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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024124694
(43)【公開日】2024-09-13
(54)【発明の名称】編地の編成方法、および編地
(51)【国際特許分類】
   D04B 1/24 20060101AFI20240906BHJP
   D04B 1/00 20060101ALI20240906BHJP
【FI】
D04B1/24
D04B1/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023032558
(22)【出願日】2023-03-03
(71)【出願人】
【識別番号】000151221
【氏名又は名称】株式会社島精機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100100147
【弁理士】
【氏名又は名称】山野 宏
(72)【発明者】
【氏名】上道 和也
【テーマコード(参考)】
4L002
【Fターム(参考)】
4L002BA00
4L002BA01
4L002BA02
4L002BB03
4L002EA00
4L002FA01
4L002FA02
(57)【要約】
【課題】積層部の幅および積層部の数によらず編地を編成できる編地の編成方法を提供する。
【解決手段】第一編地部を編成する工程Aと、前記第一編地部の編幅方向に隣接する位置、または前記第一編地部の編成範囲に重なる位置で第二編地部を編成する工程Bと、前記第二編地部の編成範囲に重なる位置で第三編地部を編成する工程Cと、を備える編地の編成方法である。前記工程Aでは、前記第一編地部の第一側端につながる第一増し目を編成する。前記工程Bでは、前記第一側端に近接する前記第二編地部の第二側端と前記第一増し目とを順次重ねて接合すると共に、前記第二側端につながる第二増し目を編成する。前記工程Cでは、前記第二側端に近接する前記第三編地部の第三側端と前記第二増し目とを順次重ね合わせて接合する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一針床と第二針床とを備え、前記第一針床と前記第二針床とが相対的にラッキング可能で、前記第一針床と前記第二針床との間で目移しが可能な横編機を用いて、複数の編地部が層状に重なった積層部を有する編地を編成する編地の編成方法において、
前記積層部の基点となる第一編地部を編成する工程Aと、
前記第一編地部の編幅方向に隣接する位置、または前記第一編地部の編成範囲に重なる位置で第二編地部を編成する工程Bと、
前記第一針床における前記第二編地部の編成範囲に重なる位置で第三編地部を編成する工程Cと、を備え、
前記工程Aでは、前記第一編地部の第一側端を構成する少なくとも一部の編目のそれぞれにつながる第一増し目を編成し、
前記工程Bでは、前記第一側端に近接する前記第二編地部の第二側端が前記第一側端に相対的に近づくように前記第二編地部をラッキングによって移動させて前記第二編地部を編成することで、前記第二側端を構成する少なくとも一部の編目と前記第一増し目とを順次、目移しによって重ねて接合すると共に、前記第二側端の少なくとも一部の編目のそれぞれにつながる第二増し目を編成し、
前記工程Cでは、前記第二側端に近接する前記第三編地部の第三側端が前記第二側端に相対的に近づくように前記第三編地部をラッキングによって移動させて前記第三編地部を編成することで、前記第三側端を構成する少なくとも一部の編目と前記第二増し目とを順次、目移しによって重ね合わせて接合する、
編地の編成方法。
【請求項2】
さらに、前記第三編地部の編幅方向に隣接する位置、または前記第三編地部の編成範囲に重なる位置で第四編地部を編成する工程Dを備え、
前記工程Cではさらに、前記第三側端を構成する少なくとも一部の編目のそれぞれにつながる第三増し目を編成し、
前記工程Dでは、前記第三側端に近接する前記第四編地部の第四側端が前記第三側端に相対的に近づくように前記第四編地部をラッキングによって移動させて前記第四編地部を編成することで、前記第四側端を構成する少なくとも一部の編目と前記第三増し目とを順次、目移しによって重ね合わせて接合する、請求項1に記載の編地の編成方法。
