(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024124706
(43)【公開日】2024-09-13
(54)【発明の名称】N-アリールアミド化合物の製造方法
(51)【国際特許分類】
C07C 231/10 20060101AFI20240906BHJP
C07C 233/75 20060101ALI20240906BHJP
B01J 21/16 20060101ALI20240906BHJP
B01J 27/188 20060101ALI20240906BHJP
B01J 29/18 20060101ALI20240906BHJP
B01J 29/08 20060101ALI20240906BHJP
B01J 29/70 20060101ALI20240906BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20240906BHJP
【FI】
C07C231/10
C07C233/75
B01J21/16 Z
B01J27/188 Z
B01J29/18 Z
B01J29/08 Z
B01J29/70 Z
C07B61/00 300
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023032578
(22)【出願日】2023-03-03
(71)【出願人】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
(72)【発明者】
【氏名】市塚 知宏
(72)【発明者】
【氏名】牧野 貴至
(72)【発明者】
【氏名】石坂 孝之
【テーマコード(参考)】
4G169
4H006
4H039
【Fターム(参考)】
4G169AA02
4G169AA03
4G169BA02A
4G169BA03A
4G169BA07A
4G169BA07B
4G169BA10A
4G169BA10B
4G169BA45A
4G169BB04A
4G169BB07A
4G169BB07B
4G169BB14A
4G169BB14B
4G169BC16B
4G169BC22B
4G169BC31B
4G169BC35B
4G169BC51B
4G169BC60A
4G169BC60B
4G169BC66B
4G169BC67B
4G169BC68B
4G169BD07A
4G169BD07B
4G169CB25
4G169CB61
4G169DA08
4G169EA01Y
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4G169EA06
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4G169FB26
4G169ZA04B
4G169ZA06A
4G169ZA06B
4G169ZA19B
4H006AA02
4H006AC53
4H006BA09
4H006BA10
4H006BA11
4H006BA14
4H006BA19
4H006BA20
4H006BA21
4H006BA71
4H006BB11
4H006BC10
4H006BJ50
4H006BP30
4H006BV55
4H039CA71
4H039CL25
(57)【要約】
【課題】簡便な方法で、効率よくN-アリールアミド化合物を製造できる方法を提供することである。
【解決手段】ビニルエステル類とアリールアミン類から直接的にN-アリールアミド化合物を製造する方法であって、前記ビニルエステル類と前記アリールアミン類とを、ハメットの酸度関数(H0)の値が-8以下である不均一系酸触媒の存在下で接触させる、N-アリールアミド化合物の製造方法である。前記不均一系酸触媒は、モンモリロナイト、モルデナイト、ゼオライト、シリカアルミナ、メソポーラスシリカ、ベントナイト、カオリナイト、オキソ酸担持金属酸化物、ヘテロポリ酸、ヘテロポリ酸担持金属酸化物からなる群から選択されるとよい。また、前記ビニルエステル類と前記アリールアミン類との反応を、80℃以上140℃以下の温度下で行うことや、有機溶媒の不存在下で行うことでもよい。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビニルエステル類とアリールアミン類から直接的にN-アリールアミド化合物を製造する方法であって、前記ビニルエステル類と前記アリールアミン類とを、ハメットの酸度関数(H0)の値が-8以下である不均一系酸触媒の存在下で接触させることを特徴とするN-アリールアミド化合物の製造方法。
【請求項2】
前記ビニルエステル類は下記式(1)で表され、前記アリールアミン類は下記式(2)で表され、前記N-アリールアミド化合物は下記式(3)で表されることを特徴とする請求項1に記載のN-アリールアミド化合物の製造方法。
【化1】
(式(1)中、R
1は、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルケニル基またはアルキニル基である。さらに、R
1は置換基を備えていても良い。R
2は、水素原子、アルキル基、アリール基、またはアルコキシ基である。R
3及びR
4は、それぞれ互いに独立して水素原子、アルキル基、またはアリール基である。)
【化2】
【化3】
(式(2)および式(3)中、R
5-R
9は、それぞれ互いに独立して水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルコキシ基、ヒドロキシ基、カルボニル基、アルコキシカルボニル基、アミノ基、ニトリル基、またはハロゲン原子である。さらに、R
5-R
9は、置換基を備えていても良い。また、R
5-R
9において、隣接する2箇所が結合して環を形成していてもよい。R
10は、水素原子、アルキル基、アリール基、またはヘテロアリール基である。)
【請求項3】
前記不均一系酸触媒は、モンモリロナイト、モルデナイト、ゼオライト、シリカアルミナ、メソポーラスシリカ、ベントナイト、カオリナイト、オキソ酸担持金属酸化物、ヘテロポリ酸、ヘテロポリ酸担持金属酸化物からなる群から選択される、1種または2種以上であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のN-アリールアミド化合物の製造方法。
【請求項4】
前記不均一系酸触媒は、プロトン型モンモリロナイト、金属交換型モンモリロナイト、プロトン型モルデナイト、プロトン型ゼオライト、りんタングステン酸からなる群から選択される、1種または2種以上であることを特徴とする請求項3に記載のN-アリールアミド化合物の製造方法。
【請求項5】
前記ビニルエステル類と前記アリールアミン類との反応を、80℃以上140℃以下の温度下で行うことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のN-アリールアミド化合物の製造方法。
【請求項6】
前記ビニルエステル類と前記アリールアミン類との反応を、80℃以上140℃以下の温度下で行うことを特徴とする請求項3に記載のN-アリールアミド化合物の製造方法。
【請求項7】
前記ビニルエステル類と前記アリールアミン類との反応を、80℃以上140℃以下の温度下で行うことを特徴とする請求項4に記載のN-アリールアミド化合物の製造方法。
【請求項8】
前記ビニルエステル類と前記アリールアミン類との反応を、有機溶媒の不存在下で行うことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のN-アリールアミド化合物の製造方法。
【請求項9】
前記ビニルエステル類と前記アリールアミン類との反応を、有機溶媒の不存在下で行うことを特徴とする請求項3に記載のN-アリールアミド化合物の製造方法。
【請求項10】
前記ビニルエステル類と前記アリールアミン類との反応を、有機溶媒の不存在下で行うことを特徴とする請求項4に記載のN-アリールアミド化合物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、N-アリールアミド化合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
N-アリールアミド化合物は、ブロック共重合体型熱可塑性エラストマーのハードセグメントのモノマー、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、液晶ポリマー、エポキシ樹脂等の原料、高分子化合物の添加剤、感熱記録材料用の薬剤として有用な化合物である。また、N-アリールアミド化合物を合成する反応は、電子材料、医薬品、農薬等の各種化学品の製造における主要構造を構成するための重要反応として知られている。
【0003】
N-アリールアミド化合物は、ビニルエステル類とアリールアミン類から直接的に得られるが、この反応は反応性が低いため、反応性を飛躍的に向上させるための添加剤または触媒を加えることが必要とされる。
例えば、N-アリールアミド化合物の製造方法として、ビニルエステルとアリールアミンの混合物へ硫酸などの強酸を加えて反応させる方法が知られている(非特許文献1)。また、ビニルエステルとアリールアミンの混合物へヨウ素を加えて反応させる製造方法も知られている(非特許文献2)。さらに、触媒として、鉄(III)トリフラートを用いるビニルエステルとアリールアミンの反応によるN-アリールアミド化合物の製造方法が報告されている(非特許文献3)。
【0004】
他の触媒を用いるN-アリールアミド化合物の製造方法としては、有機触媒としてトリアゾールと強塩基を用いるビニルエステルとアリールアミンの反応による方法が報告されている(非特許文献4)。また、有機触媒としてイミダゾリウム塩と強塩基を用いるビニルエステルとアリールアミンの反応によるN-アリールアミド化合物の製造方法も知られている(非特許文献5)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Rothman, E. S., et al. The Journal of Organic Chemistry 1969, vol.34, No.8, pp.2486-2488.
