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特開2024-124737コンクリート材料の冷却方法とその装置
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  • 特開-コンクリート材料の冷却方法とその装置 図1
  • 特開-コンクリート材料の冷却方法とその装置 図2
  • 特開-コンクリート材料の冷却方法とその装置 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024124737
(43)【公開日】2024-09-13
(54)【発明の名称】コンクリート材料の冷却方法とその装置
(51)【国際特許分類】
   B28C 7/00 20060101AFI20240906BHJP
   F28D 15/02 20060101ALI20240906BHJP
   C04B 40/00 20060101ALI20240906BHJP
【FI】
B28C7/00
F28D15/02 102C
C04B40/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023032621
(22)【出願日】2023-03-03
(71)【出願人】
【識別番号】000001317
【氏名又は名称】株式会社熊谷組
(74)【代理人】
【識別番号】100141243
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 靖夫
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 英明
【テーマコード(参考)】
4G056
4G112
【Fターム(参考)】
4G056AA06
4G056CA06
4G112RA05
(57)【要約】
【課題】容器内に貯蔵されたセメントや細骨材などのコンクリート材料を容易に冷却する方法とその装置を提供する。
【解決手段】セメントサイロ10のサイロ本体11に、密封管21aの内部に作動液21cを封入してなる複数の伝熱管(ヒートパイプ21)を、一端側である吸熱部21Aがサイロ本体11内に挿入され、他端側である放熱部21Bがサイロ本体11の外側に位置するように設置するとともに、放熱部21Bの外周側に不織布などの吸湿体22を取付け、この吸湿体22に散水手段23を用いて散水することで、サイロ本体11内のセメント30を冷却するようにした。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器内に貯蔵されたコンクリート材料を冷却する方法であって、
前記コンクリート材料がセメント又は細骨材であり、
前記容器にパイプの内部に作動液を封入してなる伝熱管の一方の端部側である吸熱部を挿入し、
前記伝熱管の他方の端部側である放熱部を前記容器の外側に位置させて、前記コンクリート材料の熱を吸熱部から前記放熱部に移動させて放熱し、前記コンクリート材料を冷却することを特徴とするコンクリート材料の冷却方法。
【請求項2】
容器内に貯蔵されたコンクリート材料の冷却装置であって、
前記コンクリート材料がセメント又は細骨材であり、
一端側である吸熱部が前記容器内に挿入され、他端側である放熱部が前記容器の外側に位置するように設置された、パイプの内部に作動液を封入してなる複数の伝熱管を備えることを特徴とするコンクリート材料の冷却装置。
【請求項3】
前記放熱部の外周側に取付けられる吸湿体と、
前記吸湿体に散水もしくは噴霧する手段と、を設けたことを特徴とする請求項2に記載のコンクリート材料の冷却装置。
【請求項4】
前記伝熱管は、前記容器の下部に、前記パイプの軸方向が水平面に対して傾いて配置されていることを特徴とする請求項2に記載のコンクリート材料の冷却装置。
【請求項5】
前記散水もしくは噴霧する水量及び時間間隔のいずれか一方または両方を、外気温と前記コンクリート材料の温度との温度差、もしくは、前記温度差と湿度に基づいて制御することを特徴とする請求項3または請求項4に記載のコンクリート材料の冷却装置。
【請求項6】
前記放熱部にフィンを設けたことを特徴とする請求項3または請求項4に記載のコンクリート材料の冷却装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セメントや細骨材などのコンクリート材料の冷却方法とその装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、セメントの冷却方法としては、搬送スクリーンコンベヤのシャフトを中空にして冷却水を通し冷却する方法や、大型の堅型スクリューでセメントを輸送し、その外筒に冷却水を流すことでセメントを冷却するセメントクーラーなどが用いられている。
また、細骨材の冷却方法としては、気化冷却法、真空冷却、液体窒素による冷却、サンドスタビライザなどが開発されている(例えば、特許文献1、2等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭61-201681号公報
