(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024124732
(43)【公開日】2024-09-13
(54)【発明の名称】筆記具用水性インク組成物
(51)【国際特許分類】
C09D 11/17 20140101AFI20240906BHJP
【FI】
C09D11/17
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023032612
(22)【出願日】2023-03-03
(71)【出願人】
【識別番号】000005957
【氏名又は名称】三菱鉛筆株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112335
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 英介
(74)【代理人】
【識別番号】100101144
【弁理士】
【氏名又は名称】神田 正義
(74)【代理人】
【識別番号】100101694
【弁理士】
【氏名又は名称】宮尾 明茂
(74)【代理人】
【識別番号】100124774
【弁理士】
【氏名又は名称】馬場 信幸
(72)【発明者】
【氏名】中田 有亮
(72)【発明者】
【氏名】羽賀 久人
【テーマコード(参考)】
4J039
【Fターム(参考)】
4J039AD03
4J039AD09
4J039AD14
4J039AD21
4J039BA39
4J039BC07
4J039BC38
4J039BC75
4J039BE02
4J039EA35
4J039EA44
4J039EA48
4J039GA26
(57)【要約】
【課題】染料で着色した樹脂粒子を着色剤として含有する筆記具用水性インク組成物であっても、筆記性能を低下させることなく、高温での経時安定性があり、筆記した描線は耐光性に優れると共に、ペン先のノンドライ性に優れる筆記具用水性インク組成物を提供する。
【解決手段】 本発明の筆記具用水性インク組成物は、少なくとも、(メタ)アクリル酸シクロヘキシルモノマーと、金属錯塩染料(含金属染料)とで構成される着色樹脂粒子であって、該金属錯塩染料における金属の比重が4以上となるもので構成される着色樹脂粒子の水分散液を含有することを特徴とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、(メタ)アクリル酸シクロヘキシルモノマーと、金属錯塩染料(含金属染料)とで構成される着色樹脂粒子であって、該金属錯塩染料における金属の比重が4以上となるもので構成される着色樹脂粒子の水分散液を含有することを特徴とする筆記具用水性インク組成物。
【請求項2】
糖アルコール及び/又はグリシンベタインを含むことを特徴とする請求項1記載の筆記具用水性インク組成物。
【請求項3】
アルカリ可溶性樹脂を含むことを特徴とする請求項1又は2記載の筆記具用水性インク組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、染料で着色した樹脂粒子を着色剤として含有する筆記具用水性インク組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、染料で着色した樹脂粒子を着色剤として含有する筆記具用水性インク組成物が知られている。例えば、少なくとも、(メタ)アクリル酸シクロヘキシルモノマーと、塩基性染料又は油溶性染料とで構成される着色樹脂微粒子であって、前記(メタ)アクリル酸シクロヘキシルモノマーの含有量が着色樹脂微粒子を構成する全ポリマー成分に対して、30質量%以上であると共に、前記塩基性染料又は油溶性染料の含有量が全ポリマー成分に対して、15質量%以上である着色樹脂微粒子が水に分散されていることを特徴とする水性インク用着色樹脂微粒子の分散液、これを含有する筆記具用水性インク組成物(例えば、本出願人の先行出願となる特許文献1参照)などが知られている。
【0003】
しかしながら、上記特許文献1に記載の染料で着色した樹脂粒子を着色剤として含有する筆記具用水性インク組成物は、今までにない優れた筆記性能を有するものであるが、筆記した描線の耐光性を更に良好としたものが切望されており、また、ペン先のノンドライ性についても更なる性能アップが望まれている。
【0004】
一方、金属錯塩染料や糖アルコールを用いた筆記具用水性インク組成物としては、例えば、1)水を溶剤とし、分子量が1500~30000の範囲にあり、酸価が150~300の範囲にあるスチレン-アクリル樹脂と、着色剤として、(a)アゾ金属錯塩酸性染料、(b)C.I.ダイレクトブラック、並びに(c)C.I.アシッドイエロー110、C.I.アシッドイエロー127、C.I.ダイレクトイエロー100、C.I.20215、C.I.20216、C.I.20230、C.I.23266、C.I.23635、C.I.40002、C.I.40215、C.I.42655及びC.I.42660から選ばれる少なくとも1つのアニオン染料とを含む水性インキであって、常温にて揮発性であるアルカリ物質によってpHが6~9.5に調整されていることを特徴とする水性インキ組成物(例えば、特許文献2参照)や、
2)ヒドロキシピレントリスルホン酸又はその誘導体、並びにパラチノース、トレハロース、トレハルロース、マルチット、6-O-α-D-グルコピラノシル-D-ソルビット(1,6-GPS)及び1-O-α-D-グルコピラノシル-D-マンニット(1,1-GPM)からなる群から選択される少なくとも1種の糖又は糖アルコール、を含むマーキング液(例えば、特許文献3参照)などが知られている。
【0005】