【非特許文献2】Ahmed, N., et al. Tetrahedron Letters 2006, 47, pp.5345-5349.
【非特許文献3】Zhu, X., et al. Green Chemistry 2018, 20, pp.1444-1447.
【非特許文献4】Yang, X., et al. Organic Letters 2009, vol.11, No.7, pp.1499-1502.
【非特許文献5】Guo, H., et al. Tetrahedron 2015, 71, pp.3472-3477.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
非特許文献1-2に記載の方法では、硫酸やヨウ素を使用することから、製造容器の腐食や硫酸等の後処理の煩雑さにより、産業上有利な方法とは言えない。
また、非特許文献3に記載の方法は、腐食性の低い触媒を用いるものの不安定で取り扱いが難しく、かつ高価な鉄(III)トリフラートを必要とすることや、生成物と触媒成分との分離に多くの手間とコストもかかることから、この方法も産業上有利な方法とは言えない。
そして、非特許文献4-5に記載の方法においても、反応後に生成物中へ触媒等が溶け込んでしまい、生成物の精製処理に多くのエネルギーが必要であり、また精製処理で生じた副産物の廃棄処理に手間と費用もかかる。
【0007】
本発明は、このような課題を解決するためになされたもので、簡便で効率よく、ビニルエステル類とアリールアミン類からN-アリールアミド化合物を製造可能な方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、生成物との分離が困難な均一系触媒を使用する代わりに、腐食性がなく、かつ生成物と溶け合わない不均一系酸触媒(固体酸触媒)を用いて効果的に基質を活性化することで、比較的温和な反応条件下で効率よくビニルエステル類とアリールアミン類から直接的に様々なN-アリールアミド化合物を製造できる。
【0009】
本発明は、下記に記載のN-アリールアミド化合物の製造方法に関する。
(1)ビニルエステル類とアリールアミン類から直接的にN-アリールアミド化合物を製造する方法であって、前記ビニルエステル類と前記アリールアミン類とを、ハメットの酸度関数(H
0)の値が-8以下である不均一系酸触媒の存在下で接触させる、N-アリールアミド化合物の製造方法である。
(2)前記ビニルエステル類は下記式(1)で表され、前記アリールアミン類は下記式(2)で表され、前記N-アリールアミド化合物は下記式(3)で表される、前記(1)に記載のN-アリールアミド化合物の製造方法である。
【化1】
(式(1)中、R
1は、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルケニル基またはアルキニル基である。さらに、R
1は置換基を備えていても良い。R
2は、水素原子、アルキル基、アリール基、またはアルコキシ基である。R
3及びR
4は、それぞれ互いに独立して水素原子、アルキル基、またはアリール基である。)
【化2】
【化3】
(式(2)および式(3)中、R
5-R
9は、それぞれ互いに独立して水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルコキシ基、ヒドロキシ基、カルボニル基、アルコキシカルボニル基、アミノ基、ニトリル基、またはハロゲン原子である。さらに、R
5-R
9は、置換基を備えていても良い。また、R
5-R
9において、隣接する2箇所が結合して環を形成していてもよい。R
10は、水素原子、アルキル基、アリール基、またはヘテロアリール基である。)
【0010】
(3)前記不均一系酸触媒は、モンモリロナイト、モルデナイト、ゼオライト、シリカアルミナ、メソポーラスシリカ、ベントナイト、カオリナイト、オキソ酸担持金属酸化物、ヘテロポリ酸、ヘテロポリ酸担持金属酸化物からなる群から選択される、1種または2種以上である前記(1)または(2)に記載のN-アリールアミド化合物の製造方法である。
(4)前記不均一系酸触媒は、プロトン型モンモリロナイト、金属交換型モンモリロナイト、プロトン型モルデナイト、プロトン型ゼオライト、りんタングステン酸からなる群から選択される、1種または2種以上である前記(3)に記載のN-アリールアミド化合物の製造方法である。
(5)前記ビニルエステル類と前記アリールアミン類との反応を、80℃以上140℃以下の温度下で行う、前記(1)または(2)に記載のN-アリールアミド化合物の製造方法である。
(6)前記ビニルエステル類と前記アリールアミン類との反応を、80℃以上140℃以下の温度下で行う、前記(3)に記載のN-アリールアミド化合物の製造方法である。
(7)前記ビニルエステル類と前記アリールアミン類との反応を、80℃以上140℃以下の温度下で行う、前記(4)に記載のN-アリールアミド化合物の製造方法である。
(8)前記ビニルエステル類と前記アリールアミン類との反応を、有機溶媒の不存在下で行う、前記(1)または(2)に記載のN-アリールアミド化合物の製造方法である。
(9)前記ビニルエステル類と前記アリールアミン類との反応を、有機溶媒の不存在下で行う、前記(3)に記載のN-アリールアミド化合物の製造方法である。
(10)前記ビニルエステル類と前記アリールアミン類との反応を、有機溶媒の不存在下で行う、前記(4)に記載のN-アリールアミド化合物の製造方法である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、簡便で効率よく、ビニルエステル類とアリールアミン類からN-アリールアミド化合物を製造可能な方法を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下において、本発明の実施の形態について詳しく説明する。なお、本発明の実施の形態において、温度範囲や濃度範囲等を示すときは、特に記載がない場合は上限値及び下限値を含むものとする。また、%濃度は質量%を示すものとする。さらに、以下の説明において例示される材料等は一例であって、本発明はそれらに限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することが可能である。
【0013】
本実施形態のN-アリールアミド化合物の製造方法は、不均一系酸触媒の存在下、所定温度でビニルエステル類とアリールアミン類とを反応させて、直接的にN-アリールアミド化合物を製造する方法である。なお、「直接的に」とは、「ビニルエステル類を別の活性エステルへと誘導する段階を経ずに」を意味している。すなわち、一段階で合成できることである。また、ビニルエステル類とアリールアミン類を「基質」とも記す。以下、各化合物について具体的に説明する。
【0014】
(基質)
基質としては、ビニルエステル類であれば特に制限はない。また、アリールアミン類も特に制限はない。基質としては、例えば、下記式(1)で表される化合物(以下、「化合物1」とも記す。)、下記式(2)で表される化合物(以下、「化合物2」とも記す。)等の、カルボン酸のビニルエステル化合物、及び芳香環に各種置換基が接続されたアリールアミン化合物が挙げられる。
【化4】
【0015】
式(1)中、R1は、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルケニル基またはアルキニル基である。例えば、炭素数1-10、好ましくは汎用的である炭素数1-6のものが挙げられる。これらの官能基にはさらに、炭素数1-10、好ましくは汎用的である炭素数1-6の炭化水素基、酸素含有基、窒素含有基、硫黄含有基、ハロゲン原子などの置換基を備えていても良い。置換基は、複数個有していても良い。例えば、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、ヒドロキシ基、アミノ基、ニトリル基、チオール基、ハロゲン原子(フッ素、塩素、臭素、ヨウ素)等の置換基が挙げられる。ヘテロアリール基のヘテロ原子は、酸素、窒素、硫黄等が挙げられる。R2は、水素原子、アルキル基、アリール基、またはアルコキシ基である。例えば、炭素数1-8、好ましくは汎用的である炭素数1-6のものが挙げられる。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、フェニル基、エトキシ基等である。R3及びR4は、それぞれ互いに独立して水素原子、アルキル基、またはアリール基である。例えば、炭素数1-8、好ましくは汎用的である炭素数1-6のものが挙げられる。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、フェニル基等である。これらの中でも、反応性や原子効率、生成物と共生成物の分離の簡便さなどの観点から、R2にメチル基、R3とR4に水素原子を有するイソプロペニルエステルが好ましい。
