(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024124739
(43)【公開日】2024-09-13
(54)【発明の名称】感光性樹脂
(51)【国際特許分類】
G03F 7/033 20060101AFI20240906BHJP
C08F 224/00 20060101ALI20240906BHJP
C08F 2/50 20060101ALI20240906BHJP
【FI】
G03F7/033
C08F224/00
C08F2/50
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023032626
(22)【出願日】2023-03-03
(71)【出願人】
【識別番号】504180239
【氏名又は名称】国立大学法人信州大学
(71)【出願人】
【識別番号】000004341
【氏名又は名称】日油株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100207756
【弁理士】
【氏名又は名称】田口 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100165021
【弁理士】
【氏名又は名称】千々松 宏
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼坂 泰弘
(72)【発明者】
【氏名】川谷 諒
(72)【発明者】
【氏名】原 脩人
(72)【発明者】
【氏名】長澤 敦
【テーマコード(参考)】
2H225
4J011
4J100
【Fターム(参考)】
2H225AC36
2H225AD02
2H225AM11P
2H225AM13P
2H225AM23P
2H225AM32P
2H225AM39P
2H225AN39P
2H225CA12
2H225CA13
2H225CA16
2H225CB05
2H225CC01
2H225CC13
4J011QA22
4J011RA03
4J011RA17
4J011SA03
4J011SA14
4J011SA15
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4J011UA01
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4J100AJ02R
4J100AL03Q
4J100AL04Q
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4J100AU29P
4J100BC04Q
4J100BC43P
4J100CA05
4J100CA06
4J100DA01
4J100FA03
4J100FA19
4J100JA37
(57)【要約】
【課題】耐熱性に優れる感光性樹脂であって、耐薬品性及び密着性に優れる硬化膜を形成可能な感光性樹脂を提供する。
【解決手段】構成単位として、一般式(1)で示されるモノマー(A)と、(メタ)アクリル酸(B)と、一般式(2)で示されるモノマー(C-1)及び一般式(3)で示されるモノマー(C-2)からなる群から選択される少なくとも1種のモノマーとを含み、構成単位である前記モノマー(A)の含有量が3~30質量%、前記(メタ)アクリル酸(B)の含有量が1~40質量%、前記モノマー(C-1)と前記モノマー(C-2)の合計の含有量が30~92質量%であり、重量平均分子量が3,000~300,000である、感光性樹脂。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
構成単位として、
下記一般式(1)で示されるモノマー(A)と、
(メタ)アクリル酸(B)と、
下記一般式(2)で示されるモノマー(C-1)及び下記一般式(3)で示されるモノマー(C-2)からなる群から選択される少なくとも1種のモノマーとを含み、
構成単位である前記モノマー(A)の含有量が3~30質量%、前記(メタ)アクリル酸(B)の含有量が1~40質量%、前記モノマー(C-1)と前記モノマー(C-2)の合計の含有量が30~92質量%であり、
重量平均分子量が3,000~300,000である、感光性樹脂。
【化1】
(一般式(1)中、Xは単結合、又は酸素原子を示す。)
【化2】
(一般式(2)中、R
1は水素原子またはメチル基を示し、R
2は炭素数1~8の炭化水素基を示す。)
【化3】
(一般式(3)中、R
3は炭素数1~8の炭化水素基を示す。)
【請求項2】
請求項1に記載の感光性樹脂、光重合開始剤、及び重合性化合物を含有することを特徴とする感光性樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は感光性樹脂および感光性樹脂組成物に関する。より詳しくは、耐熱性に優れる感光性樹脂であって、耐薬品性および密着性に優れる硬化膜を形成可能な感光性樹脂、及び該感光性樹脂を含む感光性樹脂組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
