(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024124704
(43)【公開日】2024-09-13
(54)【発明の名称】硬貨処理装置
(51)【国際特許分類】
G07D 9/04 20060101AFI20240906BHJP
G07D 1/00 20060101ALI20240906BHJP
G07D 3/00 20060101ALI20240906BHJP
【FI】
G07D9/04 101
G07D1/00 Z
G07D3/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023032576
(22)【出願日】2023-03-03
(71)【出願人】
【識別番号】000001432
【氏名又は名称】グローリー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100131842
【弁理士】
【氏名又は名称】加島 広基
(74)【代理人】
【識別番号】100215267
【弁理士】
【氏名又は名称】古屋 秀人
(74)【代理人】
【識別番号】100215555
【弁理士】
【氏名又は名称】今井 貴裕
(72)【発明者】
【氏名】山内 渉斗
(72)【発明者】
【氏名】木村 昭彦
(72)【発明者】
【氏名】古林 克規
(72)【発明者】
【氏名】向竹 良太
【テーマコード(参考)】
3E141
【Fターム(参考)】
3E141AA08
3E141GA10
3E141GB01
3E141HA06
3E141HA09
3E141LA01
3E141LA19
3E141LA32
3E141LA35
(57)【要約】
【課題】新たな構造の入金部や出金部を備えた硬貨処理装置を提供する。
【解決手段】硬貨処理装置1は、入出金部10と、入出金部10から送られた硬貨の繰り出しを行う繰出部20と、を備え、入出金部10は、固定トレイ部分13と、可動トレイ部分14と、可動トレイ部分14を駆動する駆動部15とを含み、待機状態において固定トレイ部分13と可動トレイ部分14とにより硬貨の受け部12が構成され、駆動部15によって可動トレイ部分14が駆動されることにより可動トレイ部分14が固定トレイ部分13に沿って移動すると受け部12に受け入れられた硬貨が繰出部20に送られるようになっている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入金部と、
前記入金部から送られた硬貨の繰り出しを行う繰出部と、
を備え、
前記入金部は、固定トレイ部分と、可動トレイ部分と、前記可動トレイ部分を駆動する駆動部とを含み、
待機状態において前記固定トレイ部分と前記可動トレイ部分とにより硬貨の受け部が構成され、前記駆動部によって前記可動トレイ部分が駆動されることにより前記可動トレイ部分が前記固定トレイ部分に沿って移動すると前記受け部に受け入れられた硬貨が前記繰出部に送られるようになっている、硬貨処理装置。
【請求項2】
前記可動トレイ部分は軸心を中心として回転するようになっている、請求項1記載の硬貨処理装置。
【請求項3】
前記軸心と前記可動トレイ部分との間の距離は前記軸心と前記固定トレイ部分との間の距離よりも小さくなっている、請求項2記載の硬貨処理装置。
【請求項4】
硬貨を前記繰出部に向かって押し出すための押出面が前記可動トレイ部分の端面に形成されている、請求項1記載の硬貨処理装置。
【請求項5】
前記固定トレイ部分および前記可動トレイ部分は、前記可動トレイ部分が移動しているときに互いに入り組むような形状となっている、請求項1記載の硬貨処理装置。
【請求項6】
前記固定トレイ部分および前記可動トレイ部分はそれぞれ断面において波形状部分を有しており、前記可動トレイ部分が移動しているときに前記固定トレイ部分の断面における前記波形状部分および前記可動トレイ部分の断面における前記波形状部分が互いに入り組むようになっている、請求項5記載の硬貨処理装置。
【請求項7】
前記受け部に受け入れられた硬貨を検知するための検知手段と、
前記検知手段による検知結果に基づいて、異なる態様で前記可動トレイ部分を駆動するよう前記駆動部の制御を行う制御部と、
を更に備えた、請求項1記載の硬貨処理装置。
【請求項8】
前記検知手段は、前記受け部に受け入れられている硬貨のうち所定の箇所に位置する硬貨を検知するようになっている、請求項7記載の硬貨処理装置。
【請求項9】
前記制御部は、前記検知手段による検知結果に基づいて前記可動トレイ部分の移動速度が変わるよう前記駆動部の制御を行う、請求項7記載の硬貨処理装置。
【請求項10】
前記制御部は、前記検知手段による検知結果に基づいて前記可動トレイ部分を選択的に往復移動させるよう前記駆動部の制御を行う、請求項7記載の硬貨処理装置。
【請求項11】
処理されるべき硬貨の直径よりも幅が大きい溝部が前記固定トレイ部分および前記可動トレイ部分のうち少なくとも一方に線状に延びるよう形成されている、請求項1記載の硬貨処理装置。
【請求項12】
出金部と、
硬貨が収納される収納部と、
前記収納部から繰り出された硬貨を前記出金部に搬送する搬送部と、
を備え、
前記出金部は、硬貨を受ける受け部を有しており、処理されるべき硬貨の直径よりも幅が大きい溝部が前記受け部に線状に延びるよう形成されている、硬貨処理装置。
【請求項13】
前記受け部は断面がU字形状またはV字形状となっており、前記溝部は前記受け部における最も低い箇所に形成されている、請求項12記載の硬貨処理装置。
【請求項14】
前記溝部の深さは処理されるべき硬貨の直径よりも小さくなっている、請求項12記載の硬貨処理装置。
【請求項15】
