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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024124736
(43)【公開日】2024-09-13
(54)【発明の名称】非破壊検査装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 23/222 20060101AFI20240906BHJP
   G21K 1/00 20060101ALI20240906BHJP
   G21K 5/02 20060101ALI20240906BHJP
   G21K 5/08 20060101ALI20240906BHJP
   H05H 6/00 20060101ALI20240906BHJP
   G01T 1/17 20060101ALN20240906BHJP
   G21G 4/02 20060101ALN20240906BHJP
【FI】
G01N23/222
G21K1/00 N
G21K5/02 N
G21K5/08 N
H05H6/00
G01T1/17 H
G21G4/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023032620
(22)【出願日】2023-03-03
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 添付書面(1)-1 公開Aで用いた資料 添付書面(1)-2 公開Aの集会を通知するURLのコピー 添付書面(1)-3 公開Aの集会のプログラム 添付書面(3) 公開Cの論文
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和4年度、国土交通省東北地方整備局、「中性子によるコンクリート塩分濃度非破壊検査の技術開発」に関する業務、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】503359821
【氏名又は名称】国立研究開発法人理化学研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100097515
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 実
(74)【代理人】
【識別番号】100136700
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 俊博
(72)【発明者】
【氏名】若林 泰生
(72)【発明者】
【氏名】大竹 淑恵
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼村 正人
(72)【発明者】
【氏名】池田 裕二郎
【テーマコード(参考)】
2G001
2G085
2G188
【Fターム(参考)】
2G001AA04
2G001BA02
2G001CA02
2G001DA02
2G001DA03
2G001DA06
2G001FA22
2G001GA01
2G001GA08
2G001GA13
2G001JA06
2G001JA14
2G001KA01
2G001LA03
2G001NA04
2G001QA04
2G001SA04
2G001SA10
2G085AA03
2G085EA10
2G188BB04
2G188CC08
2G188CC28
2G188CC29
2G188EE01
(57)【要約】
【課題】運搬や配置が容易になるように小型化かつ軽量化された非破壊検査装置により、検査対象物内の対象成分を検出できるようにする。
【解決手段】非破壊検査装置10は、中性子発生部11,71cと、ガンマ線検出器12、中性子遮蔽部13、およびガンマ線遮蔽部を備える。中性子発生部11,71cは、中性子を自発的に発生し、又は、DDまたはDT核融合反応により中性子を発生する。中性子遮蔽部13は、中性子発生部11,71cの少なくとも周囲から中性子発生部11,71cを覆って当該周囲で中性子を遮蔽し、中性子発生部11,71cの前方側への中性子の放出を可能にする。中性子遮蔽部13とガンマ線遮蔽部14とガンマ線検出器12は、中性子発生部11,71cの前方向に対する横方向に、この順に互いに横並びに配置されている。ガンマ線遮蔽部14は、中性子遮蔽部13からガンマ線検出器12側へのバックグラウンドガンマ線を遮蔽する。
【選択図】図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中性子を自発的に発生して放出し、又は、DD核融合反応またはDT核融合反応により中性子を発生して放出する中性子発生部と、
前記中性子発生部の少なくとも周囲から当該中性子発生部を覆うことにより当該周囲で前記中性子を遮蔽し、前記中性子発生部の前方側への前記中性子の放出を可能にする中性子遮蔽部と、
前記中性子発生部の前方側の検査対象物に入射した前記中性子により前記検査対象物内で発生したガンマ線を検出し、当該検出に関する検出信号を出力するガンマ線検出器と、を備え、
前記中性子発生部の後方から前方に向かう方向を前方向として、前記中性子遮蔽部と前記ガンマ線検出器とは、前方向に対する横方向に、互いに横並びに配置されている、非破壊検査装置。
【請求項2】
前記中性子発生部は、中性子を自発的に発生して放出する中性子源であり、
前記中性子遮蔽部は、前記中性子源の周囲と後方側から前記中性子源を覆うことにより当該周囲と当該後方側で前記中性子を遮蔽し、前記中性子源の前方側への前記中性子の放出を可能にする、請求項1に記載の非破壊検査装置。
【請求項3】
DD核融合反応またはDT核融合反応を利用して中性子を発生させる中性子発生管を備え、
前記中性子発生部は、前記中性子発生管の先端部の内部に配置され、重水素イオン又は三重水素イオンが衝突することでDD核融合反応またはDT核融合反応により中性子を発生するターゲットであり、
前記中性子遮蔽部は、前記中性子発生管の前記先端部の周囲から当該先端部前記ターゲットを覆う、請求項1に記載の非破壊検査装置。
【請求項4】
前記中性子遮蔽部は、
中性子を減速させる材料で形成され、前記中性子発生部の少なくとも周囲から前記中性子発生部を覆う減速部と、
中性子を反射する材料で形成され、前記減速部の周囲と後方側から前記減速部を覆う反射部と、を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の非破壊検査装置。
【請求項5】
前記中性子遮蔽部は、
中性子を減速させる材料で形成され、前記中性子源の周囲と後方側から当該中性子源を覆う減速部と、
中性子を反射する材料で形成され、前記減速部の周囲と後方側から前記減速部を覆う反射部と、を有し、
前記中性子源は、前記減速部において前記前方向の先端部に配置されている、請求項2に記載の非破壊検査装置。
【請求項6】
前記中性子遮蔽部は、
中性子を減速させる材料で形成され、前記中性子源の周囲と後方側から当該中性子源を覆う減速部と、
中性子を反射する材料で形成され、前記減速部の周囲と後方側から前記減速部を覆う反射部と、を有し、
前記前方向と逆方向に見た場合に、前記中性子源は、前記横方向における前記減速部の中央から前記ガンマ線検出器側にずれた位置に配置されている、請求項2に記載の非破壊検査装置。
【請求項7】
前記減速部は、前記前方向を向き、前記中性子発生部からの前記中性子を放出する中性子放出面を有する、請求項4に記載の非破壊検査装置。
【請求項8】
前記横方向において前記中性子遮蔽部と前記ガンマ線検出器との間に配置され、ガンマ線を遮蔽するガンマ線遮蔽部を備える、請求項4に記載の非破壊検査装置。
【請求項9】
前記中性子発生部と前記中性子遮蔽部と前記ガンマ線遮蔽部と前記ガンマ線検出器は、互いに直接的に又は間接的に結合されている、請求項8に記載の非破壊検査装置。
【請求項10】
前記ガンマ線遮蔽部は、前記前方向から前記ガンマ線検出器の側に傾いた方向を向く斜面を有し、
当該斜面は、前記ガンマ線遮蔽部における前記前方向の側の先端から、前記前方向と反対側に移行するにつれて、前記ガンマ線検出器側に近づくように延びており、
前記ガンマ線検出器の前側部分と前記減速部の前側部分の両方に接する仮想平面を基準平面として、
前記斜面上の各位置は、基準平面上に位置するか、若しくは、基準平面よりも前方側に位置する、請求項8に記載の非破壊検査装置。
【請求項11】
前記横方向において前記中性子遮蔽部と前記ガンマ線遮蔽部との間に配置され、中性子を吸収する材料で形成された第1の中性子吸収部を備える、請求項8に記載の非破壊検査装置。
【請求項12】
中性子を吸収する材料で形成され前記ガンマ線検出器を前方側から覆うように前記横方向に延びる前方吸収部と、中性子を吸収する材料で形成され前記ガンマ線検出器を横方向に前記中性子遮蔽部側から覆うように前記前方向に延びる側方吸収部と、を有する第2の中性子吸収部を備え、
前記側方吸収部は、前記横方向において、前記ガンマ線検出器と前記ガンマ線遮蔽部との間に配置されている、請求項8に記載の非破壊検査装置。
【請求項13】
前記中性子発生部と前記中性子遮蔽部と前記ガンマ線遮蔽部と前記ガンマ線検出器の位置を調節するための位置調節機構と、
前記中性子発生部と前記中性子遮蔽部と前記ガンマ線遮蔽部と前記ガンマ線検出器を前記位置調節機構を介して支持する基体と、を備え、
前記位置調節機構は、前記前方向と平行な方向において、前記中性子発生部と前記中性子遮蔽部と前記ガンマ線遮蔽部と前記ガンマ線検出器の位置を前記基体に対して調節可能である、請求項8に記載の非破壊検査装置。
【請求項14】
前記中性子発生部、前記中性子遮蔽部、および前記ガンマ線遮蔽部と、前記ガンマ線検出器との一方の位置を、前記中性子発生部、前記中性子遮蔽部、および前記ガンマ線遮蔽部と、前記ガンマ線検出器との他方に対して前記前方向と平行な方向において調節可能な位置調節機構と、を備える、請求項8に記載の非破壊検査装置。
【請求項15】
前記中性子発生部と前記中性子遮蔽部と前記ガンマ線遮蔽部と前記ガンマ線検出器の前側または後側への傾きを調節可能な傾き調節機構を備える、請求項8に記載の非破壊検査装置。