【0016】
具体的には、カルボン酸のビニルエステル化合物としては、酢酸、p-トリル酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸、ステアリン酸、オレイン酸、シトロネル酸、ケイ皮酸、2-フェニルプロピオン酸、3-フェニルプロピオン酸、フェニル酢酸、2-フェノキシ酢酸、マンデル酸、N-保護グリシン、N-保護アラニン、N-保護フェニルアラニンなどのN-保護アミノ酸、安息香酸、4-メチル安息香酸、4-メトキシ安息香酸、4-クロロ安息香酸、4-ニトロ安息香酸、2-メチル安息香酸、2-トリフルオロメチル安息香酸、ピリジンカルボン酸等のビニルエステル化合物及びイソプロペニルエステル化合物などが挙げられる。N-保護アミノ酸の保護基の種類としては、N-アセチル、N-カルボベンゾキシ、N-(9-フルオレニルメチルオキシカルボニル)などが挙げられる。そして、これらの中でも、エステルの反応性と共生成物の安定性・安全性・除去の簡便さなどの観点から、カルボン酸イソプロペニルエステル化合物が好ましい。
なお、ビニルエステルとは、通常、式(1)において、R2-R4がすべて水素原子の構造を有するものを指すが、本明細書においては、R2-R4がすべて水素原子には限定されないことから、ビニルエステル類と記している。なお、単にビニルエステルという場合もある。
【0017】
【化5】
式(2)中、R
5-R
9及びR
10は、N-アリールアミド化合物の生成を阻害するものでなければ特に制限はない。R
5-R
9は、例えばそれぞれ互いに独立して水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルコキシ基、ヒドロキシ基、カルボニル基、アルコキシカルボニル基、アミノ基、ニトリル基、またはハロゲン原子等である。例えば、炭化水素基の場合、炭素数1-10、好ましくは汎用的である炭素数1-6のものが挙げられる。これらの官能基にはさらに、炭素数1-10、好ましくは汎用的である炭素数1-6の炭化水素基、酸素含有基、窒素含有基、硫黄含有基、ハロゲン原子などの他の置換基(上記R
1において例示した置換基)を備えていても良い。また、R
5-R
9において、隣接する2箇所が結合して環を形成していてもよい。R
10は、水素原子、アルキル基、アリール基、またはヘテロアリール基である。例えば、炭素数1-10、好ましくは汎用的である炭素数1-6のものが挙げられる。
R
5-R
9は、反応性の観点から、アルキル基やアルコキシ基、アミノ基などの電子供与性の置換基であることが好ましい。ただし、R
5-R
9のうち1つが電子吸引性の置換基であっても、問題なくN-アリールアミドを合成することができる。
R
5及びR
9は、反応性の観点から、立体的に小さな水素原子、メチル基、エチル基、メトキシ基、エトキシ基であることが好ましい。ただし、R
5とR
9のうち1つが、炭素数が3以上のイソプロピル基やフェニル基といった立体的に大きな置換基であっても、問題なくN-アリールアミドを合成することができる。
【0018】
具体的には、アニリン、2-メトキシアニリン、3-メトキシアニリン、4-メトキシアニリン、3-イソプロポキシアニリン、o-トルイジン、p-トルイジン、2,6-ジメチルアニリン、2,4,6-トリメチルアニリン、4-ヒドロキシアニリン、4-アミノ安息香酸メチル、4-アミノアセトフェノン、4-ニトロアニリン、3-アミノアセトフェノン、3-アミノベンゾニトリル、4-フルオロアニリン、4-クロロアニリン、4-ブロモアニリン、4-ヨードアニリン、1-アミノナフタレン、2-アミノピリジン、3-アミノピリジン、4-アミノピリジン、N-メチルアニリン、ジフェニルアミンなどが挙げられる。なお、アリールアミンとは、通常、芳香環上にアミノ基を有するものを指すが、本明細書においては、ヘテロ芳香環上にアミノ基を有するヘテロアリールアミンも含むことから、アリールアミン類と記している。
【0019】
そして、基質としてのビニルエステル類とアリールアミン類の当量について、アリールアミン類の使用量は、ビニルエステル類に対して、反応効率の観点から、0.5当量から3.0当量が好ましく、特に原子効率や生成物の精製操作の簡便さの観点から、1.0当量から2.0当量がより好ましく、1.1当量から1.5当量が特に好ましい。
【0020】
(触媒)
不均一系酸触媒は、表面にブレンステッド酸点もしくはルイス酸点、あるいはその両方を備えている。また、不均一系酸触媒は基質や生成物と溶け合わず、反応前後で分解もしないため、反応後に濾別および回収することにより、再利用できる。不均一系酸触媒の形態は、特に制限がないが、粉末状、粒状、球状、円柱型などが例示される。好ましくはミクロ細孔構造やメソ細孔構造、層構造を有し酸性度の高い、ゼオライト、シリカアルミナ、メソポーラスシリカ、モンモリロナイトやモルデナイトやカオリナイトなどの粘土鉱物、オキソ酸担持金属酸化物(硫酸化ジルコニア、硫酸化チタニア、硫酸化アルミナ、タングステン酸ジルコニア、モリブデン酸ジルコニアなど)、ヘテロポリ酸やヘテロポリ酸担持金属酸化物(りんタングステン酸担持シリカ、りんタングステン酸担持アルミナ、りんタングステン酸担持ジルコニア、けいタングステン酸担持シリカ、りんモリブデン酸担持シリカなど)等が挙げられる。前記オキソ酸としては、硫酸、ホウ酸、タングステン酸、モリブデン酸などが挙げられる。ゼオライトで好ましくは、プロトン置換したプロトン型(プロトン交換型)ゼオライトや金属交換型ゼオライトである。また、モンモリロナイトで好ましくは、プロトン型モンモリロナイト、金属交換型モンモリロナイトである。これらを複数混合して用いても良い。
【0021】
ヘテロポリ酸としては、例えば、けいタングステン酸、けいモリブデン酸、りんタングステン酸、りんモリブデン酸、けいタングストモリブデン酸、りんバナドタングステン酸、りんバナドモリブデン酸、りんタングストモリブデン酸、けいバナドタングステン酸、および、けいバナドモリブデン酸などが挙げられる。なお、ヘテロポリ酸は、上記に示したものに限定されない。このような固体のヘテロポリ酸は、結晶水を含んでもよく、結晶水を含まなくてもよい。
そして、これら不均一系酸触媒の中でも、安価で入手性が高いこと、反応に適した酸強度により副反応が少なく、高い収率でN-アリールアミドが得られることから、プロトン型モンモリロナイト、金属交換型モンモリロナイトが好ましい。また、金属交換型モンモリロナイトの金属として、チタン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ジルコニウム等の遷移金属や、アルミニウム、スズ等が挙げられる。
【0022】
これらの不均一系酸触媒は、表面に超強酸性あるいはそれに匹敵する強酸性を示す活性点を有する。例えば、酸の強さを表すハメットの酸度関数(H0)の値が-8以下である固体酸触媒が好ましい。ハメットの酸度関数(H0)とは、ある溶媒が塩基にプロトンを与える能力を表す尺度であり、固体表面に適用することで不均一系触媒の酸性点の強さ(酸強度)を定量的に表すことができる。H0の値が小さいほど酸強度が強いと言える。そして、H0の値は、プロトン型モンモリロナイト、アルミニウム(III)交換型モンモリロナイト、スズ(IV)交換型モンモリロナイトにおいて、いずれもH0≦-8.2である。(出典:Bensei, H. A. Journal of the American Chemical Society, 1956, vol.78, pp.5490-5494.; Izumi, Y. et al. Bulletin of the Chemical Society of Japan, 1993, vol.66, pp.2016-2032.)