しかしながら、上記特許文献2に記載の耐水性を有する筆記具用水性インク組成物や、上記特許文献3に記載の光堅牢度等を有する筆記具用水性インク組成物は、それぞれの機能を有するものであるが、筆記性能を低下させることなく、耐光性とペン先のノンドライ性を高度に両立した筆記具用水性インク組成物でなく、本発明とは、その目的、技術思想(構成及びその作用効果)が相違するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2019-112561号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【特許文献2】特開平6-228486号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【特許文献3】特開2004-59927号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記従来技術の課題及び現状等に鑑み、これを解消しようとするものであり、染料で着色した樹脂粒子を着色剤として含有する筆記具用水性インク組成物であっても、筆記性能を低下させることなく、高温での経時安定性があり、耐光性とペン先のノンドライ性を高度に両立した筆記具用水性インク組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記従来の課題等に鑑み、鋭意研究を行った結果、少なくとも、(メタ)アクリル酸シクロヘキシルモノマーと、金属錯塩染料(含金属染料)とで構成される着色樹脂粒子であって、該金属錯塩染料の金属比重が特定値以上となるもので構成される着色樹脂粒子の水分散体を含有することにより、上記目的の筆記具用水性インク組成物が得られることを見出し、本発明を完成するに至ったのである。
【0009】
すなわち、本発明の筆記具用水性インク組成物は、少なくとも、(メタ)アクリル酸シクロヘキシルモノマーと、金属錯塩染料(含金属染料)とで構成される着色樹脂粒子であって、該金属錯塩染料における金属の比重が4以上となるもので構成される着色樹脂粒子の水分散液を含有することを特徴とする。
前記筆記具用水性インク組成物には、糖アルコール及び/又はグリシンベタインを含むことが好ましい。
前記筆記具用水性インク組成物には、アルカリ可溶性樹脂を含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、筆記性能を低下させることなく、高温での経時安定性があり、耐光性とペン先のノンドライ性を高度に両立することができる筆記具用水性インク組成物が提供される。
本発明の目的及び効果は、特に請求項において指摘される構成要素及び組み合わせを用いることによって認識され且つ得られるものである。上述の一般的な説明及び後述の詳細な説明の両方は、例示的及び説明的なものであり、特許請求の範囲に記載されている本発明を制限するものではない。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明の実施形態について詳しく説明する。但し、本発明の技術的範囲は下記で詳述するそれぞれの実施の形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された発明とその均等物に及ぶ点に留意されたい。
本発明の筆記具用水性インク組成物は、少なくとも、(メタ)アクリル酸シクロヘキシルモノマーと、金属錯塩染料(含金属染料)とで構成される着色樹脂粒子であって、該金属錯塩染料における金属の比重が4以上となるもので構成される着色樹脂粒子の水分散液を含有することを特徴とするものである。
【0012】
本発明に用いる(メタ)アクリル酸シクロヘキシルモノマーは、内包可能な金属錯塩染料(含金属染料)の量を多くしても、色の濃い発色性に優れる安定な着色樹脂微粒子が得られる点、並びに、得られる着色樹脂微粒子が筆記具用などの色材として十分な描線の濃度となる点などから用いるものである。
なお、上記「(メタ)アクリル酸」の表記は、「アクリル酸及び/又はメタクリル酸」を表す。また、(メタ)アクリル酸シクロヘキシルモノマーの製造法は、既知であり、従来の製法、例えば、(メタ)アクリル酸シクロヘキシルは、(メタ)アクリル酸と、シクロヘキサノールとを無機酸、有機スルホン酸、強酸性イオン交換樹脂等の触媒を用いてエステル化するエステル化法や、チタンや錫等を含む有機金属化合物を触媒に用いるエステル交換法により、製造することができる。
【0013】
本発明においては、上記(メタ)アクリル酸シクロヘキシルモノマーの他に、更に、発色性に優れる着色樹脂微粒子を得る点等から、好ましくは、上記(メタ)アクリル酸シクロヘキシルモノマー以外の疎水性ビニルモノマー、水性モノマーを用いることができる。
疎水性ビニルモノマーとしては、例えば、上記(メタ)アクリル酸シクロヘキシルモノマー以外のアクリル酸又はメタクリル酸のエステル類、スチレン、メチルスチレンなどのスチレン類などの少なくとも1種のモノマーを用いることができる。
用いることができる疎水性ビニルモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸パルミチル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸ベヘニル、スチレン、メチルスチレン等の少なくとも1種(各単独又は2種以上の混合物)が挙げられる。
【0014】
用いることができる水性モノマーとしては、例えば、グリセリンモノメタクリレート、メタクリル酸2-スルホエチルナトリウム、ポリエチレングリコールモノメタクリレート、ポリプロピレングリコールモノメタクリレート、ポリエチレングリコール-プロピレングリコールモノメタクリレート、ポリエチレングリコール-テトラメチレングリコール-モノメタクリレート、プロピレングリコール-ポリブチレングリコール-モノメタクリレート等の少なくとも1種(各単独又は2種以上の混合物)が挙げられる。