感光性樹脂組成物を活性エネルギー線により硬化して得られる硬化膜は、電子製品等の製造工程又は加工工程に用いられ、カラーフィルター、印刷版、プリント配線板、半導体素子、フォトレジスト等といった微細加工に用いられる。一般に、レジスト材料はマスクを用いた活性エネルギー線の照射により、露光部と未露光部のアルカリ溶液への溶解性の差を発現させることによってパターン化が行われ、一般に、現像性を得るために主原料にアルカリ可溶性樹脂を感光性樹脂に用いている。中でも、感光性樹脂として、ハンドリング性や現像性に優れるほか、高感度である観点からアクリル樹脂が多く用いられる。しかし、アクリル樹脂は熱により分解しやすいことから耐熱性に乏しい欠点がある。このため、製造プロセスの中でパターンに熱履歴がかかる加熱に対して変化が生じ難く、さらには露光現像の際に十分な基材への密着性と現像特性の維持や耐薬品性を有するようにするため、種々の検討が行われてきた。
【0003】
耐熱性に優れたアクリル樹脂を得る方法として、特許文献1には酸基含有マレイミド単量体に由来する繰り返し単位を含む重合体を用いる方法や特許文献2には、α-メチレン-γ-ブチロラクトン単量体に由来する繰り返し単位を含む重合体を用いる方法が報告されている。しかし、これらの方法では、硬化膜の耐薬品性や密着性を十分に得ることができなかった。
一方で、特許文献3には耐薬品性を得るためにアクリル樹脂にエポキシ基を導入し、アクリル樹脂系内のカルボン酸基とエポキシ基を熱硬化することで耐薬品性や耐熱性を得る方法が報告されている。しかし、これらの方法では樹脂自身の安定性に乏しい問題や、パターン形成時の工程数の増加、さらには、熱硬化による反応時にパターン形状に変化が生じる問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015-189883号公報
【特許文献2】特開2009-62529号公報
【特許文献3】特開2018-4841号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、耐熱性に優れる感光性樹脂であって、耐薬品性及び密着性に優れる硬化膜を形成可能な感光性樹脂、および該感光性樹脂を含む感光性樹脂組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、前記課題を解決すべく検討した結果、特定構造のモノマーを構成単位として特定量含有する感光性樹脂を用いることにより上記課題を解決できることを見出した。
すなわち、本発明は、以下のものである。
【0007】
[1]構成単位として、
下記一般式(1)で示されるモノマー(A)と、
(メタ)アクリル酸(B)と、
下記一般式(2)で示されるモノマー(C-1)及び下記一般式(3)で示されるモノマー(C-2)からなる群から選択される少なくとも1種のモノマーとを含み、
構成単位である前記モノマー(A)の含有量が3~30質量%、前記(メタ)アクリル酸(B)の含有量が1~40質量%、前記モノマー(C-1)と前記モノマー(C-2)の合計の含有量が30~92質量%であり、
重量平均分子量が3,000~300,000である、感光性樹脂。
【化1】
(一般式(1)中、Xは単結合、又は酸素原子を示す。)
【化2】
(一般式(2)中、R
1は水素原子またはメチル基を示し、R
2は炭素数1~8の炭化水素基を示す。)
【化3】
(一般式(3)中、R
3は炭素数1~8の炭化水素基を示す。)
[2]上記[1]に記載の感光性樹脂、光重合開始剤、及び重合性化合物を含有することを特徴とする感光性樹脂組成物。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、耐熱性に優れる感光性樹脂であって、耐薬品性及び密着性に優れる硬化膜を形成可能な感光性樹脂、および該感光性樹脂を含む感光性樹脂組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を説明する。なお、本発明において「(メタ)アクリル」とは、アクリル及びメタクリルを包含する総称であり、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート及びメタクリレートを包含する総称である。
【0010】
<感光性樹脂>
本発明の感光性樹脂は、その構成単位として、下記一般式(1)で示されるモノマー(A)と、(メタ)アクリル酸(B)と、(メタ)アクリル酸(B)と共重合可能な下記一般式(2)で示されるモノマー(C-1)及び下記一般式(3)で示されるモノマー(C-2)からなる群から選択される少なくとも1種のモノマーとを含む。
より詳細には、本発明の感光性樹脂は、モノマー(A)と、(メタ)アクリル酸(B)と、モノマー(C-1)及びモノマー(C-2)からなる群から選択される少なくとも1種のモノマーとを構成単位として含む共重合体である。
【0011】
<モノマー(A)>
本発明のモノマー(A)は、下記一般式(1)で示されるモノマーである。
【化4】
(一般式(1)中、Xは単結合、又は酸素原子を示す。)
式(1)中、Xは単結合または酸素原子である。密着性および耐薬品性の観点から酸素原子が好ましい。
【0012】
本発明の感光性樹脂におけるモノマー(A)の含有量としては、3~30質量%であり、好ましくは5~20質量%、より好ましくは8~12質量%である。これらの範囲とすることで、優れた耐薬品性および耐熱性、密着性を得ることができる。モノマー(A)の含有量が3質量%未満となる場合、耐薬品性および耐熱性、密着性の向上の効果が得られない。また、モノマー(A)の含有量が30質量%を超える場合、耐薬品性および耐熱性は得られるものの、密着性が低下する。上記モノマー(A)の含有量は、感光性樹脂を構成する全単量体に対する量(質量%)を意味する。