【請求項16】
前記ガンマ線検出器と、前記中性子遮蔽部およびガンマ線遮蔽部との前記横方向の距離を調節可能にする距離調節機構を備える、請求項8に記載の非破壊検査装置。
【請求項17】
前記ガンマ線検出器にガンマ線が入射すると、前記ガンマ線検出器は、当該ガンマ線のエネルギーを示す前記検出信号を出力し、
前記ガンマ線検出器からの各前記検出信号に基づいて、ガンマ線の各エネルギーにおけるガンマ線の検出量を示す検出データを生成する検出量計測装置を備え、
前記ガンマ線検出器における前記前方向の先端部から見た場合に、前記前方向から前記中性子遮蔽部側に傾いた斜め前方に位置する領域を、検査対象物からのガンマ線の進入領域として、
少なくとも前記進入領域を除いた前記ガンマ線検出器の周囲から前記ガンマ線検出器を覆う副検出器を備え、
前記副検出器にガンマ線が入射すると、前記副検出器は、入射信号を出力し、
前記検出信号と前記入射信号が同時に出力された場合には、前記検出量計測装置は、当該検出信号を前記検出データに反映させないように設定可能である、請求項1に記載の非破壊検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検査対象物に中性子を入射することにより検査対象物内で生じたガンマ線に基づいて、検査対象物の健全性(例えば、検査対象物内の対象成分の有無または濃度)等を検査する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
道路や橋梁などのインフラストラクチャー構造物(以下でインフラ構造物という)の劣化要因のひとつに塩害がある。塩害は、沿岸からの海風に含まれる塩分、または、寒冷地や山間部で散布される凍結防止剤に含まれる塩分により引き起こされる。このような塩分が、例えばインフラ構造物を構成するコンクリート構造物に浸透する。その結果、コンクリート構造物内の鉄筋の周囲において、塩化物イオン濃度が限界値(1.2~2.5kg/mの範囲内の値)を超えると、鉄筋の腐食が始まって進行することでコンクリート構造物が劣化してしまう。
【0003】
そのため、コンクリート構造物内の塩分濃度を検査し、腐食が始まる前に補修することが重要である。このような補修により、コストの削減やコンクリート構造物(例えば上記のような橋梁)の長寿命化につなげることができる。
【0004】
コンクリート構造物内における塩分などの対象成分の有無や濃度を非破壊的に検査可能な非破壊検査装置が特許文献1、2に開示されている。特許文献1、2の非破壊検査装置では、次のような検査が可能である。検査対象物に中性子を入射させる。これにより、検査対象物において、当該中性子によって対象成分に由来するガンマ線が発生する。当該ガンマ線を検出し、その検出結果に基づいて、対象成分(例えば塩分)が存在する深さを特定し、その深さでの対象成分の濃度を求めることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2019/198260号
【特許文献2】特開2021-179345号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述のような非破壊検査装置によりインフラ構造物の検査を行う場合には、非破壊検査装置を、現場に運搬する必要がある。また、現場で、インフラ構造物における多数の箇所を検査するためには、各検査箇所へ非破壊検査装置を配置する必要がある。このような非破壊検査装置の運搬や配置を容易にするために、小型で軽量の非破壊検査装置が望まれる。
【0007】
そこで、本発明の目的は、運搬や配置が容易になるように小型化かつ軽量化された非破壊検査装置により、検査対象物内の対象成分を検出できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の目的を達成するため、本発明による非破壊検査装置は、中性子発生部と、中性子遮蔽部と、ガンマ線検出器と、ガンマ線遮蔽部を備えるものであってよい。中性子発生部は、中性子を自発的に発生して放出し、又は、DD核融合反応またはDT核融合反応により中性子を発生して放出する。前記中性子遮蔽部は、前記中性子発生部の少なくとも周囲から当該中性子発生部を覆うことにより当該周囲で前記中性子を遮蔽し、前記中性子発生部の前方側への前記中性子の放出を可能にする。前記ガンマ線検出器は、前記中性子発生部の前方側の検査対象物に入射した前記中性子により前記検査対象物内で発生したガンマ線を検出し、当該検出に関する検出信号を出力する。前記中性子発生部の後方から前方に向かう方向を前方向として、前記中性子遮蔽部と前記ガンマ線遮蔽部と前記ガンマ線検出器は、前方向に対する横方向に、この順に互いに横並びに配置されている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によると、運搬や配置が容易になる程度に小型化かつ軽量化された非破壊検査装置により、検査対象物内の対象成分を検出できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1A】本発明の実施形態による非破壊検査装置の構成例を示す。
図1B図1Aの1B-1B矢視平面図である。
図1C図1Aの1C-1C水平断面図である。
図1D】ガンマ線遮蔽部の形状の説明図である。
図2】非破壊検査装置のより詳しい構成図である。
図3A-3B】実施例の非破壊検査装置における各部の寸法を示す。
図4】実施例の非破壊検査装置により得られたガンマ線のエネルギースペクトルを示す。
図5】変更例1による非破壊検査装置の構成例を示す。
図6A-6B】変更例2による非破壊検査装置の構成例1を示す。
図7A-7C】変更例2による非破壊検査装置の構成例2を示す。
図8A-8C】変更例2による非破壊検査装置の構成例3を示す。
図9A-9C】変更例2による非破壊検査装置の構成例4を示す。
図10】変更例3による非破壊検査装置の構成例を示す。
図11A-11C】変更例4による非破壊検査装置における中性子源の配置例を示す。
図12A】変更例5による非破壊検査装置の構成例を示す。
図12B図12Aの12B-12B水平断面図である。
図12C】変更例5による非破壊検査装置の他の構成例を示す。
図12D】変更例5による非破壊検査装置の他の構成例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、各図において共通する部分には同一の符号を付し、重複した説明を省略する。
【0012】
図1Aは、本発明の実施形態による非破壊検査装置10の構成例を示す。図1Bは、図1Aの1B-1B矢視平面図であり、図1Cは、図1Aの1C-1C水平断面図である。なお、図1Aは、図1Cの1A-1A断面図である。
【0013】
非破壊検査装置10は、検査時において、検査対象物1の表面1aへ中性子線を入射し、これにより検査対象物1において発生したガンマ線を検出し、当該検出に関する検出信号を生成し、検出信号に基づいて検出データを得るためのものである。この検出データは、後述するようにガンマ線のエネルギースペクトルであってよい。なお、本明細書において、検査とは、非破壊検査装置10により、検査対象物1の表面1aに中性子を入射させ、これにより検査対象物1において発生したガンマ線を検出することを意味する。
【0014】
得られた検出データに基づいて、検査対象物1における対象成分の有無を判断し、また、検査対象物1における各深さ又は特定深さでの対象成分の濃度を求めることができる。対象成分は、検査対象物1に入射された中性子との反応により対象成分特有の特定のエネルギーを有するガンマ線を放出する成分である。
【0015】
検査対象物1は、鉄筋を内部に含むコンクリート構造物(例えば橋梁を構成するコンクリート構造物)であり、対象成分は塩分(塩素:chlorine)であってよい。対象成分が塩分である場合、塩分は、例えば、安定して存在する塩素Clの同位体35Clであってよい。なお、検査対象物1と対象成分は、コンクリート構造物と塩分の組み合わせに限定されない。すなわち、検査対象物1はコンクリート構造物に限定されない。対象成分も、塩素Clに限定されず、例えば、カルシウム(主に40Ca)、ケイ素(主に28Si)、又は水素(H)であってもよい。
【0016】
(非破壊検査装置の各構成要素)
非破壊検査装置10は、中性子源11、ガンマ線検出器12、中性子遮蔽部13、ガンマ線遮蔽部14、第1および第2の中性子吸収部15,16を備える。
【0017】
中性子源11は、中性子(中性子線)を自発的に発生して放出するRI(radioisotope)中性子源である。このRI線源は、自発核分裂中性子源であってよい。RI線源は、カリホルニウム(252Cf)であってよい。ただし、本発明によると、RI線源は、これに限定されず、例えばAm-Be中性子源であってもよい。なお、中性子源11は、本発明の中性子発生部を構成する。
【0018】
ガンマ線検出器12は、検査対象物1において中性子源11からの中性子により発生したガンマ線を検出して、当該検出に関する検出信号を出力する。すなわち、ガンマ線検出器12は、自身にガンマ線が入射することによって当該ガンマ線を検出し、ガンマ線を検出する度に検出信号を出力する。この検出信号は、当該ガンマ線がガンマ線検出器12に入射されたことを示すとともに、当該ガンマ線のエネルギーを示す情報を含む。例えば、この検出信号は、当該ガンマ線のエネルギーに応じた波高値を有する波形信号であってよい。
【0019】
ガンマ線検出器12は、ゲルマニウム半導体により構成されたゲルマニウム半導体検出器であってよい。この場合、ガンマ線検出器12は、極低温液(例えば液体窒素)により冷却された状態で使用されてよい。すなわち、ガンマ線検出器12は、図1Aに示すように、デュワー17内の極低温液に浸されたコールドフィンガー(銅製の棒)18を介して当該極低温液により冷却された状態で使用されてよい。なお、このように極低温液によりゲルマニウム半導体検出器12を冷却する構成の代わりに、ゲルマニウム半導体検出器12を電気的に冷却する電気冷却器が設けられてもよい。この場合、当該電気冷却器は、後述の支持体31に支持されてよい。