【0015】
本発明に用いる金属錯塩染料(含金属染料:以下同様)は、分子中に金属原子と錯塩化し得る基を含む染料分子、及び金属原子を錯塩化した染料であり、前記金属錯塩染料における金属の比重が4以上となるものを用いるものである。
用いることができる金属錯塩染料としては、金属(原子)の比重(g/mm3)が4以上となるCu(銅:8.96),Fe(鉄:7.87),Cr(クロム:7.20),Zn(亜鉛:7.13),Co(コバルト:8.90)などが挙げられ、染料分子(配位子)としては、ジ及びトリアリールメタン系染料;アジン系(ニグロシンを含む)、オキサジン系、チアジン系等のキノンイミン系染料;キサンテン系染料;トリアゾールアゾ系染料;チアゾールアゾ系染料;ベンゾチアゾールアゾ系染料;アゾ系染料;ポリメチン系、アゾメチン系、アザメチン系等のメチン系染料、アントラキノン系染料、フタロシアニン系、モノアゾ、ジスアゾ、アントラキノン、サリチル酸系等が挙げられる。
本発明では、金属錯塩染料における金属の比重が4以上となるもの、好ましくは金属の比重が6以上となる各色の金属錯塩染料を用いることにより、本発明の効果を発揮せしめることができ、特に耐光性に優れる各色の着色樹脂粒子を得ることができる。一方、金属錯塩染料における金属の比重が4未満となるものでは、例えば、金属原子がAl(アルミニウム:2.70)の金属錯塩染料(黄色4号アルミニウムレーキ、ダイワ化成社製)などでは耐光性および高温での経時安定性などが十分でなく、本発明の効果を奏することができない着色樹脂粒子となる。なお、金属の比重の上限は10以下が望ましい。
【0016】
用いることができる金属の比重が4以上となる金属錯塩染料の具体例としては、上記比重特性を有するものであれば、これに限定されないが、例えば、金属原子と染料分子との結合比が1:1である1:1形金属錯塩染料と、該比が1:2である1:2形金属錯塩染料とが挙げられ、1:2形金属錯塩染料が好ましい。
これらの中でも、金属錯塩染料として、1:1型金属錯塩染料及び/又は1:2型金属錯塩染料の色味の変化をより好ましく防止することができる。特に、1:2型金属錯塩染料において、上記比重特性の金属原子1原子に対しアゾ染料2分子のうち1分子の脱落を防止して、染料の変性を更に防止することができる。
【0017】
用いることができる金属錯塩染料としては、例えば、金属(原子)がCu(銅:8.96)であるフタロシアニン系、銅クロロフィルが挙げられ、市販品では、Savinyl Blue GLS:以上、クラリアントケミカルズ社製;Valifast Blue (1605、2620、2680)、NUBIAN Blue PA-4600:以上、オリエント化学工業社製SPT Blue(26、111):以上、保土谷化学工業社製などが挙げられる。
金属(原子)がFe(鉄:7.87)であるサリチル酸誘導体錯体が挙げられ、市販品では、 BONTRON X-11:以上、オリエント化学工業社製などが挙げられる。
【0018】
金属(原子)がCr(クロム:7.20)であるアゾ系、ニグロシン系が挙げられ、市販品では、Spilon Black GMH special、DUASYN Black A-RG、Savinyl Yellow 2GLS 01、Savinyl Yellow RLSN、Savinyl Pink 6BLS:以上、クラリアントケミカルズ社製;Valifast Red(2303、2320、3304、3306、3311、3312、3320)、Valifast Pink 2310N、Valifast Yellow (3120、3150、4120、4121)、 2310N、Valifast Orange(2210、3208、3209、3210)、Valifast Black(1807、3804、3807,3808、3810、3820、3830、3840、3866、3870、3878)、Valifast Brown 3402、NUBIAN Yellow PA-2100、NUBIAN Orange PA-2200、NuBIAN Red PA-2300:以上、オリエント化学工業社製などが挙げられる。
金属(原子)がZn(亜鉛:7.13)であるサリチル酸誘導体錯体が挙げられ、市販品では、BONTRON (E-84、E-304、E-84S):以上、オリエント化学工業社製などが挙げられる。
【0019】
金属(原子)がCo(コバルト:8.90)であるフタロシアニン系、アゾ系、油溶性などが挙げられ、市販品では、FDR-002、山田化学社製、Savinyl Yellow 2RLS(サンド社製)、Valifast Yellow 3108、3170、3180、オリエント化学工業社製などが挙げられる。
【0020】
本発明に用いる着色樹脂微粒子の分散液は、少なくとも、(メタ)アクリル酸シクロヘキシルモノマーと、上記比重特性の金属錯塩染料とで構成される着色樹脂微粒子が水に分散されているものであり、その製造法としては、例えば、上記(メタ)アクリル酸シクロヘキシルモノマーに、または、上記(メタ)アクリル酸シクロヘキシルモノマーとこれ以外の疎水性ビニルモノマーなどを含む混合モノマーに、上記比重特性の金属錯塩染料の少なくとも1種または上記比重特性の金属錯塩染料の少なくとも1種と非金属染料との組み合わせを溶解等し、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過酸化水素などを重合開始剤として、また還元剤を更に併用した重合開始剤とし、更にトリアリルイソシアヌレート、イソシアヌル酸トリアリル、ポリエチレングリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート、ペンタエリスリトールアクリレート、ジトリメチロールプロパンアクリレート、ジペンタエリスリトールアクリレート、メトキシ化ビスフェノールAメタクリレート、ペンタエリスリトールメタクリレート、ジトリメチロールプロパンメタクリレート、ジペンタエリスリトールメタクリレート、エトキシ化ポリグリセリンメタクリレートなどの架橋剤や、必要に応じて、ポリオキシエチレン-1-(アリルオキシメチル)-アルキルエーテル硫酸アンモニウム、エーテルサルフェート、ポリオキシエチレンノニルプロペニルフェニルエーテル硫酸アンモニウム、ポリオキシエチレンノニルプロペニルフェニルエーテル、ポリアクリル酸アンモニウム、スチレン-マレイン酸コポリマーアンモニウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシアルキレンデシルエーテル、ポリオキシエチレントリデシルエーテル、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ジオクチルスルホコハク酸塩、ラウリル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル、ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテルリン酸エステル、ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩などの重合性界面活性剤(乳化剤)を用いて乳化重合することなどにより製造することができる。また、上記染色は重合と同時に行ったが、重合後に上記比重特性の金属錯塩染料の少なくとも1種または上記比重特性の金属錯塩染料の少なくとも1種と非金属染料との組み合わせを溶解等して染色を行っても良い。
上記トリアリルイソシアヌレートなどの架橋剤を用いると、着色樹脂微粒子の耐熱性、機械的特性、耐加水分解性、耐候性が更に向上できるので好ましい。
【0021】
本発明において、上記乳化重合の際には、上記(メタ)アクリル酸シクロヘキシルモノマーなどに、更に、ジシクロペンタ(テ)ニル(メタ)アクリレートモノマーなどを適宜量混合して乳化重合を行ってもよい。このジシクロペンタ(テ)ニル(メタ)アクリレートモノマーを更に、混合して乳化重合したものでは、分散液中の水分が揮発したとしても安定性が損なわれにくく、更に安定性に優れた筆記具用の着色樹脂微粒子の分散液などが得られるものとなる。
用いることができるジシクロペンタ(テ)ニル(メタ)アクリレートモノマーには、ジシクロペンタニルアクリレートモノマー、ジシクロペンテニルアクリレート、ジシクロペンタニルメタクリレートモノマー、ジシクロペンテニルメタクリレートを含むものである。
また、本発明において、上記乳化重合の際には、上記(メタ)アクリル酸シクロヘキシルモノマー、これ以外の上記疎水性ビニルモノマーなど、上記ジシクロペンタ(テ)ニル(メタ)アクリレートモノマーの他に、エポキシ基、ヒドロキシメチルアミド基、イソシアネート基などの反応性架橋基を有するモノマーや2つ以上のビニル基を有する多官能性モノマーを適宜量配合して架橋してもよい。
【0022】
本発明において、前記筆記具用の着色樹脂微粒子を構成する重合性ポリマー成分のうち、上記(メタ)アクリル酸シクロヘキシルモノマーの含有量は、着色樹脂微粒子を構成する全ポリマー成分に対して、経時安定性の点から、30質量%以上であることが好ましく、更に好ましくは、30~95質量%、更に好ましくは、30~70質量%であることが望ましい。
なお、本発明において、「重合性ポリマー成分」とは、着色樹脂微粒子を構成する重合性成分をいい、具体的には、用いる(メタ)アクリル酸シクロヘキシルモノマーと、用いる他のモノマー成分と、後述する架橋剤の合計量をいう。
【0023】
また、前記筆記具用の着色樹脂微粒子を構成する重合性ポリマー成分のうち、上記(メタ)アクリル酸シクロヘキシルモノマー以外の他のモノマー成分の含有量は、用いる(メタ)アクリル酸シクロヘキシルモノマーと、後述する架橋剤との合計量の残部となるものである。
好ましくは、他のモノマー成分の含有量は、本発明の効果を更に発揮せしめる点、分散性の点、反応性の点から、重合性ポリマー成分に対して、5~85質量%とすることが望ましい。
【0024】
本発明において、上記比重特性の金属錯塩染料の含有量は、発色性、十分な描線濃度を得る点、安定性を高度に維持した上で、耐光性を更に向上する点から、重合性ポリマー成分に対して、好ましくは、15質量%以上とすることが好ましく、更に好ましくは、15~50質量%、特に好ましくは、15~40質量%とすることが望ましい。
この比重特性の金属錯塩染料の含有量を15質量%以上とすることにより、十分な発色性、十分な描線濃度を発揮せしめた上で、更なる耐光性の向上を発揮することができ、一方、上記比重特性の金属錯塩染料の含有量が50質量%以下とすることにより、安定性を図りながら、本発明の効果を高度に維持することができる。
上記重合性ポリマー成分に対して、好ましい比重特性の金属錯塩染料の含有量の範囲となるように、当該比重特性の金属錯塩染料の少なくとも1種または上記比重特性の金属錯塩染料の少なくとも1種と非金属染料などを上記重合性ポリマー成分に対して、好適に組み合わせて用いることにより、好適な着色樹脂微粒子が得られることとなる。
【0025】
上記必要に応じて用いることができる重合性界面活性剤としては、上記乳化重合に通常用いられる重合性界面活性剤であれば特に制限はないが、例えば、重合性界面活性剤としては、アニオン系またはノニオン系などの重合性界面活性剤であり、アデカ(株)製のアデカリアソープNE-10、同NE-20、同NE-30、同NE-40、同SE-10N、花王(株)製のラテムルS-180、同S-180A、同S-120A、三洋化成工業(株)製のエレミノールJS-20、第一工業製薬社製のアクアロンKH-05、同KH-10、同HS-10、同AR-10、同RN-10、などの少なくとも1種が挙げられる。これらの重合性界面活性剤の使用量は、上記重合性ポリマー成分に対して、0~50質量%、好ましくは、0.1~50質量%が望ましい。