【0013】
<(メタ)アクリル酸(B)>
本発明で用いる(メタ)アクリル酸(B)は、アクリル酸であってもメタクリル酸であってもよいが、共重合反応性、アルカリ水溶液に対する溶解性及び入手の容易性からメタクリル酸が好ましい。アクリル酸およびメタクリル酸は併用してもよい。
本発明の感光性樹脂における(メタ)アクリル酸(B)の含有量は、1~40質量%であり、好ましくは5~30質量%、より好ましくは10~25質量%である。これら範囲にすることで、現像性などのレジスト特性が良好な重合体を得ることができる。上記(メタ)アクリル酸(B)の含有量は、感光性樹脂を構成する全単量体に対する量(質量%)を意味する。
【0014】
<モノマー(C-1)>
本発明のモノマー(C-1)は、下記一般式(2)で示されるモノマーである。
【化5】
(一般式(2)中、R
1は水素原子またはメチル基を示し、R
2は炭素数1~8の炭化水素基を示す。)
【0015】
式(2)中、R1は、水素原子またはメチル基である。R2は、炭素数1~8の炭化水素基である。炭素数1~8の炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、iso-ブチル基、tert-ブチル基、n-ヘキシル基、シクロヘキシル基、n-オクチル基、2-エチルヘキシル基、フェニル基、ベンジル基などが挙げられる。耐溶剤性の観点からシクロヘキシル基が好ましい。
これらのモノマー(C-1)は、1種類のみを選択しても良いし、2種類以上含有しても良い。
【0016】
モノマー(C-1)としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸tert-ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸メチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n-オクチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸フェニルなどが挙げられる。モノマー(a-2)は1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよいが、モノマー(a-2)は、(メタ)アクリル酸シクロヘキシルを少なくとも含むことが好ましい。
【0017】
<モノマー(C-2)>
本発明のモノマー(C-2)は、下記一般式(3)で示されるモノマーである。
【化6】
(一般式(3)中、R
3は炭素数1~8の炭化水素基を示す。)
式(3)中、R
3は、炭素数1~8の炭化水素基である。炭素数1~8の炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、iso-ブチル基、tert-ブチル基、n-ヘキシル基、シクロヘキシル基、n-オクチル基、2-エチルヘキシル基、フェニル基、ベンジル基などが挙げられる。耐溶剤性の観点からフェニル基が好ましい。
本発明の感光性樹脂におけるモノマー(C-1)とモノマー(C-2)の合計の含有量は、30~92質量%であり、好ましくは50~90質量%、より好ましくは63~82質量%である。本範囲とすることで、優れた耐薬品性および耐熱性、密着性を両立することができる。上記モノマー(C-1)およびモノマー(C-2)の含有量は、感光性樹脂を構成する全単量体に対する量(質量%)を意味する。
【0018】
本発明の感光性樹脂は、構成単位として、モノマー(C-1)及びモノマー(C-2)からなる群から選択される少なくとも1種のモノマーを含む。すなわち、本発明の感光性樹脂は、構成単位として、モノマー(C-1)を含んでいてもよいし、モノマー(C-2)を含んでいてもよいし、モノマー(C-1)とモノマー(C-2)の両方を含んでいてもよいが、少なくともモノマー(C-1)を含むことが好ましい。
【0019】
本発明の感光性樹脂における、上記したモノマー(A)、(メタ)アクリル酸(B)、モノマー(C-1)、及びモノマー(C-2)の含有量は、感光性樹脂を重合する際の(A)、(B)、(C-1)、及び(C-2)のそれぞれのモノマーの仕込み量によって調整することができる。
【0020】
本発明の感光性樹脂は、上記したモノマー(A)、(メタ)アクリル酸(B)、モノマー(C-1)、及びモノマー(C-2)以外の他のモノマーを構成単位として含んでもよいが、他のモノマーを構成単位として含まないことが好ましい。すなわち、本発明の感光性樹脂は、構成単位として、モノマー(A)と、(メタ)アクリル酸(B)と、モノマー(C-1)及びモノマー(C-2)からなる群から選択される少なくとも1種のモノマーのみからなることが好ましい。
【0021】
本発明の感光性樹脂の重量平均分子量は、3,000~300,000であり、好ましくは4,000~50,000、より好ましくは5,000~30,000である。重合体の重量平均分子量が低すぎると、密着性が不足し、重量平均分子量が高すぎると、現像性などレジスト特性が悪化するおそれがある。感光性樹脂の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いてポリスチレン換算で求めることができる。