この反応では、下記式に示すように、酸触媒(HX)とアリールアミン(ArNH2)の一部が反応して生成するアンモニウム塩(ArNH3X)が触媒活性種と考えられる。
ArNH2 + HX → ArNH3X
アンモニウム塩がビニルエステル類を求電子的に活性化することで、アリールアミンとのアミド化反応が円滑に進行するものである。
そして、このアンモニウム塩の窒素上のプロトンは、酸性を示す。また、その酸の強さは、元の酸触媒(HX)の強さに依存する。したがって、触媒活性種のArNH3Xがビニルエステル類を活性化できるだけの十分な酸触媒活性を示すためには、酸触媒HXが超強酸あるいは強酸(H0≦-8)であることが好ましい。遷移金属、ランタノイド、その他周期表の第12-14族等の金属の、単一の金属酸化物(例えば、アルミナ、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化セリウムなど)やこれらの混合物は、固体酸触媒として汎用されるものであるが、酸性度が高くないため、この反応には適さない。また、遷移金属やランタノイド等は、毒性が高い、コストがかかる、製品中への残留量管理が厳しいなどの問題もある。ここで、金属交換型モンモリロナイトには遷移金属が含まれる場合があるものの、遷移金属の含有量はごく少量であり、かつ構造的な特徴から遷移金属成分の漏れ出しはほとんどなく、上記のような問題は生じない。なお、上記した不均一系酸触媒はH0が-8以下のものであるが、これらの不均一系酸触媒に限定されるものではない。また、これらの中でも、りんタングステン酸のH0は-14であり、固体酸では最も強い酸であるといえる。
【0023】
(N-アリールアミドの合成)
上記した二種類の基質を上記不均一系酸触媒の存在下で混合させることにより、反応が進行してN-アリールアミドが得られる。
基質と触媒を接触させる方法としては、例えば、基質と触媒を容器に収容し、空気下で攪拌する方法が挙げられる。本実施形態のN-アリールアミド化合物の製造方法では、バッチ式反応器を用いてもよいし、不均一系酸触媒を充填した反応器を用いて、基質(原料)の反応器への導入と反応器内で生成する生成物の排出を連続的に行う連続式の方法でも行うことができる。
不均一系酸触媒の使用量は、例えば、プロトン型モンモリロナイトについては、一例として、基質の使用量に対して1-100質量%、好ましくは5-50質量%、より好ましくは10-30質量%である。不均一系酸触媒の使用量が前記下限値以上であれば、基質同士の反応が進みやすい。不均一系触媒の使用量が前記上限値を超えると、加えた触媒の攪拌効果が見込めず反応効率も頭打ちとなる。
【0024】
また、反応系に溶媒を含んでいてもよいが、無溶媒でも反応は進行する。溶媒には、反応の進行を阻害しないものであれば特に制限はなく、一般的な有機溶媒が使用できる。例えば、トルエン、キシレン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、アセトニトリル等がある。これらの溶媒は単独で使用しても、2種類以上を混合使用してもよい。溶媒の使用量は、基質に対して質量比で0.1-10倍が好ましく、1-5倍がより好ましい。反応速度の観点から、溶媒の使用量は前記上限値とすることが好ましい。そして、反応条件に特に制限はないが、反応温度は、好ましくは30-150℃、反応性の観点から、より好ましくは80-140℃、さらに好ましくは100-140℃、反応性と省エネルギー化の観点から、より一層好ましくは110-130℃である。反応時間は、基質同士の組み合わせや用いる触媒の量および反応温度等により左右され、一概に決めることはできないが、通常は1-48時間あればよく、反応性や生産性、省エネルギー化の観点から、3-24時間の範囲が好ましい。そして、反応終了後、濾過、洗浄、再結晶等の通常の方法によって、生成物(N-アリールアミド化合物)を取り出すことができる。
【0025】
(生成物)
上記のように基質であるビニルエステル類(化合物1)とアリールアミン類(化合物2)との反応によって得られる目的化合物のN-アリールアミド化合物は、下記の式(3)で表される(以下、「化合物3」とも記す。)。なお、R
1及びR
5-R
10は上記式(1)および式(2)で示したものと同じである。また、共生成物として、下記の式(4)で表されるカルボニル化合物が生成する。例えば、ビニルエステル(R
2-R
4がすべて水素原子)の場合はアセトアルデヒドが共生成物となり、イソプロペニルエステル(R
2がメチル基、R
3及びR
4が水素原子)の場合はアセトンが共生成物となる。アセトアルデヒドやアセトンは低沸点溶媒のため容易に除去できる。他のカルボニル化合物の場合も、洗浄により容易に除去することができる。N-アリールアミド化合物は結晶性が高く、低極性有機溶媒には溶解しない。したがって、粗生成物を炭化水素溶媒で洗浄すると、共生成物や未反応原料だけを洗い流すことができる。
【化6】
【化7】
【0026】
上記化合物1と化合物2から化合物3が生成する反応をまとめた化学反応式(式(5))を以下に示す。
【化8】
本実施形態によれば、前記した不均一系酸触媒を用いることで、反応性の低い各種置換ビニルエステル類と各種置換アリールアミン類を比較的温和な条件下で効率よく反応させることができ、様々な官能基を有するN-アリールアミド化合物を比較的高収率で得ることができる。また、前記不均一系酸触媒は、生成物に溶け込まず、かつ反応前後で分解もしないため、反応後に濾別および回収することにより、再利用できる。したがって、環境にも優しく、省エネルギー化にも優れるものである。このように、本実施形態によれば、簡便で効率よく、N-アリールアミド化合物を製造できる。
【実施例0027】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に制限されるものではない。
N-アリールアミド化合物の合成における転化率および収率は、使用量が最少の原料および得られた目的生成物の質量とガスクロマトグラフィーに基づいて、下記の計算式からそれぞれ算出した。
転化率(%)=(1-残存した原料の物質量/使用した原料の物質量)×100
収率(%)=(得られた目的化合物の物質量/使用した原料の物質量)×100
