(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024124693
(43)【公開日】2024-09-13
(54)【発明の名称】シリンダ錠の保護装置
(51)【国際特許分類】
E05B 17/18 20060101AFI20240906BHJP
E05B 15/00 20060101ALI20240906BHJP
【FI】
E05B17/18 G
E05B15/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023032557
(22)【出願日】2023-03-03
(71)【出願人】
【識別番号】000155067
【氏名又は名称】ミネベアアクセスソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】弁理士法人はなぶさ特許商標事務所
(74)【代理人】
【識別番号】110002192
【氏名又は名称】弁理士法人落合特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】黒岩 丈展
(72)【発明者】
【氏名】吉川 裕星
(72)【発明者】
【氏名】田中 克弥
(57)【要約】
【課題】ケーシング外壁の貫通孔を通して外方に先部が突出する突出位置とその位置から所定量押込まれた押込位置との間を移動可能としてケーシングに支持された操作部材と、操作部材が押込位置まで押圧操作されるのに連動させてシャッター板を開き位置から閉じ位置に駆動する連動駆動機構とを備えたシリンダ錠の保護装置において、操作部材とケーシング外壁の貫通孔との間のクリアランスに細かい異物が詰まって、操作部材の押込位置から突出位置へのスムーズな戻り動作が阻害される場合の不具合を回避する。
【解決手段】操作部材41は、これの押込位置41Bでケーシング28外に露出する先部411の外面に、操作部材41を押込位置41Bから突出位置41Aへ引き戻せるように他物T又は手の指を係合可能な被係合部41gを有している。
【選択図】
図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダ錠(11)にメカニカルキー(14)を挿入するためのメカニカルキー挿入孔(27)を有するケーシング(28)と、前記メカニカルキー挿入孔(27)を閉じる閉じ位置ならびに前記メカニカルキー挿入孔(27)を開放する開き位置間で作動することを可能として前記ケーシング(28)に配設されるシャッター板(29)と、そのシャッター板(29)を前記閉じ位置に規制する規制状態ならびに前記閉じ位置から前記開き位置への前記シャッター板(29)の作動を許容する規制解除状態を切換え可能とした作動規制機構(55)と、前記規制状態にある前記作動規制機構(55)を前記規制解除状態に切換え得る解除機構(65)とを備えるシリンダ錠の保護装置であって、
前記ケーシング(28)の外壁(31)の貫通孔(42)を通して前記ケーシング(28)の外方に先部(411)が突出する突出位置(41A)と該突出位置(41A)から所定量押込まれた押込位置(41B)との間を移動可能として前記ケーシング(28)に支持された操作部材(41)と、その操作部材(41)を前記突出位置(41A)の側に付勢する戻しばね(48)と、前記操作部材(41)が前記突出位置(41A)から前記押込位置(41B)まで押圧操作されるのに連動させて前記シャッター板(29)を前記開き位置から前記閉じ位置に駆動する連動駆動機構(88)とを備えたものにおいて、
前記操作部材(41)は、これの前記押込位置(41B)で前記ケーシング(28)外に露出する前記先部(411)の外面に、該操作部材(41)を前記押込位置(41B)から前記突出位置(41A)へ引き戻せるように他物(T)又は手の指を係合可能な被係合部(41g,41t,41s)を有していることを特徴とする、シリンダ錠の保護装置。
【請求項2】
前記被係合部は、前記操作部材(41)の前記先部(411)の外周面にその周方向の全域に亘り又は一部領域に亘り延びる係止溝(41g)であることを特徴とする、請求項1に記載のシリンダ錠の保護装置。
【請求項3】
前記被係合部は、前記操作部材(41)の前記先部(411)の外周面にその周方向の全域に亘り又は一部領域に亘り延びる係止突部(41t)又は係止段部(41s)であることを特徴とする、請求項1に記載に記載のシリンダ錠の保護装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリンダ錠にメカニカルキーを挿入するためのメカニカルキー挿入孔を有するケーシングと、メカニカルキー挿入孔を閉じる閉じ位置ならびにメカニカルキー挿入孔を開放する開き位置間で作動することを可能としてケーシングに配設されるシャッター板と、そのシャッター板を前記閉じ位置に規制する規制状態ならびに前記閉じ位置から前記開き位置へのシャッター板の作動を許容する規制解除状態を切換え可能とした作動規制機構と、前記規制状態にある作動規制機構を前記規制解除状態に切換え得る解除機構とを備えるシリンダ錠の保護装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上記シリンダ錠の保護装置において、ケーシング外壁の貫通孔を通してケーシング外方に先部が突出する突出位置と該突出位置から所定量押込まれた押込位置との間を移動可能としてケーシングに支持された押しボタン状の操作部材と、その操作部材が前記突出位置から前記押込位置まで押圧操作されるのに連動させてシャッター板を開き位置から閉じ位置に駆動する連動駆動機構とを備えたものは、従来公知である(例えば下記の特許文献1,2を参照)。
【0003】