【0020】
なお、ガンマ線検出器12は、ゲルマニウム以外の半導体材料(例えば、Si、CdTe、CdZnTe)により構成されてもよいし、シンチレーション検出器(例えば、NaI(Tl)、BGO、CsI)により構成されてもよい。
【0021】
中性子遮蔽部13は、中性子を遮蔽する材料で形成されている。中性子遮蔽部13は、中性子源11の周囲と後方側から中性子源11を覆うことで当該周囲と当該後方側で中性子を遮蔽し、中性子源11の前方側への中性子の放出を可能にする。この状態で、中性子源11は中性子遮蔽部13(後述の減速部13a)に取り付けられていてよい。中性子源11の後方から前方に向かう方向を前方向として、ガンマ線検出器12と中性子遮蔽部13とは、前方向に対する横方向(図1Aの左右方向)に、互いに横並びに配置されている。
【0022】
なお、本明細書において、前方向は、後述する減速部13aの中性子放出面13a1が向く方向(中性子放出面13a1に直交する方向)であってよく、横方向は、前方向に直交する方向であってよい。また、本明細書において、非破壊検査装置10において、ある構成要素(例えば中性子源11)の周囲から当該ある構成要素を別の構成要素(例えば中性子遮蔽部13)が覆うとは、前方向と直交する各方向(例えば前方向と直交する全ての方向)において、当該ある構成要素が当該別の構成要素に覆われていることを意味してよい。
【0023】
中性子遮蔽部13は、減速部13aと反射部13bとを有するように構成されてよい。
【0024】
減速部13aは、中性子を減速させる材料(中性子のエネルギーを低くする中性子減速材)で形成されている。中性子減速材は、中性子を吸収し難い材料であってよい。中性子減速材は、例えばポリエチレンであるが、他の材料であってもよい。なお、中性子減速材は、後述する第1の中性子吸収部15の材料よりも中性子を吸収し難い材料であってよい。
【0025】
減速部13aは、中性子源11の周囲と後方側から中性子源11を覆う。また、減速部13aにおける前方向の先端部に中性子源11が配置されてよい。この場合、中性子源11は、前方側(前方向の側)からは減速部13aによって覆われなくてよい。この場合、中性子源11は、検査時において、前方向に検査対象面の表面1aに露出してよい。
【0026】
減速部13aは、前方向を向く中性子放出面13a1を有する。中性子放出面13a1は、中性子源11から放出された中性子のうち、減速部13aを通って反射部13bへ進行し反射部13bで反射して減速部13aに戻ることを1回または複数回行った中性子を前方側に放出する。
【0027】
より詳しくは、中性子放出面13a1には、窪み13a2が形成されており、この窪み13a2に中性子源11が配置されてよい。これにより、中性子源11は、その周囲と後方側が減速部13aに覆われている。また、窪み13a2は、中性子源11と整合した形状を有していてよく、前方に開口していてよい。中性子源11は、減速部13aに接合されていてよい。
【0028】
前方向と逆方向(すなわち後方向)に見た場合に、中性子源11は、横方向における減速部13aの中央からガンマ線検出器12側にずれた位置に配置されている。これにより、中性子源11とガンマ線検出器12との距離が短くなる。ただし、横方向における中性子源11の位置は、これに限定されず、例えば、横方向における減速部13aの中央に位置してもよい。なお、中性子源11とガンマ線検出器12は、前方向と横方向(図1Aの左右方向)の両方に平行な同一仮想平面上に配置されてよい。
【0029】
反射部13bは、中性子を反射する材料である中性子反射材で形成されている。中性子反射材は、中性子を吸収し難い材料であってよい。中性子反射材は、実施例ではグラファイト(黒鉛)であるが、他の材料であってもよい。なお、中性子反射材は、減速部13aの材料よりも中性子を反射し易い材料であってよい。また、中性子反射材は後述の第1の中性子吸収部15の材料よりも中性子を吸収し難い材料であってよい。
反射部13bは、減速部13aの周囲と後方側から減速部13aを覆う。
【0030】
前方向を向く減速部13aの前面(すなわち中性子放出面13a1)と、前方向を向く反射部13bの前面13b1は、実質的に同一仮想面(平面)を構成してよい。この場合、当該同一仮想面上に、前方向における中性子源11の先端(前面)が位置してよい。なお、各前面13a1,13b1は、平面であってよいが、これに限定されず、曲面であってもよい。
【0031】
ガンマ線遮蔽部14は、横方向において中性子遮蔽部13とガンマ線検出器12との間に配置され、ガンマ線を遮蔽する。ガンマ線遮蔽部14は、ガンマ線を遮蔽する材料で形成されている。当該材料は、例えば鉛であってよいが、他の材料であってもよい。
【0032】
ガンマ線遮蔽部14は、図1Aのように、その前端面としての斜面14aを有していてよい。斜面14aは、前方向からガンマ線検出器12の側に傾いた方向を向いている。また、斜面14aは、ガンマ線遮蔽部14における前方向の側の先端から、前方向と反対側に移行するにつれて、ガンマ線検出器12側に近づくように延びている。言い換えると、ガンマ線遮蔽部14の前方側部分において、前方向に直交する平面によるガンマ線遮蔽部14の断面の面積は、前方側に移行するにつれて次第に小さくなっている。
【0033】
第1の中性子吸収部15は、横方向において中性子遮蔽部13とガンマ線遮蔽部14との間に配置されている。第1の中性子吸収部15は、中性子を吸収する材料で形成されている。当該材料は、炭化ホウ素(BC)であってよい。例えば、第1の中性子吸収部15は、BCを含むゴムで形成されてよい。ただし、第1の中性子吸収部15の材料は、中性子を吸収する材料であれば、BC以外のものであってもよい。
【0034】
第2の中性子吸収部16は、ガンマ線検出器12を前方側から覆うとともにガンマ線検出器12を中性子遮蔽部13側から覆う。第2の中性子吸収部16は、前方吸収部16aと側方吸収部16bを備える。前方吸収部16aは、ガンマ線検出器12を前方側から覆うように横方向に延びる。側方吸収部16bは、ガンマ線検出器12を横方向に中性子遮蔽部13側から覆うように前方向に延びる。前方吸収部16aにおける、中性子遮蔽部13側の横方向の端部は、側方吸収部16bにおける前側の端部に接続されている。なお、前方吸収部16aを省略してもよく、この場合、第2の中性子吸収部16は、側方吸収部16bからなる。
【0035】
第2の中性子吸収部16は、ガンマ線遮蔽部14よりもガンマ線検出器12側に配置されてよい。第2の中性子吸収部16(すなわち前方吸収部16aと側方吸収部16b)は、中性子を吸収する材料で形成されている。また、当該材料は、実施例では、中性子を吸収しても、入射した中性子によりガンマ線を発生させ難い材料である。この場合、当該材料は、フッ化リチウム(LiF)であってよい。ただし、第2の中性子吸収部16の材料は、LiF以外の適切なものであってもよい。
【0036】
上述した、前方向を向く中性子遮蔽部13の前面(前面13a1,13b1)と、ガンマ線遮蔽部14の前端(前方向の端)と、前方向を向く第1の中性子吸収部15の前面15aと、前方向を向く前方吸収部16aの前面16a1とが、同一仮想面(平面)に実質的に全体が含まれるように非破壊検査装置10の前面を構成してよい。これにより、非破壊検査装置10の前面全体を、検査対象物1の表面1a1に近接させ易くなる。
【0037】
本実施形態によると、ガンマ線検出器12と中性子遮蔽部13(減速部13a)とガンマ線遮蔽部14と第1の中性子吸収部15と側方吸収部16bとは、少なくともそれぞれの一部が横方向に互いに横並びに配置されている。すなわち、ガンマ線検出器12と中性子遮蔽部13(減速部13a)とガンマ線遮蔽部14と第1の中性子吸収部15と側方吸収部16bは、横方向に、少なくとも部分的に互いに重複している。
【0038】
この場合、横方向から見た場合、中性子遮蔽部13の範囲内に、ガンマ線検出器12とガンマ線遮蔽部14と中性子遮蔽部13と第1の中性子吸収部15と側方吸収部16bの各々の全体または一部が含まれるように、これらが互いに横並びに配置されていてよい。
【0039】
(ガンマ線遮蔽部の寸法、形状など)
ガンマ線検出器12を、減速部13aにおけるどの視点(位置)から見ても、ガンマ線検出器12の全体がガンマ線遮蔽部14に隠れるように、ガンマ線遮蔽部14の寸法と形状と配置が設定されてよい。このようなガンマ線遮蔽部14の前端面(斜面)14aと後端面14bの位置を、図1Dに基づいて説明する。図1Dは、図1Aに相当するが、前端面(斜面)14aと後端面14bの説明図である。
【0040】
ガンマ線検出器12の前側部分と減速部13aの前側部分の両方に接する仮想平面を前側の基準平面P1(図1Dの二点鎖線)とする。ガンマ線遮蔽部14の斜面14a上の各位置は、基準平面P1に含まれるか、若しくは、基準平面P1よりも前方側に位置してよい。この場合、斜面14aは、基準平面P1に全体が含まれるように形成されてもよい。
【0041】
同様に、ガンマ線検出器12の後側部分と減速部13aの後側部分の両方に接する仮想平面を後側の基準平面P2(図1Dの二点鎖線)とする。ガンマ線遮蔽部14の後端面14b上の各位置は、基準平面P2に含まれるか、若しくは、基準平面P2よりも後方側に位置してよい。この場合、後端面14bは、基準平面P2に全体が含まれるように形成されてもよい。
【0042】
また、ガンマ線検出器12を、減速部13aにおけるどの視点(位置)から見ても、ガンマ線検出器12の全体がガンマ線遮蔽部14に隠れていれば、図1Cのように、ガンマ線遮蔽部14の縦方向寸法を、減速部13aの縦方向寸法よりも小さくしてもよい。これにより、減速部13aからガンマ線検出器12へのガンマ線を遮蔽しつつ、検査対象物1からガンマ線検出器12に入射するガンマ線の量を増やすことができる。この場合、ガンマ線遮蔽部14の縦方向寸法は、図1Cのようにガンマ線検出器12側へ横方向に移行するにつれて小さくなってもよいし、一定であってもよい。ただし、ガンマ線遮蔽部14の縦方向寸法、このような寸法に限定されず、減速部13aの縦方向寸法以上であってもよい。
