鎖線で示すように、進退機構54により支持部53を介して撹拌羽根51等を前進させて、前進位置に配置したときには、前側の撹拌羽根51は、カッタヘッド11の土砂通過部36に入り込むことが可能になる。一方、図11の実線で示すように、進退機構54により支持部53を介して撹拌羽根51等を後退させて、退避位置に配置したときには、前側の撹拌羽根51はカッタヘッド11の土砂通過部36から抜け出した状態となり、全ての撹拌羽根51はチャンバ17内に配置されて退避状態となる。この退避状態では、全ての撹拌羽根51は、前方のカッタヘッド11のカッタスポーク33と干渉せず、かつ、後方の隔壁12とも干渉しない。
【0106】
このように、閉塞防止機構50が進退機構54を具備することにより、地山の状況等に応じて、撹拌羽根51等を進退させることが可能になる。
【0107】
例えば、地山の土質が固着性の低い土砂であるときなど、カッタヘッド11の土砂通過部36の閉塞のリスクがない場合には、進退機構54により、チャンバ17内で撹拌羽根51および回転軸52を隔壁12に向けて後退させて、チャンバ17内に退避させる。これにより、撹拌羽根51が土砂通過部36に不必要に入り込んで土砂の流動を阻害することを回避したり、撹拌羽根51とカッタスポーク33との無用な干渉を回避したりすることができる。
【0108】
一方、地山の土質状況が変化して、地山の土質が固着性の高い土砂に変わったときなど、土砂通過部36の閉塞のリスクが発生した場合には、進退機構54により撹拌羽根51および回転軸52をカッタヘッド11に向けて前進させる。これにより、前方側の撹拌羽根51を、土砂通過部36に入り込むことが可能な位置に配置して、上記閉塞防止機能や閉塞解除機能を発揮できる状態にすることができる。この結果、回転する撹拌羽根51を随時、土砂通過部36に入り込ませて、土砂通過部36に滞留する掘削土砂を強制的に移動させて、土砂通過部36の閉塞を防止および解除できる。
【0109】
以上のように、第2の実施形態によれば、地山の状況等に応じて、閉塞防止機構50による閉塞防止・解除機能をオン/オフすることができる。地山の状態が良いときには、無用な閉塞防止・解除機能をオフにして、閉塞防止機構50の撹拌羽根51とカッタスポーク33等を干渉させないことで、閉塞防止機構50の破損防止や耐用年数の向上を図ることができる。一方、地山の状態が悪いときには、閉塞防止・解除機能をオンにして、閉塞防止機構50の撹拌羽根51を土砂通過部36に入り込ませて、土砂通過部36における掘削土砂の滞留や固着を抑制し、土砂通過部36の閉塞を防止および解除することができる。さらには、副次的な効果として、回転する撹拌羽根51によるチャンバ17内の掘削土砂の撹拌機能も発揮できる。
【0110】
<6.第3の実施形態に係る閉塞防止機構>
次に、図12を参照して、本発明の第3の実施形態に係る閉塞防止機構50について説明する。第3の実施形態に係る閉塞防止機構50は、回転駆動源を有し、撹拌羽根51を能動的に回転させることを特徴としている。
【0111】
図12に示すように、第3の実施形態に係る閉塞防止機構50は、上述した撹拌羽根51、回転軸52および支持部53に加えて、回転軸52を中心に撹拌羽根51を回転させる回転駆動部55をさらに備える。
【0112】
回転駆動部55は、例えば、モータ等で構成され、回転軸52の後端に取り付けられる。回転駆動部55は、回転軸52を回転させることで、撹拌羽根51を回転させる。かかる回転駆動部55を備えた閉塞防止機構50は、カッタヘッド11の複数の土砂通過部36に対して複数の撹拌羽根51を順次入り込ませるように、カッタヘッド11の回転に合わせて撹拌羽根51を回転させる。このとき、撹拌羽根51がカッタスポーク33と干渉せずに、カッタスポーク33、33の間に入り込んで土砂通過部36に収まることができるように、回転駆動部55による撹拌羽根51の回転速度を制御することが好ましい。
【0113】