これら従来装置では、開き位置に在るシャッター板を閉じ位置側に動かすときには、シャッター板が開き位置に在る状態でケーシングの外面から先部を突出させている操作部材を押し込み操作すればよく、ケーシングに、シャッター板の突起を挿通させる円弧状開口部を設ける必要がないため、ケーシングのデザイン上の自由度が増大し、しかも操作部材の外周およびケーシング間のシールだけを考慮すればよいので防塵、防水構造上も有利となる等の利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許6187908号公報
【特許文献2】特許4100928号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで特許文献1の従来装置では、シャッター板閉鎖用の操作部材が押込位置まで押し込まれるのに連動してシャッター板が閉じ位置に向かって作動し且つ作動規制機構が規制状態に切換えられるのに応じて、操作部材が戻しばねの付勢力で押込位置から突出位置へ戻り動作するよう構成されている。また特許文献2の従来装置では、操作部材の押込位置への押込みに連動して規制状態となった作動規制機構が、解除機構により規制解除状態に切換えられてシャッター板が閉じ位置から開き位置へ作動するのに応じて、操作部材が戻しばねの付勢力で押込位置から突出位置へ戻り動作するよう構成されている。
【0006】
ところが特許文献1,2の従来装置では、シャッター板閉鎖用の上記操作部材と、これが貫通するケーシング外壁の貫通孔との間に僅かな環状クリアランスが存在する。そのため、例えば粉塵が多い地域では上記クリアランスに細かい異物(例えば砂や埃等)が詰まって、操作部材の押込位置から突出位置への戻り動作が阻害される可能性がある。この場合、特許文献2の装置では、操作部材が押込位置のままだとシャッター板を開き状態に維持できない不具合があり、また特許文献1の装置では、シャッター板を開き状態に維持できても、操作部材が押込位置のままだとシャッター板を閉鎖できないため、第三者によるシリンダ錠の不正アタックが容易な状態となる不具合がある。
【0007】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、従来装置の上記課題を解決可能なシリンダ錠の保護装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は、シリンダ錠にメカニカルキーを挿入するためのメカニカルキー挿入孔を有するケーシングと、前記メカニカルキー挿入孔を閉じる閉じ位置ならびに前記メカニカルキー挿入孔を開放する開き位置間で作動することを可能として前記ケーシングに配設されるシャッター板と、そのシャッター板を前記閉じ位置に規制する規制状態ならびに前記閉じ位置から前記開き位置への前記シャッター板の作動を許容する規制解除状態を切換え可能とした作動規制機構と、前記規制状態にある前記作動規制機構を前記規制解除状態に切換え得る解除機構とを備えるシリンダ錠の保護装置であって、前記ケーシングの外壁の貫通孔を通して前記ケーシングの外方に先部が突出する突出位置と該突出位置から所定量押込まれた押込位置との間を移動可能として前記ケーシングに支持された操作部材と、その操作部材を前記突出位置の側に付勢する戻しばねと、前記操作部材が前記突出位置から前記押込位置まで押圧操作されるのに連動させて前記シャッター板を前記開き位置から前記閉じ位置に駆動する連動駆動機構とを備えたものにおいて、前記操作部材は、これの前記押込位置で前記ケーシング外に露出する前記先部の外面に、該操作部材を前記押込位置から前記突出位置へ引き戻せるように他物又は手の指を係合可能な被係合部を有していることを第1の特徴とする。
【0009】
また本発明は、第1の特徴に加えて、前記被係合部は、前記操作部材の前記先部の外周面にその周方向の全域に亘り又は一部領域に亘り延びる係止溝であることを第2の特徴とする。
【0010】
また本発明は、第1の特徴に加えて、前記被係合部は、前記操作部材の前記先部の外周面にその周方向の全域に亘り又は一部領域に亘り延びる係止突部又は係止段部であることを第3の特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の第1の特徴によれば、ケーシング外壁の貫通孔を通してケーシング外方に先部が突出する突出位置と該突出位置から所定量押込まれた押込位置との間を移動可能としてケーシングに支持された操作部材と、その操作部材を突出位置の側に付勢する戻しばねと、操作部材が突出位置から押込位置まで押圧操作されるのに連動させてシャッター板を開き位置から閉じ位置に駆動する連動駆動機構とを備えたシリンダ錠の保護装置において、操作部材は、これの押込位置でケーシング外に露出する前記先部の外面に、操作部材を押込位置から突出位置へ引き戻せるように他物又は指を係合可能な被係合部を有する。
【0012】
これにより、シャッター板閉鎖用の操作部材とケーシング外壁の貫通孔との間のクリアランスに細かい異物(例えば砂や埃等)が詰まる等して、操作部材の押込位置から突出位置への戻り動作が阻害される場合には、操作部材の先部外面の被係合部に対し他物又は手の指を係合させて操作部材を突出位置まで容易に引き出せるため、操作部材が押込位置のままの場合の不具合を簡単な構造で回避可能となる。
【0013】
また本発明の第2の特徴によれば、被係合部は、操作部材の先部の外周面にその周方向の全域に亘り又は一部領域に亘り延びる係止溝であるので、被係合部の特設に当たっては、操作部材の先部外周面に単に係止溝を形成するだけでよく、加工性が良好である。また操作部材の先端面には被係合部を設ける必要はないため、被係合部が押込操作性に阻害する虞れもない。
【0014】
