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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024124703
(43)【公開日】2024-09-13
(54)【発明の名称】運行管理システム
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/09 20060101AFI20240906BHJP
   G08G 1/00 20060101ALI20240906BHJP
   G16Y 40/30 20200101ALI20240906BHJP
   G16Y 20/20 20200101ALI20240906BHJP
   G16Y 10/40 20200101ALI20240906BHJP
【FI】
G08G1/09 V
G08G1/00 J
G16Y40/30
G16Y20/20
G16Y10/40
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023032574
(22)【出願日】2023-03-03
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000969
【氏名又は名称】弁理士法人中部国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡野 隆宏
(72)【発明者】
【氏名】高島 亨
(72)【発明者】
【氏名】野澤 優介
(72)【発明者】
【氏名】溝尾 駿
(72)【発明者】
【氏名】長川 研太
(72)【発明者】
【氏名】平中 貴士
(72)【発明者】
【氏名】小西 翔太
【テーマコード(参考)】
5H181
【Fターム(参考)】
5H181AA07
5H181BB04
5H181CC03
5H181CC04
5H181CC12
5H181CC14
5H181FF04
5H181FF10
5H181FF13
5H181FF14
5H181FF22
5H181FF27
5H181LL09
5H181LL14
5H181MC16
5H181MC19
(57)【要約】
【課題】路面状態の検出精度を上げたいエリアで、路面状態の検出精度を上げることができる運行管理システムを提供する。
【解決手段】本発明のコンピュータ10は、少なくとも計測モビリティから受信した周辺監視装置の検出結果と位置情報とに基づいて、地図データ上の位置と関連付けて路面情報を記憶し、地図データにおいて、計測モビリティによる路面情報の検出が不調であったエリア及び予め設定されたエリアの少なくとも一方を詳細検出エリアとして記憶し、自動運転により通常指令速度で走行する計測モビリティが、詳細検出エリアを通常指令速度よりも低い特定速度で走行するように、詳細検出エリアを走行予定の又は走行中の計測モビリティに対して、速度変更に関する指令である速度変更指令を送信する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ位置情報を取得可能な複数の登録モビリティの運行を指令の送信により管理するように構成されたコンピュータを備える運行管理システムであって、
前記コンピュータには、複数の前記登録モビリティのうち、周辺の物体に関する情報を検出する周辺監視装置が搭載され且つ予め設定された1台以上の前記登録モビリティが計測モビリティとして記憶され、
前記コンピュータは、
少なくとも前記計測モビリティから受信した前記周辺監視装置の検出結果と前記位置情報とに基づいて、地図データ上の位置と関連付けて路面情報を記憶し、
前記地図データにおいて、前記計測モビリティによる前記路面情報の検出が不調であったエリア及び予め設定されたエリアの少なくとも一方を詳細検出エリアとして記憶し、
自動運転により通常指令速度で走行する前記計測モビリティが、前記詳細検出エリアを前記通常指令速度よりも低い特定速度で走行するように、前記詳細検出エリアを走行予定の又は走行中の前記計測モビリティに対して、速度変更に関する前記指令である速度変更指令を送信する、
運行管理システム。
【請求項2】
前記コンピュータは、
演算上、前記速度変更指令の送信対象の前記計測モビリティである対象モビリティが前記特定速度で前記詳細検出エリアを走行することにより、前記対象モビリティが自身の目標到着時刻よりも遅く目的地に到着すると判定した場合、前記対象モビリティに前記速度変更指令を送信しない、
請求項1に記載の運行管理システム。
【請求項3】
前記コンピュータは、
演算上、前記速度変更指令の送信対象の前記計測モビリティである対象モビリティが前記特定速度で前記詳細検出エリアを走行することにより、前記対象モビリティ以外の前記登録モビリティのうち1つでも自身の目標到着時刻よりも遅く目的地に到着すると判定した場合、前記対象モビリティに前記速度変更指令を送信しない、