【請求項3】
前記工程Bにおいて、前記第二増し目は、前記第二編地部における前記第二編地部の相対的な移動方向側で編成される、請求項1または請求項2に記載の編地の編成方法。
【請求項4】
前記工程Bにおいて、前記第二増し目は、前記第二編地部における前記第二編地部の相対的な移動方向と反対方向側で編成される、請求項1または請求項2に記載の編地の編成方法。
【請求項5】
第一編地部と、
前記第一編地部の編幅方向に並列する、または前記第一編地部の厚さ方向に重なった第二編地部と、
前記第二編地部の厚さ方向に重なった第三編地部と、を備え、
さらに、前記第一編地部の第一側端と、前記第二編地部の第二側端と、前記第三編地部の第三側端とが無縫製でつながった接合部を備え、
前記第一編地部の編目の向きと、前記第二編地部の編目の向きとが同じ、または逆向きであり、
前記第二編地部の編目の向きと、前記第三編地部の編目の向きとが逆向きである、
編地。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、編地の編成方法、および編地に関する。
【背景技術】
【0002】
横編機を用いて、複数の編地部が層状に重なった積層部を有する編地を編成することが行われている。例えば、特許文献1は、大きな筒状編地を編成した後、筒状編地の一部をS状またはZ状に折り返して接合することでプリーツを形成する技術を開示する。プリーツは、三つの編地部が層状に重なった積層部である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-189925号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、積層部の幅、または編地における積層部の数が多くなると、最初に形成する筒状編地の筒径が大きくなりすぎて、編成のための編針が足らなくなる恐れがある。
【0005】
本発明の目的の一つは、編成のための編針が不足することなく編地を編成できる編地の編成方法を提供することにある。本発明の目的の一つは、積層部を備える編地を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
<1>本発明の編地の編成方法は、
第一針床と第二針床とを備え、前記第一針床と前記第二針床とが相対的にラッキング可能で、前記第一針床と前記第二針床との間で目移しが可能な横編機を用いて、複数の編地部が層状に重なった積層部を有する編地を編成する編地の編成方法において、
前記積層部の基点となる第一編地部を編成する工程Aと、
前記第一編地部の編幅方向に隣接する位置、または前記第一編地部の編成範囲に重なる位置で第二編地部を編成する工程Bと、
前記第一針床における前記第二編地部の編成範囲に重なる位置で第三編地部を編成する工程Cと、を備え、
前記工程Aでは、前記第一編地部の第一側端を構成する少なくとも一部の編目のそれぞれにつながる第一増し目を編成し、
前記工程Bでは、前記第一側端に近接する前記第二編地部の第二側端が前記第一側端に相対的に近づくように前記第二編地部をラッキングによって移動させて前記第二編地部を編成することで、前記第二側端を構成する少なくとも一部の編目と前記第一増し目とを順次、目移しによって重ねて接合すると共に、前記第二側端の少なくとも一部の編目のそれぞれにつながる第二増し目を編成し、
前記工程Cでは、前記第二側端に近接する前記第三編地部の第三側端が前記第二側端に相対的に近づくように前記第三編地部をラッキングによって移動させて前記第三編地部を編成することで、前記第三側端を構成する少なくとも一部の編目と前記第二増し目とを順次、目移しによって重ね合わせて接合する。
【0007】
ここで、ラッキングによる相対的な編地部の移動に関し、第一編地部と第二編地部とを例にして説明する。まず、針床上で第一編地部の右側に並列して第二編地部を編成する場合、第一編地部の右側端が第一側端、第二編地部の左側端が第二側端である。この場合、ラッキングによって第一編地部を右方向に移動させても、ラッキングによって第二編地部を左方向に移動させても、第一側端と第二側端とが近づく。その他、左側端が第一側端である第一編地部に重複して第二編地部を編成する場合、第二編地部の左側端が第二側端である。この場合、ラッキングによって第一編地部を右方向に移動させても、ラッキングによって第二編地部を左方向に移動させても、第一側端と第二側端とが近づく。このように、ラッキングによって第一編地部が移動する場合も、ラッキングによって第二編地部が移動する場合も、第一編地部から見れば第二側端が第一側端に近づくように第二編地部が相対的に移動している。
