特開 2024-124727 エレベータシステム及びプログラム

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)

(12)【公報種別】公開特許公報(A)

(11)【公開番号】P2024124727

(43)【公開日】2024-09-13

(54)【発明の名称】エレベータシステム及びプログラム

(51)【国際特許分類】

   B66B 1/14 20060101AFI20240906BHJP

【ＦＩ】

B66B1/14 H

B66B1/14 B

【審査請求】有

【請求項の数】4

【出願形態】ＯＬ

(21)【出願番号】P 2023032606

(22)【出願日】2023-03-03

(11)【特許番号】

(45)【特許公報発行日】2024-04-02

(71)【出願人】

【識別番号】000112705

【氏名又は名称】フジテック株式会社

(74)【代理人】

【識別番号】110000970

【氏名又は名称】弁理士法人 楓国際特許事務所

(72)【発明者】

【氏名】須藤 豪

(72)【発明者】

【氏名】小村 章

【テーマコード（参考）】

3F502

【Ｆターム（参考）】

3F502HB02

3F502JA15

3F502JA51

3F502JA53

3F502JA57

3F502MA07

(57)【要約】

【課題】エレベータの制御設定の変更に関連した管理者及び利用者側の利便性を向上させることを可能にする技術を提供する。
【解決手段】エレベータシステムは、エレベータの制御処理部と、管理処理部と、コードと、を備える。管理処理部は、エレベータを制御するために制御処理部が使用する制御設定についての情報を設定情報として管理する部分であり、更新処理部と、通知処理部と、を含む。コードの公開部には、設定情報の通知を受けるための管理処理部へのアクセスを可能にするための情報が含まれ、コードの非公開部には、制御処理部に対して制御設定の変更を特定端末装置から指令することを可能にするための情報が含まれている。更新処理部は、非公開部を読み取った特定端末装置からの指令によって制御設定が変更された場合に、それに応じて設定情報を更新する。通知処理部は、公開部を読み取った端末装置からのアクセスがあった場合に設定情報を通知する。
【選択図】図１

【特許請求の範囲】

【請求項1】

エレベータを制御する制御処理部と、
前記エレベータを制御するために前記制御処理部が使用する制御設定についての情報を設定情報として管理する管理処理部と、
暗号キーが付与された管理者用の特定端末装置によって読み取られる非公開部と、暗号キーなしで読み取られる公開部と、を含むコードと、
を備え、
前記公開部には、前記設定情報の通知を受けるための前記管理処理部へのアクセスを可能にするための情報が含まれ、前記非公開部には、前記制御処理部に対して前記制御設定の変更を前記特定端末装置から指令することを可能にするための情報が含まれており、
前記管理処理部は、
前記非公開部を読み取った前記特定端末装置からの指令によって前記制御設定が変更された場合に、その制御設定の変更に応じて前記設定情報を更新する更新処理部と、
前記公開部を読み取った端末装置からのアクセスがあった場合に、当該端末装置に前記設定情報を通知する通知処理部と、
を含む、エレベータシステム。

【請求項2】

前記制御設定は、前記エレベータが備える乗りかごの不停止階又は停止階の設定、及び前記乗りかごに設置される空調装置の設定、の少なくとも何れか１つである、請求項１に記載のエレベータシステム。

【請求項3】

前記コードは、前記非公開部と前記公開部とが１つに纏めてコード化されたものである、請求項１又は２に記載のエレベータシステム。

【請求項4】

請求項１に記載のエレベータシステムとの通信が可能な、暗号キーが付与された管理者用の特定端末装置、に実行させるプログラムであり、
前記特定端末装置による前記コードの読取りを管理者が行った場合に、そのコード内の前記非公開部を、前記暗号キーを用いて読み取る読取処理ステップと、
前記読取処理ステップにて前記非公開部が読み取られた場合に、その非公開部に含まれている情報を用いて、前記制御処理部に対して前記制御設定の変更を前記特定端末装置から指令することを可能にするための設定を行う設定処理ステップと、
を前記特定端末装置に実行させる、プログラム。

【発明の詳細な説明】

【技術分野】

【0001】

本発明は、エレベータの制御設定の変更を可能にする技術に関する。

【背景技術】

【0002】

従来、エレベータの制御設定を変更する場合、当該エレベータの制御装置が設置されている機械室へ入り、その制御装置に端末装置を接続した上で、当該端末装置から制御設定を変更する必要があった（例えば、特許文献１参照）。また、多くのエレベータでは、エレベータのメンテナンスを行うことができる作業員にしか、機械室への入室及び制御装置への端末装置の接続が許可されておらず、当該作業員でなければ、そのエレベータの制御設定を変更することができなかった。このため、制御設定の１つとして、エレベータが備える乗りかごの不停止階又は停止階の設定を変更し、それによって停止階を特定階に制限したい場合には、建物の管理者が、不停止階又は停止階の設定を作業員に依頼する必要があった。

