(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024124722
(43)【公開日】2024-09-13
(54)【発明の名称】印刷方法およびロボットシステム
(51)【国際特許分類】
B25J 13/08 20060101AFI20240906BHJP
B05C 5/00 20060101ALI20240906BHJP
B05C 11/00 20060101ALI20240906BHJP
B05C 11/10 20060101ALI20240906BHJP
B05B 12/00 20180101ALI20240906BHJP
B05D 7/24 20060101ALI20240906BHJP
B05D 1/26 20060101ALI20240906BHJP
B05D 3/00 20060101ALI20240906BHJP
【FI】
B25J13/08 A
B05C5/00 101
B05C11/00
B05C11/10
B05B12/00 A
B05D7/24 301M
B05D1/26 Z
B05D3/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023032599
(22)【出願日】2023-03-03
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 英俊
【テーマコード(参考)】
3C707
4D075
4F035
4F041
4F042
【Fターム(参考)】
3C707AS13
3C707BS12
3C707CX01
3C707HS27
3C707KT01
3C707KT05
3C707KT11
3C707MT05
4D075AC06
4D075AC09
4D075AC88
4D075AC91
4D075CA47
4D075CA48
4D075DA06
4D075DA10
4D075DA23
4D075EA05
4D075EA33
4F035AA03
4F035BC02
4F041AB01
4F041BA01
4F041BA10
4F041BA13
4F041BA23
4F041BA34
4F042AA02
4F042AB00
4F042BA08
4F042BA12
4F042DH09
(57)【要約】
【課題】ロボットを用いて対象物に印刷を行うとき、高精度の印刷を行い得る印刷方法およびロボットシステムを提供すること。
【解決手段】インク吐出ヘッドと、ロボットアーム、および、前記インク吐出ヘッドを支持し、ピエゾ駆動により前記ロボットアームに対して前記インク吐出ヘッドを移動させる移動ステージを備えるロボットと、カメラと、を用い、前記ロボットが対象物に対して前記インク吐出ヘッドを走査方向に走査させながら、前記インク吐出ヘッドがインクを吐出し、前記対象物に印刷を行う印刷方法であって、前記カメラで前記対象物の表面画像を取得する準備ステップと、前記取得した表面画像に基づいて、前記走査方向と直交する方向における前記インク吐出ヘッドのぶれを、前記移動ステージを用いて補正しながら前記印刷を行う印刷ステップと、を含むことを特徴とする印刷方法。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インク吐出ヘッドと、
ロボットアーム、および、前記インク吐出ヘッドを支持し、ピエゾ駆動により前記ロボットアームに対して前記インク吐出ヘッドを移動させる移動ステージを備えるロボットと、
カメラと、
を用い、前記ロボットが対象物に対して前記インク吐出ヘッドを走査方向に走査させながら、前記インク吐出ヘッドがインクを吐出し、前記対象物に印刷を行う印刷方法であって、
前記カメラで前記対象物の表面画像を取得する準備ステップと、
前記取得した表面画像に基づいて、前記走査方向と直交する方向における前記インク吐出ヘッドのぶれを、前記移動ステージを用いて補正しながら前記印刷を行う印刷ステップと、
を含むことを特徴とする印刷方法。
【請求項2】
前記準備ステップは、取得した複数枚の前記表面画像に基づいて、照合用画像を生成するステップを含み、
前記印刷ステップは、前記カメラで取得した前記対象物の表面画像と、前記照合用画像と、を照合し、照合結果を前記移動ステージの動作に反映させながら前記対象物に印刷を行う動作を含む請求項1に記載の印刷方法。
【請求項3】
前記照合用画像を生成するステップは、取得した複数枚の前記表面画像から前記照合用画像を抽出する処理を含む請求項2に記載の印刷方法。
【請求項4】
前記準備ステップは、
前記ロボットアームを第1姿勢にする動作と、
前記第1姿勢を維持した状態で、前記移動ステージを用いて前記カメラを前記対象物に対して移動させながら前記対象物の第1撮像領域の表面画像を取得する処理と、
前記ロボットアームを第2姿勢にする動作と、
前記第2姿勢を維持した状態で、前記移動ステージを用いて前記カメラを前記対象物に対して移動させながら前記対象物の第2撮像領域の表面画像を取得する処理と、
を含む請求項2または3に記載の印刷方法。
【請求項5】
前記ロボットアームを前記第1姿勢から前記第2姿勢に変化させるとき、前記対象物に対する前記カメラの位置が維持されるように前記移動ステージを駆動する請求項4に記載の印刷方法。
【請求項6】
前記準備ステップは、前記移動ステージを停止させた状態で、前記ロボットアームを用いて前記カメラを前記対象物に対して移動させながら前記対象物の表面画像を取得する処理を含む請求項3に記載の印刷方法。
【請求項7】
前記準備ステップは、取得した表面画像に基づいて、前記対象物に対する前記カメラの変位パターンを生成し、前記変位パターンに基づいて、前記移動ステージの駆動パターンを生成するステップを含み、
前記印刷ステップは、前記駆動パターンを前記移動ステージの動作に反映させながら前記対象物に印刷を行う動作を含む請求項1に記載の印刷方法。
【請求項8】
前記カメラは、分光カメラである請求項1ないし3のいずれか1項に記載の印刷方法。
【請求項9】
対象物に対して印刷を行うロボットシステムであって、
インク吐出ヘッドと、
ロボットアーム、および、前記インク吐出ヘッドを支持し、ピエゾ駆動により前記ロボットアームに対して前記インク吐出ヘッドを移動させる移動ステージを備え、前記対象物に対して前記インク吐出ヘッドを走査方向に走査させるロボットと、
カメラと、
前記インク吐出ヘッドおよび前記ロボットの動作を制御することにより、前記対象物に前記印刷を行わせる印刷制御部と、
を備え、
前記印刷制御部は、
前記対象物の表面画像を前記カメラに取得させる表面画像取得部と、
前記取得した表面画像に基づいて、前記走査方向と直交する方向における前記インク吐出ヘッドのぶれを、前記移動ステージを用いて補正する補正量を算出する補正量算出部と、
を有することを特徴とするロボットシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷方法およびロボットシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
複数の可動部の動作を組み合わせてインクジェットプリントヘッドを移動させ、立体物の表面に印刷を行う立体物印刷装置が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、三次元的な対象物に印刷を行うシステムであって、ジョイントアーム・ロボットと、印刷ヘッドと、これらの間に配置されたピエゾアクチュエーターと、印刷点の位置を把握する検出器と、を備えるシステムが開示されている。ロボットは、対象物の表面に沿って印刷ヘッドを移動させるように構成されている。これにより、互いに隣り合う印刷軌道を含むマルチパスで印刷を行うことができる。