また、上記トリアリルイソシアヌレートなどの架橋剤の含有量は、上記重合性ポリマー成分に対して、0~50質量%、好ましくは、0.1~25質量%が望ましい。
【0026】
本発明において、上記好ましい態様、具体的には、少なくとも、上記(メタ)アクリル酸シクロヘキシルモノマーに、上述の比重特性の金属錯塩染料を溶解して乳化重合することにより、または、少なくとも、上記(メタ)アクリル酸シクロヘキシルモノマーと他のモノマー成分を含む混合モノマーに、上述の比重特性の金属錯塩染料の少なくとも1種または上記比重特性の金属錯塩染料の少なくとも1種と非金属染料との組み合わせを溶解等して乳化重合することにより、筆記具用の着色樹脂微粒子の分散液が得られることとなる。
この着色樹脂微粒子の分散液は、従来よりも十分な発色性、経時安定性などに優れた機能を有すると共に、耐光性に優れることにより、筆記した描線の発色性、耐光性に優れた色材となるものであり、また、筆記性能を低下させることなく、高温での経時安定性があり、ペン先のノンドライ性にも優れ、サインペンやマーキングペン、ボールペンなどの筆記具に好適な筆記具用水性インク組成物の色材(着色剤)として有用となるものである。
【0027】
また、本発明において、得られる筆記具用着色樹脂微粒子の分散液における着色樹脂微粒子の平均粒子径は、(メタ)アクリル酸シクロヘキシルモノマー、用いる他のモノマー種、含有量、重合の際の重合条件等により変動するものであるが、好ましくは、20~300nm、更に好ましくは、40~150nm、更に好ましくは、60~110nmであることが望ましい。
上記好ましい平均粒子径の範囲とすることにより、サインペンやマーキングペン、ボールペンなどの筆記具のペン芯において目詰まりすることなく、更に、保存安定性などに優れたものとなる。
なお、本発明で規定する「平均粒子径」は、散乱光強度分布によるヒストグラム平均粒子径であり、本発明(後述する実施例を含む)では、粒度分布測定装置〔FPAR1000(大塚電子社製)〕にて、測定した値D50の値である。
【0028】
本発明の筆記具用水性インク組成物は、少なくとも、(メタ)アクリル酸シクロヘキシルモノマーと、金属錯塩染料(含金属染料)とで構成される着色樹脂粒子であって、該金属錯塩染料における金属の比重が4以上となるもので構成される着色樹脂粒子の水分散液を含有するものであり、好ましくは、水溶性有機溶剤と、残部として水を含有することが好ましい。また、筆記具用水性インク組成物中の着色樹脂粒子の固形分量は、分散液や配合成分種、製造法、筆記具種などにより変動し、特に限定されないが、インク組成物全量に対して、1~50質量%程度である。
【0029】
用いることができる水溶性有機溶剤としては、例えば、エチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジ オール、1,2-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、2,5-ヘキサンジオール、3-メチル1,3-ブタンジオール、2メチルペンタン -2,4-ジオール、3-メチルペンタン-1,3,5トリオール、1,2,3-ヘキサントリオールなどのアルキレングリコール類、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどのポリアルキレングリコール類、グリセロール、ジグリセロール、トリグリセロールなどのグリセロール類、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテルなどのグリコールの低級アルキルエーテル、N-メチル-2-ピロリドン、1,3-ジメチル-2-イミダリジノンなどの少なくとも1種が挙げられる。
【0030】
その他にも、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、n-ブチルアルコール、tert-ブチルアルコール、イソブチルアルコール、ヘキシルアルコール、オクチルアルコール、ノニルアルコール、デシルアルコール、ベンジルアルコールなどのアルコール類、ジメチルホルムアミド、ジエチルアセトアミドなどのアミド類、アセトンなどのケトン類などの水溶性溶剤を混合することもできる。
これらの水溶性有機溶剤の含有量は、サインペンやマーキングペン、ボールペンなどの筆記具種により変動するものであり、インク組成物全量に対して、1~40質量%である。
【0031】
本発明において、好ましくは、ペン先のノンドライ性を更に向上させる点、高温での経時的な安定性が得られる点から、更に、糖アルコール及び/又はグリシンベタイン〔別名:トリメチルグリシン、(CH3)2N+(CH3)CH2COO-〕を含有することが望ましい。
用いることができる糖アルコールとしては、特に制限されないが、例えば、ソルビトール、キシリトール、マンニトール、エリスリトール等の一糖アルコール、イソマルチトール、マルチトール、ラクチトール等の二糖アルコール、マルトトリイトール、イソマルトトリイトール、パニトール等の三糖アルコール、オリゴ糖アルコール等の四糖以上の糖アルコール、二糖以上の糖アルコールからなる還元澱粉糖化物、還元澱粉分解物が例示でき、好ましくは、マルチトール、イソマルトトリイトール、二糖以上の糖アルコールからなる還元澱粉糖化物、還元澱粉分解物の使用が望ましく、本発明の効果を更に効果的に発揮せしめる点から、特に、グリシンベタインと、二糖以上の糖アルコールを含有し、二糖以上の糖アルコール全量に対し、五糖以上の糖アルコールが50質量%以上で構成されていることが望ましい。