【先行技術文献】

【特許文献】

【0003】

【特許文献1】特開２０１０－２０８７７５号公報

【発明の概要】

【発明が解決しようとする課題】

【0004】

一方、引越作業や改修作業のためにエレベータが利用される場合、業者と一般の利用者とが混在することになり、どちらにとっても乗場呼びを行ってからの待ち時間が長くなるといった問題が生じやすくなる。そこで、例えばエレベータが複数ある場合には、何れか１つのエレベータについて停止階を特定階（作業が行われる階）に制限することができれば、そのエレベータを作業専用にすることができ、その結果として、上記のような問題を解消することができる。

【0005】

しかし、そのための不停止階又は停止階の設定には、エレベータの作業員への建物の管理者からの依頼が必要になってしまう。また仮に、機械室への入室及び制御装置への端末装置の接続を建物の管理者に許可することにより、その管理者が不停止階又は停止階の設定を変更できるようになったとしても、当該管理者には、そのような設定の変更のためにわざわざ機械室まで行って作業しなければならないといった煩わしさが強いられることになる。

【0006】

そこで本発明の目的は、エレベータの制御設定の変更に関連した管理者及び利用者側の利便性を向上させることを可能にする技術を提供することである。

【課題を解決するための手段】

【0007】

本発明に係るエレベータシステムは、エレベータを制御する制御処理部と、管理処理部と、コードと、を備える。管理処理部は、エレベータを制御するために制御処理部が使用する制御設定についての情報を設定情報として管理する部分であり、更新処理部と、通知処理部と、を含む。コードは、暗号キーが付与された管理者用の特定端末装置によって読み取られる非公開部と、暗号キーなしで読み取られる公開部と、を含む。公開部には、設定情報の通知を受けるための管理処理部へのアクセスを可能にするための情報が含まれ、非公開部には、制御処理部に対して制御設定の変更を特定端末装置から指令することを可能にするための情報が含まれている。そして、更新処理部は、非公開部を読み取った特定端末装置からの指令によって制御設定が変更された場合に、その制御設定の変更に応じて設定情報を更新する。また、通知処理部は、公開部を読み取った端末装置からのアクセスがあった場合に、当該端末装置に設定情報を通知する。

【0008】

上記エレベータシステムによれば、管理者（マンションやビルなどの建物の管理者）は、エレベータの制御設定を変更したい場合に、自身の特定端末装置を用いて上記コードの非公開部の読取りを行うことにより、その特定端末装置において、当該エレベータの制御処理部に対して制御設定の変更を指令するための設定が自動的に行われることになる。その結果として、管理者は、自身の特定端末装置を用いて、制御処理部に対して制御設定の変更を指令することが可能になる。

【0009】

そして、制御処理部への特定端末装置からの指令によって制御設定が変更された場合に、その制御設定の変更に応じて設定情報が更新され、その結果として、エレベータの設定情報が常に最新の情報に更新されることになる。従って、利用者は、自身の端末装置を用いて上記コードの公開部の読取りを行うことにより、管理処理部から現在の設定情報の通知を受けることができる。これにより、利用者は、エレベータがどのような状態（設定）で運行されているのかを知ることができる。

【0010】

また、上記エレベータシステムによれば、管理者の特定端末装置だけに暗号キーを付与することにより、利用者の端末装置による非公開部の読取りを制限することができ、その結果として、非公開部に含まれている情報に対するセキュリティを向上させることが可能になっている。

【0011】

上記エレベータシステムにおいて、制御設定は、エレベータが備える乗りかごの不停止階又は停止階の設定、及び乗りかごに設置される空調装置の設定、の少なくとも何れか１つであってもよい。これらの制御設定は、建物の状況（環境や利用状況など）に応じてタイムリーに変更することが要求される設定であり、このような制御設定に対して管理者による変更が可能になることにより、高い利便性を実現することができる。

【0012】

上記エレベータシステムにおいて、コードは、非公開部と公開部とが１つに纏めてコード化されたものであってもよい。この構成によれば、１つのコードを用意するだけで、その１つのコードに対する利用者の端末装置による読取り（暗号キーなしでの読取り）が行われた場合には公開部の情報を当該端末装置に提供し、その１つのコードに対する管理者の特定端末装置による読取り（暗号キーを用いた読取り）が行われた場合には非公開部の情報を当該特定端末装置に提供することが可能になる。よって、公開部と非公開部とを別々にコード化した場合に比べて、エレベータシステムを簡略化することができる。

【0013】

本発明に係るプログラムは、上記エレベータシステムとの通信が可能な管理者用の特定端末装置に、読取処理ステップと、設定処理ステップと、を実行させる。読取処理ステップでは、特定端末装置によるコードの読取りを管理者が行った場合に、当該特定端末装置が、そのコード内の非公開部を、暗号キーを用いて読み取る。読取処理ステップにて非公開部が読み取られた場合、上記特定端末装置は、設定処理ステップにおいて、その非公開部に含まれている情報を用いて、制御処理部に対して制御設定の変更を特定端末装置から指令することを可能にするための設定を行う。