【0004】
また、特許文献1には、ピエゾアクチュエーターが、ロボットに対して印刷ヘッドを相対運動させることが開示されている。そして、特許文献1には、このシステムを用いて互いに隣り合う2つの印刷軌道で印刷ヘッドを移動させながらマルチパスで印刷を行うとき、第1の印刷軌道の印刷点の実際位置を把握すること、目標位置と実際位置とのずれを算出すること、および、第2の印刷軌道において前記ずれを解消するように補整運動を行わせること、が開示されている。これにより、印刷パス同士のずれが抑えられ、エラーのない像を印刷することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載のシステムでは、ロボットに発生する振動等の原因により、印刷軌道に直交する方向において、印刷ヘッドの位置ずれが生じる。この位置ずれは、印刷ヘッドから吐出されるインクの到達点がずれる原因となるため、印刷不良を引き起こす。このため、印刷結果の精度を十分に高めることができないという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の適用例に係る印刷方法は、
インク吐出ヘッドと、
ロボットアーム、および、前記インク吐出ヘッドを支持し、ピエゾ駆動により前記ロボットアームに対して前記インク吐出ヘッドを移動させる移動ステージを備えるロボットと、
カメラと、
を用い、前記ロボットが対象物に対して前記インク吐出ヘッドを走査方向に走査させながら、前記インク吐出ヘッドがインクを吐出し、前記対象物に印刷を行う印刷方法であって、
前記カメラで前記対象物の表面画像を取得する準備ステップと、
前記取得した表面画像に基づいて、前記走査方向と直交する方向における前記インク吐出ヘッドのぶれを、前記移動ステージを用いて補正しながら前記印刷を行う印刷ステップと、
を含む。
【0008】
本発明の適用例に係るロボットシステムは、
対象物に対して印刷を行うロボットシステムであって、
インク吐出ヘッドと、
ロボットアーム、および、前記インク吐出ヘッドを支持し、ピエゾ駆動により前記ロボットアームに対して前記インク吐出ヘッドを移動させる移動ステージを備え、前記対象物に対して前記インク吐出ヘッドを走査方向に走査させるロボットと、
カメラと、
前記インク吐出ヘッドおよび前記ロボットの動作を制御することにより、前記対象物に前記印刷を行わせる印刷制御部と、
を備え、
前記印刷制御部は、
前記対象物の表面画像を前記カメラに取得させる表面画像取得部と、
前記取得した表面画像に基づいて、前記走査方向と直交する方向における前記インク吐出ヘッドのぶれを、前記移動ステージを用いて補正する補正量を算出する補正量算出部と、
を有する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1実施形態に係るロボットシステムの全体構成を示す斜視図である。
【
図2】
図1に示すロボットシステムの機能ブロック図である。
【
図3】
図1に示す移動ステージおよびインク吐出ヘッドを示す平面図である。
【
図4】第1実施形態に係る印刷方法を説明するためのフローチャートである。
【
図5】
図4に示す印刷方法を説明するための図であって、対象物の印刷面を複数の印刷領域に分割した状態を示す図である。
【
図6】
図4に示す印刷方法を説明するための図であって、単位準備ステップにおけるロボットシステムの動作を説明する図である。
【
図7】
図4に示す印刷方法を説明するための図であって、単位準備ステップにおけるロボットシステムの動作を説明する図である。
【
図8】
図4に示す印刷方法を説明するための図であって、単位準備ステップにおけるロボットシステムの動作を説明する図である。
【
図9】
図4に示す印刷方法を説明するための図であって、単位準備ステップにおけるロボットシステムの動作を説明する図である。
【
図10】
図4に示す印刷方法を説明するための図であって、照合用画像抽出ステップを説明する図である。
【
図11】第2実施形態に係る印刷方法を説明するためのフローチャートである。
【
図12】
図11に示す印刷方法を説明するための図であって、ロボットアーム駆動ステップおよび照合用画像抽出ステップを説明する図である。
【
図13】第3実施形態に係る印刷方法を説明するためのフローチャートである。
【
図14】
図13に示す印刷方法を説明するための図であって、ロボットアーム駆動ステップおよび移動ステージ駆動パターン生成ステップを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の印刷方法およびロボットシステムの好適な実施形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。
【0011】
1.第1実施形態
まず、第1実施形態に係る印刷方法およびロボットシステムについて説明する。
【0012】
1.1.ロボットシステム
図1は、第1実施形態に係るロボットシステム100の全体構成を示す斜視図である。
図2は、
図1に示すロボットシステム100の機能ブロック図である。
図3は、
図1に示す移動ステージ300およびインク吐出ヘッド400を示す平面図である。
【0013】
図1に示すロボットシステム100は、ロボット200と、インク吐出ヘッド400と、対象物Qを支持および固定する固定部材700と、カメラ800と、制御装置900と、を備える。
【0014】
ロボット200は、6つの駆動軸を有する6軸の垂直多関節ロボットである。ロボット200は、床に固定された基台210と、基台210に接続されたロボットアーム220と、ロボットアーム220に取り付けられた移動ステージ300と、を有する。なお、ロボット200が有する駆動軸は、6つより少なくても多くてもよい。また、ロボット200は、水平多関節ロボットであってもよいし、複数のロボットアームを有する多腕ロボットであってもよい。
【0015】
ロボットアーム220は、複数のアーム221、222、223、224、225、226が回動自在に連結されたロボティックアームであり、6つの関節J1~J6を備えている。このうち、関節J2、J3、J5は、曲げ関節であり、関節J1、J4、J6は、ねじり関節である。また、ロボットアーム220には、
図2に示すアーム駆動機構230が設けられている。アーム駆動機構230は、
図1に示す関節J1、J2、J3、J4、J5、J6にそれぞれ設けられたモーターMおよびエンコーダーEで構成されている。モーターMは、関節J1、J2、J3、J4、J5、J6をそれぞれ駆動する駆動源である。エンコーダーEは、モーターMの回転量(アームの回動角)を検出する。
【0016】
アーム226の先端部には、
図3に示すように、移動ステージ300を介してインク吐出ヘッド400が取り付けられている。
図3に示すインク吐出ヘッド400は、図示しないインク室およびインク室の壁面に配置された振動板と、インク室に繋がるインク吐出孔411と、を有し、振動板が振動することによりインク室内のインクがインク吐出孔411から吐出する構成となっている。ただし、インク吐出ヘッド400の構成は、特に限定されない。
【0017】
