(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024124718
(43)【公開日】2024-09-13
(54)【発明の名称】セラミックス-金属接合体およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
C04B 37/02 20060101AFI20240906BHJP
B23K 26/324 20140101ALI20240906BHJP
B23K 26/322 20140101ALI20240906BHJP
B23K 26/34 20140101ALI20240906BHJP
B23K 26/21 20140101ALI20240906BHJP
C04B 41/87 20060101ALI20240906BHJP
【FI】
C04B37/02 Z
B23K26/324
B23K26/322
B23K26/34
B23K26/21 Z
C04B41/87 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023032595
(22)【出願日】2023-03-03
(71)【出願人】
【識別番号】000224798
【氏名又は名称】DOWAホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129470
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 高
(72)【発明者】
【氏名】小林 幸司
(72)【発明者】
【氏名】小山内 英世
(72)【発明者】
【氏名】結城 整哉
【テーマコード(参考)】
4E168
4G026
【Fターム(参考)】
4E168BA35
4E168BA81
4E168BA88
4E168BA90
4E168CB04
4E168DA02
4E168DA32
4E168FB03
4G026BA16
4G026BA17
4G026BB21
4G026BB22
4G026BG13
4G026BH07
(57)【要約】
【課題】セラミックス材料の表面に細線形状の金属回路パターンを形成することが可能な方法であって、セラミックス材料と金属材料が一体化した接合体を得るために適した技術を提供する。
【解決手段】表面にTiまたはTiNの皮膜を有するセラミックス材料の、前記皮膜膜の上に、金属粉体の層を形成する工程と、
前記金属粉体の層にレーザービームを照射して金属粉体を溶融させたのち凝固させることにより、レーザービームが照射された部分で、前記セラミックス材料と、前記金属粉体に由来する金属材料とを接合させる工程と、
を含むセラミックス-金属接合体の製造方法。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面にTiまたはTiNの皮膜を有するセラミックス材料の、前記皮膜の上に、金属粉体の層を形成する工程と、
前記金属粉体の層にレーザービームを照射して金属粉体を溶融させたのち凝固させることにより、レーザービームが照射された部分で、前記セラミックス材料と、前記金属粉体に由来する金属材料とを接合させる工程と、
を含むセラミックス-金属接合体の製造方法。
【請求項2】
前記セラミックス材料は、Alの窒化物またはSiの窒化物を主成分とするものである、請求項1に記載のセラミックス-金属接合体の製造方法。
【請求項3】
前記金属粉体は、CuまたはAgを主成分とするものである、請求項1に記載のセラミックス-金属接合体の製造方法。
【請求項4】
前記皮膜は、PVD法により成膜された皮膜である、請求項1に記載のセラミックス-金属接合体の製造方法。
【請求項5】
前記皮膜の平均厚さが20~500nmである、請求項1に記載のセラミックス-金属接合体の製造方法。
【請求項6】
前記金属粉体の層は、レーザービームを照射する部分の厚さが20~2000μmとなるように形成する、請求項1に記載のセラミックス-金属接合体の製造方法。
【請求項7】
セラミックス材料と、凝固組織を有する金属材料とが接合されたセラミックス-金属接合体であって、
前記セラミックス材料と前記金属材料の間に、Tiと前記セラミックス材料との反応生成物が介在している接合構造を含む、セラミックス-金属接合体。
【請求項8】
前記セラミックス材料は、Alの窒化物またはSiの窒化物を主成分とするものである、請求項7に記載のセラミックス-金属接合体。
【請求項9】