【0008】
<2>上記形態<1>の編地の編成方法の一形態として、
さらに、前記第三編地部の編幅方向に隣接する位置、または前記第三編地部の編成範囲に重なる位置で第四編地部を編成する工程Dを備え、
前記工程Cではさらに、前記第三側端を構成する少なくとも一部の編目のそれぞれにつながる第三増し目を編成し、
前記工程Dでは、前記第三側端に近接する前記第四編地部の第四側端が前記第三側端に相対的に近づくように前記第四編地部をラッキングによって移動させて前記第四編地部を編成することで、前記第四側端を構成する少なくとも一部の編目と前記第三増し目とを順次、目移しによって重ね合わせて接合しても良い。
【0009】
<3>上記形態<1>または<2>の編地の編成方法の一形態として、
前記工程Bにおいて、前記第二増し目は、前記第二編地部における前記第二編地部の相対的な移動方向側で編成されても良い。
【0010】
ここで、第二編地部の相対的な移動方向とは、第一編地部から見て第二編地部が移動する方向のことである。この点は、下記<4>の構成においても同様である。
【0011】
<4>上記形態<1>または<2>の編地の編成方法の一形態として、
前記工程Bにおいて、前記第二増し目は、前記第二編地部における前記第二編地部の相対的な移動方向と反対方向側で編成されても良い。
【0012】
<5>本発明の編地は、
第一編地部と、
前記第一編地部の編幅方向に並列する、または前記第一編地部の厚さ方向に重なった第二編地部と、
前記第二編地部の厚さ方向に重なった第三編地部と、を備え、
さらに、前記第一編地部の第一側端と、前記第二編地部の第二側端と、前記第三編地部の第三側端とが無縫製でつながった接合部を備え、
前記第一編地部の編目の向きと、前記第二編地部の編目の向きとが同じ、または逆向きであり、
前記第二編地部の編目の向きと、前記第三編地部の編目の向きとが逆向きである。
【発明の効果】
【0013】
上記形態<1>に記載される編地の編成方法では、第二編地部のウエール方向に続けて第三編地部を編成する際、第三編地部が第二編地部に重なるように編成している。つまり、第三編地部は、横編機の第一針床における第二編地部の編成領域で編成される。従って、第二編地部と第三編地部とが重なる積層部の幅、すなわち第二編地部と第三編地部とが重なる長さ、および編地における積層部の数にかかわらず、編地を編成できる。
【0014】
上記形態<2>に記載される編地の編成方法では、第一編地部と第二編地部と第三編地部とが重なった積層部、または第二編地部と第三編地部と第四編地部とが重なった積層部を備える編地を編成できる。
【0015】
上記形態<3>に記載される編地の編成方法によれば、第三編地部が第二編地部の裏面に重なるように編成される。第二編地部の裏面とは、第一針床で第二編地部が編成される際、第二針床を向く面である。
【0016】
上記形態<4>に記載される編地の編成方法によれば、第三編地部が第二編地部の表面に重なるように編成される。第二編地部の表面とは、第一針床で第二編地部が編成される際、第二針床に向かう面と反対側の面である。
【0017】
上記形態<5>に記載される編地は、第二編地部と第三編地部とが重なった部分を有し、かつ第一編地部が第二編地部に並列または重なった部分を有する。これらの部分を有する編地は、多様な外観を取り得る。編地のデザインは、第二編地部と第三編地部とが重なった部分の数および配置、並びに第一編地部が第二編地部に並列または重なった部分の数および配置によって、大きく変化する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、実施形態に係る編地であるスカートの概略図である。
図2図2は、図1のII-II断面の概略図である。
図3図3は、図1に示される第一プリーツの編成イメージ図である。
図4図4は、図1に示される第二プリーツの編成イメージ図である。
図5図5は、図1に示される第一プリーツの編成工程の第一図である。