また、ロボットシステム100は、プリントコントローラー420を備える。インク吐出ヘッド400は、
図2に示すように、プリントコントローラー420に接続されている。
図1の例では、プリントコントローラー420がインク吐出ヘッド400と同様、移動ステージ300を介してアーム226の先端部に取り付けられている。プリントコントローラー420は、制御装置900から出力される制御信号に基づいて、インク吐出ヘッド400の動作を制御する。
【0018】
プリントコントローラー420は、例えば、1個以上のCPU(Central Processing Unit)のようなプロセッサー、メモリー、外部インターフェース等を含む。なお、プリントコントローラー420は、CPUに代えて、または、CPUに加えて、FPGA(Field Programmable Gate Array)等のプログラマブルロジックデバイスを含んでいてもよい。また、プリントコントローラー420は、制御装置900に組み込まれていてもよい。
【0019】
移動ステージ300は、
図3に示すように、アーム226に接続された基部310と、基部310に対して移動するステージ320と、基部310に対してステージ320を移動させる移動機構330と、を有する。
図3に示すように、互いに直交する3軸をX軸、Y軸およびZ軸としたとき、ステージ320は、基部310に対してY軸に沿う方向に移動可能なYステージ320Yと、Yステージ320Yに対してX軸に沿う方向に移動可能なXステージ320Xと、を有する。Xステージ320XおよびYステージ320Yは、図示しないリニアガイドによってX軸方向およびY軸方向に直動案内されており、滑らかに移動することができる。インク吐出ヘッド400は、Xステージ320Xに取り付けられている。なお、ステージ320は、基部310に対してZ軸まわりに回転可能な回転ステージを有していてもよい。
【0020】
移動機構330は、Yステージ320Yを基部310に対してY軸に沿う方向に移動させるY移動機構330Yと、Xステージ320XをYステージ320Yに対してX軸に沿う方向に移動させるX移動機構330Xと、を有する。
【0021】
Y移動機構330YおよびX移動機構330Xは、それぞれ、駆動源として圧電アクチュエーター340を有する。圧電アクチュエーター340は、圧電素子の伸縮を利用して振動し、その振動をXステージ320XおよびYステージ320Yに伝達することによって移動させる。つまり、移動ステージ300は、ピエゾ駆動により、ロボットアーム220に対してインク吐出ヘッド400を移動させるように構成されている。これにより、移動ステージ300の小型化および軽量化を図ることができる。また、移動ステージ300の駆動精度が向上する。さらに、圧電アクチュエーター340は、停止時の保持トルクが大きいため、ブレーキを追加する必要がない点、および、停止時のステージ320の位置安定性が高い点でも有用である。
【0022】
また、ロボットシステム100は、
図1および
図2に示すように、ロボットコントローラー600を備える。モーターMおよびエンコーダーEは、ロボットコントローラー600に接続されている。ロボットコントローラー600は、制御装置900から出力される制御信号に基づいて、ロボット200の動作を制御する。
【0023】
ロボットコントローラー600は、機能部として、アーム制御部610、移動ステージコントローラー620、および、記憶部630を有する。
【0024】
アーム制御部610は、アーム駆動機構230の動作を制御する制御信号を出力することにより、ロボットアーム220を目的とする姿勢に制御する。
【0025】
移動ステージコントローラー620は、移動ステージ300の動作を制御する制御信号を出力することにより、ロボットアーム220に対してインク吐出ヘッド400を目的とする位置に移動させる。なお、移動ステージコントローラー620は、ロボットコントローラー600から独立していてもよい。
【0026】
記憶部630は、ロボットコントローラー600での処理に必要なプログラム、プログラムの実行に必要なデータ等を格納する。
【0027】
ロボットコントローラー600は、例えば、1個以上のCPUのようなプロセッサー、メモリー、外部インターフェース等を含む。なお、ロボットコントローラー600は、CPUに代えて、または、CPUに加えて、FPGA等のプログラマブルロジックデバイスを含んでいてもよい。
【0028】
カメラ800は、インク吐出ヘッド400と同じ動きが可能な部位に取り付けられる。本実施形態では、
図3に示すように、Xステージ320Xにカメラ800が取り付けられている。なお、カメラ800は、インク吐出ヘッド400に取り付けられていてもよい。カメラ800としては、例えば、モノクロカメラ、カラーカメラ、分光カメラ等が挙げられる。
【0029】
カメラ800に分光カメラを用いた場合、平面イメージに加え、画素毎の分光データ(スペクトル情報)を取得することができる。そのため、カメラ800が取得した対象物Qの表面画像において、対象物Qの印刷面Q1に存在する様々な凹凸、模様等を判別するとき、より高い精度で判別することができる。
【0030】
制御装置900は、ロボットコントローラー600、プリントコントローラー420、および、カメラ800の動作を制御して、対象物Qに対する印刷を実行させる。制御装置900は、
図2に示すように、機能部として、印刷制御部910、および、記憶部930を有する。印刷制御部910は、表面画像取得部912、照合用画像生成部914、補正量算出部916、および、印刷データ生成部918を含む。
【0031】
表面画像取得部912は、ロボットコントローラー600およびカメラ800の動作を制御し、対象物Qの印刷面Q1の表面画像を取得する。表面画像とは、対象物Qの印刷面Q1を撮像して得られる画像である。対象物Qの印刷面Q1には、通常、肉眼では識別できない微小な凹凸、模様等が存在する。以下の説明では、これらを「テクスチャー」という。したがって、表面画像取得部912は、このようなテクスチャーを含む表面画像を取得する。印刷面Q1に存在するテクスチャーは、指紋のように、固有の形状的特徴を有している。このため、表面画像におけるテクスチャーは、印刷面Q1における位置を特定するために利用できる。
【0032】
照合用画像生成部914は、表面画像取得部912が取得した表面画像に基づいて、照合用画像を生成する。
【0033】
補正量算出部916は、表面画像に基づいてロボットコントローラー600の動作を制御し、インク吐出ヘッド400に生じるぶれを補正するための補正量を算出する。具体的には、ロボットコントローラー600を介して移動ステージ300の動作を制御し、ロボットアーム220に発生する振動等に起因するインク吐出ヘッド400のぶれを相殺または減少させる。補正量算出部916は、算出した補正量を、ロボットコントローラー600に出力する。
【0034】
印刷データ生成部918は、印刷データを生成し、ロボットコントローラー600およびプリントコントローラー420に出力する。印刷データとは、対象物Qに印刷する文字、画像等を構成するデータである。
【0035】
記憶部930は、制御装置900の動作に必要なプログラム、プログラムの実行に必要なデータ等を格納する。
【0036】