触媒として反応に使用したプロトン型モンモリロナイトは、高純度モンモリロナイト(クニミネ工業株式会社、クニピア(登録商標)-F、Naイオン型)を希塩酸で処理することにより調製した。具体的には、高純度モンモリロナイト(10g)を、塩酸水溶液(1.1重量%、670mL)中、90℃で24時間撹拌し、得られたスラリーをろ過し、ろ液が中性になるまで蒸留水で洗浄した後、大気中110℃で乾燥し、灰色の粉末を得た。(参考文献:Kaneda, K. et al. Angewandte Chemie International Edition, 2006, Vol.45, pp.2605-2609.)。同じく、金属交換型モンモリロナイトは、市販の高純度モンモリロナイト(クニミネ工業株式会社、クニピア(登録商標)-F、Naイオン型)を各金属塩水溶液(Al(NO3)3・9H2O、Fe(NO3)3・9H2O、Co(NO3)2・6H2O、Ni(NO3)2・6H2O、Cu(NO3)2・3H2O、Zn(NO3)2・6H2O、ZrOCl2・8H2O、SnCl4・5H2O)で処理することにより調製した。具体的には、高純度モンモリロナイト(10g)を、各金属塩水溶液(2.0 mol/L、80mL)中、室温で3時間撹拌し、得られたスラリーをろ過し、ろ液が中性になるまで蒸留水とメタノールで洗浄した。得られた固体を40℃で減圧乾燥した後、さらに大気中110℃で乾燥し、金属交換型モンモリロナイトの粉末を得た。(参考文献:Izumi, Y. et al. Bulletin of the Chemical Society of Japan, 1993, vol.66, pp.2016-2032.)。
【0028】
(実施例1)
密栓可能な耐圧ガラス試験管(日電理化硝子株式会社製、外径18mm、内容積27mL)に、撹拌子と、基質として安息香酸イソプロペニルエステル(324mg)と4-メトキシアニリン(東京化成工業株式会社製)(246mg、2.0mmol)を入れ、さらに酸触媒としてプロトン型モンモリロナイト(20質量%、114mg)を加えた。耐圧ガラス試験管を密栓し、110℃で15時間撹拌してN-(4’-メトキシフェニル)ベンズアミドを得た。その後、溶媒としてアセトン(20mL)と内部標準としてn-テトラデカン(富士フィルム和光純薬株式会社製)(79mg、0.40mmol)を加え、ガスクロマトグラフィー測定を行った。なお、安息香酸イソプロペニルエステルは、安息香酸とプロピンの付加反応により調製した。具体的には、耐圧反応容器(東京理化器械株式会社製、HIP-30)へ、[RuCl2(p-Cymene)]2(東京化成工業株式会社製)(0.5mol%、50μmol、31mg)、PPh3(富士フィルム和光純薬株式会社製)(1.0mol%、0.10mmol、26mg)、Na2CO3(富士フィルム和光純薬株式会社製)(1.0mol%、0.10mmol、11mg)、安息香酸(東京化成工業株式会社製)(10mmol、1.22g)、プロピンのテトラヒドロフラン溶液(東京化成工業株式会社製)(1.0M、15mmol、15mL)を加え、80℃、0.5MPa(窒素)にて24時間加熱撹拌した。反応溶液をろ過、減圧濃縮することにより得た粗生成物を、カラムクロマトグラフィー精製(充填材:シリカゲル、展開溶媒:ヘキサン-酢酸エチル)することにより、無色透明の液体(収率89%、8.9mmol、1.4g)を得た(参考文献:Goossen, L. J. et al. Chemical Communication, 2003, pp.706-707.)。
【0029】
ガスクロマトグラフィーによる分析条件を以下に示す。
GC装置:GC-2025(株式会社島津製作所製)
カラム:Rtx-5、長さ30m、内径0.25mm(RESTEK社製)
キャリアガス:窒素、線速度一定(39.9cm/秒)
気化室温度:280℃
検出器温度:300℃
カラムオーブン温度:50℃ 1分→(5℃/分)→100℃ 4分→(20℃/分)
→280℃ 3分(計27分)
検出器:水素炎イオン化検出器
その結果、転化率は85%、N-(4’-メトキシフェニル)ベンズアミドの収率は77%であった。なお、以下の実施例および比較例において、特に断り書きのない限り、実施例1と同様の方法および条件でN-アリールアミド化合物を合成した。また、共通する化合物は同じ試薬を用いた。そして、以下の実施例および比較例において、基質に対する触媒量は、全て同じ20質量%とした。
【0030】
(実施例2)
酸触媒としてプロトン型モンモリロナイトの代わりに、プロトン型モルデナイト (富士フィルム和光純薬株式会社製、合成ゼオライトHS-690、114mg)を用いた以外は実施例1と同様の条件で反応を行った。その結果、転化率は78%、N-(4’-メトキシフェニル)ベンズアミドの収率は73%であった。
【0031】
(実施例3)
酸触媒としてプロトン型モンモリロナイトの代わりに、プロトン型ゼオライト-Y (富士フィルム和光純薬株式会社製、合成ゼオライトHS-320、114mg)を用いた以外は実施例1と同様の条件で反応を行った。その結果、転化率は75%、N-(4’-メトキシフェニル)ベンズアミドの収率は66%であった。
【0032】
(実施例4)
酸触媒としてプロトン型モンモリロナイトの代わりに、プロトン型ゼオライト-β(Alfa Aesar社製、114mg)を用いた以外は実施例1と同様の条件で反応を行った。その結果、転化率は62%、N-(4’-メトキシフェニル)ベンズアミドの収率は58%であった。
【0033】
(実施例5)
酸触媒としてプロトン型モンモリロナイトの代わりに、りんタングステン酸(富士フィルム和光純薬株式会社製、H3PW12O40・26H2O、114mg)を用いた以外は実施例1と同様の条件で反応を行った。その結果、転化率は82%、N-(4’-メトキシフェニル)ベンズアミドの収率は63%であった。
【0034】
(実施例6)
酸触媒としてプロトン型モンモリロナイトの代わりに、Al(III)交換型モンモリロナイト (114mg)を用いた以外は実施例1と同様の条件で反応を行った。その結果、転化率は88%、N-(4’-メトキシフェニル)ベンズアミドの収率は80%であった。
【0035】
(実施例7)
酸触媒としてプロトン型モンモリロナイトの代わりに、Fe(III)交換型モンモリロナイト (114mg)を用いた以外は実施例1と同様の条件で反応を行った。その結果、転化率は85%、N-(4’-メトキシフェニル)ベンズアミドの収率は74%であった。
【0036】
(実施例8)
酸触媒としてプロトン型モンモリロナイトの代わりに、Co(II)交換型モンモリロナイト (114mg)を用いた以外は実施例1と同様の条件で反応を行った。その結果、転化率は68%、N-(4’-メトキシフェニル)ベンズアミドの収率は60%であった。
【0037】
(実施例9)
酸触媒としてプロトン型モンモリロナイトの代わりに、Ni(II)交換型モンモリロナイト (114mg)を用いた以外は実施例1と同様の条件で反応を行った。その結果、転化率は86%、N-(4’-メトキシフェニル)ベンズアミドの収率は74%であった。