【0043】
なお、後述の変更例1のように、ガンマ線検出器12と中性子遮蔽部13およびガンマ線遮蔽部14との横方向距離を調節可能な距離調節機構25を設ける場合には、当該横方向距離がその調節可能範囲内での最大値となっている状態で、ガンマ線検出器12を、減速部13aにおけるどの視点(位置)から見ても、ガンマ線検出器12の全体がガンマ線遮蔽部14に隠れるように、ガンマ線遮蔽部14の寸法と形状と配置が上述のように設定されてよい。
【0044】
(ガンマ線検出器の寸法)
ガンマ線検出器12の横方向寸法は、中性子遮蔽部13とガンマ線遮蔽部14と第1の中性子吸収部15と側方吸収部16bの各々の横方向寸法よりも小さくてよい。同様に、ガンマ線検出器12の前方向寸法は、中性子遮蔽部13とガンマ線遮蔽部14と第1の中性子吸収部15と側方吸収部16bの各々の前方向寸法よりも小さくてよい。この場合に、横方向から見た場合に、ガンマ線検出器12の全体または一部が、中性子遮蔽部13とガンマ線遮蔽部14と第1の中性子吸収部15と側方吸収部16bの各々の範囲内に含まれるように位置してよい。この場合、ガンマ線検出器12における後側部分は、中性子遮蔽部13よりも後方側に位置していてもよい。
【0045】
(各部同士の結合)
ガンマ線検出器12と中性子遮蔽部13とガンマ線遮蔽部14と第1および第2の中性子吸収部15,16とは、直接又は他の部材を介して互いに結合されていることにより、互いに一体化されていてよい。
【0046】
(ガンマ線検出器からの検出信号を処理する構成)
非破壊検査装置10は、上述の構成に加えて、検出信号を処理するために検出量計測装置21とデータ処理装置23を更に備えてよい。
【0047】
検出量計測装置21には、ガンマ線検出器12が生成した各検出信号が入力される。この場合、ガンマ線検出器12が生成して出力する各検出信号は、プリアンプ22を介して検出量計測装置21に入力されてよい。これにより、プリアンプ22で増幅された各検出信号が検出量計測装置21に入力される。
【0048】
検出量計測装置21は、ガンマ線検出器12からの各検出信号(例えば各検出信号の波高値)に基づいて、ガンマ線の各エネルギーにおけるガンマ線の検出量(検出数)を示す検出データを生成する。検出データは、ガンマ線のエネルギースペクトルであってよい。ガンマ線のエネルギースペクトルは、ガンマ線の各エネルギーについてガンマ線の検出量を表わすデータである。ガンマ線のエネルギースペクトルは、検査を所定の計測時間(例えば10分以上)にわたって行うことにより得られるものであってよい、ガンマ線検出器12に作動電圧を印加する装置(図示せず)が、検出量計測装置21と一体化されていてもよいし、検出量計測装置21とは別に設けられていてもよい。
【0049】
データ処理装置23には、検出量計測装置21からエネルギースペクトルが入力される。データ処理装置23は、当該エネルギースペクトルに基づいて、検査対象物1における対象成分(例えば塩素)が存在する深さを求めてもよいし、当該深さ又は特定の深さでの対象成分の濃度を求めてもよい。ここで、データ処理装置23が、エネルギースペクトルに基づいて、対象成分が存在する深さや、当該深さ又は特定の深さでの対象成分の濃度を求める方法は、特許文献1又は2に記載されているので、その説明を省略する。
【0050】
(コンプトン散乱したガンマ線の検出を排除する構成)
非破壊検査装置10は、上述の構成に加えて、ガンマ線検出器12においてコンプトン散乱したガンマ線のバックグラウンドが低減された検出データを得るために、副検出器24を更に備えてよい。
【0051】
ここで、ガンマ線検出器12における前方向の先端部から見た場合に、前方向から中性子遮蔽部13側に傾いた斜め前方に位置する領域R(例えば図1Aの領域R)を、検査対象物1からのガンマ線の進入領域とする。副検出器24は、少なくとも進入領域Rを除いたガンマ線検出器12の周囲からガンマ線検出器12を覆う。すなわち、副検出器24は、ガンマ線検出器12を前方向に通過する中心軸を囲むように配置されるが、進入領域Rには存在しない。したがって、検査対象物1内から進入領域Rを通ってガンマ線検出器12に向かうガンマ線は、副検出器24に入射することなく、ガンマ線検出器12に入射する。
【0052】
なお、前方向と反対方向におけるガンマ線検出器12の真後ろにも、副検出器24が設けられてよい。前方向におけるガンマ線検出器12の正面には、副検出器24を設けなくてよい。ただし、ガンマ線検出器12の正面(前側)にも、副検出器24を設けてもよい。
【0053】
副検出器24にガンマ線が入射すると、副検出器24は、入射信号を検出量計測装置21に入力する。また、上述したように、ガンマ線検出器12にガンマ線が入射すると、ガンマ線検出器12は、上述の検出信号を検出量計測装置21に入力する。検出量計測装置21は、検出信号と入射信号が同時に自身に入力された場合には、当該検出信号を破棄して、当該検出信号を検出データに反映させない。これにより、ガンマ線検出器12に入射したガンマ線のうち、コンプトン散乱してガンマ線検出器12外の副検出器24に入射したガンマ線の検出が上述の検出データに反映されなくなる。これにより、検出データに基づく核種の同定の確からしさが高くなる。なお、検出量計測装置21の処理を、データ処理装置23で行ってもよい。すなわち、検出量計測装置21は、データ処理装置23に組み込まれていてもよい。
【0054】
また、人が適宜の操作部(ボタン又はタッチパネルなど)を操作して、検出量計測装置21のモードを次の第1モードと第2モードのいずれにも設定可能であってよい。第1モードに設定された検出量計測装置21は、検出信号と入射信号が同時に自身に入力された場合には、当該検出信号を検出データに反映させない。第2モードに設定された検出量計測装置21は、検出信号と入射信号が同時に自身に入力された場合でも、当該検出信号を検出データに反映させる。
【0055】
副検出器24は、ゲルマニウム酸ビスマス(BGO)により形成されたシンチレータであってよいが、入射したガンマ線を検出できる構成であれば、これに限定されない。なお、副検出器24は、外部からのガンマ線を遮蔽する材料(例えばBGO)により形成されたものであってよい。これにより、副検出器24は、バックグラウンドガンマ線(例えば減速部13aで発生したガンマ線)が、ガンマ線検出器12に入射することを抑える機能も兼ね備える。
【0056】
(非破壊検査装置の重量)
中性子源11、ガンマ線検出器(ゲルマニウム半導体検出器)12、中性子遮蔽部13、ガンマ線遮蔽部14、第1の中性子吸収部15、および第2の中性子吸収部16を合わせたものを、主要構造部とする。この主要構造部の重量は、後述の実施例のように20kg未満10kg以上(又は15kg以上)であってよいが、この範囲に限定されず、例えば、100kg未満50kg以上、50kg未満30kg以上、または、30kg未満20kg以上であってもよい。この場合、主要構造部を構成する第2の中性子吸収部16は、前方吸収部16aと側方吸収部16bの合わせたものであってもよいし、前方吸収部16aを省略した場合には側方吸収部16bのみであってもよい。
【0057】
なお、副検出器24の重さは、例えば20kg程度であり、液体窒素デュワー17の重さは、例えば7kg~8kg程度であるので、主要構造部とこれらの合計重量を、例えば50kg未満にすることができる。
【0058】
(非破壊検査装置の各構成要素を支持する構成)
図2は、図1Aにおいて非破壊検査装置10をより詳しく示した図である。図2の例では、上述した前方向は、鉛直上方向であり、検査対象物1の表面1aは、検査対象物1の下面である。
【0059】
図2に示すように、非破壊検査装置10は、上述した構成に加えて、支持体31を更に備えてよい。支持体31は、中性子遮蔽部13とガンマ線検出器12とガンマ線遮蔽部14と第1および第2の中性子吸収部15,16などを支持する。ガンマ線検出器12と中性子遮蔽部13とガンマ線遮蔽部14と第1および第2の中性子吸収部15,16は、支持体31に取り付けられ(例えば固定され)ていることにより、互いに一体化されていてよい。なお、検出量計測装置21とデータ処理装置23も、図2のように、支持体31に支持されてよい。
【0060】
(位置調節機構)
図2に示すように、非破壊検査装置10は、上述した構成に加えて、基体32と位置調節機構33を更に備えてよい。
【0061】
基体32は、位置調節機構33を介して支持体31を支持することにより、ガンマ線検出器12と中性子遮蔽部13とガンマ線遮蔽部14と第1および第2の中性子吸収部15,16などを支持する。図2の例では、基体32は、台34に設置されており、台34は、例えば、車両に設けられた多関節の可動式ブームの先端部に結合されており、当該可動式ブームの動作により検査対象物1(例えば橋梁)の下面1aの真下に移動させられてよい。台34には、非破壊検査装置10に加えて人も乗れるようになっていてもよい。
【0062】
位置調節機構33は、前方向と平行な方向において、支持体31の位置を基体32に対して調節可能である。これにより、位置調節機構33は、ガンマ線検出器12と中性子遮蔽部13とガンマ線遮蔽部14と第1および第2の中性子吸収部15,16の位置を、基体32に対して調節することで、検査対象物1の表面1aに対して調節可能である。
【0063】
前方向が鉛直上方向である場合には、位置調節機構33は、図2のように、鉛直方向に伸縮するジャッキであってよい。ジャッキの伸縮は、操作部により操作されてよい。人が、操作部(図示せず)を操作することにより、当該操作に応じた量だけジャッキが伸縮する。ジャッキは、油圧ジャッキであっても電動ジャッキであってもよく、上記操作部は、ベダル、レバー、ボタンなどであってよい。操作部は、ジャッキに設けられてもよいし、ジャッキとは別体で設けられ無線によりジャッキを動作させてもよい。
【0064】
なお、位置調節機構33は、前方向と平行な方向において、支持体31を移動させることで支持体31の位置を基体32に対して調節可能であれば、ジャッキに限定されず、他の構成を有するものであってもよい。例えば、位置調節機構33は、前方向と平行な方向に支持体31を移動させる適宜の直動アクチュエータにより構成されてもよい。また、本願において、前方向は、鉛直上方向でなくてもよく、水平方向であっても、水平方向に対して斜めの方向であっても、鉛直下方向であってもよい。