制御装置900は、例えば、コンピューターで構成され、情報を処理するプロセッサー(CPU)と、プロセッサーに通信可能に接続されたメモリーと、外部インターフェースと、を有する。また、メモリーにはプロセッサーにより実行可能な各種プログラムが保存され、プロセッサーは、メモリーに記憶された各種プログラム等を読み込んで実行することにより、前述した機能を実現する。なお、制御装置900は、CPUに代えて、または、CPUに加えて、FPGA(Field Programmable Gate Array)等のプログラマブルロジックデバイスを含んでいてもよい。
【0037】
以上、第1実施形態に係るロボットシステム100の構成について説明したが、移動ステージ300は、ロボットアーム220から離れた位置、例えば固定部材700に取り付けられ、対象物Qを支持していてもよい。この場合も、移動ステージ300が固定部材700に対して対象物Qを移動させることにより、インク吐出ヘッド400のぶれを相殺または減少させることができる。
【0038】
1.2.印刷方法
次に、第1実施形態に係る印刷方法について説明する。なお、以下の説明では、一例として、前述したロボットシステム100を用いた方法について説明する。
第1実施形態に係る印刷方法は、ロボット200が対象物Qに対してインク吐出ヘッド400を印刷方向D1に走査させながら、インク吐出ヘッド400がインクを吐出し、対象物Qに印刷を行う方法である。
【0039】
図4は、第1実施形態に係る印刷方法を説明するためのフローチャートである。
図5は、
図4に示す印刷方法を説明するための図であって、対象物Qの印刷面を複数の印刷領域に分割した状態を示す図である。
図6ないし
図9は、それぞれ、
図4に示す印刷方法を説明するための図であって、単位準備ステップS110におけるロボットシステム100の動作を説明する図である。
【0040】
図4に示す印刷方法は、準備ステップS1と、印刷ステップS2と、を有する。以下、各ステップについて順に説明する。
【0041】
1.2.1.準備ステップ
図4に示す準備ステップS1は、単位準備ステップS110、判断ステップS120、および、照合用画像抽出ステップS130を有する。
【0042】
準備ステップS1では、印刷の準備として、対象物Qの印刷面Q1に存在するテクスチャーを事前に撮像する。本実施形態では、印刷面Q1を複数の印刷領域に分割し、印刷領域ごとに表面画像を取得する。そして、得られた複数枚の表面画像から照合用画像を生成する。後述する印刷ステップS2では、この照合用画像に基づいて、移動ステージ300の動作を制御する。
【0043】
具体的には、まず、事前に入力された情報やカメラ800またはその他の撮像装置で撮像された画像等に基づいて、印刷制御部910の表面画像取得部912が印刷面Q1の形状や大きさ等を取得する。そして、印刷面Q1を複数の印刷領域に分割する。
図5に示す例では、印刷方向D1に沿って延在する長方形状の印刷面Q1を、印刷方向D1に沿って一列に並ぶ4つの印刷領域R1、R2、R3、R4に均等に分割している。なお、印刷面Q1の分割方法は、特に限定されず、印刷領域間で大きさや形状が異なっていてもよいし、一列に並んでいなくてもよい。
【0044】
また、各印刷領域R1、R2、R3、R4におけるロボット200の作動条件を決定する。作動条件としては、特に限定されないが、例えば、各印刷領域R1、R2、R3、R4におけるロボットアーム220の姿勢、移動経路、加速度、減速度および最大速度等、ならびに、移動ステージ300の移動量、移動速度等が挙げられる。これらの作動条件は、印刷制御部910が有する印刷データ生成部918が生成する印刷データに基づいて、適宜設定される。
【0045】
単位準備ステップS110では、印刷領域R1、R2、R3、R4ごとに印刷方向D1に沿ってインク吐出ヘッド400を走査する。このとき、インク吐出ヘッド400に近接して配置されているカメラ800は、これらの領域に隣り合う撮像領域F1、F2、F3、F4ごとに印刷方向D1に沿って走査され、表面画像を事前に取得する。
【0046】
単位準備ステップS110は、ロボットアーム駆動ステップS112と、移動ステージ駆動ステップS114と、を含む。
【0047】
ロボットアーム駆動ステップS112では、ロボットアーム220を駆動して第1姿勢POS1にする。第1姿勢POS1は、
図6に示すように、印刷領域R1と対向するようにインク吐出ヘッド400を配置したときのロボットアーム220の姿勢である。このときのインク吐出ヘッド400と印刷領域R1との離間距離は、あらかじめ設定された、インク吐出において適正なギャップとするのが好ましい。また、第1姿勢POS1は、移動ステージ300の駆動によるインク吐出ヘッド400の印刷方向D1における可動域が、印刷領域R1の印刷方向D1における全長を含むように設定されている。つまり、印刷方向D1における印刷領域R1の両端が、
図6に示す移動開始位置P1および移動終了位置P2であるとき、第1姿勢POS1は、インク吐出ヘッド400が移動開始位置P1から移動終了位置P2に至るまで移動ステージ300によって移動できるように、移動ステージ300を配置し得る姿勢である。
【0048】
移動ステージ駆動ステップS114では、ロボットアーム220を第1姿勢POS1に維持した状態で、移動ステージ300を用いてカメラ800を対象物Qに対して移動させながら撮像領域F1の表面画像を事前に取得する。事前とは、印刷ステップS2よりも前に行うことを意味する。
【0049】
具体的には、表面画像取得部912の制御により、
図7に示すように、移動ステージ300を駆動してインク吐出ヘッド400を印刷領域R1の移動開始位置P1まで移動させる。次に、
図8に示すように、移動ステージ300を駆動してインク吐出ヘッド400を移動開始位置P1から矢印Nに沿って移動終了位置P2まで移動させつつ、カメラ800で撮像領域F1の表面画像を複数枚取得する。つまり、インク吐出ヘッド400が印刷領域R1を移動するとき、カメラ800は撮像領域F1を移動しながら、所定の撮像間隔で複数枚の表面画像を取得する。撮像間隔は、特に限定されないが、例えば1マイクロ秒以上100ミリ秒以下程度とされる。カメラ800の画角は、撮像領域F1より広くてもよいが、本実施形態では、撮像領域F1よりも狭い。このため、移動ステージ300でカメラ800を移動させつつ、複数枚の表面画像を撮像することにより、印刷方向D1における撮像領域F1全体をカバーする。このとき、時間的に隣り合う表面画像同士では、撮像範囲が重複している。これにより、時間的に隣り合う表面画像には、互いに同じテクスチャーが写っている。このため、後述する工程では、時間的に隣り合う表面画像同士の接続(結合)が可能になる。この場合、カメラ800の画角が小さくて済むため、カメラ800の簡素化および低コスト化を図ることができる。また、表面画像の倍率を高めることができ、テクスチャーの分解能を高めることができる。
【0050】
判断ステップS120では、全ての撮像領域の撮像を終えたか否かを判断する。本実施形態では、4つの撮像領域F1、F2、F3、F4があるため、ここでは、撮像を終えることなく、単位準備ステップS110に戻る。
【0051】
次に、2回目の単位準備ステップS110について説明する。
2回目のロボットアーム駆動ステップS112では、ロボットアーム220を駆動して第2姿勢POS2にする。第2姿勢POS2は、
図9に示すように、印刷領域R2と対向するようにインク吐出ヘッド400を配置したときのロボットアーム220の姿勢である。
【0052】