前記金属材料は、CuまたはAgを主成分とするものである、請求項7に記載のセラミックス-金属接合体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザービームにより溶融させた金属材料をセラミックス基材の表面に接合するセラミックス-金属接合体およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
セラミックス-金属接合体、すなわちセラミックスと金属とが両者の接合部を介して一体化した複合材料は、例えば半導体素子を搭載するための絶縁回路基板などの用途に有用である。従来、絶縁回路基板の製造では、銅系、アルミニウム系などの金属シート部材をセラミックス基板の表面に接合した後、その金属シート部材の不要箇所をエッチングにより除去して回路パターンを形成する手法が多用されている。この場合、回路パターンを形成する工程ではレジスト膜の形成、エッチング加工およびレジスト膜の除去を伴う手順が必要となり、製造負荷およびコストの上昇が生じている。
【0003】
金属をセラミックスの表面に直接接合させる手法として、溶射法や、コールドスプレー法がある。しかし、これらの手法では寸法精度の高い細線形状の回路パターンを形成することは難しい。基材が金属である場合には、「レーザー・メタル・デポジション」により異種金属からなる細線形状の金属被覆層を基材上に形成することができる。これは、被覆材である金属粉体を基材表面に吹き付けながらレーザービームにより前記の金属粉体を溶融させ、その溶融金属を基材に被着させる技術である。しかし、基材がセラミックスである場合には、接合強度にバラツキが生じやすいなどの問題があり、実用化は必ずしも容易でない。
【0004】
一方、特許文献1には、セラミックス板上に載置した金属粉末にレーザー光を照射することにより金属粉末を溶融させ、ソリッド状の導体を焼成して付着させる手法が記載されている。金属粉末としては銅の粉末が適用できるとされる。ただし、具体的な実験例は示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、「パウダーベッド法」と呼ばれる金属3Dプリンターの技術により、金属の成形体を造形することが可能になっている。特許文献1の手法によれば、レーザー光を用いたパウダーベッド法を利用して細線形状の金属造形物を形成することができると考えられる。しかしながら、基材であるセラミックスと金属造形物との間の接合力を確保することが難しい。すなわち、特許文献1に開示の技術では、基材であるセラミックス材料と金属材料との接合体を構築することは工業的に困難である。
【0007】
本発明は、セラミックス材料の表面に細線形状の金属回路パターンを形成することが可能な方法であって、セラミックス材料と金属材料が一体化した接合体を得るために適した技術の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
発明者らは研究の結果、セラミックス材料としてTiまたはTiNの皮膜を有するものを使用することによって、その皮膜上で金属粉体をレーザービームにより溶融させたのち凝固させたときに、セラミックス材料と金属材料との間の高い接合力を得ることが可能になり、セラミックス-金属接合体が直接製造できることを確認した。この知見に基づき、本明細書では以下の発明を開示する。
【0009】
[1]表面にTiまたはTiNの皮膜を有するセラミックス材料の、前記皮膜の上に、金属粉体の層を形成する工程と、
前記金属粉体の層にレーザービームを照射して金属粉体を溶融させたのち凝固させることにより、レーザービームが照射された部分で、前記セラミックス材料と、前記金属粉体に由来する金属材料とを接合させる工程と、
を含むセラミックス-金属接合体の製造方法。
[2]前記セラミックス材料は、Alの窒化物またはSiの窒化物を主成分とするものである、上記[1]に記載のセラミックス-金属接合体の製造方法。
[3]前記金属粉体は、CuまたはAgを主成分とするものである、上記[1]または[2]に記載のセラミックス-金属接合体の製造方法。
[4]前記皮膜は、PVD法により成膜された皮膜である、上記[1]~[3]のいずれかに記載のセラミックス-金属接合体の製造方法。
[5]前記皮膜の平均厚さが20~500nmである、上記[1]~[4]のいずれかに記載のセラミックス-金属接合体の製造方法。
[6]前記金属粉体の層は、レーザービームを照射する部分の厚さが20~2000μmとなるように形成する、上記[1]~[5]のいずれかに記載のセラミックス-金属接合体の製造方法。
[7]セラミックス材料と、凝固組織を有する金属材料とが接合されたセラミックス-金属接合体であって、
前記セラミックス材料と前記金属材料の間に、Tiと前記セラミックス材料との反応生成物が介在している接合構造を含む、セラミックス-金属接合体。