請求項1又は2に記載の運行管理システム。
【請求項4】
前記コンピュータは、前記速度変更指令の送信対象の前記計測モビリティである対象モビリティ内に乗員が存在する場合、前記対象モビリティに前記速度変更指令を送信しない、
請求項1に記載の運行管理システム。
【請求項5】
前記周辺監視装置は、カメラ、ライダー、及びレーダーの少なくとも1つを含んで構成されている、
請求項1に記載の運行管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の登録モビリティの運行を管理する運行管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
車両が走行する路面の状態を推定する装置として、例えば特開2020-013537号公報に路面状態推定装置が開示されている。この路面状態推定装置では、車両が路面異常に遭遇した際の挙動として想定される特定挙動に基づいて、異常条件が定められている。路面状態推定装置は、複数の車両から挙動情報を取得し、挙動情報に基づいて異常条件が満たされているか否かを判定し、その判定結果に基づいて路面状態を推定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-013537号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記装置では、車両の挙動に基づいて路面状態を推定しているため、精度良く路面状態を検出したいエリアがある場合に対応が難しく、この点について改良の余地がある。
【0005】
本発明の目的は、路面状態の検出精度を上げたいエリアで、路面状態の検出精度を上げることができる運行管理システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の運行管理システムは、それぞれ位置情報を取得可能な複数の登録モビリティの運行を指令の送信により管理するように構成されたコンピュータを備える。前記コンピュータには、複数の前記登録モビリティのうち、周辺の物体に関する情報を検出する周辺監視装置が搭載され且つ予め設定された1台以上の前記登録モビリティが計測モビリティとして記憶されている。前記コンピュータは、少なくとも前記計測モビリティから受信した前記周辺監視装置の検出結果と前記位置情報とに基づいて、地図データ上の位置と関連付けて路面情報を記憶する。前記コンピュータは、前記地図データにおいて、前記計測モビリティによる前記路面情報の検出が不調であったエリア及び予め設定されたエリアの少なくとも一方を詳細検出エリアとして記憶する。前記コンピュータは、自動運転により通常指令速度で走行する前記計測モビリティが、前記詳細検出エリアを前記通常指令速度よりも低い特定速度で走行するように、前記詳細検出エリアを走行予定の又は走行中の前記計測モビリティに対して、速度変更に関する前記指令である速度変更指令を送信する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、コンピュータの速度変更指令により、計測モビリティは、詳細検出エリアを通常指令速度よりも低い特定速度で走行する。計測モビリティの走行速度が低速になることで、周辺監視装置による認識時間が長くなり且つ路面の荒れによるモビリティの揺れが抑えられる。これにより、詳細検出エリアでの周辺監視装置による路面の検出精度は、向上する。したがって、本発明によれば、路面状態の検出精度を上げたいエリアで、路面状態の検出精度を上げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施形態の運行管理システムの構成図である。
図2】本実施形態の処理の流れを示すフローチャートである。
図3】本実施形態の処理の一例を説明するための概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための形態として、本発明の一実施形態である運行管理システム1を、図を参照しつつ詳しく説明する。なお、本発明は、下記実施例の他、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した種々の形態で実施することができる。本実施形態では、一例として、鉱山などの未舗装路が多い状況で使用される運行管理システム1が説明される。
【0010】
図1に示すように、運行管理システム1は、それぞれ位置情報を取得可能な複数の登録モビリティの運行を指令の送信により管理するように構成されたコンピュータ10を備えている。登録モビリティは、予めコンピュータ10に登録されている管理対象のモビリティである。モビリティは、路面を走行する移動体(例えば車両等)である。各登録モビリティには、例えばGNSS(Global Navigation Satellite System:全球測位衛星システム)の受信機4、及び自動運転制御を実行する自動運転ECU3が搭載されている。