このときのインク吐出ヘッド400と印刷領域R2との離間距離は、あらかじめ設定された、インク吐出において適正なギャップとするのが好ましい。また、第2姿勢POS2は、移動ステージ300の駆動によるインク吐出ヘッド400の印刷方向D1における可動域が、印刷領域R2の印刷方向D1における全長を含むように設定されている。つまり、印刷方向D1における印刷領域R2の両端が、
図9に示す移動開始位置P3および移動終了位置P4であるとき、第2姿勢POS2は、インク吐出ヘッド400が移動開始位置P3から移動終了位置P4に至るまで移動ステージ300によって移動できるように、移動ステージ300を配置し得る姿勢である。
【0053】
2回目の移動ステージ駆動ステップS114では、ロボットアーム220を第2姿勢POS2に維持した状態で、移動ステージ300を用いてカメラ800を対象物Qに対して移動させながら撮像領域F2の表面画像を事前に取得する。
【0054】
図示しないが、まず、移動ステージ300を駆動してインク吐出ヘッド400を印刷領域R2の移動開始位置P3まで移動させる。次に、移動ステージ300を駆動してインク吐出ヘッド400を移動開始位置P3から移動終了位置P4まで移動させつつ、カメラ800で撮像領域F2の表面画像を複数枚取得する。
【0055】
なお、ロボットアーム220の第2姿勢POS2は、第1姿勢POS1とは異なる姿勢であるため、姿勢の変更に伴って印刷面Q1に対するインク吐出ヘッド400の位置が変化するおそれがある。インク吐出ヘッド400の位置が変化すると、撮像領域F1と撮像領域F2との間で表面画像の連続性が損なわれるおそれがある。そこで、第1姿勢POS1から第2姿勢POS2に変更する場合、姿勢の変更に伴って印刷面Q1に対するインク吐出ヘッド400の位置が変化しないように、移動ステージ300を駆動してインク吐出ヘッド400を移動させる。具体的には、印刷領域R2の移動開始位置P3は、前述した印刷領域R1の移動終了位置P2と重複している。そこで、1回目の単位準備ステップS110で、移動終了位置P2にインク吐出ヘッド400が到達した後、ロボットアーム220の姿勢を変化しても、移動終了位置P2に対するインク吐出ヘッド400の位置が変化しないように、移動ステージ300を駆動する。これにより、ロボットアーム220の姿勢が変化しても、カメラ800は、同一のテクスチャーを捉え続けることができる。その結果、撮像領域F1と撮像領域F2との間で表面画像の連続性を確保することができ、照合用画像Im2の生成を確実に行うことができる。
【0056】
2回目の判断ステップS120では、全ての撮像領域の撮像を終えたか否かを判断する。ここでは、撮像を終えることなく、単位準備ステップS110に戻る。
【0057】
3回目および4回目の単位準備ステップS110では、2回目の単位準備ステップS110と同様にして、撮像領域F3、F4の表面画像を取得する。撮像領域が5つ以上ある場合も、同様にして表面画像を取得すればよい。
【0058】
4回目、すなわち最後の判断ステップS120では、全ての撮像領域の撮像を終えているので、照合用画像抽出ステップS130に移行する。
【0059】
照合用画像抽出ステップS130では、複数枚の表面画像から照合用画像を抽出する処理を行う。
【0060】
図10は、
図4に示す印刷方法を説明するための図であって、照合用画像抽出ステップS130を説明する図である。
図10では、4回の単位準備ステップS110で取得された複数枚の表面画像Im1が、印刷方向D1に沿って並んでいる様子(表面画像Im1を撮像位置に並べた様子)を示している。
図10に示す各表面画像Im1は、一例として、正方形をなしている。なお、隣り合う表面画像Im1は、本来、互いに重なり合っているが、
図10では、図示の便宜上、重なり合わないで隣接して図示されている。
【0061】
照合用画像抽出ステップS130では、照合用画像生成部914が、複数枚の表面画像Im1から1枚の照合用画像Im2を抽出して生成する。前述したように、時間的に隣り合う表面画像Im1、つまり、印刷方向D1に沿って隣り合う表面画像Im1は、互いに重複する範囲を撮像して得られた画像であるため、互いに同じテクスチャーの像を含んでいる。このため、このテクスチャーの像を基準にして、表面画像Im1同士を接続することができる。なお、本実施形態では、撮像領域ごとに、複数枚の表面画像Im1を取得するため、撮像領域ごとに表面画像Im1同士を接続して接続画像を得た後、さらに、接続画像同士をさらに接続すればよい。このようにして、撮像領域F1、F2、F3、F4について取得した表面画像を全て接続し、1枚の照合用画像Im2を抽出して生成する。抽出には、重複する範囲で表面画像Im1同士を合成する処理を含む。これにより、重複する範囲のデータを減らすことができるので、照合用画像Im2のデータサイズを圧縮することができる。また、後述する印刷ステップS2において、撮像した表面画像と、照合用画像Im2と、を照合するとき、演算処理の負荷を軽減できる。照合用画像生成部914は、生成した照合用画像Im2を記憶部930に格納する。
【0062】
なお、
図10では、複数枚の表面画像Im1でカバーされる印刷面Q1の範囲と、照合用画像Im2がカバーする範囲とが、同じになっている。一方、照合用画像Im2がカバーする範囲は、複数枚の表面画像Im1でカバーされる範囲より狭くてもよい。つまり、複数枚の表面画像Im1を接続してなる接続画像から、照合用画像Im2を切り出すようにしてもよい。これにより、照合用画像Im2のデータサイズを圧縮することができる。
【0063】
1.2.2.印刷ステップ
図4に示す印刷ステップS2は、ロボット駆動ステップS230を有する。印刷ステップS2では、改めて取得した表面画像と、照合用画像と、を照合し、照合結果を移動ステージ300の動作に反映させながら、対象物Qに印刷を行う。これにより、ロボットアーム220で印刷方向D1にインク吐出ヘッド400を移動させるとき、印刷方向D1と直交する方向(直交方向D2)のぶれを、移動ステージ300を用いて補正することができる。印刷ステップS2では、準備ステップS1と同様の作動条件で、ロボット200を動作させる。なお、一部の作動条件が異なっていてもよい。
【0064】
ロボット駆動ステップS230では、ロボットアーム220を駆動して、印刷領域R1、R2、R3、R4の全体にわたってインク吐出ヘッド400を印刷方向D1に走査させる。このときのインク吐出ヘッド400と印刷領域R1との離間距離は、あらかじめ設定された、インク吐出において適正なギャップとするのが好ましい。
【0065】
インク吐出ヘッド400を印刷方向D1に走査させながら、表面画像取得部912の制御により、カメラ800で撮像領域F1、F2、F3、F4の全体にわたって表面画像を改めて取得する。
【0066】
補正量算出部916は、取得した表面画像と、照合用画像と、を照合し、移動ステージ300によるインク吐出ヘッド400の位置の補正量を算出する。例えば、照合用画像において、印刷方向D1に沿って、T1、T2、T3、T4、T5、T6という互いに区別可能なテクスチャーの像が並んでいる場合を考える。この場合、印刷面Q1のこれらのテクスチャーが存在している部分を撮像すれば、本ステップで改めて取得した表面画像にも、同様のテクスチャーT1~T6の像が含まれることになる。補正量算出部916は、照合用画像におけるテクスチャーT1~T6の直交方向D2における座標と、取得した表面画像におけるテクスチャーT1~T6の直交方向D2における座標と、が一致または対応している場合には、インク吐出ヘッド400は目的とする経路で走査されていると判断する。一方、これらが一致または対応していない場合には、インク吐出ヘッド400は目的とする経路からずれていると判断する。座標のずれ量から、インク吐出ヘッド400のずれを補正するのに必要な補正量が求められる。このようにして、移動ステージ300による補正量を算出する。