このように第3の実施形態によれば、第1の実施形態のように受動的に撹拌羽根51を回転させるのではなく、回転駆動部55により撹拌羽根51を能動的に回転させることができる。これにより、回転駆動部55により撹拌羽根51を安定的かつ確実に回転させることができる。さらに、第1の実施形態のような従動的な回転の場合のようにカッタスポーク33と撹拌羽根51を接触させる必要がないので、カッタスポーク33と撹拌羽根51との干渉に起因した閉塞防止機構50の破損を抑制でき、耐用年数を向上することができる。
【0114】
また、第3の実施形態のように回転駆動部55により撹拌羽根51を能動的に回転可能に構成する場合には、回転軸52に撹拌羽根51を1つだけ設けることも可能である。この場合、回転駆動部55により1つの撹拌羽根51の回転速度を適切に制御することによって、カッタヘッド11を複数回回転させる間に、カッタヘッド11の全ての土砂通過部36に対して当該1つの撹拌羽根51を入り込ませて、閉塞を防止することも可能である。
【0115】
また、図13に示すように、閉塞防止機構50は、回転駆動部55により撹拌羽根51の回転範囲を制御することも可能である。図13(a)は、回転軸52を中心に撹拌羽根51を360°以上回転させて、カッタヘッド11の土砂通過部36に入り込ませる状態を示している。一方、図13(b)は、回転軸52を中心に撹拌羽根51を所定の回転角度範囲で搖動させて、土砂通過部36に入り込ませない状態を示している。
【0116】
図13の例では、回転軸52に2つの撹拌羽根51が設けられており、当該2つの撹拌羽根51は、回転軸52の周囲の0°と180°の位置に取り付けられている。図13には示されていないが、上記の回転駆動部55(図12参照。)が回転軸52に設けられており、当該回転駆動部55により回転軸52および撹拌羽根51を能動的に回転させることが可能である。
【0117】
ここで、図13(a)に示すように、回転駆動部55により2つの撹拌羽根51を360°以上回転させれば、当該回転する2つの撹拌羽根51は、前方に位置したときに、カッタヘッド11の土砂通過部36に入り込んで、閉塞防止機能を発揮する。この場合には、回転駆動部55は、2つの撹拌羽根51と複数のカッタスポーク33とが干渉しないように、撹拌羽根51の回転速度を適切な速度に制御して、撹拌羽根51の各々を複数の土砂通過部36に順次入り込ませる。
【0118】
一方、図13(b)に示すように、回転駆動部55により、撹拌羽根51が土砂通過部36に入り込まない所定の角度範囲で、回転軸52を中心に撹拌羽根51を搖動させてもよい。ここで、撹拌羽根51の搖動とは、撹拌羽根51を正逆方向に交互に所定角度(例えば数十度程度)だけ回動させることを繰り返す動作を意味する。図13(b)の例では、撹拌羽根51を±30°の範囲で撹拌羽根51を搖動させ、撹拌羽根51の先端が土砂通過部36に入り込まないように制御している。このように撹拌羽根51を搖動させることによって、チャンバ17内の掘削土砂を撹拌することができる。かかる搖動の際には、撹拌羽根51が土砂通過部36に入り込まないので、撹拌羽根51とカッタスポーク33等の干渉により、撹拌羽根51等が破損することを防止できる。
【0119】
また、閉塞防止機構50は、第3の実施形態に係る回転駆動部55と、上述した第2の実施形態に係る進退機構54(図11参照。)の双方を備えるようにしてもよい。
【0120】
これにより、閉塞防止機構50は、進退機構54により支持部53を後退させ、撹拌羽根51がカッタヘッド11の土砂通過部36に入り込まないように、チャンバ17内で撹拌羽根51を後方に退避させた状態(図11参照。)にすることができる。さらに、この退避状態で、回転駆動部55により、回転軸52を中心に撹拌羽根51を能動的に回転させることによって、撹拌羽根51によりチャンバ17内の掘削土砂を撹拌することができる。この際、撹拌羽根51は、前方のカッタヘッド11のカッタスポーク33や後方の隔壁12と干渉することなく、円滑に回転して、チャンバ17内の掘削土砂を好適に撹拌することができる。
【0121】