【0038】
(実施例10)
酸触媒としてプロトン型モンモリロナイトの代わりに、Cu(II)交換型モンモリロナイト (114mg)を用いた以外は実施例1と同様の条件で反応を行った。その結果、転化率は68%、N-(4’-メトキシフェニル)ベンズアミドの収率は60%であった。
【0039】
(実施例11)
酸触媒としてプロトン型モンモリロナイトの代わりに、Zn(II)交換型モンモリロナイト (114mg)を用いた以外は実施例1と同様の条件で反応を行った。その結果、転化率は77%、N-(4’-メトキシフェニル)ベンズアミドの収率は66%であった。
【0040】
(実施例12)
酸触媒としてプロトン型モンモリロナイトの代わりに、Zr(IV)交換型モンモリロナイト (114mg)を用いた以外は実施例1と同様の条件で反応を行った。その結果、転化率は80%、N-(4’-メトキシフェニル)ベンズアミドの収率は73%であった。
【0041】
(実施例13)
酸触媒としてプロトン型モンモリロナイトの代わりに、Sn(IV)交換型モンモリロナイト (114mg)を用いた以外は実施例1と同様の条件で反応を行った。その結果、転化率は75%、N-(4’-メトキシフェニル)ベンズアミドの収率は66%であった。
【0042】
(実施例14)
反応溶媒としてn-ヘプタン(富士フィルム和光純薬株式会社製、1.0mL) を加えた以外は実施例1と同様の条件で反応を行った。その結果、転化率は72%、N-(4’-メトキシフェニル)ベンズアミドの収率は65%であった。
【0043】
(実施例15)
反応温度を140℃とした以外は実施例1と同様の条件で反応を行った。その結果、転化率は84%、N-(4’-メトキシフェニル)ベンズアミドの収率は68%であった。
【0044】
【0045】
(比較例1)
酸触媒のプロトン型モンモリロナイトを加えず、あとは実施例1と同様の条件で反応を行った。その結果、転化率は17%、N-(4’-メトキシフェニル)ベンズアミドの収率は17%であった。
【0046】
(比較例2)
酸触媒としてプロトン型モンモリロナイトの代わりに、酸化チタン (富士フィルム和光純薬株式会社製、ルチル型、114mg)を用いた以外は実施例1と同様の条件で反応を行った。その結果、転化率は42%、N-(4’-メトキシフェニル)ベンズアミドの収率は37%であった。
【0047】
(比較例3)
酸触媒としてプロトン型モンモリロナイトの代わりに、酸化ジルコニウム (富士フィルム和光純薬株式会社製、114mg)を用いた以外は実施例1と同様の条件で反応を行った。その結果、転化率は45%、N-(4’-メトキシフェニル)ベンズアミドの収率は37%であった。
【0048】
(比較例4)
酸触媒としてプロトン型モンモリロナイトの代わりに、酸化セリウム (富士フィルム和光純薬株式会社製、114mg)を用いた以外は実施例1と同様の条件で反応を行った。その結果、転化率は49%、N-(4’-メトキシフェニル)ベンズアミドの収率は42%であった。
【0049】
(比較例5)
酸触媒としてプロトン型モンモリロナイトの代わりに、Amberlyst(登録商標)15DRY (オルガノ株式会社製、114mg)を用いた以外は実施例1と同様の条件で反応を行った。その結果、転化率は46%、N-(4’-メトキシフェニル)ベンズアミドの収率は41%であった。
【0050】
【0051】
上記結果から、実施例によれば、酸性度の大きい不均一系酸触媒を使用することで、比較的低温の温和な条件で、良好な収率で生成物を得ることができることが確認された。また、代表的な不均一系酸触媒である単一の金属酸化物(酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化セリウム)などに比べて、高い収率で目的化合物が得られたことから、触媒の酸性度が関係しているものと思われる。また、溶媒は使用しなくても、高い収率で生成物を得ることができた。したがって、本実施例によれば、簡便な方法で、効率よくN-アリールアミド化合物を製造できるものである。
【0052】
次に、触媒には、上記実施例において収率の高かったプロトン型モンモリロナイトを用いて、アリールアミン側の基質には比較的反応性の高いアリールアミンであり、全体的に高い収率が見込めた4-メトキシアニリンを用いて、ビニルエステル側の基質を変更してN-アリールアミド化合物を製造した。この場合の化学反応式を式(6)に示す。なお、式(6)中、Rは有機基(式(1)のR
1に相当する)を示す。
【化9】
【0053】
(実施例16)
密栓可能な耐圧ガラス試験管(日電理化硝子株式会社製、外径18mm、内容積27mL)に、撹拌子と、基質として安息香酸イソプロペニルエステル(324mg、2.0mmol)と4-メトキシアニリン(東京化成工業株式会社製、271mg 、2.2mmol)を入れ、さらに酸触媒としてプロトン型モンモリロナイト(100mg)を加えた。耐圧ガラス試験管を密栓し、110℃で24時間撹拌してN-(4’-メトキシフェニル)ベンズアミドを含む粗生成物を得た。その後、溶媒としてアセトン(富士フィルム和光純薬株式会社製、20mL)を加えて粗生成物を溶解させ、ろ過により固体のプロトン型モンモリロナイトを分離した。得られた粗生成物溶液の溶媒を減圧下で留去した。この粗生成物をn-ヘプタン(富士フィルム和光純薬株式会社製)で洗浄することにより、N-(4’-メトキシフェニル)ベンズアミドを得た(390mg、収率86%)。ガスクロマトグラフィー分析により、生成物の純度が99%以上であることを確認した。
【0054】
(実施例17)
安息香酸イソプロペニルエステルに代えて安息香酸ビニルエステル(富士フィルム和光純薬株式会社製、296mg)を使用した点を除き、実施例16と同様の条件でN-(4’-メトキシフェニル)ベンズアミドの合成を行なった。その結果、収率は54%、生成物の純度が99%以上であることを確認した。
【0055】
(実施例18)
安息香酸イソプロペニルエステルに代えて4-メトキシ安息香酸イソプロペニルエステル(384mg)を使用した点を除き、実施例16と同様の条件でN-(4’-メトキシフェニル)ベンズアミドの合成を行なった。その結果、収率は77%、生成物の純度が99%以上であることを確認した。なお、4-メトキシ安息香酸イソプロペニルエステルは、実施例1に記載の方法と同様の方法を用いて、4-メトキシ安息香酸(東京化成工業株式会社製)とプロピンの触媒的な付加反応により調製した。
【0056】
(実施例19)