【0014】

上記プログラムによれば、エレベータにおいて管理者が自身の特定端末装置を用い上記コードの非公開部の読取りを行うことにより、その特定端末装置において、当該エレベータの制御処理部に対して制御設定の変更を指令するための設定が自動的に行われることになる。

【発明の効果】

【0015】

本発明によれば、エレベータの制御設定の変更に関連した管理者及び利用者側の利便性を向上させることが可能になる。

【図面の簡単な説明】

【0016】

【図1】（Ａ）実施形態に係るエレベータシステムの全体構成を例示した概念図、及び（Ｂ）そのエレベータシステムとの通信が可能な管理者用の特定端末装置の構成を示した概念図である。

【図2】（Ａ）実施形態で用いられる対応管理データの一例を示した概念図、及び（Ｂ）図２（Ａ）の状態からの更新後の対応管理データの一例を示した概念図である。

【図3】実施形態において管理者が行う操作、特定端末装置が実行する制御処理、制御装置が実行する制御処理、管理サーバが実行する制御処理、をそれぞれ示したフローチャートである。

【図4】第１変形例に係るエレベータシステムの全体構成を例示した概念図である。

【図5】（Ａ）第１変形例で用いられる対応管理データの一例を示した概念図、及び（Ｂ）図５（Ａ）の状態からの更新後の対応管理データの一例を示した概念図である。

【図6】第１変形例において管理者が行う操作、特定端末装置が実行する制御処理、制御装置が実行する制御処理、管理サーバが実行する制御処理、をそれぞれ示したフローチャートである。

【発明を実施するための形態】

【0017】

［１］実施形態
［１－１］エレベータシステムの全体構成
図１（Ａ）は、実施形態に係るエレベータシステムの全体構成を例示した概念図である。図１（Ａ）の例では、エレベータシステムは、エレベータ１と、管理サーバ２と、コードＳと、を備える。このエレベータシステムでは、管理者（マンションやビルなどの建物の管理者）用の特定端末装置４（スマートフォン、タブレット、専用端末機など）から、エレベータ１の制御設定の１つである乗りかごの不停止階又は停止階の設定を変更することができ、更に、利用者が携帯する端末装置３（スマートフォン、タブレットなど）では、当該エレベータ１がどのような状態（設定）で運行されているのかについての情報の通知を受けることができる。ここで、不停止階又は停止階の設定は、建物の状況（引越作業や改修作業で業者によってエレベータ１が頻繁に利用されるといった状況など）に応じてタイムリーに変更することが要求される設定である。

【0018】

以下、各部について具体的に説明する。尚、以下では、不停止階の設定を特定端末装置４から変更できるようにした構成について説明する。停止階の設定を特定端末装置４から変更できるようにした構成については、以下の内容において「不停止階」を「停止階」に読み替えることで説明できる。

【0019】

＜エレベータ＞
エレベータ１は、制御装置１０Ａを備える。制御装置１０Ａは、エレベータ１を制御するための制御設定を使用して、当該エレベータ１に対する制御処理（乗りかごの昇降やドアの開閉などの各部の動作を制御する処理）を実行する。そして本実施形態では、制御設定の１つとして、エレベータ１が備える乗りかごの不停止階を設定することができる。

【0020】

本実施形態では、制御装置１０Ａは、管理者用の特定端末装置４とのネットワーク通信が可能となるように構成されている。尚、制御装置１０Ａと特定端末装置４との間のネットワーク通信は、ＷＡＮで実現されてもよいし、ＬＡＮで実現されてもよい。尚、上記エレベータシステムがエレベータ１を複数備えている場合であって、それらのエレベータ１が群管理制御装置によって一元的に管理されている場合には、各エレベータ１の制御装置１０Ａと特定端末装置４とは、群管理制御装置を介してネットワーク通信を行うことになる。

【0021】

より具体的な構成として、制御装置１０Ａは、記憶部１１と制御部１２とを備える。記憶部１１は、エレベータ１を制御するために必要な制御設定などの情報が保存される部分であり、ＲＯＭやＲＡＭなどの記憶デバイスで構成されている。制御部１２は、エレベータ１に対する制御処理を実行する部分であり、ＣＰＵなどの処理デバイスで構成されている。

【0022】

エレベータ１に対する制御処理は、制御装置１０Ａの制御部１２内に構築される制御処理部１２０によって実行される（図１（Ａ）参照）。本実施形態では、当該処理部は、制御部１２にプログラムを実行させることによってソフトウェアで構成される。そして、そのようなプログラムは、携帯可能な記憶媒体（例えば、フラッシュメモリ等）に読取可能な状態で保存され、当該記憶媒体から読み出されてインストールされたものが制御装置１０Ａの記憶部１１に保存されてもよいし、他のサーバなどにダウンロード可能に保存され、当該サーバからダウンロードされてインストールされたものが記憶部１１に保存されてもよい。尚、上記の処理部は、制御装置１０Ａ内に回路を構築することによってハードウェアで構成されてもよい。