図6図6は、図5に続く編成工程の第二図である。
図7図7は、図6に続く編成工程の第三図である。
図8図8は、図7に続く編成工程の第四図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、実施形態に係る編地の編成方法、および編地を図面に基づいて説明する。
【0020】
<実施形態1>
図1には、実施形態に係る編地100の一例であるプリーツ付きのスカートが示されている。スカートの上部には着用者の胴が通される開口部が形成され、スカートの下部には着用者の脚が通される開口部が形成されている。このスカートでは、スカートの一方の側部に編出し部100Sが形成され、他方の側部に編終り部100Eが形成されている。つまり、本例のスカートは、太線矢印の向き、すなわち横向きに編成される。このようなスカートは次のようにして編成される。横編機の前針床と後針床とに形成される編出し部100Sを編成した後、前針床と後針床とでスカートの前側部分100Fと後側部分100Bとを編成する。最後に、前側部分100Fと後側部分100Bとを伏目処理などで接合する。伏目処理された部分が編終り部100Eである。本例とは異なり、実施形態に係る編地の編成方法を身頃の編成に適用する場合、肩部において前身頃と後身頃とが閉じられるので、衿回りを除いて前身頃と後身頃とは一つの給糸口を用いてC字状に編成されても良い。
【0021】
本例のスカートは、第一プリーツ101と第二プリーツ102とを備える。第一プリーツ101は、編地100の一部がスカートの外側から内側に折り畳まれることで形成される積層部110である。第二プリーツ102は、編地100の一部がスカートの内側から外側に折り畳まれることで形成される積層部110である。スカートの上部には、折り畳まれた編地部が接合された接合部103が配置されている。図2のII-II断面図に示されるように、スカートの後側部分100Bにも第一プリーツ101と第二プリーツ102とが形成されている。以降の説明では、スカートの後側部分100Bの編成のみを説明する。
【0022】
本例のスカートの編成では、編出し部100Sを編成した後、編出し部100Sのウエール方向に続く第一ベース編地部5を編成する。第一ベース編地部5は、プリーツ101,102を除く部分、すなわち編地100における非積層部120である。非積層部120は、編地100が折り畳まれていない部分である。
【0023】
第一ベース編地部5の編成が終了したら、図3の編成イメージ図に示されるように、第一編地部1、第二編地部2、第三編地部3、第四編地部4、および第二ベース編地部6の順に編成する。図3は、第一プリーツ101をスカートの内部から見た図面である。第一編地部1と第二編地部2とが編幅方向に並列しており、第二編地部2と第三編地部3と第四編地部4とが厚さ方向に重ねられている。第二編地部2と第三編地部3と第四編地部4とが重ねられた積層部110によって第一プリーツ101が形成されている。第二ベース編地部6(図2を合わせて参照)は、第一プリーツ101のウエール方向に続けて形成されている。
【0024】
第一編地部1,第二編地部2、第三編地部3、および第四編地部4の具体的な編成手順を図5から図8の編成工程図に基づいて説明する。編成工程図における左欄の『S+数字』は編成工程の番号を示す。右欄には、横編機の針床上における編目の状態が示されている。右欄の黒点は編針を、丸マークは編目を、二重丸マークは重ね目を、Vマークは掛け目を、逆三角マークはヤーンフィーダー9を示す。各編成工程で実際に編成が行われた箇所は太線で示す。塗りつぶされた丸マークは、各編成工程で実際に編成された編目である。
【0025】
本例の横編機は、下部前針床と下部後針床と上部前針床と上部後針床とを備える4枚ベッド横編機である。各針床に備わる編針は、べら針でも良いし、複合針でも良い。以下、下部前針床、下部後針床、上部前針床、および上部後針床をそれぞれ、FD、BD、FU、およびBUと呼ぶ。FDとBDとは互いに向きあっている。FUとBUは、FDおよびBDの上方で互いに向き合っている。FDおよびFUと、BDおよびBUとは、相対的にラッキング可能に構成されている。ラッキングとは、針床の長さ方向に針床が移動することを意味する。本例では、BDおよびBUが第一針床、FDおよびFUが第二針床である。