【0067】
ロボットコントローラー600は、この補正量に基づいて移動ステージ300の動作を制御し、直交方向D2におけるインク吐出ヘッド400のぶれをリアルタイムに補正する。つまり、取得した表面画像と照合用画像との照合結果を、移動ステージ300の動作に反映させることにより、インク吐出ヘッド400のぶれを補正する。ぶれを補正するとは、インク吐出ヘッド400の直交方向D2のずれを、移動ステージ300を用いて相殺または減少させることをいう。
【0068】
ロボット駆動ステップS230では、上記のようにインク吐出ヘッド400のぶれを補正しながら、インク吐出ヘッド400からインクを吐出し、印刷領域R1、R2、R3、R4に印刷を行う。印刷面Q1には、実質的に無限数のテクスチャーが存在しているので、補正量算出部916が着目するテクスチャーを順次切り替えながら移動ステージ300の動作を追従させることにより、印刷面Q1に設定した目的とする経路(照合用画像Im2に記録されている経路)に沿ってインク吐出ヘッド400を走査させることができる。これにより、ぶれの影響が抑えられた特に高精度の印刷を行うことができる。
【0069】
以上のような第1実施形態に係る印刷方法では、撮像領域F1、F2、F3、F4の各表面画像を取得するとき、ロボットアーム220を駆動することなく、移動ステージ300を駆動してカメラ800を移動させる。このため、ロボットアーム220に発生する振動の影響を受けることなく表面画像を取得することができる。これにより、特に精度の高い照合用画像を生成することができる。その結果、インク吐出ヘッド400のぶれをより精度よく補正することができ、より高精度の印刷を行うことができる。
【0070】
2.第2実施形態
次に、第2実施形態に係る印刷方法について説明する。
【0071】
図11は、第2実施形態に係る印刷方法を説明するためのフローチャートである。
図12は、
図11に示す印刷方法を説明するための図であって、ロボットアーム駆動ステップS112および照合用画像抽出ステップS130を説明する図である。
【0072】
以下、第2実施形態について説明するが、以下の説明では、第1実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項についてはその説明を省略する。なお、
図11および
図12において、前記第1実施形態と同様の構成については、同一の符号を付している。
【0073】
第2実施形態は、準備ステップS1において撮像領域を分割することなく、印刷面Q1全体を撮像すること以外、第1実施形態と同様である。
【0074】
図11に示す印刷方法は、準備ステップS1と、印刷ステップS2と、を有する。以下、各ステップについて順に説明する。
【0075】
2.1.準備ステップ
図11に示す準備ステップS1は、ロボットアーム駆動ステップS112と、照合用画像抽出ステップS130と、を含む。
【0076】
準備ステップS1では、印刷の準備として、対象物Qの印刷面Q1に存在するテクスチャーを事前に撮像する。本実施形態では、印刷面Q1を分割することなく、一度に複数枚の表面画像を取得する。そして、得られた複数枚の表面画像から照合用画像を生成する。
【0077】
具体的には、まず、事前に入力された情報やカメラ800またはその他の撮像装置で撮像された画像等に基づいて、印刷面Q1の形状や大きさ等を取得する。また、ロボット200の作動条件を決定する。
【0078】
図11に示すロボットアーム駆動ステップS112では、ロボットアーム220を駆動して、印刷方向D1に沿ってインク吐出ヘッド400およびカメラ800を走査させる。このとき、移動ステージ300を駆動してもよいが、好ましくは停止させた状態で行う。また、インク吐出ヘッド400に近接して配置されているカメラ800も、ロボットアーム220によって印刷方向D1に沿って走査され、表面画像を事前に複数枚取得する。
【0079】
なお、本実施形態では、第1実施形態とは異なり、ロボットアーム220を駆動してインク吐出ヘッド400およびカメラ800を走査させる。このため、カメラ800の走査経路は、ロボットアーム220に発生する振動等の影響を受けて直交方向D2にぶれることになる。これにより、取得される表面画像Im1でカバーされる印刷面Q1の範囲も、
図12に示すように、直交方向D2においてぶれることになる。
【0080】
そこで、本実施形態では、カメラ800の画角を第1実施形態よりも広く設定するのが好ましい。これにより、取得される表面画像Im1でカバーされる印刷面Q1の範囲を第1実施形態よりも大きくすることができる。その結果、カメラ800の走査経路がぶれたとしても、ぶれの振幅の中央部付近を切り出すことにより、帯状に連続した接続画像を得ることができる。カメラ800の画角を広くする方法としては、例えば、カメラ800の拡大倍率を下げる方法、カメラ800を遠ざける方法等が挙げられる。
【0081】
図11に示す照合用画像抽出ステップS130では、
図12に示すように、直交方向D2における位置ずれを伴う複数枚の表面画像Im1から、帯状をなす1枚の照合用画像Im2を切り出す。このような方法で照合用画像Im2を生成することで、第1実施形態よりも少ない枚数の表面画像Im1から、照合用画像Im2を抽出、生成することができる。また、準備ステップS1ではカメラ800のぶれが許容されることになり、移動ステージ300を用いることなく表面画像Im1を取得することができるので、準備ステップS1に要する時間を短縮することができる。
【0082】
なお、
図12に示す表面画像Im1の位置ずれが意図せず大きくなった場合、照合用画像Im2の一部が欠落するおそれもある。このような場合は、移動ステージ300の動作を示す信号、例えば移動ステージ300の位置を検出するエンコーダーから出力される信号に基づいて、欠落部分を補完するようにしてもよい。
【0083】
2.2.印刷ステップ
図11に示す印刷ステップS2は、ロボット駆動ステップS230を有する。このロボット駆動ステップS230は、第1実施形態と同様である。つまり、ロボット駆動ステップS230では、ロボットアーム220を駆動して、印刷面Q1の全体にわたってインク吐出ヘッド400を印刷方向D1に走査させる。このとき、カメラ800で印刷面Q1の全体にわたって表面画像を改めて取得する。そして、取得した表面画像と、照合用画像Im2と、を照合し、移動ステージ300によるインク吐出ヘッド400の位置の補正量を算出する。この補正量に基づいて移動ステージ300の動作を制御し、直交方向D2におけるインク吐出ヘッド400のぶれをリアルタイムに補正しながら、インク吐出ヘッド400からインクを吐出する。これにより、印刷面Q1に印刷を行う。
【0084】
以上のような第2実施形態においても、第1実施形態と同様の効果が得られる。