前記溝部の深さは処理されるべき硬貨の半径よりも小さくなっている、請求項12記載の硬貨処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、硬貨処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
硬貨の入金処理や出金処理等の様々な処理を行う硬貨処理装置として様々なものが知られている。特許文献1には、筐体から繰り出された硬貨を一列に整列させながら出金させる機構が設けられている硬貨処理装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の硬貨処理装置と比較して、新たな構造の入金部や出金部を備えた硬貨処理装置が求められている。
【0005】
本開示は、このような点を考慮してなされたものであり、新たな構造の入金部や出金部を備えた硬貨処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の硬貨処理装置は、入金部と、前記入金部から送られた硬貨の繰り出しを行う繰出部と、を備え、前記入金部は、固定トレイ部分と、可動トレイ部分と、前記可動トレイ部分を駆動する駆動部とを含み、待機状態において前記固定トレイ部分と前記可動トレイ部分とにより硬貨の受け部が構成され、前記駆動部によって前記可動トレイ部分が駆動されることにより前記可動トレイ部分が前記固定トレイ部分に沿って移動すると前記受け部に受け入れられた硬貨が前記繰出部に送られるようになっていることを特徴とする。
【0007】
この場合、前記可動トレイ部分は軸心を中心として回転するようになっていてもよい。
【0008】
また、前記軸心と前記可動トレイ部分との間の距離は前記軸心と前記固定トレイ部分との間の距離よりも小さくなっていてもよい。
【0009】
また、硬貨を前記繰出部に向かって押し出すための押出面が前記可動トレイ部分の端面に形成されていてもよい。
【0010】
また、前記固定トレイ部分および前記可動トレイ部分は、前記可動トレイ部分が移動しているときに互いに入り組むような形状となっていてもよい。
【0011】
この場合、前記固定トレイ部分および前記可動トレイ部分はそれぞれ断面において波形状部分を有しており、前記可動トレイ部分が移動しているときに前記固定トレイ部分の断面における前記波形状部分および前記可動トレイ部分の断面における前記波形状部分が互いに入り組むようになっていてもよい。
【0012】
また、本開示の硬貨処理装置は、前記受け部に受け入れられた硬貨を検知するための検知手段と、前記検知手段による検知結果に基づいて、異なる態様で前記可動トレイ部分を駆動するよう前記駆動部の制御を行う制御部と、を更に備えていてもよい。
【0013】
この場合、前記検知手段は、前記受け部に受け入れられている硬貨のうち所定の箇所に位置する硬貨を検知するようになっていてもよい。
【0014】
また、前記制御部は、前記検知手段による検知結果に基づいて前記可動トレイ部分の移動速度が変わるよう前記駆動部の制御を行うようになっていてもよい。
【0015】
また、前記制御部は、前記検知手段による検知結果に基づいて前記可動トレイ部分を選択的に往復移動させるよう前記駆動部の制御を行うようになっていてもよい。
【0016】
また、処理されるべき硬貨の直径よりも幅が大きい溝部が前記固定トレイ部分および前記可動トレイ部分のうち少なくとも一方に線状に延びるよう形成されていてもよい。
【0017】
また、本開示の硬貨処理装置は、出金部と、硬貨が収納される収納部と、前記収納部から繰り出された硬貨を前記出金部に搬送する搬送部と、を備え、前記出金部は、硬貨を受ける受け部を有しており、処理されるべき硬貨の直径よりも幅が大きい溝部が前記受け部に線状に延びるよう形成されていることを特徴とする。
【0018】
この場合、前記受け部は断面がU字形状またはV字形状となっており、前記溝部は前記受け部における最も低い箇所に形成されていてもよい。
【0019】
また、前記溝部の深さは処理されるべき硬貨の直径よりも小さくなっていてもよい。
【0020】
また、前記溝部の深さは処理されるべき硬貨の半径よりも小さくなっていてもよい。
【発明の効果】
【0021】
本開示の硬貨処理装置によれば、新たな構造の入金部や出金部を備えた硬貨処理装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本開示の実施の形態による硬貨処理装置の内部構成を概略的に示す図である。
【
図2】
図1に示す硬貨処理装置において、内部構成の一部である入出金部の構成を示す図である。
【
図3A】
図1に示す硬貨処理装置の内部構成の一部を示す斜視図である。
【
図3B】
図1に示す硬貨処理装置の内部構成の一部を示す斜視図である。
【
図4】
図3Aに示す入出金部の固定トレイ部分および可動トレイ部分の断面図である。
【
図5】
図3Bに示す入出金部のA-A’断面における受け部の構成を概略的に示す構成図である。
【
図6】
図3Bに示す入出金部のB-B’断面図における受け部の構成を概略的に示す構成図である。
【
図7】本開示の実施の形態による硬貨処理装置において、入出金部の受け部に硬貨が配列された状態を示す図である
【
図8】
図2乃至
図4に示す入出金部の内部構成の動作を示す図である。
【
図9】本開示の実施の形態による硬貨処理装置において、硬貨が所定の高さを超えて入金されている場合における可動トレイ部分の回転挙動を示す構成図である。
【
図10】本開示の実施の形態による硬貨処理装置において、硬貨が所定の高さまで入出金部に収納されていない場合における可動トレイ部分の回転挙動を示す構成図である。
【
図11】本開示の実施の形態による硬貨処理装置の回収箱の構成を示す斜視図である。
【
図13】本開示の実施の形態による硬貨処理装置の制御系の構成を示す図である。
【
図14】本開示の実施の形態による硬貨処理装置における、入金処理の動作フローを示す図である。
【
図15】本開示の実施の形態による硬貨処理装置における、出金処理の動作フローを示す図である。
【
図16】本開示の実施の形態による硬貨処理装置の変形例であって、硬貨が所定の高さを超えて入金されている場合における可動トレイ部分の回転挙動を示す構成図である。
【
図17】本開示の実施の形態による硬貨処理装置の変形例であって、硬貨が所定の高さまで入出金部に収納されていない場合における第2可動トレイ部分の挙動を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本開示の実施の形態に係る硬貨処理装置1について、図面を参照して説明する。
【0024】
-入出金機構-
まず、入出金機構について説明する。
図1等に示すように、本開示に係る硬貨処理装置1は、入出金部10と、入出金部10から送られた硬貨の繰り出しを行う繰出部20と、識別部30と、搬送選別部35と、収納部40と、搬送部50と、制御部60と、を備える。
【0025】
図2および
図3A等に示すように、入出金部10は、硬貨を硬貨処理装置1の内部に入出金するための硬貨入出金口11aと、硬貨入出金口11aを開閉するためのシャッタ11bとを有している。硬貨入出金口11aには硬貨検知センサ111およびシャッタ開閉センサ112が設けられている。硬貨検知センサ111は入出金部10における硬貨の入出金を検知する。シャッタ開閉センサ112はシャッタ11bの開閉の検知を行う。また、入出金部10は、固定トレイ部分13と、可動トレイ部分14と、可動トレイ部分14を駆動する駆動部15と、検知手段16と、を含む。固定トレイ部分13および可動トレイ部分14により、硬貨の受け部12(トレイ)が構成されている。
【0026】
固定トレイ部分13は、入出金部10において固定されて配置されている、椀状の凹面を有する部分であり、硬貨入出金口11aから硬貨処理装置1に入金された硬貨を凹面で受け取る。また、固定トレイ部分13の凹面における最も低い箇所(すなわち、最深部)には溝部13bが形成されている。また、
図4に示すように、固定トレイ部分13の凹面は、水平面に対して35度以上90度未満の範囲の勾配(θ)を有する。この35度以上の勾配により、平置きの硬貨が固定トレイ部分13の斜面に残留することを防止できる。
【0027】
また、固定トレイ部分13は、その断面において凹面に波形状部分13aを形成している。波形状部分13aは、凹面に沿った複数の窪みにより形成されており、可動トレイ部分14の回転方向と同じ方向に向かって、線状に延びるように形成されている。波形状部分13aに乗った硬貨の重心を崩すために、互いに隣り合う波形状部分13aの波の頂点間の直線距離は、最小硬貨径の1/2以下の長さに設計される。
【0028】
ここで、例えば、日本国硬貨の場合において、最小硬貨径は1円硬貨の直径を表す。この場合、1円硬貨の直径が20mmであるため、互いに隣り合う波形状部分13aの波の頂点間の直線距離は10mm以下に設計する。これにより、波形状部分13aに乗った硬貨の重心が崩れ、固定トレイ部分13の斜面の機能も合わさることにより、硬貨が波形状部分13aの下部に流れ落ちる。
【0029】
また、固定トレイ部分13が硬貨処理装置1内に配置された状態において、波形状部分13aの隣接する波間の斜面は、水平面に対して6度もしくはそれより大きい数値の勾配を有する。これにより、波形状部分13aの隣接する波間の斜面に硬貨が直立して乗った場合であっても硬貨の重心が崩れて倒れるため、斜面への硬貨の残留を防止することができる。
【0030】
溝部13bは、固定トレイ部分13の凹面における最も低い箇所(すなわち、最深部)に形成された一本の線状の溝であり、波形状部分13aの波部分の延びる方向と同一方向に延びるよう形成されている。
【0031】
可動トレイ部分14は、固定トレイ部分13の上部に配置されている半椀状の部分であり、可動トレイ部分14の縁である押出面14aにより、硬貨を繰出部20に送る。可動トレイ部分14の外縁の近傍にモータ等の駆動部15が設けられており、可動トレイ部分14は回転軸15aを中心として回転するようになっている。可動トレイ部分14も、その断面において外表面に波形状部分14bを有している。また、可動トレイ部分14の軸心から可動トレイ部分14の外表面までの間の距離は、同じ軸心から固定トレイ部分13の凹面までの間の距離よりも小さくなっている。このような可動トレイ部分14および固定トレイ部分13の形状、寸法、位置等の関係により、可動トレイ部分14は回転中に固定トレイ部分13の凹面に入り組む入れ子構造となっている。また、硬貨処理装置1の待機状態において、固定トレイ部分13と可動トレイ部分14とが互いに組み合わせられることにより、硬貨の受け部12が構成される。そして、後述の駆動部15の作用によって可動トレイ部分14が回転移動することにより、受け部12に受け入れられた硬貨が噛み込まれることなく繰出部20に送られることとなる。
【0032】
また、可動トレイ部分14の凹面における最も低い箇所(すなわち、最深部)には溝部14cが形成されている。溝部14cは、可動トレイ部分14の凹面における最も低い箇所(すなわち、最深部)に形成された一本の線状の溝である。ここで、受け部12は、可動トレイ部分14の押出面14aが固定トレイ部分13における後端近傍で停止した状態のときに、硬貨の出金処理において後述する搬送選別部35から送られた硬貨を受けるようになっている、このような状態で固定トレイ部分13に形成される溝部13bおよび可動トレイ部分14に形成される溝部14cが一直線上につながるようになっている。ここで、
図5に示すように、溝部13bの幅は処理されるべき硬貨の直径よりも大きくなっている。同様に、溝部14cの幅も処理されるべき硬貨の直径よりも大きくなっている。また、溝部13b、14cの凹面は処理されるべき硬貨1枚を収納可能な程度に湾曲状に形成されている。受け部12の椀状の凹面およびこのような溝部13b、14cの構成から、溝部13b、14cに複数の硬貨が収納された際に、