編目は、FDとBDとの間、FDとBUとの間、およびBDとFUとの間で目移しすることができる。編成工程図は編地100の後側部分100Bの編成のみを示しており、かつFDの図示を省略している。編成工程図には前側部分100Fの具体的な編成は示していないが、前側部分100Fは、後側部分100Bの編成と上下逆の編成によって形成している。前側部分100Fの編成においては、FDおよびFUが第一針床、BDおよびBUが第二針床である。前側部分100Fは主にFDで編成する。なお、本例の編地の編成方法は、2枚ベッド横編機で実施することもできる。その場合、編地100の各部は針抜き編成によって編成すれば良い。針抜き編成とは、隣接する編目の間に空針が配置された状態で編成を行うことである。
【0026】
図5のステップS0には、第一ベース編地部5の最終コースの編目がBDに係止された状態が示されている。このステップS0の状態から、第一ベース編地部5の一部の編目のウエール方向に続けて、BDで第一編地部1を編成する(工程A)。具体的には、ステップS1では、BDに係止される第一ベース編地部5の一部のウエール方向に続けて第一編地部1を編成し、その第一編地部1をFUに移動させる。ステップS1ではさらに、BDおよびBUを右方向に1ピッチラッキングさせる。
【0027】
ステップS2では、FUに係止される第一編地部1をBDに移動させ、ヤーンフィーダー9を左方向に移動させ、第一編地部1を1コース編成すると共に、第一編地部1の第一側端1Eを構成する端部編目につながる第一増し目11を編成する。第一側端1Eは、第一編地部1の編幅方向の端部である。すなわち、第一増し目11は第一側端1Eにつながる。本例の第一増し目11は掛け目である。本例とは異なり、第一増し目11は例えば割増やしによって編成されても良い。
【0028】
ステップS2の後、ステップS1とステップS2の編成を繰り返す。ステップS3には、ステップS1とステップS2の繰り返しが終了した状態が示されている。この場合、第一編地部1の第一側端1Eを構成する複数の編目のそれぞれにつながる複数の第一増し目11が編成される。図5では、説明の便宜上、第一編地部1のコース数は、図3に示される第一編地部1のコース数よりも少なくしている。また、本例では、第一編地部1の各コースを編成するごとに第一増し目11を編成しているが、一部のコースを編成する際に第一増し目11を編成しなくても良い。この編成は、第一編地部1の第一側端1Eを構成する一部の編目のそれぞれにつながる複数の第一増し目11を編成することに該当する。
【0029】
ステップS3の状態から、BDにおける第一編地部1の編幅方向に隣接する位置で第二編地部2を編成する(工程B)。具体的には、図6のステップS4に示されるように、ヤーンフィーダー9を右方向に移動させ、BDに係止される第一編地部1の最終コースを編成すると共に、第一ベース編地部5のウエール方向に続く第二編地部2を編成する。この編成は、掛け目からなる第一増し目11の目移しを行いやすくするための編成である。ステップS3の第一増し目11のウエール方向に続く編目は、第一増し目11とみなす。ステップS4ではさらに、BDに係止される第一編地部1の編目と第一増し目11とをFUに移動させる。
【0030】
ステップS5では、ヤーンフィーダー9を左方向に移動させ、第二編地部2を1コース編成すると共に、BDおよびBUを左方向に1ピッチラッキングする。その結果、第一側端1Eに近接する第二編地部2の第二側端2Eが相対的に第一側端1Eに近づくように第二編地部2が移動する。ステップS5ではさらに、FUに係止される第一増し目11のうち、第二側端2Eに最も近い位置にある第一増し目11を、目移しによって第二側端2Eを構成する端部編目に重ねる。
【0031】
ステップS6では、ヤーンフィーダー9を右方向に移動させ、ステップS5によって空針となったFUの編針に第二増し目21を編成すると共に、BDにおいて第二編地部2を1コース編成する。このステップS6によって、ステップS5の重ね目が固定され、第二側端2Eと第一増し目11とが接合される。第二編地部2は、第一編地部1と並列して編成されるため、第二編地部2のウエール方向は、第一編地部1のウエール方向(図3の太線矢印参照)と同じである。すなわち、編地100における第二編地部2の編目の向きと第一編地部1の編目の向きとは同じ向きである。