また本発明の第3の特徴によれば、被係合部は、操作部材の先部の外周面にその周方向の全域に亘り又は一部領域に亘り延びる係止突部又は係止段部であるので、被係合部の特設に当たっては、操作部材の先部外周面に単に係止突部又は係止段部を形成するだけでよく、加工性が良好である。また操作部材の先端面には被係合部を設ける必要はないため、被係合部が押込操作性に阻害する虞れもない。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明に係るシリンダ錠の保護装置の第1実施形態を示す全体斜視図
【
図2】メカニカルキーおよびマグネットキーの斜視図
【
図4】カバー部材を省略した状態での保護装置の正面図
【
図6】作動規制機構が規制状態にあってシャッター板が閉じ位置にロックされているときのシャッター板、操作部材、作動規制機構および解除機構の相対配置を示す斜視図
【
図8】解除機構で作動規制機構を規制解除状態に切換えたときの、
図6に対応した斜視図
【
図9】シャッター板が開き位置に回動したときの、
図6に対応した斜視図
【
図10】操作部材の押込位置への押圧操作に連動してシャッター板を開き位置から閉じ位置に動かしたときの、
図6に対応した斜視図
【
図11】操作部材のケーシング貫通部を拡大して示す要部断面図であって、特に(A)は
図9の11A-11A線断面図、(B)は
図10の11B-11B線断面図
【
図12】第2実施形態に係る操作部材のケーシング貫通部を拡大して示す、
図11に対応した要部断面図
【
図13】第3実施形態に係る操作部材のケーシング貫通部を拡大して示す、
図11に対応した要部断面図
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について、添付図面を参照しながら説明する。
【0017】
先ず、第1実施形態を
図1~
図11を参照して説明すると、
図1において、イグニッションスイッチのスイッチング態様の切換ならびにステアリングのロック状態およびアンロック状態を切換を可能として、車両たとえば自動二輪車等に用いられるシリンダ錠11のシリンダボディ12に保護装置13が取付けられる。
【0018】
図2において、前記シリンダ錠11を解錠操作するためのメカニカルキー14は、キープレート15と、そのキープレート15の一端部に設けられる合成樹脂製の把持部16とを有しており、前記キープレート15とは反対側で前記把持部16にマグネットキー17が回動可能に支持される。
【0019】
前記マグネットキー17のキー本体18は合成樹脂によって形成されており、前記把持部16側に畳まれた格納位置と、
図2で示すように前記キープレート15とは反対側に向けて前記把持部16から突出する起立位置との間での回動を可能として、前記把持部16に軸19を介して支持される。
【0020】
前記キー本体18の一側面には、正方形の凹部20と、該凹部20の中央部に配置される円形突部21と、前記凹部20内で前記円形突部21の周囲に配置される4個の収容凹部22とが形成されており、4個の収容凹部22のうち選択された3個の収容凹部22にマグネット23がそれぞれ収容された状態で、前記円形突部21を嵌合させる円形孔24を中央部に有する蓋部材25を前記凹部20に嵌合して貼着することで、前記マグネットキー17が構成される。しかも前記マグネット23は、そのN極およびS極のいずれか一方を収容凹部22の外端側に臨ませるようにして収容凹部22に収容される。
【0021】
図3~
図5を併せて参照して、前記保護装置13は、前記シリンダ錠11にメカニカルキー14を挿入するためのメカニカルキー挿入孔27を有して前記シリンダボディ12の一端部を覆うケーシング28と、メカニカルキー挿入孔27を閉じる閉じ位置ならびにメカニカルキー挿入孔27を開放する開き位置間で作動することを可能としてケーシング28に配設されるシャッター板29とを備える。
【0022】
ケーシング28は、前記シリンダボディ12が結合されるボディ30と、該ボディ30を前記シリンダボディ12とは反対側から覆うようにしてボディ30に締結されるカバー部材31とから成り、カバー部材31は、ケーシング28の、乗員と向き合う外壁として機能し、その正面が操作面となる。このケーシング28には、メカニカルキー挿入孔27を閉じる閉じ位置(
図4で示す位置)ならびにメカニカルキー挿入孔27を開放する開き位置間で、
図4の矢印で示す回動方向32に回動することを可能としたシャッター板29が配設されており、このシャッター板29はボディ30およびカバー部材31間に配置される。
【0023】
カバー部材31は、ボディ30の前記シリンダ錠11とは反対側の一部を嵌合させるようにして該ボディ30を覆うものであり、メカニカルキー挿入孔27の軸線と直交する方向に長い略長方形の椀状に形成される。
【0024】
このカバー部材31の長手方向の一端部の幅方向中央部には第1のボス部31aが形成され、カバー部材31の長手方向他端寄りの中間両側部には第2および第3のボス部31b,31cが一体に形成される。一方、ボディ30の外周には、第1~第3のボス部31a,31b,31cを当接させる第1~第3の支持部30a,30b,30cが一体に形成されており、第1~第3の支持部30a~30cに前記シリンダ錠11側から挿通されるねじ部材33(
図3参照)が第1~第3のボス部31a~31cにねじ込まれることによってボディ30にカバー部材31が締結される。
【0025】
メカニカルキー挿入孔27は、前記シリンダ錠11内に通じ得るようにしてボディ30に設けられる円形の内部孔34と、該内部孔34に対応してカバー部材31に設けられる円形の外部孔35とで構成され、シャッター板29は、前記内部孔34および前記外部孔35間に介在することでメカニカルキー挿入孔27を閉じることになる。
【0026】
カバー部材31の外面にはリング状の標示シート36が貼着され、この標示シート36には、メカニカルキー挿入孔27に挿入されるメカニカルキー14の複数の回動操作位置が、メカニカルキー挿入孔27の周囲に間隔をあけて表示される。
【0027】