【0065】
(実施例)
実施例の非破壊検査装置10では、中性子源11として、3.7MBqのカリホルニウム(252Cf)を用いた。実施例の非破壊検査装置10では、減速部13aはポリエチレンで形成され、反射部13bはグラファイト(黒鉛)で形成され、ガンマ線遮蔽部14は鉛で形成され、第1の中性子吸収部15は炭化ホウ素を含むゴムで形成され、第2の中性子吸収部16はフッ化リチウムで形成された。
【0066】
図3A図3Bは、それぞれ、図1A図1Bに対応するが、実施例の非破壊検査装置10における各部の寸法を示す。図3A図3Bに示すように、実施例の非破壊検査装置10は、横方向の寸法が500mm程度の小型に構成された。また、実施例の非破壊検査装置10において、中性子源11、ガンマ線検出器12、中性子遮蔽部13、ガンマ線遮蔽部14、第1の中性子吸収部15、および第2の中性子吸収部16、液体窒素デュワー17、およびコールドフィンガー18のそれぞれの重量の合計は30kg未満になり、当該合計に、副検出器24の重量を加えた値は、50kg未満になる。
【0067】
更に、コンクリート構造物である検査対象物1において、表面1aから0cm~3cmの深さで、濃度が3.0kg/mである対象成分としての塩素が存在する場合に、塩素の存在と、塩素(35Cl)の濃度を、実施例の非破壊検査装置10により検出することができた。
【0068】
図4は、その際に、検出量計測装置21により得られたガンマ線のエネルギースペクトルを示す。図4において、横軸は、ガンマ線のエネルギーを示し、縦軸は、ガンマ線の検出量(検出数)を示す。図4において、矢印A,Bは、それぞれ、同位体35Clに由来するガンマ線のエネルギー1951keV、1959keVでのカウント数を示す。このエネルギースペクトルに基づいて、データ処理装置23により、0cm~3cmの深さでの塩素の上記濃度が求められた。
【0069】
本発明は上述した実施の形態に限定されず、本発明の技術的思想の範囲内で種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、本発明の実施形態による非破壊検査装置10は、上述した複数の事項の全て有していなくてもよく、上述した複数の事項のうち一部のみを有していてもよい。例えば、副検出器24と前方吸収部16aの一方または両方を省略してもよい。
【0070】
また、以下の変更例1~5のいずれかを単独で採用してもよいし、変更例1~5を適宜に組み合わせて採用してもよい。この場合、以下で述べない点は、上述と同じである。
【0071】
(変更例1)
図5は、変更例1による非破壊検査装置10の構成を示す。上述の実施形態では、中性子源11、中性子遮蔽部13、およびガンマ線遮蔽部14と、ガンマ線検出器12等とは互いに一体で前方向と平行な方向に移動可能であったが、中性子源11、中性子遮蔽部13、およびガンマ線遮蔽部14と、ガンマ線検出器12等との一方(図5の例ではガンマ線検出器12)が、中性子源11、中性子遮蔽部13、およびガンマ線遮蔽部14と、ガンマ線検出器12等との他方に対して、前方向と平行な方向と横方向のうち少なくとも一方の方向に移動可能であってもよい。すなわち、非破壊検査装置10は、前方向と平行な方向に関する後述の第2の位置調節機構33bと、横方向に関する後述の距離調節機構25のうち、少なくとも一方(図5の例では両方)を更に備えてよい。
【0072】
本変更例1では、上述の支持体31の代わりに、第1および第2の支持体31a,31bが設けられる。第1の支持体31aは、中性子遮蔽部13とガンマ線遮蔽部14と第1の中性子吸収部15を支持する。中性子遮蔽部13とガンマ線遮蔽部14と第1の中性子吸収部15は、第1の支持体31aに取り付けられていることにより、互いに一体化されていてよい。第2の支持体31bは、ガンマ線検出器12と第2の中性子吸収部(およびデュワー17と副検出器24)を支持する。ガンマ線検出器12と第2の中性子吸収部16(およびデュワー17と副検出器24)は、第2の支持体31bに取り付けられていることにより、互いに一体化されていてよい。
【0073】
また、本変更例1では、非破壊検査装置10は、上述の基体32と位置調節機構33を第1の基体32aと第1の位置調節機構33aとして備えるとともに、第2の基体32bを更に備える。第1の基体32aは、第1の位置調節機構33aを介して第2の基体32bを支持する。
【0074】
<第2の位置調節機構>
非破壊検査装置10は、第2の基体32bと第2の位置調節機構33bを更に備えてよい。この場合、第2の基体32bは、第1および第2の支持体31a,31bの一方(図5の例では、第2の支持体31b)を第2の位置調節機構33bを介して支持するとともに、第1および第2の支持体31a,31bの他方を直接支持する。
【0075】
第2の位置調節機構33bは、第1および第2の支持体31a,31bの一方を支持し、前方向と平行な方向において当該一方の位置を、第1および第2の支持体31a,31bの他方に対して調節可能である。これにより、第2の位置調節機構33bは、前方向と平行な方向において、中性子遮蔽部13等とガンマ線検出器12等の一方の位置を、中性子遮蔽部13等とガンマ線検出器12等の他方に対して調節可能である。第2の位置調節機構33bは、上述の実施形態における位置調節機構33と同様にジャッキにより構成されてもよいし、他の構成を有するものであってもよい。
【0076】
<距離調節機構>
非破壊検査装置10は、ガンマ線検出器12と中性子遮蔽部13およびガンマ線遮蔽部14との横方向距離を調節可能にする距離調節機構25を備えてよい。距離調節機構25は、第2の基体32bに設けられてよい。
【0077】
距離調節機構25は、横方向に動くステージやスライド機構によって構成されてよい。このような距離調節機構25は、図5Bのように、案内機構25a(例えばレール)と可動部25b(例えばステージ)を備えてよい。案内機構25aは、第2の基体32bに設けられ、第2の基体32bに対する可動部25bの横方向移動を案内する。可動部25bは、(例えば案内機構25aを介して)第2の基体32bに支持されながら、第2の基体32bに対して横方向に移動可能に構成されている。
【0078】
可動部25bには、第1および第2の支持体31a,31bの一方(図5の例では、第2の支持体31b)が設置される。ここで、当該一方が第2の位置調節機構33bを介して第2の基体32bに支持される場合には、当該一方は、第2の位置調節機構33bを介して可動部25bに設置される。図5Bの例では、可動部25bには、第2の位置調節機構33bを介して第2の支持体31bが設置されている。
【0079】
このような構成により、手動で又は適宜の駆動装置により、可動部25bを横方向にスライドさせることにより、ガンマ線検出器12と中性子遮蔽部13との横方向距離を調節できる。この調節後は、適宜のストッパやロック機構により、可動部25bの位置を保持してよい。
【0080】
なお、変更例1において、第1の位置調節機構33aが省略されてもよい。この場合、例えば、第1の基体32aが更に省略され、第2の基体32bは台34に直接設置されてよい。
【0081】
(変更例2)
本変更例2による非破壊検査装置10は、上述した実施形態の場合の構成に加えて、傾き調節機構を更に備える。傾き調節機構は、中性子遮蔽部13とガンマ線遮蔽部14とガンマ線検出器12の、前側または後側への傾きを調節可能である。このような傾き調節機構36の構成例を、図6A図9Cに基づいて説明する。なお、図6A図9Cにおいて、副検出器24を省略してもよい。
【0082】
図6A図9Cに示す各構成例において、変更例2による非破壊検査装置10は、上述の基体32を第1の基体32aとして備えるとともに、更に第2の基体32bを備えてよい。第1の基体32aは、上述の位置調節機構33を介して第2の基体32bを支持し、第2の基体32bは、傾き調節機構36を介して支持体31を支持する。位置調節機構33により、前方向と平行な方向において、第1の基体32aに対する第2の基体32bの位置が調節可能である。また、傾き調節機構36により、前方側または後方側への支持体31の傾き(第2の基体32bに対する傾き)を調節可能である。すなわち、傾き調節機構36は、前方向と直交する所定方向(例えば横方向)における、支持体31の一端部を、当該一端部と反対側の他端部に対して前方向または後方向にずらすように、支持体31の傾きを調節可能である。
【0083】
このように、傾き調節機構36は、支持体31に支持されている中性子遮蔽部13とガンマ線遮蔽部14とガンマ線検出器12の、前側または後側への傾きを調節可能である。
【0084】
<構成例1>
図6Aは、構成例1による傾き調節機構36を備えた場合の非破壊検査装置10の例を示す。図6Bは、図6Aの6B-6B矢視図である。傾き調節機構36は、第1および第2の軸C1,C2の各々の回りに支持体31を回転可能にすることで、前側または後側への支持体31の傾きを調節可能である。軸C1は、前方向および横方向の両方に直交する方向(以下で単に縦方向ともいう)を向く、軸C2は、横方向を向く。この傾き調節機構36は、揺動体37と、第1および第2の調節部38,39を備える。
【0085】
揺動体37は、図6Bのように、第2の基体32bに対して第1の軸C1回りに揺動可能に、第1の支え部材41を介して第2の基体32bに支持されている。支持体31は、図6Aのように、揺動体37に対して第2の軸C2回りに揺動可能に、第2の支え部材42を介して第2の基体32bに支持されている。
【0086】