なお、本実施形態に用いられるカメラ800は、移動ステージ300またはインク吐出ヘッド400に取り付けられていてもよいが、ロボットアーム220に取り付けられていてもよい。ロボットアーム220に取り付けることで、対象物Qとカメラ800との距離を確保することができるので、カメラ800の画角を広くしやすいこと、移動ステージ300にカメラ800の重量が追加されることに伴うロボットアーム220の振動の増大を抑制できること等の利点が得られる。
【0085】
また、本実施形態に用いられるカメラ800は、ロボットアーム220から離れた位置に設けられていてもよい。この場合、カメラ800の画角は、印刷面Q1全体を一度に撮像できるように設定される。これにより、複数枚の表面画像を取得する必要がない、つまり1枚の表面画像で済むため、照合用画像Im2の生成における演算処理の負荷を軽減できる。また、ロボットアーム220にカメラ800の重量が追加されることに伴う振動の増大を防止できるという利点が得られる。
【0086】
3.第3実施形態
次に、第3実施形態に係る印刷方法について説明する。
【0087】
図13は、第3実施形態に係る印刷方法を説明するためのフローチャートである。
図14は、
図13に示す印刷方法を説明するための図であって、ロボットアーム駆動ステップS112および移動ステージ駆動パターン生成ステップS140を説明する図である。
【0088】
以下、第3実施形態について説明するが、以下の説明では、第2実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項についてはその説明を省略する。なお、
図13および
図14において、前記第2実施形態と同様の構成については、同一の符号を付している。
【0089】
第3実施形態は、照合用画像を生成することなく、インク吐出ヘッド400のぶれを補正すること以外、第2実施形態と同様である。
【0090】
図13に示す印刷方法は、準備ステップS1と、印刷ステップS2と、を有する。以下、各ステップについて順に説明する。
【0091】
3.1.準備ステップ
図13に示す準備ステップS1は、ロボットアーム駆動ステップS112と、移動ステージ駆動パターン生成ステップS140と、を含む。
【0092】
図13に示すロボットアーム駆動ステップS112では、第2実施形態と同様にして、複数枚の表面画像Im1を取得する。つまり、本実施形態でも、ロボットアーム220を駆動してインク吐出ヘッド400およびカメラ800を走査させる。このため、カメラ800の走査経路は、ロボットアーム220に発生する振動等の影響を受けて直交方向D2にぶれることになる。これにより、取得される表面画像Im1でカバーされる印刷面Q1の範囲も、
図14に示すように、直交方向D2においてぶれることになる。なお、
図14に示す複数枚の表面画像Im1のうち、隣り合う表面画像Im1には、共通したテクスチャーの像が含まれている。
【0093】
図13に示す移動ステージ駆動パターン生成ステップS140では、隣り合う表面画像Im1に含まれる共通のテクスチャーの像に基づいて、
図14に示すように、隣り合う表面画像Im1の直交方向D2における位置ずれ量dを取得する。この位置ずれ量dを、印刷方向D1の各位置で記録することにより、対象物Qに対するカメラ800の変位パターンを生成することができる。この変位パターンは、インク吐出ヘッド400のぶれのパターンと同等であるとみなすことができる。そこで、この変位パターンから、インク吐出ヘッド400のぶれを相殺または減少させるための移動ステージ300の駆動パターンを生成する。例えば、表面画像Im1が直交方向D2の一方にずれている場合、印刷時には移動ステージ300を反対方向に移動させることで、インク吐出ヘッド400のぶれを相殺することができる。移動ステージ300の駆動量を、印刷方向D1の各位置で記録することにより、移動ステージ300の駆動パターンを生成することができる。
【0094】
3.2.印刷ステップ
図13に示す印刷ステップS2は、ロボット駆動ステップS230を有する。このロボット駆動ステップS230では、第2実施形態と同様、ロボットアーム220を駆動して、印刷面Q1の全体にわたってインク吐出ヘッド400を印刷方向D1に走査させる。このとき、第2実施形態とは異なり、表面画像を取得することなく、準備ステップS1で生成された駆動パターンに基づいて、移動ステージ300の動作を制御する。そして、直交方向D2におけるインク吐出ヘッド400のぶれをリアルタイムに補正しながら、インク吐出ヘッド400からインクを吐出する。これにより、印刷面Q1に印刷を行う。
【0095】
以上のような第3実施形態においても、第2実施形態と同様の効果が得られる。また、第3実施形態によれば、印刷ステップS2で表面画像を改めて取得することなく、インク吐出ヘッド400のぶれを補正することができる。これにより、印刷ステップS2における演算処理の負荷を軽減することができるので、印刷ステップS2の高速化が容易になる。
【0096】
なお、本実施形態では、テクスチャーの像の照合を行わないものの、ロボットアーム220に発生する振動に再現性があることを利用して、準備ステップS1で移動ステージ300の駆動パターンを生成し、これを用いてぶれを補正している。
【0097】
4.各実施形態が奏する効果
以上のように、前記実施形態に係る印刷方法は、インク吐出ヘッド400と、ロボット200と、カメラ800と、を用い、ロボット200が対象物Qに対してインク吐出ヘッド400を印刷方向D1(走査方向)に走査させながら、インク吐出ヘッド400がインクを吐出し、対象物Qに印刷を行う方法である。ロボット200は、ロボットアーム220および移動ステージ300を備える。移動ステージ300は、インク吐出ヘッド400を支持し、ピエゾ駆動によりロボットアーム220に対してインク吐出ヘッド400を移動させる。
【0098】
そして、前記実施形態に係る印刷方法は、準備ステップS1と、印刷ステップS2と、を含む。準備ステップS1では、カメラ800で対象物Qの表面画像を取得する。印刷ステップS2では、取得した表面画像に基づいて、印刷方向D1と直交する方向(直交方向D2)におけるインク吐出ヘッド400のぶれを、移動ステージ300を用いて補正しながら印刷を行う。
【0099】
このような構成によれば、対象物Qの印刷面Q1にもともと存在するテクスチャーを利用して、ロボットアーム220に発生する振動等に起因するインク吐出ヘッド400のぶれを補正しながら印刷を行うことができる。このため、事前に印刷動作をテストするといった手間をかけることなく、高精度の印刷を行うことができる。
【0100】
また、前記実施形態に係る印刷方法では、準備ステップS1は、照合用画像抽出ステップS130を含む。照合用画像抽出ステップS130では、事前に取得した複数枚の表面画像Im1に基づいて、照合用画像Im2を生成する。印刷ステップS2では、カメラ800で取得した対象物Qの表面画像と、照合用画像Im2と、を照合し、照合結果を移動ステージ300の動作に反映させながら対象物Qに印刷を行う動作を含む。
【0101】
印刷面Q1には、実質的に無限数のテクスチャーが存在しているので、着目するテクスチャーを順次切り替えながら移動ステージ300の動作を追従させることにより、印刷面Q1に設定した目的とする経路(照合用画像Im2に記録されている経路)に沿ってインク吐出ヘッド400を走査させることができる。これにより、ぶれの影響が抑えられた特に高精度の印刷を行うことができる。
【0102】
また、前記実施形態に係る印刷方法では、照合用画像抽出ステップS130は、事前に取得した複数枚の表面画像Im1から照合用画像Im2を抽出する処理を含む。