このように、第3の実施形態において、進退機構54と回転駆動部55を兼備することにより、第2の実施形態と同様に、地山の状況等に応じて閉塞防止機構50による閉塞防止・解除機能をオン/オフすることができる。地山の状態が良いときには、無用な閉塞防止・解除機能をオフにして、閉塞防止機構50の撹拌羽根51を後方に退避させ、撹拌羽根51とカッタスポーク33等を干渉させないことで、閉塞防止機構50の破損防止や耐用年数の向上を図ることができる。さらに、後方に退避した状態の撹拌羽根51を回転駆動部55により回転させることによって、チャンバ17内の土砂撹拌機能を発揮することができる。よって、閉塞防止機構50を、チャンバ17内の土砂撹拌機構としても有効活用することができる。
【0122】
なお、閉塞防止機構50が、進退機構54を備えずに、回転駆動部55を備え、チャンバ17内において土砂通過部36に入り込まない位置に撹拌羽根51を配置して、回転駆動部55により撹拌羽根51をチャンバ17内で回転させるような構成にしてもよい。このように、閉塞防止機構50に閉塞防止・解除機能を発揮させずに、当該閉塞防止機構50をチャンバ17内の土砂撹拌機構としてのみ利用することも可能である。
【0123】
<7.トンネル掘削機によるトンネル施工方法>
以上、本実施形態に係るトンネル掘削機1の構成について詳述した。次に、本実施形態に係るトンネル掘削機1を用いたトンネル施工方法と、トンネル掘削機1の動作について説明する。
【0124】
本実施形態に係るトンネル掘削機1を用いてトンネル構造体を施工する場合、図1に示すように、まず、カッタヘッド11を回転させながら、複数の推進ジャッキ19を伸長させて既設のセグメントSに押し付ける。これにより、掘削機本体10がその既設のセグメントSから推進反力を得て前進すると共に、回転するカッタヘッド11によりトンネル掘削機1の前方の切羽の地山が掘削されて、トンネルTの掘削が進行する。
【0125】
このカッタヘッド11による掘削時には、多数のカッタビット35の先端部は切羽最前端位置である切羽掘削面2に配置され、当該カッタビット35は切羽掘削面2に沿って周回しながら、当該切羽掘削面2の地山を切削する。
【0126】
かかる掘削時には、添加材(加泥材または気泡材)、水等を含む注入液が、供給機構(図示せず。)によりカッタヘッド11まで供給されている。当該注入液は、カッタヘッド11に設けられた注入孔(図示せず。)を通じて、掘削土砂に注入される。これにより、切羽とカッタヘッド11前面との間の領域で、注入液に含まれる添加材の作用により掘削土砂が改良土となり、当該掘削土砂の塑性流動性や固着防止性、止水性などが向上する。
【0127】
上記掘削によって発生した掘削土砂は、カッタヘッド11の開口部である土砂通過部36を通じてチャンバ17内に取り込まれて蓄積される。チャンバ17は、蓄積された掘削土砂によって所定の内圧に維持される。そして、チャンバ17内に蓄積された掘削土砂は、隔壁12の下部の排出口12aを通じて、スクリューコンベヤ20の筒体22の先端部内に移動する。そして、掘削土砂は、駆動部25により回転するスクリュー羽根21によって、スクリューコンベヤ20の筒体22内を後方側に向けて運搬されて、後部側の土砂排出口から排出される。
【0128】
また、上記のような掘削および排土動作と同時に、収縮させた推進ジャッキ19の後方側において、エレクタ装置によって、セグメントSがトンネルTの内壁面に沿ってリング状に順次組み立てられる。
【0129】
以上のようにして、トンネル掘削機1は、カッタヘッド11の掘削量に見合う土砂量を、スクリューコンベヤ20によって円滑に排出して、チャンバ17内を常に掘削土砂によって充満させることにより、切羽の安定化を図りつつ、トンネルTを連続的に掘削する。これと同時に、推進ジャッキ19の伸長によって、既設のセグメントSから推進反力を得て掘進しながら、推進ジャッキ19の後方側において、新設のセグメントSが組み立てられる。
【0130】