【0023】

＜管理サーバ＞
管理サーバ２は、上記エレベータ１を制御するために制御装置１０Ａが使用する制御設定についての情報を設定情報Ｐｓとして管理する。本実施形態では、管理サーバ２は、制御設定の１つである乗りかごの不停止階の設定についての情報（以下では「不停止階の情報」と称す場合がある）を設定情報Ｐｓとして管理する（管理処理）。そして、このような管理処理を可能にするべく、管理サーバ２は、端末装置３及び特定端末装置４とのネットワーク通信が可能となるように構成されている。尚、管理サーバ２と端末装置３及び特定端末装置４との間のネットワーク通信は、ＷＡＮで実現されてもよいし、ＬＡＮで実現されてもよい。

【0024】

具体的には、管理サーバ２は、エレベータ１の制御装置１０Ａへの管理者用の特定端末装置４からの指令によって当該エレベータ１の制御設定（ここでは、乗りかごの不停止階の設定）が変更された場合に、その制御設定の変更に応じて設定情報Ｐｓ（ここでは、不停止階の情報）を更新する（更新処理）。また、管理サーバ２は、設定情報Ｐｓの通知を受けるための端末装置３からのアクセスがあった場合に、当該端末装置３に設定情報Ｐｓを通知する（通知処理）。尚、これらの処理の詳細については後述する。

【0025】

より具体的な構成として、管理サーバ２は、記憶部２１と制御部２２とを備える。

【0026】

記憶部２１は、管理処理（更新処理、通知処理など）に必要な情報が保存される部分であり、ＲＯＭやＲＡＭなどの記憶デバイスで構成されている。本実施形態では、そのような情報の１つとして、対応管理データＤｒが記憶部２１に保存される。図２（Ａ）は、対応管理データＤｒの一例を示した概念図であり、図２（Ｂ）は、図２（Ａ）の状態からの更新後の対応管理データＤｒの一例を示した概念図である。これらの図に示されるように、対応管理データＤｒには、エレベータ１ごとに、そのエレベータ１の識別情報Ｐｅと、当該識別情報Ｐｅで特定されるエレベータ１についての設定情報Ｐｓと、が互いに対応付けて記録される。そして、図２（Ｂ）に示されるように、対応管理データＤｒでは、
管理サーバ２が設定情報Ｐｓを書き換えることにより、当該設定情報Ｐｓが更新される。尚、図２（Ａ）及び図２（Ｂ）の例では、「Ｅ００００１」の識別情報Ｐｅに対応する設定情報Ｐｓ（不停止階の情報）が、不停止階が設定されていないことを示す「なし」（Ｐｓ＝「なし」）の状態から、１０階が不停止階に設定されていることを示す「１０階」（Ｐｓ＝「１０階」）の状態へ更新された場合が示されている。

【0027】

制御部２２は、管理処理（更新処理、通知処理など）を実行する部分であり、ＣＰＵなどの処理デバイスで構成されている。具体的には、制御部２２は、エレベータ１の制御設定（ここでは、乗りかごの不停止階の設定）が変更された場合に、その制御設定の変更に応じて対応管理データＤｒ内の設定情報Ｐｓを更新する（更新処理）。また、制御部２２は、エレベータ１についての設定情報Ｐｓの通知を受けるための端末装置３からのアクセスがあった場合に、当該エレベータ１の識別情報Ｐｅに対応付けられている設定情報Ｐｓを対応管理データＤｒから抽出し、その設定情報Ｐｓを、アクセスしてきた端末装置３に通知する（通知処理）。

【0028】

このような管理処理は、管理サーバ２の制御部２２内に構築される管理処理部２２０によって実行される（図１（Ａ）参照）。より具体的には、更新処理及び通知処理が、管理サーバ２の制御部２２内に構築される更新処理部２２１及び通知処理部２２２によって実行される。本実施形態では、これらの処理部は、制御部２２にプログラムを実行させることによってソフトウェアで構成される。そして、そのようなプログラムは、携帯可能な記憶媒体（例えば、フラッシュメモリ等）に読取可能な状態で保存され、当該記憶媒体から読み出されてインストールされたものが管理サーバ２の記憶部２１に保存されてもよいし、他のサーバなどにダウンロード可能に保存され、当該サーバからダウンロードされてインストールされたものが記憶部２１に保存されてもよい。尚、上記の処理部は、管理サーバ２内に回路を構築することによってハードウェアで構成されてもよい。