【0032】
ステップS6の後、ステップS5とステップS6の編成を繰り返す。ステップS7には、ステップS5とステップS6の繰り返しが終了した状態が示されている。図6に示す工程によって、第二側端2Eを構成する少なくとも一部の編目と複数の第一増し目11とが接合されると共に、第二側端2Eの少なくとも一部の編目のそれぞれにつながる複数の第二増し目21が編成される。本例の第二増し目21は、FUに形成される掛け目である。FDに空針があれば、第二増し目21はFDに形成しても良い。第二増し目21の編成範囲は、第二編地部2の編成範囲に重なっている。
【0033】
ステップS7の状態から、BDにおける第二編地部2の編成範囲に重なる位置で第三編地部3を編成する(工程C)。具体的には、図7のステップS8に示されるように、ヤーンフィーダー9を左方向に移動させ、BDにおいて第二編地部2のウエール方向に続く第三編地部3を1コース編成する。ステップS8ではさらに、FUに係止される第二増し目21のうち、最後に編成した第二増し目21を、目移しによって第三側端3Eを構成する端部編目に重ねる。
【0034】
ステップS9では、BDおよびBUを右方向に1ピッチラッキングする。その結果、第二端部2Eに近接する第三編地部3の第三側端3Eが相対的に第二側端2Eに近づくように第三編地部3が移動する。ステップS9ではさらに、ヤーンフィーダー9を右方向に移動させ、ステップS8によって空針となったFUの編針に第三増し目31を編成すると共に、BDにおいて第三編地部3を1コース編成する。このステップS9によって、ステップS8の重ね目が固定され、第三側端3Eと第二増し目21とが接合される。
【0035】
ステップS9の後、ステップS8とステップS9の編成を繰り返す。ステップS10には、ステップS8とステップS9の繰り返しが終了した状態が示されている。図7に示す工程によって、第三側端3Eを構成する少なくとも一部の編目と複数の第二増し目21とが接合されると共に、第三側端3Eの少なくとも一部の編目のそれぞれにつながる複数の第三増し目31が編成される。本例の第三増し目31は、FUに形成される掛け目である。第三増し目31の編成範囲は、第三編地部3の編成範囲の外側に配置されている。
【0036】
ここで、図6のステップS7において、複数の第二増し目21は、第二編地部2における第二編地部2の相対的な移動方向(本例では左方向)側に編成されている。また、第二増し目21は第二針床であるFUに係止され、かつ第一針床であるBDに係止される第二編地部2の編成範囲に重なっている。この場合、第二編地部2のウエール方向に続く第三編地部3は、第二編地部2の裏面に重なるように編成される。第二編地部2の裏面とは、第二編地部2の編成時に筒形状の内側を向く面である。その結果、図2および図3に示されるように、編地100における第三編地部3は、第二編地部2よりもスカートの内側に折り返された状態になる。第二編地部2に対して折り返された第三編地部3のウエール方向は、第二編地部2のウエール方向と逆向きである。すなわち、編地100における第三編地部3の編目の向きと第二編地部2の編目の向きとは逆向きである。
【0037】
ステップS10の状態から、第三編地部3の編成範囲に重なる位置で第四編地部4を編成する(工程D)。具体的には、図8のステップS11に示されるように、ヤーンフィーダー9を左方向に移動させ、BDにおいて第三編地部3のウエール方向に続く第四編地部4を1コース編成する。ステップS11ではさらに、BDおよびBUを左方向に1ピッチラッキングする。その結果、第三側端3Eに近接する第四編地部4の第四側端4Eが相対的に第三側端3Eに近づくように第四編地部4が移動する。その後、FUに係止される第三増し目31のうち、最後に編成した第三増し目31を、第四側端4Eを構成する端部編目に重ねる。
【0038】
ステップS12では、ヤーンフィーダー9を右方向に移動させ、第四編地部4を1コース編成する。このステップS12によって、ステップS11の重ね目が固定され、第四側端4Eと第三増し目31とが接合される。
【0039】