ケーシング28には、メカニカルキー挿入孔27へのメカニカルキー14の挿入方向と平行な方向に押圧操作することを可能とした操作部材41が支承される。ケーシング28におけるカバー部材31には、メカニカルキー挿入孔27と平行な軸線を有する貫通孔42が、前記シリンダ錠11の前記シリンダボディ12にケーシング28が取付けられた状態でメカニカルキー挿入孔27の斜め上方に位置するようにして設けられ、ケーシング28におけるボディ30には、前記貫通孔42に同軸に対応する支持筒部43が一体に形成されるとともに、前記支持筒部43の外周のうちメカニカルキー挿入孔27側のほぼ半周を臨ませる円弧孔44が形成される。
【0028】
操作部材41は、実施形態では概略円柱形の棒状に形成されており、この操作部材41の一端部411(即ち先部)は、少なくともシャッター板29を前記開き位置とした状態でケーシング28の外面から突出するものであり、この実施の形態では、シャッター板29の回動位置にかかわらずケーシング28におけるカバー部材31の外面から操作部材41の一端部411が突出する。
【0029】
而して操作部材41の一端部411は、カバー部材31の前記貫通孔42を移動可能に且つ環状の微小間隙を介して貫通してカバー部材31の外面から突出され、操作部材41の他端部412(即ち基部)は前記支持筒部43に摺動可能に嵌入される。しかも操作部材41の他端部412には、前記円弧孔44に配置される押圧部45が、前記支持筒部43に設けられて軸方向に延びるスリット47に配置される連結腕部46を介して一体に連結されており、操作部材41はその軸線まわりに回動することを不能としてケーシング28に支承される。
【0030】
而して、操作部材41は、カバー部材31の外面から一端部411(即ち先部)が突出する突出位置41A(
図9及び
図11(A)を参照)と、その突出位置41Aから所定量押し込まれた押込位置41B(
図10及び
図11(B)を参照)との間を移動可能としてケーシング28に支承される。
【0031】
また操作部材41の他端部412およびボディ30間には、コイル状の第1ばね48が縮設される。操作部材41は第1ばね48のばね力で該操作部材41の一端部411をカバー部材31から突出させる方向にばね付勢されており、第1ばね48によるばね付勢方向での操作部材41の移動限界位置が前記突出位置41Aであり、この突出位置41Aは、
図11(A)で明らかなように、前記押圧部45がカバー部材31の内面に当接することで規制される。そして、第1ばね48は、操作部材41に対する戻しばねとして機能し、具体的には前記突出位置41Aの側(即ち戻り方向)に付勢する。
【0032】
ところで操作部材41は、これの前記押込位置41Bでケーシング28外に露出する前記一端部411(即ち先部)の外面に、操作部材41の押込位置41Bからの戻り動作が不調な場合に操作部材41を突出位置41Aまで引き戻せるように他物又は使用者の手の指を係合可能な被係合部としての係止溝41gを有している。ここで「他物」とは、使用者が手で保持可能であって上記引き戻し操作に使用できるような、操作部材41以外の物であればよく、例えば、先細り部分を有した器具T(より具体的にはドライバー、キーホルダ等)又は紐状部材等も含まれる。
【0033】
この係止溝41gは、実施形態では操作部材41の一端部411(先部)の外周面にその全周に亘って延びる環状溝で構成されるが、その一端部411(先部)の外周面の周方向の一部領域に延びる溝で構成されてもよい。
【0034】
かくして、この係止溝411の特設によれば、後述するように、操作部材41の、押込位置41Bから突出位置41Aへの戻りが不調の場合には、係止溝41gに他物(即ち前記器具T又は前記紐状部材)又は使用者の手の指を掛けるように係合させて、操作部材41を突出方向に引き出すことで突出位置41Aまで引き戻すことができる。
【0035】
またボディ30の、カバー部材31の裏面への対向面には、シャッター板29をその回動時に摺接させる摺接支持部49が突設され、該摺接支持部49は、前記シリンダボディ12へのケーシング28の取り付け状態で前記摺接支持部49の一部が前記内部孔34の上下に配置されるように形成される。
【0036】
シャッター板29は、前記内部孔34および前記外部孔35間に介在してメカニカルキー挿入孔27を閉じ得るようにしつつ前記摺接支持部49に摺接する平板状の蓋部29aと、この蓋板部29aから操作部材41側に延出する支持腕部29bと、前記蓋板部29aから前記支持腕部29bと反対側に突出する突部29cとを一体に有する。
【0037】
しかも前記支持腕部29bには受圧部50が一体に連設されており、この受圧部50は、操作部材41の他端側に一体に連設された前記押圧部45に操作部材41の周方向で対向するようにして前記円弧孔44に配置される。
【0038】
前記支持腕部29bの先端部には、操作部材41を挿通させる支持孔51が設けられており、シャッター板29は、前記閉じ位置および前記開き位置間での回動を可能として操作部材41に軸支されることになる。
【0039】
ケーシング28におけるボディ30の前記支持筒部43と、シャッター板29との間には、操作部材41を囲繞するねじりばねである第2ばね52が設けられており、この第2ばね52の一端部は前記支持筒部43に設けられたスリット状の係合孔53に係合され、第2ばね52の他端部はシャッター板29の前記支持腕部29bに一体に連設される前記受圧部50に係合され、シャッター板29は、第2ばね52のばね力によって前記開き位置側に向けて回動付勢されることになる。
【0040】
図6を併せて参照して、前記保護装置13は、シャッター板29を前記閉じ位置に規制する規制状態ならびに前記閉じ位置から前記開き位置へのシャッター板29の作動を許容する規制解除状態を切換え可能とした作動規制機構55を備えており、この作動規制機構55は、シャッター板29が一体に有する前記突部29cと、該突部29cに前記開き位置側から係合し得る規制部材56と、ケーシング28のボディ30および前記規制部材56間に縮設されるコイル状の第3ばね57とで構成される。