【0011】
本実施形態では、登録モビリティとして、複数のライトビークルと、複数の大型ダンプトラック(大型重機)とが登録されている。ライトビークルは、例えば、ピックアップトラックである。このように、コンピュータ10は、種類又は型が異なるモビリティを含む複数の登録モビリティの運行を管理する。コンピュータ10は、各登録モビリティと通信可能に構成されている。運行管理システム1は、管制システムともいえ、無線通信装置を持つ施設に設置されている。
【0012】
運行管理システム1のコンピュータ10は、1つ以上のプロセッサ11と、1つ以上のメモリ12と、を備えている。プロセッサ11は、メモリ12に記憶されたプログラムに従って、各種処理を実行する。メモリ12の配置位置は、コンピュータ10の内部でも外部でもよい。コンピュータ10は、電子制御ユニット(ECU)を含んでいるともいえる。
【0013】
コンピュータ10には、地図データが記憶されている。コンピュータ10は、地図データ、各登録モビリティの目的地、及び各登録モビリティの位置(現在地)等に基づいて、各登録モビリティの目標ルートを演算する。コンピュータ10は、各登録モビリティに目標ルート及び走行条件の情報を指令(指示、指令信号、又は指示信号ともいえる)として送信する。走行条件には走行速度が含まれている。コンピュータ10は、自動運転が実行される登録モビリティに対して、自動運転時の走行速度として設定された「通常指令速度」を指令として送信する。また、走行条件には、走行間隔(車間距離)の情報が含まれている。各登録モビリティに搭載された自動運転ECU3は、コンピュータ10から受信した指令に基づいて、図示しない転舵装置、駆動装置、及び制動装置に対して自動運転制御を実行する。
【0014】
コンピュータ10には、複数の登録モビリティのうち、周辺の物体に関する情報を検出する周辺監視装置2が搭載され且つ予め設定された複数(1台以上)の登録モビリティがそれぞれ「計測モビリティ」として記憶(登録)されている。周辺監視装置2は、周辺の物体に関する情報を検出するカメラ、ライダー(LiDAR:Light Detection and Ranging, or Laser Imaging Detection and Ranging)、及びレーダーの少なくとも1つを含んで構成されている。また、本実施形態において、周辺監視装置2は、すべての登録モビリティに搭載されている。例えば、本実施形態の各ライトビークルには、周辺監視装置2として、複数のカメラと、1つのライダーと、複数のミリ波レーダーとが搭載されている。各登録モビリティの自動運転ECU3は、周辺監視装置2の検出結果及び地図データに基づいて、障害物を避ける等、目標ルートを微調整することができる。周辺監視装置2は、カメラ等の認識センサ及び/又はToF(Time of Flight)技術を用いた装置を含んで構成されるといえる。
【0015】
本実施形態のコンピュータ10には、複数のライトビークルが計測モビリティとして記憶されている。計測モビリティは、走行時に路面状態を検出するモビリティとして設定されている。モビリティにおける周辺監視装置2の設置位置等の関係から、ライトビークルのほうが大型ダンプトラックよりも路面状態の検出精度は高い。また、ライトビークルは、相対的に、走行の自由度が高く、路面状態の検出に適している。なお、計測モビリティは、1台でもよいし、複数種類のモビリティであってもよい。
【0016】
コンピュータ10は、少なくとも計測モビリティから受信した周辺監視装置2の検出結果と位置情報とに基づいて、地図データ上の位置と関連付けて路面情報を記憶する。この処理を情報収集処理ともいう。各計測モビリティは、周辺監視装置2で検出した路面状態に関する情報である路面情報をコンピュータ10(運行管理システム1)に送信する。コンピュータ10は、路面情報及びその位置情報を地図データと対応させて記憶する。これにより、路面情報をもつ地図データが作成される。なお、コンピュータ10は、計測モビリティ以外の登録モビリティからも路面情報を受信する場合、当該路面情報も地図データに対応させて記憶してもよい。
【0017】
コンピュータ10は、地図データにおいて、計測モビリティによる路面情報の検出が不調であったエリア及び予め設定されたエリアの少なくとも一方を詳細検出エリアとして記憶する。この処理を対象エリア設定処理ともいう。計測モビリティから送信される路面情報に精度が低い路面情報が含まれている場合、コンピュータ10は、精度が低い路面情報に対応する計測モビリティの走行エリアを詳細検出エリアに設定する。周辺監視装置2が例えば砂埃や逆光などの検出不調環境下で路面状態を検出した場合、その位置の路面情報の信頼度は低くなる。計測モビリティが視界不良の状況で走行している場合、周辺監視装置2による路面状態の検出精度は低下する。また、路面が大きく荒れている場合、その路面を走行した計測モビリティの周辺監視装置2は大きく揺れ、検出精度が低下する可能性がある。