ステップS12の後、ステップS11とステップS12の編成を繰り返す。ステップS13には、最後の第三増し目31を第四側端4Eに重ねた状態が示されている。ステップS14では、ヤーンフィーダー9を右方向に移動させ、第四編地部4の最後の編成コースを編成した後、FUに係止される第一編地部1をBDに移動させる。ステップS14の後、BDに係止される第一編地部1および第四編地部4のウエール方向に続けて第二ベース編地部6を編成する。
【0040】
ここで、図7のステップS10において、複数の第三増し目31は、第三編地部3における第三編地部3の相対的な移動方向(本例では右方向)と反対の左側端部近傍で編成されている。また、第三増し目31は第二針床であるFUに係止され、かつ第一針床であるBDに係止される第三編地部3の編成範囲の外側に配置されている。この場合、第三編地部3のウエール方向に続く第四編地部4は、第三編地部3の表面に重なるように編成される。第三編地部3の表面とは、第三編地部3の編成時に筒形状の外側を向く面である。その結果、図2および図3に示されるように、第四編地部4は、第三編地部3よりもスカートの内側に折り返された状態になる。第三編地部3に対して折り返された第四編地部4のウエール方向は、第三編地部3のウエール方向と逆向きである。すなわち、編地100における第四編地部4の編目の向きと第三編地部3の編目の向きとは逆向きである。第四編地部4の編目の向きは、第一編地部1の編目の向き、および第二編地部2の編目の向きと同じ向きである。
【0041】
以上説明した編成工程図に従って編成された編地100では、図3に示されるように、第一編地部1と第二編地部2とが並列し、第二編地部2と第三編地部3と第四編地部4とが厚さ方向に重なっている。第一編地部1の編目の向きと、第二編地部2の編目の向きと、第四編地部4の編目の向きとが同じ向きで、第三編地部3の編目の向きは、その他の編地部1,2,4の編目の向きと逆向きである。第一側端1Eと第二側端2Eとは第一増し目11によって無縫製で接合され、第二側端2Eと第三側端3Eとは第二増し目21によって無縫製で接合され、第三側端3Eと第四側端4Eとは第三増し目31によって無縫製で接合されている。その結果、第一側端1Eと第二側端2Eと第三側端3Eと第四側端4Eとが無縫製で接合された第一プリーツ101の接合部103(図1参照)が編地100に形成される。
【0042】
図2に示される第二ベース編地部6の編成が終了したら、図4の編成イメージ図に示されるように、第一編地部1Q,第二編地部2Q、第三編地部3Q、第四編地部4Q,および第三ベース編地部7の順に編成する。図4は、第二プリーツ102をスカートの内部から見た図面である。第一編地部1Qと第二編地部2Qと第三編地部3Qとが厚さ方向に重なっており、第三編地部3Qと第四編地部4Qとが編幅方向に並列している。第一編地部1Qと第二編地部2Qと第三編地部3Qとが重ねられた積層部110によって第二プリーツ102が形成されている。第三ベース編地部7は、第二プリーツ102のウエール方向に続けて形成されている。
【0043】
第二プリーツ102の具体的な編成手順を説明する。まず、第二ベース編地部6の一部のウエール方向に続けて第一編地部1Qを編成する。図4における円弧矢印は、第二ベース編地部6のウエール方向に第一編地部1Qがつながっていることを示している。
【0044】
図4の第一編地部1Qは、図7に示される第三編地部3と同様に編成する。すなわち、図4の第一編地部1Qを右側に移動させながら、第一編地部1Qの編成範囲の左外側に第一増し目11を編成する。
【0045】
第一編地部1Qの編成範囲に重なる位置、本例では第一編地部1Qのウエール方向に続けて第二編地部2Qを編成する。図4の第二編地部2Qは、図6に示される第二編地部2と同様に編成する。すなわち、図4の第二編地部2Qを左方向に移動させながら、第二編地部2Qの左側における第二編地部2Qの編成範囲に重なる第二増し目21を編成する。第二編地部2Qは、編地100において第一編地部1Qよりも編地100の外側に配置される。
【0046】
第二編地部2Qの編成範囲に重なる位置、本例では第二編地部2Qのウエール方向に続けて第三編地部3Qを編成する。第三編地部3Qは、第一編地部1Qと同様に編成する。すなわち、第三編地部3Qを右側に移動させながら、第三編地部3Qの左外側に第三増し目31を編成する。第三編地部3Qは、編地100において第二編地部2Qよりも編地100の外側に配置される。
【0047】