【特許文献2】特開平11―114940号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、搬送スクリーンコンベヤのシャフトを冷却する方法では、シャフトが結露してセメントが固着するなどの問題がある。また、セメントクーラーについては、設備費用が高額になるといった問題点があった。
また、細骨材の冷却方法は、いずれも、設備費用が高額であるだけでなく、ランニングコストも大きいといった難点があった。
【0005】
本発明は、従来の問題点に鑑みてなされたもので、容器内に貯蔵されたセメントや細骨材などのコンクリート材料を容易に冷却する方法とその装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、容器内に貯蔵されたコンクリート材料を冷却する方法であって、前記コンクリート材料がセメント又は細骨材であり、前記容器にパイプの内部に作動液を封入してなる伝熱管の一方の端部側である吸熱部を挿入し、前記伝熱管の他方の端部側である放熱部を前記容器の外側に位置させて、前記コンクリート材料の熱を吸熱部から前記放熱部に移動させて放熱し、前記コンクリート材料を冷却することを特徴とする。
これにより、簡便で安価な設備でコンクリート材料を冷却することができる。
なお、伝熱管は放射状に複数設置することが好ましい。
また、本発明は、容器内に貯蔵されたコンクリート材料の冷却装置であって、前記コンクリート材料がセメント又は細骨材であり、一端側である吸熱部が前記容器内に挿入され、他端側である放熱部が前記容器の外側に位置するように設置された、パイプの内部に作動液を封入してなる複数の伝熱管を備えることを特徴とする。
このような構成を採ることにより、簡便で安価なコンクリート材料の冷却装置を提供することができる。
【0007】
また、前記放熱部の外周側に取付けられる吸湿体と、前記吸湿体に散水もしくは噴霧する手段とを設け、吸湿体に散水もしくは噴霧された水分の気化によって放熱部を冷却するようにしたので、簡単な構成でコンクリート材料を効果的に冷却できる。
また、前記伝熱管を、前記容器の下部に、前記パイプの軸方向が水平面に対して傾けて配置したので、コンクリート材料による伝熱管に対する負荷を低減できる。
また、前記散水もしくは噴霧する水量及び時間間隔のいずれか一方または両方を、外気温と前記コンクリート材料の温度との温度差、もしくは、前記温度差と湿度に基づいて制御するようにしたので、コンクリート材料を効率よく冷却できる。
また、前記放熱部にフィンを設けたので、コンクリート材料の冷却効率が向上した。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施の形態に係るセメントサイロの模式図である。
図2】ヒートパイプ支持具の一例を示す図である。
図3】ヒートパイプとその放熱方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1(a)~(c)は本実施の形態に係るセメントサイロ10を示す図で(a)図は正面図、(b)図は縦断面図、(c)図は横断面図である。
各図において、11はサイロ本体、12は支持部材、13はヒートパイプ挿入孔、14はヒートパイプ支持具である。また、21は伝熱管であるヒートパイプ、22は吸湿体、23は散水手段で、ヒートパイプ21、吸湿体22、散水手段23により、本発明のセメントの冷却装置を構成する。なお、(b)図と(c)図では、支持部材12と散水手段23については省略した。
サイロ本体11は上部に位置する円筒部11aと、円筒部11aの下部に位置して、下に行くほど断面の径が小さくなる円錐台部11bと、最下部に位置する円筒状の取出部11cとを備えた、内部にセメント30を貯蔵する容器で、取出部11cには、ロータリーバルブなどの開閉バルブ11dが設けられている。サイロ本体11は、地面15に立設されて上方に延長する複数本の支持部材12により、上記の円筒部11aの円錐台部11bに近い側で支持されている。
ヒートパイプ挿入孔13はサイロ本体11の円筒部11aの下部に設けられた断面が楕円形の孔で、本例では、同じ高さに、周方向に等間隔に8個設けた。なお、断面を楕円形としたのは、ヒートパイプ21をサイロ本体11に斜めに差し込むためである。
ヒートパイプ21を斜めに差し込んだ理由は、貯蔵されたセメント30による伝熱管に対する負荷を低減するためである。
なお、ヒートパイプ21は、図3(a)に示す吸熱部21Aが下方に、放熱部21Bが上方になるように、サイロ本体11に斜めに差し込まれることはいうまでもない。
【0010】
ヒートパイプ支持具14は、図2に示すように、円筒状部材14aの内周側に円筒状のゴム部材14bを配置したもので、ゴム部材14bの中空部14hにヒートパイプ21が挿入される。ヒートパイプ支持具14の軸方向は、サイロ本体11の円筒部11aの径方向及び軸方向に対して所定の角度をなす方向に向いている。ヒートパイプ支持具14は、円筒部11aの外周側で、ヒートパイプ挿入孔13の周囲に取付けられる。
本例では、ゴム部材14bの挿入側(サイロ本体11とは反対側)に切り欠き部14kを設けて、ヒートパイプ21の挿入が容易になるようにしている。