[8]前記セラミックス材料は、Alの窒化物またはSiの窒化物を主成分とするものである、上記[7]に記載のセラミックス-金属接合体。
[9]前記金属材料は、CuまたはAgを主成分とするものである、上記[7]または[8]に記載のセラミックス-金属接合体。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、セラミックス材料の表面に金属材料が接合した「セラミックス-金属接合体」を、レーザービームの照射により直接製造することが可能である。この手法は、レーザービームの掃引により所定の回路パターンを有する金属材料をセラミックス材料の表面に形成させることができ、細線からなる緻密な回路パターンの形成にも有効である。また、レーザー・メタル・デポジションと比べて、セラミックスと金属の接合強度が安定しやすいことや、パウダーベッド法を利用した製造に対応できるため実用化が容易であることなどのメリットがある。さらに、本発明によって得られるセラミックス-金属接合体に、引き続きパウダーベッド法により金属材料の層を積み重ねていくと、3次元的な回路パターンを持つ半導体搭載基板を直接造形することも可能であると考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明に従う手法により、一定方向にレーザービームを掃引させながらセラミックス材料と金属材料の接合を行っているときの、レーザービームの掃引方向に平行な断面の形態を模式的に例示した図。
【
図2】実施例2の例No.221で得られたセラミックス-金属接合体をセラミックス材料の板面に垂直な方向から見た光学顕微鏡写真の一例。
【
図3】
図2中に示したライン上をレーザー顕微鏡で測定した高さプロファイルの一例。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1に、本発明に従う手法により、一定方向にレーザービームを掃引させながらセラミックス材料と金属材料の接合を行っているときの、レーザービームの掃引方向に平行な断面の形態を模式的に例示する。
【0013】
セラミックス材料1の表面にTi(チタン)またはTiN(窒化チタン)の皮膜10が形成されており、その皮膜の上に金属粉体2がほぼ一様な積層厚さで敷き詰められている。この図では皮膜10の厚さを非常に誇張して描いてある。レーザービーム3が所定ルートを掃引しながら金属粉体2の上方から照射されている。ここでは図中に示す矢印方向にレーザービーム3が移動している。金属粉体2はレーザービーム3の照射を受けた部分で積層厚さの全体にわたって急速に溶融し、溶融金属21が形成される。溶融金属21と接触するTiまたはTiNの皮膜10は、レーザービーム3のエネルギーにより急速に昇温し、皮膜10を構成していたTiの一部はセラミックス材料1と反応して緻密な反応生成物を形成することが考えられる。また、皮膜10を構成していたTiNについては、一部は分解してセラミックス材料1との緻密な反応生成物を形成するとともに、一部はTiNとして残存することが考えられる。レーザービーム3が通過した後に、溶融金属21は急速に凝固し、凝固金属22となる。この凝固金属22は、セラミックス材料1との間で高い接合強度を呈するものとなる。
【0014】
溶融金属21の存在時間が非常に短いにもかかわらず、セラミックス材料1との間で高い接合強度が得られるメカニズムについては未解明であるが、皮膜10に由来するTiとセラミックス材料1との反応により生成した緻密な反応生成物や、皮膜10に由来する緻密な構造の残存TiNなどが、セラミックス材料1と凝固金属22の間に介在することにより、両者の密着性を向上させている可能性が考えられる。なお、EDX(エネルギー分散型X線分析法)やEPMA(電子線プローブマイクロアナライザー)を用いた観察によれば、セラミックス材料1と凝固金属22の界面にはTiを含む層の存在が観測され、セラミックス材料1と凝固金属22の間に、Tiとセラミックス材料1との反応生成物が介在している接合構造を有することが肯定された。
【0015】
レーザービーム3を掃引して細線形状の凝固金属22を形成させると、多くの場合、
図1に模式的に示すように、得られた凝固金属22の線幅中央部付近の厚さ(セラミックス材料1の表面を基準とした高さ)が、元の金属粉体2の積層厚さよりも大きくなる現象が見られる。凝固金属22の見かけ密度は金属粉体2のそれよりも大きくなるにもかかわらず、上記の現象が生じるのは、レーザービーム3が、そのビーム径より広い領域にある金属粉体2を溶融させながら移動するため、液体の表面張力により周囲から掃引軸付近に溶融金属21が集まるためであると考えられる。
【0016】