市販品では、エスイー20(物産フードサイエンス社製、五糖以上の糖アルコール約5~20%含有)、エスイー600(物産フードサイエンス社製、五糖以上の糖アルコール約1~5%含有)などが挙げられ、また、二糖以上の糖アルコール全量に対し、平均重合度が5以上の糖アルコールが50%以上で構成されている糖アルコールとしては、例えば、H-PDX〔五糖以上の糖アルコール約75%含有(五糖;6.4%、六糖;10%、七糖;58.5%)、松谷化学工業社製〕、エスイー100(物産フードサイエンス社製、五糖以上の糖アルコール約64~82%含有)などが挙げられる。
【0032】
これらの糖アルコール及び/又はグリシンベタインの含有量としては、インクの吐出性、インクの経時安定性の点から、筆記具用水性インク組成物全量に対して、0.5~10質量%が好ましく、更に好ましくは、1~5質量%がより好ましい。
この含有量が、0.5質量%未満であると、ペン先のノンドライ性を更に向上させることができず、一方、10質量%を超えると、インク粘度が高くなり、筆記擦れなど、描線品位を損なうこととなる。
【0033】
本発明において、好ましくは、ペン先のノンドライ性能、高温安定性の点から、更に、アルカリ可溶性樹脂を含有することが望ましい。
用いることができるアルカリ可溶性樹脂としては、例えば、スチレン-マレイン酸共重合体、スチレン-アクリル樹脂、アクリル樹脂、エチレン-マレイン酸共重合体、ロジン-マレイン酸共重合体などの少なくとも1種(各単独又は2種以上の混合物)を用いることができる。これらは、アルカリ金属塩、アンモニウム塩、アミン塩などの形態で用いるのがよい。
例えば、市販品ではアラスター700(スチレン-マレイン酸共重合体)、アラスター703S(スチレン-マレイン酸共重合体)(以上、荒川化学工業社製)、ジョンクリル60J(スチレン-アクリル酸共重合体)、ジョンクリル70J(スチレン-アクリル酸共重合体)(以上、BASFジャパン社製)などが挙げられる。
アルカリ剤としては、水溶性のアルカリ剤を用いるのがよく、アンモニア水、水酸化ナトリウムなどを用いるのが好ましい。
【0034】
これらのアルカリ可溶性樹脂の含有量としては、ペン先のノンドライ性能、インクの高温安定性の点から、着色樹脂微粒子(固形分)1に対して、(質量比で)0.2以上とすることが好ましく、更に好ましくは、0.4~1.6がより好ましい。
この質量比を0.2以上とすることにより、ペン先のノンドライ性能、インクの高温安定性を更に向上させることができ、一方、0.2未満では、糖類と樹脂の複合膜の形成がしにくく、ノンドライ性が悪化する点、アルカリ可溶性樹脂による分散作用が弱まり、高温での経時安定性が劣ることとなる。
【0035】
本発明の筆記具用水性インク組成物では、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて防腐剤もしくは防黴剤、pH調整剤、消泡剤などを適宜選択して使用することができる。
例えば、pH調整剤として、アンモニア、尿素、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、アミノメチルプロパノール、トリポリン酸ナトリウム、炭酸ナトリウムなど炭酸やリン酸のアルカリ金属塩、水酸化ナトリウムなどのアルカリ金属の水酸化物などの少なくとも1種が挙げられる。
防腐剤もしくは防黴剤として、フェノール、ナトリウムオマジン、ペンタクロロフェノールナトリウム、1,2-ベンズイソチアゾリン3-オン、2,3,5,6-テトラクロロ-4(メチルフォニル)ピリジン、安息香酸やソルビン酸やデヒドロ酢酸のアルカリ金属塩、ベンズイミダゾール系化合物などの少なくとも1種が挙げられる。
潤滑剤としてリン酸エステル類、ポリオキシエチレンラウリルエーテルなどのポリアルキレングリコール誘導体、脂肪酸アルカリ塩、ノニオン系界面活性剤、パーフルオロアルキルリン酸エステルなどのフッ素系界面活性剤、ジメチルポリシロキサンのポリエチレングリコール付加物などのポリエーテル変性シリコーンなどの少なくとも1種が挙げられる。
【0036】
本発明の筆記具用水性インク組成物は、少なくとも、上記構成の着色樹脂微粒子の分散液と、水溶性溶剤、その他の各成分、更に、糖アルコール及び/又はグリシンベタイン、アルカリ可溶性樹脂などを配合して、筆記具用(ボールペン用、マーキングペン用等)インクの用途に応じて適宜組み合わせて、ホモミキサー、ホモジナイザーもしくはディスパー等の撹拌機により撹拌混合することにより、更に必要に応じて、ろ過や遠心分離によってインク組成物中の粗大粒子を除去すること等によって筆記具用水性インク組成物を調製することができる。
【0037】
本発明の筆記具用水性インク組成物は、各種の構造の筆記具に搭載してしように供されるものであり、例えば、ボールペンチップ、繊維チップ、フェルトチップ、プラスクチップ、繊維芯、多孔質芯などのペン先部を備えたボールペン、マーキングペン等に搭載される。ペン先構造は特に限定されず、例えば、繊維芯、焼結芯、筆、ブラシ芯、スポンジ芯、ポリエステル芯、アクリル芯、ナイロン芯、PBT(ポリブチレンテレフタレート)芯、ポリエチレン芯、ゴム芯、ウレタン芯、POM(ポリアセタール)芯、PP芯、PEN(ポリエチレンナフタレート)芯、PET芯を使用することができる。
ボールペンとしては、上記組成の筆記具用水性インク組成物をボールペン用インク収容体(リフィール)に収容すると共に、該インク収容体内に収容された上記組成の筆記具用水性インク組成物とは相溶性がなく、かつ、該水性インク組成物に対して比重が小さい物質、例えば、ポリブテン、シリコーンオイル、鉱油等がインク追従体として収容されるものが挙げられる。