安息香酸イソプロペニルエステルに代えて4-クロロ安息香酸イソプロペニルエステル(393mg)を使用した点を除き、実施例16と同様の条件でN-(4’-メトキシフェニル)ベンズアミドの合成を行なった。その結果、収率は75%、生成物の純度が99%以上であることを確認した。なお、4-クロロ安息香酸イソプロペニルエステルは、実施例1と同様の方法を用いて、4-クロロ安息香酸(東京化成工業株式会社製)とプロピンの触媒的な付加反応により調製した。
【0057】
(実施例20)
安息香酸イソプロペニルエステルに代えて4-ニトロ安息香酸イソプロペニルエステル(414mg)を使用した点を除き、実施例1と同様の条件でN-(4’-メトキシフェニル)-4-ニトロベンズアミドの合成を行なった。その結果、収率は91%、生成物の純度が99%以上であることを確認した。なお、4-ニトロ安息香酸イソプロペニルエステルは、実施例1と同様の方法を用いて、4-ニトロ安息香酸(富士フィルム和光純薬株式会社製)とプロピンの触媒的な付加反応により調製した。
【0058】
(実施例21)
密栓可能な耐圧ガラス試験管(日電理化硝子株式会社製、外径18mm、内容積27mL)に、撹拌子と、基質としてp-トリル酢酸イソプロペニルエステル(380mg、2.0mmol)と4-メトキシアニリン(東京化成工業株式会社製、271mg、2.2mmol)を入れ、さらに酸触媒としてプロトン型モンモリロナイト(100mg)を加えた。耐圧ガラス試験管を密栓し、110℃で24時間撹拌してN-(2’-メトキシフェニル)-2-(p-トリル)アセトアミドを含む粗生成物を得た。その後、溶媒としてアセトン(富士フィルム和光純薬株式会社製、20mL)を加えて粗生成物を溶解させ、ろ過により固体のプロトン型モンモリロナイトを分離した。得られた粗生成物溶液の溶媒を減圧下で留去した。この粗生成物をn-ヘプタン(富士フィルム和光純薬株式会社製)で洗浄することにより、N-(4’-メトキシフェニル)-2-(p-トリル)アセトアミドを得た(526mg、収率97%)。ガスクロマトグラフィー分析により、生成物の純度が99%以上であることを確認した。なお、p-トリル酢酸イソプロペニルエステルは、実施例1と同様の方法を用いて、p-トリル酢酸(富士フィルム和光純薬株式会社製)とプロピンの触媒的な付加反応により調製した。
【0059】
(実施例22)
安息香酸イソプロペニルエステルに代えて2-フェニルプロピオン酸イソプロペニルエステル(380mg)を使用した点を除き、実施例16と同様の条件でN-(4’-メトキシフェニル)-2-フェニルプロピオンアミドの合成を行なった。その結果、収率は78%、生成物の純度が99%以上であることを確認した。なお、2-フェニルプロピオン酸イソプロペニルエステルは、実施例1と同様の方法を用いて、2-フェニルプロピオン酸(東京化成工業株式会社製)とプロピンの触媒的な付加反応により調製した。
【0060】
(実施例23)
安息香酸イソプロペニルエステルに代えて3-フェニルプロピオン酸イソプロペニルエステル(380mg)を使用した点を除き、実施例16と同様の条件でN-(4’-メトキシフェニル)-3-フェニルプロピオンアミドの合成を行なった。その結果、収率は94%、生成物の純度が99%以上であることを確認した。なお、3-フェニルプロピオン酸イソプロペニルエステルは、実施例1と同様の方法を用いて、3-フェニルプロピオン酸(富士フィルム和光純薬株式会社製)とプロピンの触媒的な付加反応により調製した。
【0061】
(実施例24)
安息香酸イソプロペニルエステルに代えてケイ皮酸イソプロペニルエステル(376mg)を使用した点を除き、実施例16と同様の条件でN-(4’-メトキシフェニル)-ケイ皮酸アミドの合成を行なった。その結果、収率は94%、生成物の純度が99%以上であることを確認した。なお、ケイ皮酸イソプロペニルエステルは、実施例1と同様の方法を用いて、ケイ皮酸(富士フィルム和光純薬株式会社製)とプロピンの触媒的な付加反応により調製した。
【0062】
(実施例25)
安息香酸イソプロペニルエステルに代えてシトロネル酸イソプロペニルエステル(421mg)を使用した点を除き、実施例16と同様の条件でN-(4’-メトキシフェニル)-シトロネル酸アミドの合成を行なった。その結果、収率は72%、生成物の純度が99%以上であることを確認した。なお、シトロネル酸イソプロペニルエステルは、実施例1と同様の方法を用いて、シトロネル酸(東京化成工業株式会社製)とプロピンの触媒的な付加反応により調製した。
【0063】
(実施例26)
安息香酸イソプロペニルエステルに代えてフェノキシ酢酸イソプロペニルエステル(384mg)を使用した点を除き、実施例11と同様の条件でN-(4’-メトキシフェニル)-2-フェノキシアセトアミドの合成を行なった。その結果、収率は97%、生成物の純度が99%以上であることを確認した。なお、フェノキシ酢酸イソプロペニルエステルは、実施例1と同様の方法を用いて、フェノキシ酢酸(東京化成工業株式会社製)とプロピンの触媒的な付加反応により調製した。
【0064】
(実施例27)
安息香酸イソプロペニルエステルに代えてN-カルボベンゾキシ-L-フェニルアラニンイソプロペニルエステル(679mg)を使用した点を除き、実施例1と同様の条件でN-カルボベンゾキシ-N-(4’-メトキシフェニル)-L-フェニルアラニンアミドの合成を行なった。その結果、収率は83%、生成物の純度が99%以上であることを確認した。なお、N-カルボベンゾキシ-L-フェニルアラニンイソプロペニルエステルは、実施例1と同様の方法を用いて、N-カルボベンゾキシ-L-フェニルアラニン(富士フィルム和光純薬株式会社製)とプロピンの触媒的な付加反応により調製した。
【0065】
【0066】
また、上記実施例による生成物3aa-3kaの構造式を下記に示す。
【化10】
【0067】
上記結果から、実施例によれば、様々な置換基を有する芳香族カルボン酸や脂肪族カルボン酸のビニルエステルから、対応するN-アリールアミド化合物を良好な収率かつ高純度に合成することができる。そして、N-ベンジルオキシカルボニル-L-フェニルアラニンイソプロペニルエステル(実施例27)などの嵩高い化合物においても、良好な収率でN-アリールアミド化合物が得られた。特に、ビニルエステル類として、カルボン酸イソプロペニルエステルを使用した場合に、N-アリールアミド化合物が高い収率で得られた。その理由として、イソプロペニル基が立体的に小さいためにアリールアミンとの反応を抑制しないこと、脱離したアセトンによる、余計な副反応を起こしにくいこと、などが挙げられる。
【0068】