セラミックス材料1としては、用途に応じて種々の材質のものが対象となりうる。例えばAlの酸化物(Al2O3)、Alの窒化物(AlN)、Siの窒化物(Si3N4)などから選ばれる化合物を主成分とするセラミックスが例示できる。セラミックスにおいて「主成分」とは、そのセラミックスを構成する化合物のうち最も質量割合の多い化合物をいう。半導体素子搭載用の絶縁基板に用いる場合には、Alの窒化物(AlN)を主成分とするもの、またはSiの窒化物(Si3N4)を主成分とするものが好適である。その場合は、厚さが例えば0.25~2.0mm程度のセラミックス板を使用すればよい。
【0017】
本発明では、凝固金属22からなる金属材料と接合することになる表面に、TiまたはTiNの皮膜10が形成されているセラミックス材料1を適用する。Tiの皮膜とTiNの皮膜が複層で形成されているものであっても構わない。皮膜10の厚さは例えば20~500nmの範囲で選択することができる。皮膜10の代表的な形成方法としては、例えばPVD(Physical Vapor Deposition)法、CVD(Chemical Vapor Deposition)法などが挙げられる。特にPVD法のうち、スパッタリング法や、イオンプレーティング法は、TiまたはTiNの緻密な皮膜を得る上で有効であると考えられる。
【0018】
金属粉体2としては、回路パターン用の金属材料を形成する用途ではCuを主成分とするものが好適である。例えば、純Cuや、Cu系合金の粉体を使用することが好ましい。また、セラミックス基板の上にろう材層である金属材料を形成する用途ではAgを主成分とするものが好適である。例えば、Ag-Cu合金が挙げられる。その場合、Ag:Cuが質量割合で60:40~95:5の組成域にあるAg-Cu合金が好ましい。金属材料において「主成分」とは、その金属材料を構成する元素のうち最も質量割合の多い元素をいう。組成の異なる複数種類の金属粉体を混合して目的組成となる金属粉体2を用意してもよい。その場合、複数種類の金属粉体から供給される元素のうち最も質量割合の多い元素が、当該金属粉体2の主成分となる。金属粉体2の長径による平均粒子径は、例えば5~50μmの範囲とすればよい。セラミックス材料1の皮膜10上に載置する金属粉体2の層は、レーザービームを照射する部分の厚さが例えば20~2000μmとなるように形成することができる。
【0019】
レーザービーム3としては、金属加工に使用される各種レーザー光が適用対象となる。レーザー光の波長は例えば200~1100nmの範囲で選択することができる。金属粉体2にCuが含まれている場合は、Cuは波長の短いレーザー光の吸収率が高いため、例えば青色レーザー光(波長450nm付近)など、波長600nm以下のレーザー光を適用することがより効率的であると考えられる。
【0020】
レーザー光の出力は、レーザービーム3の照射位置で金属粉体2が積層厚さ全体にわたって溶融し、かつ凝固金属22とセラミックス材料1との界面での接合強度が十分に得られる熱エネルギーが付与されるように設定する必要がある。載置された金属粉体2の見かけの単位体積に付与されるレーザー光のエネルギーを比較する指標として、例えば下記(1)式により定まる「エネルギー密度指標E」を採用することができる。
E=(P/V)/(D×H) …(1)
ここで、
E:エネルギー密度指標(J/mm3)
P:レーザー光の出力(W)
V:レーザービーム3の掃引速度(mm/s)
D:レーザービーム3の照射位置におけるビーム径(mm)
H:レーザービーム3の照射位置における金属粉体2の積層厚さ(mm)
【0021】
上記エネルギー密度指標Eを12J/mm3以上とすることがより効果的であり、25J/mm3以上とすることがより好ましく、35J/mm3以上とすることがさらに好ましい。エネルギー密度指標Eの上限については、例えば500J/mm3以下といった、セラミックス材料1の損傷が生じない範囲で設定すればよい。
レーザービーム3として複数本のレーザービームを同時に照射する場合は、それぞれのレーザービームについて上記(1)式から求まるエネルギー密度指標Eの合計値を指標とすることができる。
【実施例0022】
[実施例1]
金属粉体として、粒子径45μm未満の粒子からなる純Cuアトマイズ粉を用意した。
セラミックス材料として、厚さ0.64mm、サイズ約70mm×約70mmの窒化アルミニウム(AlN)板の片側表面に以下の皮膜を形成した3種類の材料を用意した。
品番1:スパッタリング法で成膜した膜厚50nmのTi皮膜を有するもの。
品番2:イオンプレーティング法で成膜した膜厚50nmのTi皮膜を有するもの。