【0041】
前記規制部材56は、メカニカルキー挿入孔27に関して操作部材41とは反対側に配置されるものであり、メカニカルキー挿入孔27の軸線方向と平行な方向に長く延びる軸部56aと、該軸部56aのカバー部材31側の端部からメカニカルキー挿入孔27側に延びる連結腕部56bと、前記軸部56aと平行な軸線を有しつつ前記連結腕部56bの先端部に連結される円板部56cと、シャッター板29の前記突部29cに前記開き位置側から係合することを可能として前記円板部56cからメカニカルキー挿入孔27側に突出する規制突部56dと、前記規制突部56dとは異なる方向で前記軸部56aのカバー部材31とは反対側の端部に突設される第1係合突部56eとを一体に有するように形成される。
【0042】
この規制部材56は、閉じ位置に在るシャッター板29の前記突部29cに前記規制突部56dを当接させてシャッター板29を閉じ位置に規制する規制位置と、前記突部29cへの前記規制突部56dの当接を解除して前記閉じ位置から前記開き位置へのシャッター板29の移動を許容する規制解除位置との間で、操作部材41の移動方向と平行な方向に移動することを可能として、ケーシング28のボディ39に支承され、第3ばね57は前記規制位置側に前記規制部材56を付勢するばね力を発揮する。
【0043】
前記シリンダボディ12へのケーシング28の取り付け状態でメカニカルキー挿入孔27の下方に位置する横断面矩形かつ有底のスライド支持孔58が、カバー部材31の裏面側に対向して開口するとともにメカニカルキー挿入孔27の軸線に沿う方向に延びるようにしてボディ30に設けられ、カバー部材31には、前記スライド支持孔58に対応した長方形状の挿入孔60が設けられる。またメカニカルキー挿入孔27の軸線方向と平行な方向への前記規制部材56の移動をガイドするガイド孔59が、前記摺接支持部49の一部を切欠くとともに前記スライド支持孔58に連なるようにしてボディ30に設けられる。
【0044】
図3に注目して、カバー部材31の裏面には、前記挿入孔60を内方側から閉じる蓋部材61が支軸62を介して回動可能に支承されており、この蓋部材61は第4ばね63によって閉じ側に付勢される。
【0045】
また前記保護装置13は、規制状態にある前記作動規制機構55を規制解除状態に切換え得る解除機構65を備えるものであり、この解除機構65の一部は、前記マグネットキー17によって解錠するマグネット錠66で構成される。
【0046】
前記マグネット錠66は、ケーシング28のボディ30に配設されており、ケーシング28のボディ30で回動可能に支承されるロータ67を備える。
【0047】
ロータ67は、円形の皿状部67aと、該皿状部67aの開口端から半径方向外方に張り出す鍔部67bと、その鍔部67bの周方向1箇所から外側方に延びる連結腕部67cと、該連結腕部67cの外端から前記皿状部67aと同一側に突出する第2係合突部67dとを一体に有し、非磁性材料によって形成される。
【0048】
ケーシング28のボディ30には、ロータ67の鍔部67bおよび前記連結腕部67cを回動可能に嵌合させる嵌合凹部68と、該嵌合凹部68に外端を開口するとともに前記スライド支持孔58のシャッター板29とは反対側の側面に内端を開口させてロータ67の前記皿状部67aを回動可能に嵌合する円形の嵌合孔69と、前記第2係合突部67dが挿入されるようにして前記嵌合凹部68に外端を開口するとともに前記スライド支持孔58のシャッター板29とは反対側の側面に内端を開口させた長孔70とが設けられており、前記長孔70は、前記嵌合凹部68および前記嵌合孔69内でのロータ67の回動を許容するようにして該ロータ67の回動軸線を中心とした円弧状に形成される。
【0049】
前記嵌合凹部68は、ロータ67の前記皿状部67a内に嵌合してロータ67の回動を支持する支持突部71aを一体に有するとともにねじ部材72でボディ30に締結される蓋部材71で閉じられており、前記支持突部71aの基部およびロータ67間にOリング73が介装される。
【0050】
前記支持突部71aの先端部には、マグネットから成る複数個たとえば3個のピン74がロータ67における前記皿状部67aの閉塞端内面に設けられる4つの係止凹部75のうちの3つに係合する位置ならびにその係合を解除する位置間での移動を可能として摺動可能に嵌合されており、各ピン74は、個別に対応したコイルばねである第5ばね76(
図3参照)によってロータ67に係合する側に弾発付勢される。
【0051】
3つの前記ピン74は、ロータ67における前記皿状部67aの閉塞端外面に、前記マグネットキー17が対向配置されたときに、該マグネットキー17が有する3つのマグネット23に対応する位置に配置されるようにして前記係止凹部75に嵌合される。しかも前記マグネットキー17における前記マグネット23の前記マグネット錠66側の極と同一極が前記係止凹部75の内端側に配置されるようにして、前記ピン74が配置されており、ロータ67における前記皿状部67aの閉塞端外面に対向する位置に正規のマグネットキー17を配置することで第5ばね76の弾発付勢力に抗して前記ピン74をロータ67との係合を解除する側に移動させることができ、それによってロータ67の回動が許容されることになる。
【0052】
ケーシング28におけるボディ30の前記スライド支持孔58には、前記マグネットキー17の前記キー本体18をケーシング28の前記挿入孔60に挿入するのに応じて該キー本体18とともに移動するスライド部材78がスライド可能に収容されており、前記解除機構65は、前記マグネット錠66と、スライド部材78と、該スライド部材78に収容される可動係合部材79と、スライド部材78および可動係合部材79間に設けられるコイル状の第6ばね80とで構成される。