図6および
図7に示すように、硬貨を一列に配列させ易くなる。また、このときに溝部13b、14cに収納された硬貨と溝部13b、14cの底面との間には、若干の空間ができる。この空間があることにより、硬貨を取り出す際に、操作者は指をこの空間に入り込ませ、硬貨を掻き出し易くなる。
【0033】
ここで、
図5に示すように、溝部13bの深さ(L1)は、処理されるべき硬貨の直径(L2)よりも小さくなっている。溝部14cの深さも同様に、処理されるべき硬貨の直径(L2)よりも小さくなっている。
【0034】
また、溝部13bの深さ(L1)は、処理されるべき硬貨の半径(1/L2)よりも小さくなっている。溝部14cの深さ(L1)も同様に、処理されるべき硬貨の半径(1/L2)よりも小さくなっている。
【0035】
駆動部15は、可動トレイ部分14を回転させるモータ等である。駆動部15は回転軸15aを中心として可動トレイ部分14を一方向(具体的には、
図8等において矢印で示す方向)に回転させるようになっている。このことにより、受け部12に受け入れられた硬貨が可動トレイ部分14の押出面14aによって押し出されることにより繰出部20に送られる。また、入金処理時において、駆動部15は、検知手段16による検知結果に基づいて、可動トレイ部分14を異なる態様で回転させる。
【0036】
具体的には、
図9に示すように、例えば、駆動部15は、硬貨が所定の高さを超えて入出金部10に収納されている場合には、可動トレイ部分14を数度ずつ駆動させることにより、可動トレイ部分14を所定の範囲内で小刻みに回転させ、所定の範囲外で連続的に回転させる。より詳細には、可動トレイ部分14が固定トレイ部分13の内側の領域に位置している箇所では駆動部15は可動トレイ部分14を所定の範囲内で小刻みに回転させる。一方、可動トレイ部分14が固定トレイ部分13の内側の領域から外れた箇所に位置している箇所では駆動部15は可動トレイ部分14を連続的に回転させる。
【0037】
また、
図10に示すように、駆動部15は、硬貨が所定の高さまで入出金部10に収納されていない場合には、可動トレイ部分14を通常の回転速度よりも高速に回転させる。
【0038】
また、上述したように、出金処理時において、駆動部15は可動トレイ部分14を所定の位置に停止させる。このことにより、可動トレイ部分14および固定トレイ部分13によって受け部12が構成される。
【0039】
検知手段16は、硬貨処理装置1の受け部12に受け入れられた硬貨を検知するための機構である。検知手段16は、第1センサ17および第2センサ18からなる。
【0040】
図2に示すように、第1センサ17は、入出金部10に設けられるセンサであり、入出金部10にある硬貨を光学的に検知するためのセンサである。第1センサ17は、入出金部10において所定の高さに設置され、硬貨処理装置1の立設方向に対して垂直方向に設置される。第1センサ17は発光素子および受光素子からなり、発光素子からの光を受光素子で受光することにより、入出金部10において2点鎖線で示す直線状の光路が形成されている。第1センサ17が設置される高さの目安としては、入出金部10に硬貨が所定の枚数収納されている場合に硬貨を検知できる高さである。
【0041】
検知手段16は、第1センサ17により出力される光路が遮光されているか否かを判定する。検知手段16は、光路が遮光されていると判定した場合、硬貨が所定の高さを超えて入金されていると判定する。また、検知手段16は、光路が遮光されていないと判定した場合、硬貨が所定の高さまで入金されていないと判定する。
【0042】
図4に示すように、第2センサ18は、固定トレイ部分13の下部に設けられるセンサであり、固定トレイ部分13上にある硬貨の有無を判定するためのセンサである。例えば、第2センサ18は磁気センサを含む。
【0043】
検知手段16は、第2センサ18による硬貨の有無の判定に基づき、入出金部10における硬貨の残留の有無を判定する。検知手段16は、第2センサ18により硬貨の存在が認められた場合、硬貨が入出金部10に残留していると判定する。また、検知手段16は、第2センサ18により硬貨の存在が認められなかった場合、硬貨が入出金部10に残留していないと判定する。
【0044】
図1に示すように、繰出部20は、入出金部10から送られた硬貨を1枚ずつ繰り出して、識別部30、搬送選別部35に送るための機構である。繰出部20から繰り出された硬貨が搬送選別部35により選別されなかった場合、搬送選別部35から繰出部20に硬貨が戻され、繰出部20は搬送選別部35から戻された硬貨を再び繰り出す。また、繰出部20は、硬貨を繰り出した後に残留した異物を異物返却口21に送る。また、出金処理時に入出金部10に送られた硬貨が一定時間この入出金部10から取り出されなかった場合に入出金部10から繰出部20に残留硬貨が送られ、この残留硬貨は繰出部20から取込回収庫22に送られる。また、入金処理時に硬貨を金種毎に収納部40に収納する場合や出金処理時に収納部40から硬貨が繰り出された場合において、識別部30により識別することができなかった硬貨や出金に適さない硬貨(例えば、変形や汚れがある硬貨、旧硬貨等)も最終的に繰出部20から取込回収庫22に送られる。
【0045】
識別部30は、搬送部50により搬送される硬貨を識別するための機構である。例えば、識別部30はイメージセンサや磁気センサ等を含み、イメージセンサで撮像された硬貨の画像や磁気センサによる検知結果に基づいて、硬貨の金種、真偽、正損、表裏、新旧、搬送状態等の識別を行う。このようにして、識別部30は硬貨を正常硬貨および異常硬貨に識別する。識別部30による硬貨の識別結果は制御部60に送られる。