なお、ボールペン、マーキングペンの構造は、特に限定されず、例えば、軸筒自体をインク収容体として該軸筒内に上記構成の筆記具用水性インク組成物を充填したコレクター構造(インク保持機構)を備えた直液式のボールペン、マーキングペンであってもよいものである。
【0038】
このように構成される本発明の筆記具用水性インク組成物では、少なくとも、(メタ)アクリル酸シクロヘキシルモノマーと、金属錯塩染料とで構成される着色樹脂粒子であって、該金属錯塩染料における金属の比重が4以上となるもので構成される着色樹脂粒子の水分散液を含有することにより、筆記性能を低下させることなく、高温での経時安定性があり、耐光性とペン先のノンドライ性を高度に両立した筆記具用水性インク組成物が得られることとなる。
【実施例0039】
次に、製造例、実施例及び比較例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は下記実施例等に限定されるものではない。
【0040】
〔製造例1~14:着色樹脂微粒子の分散液(粒子1~9)の製造〕
下記製造例1~9により、各着色樹脂微粒子の分散液を製造した。なお、以下の「部」は質量部を表す。
【0041】
(製造例1)
2リットルのフラスコに、撹拌機、還流冷却器、温度計、窒素ガス導入管、モノマー投入用1000ml分液漏斗を取り付け、温水槽にセットし、蒸留水304.5部、グリセリンモノメタクリレート〔ブレンマーGLM、日油社製〕5部、メタクリル酸2-スルホエチルナトリウム〔アクリルエステルSEM-Na、三菱ケミカル社製〕5部、重合性界面活性剤〔ADEKA社製、アデカリアソープSE-10N、エーテルサルフェート〕40部及び過硫酸アンモニウム0.5部を仕込んで、窒素ガスを導入しながら、内温を50℃まで昇温した。
一方、メタクリル酸シクロヘキシルモノマー60部と、他のモノマーとして、メタクリル酸n-ブチル30部とからなる混合モノマーに、金属錯塩染料として、金属がクロムとなるクロム金属錯塩染料〔Valifast Black 3830、オリエント化学工業社製〕45部、架橋剤〔トリアリルイソシアヌレート、日本化成社製、「タイク(TAIC)」〕10部を混合した液を調製した。
この調製液を上記分液漏斗から温度50℃付近に保った上記フラスコ内に撹拌下で3時間にわたって添加し、乳化重合を行った。さらに5時間熟成して重合を終了し、筆記具用着色樹脂微粒子の分散液(粒子1)を得た。
前記メタクリル酸シクロヘキシルモノマーの含有量は着色樹脂微粒子を構成する重合性ポリマー成分に対して、30.8質量%、前記比重特性の金属錯塩染料の含有量は重合性ポリマー成分に対して、23.1質量%、また、着色樹脂微粒子の平均粒子径は、75nmであった。
【0042】
(製造例2)
上記製造例1において、蒸溜水を304.5部とし、また、金属錯塩染料として、金属が銅となる銅金属錯塩染料〔Savinyl Blue GLS、クラリアントケミカルズ社製〕45部を用いた以外は、上記製造例1と同様にして、筆記具用着色微粒子水性分散液(粒子2)を得た。
前記メタクリル酸シクロヘキシルモノマーの含有量は着色樹脂微粒子を構成する重合性ポリマー成分に対して、30.8質量%、前記金属錯塩染料の含有量は重合性ポリマー成分に対して、23.1質量%であった。また、着色樹脂微粒子の平均粒子径は、42nmであった。
【0043】
(製造例3)
上記製造例1において、蒸溜水を304.5部とし、また、金属錯塩染料として、金属がコバルトとなるコバルト金属錯塩染料〔Valifast Yellow 3180、オリエント化学工業社製〕45部を用いた以外は、上記製造例1と同様にして、筆記具用着色微粒子水性分散液(粒子3)を得た。
前記メタクリル酸シクロヘキシルモノマーの含有量は着色樹脂微粒子を構成する重合性ポリマー成分に対して、30.8質量%、前記金属錯塩染料の含有量は重合性ポリマー成分に対して、23.1質量%であった。また、着色樹脂微粒子の平均粒子径は、106nmであった。
【0044】
(製造例4)
上記製造例1において、蒸溜水を304.5部とし、また、金属錯塩染料として、金属が鉄となる鉄金属錯塩染料〔BONTRON X-11、オリエント化学工業社製〕45部を用いた以外は、上記製造例1と同様にして、筆記具用着色微粒子水性分散液(粒子4)を得た。
前記メタクリル酸シクロヘキシルモノマーの含有量は着色樹脂微粒子を構成する重合性ポリマー成分に対して、30.8質量%、前記金属錯塩染料の含有量は重合性ポリマー成分に対して、23.1質量%であった。また、着色樹脂微粒子の平均粒子径は、124nmであった。
【0045】
(製造例5)
上記製造例1において、金属錯塩染料〔Valifast Black 3830、オリエント化学工業社製〕45部を金属がクロムとなるクロム金属錯塩染料〔Valifast Red 3312、オリエント化学工業社製〕25部、銅金属錯塩染料〔Savinyl Blue GLS、クラリアントケミカルズ社製〕20部とした以外は、上記製造例4と同様にして、筆記具用着色微粒子水性分散液(粒子5)を得た。
前記メタクリル酸シクロヘキシルモノマーの含有量は着色樹脂微粒子を構成する重合性ポリマー成分に対して、30.8質量%、前記金属錯塩染料の含有量は重合性ポリマー成分に対して、23.1質量%であった。また、着色樹脂微粒子の平均粒子径は、89nmであった。
【0046】
(製造例6)
上記製造例1において、金属錯塩染料として、金属がクロムとなるクロム金属錯塩染料〔Valifast Black 3830、オリエント化学工業社製〕20部、銅金属錯塩染料〔Savinyl Blue GLS、クラリアントケミカルズ社製〕15部、コバルト金属錯塩染料〔Valifast Yellow 3180、オリエント化学工業社製〕10部とした以外は、上記製造例4と同様にして、筆記具用着色微粒子水性分散液(粒子6)を得た。