【0029】

＜コード＞
コードＳは、読取りに暗号キーＷｃが必要とされる非公開部Ｓｐと、暗号キーＷｃなしでの読取りが可能な公開部Ｓｑと、を含む。そして本実施形態では、利用者が携帯する端末装置３には暗号キーＷｃが付与されておらず、管理者用の特定端末装置４だけに暗号キーＷｃが付与されている。従って、端末装置３は、コードＳ内の非公開部Ｓｐの読取りが制限されており、コードＳ内の公開部Ｓｑだけを、暗号キーＷｃなしでカメラ機能を用いて読み取ることができる。一方、特定端末装置４は、そのカメラ機能（後述する読取部４４（図１（Ｂ）参照））を用いてコードＳ内の非公開部Ｓｐを読み取ることができる。

【0030】

更に本実施形態では、コードＳは、非公開部Ｓｐと公開部Ｓｑとが１つに纏めてコード化されたものである。具体的には、コードＳは、ＳＱＲＣ（登録商標）など、非公開部Ｓｐと公開部Ｓｑとを持ったＱＲコード（登録商標）である。そして、このコードＳは、利用者が自身の端末装置３を用いて読み取ることができる場所において、壁面への貼付や画面への表示などの手段によって利用者に提供される。具体例として、コードＳは、エレベータ１の乗りかごが停止する各階の乗場（例えば、エレベータ１の乗降口）に設けられる。尚、コードＳには、上記ＱＲコード（登録商標）に代えて、非公開部Ｓｐと公開部Ｓｑとを持った２次元バーコードが用いられてもよい。

【0031】

具体的な構成として、コードＳの公開部Ｓｑには、当該コードＳに対応するエレベータ１（即ち、そのコードＳが設けられているエレベータ１）についての設定情報Ｐｓの通知を受けるために必要となる管理サーバ２へのアクセスを可能にするための情報が含まれている。具体例として、コードＳの公開部Ｓｑには、管理サーバ２にアクセスするために用意されたＵＲＬなどの情報と、当該コードＳに対応するエレベータ１の識別情報Ｐｅと、が含まれる。

【0032】

また、コードＳの非公開部Ｓｐには、当該コードＳに対応するエレベータ１の制御装置１０Ａに対して制御設定（ここでは、乗りかごの不停止階の設定）の変更を特定端末装置４から指令することを可能にするための情報が含まれている。具体例として、コードＳの非公開部Ｓｐには、当該コードＳに対応するエレベータ１の制御装置１０ＡのＩＰアドレスが含まれる。

【0033】

このような制御装置１０ＡのＩＰアドレスは、セキュリティの観点から、利用者には非公開にされるべき情報である。そこで本実施形態では、上述したように管理者の特定端末装置４だけに暗号キーＷｃを付与することにより、利用者の端末装置３による非公開部Ｓｐの読取りを制限することができ、その結果として、非公開部Ｓｐに含まれている情報に対するセキュリティを向上させることが可能になっている。

【0034】

＜特定端末装置＞
図１（Ｂ）は、特定端末装置４の構成を示した概念図である。特定端末装置４は、通信部４１と、入力部４２と、表示部４３と、読取部４４と、記憶部４５と、制御部４６と、を備える。

【0035】

通信部４１は、ネットワーク通信用のデバイスで構成される部分であり、外部とのネットワーク通信を担う。入力部４２は、タッチパネルやボタンなどの入力デバイスで構成される部分であり、管理者による各種情報の入力（後述する制御装置１０Ａへの指令のための操作を含む）に用いられる。表示部４３は、タッチパネルなどの表示デバイスで構成される部分であり、各種情報の表示を担う。読取部４４は、カメラなどの撮像デバイスで構成される部分であり、コードＳの読取りを担う。

【0036】

記憶部４５は、ＲＯＭやＲＡＭなどの記憶デバイスで構成された部分である。記憶部４５には、特定端末装置４に付与された暗号キーＷｃ、当該特定端末装置４にインストールされた管理用アプリ、当該管理用アプリの設定に用いられた情報（制御装置１０ＡのＩＰアドレスを含む）などが保存される。ここで、管理用アプリは、当該アプリにて必要な設定を行うことで、その設定で指定された制御装置１０Ａに対して制御設定（ここでは、乗りかごの不停止階の設定）の変更を指令することが可能になるアプリケーションプログラムである。

【0037】

制御部４６は、ＣＰＵなどの処理デバイスで構成された部分であり、特定端末装置４の各部の動作を制御する。そして、管理者が自身の特定端末装置４にて管理用アプリを起動した場合には、制御部４６は、管理用アプリに基づいた制御処理を実行することにより、その特定端末装置４からの制御装置１０Ａへの指令（ここでは、乗りかごの不停止階の設定を変更するための指令）を可能にする。換言すれば、制御装置１０Ａへの指令を特定端末装置４から行うために必要な処理が、管理用アプリの実行によって遂行される。また、そのような処理は、管理用アプリの実行によって特定端末装置４の制御部４６内にソフトウェアで構築される処理部（読取処理部４６１など）によって遂行される。尚、管理用アプリに基づいて制御部４６が実行する制御処理の詳細については以下で説明する。