【0018】
コンピュータ10は、受信した路面情報が所定条件を満たしていない場合、その路面情報を検出不調情報として設定する。例えば、周辺監視装置2には、通常の環境下(砂煙などの検出不調要因がない環境)で物体の有無と物体の形状とを認識(判定)できる範囲、すなわち認識可能範囲が設定されている。所定条件は、例えば、「認識可能範囲で物体の有無の判定できること」及び「物体を検出した場合その物体の形状が判定できること」である。したがって、例えば、周辺監視装置2の検出結果において、認識可能範囲内に物体があることは認識できるがその物体の形状が認識できない場合や、認識可能範囲内の一部又はすべてで何も認識できない場合(例えば数m先の路面も認識できない場合)などは、その周辺監視装置2の検出結果は不調であると判定される。「物体」とは、形があるものであり、動物や、路面の形状(凹凸や轍等)が含まれる。なお、所定条件は、適宜設定可能である。例えば、所定条件は、検出結果(データ)の信頼度を示す公知の指標を用いて、「データの信頼度が所定値以上であること」に設定されてもよい。
【0019】
本実施形態のコンピュータ10には、詳細検出エリアとして、「十字路の交差点」が予め設定されている。つまり、本実施形態の詳細検出エリアは、路面状態の検出が不調であったエリアと、十字路の交差点である。例えば、周辺監視装置2が十字路の交差点の路面状態を検出する範囲(エリア)が、詳細検出エリアとなる。未舗装路(ダート路)において、十字路の交差点は、特に荒れやすく、路面状態を詳細に検出したいエリアといえる。
【0020】
コンピュータ10は、自動運転により通常指令速度で走行する計測モビリティが、詳細検出エリアを通常指令速度よりも低い特定速度で走行するように、詳細検出エリアを走行予定の又は走行中の計測モビリティに対して、速度変更に関する指令である速度変更指令を送信する(特定速度<通常指令速度)。この処理を速度変更処理ともいう。コンピュータ10は、各計測モビリティの位置と目標ルート等を把握している。したがって、コンピュータ10は、どの計測モビリティが詳細検出エリアを走行する予定であるか又は走行中であるかを判定することができる。
【0021】
例えば、コンピュータ10は、将来的に詳細検出エリアを走行予定の計測モビリティに対して、詳細検出エリアを走行する際に特定速度で走行するように速度変更指令を送信する。つまり、コンピュータ10は、対象の計測モビリティに減速指令を送信する。速度変更指令を受信した計測モビリティの自動運転ECU3は、例えば、自モビリティが詳細検出エリアに進入する前に減速し、特定速度で詳細検出エリアに進入し、自モビリティが詳細検出エリアから出ると速度を通常指令速度に戻す。このように、図2に示すように、コンピュータ10は、情報収集処理S1、対象エリア設定処理S2、及び速度変更処理S3を実行するように構成されている。
【0022】
一例として、図3に示すように、計測モビリティM1が目標ルートAを走行する予定である場合、コンピュータ10は、その計測モビリティに対して、目標ルートA上の十字路の交差点E1での走行に関する速度変更指令を送信する。また、コンピュータ10は、計測モビリティM1が目標ルートA上のエリアE2を走行する前に、先行する計測モビリティM2によるエリアE2の路面情報の検出が不調であると判定した場合、エリアE2を詳細検出エリアに設定し、計測モビリティM1にエリアE2での走行速度に関する速度変更指令を送信する。なお、コンピュータ10は、計測モビリティM1がエリアE2を走行中に、エリアE2を詳細検出エリアに設定した場合、エリアE2走行中の計測モビリティM1に速度変更指令を送信してもよい。
【0023】
登録モビリティは、十字路の交差点を右左折する場合、十字路の交差点が詳細検出エリアでなくても減速する。右左折時の走行速度は、特定速度よりも低い場合がある。しかし、速度変更処理S3が実行されることで、通常の右左折時よりも低速走行期間を長くとることができ、より確実に検出精度を向上させることができる。計測モビリティが十字路の交差点を直進する場合、速度変更処理S3による効果は大きい。
【0024】