【0053】
図7を併せて参照して、スライド部材78は、スライド支持孔58のシャッター板29側の側面に摺接する第1側壁部78aと、スライド支持孔58のシャッター板29とは反対側の側面に摺接するようにして第1側壁部78aに対向する第2側壁部78bと、スライド支持孔58の横断面形状における長手方向一端側で第1および第2側壁部78a,78b間を連結する第1連結壁部78cと、スライド支持孔58の横断面形状における長手方向他端側で第1および第2側壁部78a,78b間を連結して第1連結壁部78cに対向する第2連結壁部78dと、スライド支持孔58の内端側で第1側壁部78a、第2側壁78b、第1連結壁部78cおよび第2連結壁部78dを連結する端壁部78eとを一体に有するように形成され、このスライド部材78には、前記蓋部材71をあけてカバー部材31の前記挿入孔60から前記マグネットキー17のキー本体18を挿入するための有底のマグネットキー挿入孔81が、略矩形の横断面形状を有するようにして形成される。
【0054】
前記マグネットキー挿入孔81に挿入される前記キー本体18の先端部は、前記端壁部78eに当接されるものであり、前記キー本体18を押し込むことでスライド部材78はスライド支持孔58内をスライド移動する。しかもこのスライド部材78の第1および第2連結壁部78c,78dと、スライド支持孔58の閉塞端との間には、コイルばねである第7ばね82がそれぞれ縮設されており、スライド部材78はカバー部材31に近接する側にばね付勢されている。
【0055】
スライド部材78の第2側壁部78bには、前記マグネットキー挿入孔81に挿入されたマグネットキー17を前記マグネット錠66側に臨ませる窓83が形成されており、スライド部材78は、前記キー本体18の挿入に応じて該マグネットキー17とともに移動して前記マグネット錠66におけるロータ67の閉塞端外面に前記マグネットキー17を対向させることで該マグネット錠66を解錠する解錠位置までの前記マグネットキー17の挿入操作を可能とするだけでなく、前記解錠位置から前記キー本体18をさらに押し込むことによる押し込み位置までの移動が可能である。
【0056】
スライド部材78の第2連結壁部78dには、前記規制部材56が一体に有する第1係合突部56eと、ロータ67が一体に有する第2係合突部67dとを両側から突入させる収容孔84が、スライド支持孔58のシャッター板29側の側面ならびにシャッター板29とは反対側の側面に向かって開口しつつ、スライド支持孔58の延出方向両端を閉じるようにして設けられており、可動係合部材79および前記第6ばね80は前記収容孔84内に収容される。
【0057】
可動係合部材79は、前記マグネット錠66の鎖錠状態ではロータ67で移動が規制されるようにしつつ該ロータ67が有する前記第2係合突部67dに係合されてスライド部材78に保持され、第6ばね80は、スライド部材78の前記押し込み位置側への移動に応じてロータ67を回動駆動する側に可動係合部材79を押圧する弾発力を発揮するようにしてスライド部材78および可動係合部材79間に設けられ、この第6ばね80のばね荷重は第3ばね58のばね荷重よりも大きく設定される。
【0058】
可動係合部材79は、ロータ67が有する第2係合突部67dを係合させる係止溝85を有してロータ67の前記連結腕部67c側に開放した略C字状に形成される可動係合部材主部79aと、前記規制部材56が有する第1係合突部56eにカバー部材31側から係合するようにして可動係合部材主部79aから突出される第3係合突部79bとを一体に有するように形成される。また第6ばね80の可動係合部材79側の端部を受けるための円形の受け凹部86が可動係合部材主部79aに形成される。
【0059】
正規のマグネットキー17の前記キー本体18をスライド部材78のマグネットキー挿入孔81に挿入して押し込むと、解錠位置で前記マグネット錠66が解錠することでロータ67の回動が許容されることになり、前記キー本体18とともにスライド部材78を前記解錠位置からさらに押し込むと、スライド部材78の移動による押圧力が第6ばね80および可動係合部材79を介してロータ67の連結腕部67cに伝達され、
図8で示すように、可動係合部材79が移動するとともにロータ67が回動し、第3ばね57で規制位置側に付勢された前記規制部材56の第1係合突部56eに可動係合部材79の第3係合突部79bが係合していることによって前記規制部材56が規制解除位置に強制的に駆動され、
図9で示すように、シャッター板29の前記突部29cへの前記規制突部56dの係合が解除されるので規制部材56によるシャッター板29の閉じ位置への規制が解除され、シャッター板29は第2ばね52のばね付勢力で開き位置に移動することになる。
【0060】
また前記保護装置13は、操作部材41およびシャッター板29間に設けられる連動駆動機構88を備えており、この連動駆動機構88は、シャッター板29が前記開き位置にある状態で、前記突出位置41Aに存する操作部材41をその突出位置41Aから所定量押し込まれた押込位置41Bまで、メカニカルキー挿入孔27へのメカニカルキー14の挿入方向と平行な方向に押圧操作することで、その押圧操作に連動させてシャッター板29を前記開き位置から前記閉じ位置に駆動する。
【0061】
この実施の形態で前記連動駆動機構88は、操作部材41に一体に設けられる押圧部45に操作部材41の他端側(カバー部材31とは反対側)に臨むようにして形成される押圧カム面89と、シャッター板29に一体に設けられる受圧部50に押圧カム面89に対向するようにして形成される受圧カム面90とで構成される。
【0062】
押圧カム面89は、シャッター板29の回動方向32で閉じ位置側に進むにつれて操作部材41の一端側(カバー部材31側)に位置するようにして螺旋状に形成されるものであり、前記受圧カム面90も押圧カム面89に対応して螺旋状に形成され、シャッター板29が前記開き位置にある状態では、