【0046】
搬送選別部35は、識別部30による識別結果に基づいて、硬貨を選別する。具体的には、硬貨の入金処理時に、搬送選別部35は、識別部30で正常と判定された硬貨を大量保留部70または収納部40または搬送部50に送る。搬送選別部35には選別板が設けられており、この選別板により、硬貨を金種毎に収納部40に送ることができるようになる。日本国硬貨を例にした場合、搬送選別部35は、識別部30による識別結果に基づいて、硬貨を1円、5円、10円、50円、100円または500円として識別する。一方、硬貨の入金処理時に、搬送選別部35は、識別部30で正常ではないと判定された硬貨を入出金部10に送る。また、硬貨の出金処理時に、搬送選別部35は、繰出部20から繰り出された硬貨を入出金部10に送る。
【0047】
大量保留部70は、入金処理時に識別部30により正常と判定された硬貨を一時的に収納するものである。大量保留部70に硬貨が一時的に収納された後、入金確定の指令が制御部60に与えられると、大量保留部70から搬送部50に硬貨が送られ、搬送部50から繰出部20に搬送される。そして、繰出部20から繰り出された硬貨が識別部30により識別された後、搬送選別部35が硬貨を金種別に選別することにより収納部40に金種毎に収納される。
【0048】
収納部40は、硬貨を金種毎に収納する。収納部40は、硬貨処理装置1の内部に複数配列されている。また、各収納部40には繰出機構42が設けられている(
図13参照)。出金処理時には収納部40に収納されている硬貨が繰出機構42により搬送部50に繰り出されるようになっている。
【0049】
搬送部50は、収納部40や大量保留部70から送られた硬貨を繰出部20に搬送するために使用される搬送機構である。更に、搬送部50は、入金が少量枚数だった場合の一時保留部としても使用される。
【0050】
収納カセット80および回収箱90は、大量保留部70から送られた硬貨を収納するための容器である。
図11および
図12に示すように、回収箱90は、長手軸を有する第1の板状部91と、第1の板状部91と同一形状を有し、第1の板状部91の各長辺と各々長辺で接続して同一方向に90度で立設する第2の板状部92および第3の板状部93と、第1の板状部91、第2の板状部92および第3の板状部93で構成される組立体の長手軸方向の一端で、3つの板状部91、92、93の各短辺と3辺でそれぞれ接続する第4の板状部94と、組立体の長手軸方向の他端で、その3辺とそれぞれ接続する辺部を有する硬貨搬出部95を備える。硬貨搬出部95の底面部95aは、2回上方傾斜して先細りに延在し、その先端が曲線状に形成されている。硬貨搬出部95の側面部95b、95cは、底面部95aの先端を規定する曲線の端部に向けて直線状に上方傾斜して延在し、底面部95aの曲線の端部と接続する。第4の板状部94の外表面には取っ手部96が形成されており、硬貨処理装置1から回収箱90を引き出す際に用いられる。このような形状により、回収箱90から硬貨を搬出する際、硬貨が回収箱90の先端に集まりながら出ていくため、硬貨がこぼれ難くなり、操作者の利便性が向上する。また、先端が先細りであるため、回収箱90から硬貨を搬出する際、硬貨処理装置1の表示画面といった周辺部品等と干渉し難くなる。また、先端が曲線形状であるため、安全性も担保できる。
【0051】
次に、このような構成からなる硬貨処理装置1の制御系の構成について
図13を用いて説明する。
【0052】
本実施の形態の硬貨処理装置1には、入出金部10、繰出部20、識別部30、搬送選別部35、収納部40および搬送部50の制御をそれぞれ行う制御部60が設けられている。具体的には、制御部60には、入出金部10の硬貨検知センサ111、シャッタ開閉センサ112、駆動部15、検知手段16の第1センサ17および第2センサ18、繰出部20、識別部30、搬送選別部35、収納部40の繰出機構42、搬送部50等が接続されている。ここで、識別部30による硬貨の識別結果に係る情報や、硬貨検知センサ111による硬貨の検知結果に係る情報、検知手段16による硬貨の検知結果に係る情報等は制御部60に送られるようになっている。また、硬貨処理装置1の各構成部材に制御部60から指令信号が送られることにより、これらの構成部材の制御が行われるようになっている。
【0053】
また、制御部60には操作表示部110、記憶部120および通信部130がそれぞれ接続されている。操作表示部110は、例えばタッチパネル等から構成されており、硬貨処理装置1に収納されている硬貨の枚数等の様々な情報が表示されるようになっている。また、操作者は操作表示部110により様々な指令を制御部60に入力することができるようになっている。また、記憶部120には、硬貨処理装置1における硬貨の入金処理や出金処理等の処理履歴や、硬貨処理装置1に収納されている硬貨の枚数等に関する情報が記憶されるようになっている。また、制御部60は通信部130を介して、硬貨処理装置1とは別に設けられた外部装置(具体的には、例えばPOSレジスタ)に対して信号の送受信を行うことができるようになっている。制御部60は、各部とバス140等を介して電気的に接続されている。
【0054】
(硬貨処理装置1の動作フロー)
次に、硬貨処理装置1の動作フローについて、図面を用いて説明する。
【0055】
-入金処理-
図14に示すように、操作者は、硬貨入出金口11aから入出金部10に入金対象の硬貨を投入する(ステップS1)。
【0056】
硬貨検知センサ111が、硬貨が投入されたことを識別する。硬貨検知センサ111により硬貨が検知されてから所定の時間が経過した後、シャッタ11bが閉じる(ステップS2)。所定の時間が経過する前であっても、操作者によって、操作表示部の「計数開始」ボタンを押下されれば、シャッタ11bが閉じる。
【0057】