【0103】
このような構成によれば、重複する範囲のデータを減らすことができるので、照合用画像Im2のデータサイズを圧縮することができる。また、表面画像Im1がぶれを伴っている場合でも、そこから帯状をなす照合用画像Im2を切り出すことで、準備ステップS1ではカメラ800のぶれが許容されることになる。このため、準備ステップS1に要する時間を短縮することができる。
【0104】
また、準備ステップS1は、ロボットアーム220を第1姿勢POS1にする動作と、第1姿勢POS1を維持した状態で、移動ステージ300を用いてカメラ800を対象物Qに対して移させながら対象物Qの撮像領域F1(第1撮像領域)の表面画像Im1を取得する処理と、ロボットアーム220を第2姿勢POS2にする動作と、第2姿勢POS2を維持した状態で、移動ステージ300を用いてカメラ800を対象物Qに対して移動させながら対象物Qの撮像領域F2(第2撮像領域)の表面画像Im1を取得する処理と、を含んでいてもよい。
【0105】
このような構成によれば、例えば撮像領域F1、F2の各表面画像Im1を取得するとき、ロボットアーム220を駆動することなく、移動ステージ300を駆動してカメラ800を移動させる。このため、ロボットアーム220に発生する振動の影響を受けることなく表面画像Im1を取得することができる。これにより、特に精度の高い照合用画像Im2を生成することができる。その結果、印刷ステップS2では、インク吐出ヘッド400のぶれをより精度よく補正することができ、より高精度の印刷を行うことができる。
【0106】
また、ロボットアーム220を第1姿勢POS1から第2姿勢POS2に変化させるとき、対象物Qに対するカメラ800の位置が維持されるように移動ステージ300を駆動するようにしてもよい。
【0107】
このような構成によれば、撮像領域F1と撮像領域F2との間で表面画像Im1の連続性を確保することができ、照合用画像Im2の生成を確実に行うことができる。
【0108】
また、準備ステップS1は、移動ステージ300を停止させた状態で、ロボットアーム220を用いてカメラ800を対象物Qに対して移動させながら対象物Qの表面画像Im1を取得する処理を含んでいてもよい。
【0109】
このような構成によれば、準備ステップS1でカメラ800のぶれが許容されることになり、移動ステージ300を用いることなく表面画像Im1を取得することができるので、準備ステップS1に要する時間を短縮することができる。
【0110】
また、準備ステップS1は、事前に取得した表面画像Im1に基づいて、対象物Qに対するカメラ800の変位パターンを生成し、変位パターンに基づいて、移動ステージ300の駆動パターンを生成するステップを含んでいてもよい。さらに、印刷ステップS2は、駆動パターンを移動ステージ300の動作に反映させながら対象物Qに印刷を行う動作を含んでいてもよい。
【0111】
このような構成によれば、印刷ステップS2で表面画像を改めて取得することなく、インク吐出ヘッド400のぶれを補正することができる。これにより、印刷ステップS2における演算処理の負荷を軽減することができるので、印刷ステップS2の高速化が容易になる。
【0112】
また、カメラ800は、分光カメラであってもよい。
このような構成によれば、平面イメージに加え、画素毎の分光データ(スペクトル情報)を取得することができる。そのため、カメラ800が取得した対象物Qの表面画像Im1において、対象物Qの印刷面Q1に存在する様々な凹凸、模様等を判別するとき、より高い精度で判別することができる。
【0113】
また、前記実施形態に係るロボットシステム100は、対象物Qに対して印刷を行うロボットシステムであって、インク吐出ヘッド400と、ロボット200と、カメラ800と、印刷制御部910と、を備える。ロボット200は、ロボットアーム220および移動ステージ300を備え、対象物Qに対してインク吐出ヘッド400を印刷方向D1(走査方向)に走査させる。移動ステージ300は、インク吐出ヘッド400を支持し、ピエゾ駆動によりロボットアーム220に対してインク吐出ヘッド400を移動させる。印刷制御部910は、インク吐出ヘッド400およびロボット200の動作を制御することにより、対象物Qに印刷を行わせる。
【0114】
さらに、印刷制御部910は、表面画像取得部912と、補正量算出部916と、を有する。表面画像取得部912は、対象物Qの表面画像Im1をカメラ800に取得させる。補正量算出部916は、取得した表面画像Im1に基づいて、直交方向D2(印刷方向D1と直交する方向)におけるインク吐出ヘッド400のぶれを、移動ステージ300を用いて補正する補正量を算出する。
【0115】
このような構成によれば、対象物Qの印刷面Q1にもともと存在するテクスチャーを利用して、ロボットアーム220に発生する振動等に起因するインク吐出ヘッド400のぶれを補正しながら印刷を行うことができるロボットシステム100を実現できる。このため、事前に印刷動作をテストするといった手間をかけることなく、高精度の印刷を行うことができる。
【0116】
以上、本発明の印刷方法およびロボットシステムを図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明の印刷方法およびロボットシステムは、前記実施形態に限定されるものではない。例えば、本発明の印刷方法は、前記実施形態に任意の目的の工程や動作が付加されたものであってもよい。また、本発明のロボットシステムは、前記実施形態の各部が同様の機能を有する任意の構成のものに置換されたものであってもよく、前記実施形態に任意の構成物が付加されたものであってもよい。
【符号の説明】
【0117】
100…ロボットシステム、200…ロボット、210…基台、220…ロボットアーム、221…アーム、222…アーム、223…アーム、224…アーム、225…アーム、226…アーム、230…アーム駆動機構、300…移動ステージ、310…基部、320…ステージ、320X…Xステージ、320Y…Yステージ、330…移動機構、330X…X移動機構、330Y…Y移動機構、340…圧電アクチュエーター、400…インク吐出ヘッド、411…インク吐出孔、420…プリントコントローラー、600…ロボットコントローラー、610…アーム制御部、620…移動ステージコントローラー、630…記憶部、700…固定部材、800…カメラ、900…制御装置、910…印刷制御部、912…表面画像取得部、914…照合用画像生成部、916…補正量算出部、918…印刷データ生成部、930…記憶部、D1…印刷方向、D2…直交方向、E…エンコーダー、F1…撮像領域、F2…撮像領域、F3…撮像領域、F4…撮像領域、Im1…表面画像、Im2…照合用画像、J1…関節、J2…関節、J3…関節、J4…関節、J5…関節、J6…関節、M…モーター、N…矢印、P1…移動開始位置、P2…移動終了位置、P3…移動開始位置、P4…移動終了位置、Q…対象物、Q1…印刷面、R1…印刷領域、R2…印刷領域、R3…印刷領域、R4…印刷領域、S1…準備ステップ、S110…単位準備ステップ、S112…ロボットアーム駆動ステップ、S114…移動ステージ駆動ステップ、S120…判断ステップ、S130…照合用画像抽出ステップ、S140…移動ステージ駆動パターン生成ステップ、S2…印刷ステップ、S230…ロボット駆動ステップ、d…位置ずれ量