品番3:イオンプレーティング法で成膜した膜厚300nmのTiN皮膜を有するもの。このTiN皮膜とセラミックス基材(AlN)の間にはイオンプレーティング法で成膜した膜厚50nmのTiの薄膜が介在している。
【0023】
レーザー方式3Dプリンター装置(Concept Laser M2)を使用して、水平に設置された上記品番1~3の各セラミックス材料のTiまたはTiN皮膜形成面上に、上記の金属粉体を積層厚さ50μmで一様に敷き詰め、Ar置換雰囲気(酸素濃度1%以下)にて、その金属粉体の上方からレーザービームを、1方向に掃引させながら照射することによって、上記セラミックス材料と、上記金属粉体に由来する金属材料との接合を試みた。レーザー光の波長は1060~1100nm、金属粉体に照射される部分のレーザービーム径は80μm、レーザー出力は370W、185Wの2水準とし、レーザービームの掃引速度は600~1200mm/sの範囲における種々の水準とした。ここでは、セラミックス材料と、金属粉体に由来する金属材料との接合性を確認することを目的に、レーザービームの掃引は1パスとした。各例について上記(1)式に基づくエネルギー密度指標E(J/mm3)を算出した。
【0024】
上記のレーザービーム掃引を終え、残余の金属粉体を除去したセラミックス材料の表面を、マイクロスコープで観察することにより、セラミックスと金属の接合性を調べた。レーザービームの掃引軸に沿って両者の接合が認められたものを○(接合可)と評価した。その結果、いずれの例も○評価であった。また、上記○評価であった各例について、レーザービームの掃引軸と直交する方向の高さプロファイルをレーザー顕微鏡により測定し、セラミックス材料の表面に接合している金属材料の頂部高さを、セラミックス材料の表面を基準とする数値(μm)で表示した。
これらの結果を表1に示す。
【0025】
[実施例2]
金属粉体として、粒子径45μm未満の粒子からなるAg-Cu合金粉(東京ブレイズ株式会社製、品番TB-608、組成:72質量%Ag-28質量%Cu)を用意した。
実施例1において金属粉体を純Cu粉から上記のAg-Cu合金粉に変えたこと、およびレーザービーム掃引速度の水準を600~3600mm/sの範囲で更に細かく設定したことを除き、実施例1と同様の方法で試験および評価を行った。その結果、いずれの例も○評価であった。
結果を表2、表3に示す。
【0026】
【0027】
【0028】
【0029】
表面にTiあるいはTiNの皮膜を形成したセラミックス材料を使用することにより、セラミックス材料と、金属粉体に由来する金属材料との接合が可能であることが確認された。
なお、表面にTiあるいはTiNの皮膜を形成していない裸のAlN板を用いて行った予備実験では、セラミックス材料と上記各金属粉に由来する金属材料との接合が可能となる条件を見いだすことができなかった。
【0030】
参考のため、
図2に、実施例2の例No.221で得られた発明例のセラミックス-金属接合体をセラミックス材料の板面に垂直な方向から見た光学顕微鏡写真を例示する。
また、
図3に、
図2中に示したライン上をレーザー顕微鏡で測定した高さプロファイルを例示する。
【0031】
[シェア強度の測定]
シェア強度測定に必要な金属材料の積層高さを確保するために、実施例2の例No.221、およびNo.227と同様の方法で得たそれぞれのセラミックス-金属接合体における金属材料表面上に、引き続きレーザー方式3Dプリンター装置内でパウダーベッド法による厚さ50μmの同種金属粉体の積層を行い、当該金属粉体の上方からレーザービームを1方向に掃引させながら照射することを繰り返して、合計5回の金属粉体積層およびレーザービーム照射によって線状の金属造形物を作製した。
得られた線状金属造形物の長さ方向に対して垂直に、セラミックス-金属接合体を幅10mmで切断して評価サンプルとした。株式会社アドウェルズ製シェアテスター(型式:SPST2000N)に評価サンプルを取り付け、シェアツールにより送り速度0.25mm/秒にて線状金属造形物の長さ方向に対して直角方向かつセラミックス表面に平行方向の外力を線状金属造形物に負荷する方法でシェア強度を測定した。
【0032】
その結果、シェア強度は、例No.221のレーザー照射条件で形成した線状金属造形物が11.45MPa、例No.227のレーザー照射条件で形成した線状金属造形物が13.58MPaであった。いずれの例も、破断はセラミックス/金属界面近傍のセラミックス内で起こっていたことから、セラミックス材料と金属材料の接合面での接合強度は、上記シェア強度の測定値を上回るものであると評価される。
本発明に従う手法により、シェア強度が10MPaを超える高い接合力でセラミックス材料と金属材料との接合が可能であることが確認された。