次に、検知手段16は、第1センサ17により出力される光路を硬貨が遮光しているか否かを判定する(ステップS3)。検知手段16は、光路が遮光されていると判定した場合、硬貨が所定の高さを超えて入金されていると判定する。また、検知手段16は、光路が遮光されていないと判定した場合、硬貨が所定の高さまで入金されていないと判定する。
【0058】
検知手段16が、硬貨が所定の高さを超えて入金されていると判定した場合、駆動部15は可動トレイ部分14を小刻みに回転させる(ステップS4)。具体的には、可動トレイ部分14が固定トレイ部分13の内側の領域に位置している箇所では駆動部15は可動トレイ部分14を所定の範囲内で小刻みに回転させる。一方、可動トレイ部分14が固定トレイ部分13の内側の領域から外れた箇所に位置している箇所では駆動部15は可動トレイ部分14を連続的に回転させる。このことにより、大量の硬貨が一度に入出金部10から繰出部20に送られてしまうことにより繰出部20において硬貨の繰り出し不良が発生してしまうことを防止することができる。
【0059】
また、検知手段16が、硬貨が所定の高さまで入金されていないと判定した場合、駆動部15は可動トレイ部分14を通常の回転速度よりも高速に回転させる(ステップS5)。このことにより、入出金部10の受け部12に受け入れられている硬貨の量が多くない場合には入出金部10から繰出部20に硬貨をより短時間で送ることができるようになる。
【0060】
このような可動トレイ部分14の回転により、受け部12に受け入れられた硬貨が可動トレイ部分14の押出面14aによって押し出されることにより適量ずつ繰出部20に繰り出される(ステップS6)。繰出部20に送られた硬貨は、当該繰出部20により識別部30に繰り出される(ステップS7)。
【0061】
検知手段16は、第2センサ18により、硬貨が固定トレイ部分13に残留していないかを判定する(ステップS8)。
【0062】
第2センサ18が硬貨の存在を認めた場合、検知手段16は、入出金部10に硬貨が残留していると判定する。この場合、検知手段16は、駆動部15をそのまま駆動させることにより可動トレイ部分14の回転を継続させ(ステップS9)、第2センサ18が硬貨の存在を認めなくなるまで第2センサ18に計測処理を繰り返させる。一方、第2センサ18が硬貨の存在を認めなかった場合、検知手段16は、入出金部10には硬貨の残留はないと判定する。この場合、検知手段16は、駆動部15を停止させることにより可動トレイ部分14の回転を停止させるための信号を出力する(ステップS10)。
【0063】
また、可動トレイ部分14が回転している間も、繰出部20は硬貨を繰り出す(ステップS11)。繰出部20により繰り出された硬貨は識別部30に送られる。このように、硬貨を入出金部10から繰出部20に徐々に送り込みながら、繰出部20から硬貨を繰り出すことにより、繰出部20からの適正な硬貨の繰り出し動作が行われる。なお、繰出部20は、硬貨の繰り出し後に繰出部20に残留した異物を異物返却口21に送る(ステップS12)。
【0064】
識別部30は、繰出部20から繰り出された硬貨を撮像とともに磁気の変化を検出し、取得した画像や磁気センサによる検知結果に基づいて、硬貨の金種、真偽、正損、表裏、新旧、搬送状態等の識別を行う(ステップS13)。識別部30により異常があると判定された硬貨は、異常硬貨として入出金部10に返却される(ステップS14)。識別部30により正常硬貨と判定された硬貨は大量保留部70や搬送部50に送られ、大量保留部70で一時的に保留される。
【0065】
その後、入金確定の指令が操作者により操作表示部110等によって制御部60により入力されると、大量保留部70から搬送部50に硬貨が送られ、この硬貨は搬送部50により繰出部20に送られる。そして、繰出部20から硬貨が繰り出され、繰り出された硬貨は識別部30による識別結果に基づいて搬送選別部35により金種毎に選別され、選別された硬貨は、金種毎に分けられて収納部40に収納される(ステップS15)。一方、大量保留部70で硬貨が一時的に保留された後、入金取止めの指令が操作者により操作表示部110等によって制御部60により入力されると、大量保留部70から搬送部50に硬貨が送られ、この硬貨は搬送部50により繰出部20に送られる。そして、繰出部20から硬貨が繰り出され、繰り出された硬貨は入出金部10に戻される。入出金部10のシャッタ11bが開放されると、操作者により硬貨が取り出される。このようにして、硬貨の入金処理が完了する。
【0066】
-出金処理-
図15に示すように、操作者から操作表示部110等により硬貨の出金指示を制御部60が受け付けると、制御部60から収納部40の繰出機構42に、硬貨を搬送部50へ繰り出す指示が送信される(ステップS16)。そして、指定された金額に対応した硬貨が繰出機構42により各収納部40から搬送部50に繰り出される(ステップS17)。搬送部50に送り出された硬貨は繰出部20に搬送される。
【0067】
繰出部20に搬送された硬貨は、繰出部20から1枚ずつ繰り出される。繰り出された硬貨は、識別部30により真偽、正損、金種、搬送状態等が識別された後、入出金部10に送られる(ステップS18)。この時、受け部12に受け入れられた硬貨は溝部13b、14cに沿って、操作者が取り出し易いように線状に配列される。
【0068】
その後、シャッタ11bが開き、操作者は入出金部10の受け部12から硬貨を取り出し可能となる(ステップS19)。また、受け部12に硬貨が送られた後に一定時間が経過すると、シャッタ11bが閉じ、入出金部10から繰出部20に送られる。そして、繰出部20から取込回収庫22に硬貨が送られる。このようにして、出金処理が終了する。
【0069】
-回収処理-