第1の調節部38は、ボルト38a、第1および第2のナット38b,38cを備える。ボルト38aに関して、第2の基体32bには、第2の基体32bを前方向に貫通するねじ穴32b1が設けられ、揺動体37には、揺動体37を前方向に貫通する貫通穴37aが設けられている。ボルト38aは、ねじ穴32b1に螺合しつつ、貫通穴37aを貫通するように配置される。第1および第2のナット38b,38cは、揺動体37を前方向に挟むようにボルト38aに螺合する。第1および第2のナット38b,38cを回転させることにより、揺動体37は、第2の基体32bに対して第1の軸C1回りに揺動可能である。例えば、第1のナット38bを緩めて、第2のナット38cを前側又は後側に移動させるように回転させて、第1の軸C1回りの揺動体37の傾きを調節し、その後、揺動体37に対して第1のナット38bを締めて揺動体37の傾きを固定する。なお、揺動体37が第2の基体32bに対して傾くことができるように、貫通穴37aの縦方向寸法は、ボルト38aの断面寸法よりも長くなっている。
【0087】
同様に、第2の調節部39は、ボルト39a、第1および第2のナット39b,39cを備える。ボルト39aに関して、揺動体37には、揺動体37を前方向に貫通するねじ穴37bが設けられ、支持体31には、支持体31を前方向に貫通する貫通穴31pが設けられている。ボルト39aは、ねじ穴37bに螺合しつつ、貫通穴31pを貫通するように配置される。第1および第2のナット39b,39cは、支持体31を前方向に挟むようにボルト39aに螺合する。第1の調節部38の場合と同様に、第1および第2のナット39b,39cを回転させることにより、支持体31は、揺動体37に対して第2の軸C2回りに揺動可能である。なお、支持体31が揺動体37に対して傾くことができるように、貫通穴31pの横方向寸法は、ボルト39aの断面寸法よりも長くなっている。
【0088】
前方向が鉛直上方向である場合には、第1のおよび第2の調節部38,39の各々について、第1のナット38b,39bを省略してもよい。
【0089】
<構成例2>
図7Aは、構成例2による傾き調節機構36を備えた場合の非破壊検査装置10の例を示す。図7Bは、図7Aの7B-7B矢視図である。傾き調節機構36は、前側から見た場合に、互いに離間して配置される複数(図の例では4つ)の連結部51を備える。
【0090】
各連結部51は、取付部材51aと、ボルト51bと、第1および第2のナット51c,51dを備える。取付部材51aは、第2の基体32bに取り付けられる。ボルト51bは、一端部が取付部材51aに結合されている。ボルト51bに関して、支持体31には、支持体31を前方向に貫通する貫通穴31pが形成されている。ボルト51bは、一端部から前側に延びて貫通穴31pを貫通している。第1および第2のナット51c,51dは、支持体31を前方向に挟むようにボルト51bに螺合する。
【0091】
各連結部51に関して、第1および第2のナット51c,51dを回転させることにより、例えば、図7Cのように、前側または後側へ支持体31を傾けることができる。この傾きは、図7Cのように取付部材51aが弾性変形することにより可能であってもよいし、ボルト51bの一端部が取付部材51aに揺動可能に(例えばボールジョイントで)結合されていることにより可能であってもよいまた、支持体31が第2の基体32bに対して傾くことができるように、貫通穴31pの断面寸法は、ボルト51bの断面寸法よりも十分に大きくなっている。ただし、貫通穴31pの断面寸法または形状は、第1および第2のナット51c,51dが通過できない寸法に設定されている。なお、前方向が鉛直上方向である場合には、第1のナット51cを省略してもよい。
【0092】
<構成例3>
図8Aは、構成例3による傾き調節機構36を備えた場合の非破壊検査装置10の例を示す。図8Bは、図8Aの8B-8B矢視図である。傾き調節機構36は、球面部61と複数の調節部62を備える。
【0093】
球面部61は、球を平面で切り取った球冠形状(例えば半球形状)を有する。球面部61の底面(すなわち上記球冠形状の切り口の面)は、支持体31の下面と第2の基体32bの上面の一方(図8Aでは、支持体31)に取り付けられる。球面部61の球面部分の一部は、支持体31の下面と第2の基体32bの上面の他方に設けられた窪み63に嵌っている。窪み63の内面は、球面部61の球面に整合した形状を有する。
【0094】
複数の調節部62は、前側から見た場合に、互いに離間して配置されている。図8A図8Bの例では4つの調節部62が設けられている。
【0095】
各調節部62は、ボルト62aとナット62bを備える。ボルト62aに関して、第2の基体32bには、第2の基体32bを前方向に貫通するねじ穴32b1が設けられ、支持体31には、支持体31を前方向に貫通する貫通穴31pが設けられている。ボルト62aは、ねじ穴32b1に螺合しつつ、貫通穴31pを貫通するように配置される。ナット62bは、支持体31の前方側においてボルト62aに螺合する。
【0096】
このような構成により、複数の調節部62のナット62bの回転量を調節することで、球面部61の球面が窪み63の内面上をスライドする。これにより、図8Cのように、前側または後側への支持体31の傾きが調節される。なお、支持体31が第2の基体32bに対して傾くことができるように、貫通穴31pの断面寸法は、ボルト62aの断面寸法よりも十分に大きくなっている。ただし、貫通穴31pの断面寸法または形状は、ナット62bが通過できない寸法に設定されている。
【0097】
<構成例4>
図9Aは、構成例4による傾き調節機構36を備えた場合の非破壊検査装置10の例を示す。図9Bは、図9Aの9B-9B矢視図である。傾き調節機構36は、構成例3による傾き調節機構36の球面部61の代わりに複数のコイル状のばね64を備え、他の構成は、構成例3による傾き調節機構36と同じである。
【0098】
各調節部62において、ばね64の内側にボルト62aが配置されている。ボルト62aは、ばね64の軸方向にばね64を貫通している。ばね64は、支持体31と第2の基体32bとの間において、圧縮された状態にあり、支持体31と第2の基体32bを互いに離間する方向に両者を付勢している。
【0099】
このような構成により、複数の調節部62のナット62bの回転量を調節することで、対応するばね64の圧縮量が変化する。これにより、図9Cのように、前側または後側への支持体31の傾きが調節される。
【0100】
なお、傾き調節機構36は、上述の構成例1~4に限定されず、他の構成を有するものであってもよい。
【0101】
(変更例3)
変更例1の非破壊検査装置10において、以下で説明するように変更例2の傾き調節機構を設けてもよい。図10は、この場合の構成例を示す。図10は、変更例1の非破壊検査装置10において、変更例2における構成例1の傾き調節機構36を設けた場合を示す。以下において、第2の基体32bは、上述の変更例2における第2の基体32bに相当し、第3の支持体31cは、変更例1における第2の基体32bに相当するとともに、変更例2における支持体31に相当する。
【0102】
このような構成により、第1の位置調節機構33aにより、ガンマ線検出器12、中性子遮蔽部13、およびガンマ線遮蔽部14など(すなわち第1~第3の支持体31a~31c)の位置を、第1の基体32aに対して、前方向と平行な方向において調節可能である。また、第2の位置調節機構33bと距離調節機構25の一方または両方により、前方向と平行な方向と横方向のうち一方または両方の方向において、中性子遮蔽部13およびガンマ線遮蔽部14等(すなわち第1の支持体31a)と、ガンマ線検出器12等(すなわち、第2の支持体31b)との一方の位置を、第1および第2の支持体31a,31bの他方に対して調節可能である。更に、傾き調節機構36により、ガンマ線検出器12および中性子遮蔽部13等(すなわち第1~第3の支持体31a~31c)の、前方側または後方側への傾きを調節可能である。
【0103】
(変更例4)
中性子源11は、その周囲と後方側からだけでなく前方側からも減速部13aに覆われるように、減速部13aの内部に配置されてもよい。図11A図11Cは、変更例4における中性子源11の配置例を示す。図11A図11Cは、図1Aの部分拡大図に相当するが、中性子源11の位置が図1Aの場合と異なる。
【0104】
図11Aのように、中性子源11は、減速部13aの深さ方向中心よりも前方側に位置してもよい。或いは、図11Bのように、中性子源11は、減速部13aの深さ方向中心に位置してもよい。或いは、図11Cのように、中性子源11は、減速部13aの深さ方向中心よりも後方側に位置してもよい。なお、減速部13aの深さ方向中心は、中性子放出面13a1と直交する方向における減速部13aの中心を意味してよい。
【0105】
このように中性子源11を、減速部13aの内部に(例えば深く)配置することにより、中性子源11の中性子は、減速部13aにおいて散乱され減速させられるので、より多くの熱中性子として検査対象物1へ入射させることができる。これにより、検査対象物1において水素元素の量が少ない場合には、熱中性子と、検査対象物1内の対象成分(例えば塩素)との反応により生じるガンマ線の量を増やすことができる。また、同一の検査対象物1において、表面1a付近(例えば表面1aから3cm程度)の対象成分(例えば塩素)と熱中性子との反応により生じるガンマ線の量を増やすことができる。
【0106】
(変更例5)
上述の中性子源11の代わりに、中性子発生管71を設けてもよい。この場合の構成例を図12Aに示す。図12Bは、図12Aの12B-12B水平断面図である。なお、図12Aは、図12Bの12A-12A断面図である。
【0107】
中性子発生管71は、イオン源71aと、加速器71bと、中性子発生部としてのターゲット71cと、管状の収容体71dを備える。イオン源71aは、重水素イオン又は三重水素イオンを発生する。加速器71b(加速電極)は、イオン源71aからの重水素イオン又は三重水素イオンをターゲット71cに向けて加速する。ターゲット71cには、重水素又は三重水素が吸蔵されている。収容体71dは、前方向に延びる管形状を有する。収容体71dの内部には、イオン源71aと加速器71bとターゲット71cが配置される。
【0108】