本実施形態によれば、コンピュータ10の速度変更指令により、対象の計測モビリティは、詳細検出エリアを通常指令速度よりも低い特定速度で走行する。計測モビリティの走行速度が低速になることで、周辺監視装置2による認識時間が長くなり且つ路面の荒れによるモビリティの揺れが抑えられる。これにより、詳細検出エリアでの周辺監視装置2による路面の検出精度は、向上する。したがって、本実施形態によれば、路面状態の検出精度を上げたいエリアで、路面状態の検出精度を上げることができる。予め想定される路面が荒れやすいエリアや、事前に取得情報の信頼性が低いと判定されたエリアに対して、走行速度を低下させて計測モビリティを走行させることで、効率良く精度の良い路面情報を取得することができる。
【0025】
(実行条件)
本実施形態のコンピュータ10には、速度変更処理S3の実行条件として、1つ以上(ここでは複数)の条件が設定されている。実行条件の1つとして、「速度変更処理S3を実行しても、速度変更指令の送信対象の計測モビリティ(以下、対象モビリティという)が目的地に目標の到着時刻以前に到着すること」が設定されている。対象モビリティに対して目的地への目標到着時刻が設定されている場合、コンピュータ10は、出発時刻と目標ルートと走行速度とに基づいて、対象モビリティの到着時刻を演算する。目標到着時刻は、到着時刻として許容できる最も遅い時刻である。
【0026】
対象モビリティに速度変更処理S3を実行した場合の対象モビリティの到着時刻が目標到着時刻以前である場合、この実行条件は満たされる。コンピュータ10は、この実行条件を満たすために、対象モビリティの出発時刻を早めてもよい。また、一部の詳細検出エリアに対してのみ速度変更処理S3を実行することで、対象モビリティの到着時刻が目標到着時刻以前になる場合、コンピュータ10は、当該一部の詳細検出エリアのみで速度変更処理S3を実行してもよい。この場合、コンピュータ10は、信頼度が低いエリアを優先して、速度変更処理S3の対象としてもよい。
【0027】
このように、コンピュータ10は、演算上、速度変更指令の送信対象の計測モビリティである「対象モビリティ」が特定速度で詳細検出エリアを走行することにより、対象モビリティが自身の目標到着時刻よりも遅く目的地に到着すると判定した場合、対象モビリティに速度変更指令を送信しないように構成されている。これにより、計測モビリティが目標到着時刻を守れる範囲で路面状態を詳細に検出することができる。
【0028】
また、実行条件の1つとして、「速度変更処理S3により対象モビリティが減速することで、他の登録モビリティの運行に遅延が発生しないこと」が設定されている。遅延とは、到着時刻が目標到着時刻よりも遅くなることである。対象モビリティの減速により、後続の登録モビリティが減速させられる可能性がある。コンピュータ10は、対象モビリティ以外の各登録モビリティの情報(位置、目標ルート、走行条件、目標到着時刻等)に基づいて、速度変更処理S3を実行した場合の各登録モビリティの目的地への到着時刻を演算(推定、シミュレーション)する。コンピュータ10は、演算結果に基づいて、この実行条件が満たされるか否かを判定する。
【0029】
このように、コンピュータ10は、演算上、対象モビリティが特定速度で詳細検出エリアを走行することにより、対象モビリティ以外の登録モビリティのうち1つでも自身の(各自の)目標到着時刻よりも遅く目的地に到着すると判定した場合、対象モビリティに速度変更指令を送信しないように構成されている。上記2つの実行条件により、すべての登録モビリティが目標到着時刻を守れる範囲で、計測モビリティが路面状態を詳細に検出することができる。つまり、速度変更処理S3が他の登録モビリティの運行に悪影響を及ぼすことは抑制される。
【0030】
上記2つの実行条件に加えて、「対象モビリティが無人であること」が実行条件に追加されてもよい。対象モビリティが有人自動運転で走行している場合、詳細検出エリアで速度が変更されると、乗員に違和感を与える可能性がある。したがって、コンピュータ10は、対象モビリティが無人自動運転のときのみ速度変更処理S3を実行するように構成されてもよい。乗員の有無は、例えば、乗員の操作によるコンピュータ10への通知や、シートに搭載された着座センサ等の検出結果に基づいて判定可能である。このように、コンピュータ10は、対象モビリティ内に乗員が存在する場合、対象モビリティに速度変更指令を送信しないように構成されてもよい。なお、対象モビリティが有人自動運転のモビリティであっても、予め乗員に減速する旨の通知をすることで、乗員に違和感を与えることは抑制される。
【0031】
(その他)
本発明は、上記実施形態に限られない。例えば、周辺監視装置2は、モビリティの前方の物体のみを検出する装置であってもよい。また、運行管理システム1は、複数のコンピュータで構成されてもよい。詳細検出エリアは、十字路の交差点に限られず、例えばT字路の交差点や、登録モビリティが所定回数以上通過したエリアなど、適宜設定可能である。運行管理システム1は、鉱山に限らず、他の場所でも利用可能である。
【符号の説明】
【0032】
1…運行管理システム、10…コンピュータ、2…周辺監視装置。
図1
図2
図3