次に、硬貨の回収処理について説明する。収納部40に収納された硬貨は搬送部50により繰出部20に送られ、繰出部20から繰り出された硬貨が搬送選別部35により大量保留部70に搬送された後、収納カセット80および回収箱90に送られる。これにより、収納カセット80に収納された硬貨はそのままに、別途回収箱90を硬貨処理装置1から取り出すことができる。また、前述のような回収箱90の形状のため、操作者の利便性の向上、硬貨処理装置1の表示画面といった周辺部品等との干渉の回避、硬貨処理装置1または他の装置への硬貨投入時に操作者に対する安全性、も担保することができる。
【0070】
以上のような構成からなる本実施の形態の硬貨処理装置1によれば、硬貨処理装置1は、入出金部10(入金部)と、入出金部10から送られた硬貨の繰り出しを行う繰出部20と、を備える。入出金部10は、固定トレイ部分13と、可動トレイ部分14と、可動トレイ部分14を駆動する駆動部15とを含む。待機状態において固定トレイ部分13と可動トレイ部分14とにより硬貨の受け部12が構成される。駆動部15によって可動トレイ部分14が駆動されることにより可動トレイ部分14が固定トレイ部分13に沿って移動すると受け部12に受け入れられた硬貨が繰出部20に送られるようになっている。このような硬貨処理装置1によれば、可動トレイ部分14が移動することにより、硬貨を繰出部20に送ることができる。より詳細に説明すると、従来技術では、半円筒状の硬貨の受け皿を介して、硬貨の入金処理および出金処理を行う形態が知られていた。しかし、大量の硬貨が入金される場合には、受け皿の傾斜が緩い箇所等に硬貨が滞留して入金処理が停滞し得る。これに対し、本実施の形態の硬貨処理装置1では、固定トレイ部分13および可動トレイ部分14という複数の部分によって硬貨の受け部12が構成され、受け部12に収容された硬貨を可動トレイ部分14により繰出部20に送ることができる。
【0071】
また、本実施の形態の硬貨処理装置1においては、上述したように、可動トレイ部分14は軸心を中心として回転するようになっている。この場合は、可動トレイ部分14の回転範囲内で繰り出し処理を行えるため、入出金部10をコンパクトにすることもできる。
【0072】
また、本実施の形態の硬貨処理装置1においては、上述したように、軸心と可動トレイ部分14との間の距離は軸心と固定トレイ部分13との間の距離よりも小さくなっている。この場合は、固定トレイ部分13の内側にある硬貨を、回転する可動トレイ部分14により繰り出すことができる。
【0073】
また、本実施の形態の硬貨処理装置1においては、上述したように、硬貨を繰出部20に向かって押し出すための押出面14aが可動トレイ部分14の端面に形成されている。この場合は、可動トレイ部分14の一定の面積を有する端面により硬貨を押し出すことができるため、より確実に入出金部10から繰出部20に硬貨を送ることができるようになる。
【0074】
また、本実施の形態の硬貨処理装置1においては、上述したように、固定トレイ部分13および可動トレイ部分14は、可動トレイ部分14が移動しているときに互いに入り組むような形状となっている。この場合は、硬貨が固定トレイ部分13および可動トレイ部分14の間で噛み込まれることを防ぐことができる。
【0075】
また、本実施の形態の硬貨処理装置1においては、上述したように、固定トレイ部分13および可動トレイ部分14はそれぞれ断面において波形状部分13a、14bを有しており、可動トレイ部分14が移動しているときに固定トレイ部分13の断面における波形状部分13aおよび可動トレイ部分14の断面における波形状部分14bが互いに入り組むようになっている。この場合は、硬貨が固定トレイ部分13および可動トレイ部分14の間で噛み込まれることをより一層確実に防ぐことができる。
【0076】
また、本実施の形態の硬貨処理装置1は、上述したように、受け部12に受け入れられた硬貨を検知するための検知手段16と、検知手段16による検知結果に基づいて、異なる態様で可動トレイ部分14を駆動するよう駆動部15の制御を行う制御部60とを更に備える。この場合は、硬貨の検知結果に応じて、受け部12から繰出部20に一度に送られる硬貨の量や受け部12から繰出部20に硬貨が送られる時間を適宜変更することができる。
【0077】
また、本実施の形態の硬貨処理装置1においては、上述したように、検知手段16は、受け部12に受け入れられている硬貨のうち所定の高さに位置する硬貨を検知するようになっている。この場合は、硬貨が入出金部10にある場合における硬貨の所定の高さに基づき可動トレイ部分14の回転態様を変更するため、受け部12に収納された硬貨の高さという指標を用いて、簡易に可動トレイ部分14の回転態様を変更できる。
【0078】
また、本実施の形態の硬貨処理装置1においては、上述したように、制御部60は、検知手段16による検知結果に基づいて可動トレイ部分14の移動速度が変わるよう駆動部15の制御を行う。この場合は、可動トレイ部分14の回転速度を変更することにより、受け部12から繰出部20に硬貨が送られる時間を適宜変更することができる。
【0079】
また、本実施の形態の硬貨処理装置1においては、上述したように、処理されるべき硬貨の直径よりも幅が大きい溝部13b、14cが固定トレイ部分13および可動トレイ部分14に線状に延びるよう形成されている。この場合は、溝部13b、14cに硬貨を一列に配列させ易くすることができ、硬貨を取り出し易くなる。
【0080】
なお、本実施の形態は、固定トレイ部分13および可動トレイ部分14に溝部13b、14cがそれぞれ形成されるような態様に限定されることはない。変形例として、固定トレイ部分13および可動トレイ部分14のうち何れか一方のみに溝部13b、14cが形成されていてもよい。
【0081】