次に、上記実施例において収率の高かったプロトン型モンモリロナイトと、同じく収率が高く、比較的反応性がよかったp-トリル酢酸イソプロペニルエステルを用いて、アリールアミン側の基質を変更してN-アリールアミド化合物を製造した。この場合の化学反応式を式(7)に示す。なお、式(7)中、RとR’は有機基(Rは式(2)のR
5-R
9のいずれかに、R’は式(2)のR
10に相当する)を示す。
【化11】
【0069】
(実施例28)
4-メトキシアニリンに代えて、2-メトキシアニリン(富士フィルム和光純薬株式会社製、271mg)を使用した点を除き、実施例21と同様の条件でN-(2’-メトキシフェニル)-2-(p-トリル)アセトアミドの合成を行なった。その結果、収率は78%、生成物の純度が99%以上であることを確認した。
【0070】
(実施例29)
4-メトキシアニリンに代えて4-クロロアニリン(富士フィルム和光純薬株式会社製、281mg)を使用した点を除き、実施例21と同様の条件でN-(4’-クロロフェニル)-2-(p-トリル)アセトアミドの合成を行なった。その結果、収率は92%、生成物の純度が99%以上であることを確認した。
【0071】
(実施例30)
4-メトキシアニリンに代えて4-ブロモアニリン(富士フィルム和光純薬株式会社製、378mg)を使用した点を除き、実施例21と同様の条件でN-(4’-ブロモフェニル)-2-(p-トリル)アセトアミドの合成を行なった。その結果、収率は91%、生成物の純度が99%以上であることを確認した。
【0072】
(実施例31)
4-メトキシアニリンに代えて4-ヒドロキシアニリン(富士フィルム和光純薬株式会社製、240mg)を使用した点を除き、実施例21と同様の条件でN-(4’-ヒドロキシフェニル)-2-(p-トリル)アセトアミドの合成を行なった。その結果、収率は89%、生成物の純度が99%以上であることを確認した。
【0073】
(実施例32)
4-メトキシアニリンに代えて3-アミノベンゾニトリル(東京化成工業株式会社製、260mg)を使用した点を除き、実施例21と同様の条件でN-(3’-シアノフェニル)-2-(p-トリル)アセトアミドの合成を行なった。その結果、収率は69%、生成物の純度が99%以上であることを確認した。
【0074】
(実施例33)
4-メトキシアニリンに代えて3-アミノアセトフェノン(東京化成工業株式会社製、297mg)を使用した点を除き、実施例21と同様の条件でN-(3’-アセチルフェニル)-2-(p-トリル)アセトアミドの合成を行なった。その結果、収率は97%、生成物の純度が99%以上であることを確認した。
【0075】
(実施例34)
4-メトキシアニリンに代えて4-アミノアセトフェノン(富士フィルム和光純薬株式会社製、297mg)を使用した点と、反応温度を130℃とした点を除き、実施例21と同様の条件でN-(4’-アセチルフェニル)-2-(p-トリル)アセトアミドの合成を行なった。その結果、収率は90%、生成物の純度が99%以上であることを確認した。
【0076】
(実施例35)
4-メトキシアニリンに代えて4-アミノ安息香酸メチル(富士フィルム和光純薬株式会社製、333mg)を使用した点を除き、実施例21と同様の条件でN-(4’-メトキシカルボニルフェニル)-2-(p-トリル)アセトアミドの合成を行なった。その結果、収率は70%、生成物の純度が99%以上であることを確認した。
【0077】
(実施例36)
4-メトキシアニリンに代えて2,6-ジメチルアニリン(東京化成工業株式会社製、267mg)を使用した点と、反応温度を130℃とした点を除き、実施例21と同様の条件でN-(2,6-ジメチルフェニル)-2-(p-トリル)アセトアミドの合成を行なった。その結果、収率は49%、生成物の純度が99%以上であることを確認した。
【0078】
(実施例37)
4-メトキシアニリンに代えて2-アミノピリジン(富士フィルム和光純薬株式会社製、207mg)を使用した点を除き、実施例21と同様の条件でN-(2’-ピリジル)-2-(p-トリル)アセトアミドの合成を行なった。その結果、収率は71%、生成物の純度が99%以上であることを確認した。
【0079】
(実施例38)
4-メトキシアニリンに代えて3-アミノピリジン(富士フィルム和光純薬株式会社製、207mg)を使用した点を除き、実施例6と同様の条件でN-(3’-ピリジル)-2-(p-トリル)アセトアミドの合成を行なった。その結果、収率は56%、生成物の純度が99%以上であることを確認した。
【0080】
(実施例39)
4-メトキシアニリンに代えてN-メチルアニリン(富士フィルム和光純薬株式会社製、236mg)を使用した点と、反応温度を130℃とした点を除き、実施例21と同様の条件でN-メチル-N-フェニル-2-(p-トリル)アセトアミドの合成を行なった。その結果、収率は59%、生成物の純度が99%以上であることを確認した。
【0081】
(実施例40)
4-メトキシアニリンに代えてジフェニルアミン(富士フィルム和光純薬株式会社製、372mg)を使用した点と、反応温度を130℃とした点を除き、実施例21と同様の条件でN,N-ジフェニル-2-(p-トリル)アセトアミドの合成を行なった。その結果、収率は51%、生成物の純度が99%以上であることを確認した。
【0082】
【0083】
また、上記実施例による生成物3eb-3enの構造式を下記に示す。
【化12】
【0084】
上記結果から、実施例によれば、電子供与基、電子吸引基及びハロゲン原子などの様々な置換基を有するアリールアミンから、対応するN-アリールアミド化合物を良好な収率かつ高純度で合成することができた。特に、電子吸引基を有する3-アミノベンゾニトリル(実施例32)、4-アミノアセトフェノン(実施例34)、4-アミノ安息香酸メチル(実施例35)、アミノ基の近傍が立体的に嵩高い2,6-ジメチルアニリン(実施例36)、N-メチルアニリン(実施例39)、ジフェニルアミン(実施例40)などのアリールアミンは、置換基による電子吸引性や立体障害等の影響のため、特に反応性が低い、合成困難な生成物であるが、本実施例によれば、概ね良好な収率で合成することができた。また、この方法は、フェンフラム農業殺菌剤、メプロニル農業殺菌剤、フルトラニル農業殺菌剤、ボスカリド農業殺菌剤、メタラキシル農業殺菌剤、ベナラキシル農業殺菌剤、リドカイン局所麻酔薬、ブピバカイン局所麻酔薬等の合成にも適用できるものである。
本発明は、電子材料、医薬品、農薬等やそれらの中間体の分野を中心に幅広く活用することができ、あらゆる用途のN-アリールアミド化合物の製造方法として、利用可能性がある。