【0038】

［１－２］操作及び制御処理
図３は、本実施形態において管理者が行う操作、特定端末装置４が実行する制御処理、制御装置１０Ａが実行する制御処理、管理サーバ２が実行する制御処理、をそれぞれ示したフローチャートである。

【0039】

管理者は、自身が管理する建物のエレベータ１において乗りかごの不停止階の設定を変更したい場合、自身の特定端末装置４のカメラ機能（読取部４４（図１（Ｂ）参照））を用いて、そのエレベータ１（例えば、当該エレベータ１の各階の乗場）に設けられているコードＳの読取りを行う（ステップＳ１０１）。

【0040】

特定端末装置４には暗号キーＷｃが付与されているため、ステップＳ１０１でのコードＳの読取りが行われた場合、当該コードＳ内の非公開部Ｓｐに含まれている情報が、特定端末装置４によって暗号キーＷｃを用いて読み取られる（読取処理。ステップＳ２０１）。これにより、管理用アプリの設定（ここでは、その管理用アプリからエレベータ１の制御装置１０Ａに対して制御設定（ここでは、不停止階の設定）の変更を指令できるようにするための設定）に必要となる情報が特定端末装置４に取り込まれる。このような読取処理は、特定端末装置４内にソフトウェアで構築される読取処理部４６１（図１（Ｂ）参照）によって実行される。

【0041】

その後、特定端末装置４は、ステップＳ２０１で読み取った情報を用いて管理用アプリの設定を行う（設定処理。ステップＳ２０２）。このとき、特定端末装置４は、設定のための操作（入力や選択など）を管理者に要求することなく、ステップＳ２０１で読み取った情報を用いて自動で設定を行う。従って、この管理用アプリによれば、建物の管理者は、自身が管理するエレベータ１の制御設定（ここでは、不停止階の設定）を変更したい場合に、自身の特定端末装置４を用いて非公開部Ｓｐの読取りを行うことにより、その特定端末装置４において、当該建物に設置されているエレベータ１の制御装置１０Ａに対して制御設定（ここでは、不停止階の設定）の変更を指令するための設定が自動的に行われることになる。このような設定処理は、特定端末装置４内にソフトウェアで構築される設定処理部４６２（図１（Ｂ）参照）によって実行される。

【0042】

これにより、管理者は、自身の特定端末装置４を用いて、自身が管理する建物に設置されているエレベータ１の制御装置１０Ａに対して制御設定（ここでは、不停止階の設定）の変更を指令することが可能になる。しかも、そのときに必要な管理用アプリの設定が上述したように自動的に行われるため、管理者は、自身の特定端末装置４を用いてコードＳの非公開部Ｓｐの読取りを行うといった簡単な操作（ステップＳ１０１）を行うだけでよい。

【0043】

ステップＳ２０２の後、管理者は、自動で設定された管理用アプリを用いて、自身が管理する建物に設置されているエレベータ１での不停止階の設定を変更するための操作を行う（ステップＳ１０２）。一例として、管理用アプリの画面には、そのエレベータ１において停止階になり得る全ての階が選択可能に表示されており、管理者は、その画面において、不停止階にしたい階を選択して確定させる。

【0044】

ステップＳ１０２での操作を管理者が行った場合、特定端末装置４は、管理用アプリに設定されている制御装置１０Ａへ、当該ステップＳ１０２で行われた不停止階の設定の変更を指令するための第１指令信号Ｖ１を送信する（指令処理。ステップＳ２０３）。このような指令処理は、特定端末装置４内にソフトウェアで構築される指令処理部４６３（図１（Ｂ）参照）によって実行される。

【0045】

エレベータ１の制御装置１０Ａは、特定端末装置４から第１指令信号Ｖ１を受信した場合（ステップＳ３０１）、その第１指令信号Ｖ１に従って不停止階の設定を変更する（ステップＳ３０２）。具体的には、制御装置１０Ａは、記憶部１１に保存している不停止階の設定を第１指令信号Ｖ１に従って書き換える。これにより、エレベータ１において不停止階の設定の変更が完了することになる。そこで、制御装置１０Ａは、第１指令信号Ｖ１を送信してきた特定端末装置４に不停止階の設定の変更が完了したことを認識させるべく、当該特定端末装置４へ設定完了信号Ｓｅを送信する（ステップＳ３０３）。

【0046】

特定端末装置４は、制御装置１０Ａから設定完了信号Ｓｅを受信した場合（ステップＳ２０４）、管理サーバ２に対して対応管理データＤｒ内の設定情報Ｐｓの更新を指令するための第２指令信号Ｖ２を送信する（指令処理。ステップＳ２０５）。具体的には、特定端末装置４は、対応管理データＤｒ内の設定情報Ｐｓが制御装置１０Ａでの変更後の不停止階の設定に対応したものとなるように、管理サーバ２に対して設定情報Ｐｓの更新を指令する。このとき、管理サーバ２が、どのエレベータ１についての設定情報Ｐｓを、どのような内容に更新すべきかを認識できるように、特定端末装置４は、管理サーバ２へ第２指令信号Ｖ２を送信する際、その第２指令信号Ｖ２に、変更後の不停止階の設定に関する情報と、その設定の変更が行われたエレベータ１の識別情報Ｐｅと、を含める。このような指令処理は、特定端末装置４内の指令処理部４６３（図１（Ｂ）参照）で実行することができる。