前記メタクリル酸シクロヘキシルモノマーの含有量は着色樹脂微粒子を構成する重合性ポリマー成分に対して、30.8質量%、前記金属錯塩染料の含有量は重合性ポリマー成分に対して、23.1質量%であった。また、着色樹脂微粒子の平均粒子径は、110nmであった。
【0047】
(製造例7)
上記製造例1において、金属錯塩染料〔Valifast Black 3830、オリエント化学工業社製〕45部を金属がクロムとなるクロム金属錯塩染料〔Valifast Black 3830、オリエント化学工業社製〕30部、非金属染料〔Valifast Yellow 1108、オリエント化学工業〕15部とした以外は、上記製造例4と同様にして、筆記具用着色微粒子水性分散液(粒子7)を得た。
前記メタクリル酸シクロヘキシルモノマーの含有量は着色樹脂微粒子を構成する重合性ポリマー成分に対して、30.8質量%、前記金属錯塩染料の含有量は重合性ポリマー成分に対して、15.4質量%であった。また、着色樹脂微粒子の平均粒子径は、69nmであった。
【0048】
(製造例8)
上記製造例1において、金属錯塩染料〔Valifast Black 3830、オリエント化学工業社製〕45部を金属がクロムとなるクロム金属錯塩染料〔Valifast Red 3312、オリエント化学工業社製〕20部、銅金属錯塩染料〔Savinyl Blue GLS、クラリアントケミカルズ社製〕10部、非金属染料〔Valifast Yellow 1108、オリエント化学工業〕15部とした以外は、上記製造例4と同様にして、筆記具用着色微粒子水性分散液(粒子8)を得た。
前記メタクリル酸シクロヘキシルモノマーの含有量は着色樹脂微粒子を構成する重合性ポリマー成分に対して、30.8質量%、前記金属錯塩染料の含有量は重合性ポリマー成分に対して、15.4質量%であった。また、着色樹脂微粒子の平均粒子径は、60nmであった。
【0049】
(製造例9)
上記製造例1において、蒸溜水を304.5部とし、また、金属錯塩染料として、金属がアルミニウムとなる銅金属錯塩染料〔黄色4号アルミニウムレーキ、ダイワ化成社製〕45部を用いた以外は、上記製造例1と同様にして、筆記具用着色微粒子水性分散液(粒子9)を得た。
前記メタクリル酸シクロヘキシルモノマーの含有量は着色樹脂微粒子を構成する重合性ポリマー成分に対して、30.8質量%、前記金属錯塩染料の含有量は重合性ポリマー成分に対して、23.1質量%であった。また、着色樹脂微粒子の平均粒子径は、49nmであった。
【0050】
上記製造例1~9で得た各筆記具用着色樹脂微粒子の分散液は、樹脂固形分は20~40質量%であった。また、上記製造例1~8で得た各筆記具用着色樹脂微粒子の分散液は、下記実施例1~14に用いるものであり、用いた各金属錯塩染料における金属の比重は4以上となるクロム、銅、鉄、コバルトの各金属錯塩染料の1種又は二種以上を用いたものであり、製造例9は下記比較例1~3に用いるものである。
【0051】
〔実施例1~14及び比較例1~3:筆記具用水性インク組成物の調製〕
上記製造例1~9により製造した各着色樹脂微粒子の分散液(粒子1~9)を用いて、下記表1に示す配合組成(全量100質量%)により常法により各筆記具用水性インク組成物を調製した。
【0052】
得られた各筆記具用水性インク組成物(全量100質量%)について、下記評価方法により、耐光性、ノンドライ性、高温経時安定性について評価した。
下記表1に実施例1~9及び比較例1の各評価結果を示す。
【0053】
(耐光性の評価方法)
上記着色樹脂微粒子の分散液にメラミン・ホルムアルデヒド縮合物を添加しながら着色剤の濃度15質量%に調整した。得られた分散液について、偏心アプリケーター(10MIL/UESHIMA SEISAKUSHO社製)を用いてピーチケント紙に展色した。下記の基準で耐光性を評価した。
【0054】
これについて、キセノンフェードメーターX25F(FLR40SW/M/36、スガ試験機株式会社製)にて30および50時間照射し、照射前後のL値(明度)についてカラーコンピューター(スガ試験機株式会社SC-P)にて測定し、照射後のL値/照射前のL値にて評価を行った。なお、測定条件は、正反射光:除く、光源視野:D65/10、にて行った。
評価基準:
A:1.0~1.1
B:1.1超~1.2未満
C:1.2超
【0055】
(ノンドライ性の測定方法)
得られた各筆記具用水性インク組成物を中綿式マーキングペン(三菱鉛筆社製、PWB-7M)のPP樹脂で構成される軸に6.0g充填し、テイボー社製のスライバー芯からなるペン先を下向きに状態で、25℃の恒温室に1ヶ月間放置し、1ヶ月後に、フリーハンド紙に「らせん」を5周筆記し、インクの追従性を目視にて下記評価基準で評価した。
評価基準:
A:カスレなく、良好に筆記できる。
B:最初の1~2周は、カスレがあるが、3周目以降は良好に筆記できる。
C:5周にいたってもカスレの状態であった。
【0056】
(高温経時安定性の評価方法)
得られた各筆記具用インク組成物を200cc蓋付きガラス製瓶に入れ、50℃、2か月保存した後、インク下部の沈降物の発生を、以下の評価基準で目視にて確認した。
評価基準:
A:インク下部に沈降物が見られない。
B:インク下部に若干の沈降物が見られる。
C:インク下部に多量の沈降物が見られる。
【0057】
【0058】
上記表1を考察すると、本発明範囲となる実施例1~14は、本発明の範囲外となる比較例1~3に較べ、筆記性能を低下させることなく、高温での経時安定性があり、耐光性とペン先のノンドライ性を高度に両立した筆記具用水性インク組成物となることが確認された。