また、本実施の形態の硬貨処理装置1においては、上述したように、入出金部10(出金部)と、硬貨が収納される収納部40と、収納部40から繰り出された硬貨を入出金部10に搬送する搬送部50と、を備える。入出金部10は、硬貨を受ける受け部12を有しており、処理されるべき硬貨の直径よりも幅が大きい溝部13b、14cが受け部12に線状に延びるよう形成されている。この場合は、硬貨が溝部13b、14cに一列に配列することで硬貨を取り出し易くなる。
【0082】
また、本実施の形態の硬貨処理装置1においては、上述したように、受け部12は断面がU字形状またはV字形状となっており、溝部13b、14cは受け部12における最も低い箇所に形成されている。この場合は、硬貨を受け部12の最深部に一列に配列させることができ、硬貨をより取り出し易くすることができる。
【0083】
また、本実施の形態の硬貨処理装置1においては、上述したように、溝部13b、14cの深さは処理されるべき硬貨の直径よりも小さくなっている。この場合は、溝部13b、14cに収納された硬貨の上に他の硬貨が積層し難くなり、硬貨の取り出し時に硬貨が溝部13b、14cの周辺に散らばることを防止することができる。
【0084】
また、本実施の形態の硬貨処理装置1においては、上述したように、溝部13b、14cの深さは処理されるべき硬貨の半径よりも小さくなっている。この場合は、溝部13b、14cに収納された硬貨の上に他の硬貨が更に積層し難くなり、硬貨の取り出し時に硬貨が溝部13b、14cの周辺に散らばることをより防止することができる。
【0085】
[他の実施の形態]
本実施の形態において説明した硬貨処理装置1は一例であり、本開示、その適用物、またはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。硬貨処理装置1は、本開示の要旨を変更しない範囲で適宜設計変更が可能である。
【0086】
本実施の形態では、可動トレイ部分14は半椀状であるものと例示して説明したが、固定トレイ部分13と協働して硬貨を繰出部20に送ることができるのであればこれに限定されない。例えば、可動トレイ部分14の可動方向の端面が本実施の形態のような形状をしていれば、他の部分の形状は特に限定されない。
【0087】
また、本実施の形態では、駆動部15は、硬貨が所定の高さを超えて入出金部10に収納されている場合には、可動トレイ部分14を数度ずつ駆動させ、可動トレイ部分14を小刻みに回転させる形態を例示して説明したが、これに限定されない。例えば、駆動部15は、硬貨が所定の高さを超えて入出金部10に収納されている場合には、可動トレイ部分14を通常の回転速度よりも低速に回転させてもよい。これにより、硬貨が所定の高さを超えて入出金部10に収納されている場合において、大量の硬貨が一度に入出金部10から繰出部20に送られてしまうことにより繰出部20において硬貨の繰り出し不良が発生してしまうことを防止することができる。
【0088】
また、制御部60は、検知手段16による検知結果に基づいて可動トレイ部分14を選択的に往復移動させるよう駆動部15の制御を行ってもよい。例えば、
図16に示すように、駆動部15は、硬貨が所定の高さを超えて入出金部10に収納されている場合には、可動トレイ部分14を所定の範囲内で選択的に往復移動させて揺動させてもよい。
【0089】
また、本実施の形態では、固定トレイ部分13について、入出金部10において固定され、可動トレイ部分14をその軸心を中心として回転するようになっている形態を例示して説明したが、これに限定されない。例えば、
図17に示すように、固定トレイ部分13の代わりに第2可動トレイ部分13pが設けられていてもよい。この場合、駆動部15は、硬貨が所定の高さまで入出金部10に収納されていない場合には、可動トレイ部分13pを
図17における矢印方向に回転させる。これにより、硬貨が所定の高さまで入出金部10に収納されていない場合において、硬貨が可動トレイ部分13pに乗ったまま可動トレイ部分13pとともに移動し、可動トレイ部分13pが所定の傾きとなったときにこの可動トレイ部分13p上の硬貨を繰出部20に送ることができ、よって受け部12から繰出部20に硬貨が送られる時間を短縮することができる。
【0090】
以上のように、可動トレイ部分14および固定トレイ部分13(または第2可動トレイ部分13p)の駆動形態を適宜変更することにより、入出金部10への硬貨の入金枚数に関わらず、入金処理に係る処理時間の短縮を図ることができる。
【0091】
また、上記の例では入金部および出金部が一体化した入出金部10について述べたが、本実施の形態の硬貨処理装置1において、入出金部10として、入金部および出金部が別々に設けられていてもよい。また、入金機能を有さずに、出金機能を有する硬貨処理装置の出金部に本発明の原理を適用してもよい。この態様では、上述される溝部(13b相当)が出金部の底部に形成され、払出された硬貨が溝部に沿って整列されて、利用者が取出しやすい構成となる。
【符号の説明】
【0092】
1 硬貨処理装置
10 入出金部
11a 硬貨入出金口
111 硬貨検知センサ
112 シャッタ開閉センサ
11b シャッタ
12 受け部
13 固定トレイ部分
13a 固定トレイ部分の波形状部分
13b 溝部
13p 第2可動トレイ部分
14 可動トレイ部分
14a 押出面
14b 可動トレイ部分の波形状部分
14c 溝部
15 駆動部
15a 回転軸
16 検知手段
17 第1センサ
18 第2センサ
20 繰出部
21 異物返却口
22 取込回収庫
30 識別部
35 搬送選別部
40 収納部
42 繰出機構
50 搬送部
60 制御部
70 大量保留部
80 収納カセット
90 回収箱
91 第1の板状部
92 第2の板状部
93 第3の板状部
94 第4の板状部
95 硬貨搬出部
95a 底面部
95b 側面部
95c 側面部
96 取っ手部
110 操作表示部
120 記憶部
130 通信部
140 バス