【0047】

尚、第２指令信号Ｖ２は、特定端末装置４を介さずに制御装置１０Ａから管理サーバ２に直接送信されてもよい。この場合、制御装置１０Ａは、ステップＳ３０３において、特定端末装置４へ設定完了信号Ｓｅを送信することに代えて、管理サーバ２へ第２指令信号Ｖ２を送信することになる。

【0048】

管理サーバ２は、第２指令信号Ｖ２を受信した場合（ステップＳ４０１）、その第２指令信号Ｖ２に従って対応管理データＤｒ内の設定情報Ｐｓを更新する（更新処理。ステップＳ４０２）。具体的には、管理サーバ２は、対応管理データＤｒにおいて、第２指令信号Ｖ２内の識別情報Ｐｅに対応する設定情報Ｐｓを、第２指令信号Ｖ２内の不停止階の情報（変更後の不停止階の設定に関する情報）へ更新する。このような更新処理は、管理サーバ２内の更新処理部２２１（図１（Ａ）参照）で実行される。

【0049】

このような制御処理によれば、エレベータ１の制御装置１０Ａへの特定端末装置４からの指令によって制御設定（ここでは、不停止階の設定）が変更された場合に、その制御設定の変更に応じて対応管理データＤｒ内の設定情報Ｐｓが更新されることになる。その結果として、対応管理データＤｒにおいて、各エレベータ１の設定情報Ｐｓが常に最新の情報に更新されることになる。

【0050】

そして、利用者は、エレベータ１がどのような状態（設定）で運行されているのかを知りたい場合、自身の端末装置３のカメラ機能を用いて、そのエレベータ１（例えば、当該エレベータ１の各階の乗場）に設けられているコードＳの読取りを行う。

【0051】

端末装置３には暗号キーＷｃが付与されていないため、当該端末装置３でのコードＳの読取りが行われた場合、当該コードＳ内の公開部Ｓｑに含まれている情報だけが、端末装置３によって暗号キーＷｃなしで読み取られる。これにより、利用者は、エレベータ１についての設定情報Ｐｓの通知を受けるために行う管理サーバ２へのアクセスに必要な情報（管理サーバ２にアクセスするために用意されたＵＲＬなど）を得ることができる。また、コードＳの公開部Ｓｑからは、当該コードＳに対応するエレベータ１の識別情報Ｐｅが得られる。

【0052】

その後、利用者が、コードＳの読取りによって得た情報に基づいて管理サーバ２にアクセスした場合、当該コードＳの読取りで得られたエレベータ１の識別情報Ｐｅが管理サーバ２に送信される。そして、管理サーバ２は、端末装置３からのアクセス時に送信されてきた識別情報Ｐｅを用いて、当該識別情報Ｐｅに対応付けられている設定情報Ｐｓを対応管理データＤｒから抽出し、その設定情報Ｐｓ（ここでは、不停止階の情報）を、アクセスしてきた端末装置３に通知する（通知処理）。

【0053】

このように、利用者は、自身の端末装置３を用いてコードＳの公開部Ｓｑの読取りを行うことにより、当該コードＳに対応するエレベータ１について、管理サーバ２から現在の設定情報Ｐｓの通知を受けることができる。これにより、利用者は、エレベータ１がどのような状態（設定）で運行されているのかを知ることができる。

【0054】

このような制御処理によれば、建物の管理者、及び当該建物に設置されているエレベータ１の利用者、の双方にとって、エレベータ１の制御設定の変更に関連した管理者及び利用者側の利便性（管理者にとっては設定変更、利用者にとっては情報取得）を向上させることができる。

【0055】

また本実施形態では、コードＳは、非公開部Ｓｐと公開部Ｓｑとが１つに纏めてコード化されたものである。このような構成によれば、１つのコードＳを用意するだけで、その１つのコードＳに対する利用者の端末装置３による読取り（暗号キーＷｃなしでの読取り）が行われた場合には公開部Ｓｑの情報を当該端末装置３に提供し、その１つのコードＳに対する管理者の特定端末装置４による読取り（暗号キーＷｃを用いた読取り）が行われた場合には非公開部Ｓｐの情報を当該特定端末装置４に提供することが可能になる。よって、公開部Ｓｑと非公開部Ｓｐとを別々にコード化した場合に比べて、エレベータシステムを簡略化することができる。