図9で示すように押圧カム面89および前記受圧カム面90は相互に当接もしくは近接対向している。
【0063】
このような連動駆動機構88では、シャッター板29が開き位置にある状態で操作部材41を押圧操作するのに応じて、
図10で示すように、押圧カム面89からの押圧力が前記受圧カム面50に作用してシャッター板29が閉じ位置側に回動駆動されることになる。
【0064】
ところでシャッター板29が前記開き位置から前記閉じ位置に回動する際に、シャッター板29の前記突部29cは、規制位置側に向けて第3ばね57で付勢された前記規制部材56の規制突部56dを乗り越えるものであり、その際の乗り越え作動を円滑とするために、前記規制突部56dのカバー部材31側に臨む面の前記回動方向32に沿う少なくとも開き位置側の部分には、前記開き位置側に向かうにつれてカバー部材31から遠くなるように傾斜した傾斜面91が形成され、前記突部29cのカバー部材31とは反対側に臨む面には、前記傾斜面91に対応して前記開き位置側に向かうにつれてカバー部材31から遠くなるように傾斜した傾斜面92が形成される。
【0065】
次に第1実施形態の作用について説明する。本実施形態では、メカニカルキー挿入孔27へのメカニカルキー14の挿入方向と平行な方向に押圧操作することを可能とした操作部材41が、少なくともシャッター板29を開き位置とした状態、この実施の形態ではシャッター板29の作動位置にかかわらずケーシング28におけるカバー部材31の外面から操作部材41の一端部411(即ち先部)を突出させるようにしてケーシング28に支承され、シャッター板29を操作部材41の前記押圧操作に連動させて前記開き位置から前記閉じ位置に駆動する連動駆動機構88が、操作部材41およびシャッター板29間に設けられる。
【0066】
これにより、開き位置に在るシャッター板29を閉じ位置側に動かすときには、ケーシング28の外面から一端部411を突出させている操作部材41を押し込み操作すればよく、ケーシング28に、従来のような円弧状の開口部を設ける必要がなく、ケーシング28のデザイン上の自由度が増大し、しかも操作部材41の外周およびケーシング28間のシールだけを考慮すればよいので防塵、防水構造上も有利となる。
【0067】
また第1実施形態では、シャッター板29は、前記閉じ位置および前記開き位置間での回動を可能として操作部材41に軸支されるので、シャッター板29および操作部材41をコンパクトに纏めて配置できる。更にシャッター板29を閉じ位置に規制する規制状態ならびに前記閉じ位置から開き位置へのシャッター板29の作動を許容する規制解除状態を切換え可能とした作動規制機構55を、その規制状態から規制解除状態に切換え得る解除機構65の一部が、マグネットキー17によって解錠するマグネット錠66で構成されるので、解除機構65のコンパクト化が可能となる。
【0068】
また第1実施形態では、シャッター板29が開き位置にあり且つ操作部材41が突出位置41Aにある状態(
図9参照)から、操作部材41が
図10に示す如く押込位置41Bまで押し込まれると、これに連動して
図6に示す如くシャッター板29が閉じ位置に移動し且つ作動規制機構55が規制状態に切換えられるのに応じて、操作部材41が第1ばね48の付勢力で押込位置41Bから突出位置41Aへ自動的に戻り動作する。
【0069】
ところで操作部材41と、これが貫通するカバー部材31(即ちケーシング外壁)の貫通孔42との間には僅かな環状クリアランスが存在する。そのため、例えば粉塵が多い地域では上記クリアランスに細かい異物(例えば砂や埃等)が詰まって、操作部材41の押込位置41Bから突出位置41Aへの戻り動作が阻害される虞れがあり、この場合には、シャッター板29を開き状態に維持できても、操作部材41が押込位置41Bのままであると次に操作部材41の押圧操作でシャッター板29を閉鎖できないため、第三者によるシリンダ錠11の不正アタックが容易な状態となる不具合がある。
【0070】
これに対し、第1実施形態の操作部材41は、これの押込位置41Bでケーシング28外に露出する一端部411(即ち先部)の外周面に、操作部材41の押込位置41Bからの戻り動作が不調な場合に操作部材41を突出位置41Aまで引き戻せるように他物(例えば前記したドライバー、キーホルダ等の器具T、又は紐状部材)或いは使用者の手の指を係合可能な被係合部としての係止溝41gを有している。従って、操作部材41の、押込位置41Bから突出位置41Aへの戻りが不調の場合に、係止溝41gに対し他物(例えば前記器具T又は紐状部材)或いは手の指を係合させて、操作部材41を突出位置40Bまで引き出し可能としている。
【0071】
これにより、上記クリアランスに細かい異物が詰まって操作部材41の上記戻り動作が阻害される場合には、操作部材41の一端部411(即ち先部)の外周面の被係合部、即ち係止溝41gに対し、例えば
図11(B)に示すように上記器具Tの先細り部分を掛けたり、或いは不図示の紐状部材を掛けたり、或いはまた不図示の手の指を掛けたりする等して、押込位置41Bの操作部材41を突出位置41Aまで容易に引き出すことができるため、操作部材41が押込位置41Bのまま戻らない場合の上記不具合を簡単な構造・操作で回避可能となる。
【0072】
従って、シャッター板29が開き位置に維持された状態から操作部材41を随時に押込操作することでシャッター板29を的確に閉鎖可能となるため、第三者によるシリンダ錠11の不正アタックを確実に防止することができる。
【0073】
その上、操作部材41の引き戻し用の前記被係合部は、操作部材41の一端部411(即ち先部)の外周面に設けた係止溝41gで構成されるので、被係合部の特設に当たっては、操作部材41の一端部411(即ち先部)の外周面に単に係止溝41gを形成するだけでよく、加工性が良好である。また操作部材41の先端面には被係合部を設ける必要はないため、被係合部が押込操作性に阻害する虞れもない。