このような構成において、上述のように加速された重水素イオン又は三重水素イオンがターゲット71cに衝突することにより、ターゲット71cから中性子が発生する。すなわち、ターゲット71cに吸蔵された三重水素又は重水素と、衝突した重水素イオン又は三重水素イオンとの間で核融合反応が生じることにより、中性子が発生する。この核融合反応は、重水素(D)と重水素(D)とのDD核融合反応、または、重水素(D)と三重水素(T)とのDT核融合反応である。ターゲット71cは、本発明の中性子発生部を構成する。
【0109】
このような中性子発生管71自体の構造は公知であるので、その詳細な説明は省略する。なお、中性子発生管71を作動させるために、その各部に電圧を供給する電源装置72が設けられてよい。電源装置72は、中性子遮蔽部13の後方側において上述の支持体31に支持されてよい。
【0110】
本変更例5によると、ターゲット71cは、中性子発生管71の先端部の内部に配置される。すなわち、ターゲット71cは、収容体71dにおける前方向の先端部の内部に配置される。中性子遮蔽部13は、中性子発生管71の先端部(すなわち、収容体71dの前方向先端部)の周囲から当該先端部を覆う。より詳しくは、中性子遮蔽部13の減速部13aは、中性子発生管71の先端部(収容体71dの前方向先端部)の周囲から当該先端部を覆い、中性子遮蔽部13の反射部13bは、減速部13aの周囲と後方側から減速部13aを覆う。収容体71dは、その前方向先端部から後方向へ中性子遮蔽部13の後側まで延びていてよい。
【0111】
前方向における収容体71dの先端面は、図12Aのように、外部に露出してもよいし、図12Cのように減速部13aによって前側から覆われていてもよい。また、後方向に見た場合に、図12Bのように収容体71d(すなわち、ターゲット71c)は、減速部13aの横方向中央に配置されてもよいし、図12Dのように減速部13aの横方向中央よりもガンマ線検出器12側にずれた位置に配置されてもよい。
【0112】
(非破壊検査装置の各特徴とその効果)
上述した実施形態および変更例1~5による非破壊検査装置は、以下のようにも記載し得る。
【0113】
<付記1>
中性子を自発的に発生して放出し、又は、DD核融合反応またはDT核融合反応により中性子を発生して放出する中性子発生部と、
前記中性子発生部の少なくとも周囲から当該中性子発生部を覆うことにより当該周囲で前記中性子を遮蔽し、前記中性子発生部の前方側への前記中性子の放出を可能にする中性子遮蔽部と、
前記中性子発生部の前方側の検査対象物に入射した前記中性子により前記検査対象物内で発生したガンマ線を検出し、当該検出に関する検出信号を出力するガンマ線検出器と、を備え、
前記中性子発生部の後方から前方に向かう方向を前方向として、前記中性子遮蔽部と前記ガンマ線検出器とは、前方向に対する横方向に、互いに横並びに配置されている、非破壊検査装置。
【0114】
<付記1の効果>
中性子発生部が自発的に中性子を発生して放出するものである場合、荷電粒子ビームをターゲットに衝突させて中性子を発生させる中性子源の場合と違って、荷電粒子ビームを発生させる大規模な装置や加速器などが不要になる。したがって、非破壊検査装置を、搬送と配置が容易になるように小型化および軽量化できる。
中性子発生部がDD核融合反応またはDT核融合反応により中性子を発生して放出するものである場合、中性子発生に関して、低い加速電圧で高い反応断面積が得られる。そのため、大規模な加速器などが不要になる。したがって、非破壊検査装置を、搬送と配置が容易になるように小型化および軽量化できる。
【0115】
また、中性子発生部を少なくとも周囲から覆う中性子遮蔽部と、ガンマ線検出器とが横並びに配置されているので、中性子遮蔽部に囲まれた中性子発生部と、ガンマ線検出部とを、共に、検査対象物の表面近傍に配置できる。したがって、中性子発生部からの中性子を効率よく検査対象物に入射させることができるとともに、検査対象物内において当該中性子により生じたガンマ線を効率よく検出することができる。そのため、搬送や配置が困難となる大規模な装置や加速器により荷電粒子ビームをターゲットに衝突させて中性子を発生させる中性子源と比べて、放出中性子量が少ない中性子発生部(例えば、上述の252CfなどのRI中性子源、又は中性子発生管)であっても、ガンマ線の検出量を十分確保することができる。よって、検出したガンマ線に基づいて、検査対象物内の対象成分の有無、深さ、又は濃度を求めることが可能となる。
【0116】
<付記2>
前記中性子発生部は、中性子を自発的に発生して放出する中性子源であり、
前記中性子遮蔽部は、前記中性子源の周囲と後方側から前記中性子源を覆うことにより当該周囲と当該後方側で前記中性子を遮蔽し、前記中性子源の前方側への前記中性子の放出を可能にする、付記1に記載の非破壊検査装置。
【0117】
<付記2の効果>
この構成では、中性子発生部は、中性子を自発的に発生して放出する中性子源であるので、中性子発生においてイオン源や加速器などが不要になる。したがって、中性子遮蔽部により、中性子発生部を覆うことが容易になり、中性子源の後方側からも中性子源を覆うことができる。
【0118】
<付記3>
DD核融合反応またはDT核融合反応を利用して中性子を発生させる中性子発生管を備え、
前記中性子発生部は、前記中性子発生管の先端部の内部に配置され、重水素イオン又は三重水素イオンが衝突することでDD核融合反応またはDT核融合反応により中性子を発生するターゲットであり、
前記中性子遮蔽部は、前記中性子発生管の前記先端部の周囲から当該先端部と前記ターゲットを覆う、付記1に記載の非破壊検査装置。
【0119】
<付記3の効果>
中性子発生管は、上述のように、大規模な加速器などが不要である。したがって、中性子を自発的に発生する中性子源の代わりに中性子発生管を用いることによっても、搬送と配置が容易であり、かつ、検査対象物内の対象成分を検出できる非破壊検査装置を実現できる。
【0120】
<付記4>
前記中性子遮蔽部は、
中性子を減速させる材料で形成され、前記中性子発生部の少なくとも周囲から前記中性子発生部を覆う減速部と、
中性子を反射する材料で形成され、前記減速部の周囲と後方側から前記減速部を覆う反射部と、を有する、付記1~3のいずれかに記載の非破壊検査装置。
【0121】
<付記4の効果>
この構成では、中性子発生部からその周囲へ放出された高速中性子は、減速部を通って反射部へ進行し、反射部で反射して減速部へ戻ることを少なくとも1回繰り返した後に、前方側の検査対象物へ放出され得る。これにより、中性子源からの中性子量が比較的少ない場合でも、より多くの中性子を検査対象物へ入射させることができる。
また、このような中性子は、減速部において散乱され減速させられるので、より多くの熱中性子として検査対象物へ入射させることができる。例えば、検査対象物内の塩素に由来するガンマ線の生成量は、中性子エネルギーが低い熱中性子との反応で増加する。したがって、より多くの熱中性子を検査対象物へ入射させることで、対象成分としての塩素に由来するガンマ線の検出量を増やすことができる。
【0122】
<付記5>
前記中性子遮蔽部は、
中性子を減速させる材料で形成され、前記中性子源の周囲と後方側から当該中性子源を覆う減速部と、
中性子を反射する材料で形成され、前記減速部の周囲と後方側から前記減速部を覆う反射部と、を有し、
前記中性子源は、前記減速部において前記前方向の先端部に配置されている、付記2に記載の非破壊検査装置。
【0123】
<付記5の効果>
この構成により、中性子源から前方へ放出された中性子は、減速部を通過せずに減速部で減速されることなく、また、減速部の周囲と後方の反射部で反射することなく、検査対象物へ入射される。したがって、中性子源からの中性子の減速部における減衰による減少量が抑えられる。なお、中性子源からの中性子のうち、(例えば減速部を通らずに)高速中性子として検査対象物に入射した中性子は、検査対象物内(例えば水素元素)で減速されて熱中性子となる。したがって、中性子源による熱中性子の数を、検査対象物において更に増やすことができる。よって、例えば、熱中性子と反応しやすい対象成分としての塩素からのガンマ線の量を増やすことができる。一方、水素元素が少ない検査対象物や大体積を有しない検査対象物の場合には、上述の変更例4を採用するのが良い場合がある。
【0124】
<付記6>
前記中性子遮蔽部は、
中性子を減速させる材料で形成され、前記中性子源の周囲と後方側から当該中性子源を覆う減速部と、
中性子を反射する材料で形成され、前記減速部の周囲と後方側から前記減速部を覆う反射部と、を有し、
前記前方向と逆方向に見た場合に、前記中性子源は、前記横方向における前記減速部の中央から前記ガンマ線検出器側にずれた位置に配置されている、付記2に記載の非破壊検査装置。
【0125】
<付記6の効果>
この構成により、中性子源とガンマ線検出器との距離が小さくなる。その結果、ガンマ線検出器によるガンマ線の検出量(検出数)が増えることが実験や放射線輸送シミュレーションで確認された。
【0126】
<付記7>
前記減速部は、前記前方向を向き、前記中性子発生部からの前記中性子を放出する中性子放出面を有する、付記4に記載の非破壊検査装置。
【0127】
<付記7の効果>
このように、減速部において前方向を向く前面が中性子放出面として機能する。中性子発生部が、中性子を自発的に発生して放出する上述の中性子源である場合、中性子源が小さくても、前方向と反対方向に見た場合に、中性子放出面は、局所的な狭領域の中性子源を囲む広がりを持つ広領域となっており、中性子を外部へ放出する。この場合、中性子源からその周囲と後方側へ放出された中性子を、反射部で1回または複数回反射させることにより中性子放出面から外部へ放出させることができる。一例では、図3A図3Bにおいて、中性子放出面13a1の縦と横の寸法は、それぞれ約150mmと約100mmであるのに対し、中性子源11の縦と横の寸法は、約10mmと約35mmであるが、本発明は、これらの数値に限定されない。
【0128】
<付記8>
前記横方向において前記中性子遮蔽部と前記ガンマ線検出器との間に配置され、ガンマ線を遮蔽するガンマ線遮蔽部を備える、付記4に記載の非破壊検査装置。
【0129】
<付記8の効果>
この構成では、横方向において中性子遮蔽部とガンマ線検出器との間に配置されたガンマ線遮蔽部により、中性子遮蔽部側からのバックグラウンドガンマ線(例えば中性子遮蔽部内の水素元素から放出されたガンマ線)がガンマ線検出器に入射することを防止できる。