【0056】

［２］変形例
上述したエレベータシステムは、以下のような構成を備えたものに適宜変更されてもよい。

【0057】

［２－１］第１変形例
図４は、第１変形例に係るエレベータシステムの全体構成を例示した概念図である。図５（Ａ）は、第１変形例で用いられる対応管理データＤｒの一例を示した概念図であり、図５（Ｂ）は、図５（Ａ）の状態からの更新後の対応管理データＤｒの一例を示した概念図である。図６は、第１変形例において管理者が行う操作、特定端末装置４が実行する制御処理、制御装置１０Ａが実行する制御処理、管理サーバ２が実行する制御処理、をそれぞれ示したフローチャートである。

【0058】

上記実施形態のエレベータシステムでは、エレベータ１の制御設定のうちの特定端末装置４から変更できるものが不停止階（又は停止階）の設定であり、その設定は、建物の状況（引越作業や改修作業で業者によってエレベータ１が頻繁に利用されるといった状況など）に応じてタイムリーに変更することが要求される設定であった。そのように建物の状況に応じてタイムリーに変更することが要求される制御設定として、不停止階（又は停止階）の設定の他に、エレベータ１が備える乗りかごに空調装置１０Ｂが設置されている場合（図４参照）には、当該空調装置１０Ｂの設定（冷暖房や温度などの設定）が考えられる。空調装置１０Ｂの設定は、気温などの環境に応じてタイムリーに変更することが要求される。

【0059】

そこで、上記実施形態のエレベータシステムは、不停止階（又は停止階）の設定に代えて、空調装置１０Ｂの設定を特定端末装置４から変更できるものに適宜変更されてもよい。一例として、空調装置１０Ｂの設定として、運転モード（冷暖房など）の設定と目標温度の設定とを特定端末装置４から変更できるように、エレベータシステムの構成を適宜変更することができる。この場合、図５（Ａ）及び図５（Ｂ）に示されるように、対応管理データＤｒでは、エレベータ１ごとに、当該エレベータ１の識別情報Ｐｅに対応付けて、運転モードの情報と目標温度の情報とを設定情報Ｐｓとして記録することができる。尚、図５（Ａ）及び図５（Ｂ）の例では、「Ｅ００００１」の識別情報Ｐｅに対応する設定情報Ｐｓ（運転モードの情報と目標温度の情報）が、運転モードが冷房モードであることを示す「冷房」且つ目標温度が２５．０℃であることを示す「２５．０℃」（Ｐｓ＝「冷房」、「２５．０℃」）の状態から、運転モードが暖房モードであることを示す「暖房」且つ目標温度が２３．０℃であることを示す「２３．０℃」（Ｐｓ＝「暖房」、「２３．０℃」）の状態へ更新された場合が示されている。

【0060】

そして、本変形例のエレベータシステムでは、図６のフローチャートに沿って操作及び制御処理が実行される。尚、図６に示された操作及び制御処理は、上記実施形態（図３）で説明した制御処理の内容において「不停止階」を「空調装置１０Ｂ」や「運転モード及び目標温度」などに読み替えることで説明できる。

【0061】

このように、空調装置１０Ｂの設定に対して管理者による変更が可能になることにより、高い利便性を実現することができる。

【0062】

［２－２］他の変形例
上述したエレベータシステムは、不停止階や空調装置１０Ｂの設定に代えて、建物の状況（環境や利用状況など）に応じてタイムリーに変更することが要求される他の制御設定を特定端末装置４から変更できるものに適宜変更されてもよい。

【0063】

上述の実施形態及び変形例の説明は、すべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上述の実施形態や変形例ではなく、特許請求の範囲によって示される。更に、本発明の範囲には、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。

【0064】

また、上述の実施形態や変形例からは、発明の対象として、エレベータシステムに限らず、そのエレベータシステムに含まれるエレベータ１、管理サーバ２、及びコードＳ、並びにそれらの一部（制御装置１０Ａや空調装置１０Ｂなど）が個々に抽出されてもよいし、それらの幾つかを組み合わせたものが抽出されてもよい。また、発明の対象として、端末装置３や特定端末装置４が抽出されてもよい。更には、エレベータシステム、端末装置３、及び特定端末装置４で実行される制御処理やプログラムが個々に抽出されてもよいし、それらの一部が部分的に抽出されてもよい。

【符号の説明】

【0065】

１ エレベータ
２ 管理サーバ
３ 端末装置
４ 特定端末装置
Ｓ コード
１０Ａ 制御装置
１０Ｂ 空調装置
１１ 記憶部
１２ 制御部
２１ 記憶部
２２ 制御部
４１ 通信部
４２ 入力部
４３ 表示部
４４ 読取部
４５ 記憶部
４６ 制御部
Ｄｒ 対応管理データ
Ｐｅ 識別情報
Ｐｓ 設定情報
Ｓｅ 設定完了信号
Ｓｐ 非公開部
Ｓｑ 公開部
Ｖ１ 第１指令信号
Ｖ２ 第２指令信号
Ｗｃ 暗号キー
１２０ 制御処理部
２２０ 管理処理部
２２１ 更新処理部
２２２ 通知処理部
４６１ 読取処理部
４６２ 設定処理部
４６３ 指令処理部

【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】