これにより、ヒートパイプ21を、上記のヒートパイプ挿入孔13に、ヒートパイプ支持具14を介して、軸方向がサイロ本体11の軸方向に対して斜めになるように容易に取付けることができる。
【0011】
図3(a)に示すように、ヒートパイプ21は、銅やアルミニウムなどの熱伝導率の高い金属又は合金で作られた、両端が閉じられた密封管21aと、この密封管21aの内壁に設けられた毛細管構造体(以下、ウイック21bという)と、管内に高度な減圧状態で封じ込められた適量の作動液21cとを備えている。
ウイック21bとしては、密封管21aの内面を加工した細い溝から成るグルーブウイック、網状の金属から成るメッシュウイック、多孔体焼結金属から成る多孔質体などが用いられ、作動液としては、純水、エタノール、代替フロン、フロン、アンモニアなどの凝縮性の液体が用いられる。
ヒートパイプ21は、一端側(吸熱部21A)が加熱されると、減圧状態の内部では作動液21cが蒸発して蒸気となり、加熱されていない他端部(放熱部21B)に移動して低温側の内壁に触れ、放熱部21Bに熱を渡しながら液体に戻る(凝縮する)ことで熱を放出する。液体に戻った作動液21cはウイック21bを伝って元の場所である吸熱部21Aへと戻る。
このように、ヒートパイプ21は、作動液21cの蒸発・移動・凝縮を繰り返すことで、熱源であるセメントサイロ10内のセメント30の熱を、蒸発潜熱の形で吸熱部21Aから放熱部21Bに伝達することができる。
【0012】
本例では、図3(b)に示すように、熱源(ここでは、セメント30)に吸熱部21Aを配置するとともに、放熱部21Bの外周に不織布やガーゼなどの吸湿体22を取付け、この吸湿体22に散水手段23からに散水することで放熱部21Bを冷却する。具体的には、吸湿体22に含まれている水分が気化する際の気化熱により放熱部21Bを冷却する。
散水手段23としては、散水時間及び散水間隔が設定可能な市販の散水ノズル23aが好適に用いられる。散水ノズル23aは、散水ホース23bを介して、図示しない給水タンクに接続されている。また、散水ノズル23aは、例えば、セメントサイロ10の支持部材12の上部に円環状のノズル支持部材23cを取付け、このノズル支持部材23cに、散水ノズル23aがヒートパイプ21の放熱部21Bの近傍(吸湿体22の近傍)に位置するように取付ければよい。
なお、本例では、散水された水そのもので放熱部21Bを冷却するのではなく、吸湿体22に含まれている水分の気化により放熱部21Bを冷却するので、散水は連続的に行う必要はなく、例えば、15分~30分に1回など、間欠的に行えばよい。これにより、連続的に散水する場合に比較して、ランニングコストが低減できるとともに、効果的に放熱部21Bを冷却することができる。
【0013】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は前記実施の形態に記載の範囲には限定されない。前記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者にも明らかである。そのような変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲から明らかである。
【0014】
例えば、前記実施の形態では、冷却するコンクリート材料をセメントサイロ10に貯蔵されたセメント30としたが、細骨材貯蔵ビンに貯蔵された細骨材についても同様に冷却することができるこというまでもない。
また、前記実施の形態では、ヒートパイプ21の本数を8本としたが、これに限るものではなく、4本や6本であってもよいし、9本以上であってもよい。なお、ヒートパイプ21の本数が多いほど冷却効果は大きいが、費用も増加するので、サイロの大きさ(冷却するコンクリート材料の量)などにより適宜決定することが好ましい。
また、前記実施の形態では、散水手段23で吸湿体22に水分を補給したが、散水手段23に替えて、吸湿体22に水分を噴霧する手段を設けてもよい。
また、前記実施の形態では、散水手段23は所定時間ごとに吸湿体22に散水したが、外気温とセメントの温度との温度差、もしくは、上記の温度差と湿度とに基づいて散水量及び散水間隔を変更するようにすれば、コンクリート材料の冷却を更に効果的行うことができる。
また、ヒートパイプ21の放熱部21Bの外周にフィンを設けるとともに、このフィンに吸湿体22を巻付けてもよい。
また、前記実施の形態では、伝熱管としてヒートパイプ21を用いたが、パイプに水等の液体を収納したものを用いてもよい。この場合には、収納された液体が吸熱部21Aと放熱部21Bとの間を還流することで熱が運ばれるので、ヒートパイプ21に比較して熱交換の効率は悪いが、ウイック21bも必要なく、かつ、パイプ内を高度な減圧状態とする必要もないので、伝熱管を安価にできる。なお、収納する液体は、液面が放熱部の上部まで達する量とすることが好ましい。
【符号の説明】
【0015】
10 セメントサイロ、11 サイロ本体、11a 円筒部、11b 円錐台部、
11c 取出部、11d 開閉バルブ、12 支持部材、13 ヒートパイプ挿入孔、
14 ヒートパイプ支持具、15 地面、
21 ヒートパイプ、22 吸湿体、23 散水手段、23a 散水ノズル、
23b 散水ホース、23c ノズル支持部材、
30 セメント。
図1
図2
図3