【0130】
<付記9>
前記中性子発生部と前記中性子遮蔽部と前記ガンマ線遮蔽部と前記ガンマ線検出器は、互いに直接的に又は間接的に結合されている、付記8に記載の非破壊検査装置。
【0131】
<付記9の効果>
この構成により、中性子発生部と中性子遮蔽部とガンマ線遮蔽部とガンマ線検出器を一体で移動させることができるので、検査対象物に対する非破壊検査装置の移動や配置が容易になる。
【0132】
<付記10>
前記ガンマ線遮蔽部は、前記前方向から前記ガンマ線検出器の側に傾いた方向を向く斜面を有し、
当該斜面は、前記ガンマ線遮蔽部における前記前方向の側の先端から、前記前方向と反対側に移行するにつれて、前記ガンマ線検出器側に近づくように延びており、
前記ガンマ線検出器の前側部分と前記減速部の前側部分の両方に接する仮想平面を基準平面として、
前記斜面上の各位置は、基準平面上に位置するか、若しくは、基準平面よりも前方側に位置する、付記8又は9に記載の非破壊検査装置。
【0133】
<付記10の効果>
この構成により、ガンマ線遮蔽部のガンマ線遮蔽機能を十分に発揮させつつ、その寸法と重量を抑えることができる。
しかも、中性子発生部の前方側の検査対象物内におけるより所定箇所からガンマ線検出器に至るガンマ線の直進経路を確保することでガンマ線遮蔽部との干渉を抑えることができ、当該所定箇所で発生しガンマ線検出器に向かうガンマ線は、上記斜面に沿って上記斜面の近傍を通過してガンマ線検出器に入射する。したがって、所定箇所からのガンマ線を(例えば選択的に)ガンマ線検出器によって多く検出することが可能となる。
【0134】
<付記11>
前記横方向において前記中性子遮蔽部と前記ガンマ線遮蔽部との間に配置され、中性子を吸収する材料で形成された第1の中性子吸収部を備える、付記8~10のいずれかに記載の非破壊検査装置。
【0135】
<付記11の効果>
この構成により、ガンマ線検出器側に中性子が入射することが一層防止される。これにより、ガンマ線検出器側に入射した中性子によるバックグラウンドガンマ線の発生を抑えることができる。
【0136】
<付記12>
中性子を吸収する材料で形成され前記ガンマ線検出器を前方側から覆うように前記横方向に延びる前方吸収部と、中性子を吸収する材料で形成され前記ガンマ線検出器を横方向に前記中性子遮蔽部側から覆うように前記前方向に延びる側方吸収部と、を有する第2の中性子吸収部を備え、
前記側方吸収部は、前記横方向において、前記ガンマ線検出器と前記ガンマ線遮蔽部との間に配置されている、付記8~11のいずれかに記載の非破壊検査装置。
【0137】
<付記12の効果>
この構成により、ガンマ線検出器側に中性子が入射することによるバックグラウンドガンマ線の発生を抑えることができる。
【0138】
<付記13>
前記中性子発生部と前記中性子遮蔽部と前記ガンマ線遮蔽部と前記ガンマ線検出器の位置を調節するための位置調節機構と、
前記中性子発生部と前記中性子遮蔽部と前記ガンマ線遮蔽部と前記ガンマ線検出器を前記位置調節機構を介して支持する基体と、を備え、
前記位置調節機構は、前記前方向と平行な方向において、前記中性子発生部と前記中性子遮蔽部と前記ガンマ線遮蔽部と前記ガンマ線検出器の位置を前記基体に対して調節可能である、付記8~12のいずれかに記載の非破壊検査装置。
【0139】
<付記13の効果>
この構成では、装置(例えば中性子放出面13a1)と検査対象物の表面との間に距離が生じている場合に、装置を検査対象物の表面に近接させることができるように、また、検査対象物からの対象成分に由来のガンマ線の検出量に関する検出データを状況に応じて最適化(例えば、密着状態から少し離すことで検査対象物表面付近からのガンマ線検出量を増加)できるように、前方向と平行な方向において、検査対象物と、中性子発生部、中性子遮蔽部、ガンマ線遮蔽部、およびガンマ線検出器との距離を調節することができる。
【0140】
<付記14>
前記中性子発生部、前記中性子遮蔽部、および前記ガンマ線遮蔽部と、前記ガンマ線検出器との一方の位置を、前記中性子発生部、前記中性子遮蔽部、および前記ガンマ線遮蔽部と、前記ガンマ線検出器との他方に対して前記前方向と平行な方向において調節可能な位置調節機構と、を備える、付記8~13のいずれかに記載の非破壊検査装置。
【0141】
<付記14の効果>
この構成では、検査対象物からの対象成分に由来のガンマ線の検出量に関する検出データを状況に応じて最適化できるように、前方向と平行な方向において、中性子発生部等とガンマ線検出器との一方の位置を他方に対して調節することができる。例えば、中性子遮蔽部側からのバックグラウンドガンマ線を減少させることで、S/N比の向上を期待できる。また、例えば、前方向と平行な方向において中性子発生部等とガンマ線検出器との一方と他方とが、予め定めた位置関係にある状態で、検量データ(検量線)と実際の検査データを得ることが容易になり、両データの比較がしやすくなる。
【0142】
<付記15>
前記中性子発生部と前記中性子遮蔽部と前記ガンマ線遮蔽部と前記ガンマ線検出器の前側または後側への傾きを調節可能な傾き調節機構を備える、付記8~14のいずれかに記載の非破壊検査装置。
【0143】
<付記15の効果>
この構成では、装置(例えば中性子放出面13a1)と検査対象物の表面との間に傾きが生じている場合に、調節して両者を平行にできるように、また、検査対象物からの対象成分に由来のガンマ線の検出量に関する検出データを状況に応じて最適化できるように、検査対象物と、中性子発生部および中性子遮蔽部等との角度を調節して、検査対象物に対する中性子発生部および中性子遮蔽部等の傾きを調節することができる。例えば、傾きを生じさせることにより、検査対象物において、その表面から少し深い領域からの対象成分に由来のガンマ線の検出量を増やすことを期待できる。また、例えば、上記傾きが、予め定めた傾きにある状態で、検量データ(検量線)と実際の検査データを得ることが容易になり、両データの比較がしやすくなる。
【0144】
<付記16>
前記ガンマ線検出器と、前記中性子遮蔽部およびガンマ線遮蔽部との前記横方向の距離を調節可能にする距離調節機構を備える、付記8~15のいずれかに記載の非破壊検査装置。
【0145】
<付記16の効果>
この構成では、検査対象物からの対象成分に由来のガンマ線の検出量に関する検出データを状況に応じて最適化できるように、前記ガンマ線検出器と、前記中性子遮蔽部およびガンマ線遮蔽部との横方向の距離を調節することができる。
【0146】
<付記17>
前記ガンマ線検出器にガンマ線が入射すると、前記ガンマ線検出器は、当該ガンマ線のエネルギーを示す前記検出信号を出力し、
前記ガンマ線検出器からの各前記検出信号に基づいて、ガンマ線の各エネルギーにおけるガンマ線の検出量を示す検出データを生成する検出量計測装置を備え、
前記ガンマ線検出器における前記前方向の先端部から見た場合に、前記前方向から前記中性子遮蔽部側に傾いた斜め前方に位置する領域を、検査対象物からのガンマ線の進入領域として、
少なくとも前記進入領域を除いた前記ガンマ線検出器の周囲から前記ガンマ線検出器を覆う副検出器を備え、
前記副検出器にガンマ線が入射すると、前記副検出器は、入射信号を出力し、
前記検出信号と前記入射信号が同時に出力された場合には、前記検出量計測装置は、当該検出信号を前記検出データに反映させないように設定可能であることにより、コンプトン散乱ガンマ線のバックグラウンドを抑制できる、付記1~15のいずれかに記載の非破壊検査装置。
【0147】
<付記17の効果>
この構成により、ガンマ線検出器に入射したガンマ線のうち、コンプトン散乱してガンマ線検出器外の副検出器に入射したガンマ線の検出が検出データに反映されなくなる。したがって、バックグラウンドの少ない検出データを生成できる。
また、副検出器は、ガンマ線を遮蔽する材料で形成されている場合には、外部から進入するバックグラウンドガンマ線が、ガンマ線検出器に入射することを抑える機能も兼ね備える。
【符号の説明】
【0148】
1 検査対象物
1a 表面
10 非破壊検査装置
11 中性子源(中性子発生部)
12 ガンマ線検出器
13 中性子遮蔽部
13a 減速部
13a1 中性子放出面(前面)
13a2 窪み
13b 反射部
13b1 前面
14 ガンマ線遮蔽部
14a 前端面(斜面)
14b 後端面
15 第1の中性子吸収部
15a 前面
16 第2の中性子吸収部
16a 前方吸収部
16a1 前面
16b 側方吸収部
17 液体窒素デュワー
18 コールドフィンガー
21 検出量計測装置
22 プリアンプ
23 データ処理装置
24 副検出器
25 距離調節機構
25a 案内機構
25b 可動部
31 支持体
31a 第1の支持体
31b 第2の支持体
31c 第3の支持体
31p 貫通穴
32 基体
32a 第1の基体
32b 第2の基体
32b1 ねじ穴
32c 第3の基体
33 位置調節機構
33a 第1の位置調節機構
33b 第2の位置調節機構
34 台
36 傾き調節機構
37 揺動体
37a 貫通穴
37b ねじ穴
38 第1の調節部
38a ボルト
38b 第1のナット
38c 第2のナット
39 第2の調節部
39a ボルト
39b 第1のナット
39c 第2のナット
41 第1の支え部材
42 第2の支え部材
51 連結部
51a 取付部材
51b ボルト
51c 第1のナット
51d 第2のナット
61 球面部
62 調節部
62a ボルト
62b ナット
63 窪み
64 ばね
71 中性子発生管
71a イオン源
71b 加速器
71c ターゲット(中性子発生部)
71d 収容体
72 電源装置
C1 第1の軸
C2 第2の軸
R ガンマ線の進入領域
図1A
図1B
図1C
図1D
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6A
図6B
図7A
図7B
図7C
図8A
図8B
図8C
図9A
図9B
図9C
図10
図11A
図11B
図11C
図12A
図12B
図12C
図12D