ところで、上記のような掘削途中に、カッタヘッド11の土砂通過部36に掘削土砂の固着物3が滞留し、極端な場合には、土砂通過部36の一部(特に、カッタヘッド11の中央部付近の特定領域4)が固着物3により閉塞する場合がある。かかる場合には、上述した閉塞防止機構50を用いて、土砂通過部36に滞留、固着している掘削土砂を強制的に移動させる強制移動動作(閉塞防止動作、閉塞解除動作)が実行される。かかる強制移動動作(閉塞防止動作、閉塞解除動作)は、カッタヘッド11を回転させるトンネル掘削動作と同時並行で行うことが好ましい。
【0131】
これにより、トンネル掘削を継続しながら、カッタヘッド11の土砂通過部36に掘削土砂が滞留、固着することを抑制できる。よって、土砂通過部36が掘削土砂の固着物3により閉塞することを防止および抑制でき、土砂通過部36を通じてチャンバ17内に掘削土砂を円滑に取り込みながら、トンネル掘削を円滑かつ効率的に進行させることができる。
【0132】
なお、上述した第3の実施形態(図12図13参照。)のように、閉塞防止機構50が、撹拌羽根51を回転させる回転駆動部55を備える場合には、トンネル掘削動作を一時的に停止させた状態で、掘削機本体10を前方に推進させずにカッタヘッド11を回転させて、強制移動動作(閉塞防止動作、閉塞解除動作)を行うこともできる。トンネル掘削の一時的な停止中は、一般的に、エレクタ装置によりセグメントSの組立を行う時間帯となる。この時間帯に閉塞解除動作を行って、土砂通過部36に対する掘削土砂の固着を解消できれば、その後のトンネル掘削再開時における掘削土砂の排土を円滑に実行でき、掘削作業の効率化を図ることも期待できる。
【0133】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0134】
例えば、上記本実施形態では、土砂通過部36のうち閉塞防止対象の領域が、図2図3に示したように、カッタヘッド11の中央部周辺において土砂通過部36が楔状に狭くなっている特定領域4である例について説明したが、本発明は、かかる例に限定されない。本発明の閉塞防止対象の領域は、土砂通過部36のうち、他の領域よりも掘削土砂の固着物により閉塞しやすい領域であれば、任意の領域であってよく、例えば、カッタスポーク33と補助カッタスポークと内周リング32などの交差部において、構造体が密集して、土砂通過部が狭くなっている領域であってもよい。
【0135】
また、上記実施形態では、チャンバ17内に閉塞防止機構50を1つだけ設置したが、かかる例に限定されず、閉塞防止機構50を2つ以上設置してもよい。例えば、カッタヘッド11の径方向に2つ以上の閉塞防止機構50を並設してもよい。これにより、径方向の内側に配置された第1の閉塞防止機構50により、土砂通過部36のうち内周側の領域の閉塞を防止しつつ、径方向外側に配置された第2の閉塞防止機構50により、当該土砂通過部36のうち外周側の領域の閉塞を防止することができる。また、カッタヘッド11の周方向に2つ以上の閉塞防止機構50を並設してもよい。これにより、2つ以上の土砂通過部36に対して2つ以上の閉塞防止機構50の撹拌羽根51を入り込ませて、当該2つ以上の土砂通過部36の閉塞を同時に防止することができる。
【0136】
また、閉塞防止機構50が回転駆動部55と進退機構54を具備している場合においては、任意の撹拌羽根51が切羽に向いている状態で回転駆動部55を停止させておいて、撹拌羽根51の前後の進退機構54により、撹拌羽根51を土砂通過部36に出退させることによって、閉塞を解除してもよい。
【符号の説明】
【0137】
1 トンネル掘削機
2 切羽掘削面
3 固着物
4 特定領域
10 掘削機本体
11 カッタヘッド
12 隔壁
13 カッタ回転軸(第1回転軸)
17 チャンバ
19 推進ジャッキ
20 スクリューコンベヤ
33 カッタスポーク
33a カッタスポークの前面
33c カッタスポークの背面の小さい断面形状部
35 カッタビット
36 土砂通過部
38 中空空間
39 面板
50 閉塞防止機構
51 撹拌羽根
52 回転軸(第2回転軸)
53 支持部
54 進退機構
55 回転駆動部
S セグメント
T トンネル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10A
図10B
図11
図12
図13