第三編地部3Qの編成範囲に隣接する位置に第四編地部4Qを編成する。本例では、第四編地部4Qは、第二ベース編地部6における第一編地部1Qが編成されていない領域のウエール方向に続けて編成される。第三側端3Eに近接する第四編地部4Qの第四側端4Eが第三側端3Eに近づくように第四編地部4Qを移動させながら第四編地部4Qを編成することで、第四編地部4Qの第四側端4Eを第三増し目31と接合する。
【0048】
最後に、第三編地部3Qと第四編地部4Qのウエール方向に続けて第三ベース編地部7を編成する。その結果、編地100において第二プリーツ102が形成される。
【0049】
図4に基づいて編成された編地100では、第一編地部1Qと第二編地部2Qと第三編地部3Qとが厚さ方向に重ねられ、第三編地部3Qと第四編地部4Qとが編幅方向に並列している。第一編地部1Qの編目の向きと、第三編地部3Qの編目の向きと、第四編地部4Qの編目の向きとが同じ向きで、第二編地部2Qの編目の向きは、その他の編地部1Q,3Q,4Qの編目の向きと逆向きである。第一側端1Eと第二側端2Eとは第一増し目11によって無縫製で接合され、第二側端2Eと第三側端3Eとは第二増し目21によって無縫製で接合され、第三側端3Eと第四側端4Eとは第三増し目31によって無縫製で接合されている。その結果、第一側端1Eと第二側端2Eと第三側端3Eと第四側端4Eとが無縫製で接合された第二プリーツ102の接合部103(図1参照)が編地100に形成される。
【0050】
本例の編地の編成方法によれば、スカートの丈が横編機の編針によって編成可能な範囲であれば、第一プリーツ101および第二プリーツ102の編幅方向の長さおよび数によらず、スカートを編成できる。また、本例の編地の編成方法によれば、スカートの丈に沿った方向における複数の接合部103の位置を自由に変更できる。例えば、第二プリーツ102における接合部103の位置を、第一プリーツ101よりも胴側に配置することもできるし、裾側に配置することもできる。なぜなら、第二プリーツ102は、第一プリーツ101が完成した後、第一プリーツ101と独立して編成されるからである。その他、編地100における第一プリーツ101と第二プリーツ102の組み合わせは自由に選択できる。例えば、編地100において第一プリーツ101のみが設けられていても良いし、第二プリーツ102のみが設けられていても良い。
【0051】
<その他の実施形態>
実施形態1では、3つの編地部が重なった積層部110を備える筒状の編地100を説明したが、積層部110において重なる編地部の数は特に限定されない。積層部110において重ねる編地部の数は2つでも良いし、4つ以上でも良い。例えば、図5から図7に示される編成工程を繰り返すことで、積層部110において重なる編地部の数を増やすことができる。編地100は筒状でなくても良い。積層部110の状態によっては、第一ベース編地部5、第二ベース編地部6、第三ベース編地部7、および第四編地部4,4Qの少なくとも一つが存在しない場合もある。
【0052】
実施形態1の各編地部は天竺組織を有するが、リブ組織またはメッシュ組織などの柄組織を有していても良い。柄組織の編成では、第一針床と、第一針床に向き合う第二針床とが使用される。
【0053】
その他、実施形態1の第一プリーツ101では、第二編地部2と第三編地部3とをウエール方向につなげて編成したが、第二編地部2のウエール方向の端部を伏目処理して、第二編地部2と第三編地部3とがウエール方向につながらないようにしても良い。同様に、第三編地部のウエール方向の端部を伏目処理して、第三編地部3と第四編地部4とがウエール方向につながらないようにしても良い。
【符号の説明】
【0054】
1,1Q 第一編地部、1E 第一側端、11 第一増し目
2,2Q 第二編地部、2E 第二側端、21 第二増し目
3,3Q 第三編地部、3E 第三側端、31 第三増し目
4,4Q 第四編地部、4E 第四側端
5 第一ベース編地部
6 第二ベース編地部
7 第三ベース編地部
9 ヤーンフィーダー
100 編地
100E 編出し部、100S 編終り部
100F 前側部分、100B 後側部分
101 第一プリーツ
102 第二プリーツ
103 接合部
110 積層部
120 非積層部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8