【0074】
また
図12には、本発明の第2実施形態が示される。第2実施形態では、操作部材41の一端部411(即ち先部)の外周面に、第1実施形態の係止溝41gに代えて、係止突起41tを設けて、これを操作部材41の引き戻し用の被係合部として機能させる。即ち、操作部材41の前記戻り動作が不調な場合には、被係合部としての係止突起41tに対し他物(例えば前記器具T又は紐状部材)或いは手の指を係合させて、押込位置41Bの操作部材41を突出位置41Aまで容易に引き出すことができる。
【0075】
第2実施形態の被係合部以外の構造は第1実施形態と同様であるので、第2実施形態の各構成要素には、第1実施形態の対応する構成要素と同じ参照符号を付すにとどめ、それ以上の構造説明は省略する。また第2実施形態は、第1実施形態と基本的に同等の作用効果を達成可能である。
【0076】
しかも第2実施形態では、操作部材41の引き戻し用の被係合部は、操作部材41の一端部411(即ち先部)の外周面に設けた係止突起41tで構成されるので、被係合部の特設に当たっては、操作部材41の一端部411(即ち先部)の外周面に単に係止突起41tを形成するだけでよく、加工性が良好である。
【0077】
尚、第2実施形態では、被係合部としての係止突起41tが、操作部材41の一端部411(即ち先部)の外周面にその全周に亘って延びる環状突起で構成されるが、その一端部411の外周面の周方向の一部領域にのみ係止突起41tを設けてもよい。
【0078】
また
図13には、本発明の第3実施形態が示される。第3実施形態では、操作部材41の一端部411(即ち先部)の外周面に、第1実施形態の係止溝41gに代えて、係止段部41sを設けて、これを操作部材41の引き戻し用の被係合部として機能させる。即ち、操作部材41の前記戻り動作が不調な場合には、被係合部としての係止段部41sに対し他物(例えば前記器具T又は紐状部材)或いは手の指を係合させて、押込位置41Bの操作部材41を突出位置41Aまで容易に引き出すことができる。
【0079】
第3実施形態の被係合部以外の構造は第1実施形態と同様であるので、第3実施形態の各構成要素には、第1実施形態の対応する構成要素と同じ参照符号を付すにとどめ、それ以上の構造説明は省略する。また第3実施形態は、第1実施形態と基本的に同等の作用効果を達成可能である。
【0080】
しかも第3実施形態では、操作部材41の引き戻し用の被係合部は、操作部材41の一端部411(即ち先部)の外周面に設けた係止段部41sで構成されるので、被係合部の特設に当たっては、操作部材41の一端部411(即ち先部)の外周面に単に係止段部41sを形成するだけでよく、加工性が良好である。
【0081】
尚、第3実施形態では、被係合部としての係止段部41sが、操作部材41の一端部411(即ち先部)の外周面にその全周に亘って延びる環状段部で構成されるが、その一端部411の外周面の周方向の一部領域にのみ係止段部41sを設けてもよい。
【0082】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明を逸脱することなく種々の設計変更を行うことが可能である。
【0083】
たとえば解除機構の一部をシリンダ錠で構成することもでき、また遠隔操作によって作動するアクチュエータを含むように解除機構を構成することも可能である。
【0084】
また前記実施形態では、前記特許文献1と同様に、シャッター板閉鎖用の操作部材41が押込位置41Bまで押し込まれるのに連動してシャッター板41が閉じ位置に向かって作動し且つ作動規制機構55が規制状態に切換えられるのに応じて、操作部材41が第1ばね48の付勢力で押込位置41Bから突出位置41Aへ戻り動作するように構成されたシリンダ錠の保護装置を例示したが、その戻り動作のメカニズムは、前記実施形態に限定されない。
【0085】
例えば、前記特許文献2の如く、操作部材(5) の押込位置への押込みに連動して規制状態となった作動規制機構(7a,2aa)が解除機構(6) により規制解除状態に切換えられてシャッター板(2) が閉じ位置から開き位置へ作動するのに応じて、操作部材(5)が戻しばね(4) の付勢力で押込位置から突出位置へ戻り動作するように構成されたシリンダ錠の保護装置に本発明を適用してもよい。
【0086】
また前記実施形態では、操作部材41の押込位置41Bからの戻り動作が不調の場合に、操作部材41の引き戻しのために他物(例えば前記器具T又は紐状部材)或いは手の指を係合可能な被係合部(例えば係止溝41g、係止突起41t、係止段部41s)を、操作部材41の一端部411(即ち先部)の外周面に設けたものを示したが、操作部材41における被係合部の配設部位は、実施形態に限定されない。例えば、操作部材41の先端面(即ち押圧面)に、操作部材41の引き戻しのために他物(例えば前記器具T又は紐状部材)或いは手の指を係合させ得る被係合部を設けてもよく、この場合、その被係合部は、操作部材41の先端面(押圧面)の特に外周縁部又はその近傍に配設すれば、操作部材41に対する押込操作を行う場合に被係合部が邪魔になる虞れはない。
【符号の説明】
【0087】
T・・・・他物としての器具
11・・・シリンダ錠
14・・・メカニカルキー
17・・・マグネットキー
27・・・メカニカルキー挿入孔
28・・・ケーシング
29・・・シャッター板
31・・・ケーシングの外壁としてのカバー部材
41・・・操作部材
411・・操作部材の先部としての一端部
41g,41t,41s・・被係合部としての係止溝,係止突起,係止段部
41A,41B・・突出位置,押込位置
42・・・貫通孔
48・・・戻しばねとしての第1ばね
55・・・作動規制機構
65・・・解除機構
88・・・連動駆動機構
66・・・マグネット錠