【0022】
<感光性樹脂の合成>
本発明の感光性樹脂は、上記したモノマー(A)と、(メタ)アクリル酸(B)と、モノマー(C-1)及びモノマー(C-2)からなる群から選択される少なくとも1種のモノマーとを含む樹脂組成物を重合させることにより、得ることができる。重合は公知の方法で行うことができる。例えば、溶液重合、懸濁重合、乳化重合などが挙げられるが、共重合体の重量平均分子量を上記範囲内に調整しやすいという面で、溶液重合が好ましい。開始剤およびモノマーを投入するに際しては、例えば、全量を一括仕込みしても良いし、一部を一括仕込みして残りを滴下しても良いし、あるいは全量を滴下しても良い。発熱の制御しやすさから、一部を一括仕込みして残りを滴下するか、または全量を滴下するのが好ましい。
重合開始剤は、公知のものを使用することができる。例えば、t-ブチルプロポキシネオドデカネートやt-ブチルパーオキシネオデカノエートなどの有機過酸化物、2,2’-アゾビスイソブチロニトリルなどのアゾ系重合開始剤などを挙げることができる。これらの重合開始剤は1種類のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
重合温度としては、使用する有機溶剤や開始剤などによって変動するが、一般的に40~180℃の範囲である。重合温度が上記範囲であることにより、良好に重合反応を進行させることができる。上記範囲を超えると、(メタ)アクリルポリマーの解重合や、着色などの不具合が起こる恐れがある。上記範囲を下回ると、重合反応が十分に進行せず、未反応のモノマーが残存しやすくなる。
以上の重合反応を行なうことにより、重合体が得られる。得られた重合体は、そのまま用いてもよいし、重合反応後の反応液に、ろ取や精製を施して単離してもよい。
【0023】
<感光性樹脂組成物>
本発明の感光性樹脂組成物は、上記した感光性樹脂、光重合開始剤、および重合性化合物を含む。
【0024】
<感光性樹脂>
感光性樹脂組成物に含まれる感光性樹脂としては、上記した本発明の感光性樹脂を特に制限なく使用することができる。
感光性樹脂組成物における感光性樹脂の含有割合としては、感光性樹脂組成物の全固形分に対して50質量%~95質量%とすることが好ましく、より好ましくは70質量%~90質量%であり、さらに好ましくは75質量%~85質量%である。
【0025】
<光重合開始剤>
光重合開始剤は、光照射により重合性化合物の重合反応の起点となる化合物であり、公知のいかなる光重合開始剤も使用することができる。光照射する光の波長については特に限定されるものではないが、波長に適した開始剤種を選択し使用することができる。本発明における光重合開始剤は単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
本発明の光重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン、N,N’-テトラアルキル-4,4’-ジアミノベンゾフェノン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-ブタノン-1、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノ-プロパノン-1、4,4’-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン(ミヒラーケトン)、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4-メトキシ-4’-ジメチルアミノベンゾフェノン等の芳香族ケトン類、アルキルアントラキノン、フェナントレンキノン等のキノン類、ベンゾイン、アルキルベンゾイン等のベンゾイン化合物、ベンゾインアルキルエーテル、ベンゾインフェニルエーテル等のベンゾインエーテル化合物、ベンジルジメチルケタール等のベンジル誘導体、2-(o-クロロフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体、2-(o-クロロフェニル)-4,5-ジ(m-メトキシフェニル)イミダゾール二量体、2-(o-フルオロフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体、2-(o-メトキシフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体、2,4-ジ(p-メトキシフェニル)-5-フェニルイミダゾール二量体、2-(2,4-ジメトキシフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体等の2,4,5-トリアリールイミダゾール二量体、N-フェニルグリシン、N-フェニルグリシン誘導体、9-フェニルアクリジン等のアクリジン誘導体、1,2-オクタンジオン,1-[4-(フェニルチオ)-,2-(O-ベンゾイルオキシム)]等のオキシムエステル類、7-ジエチルアミノ-4-メチルクマリン等のクマリン系化合物、2,4-ジエチルチオキサントン等のチオキサントン系化合物、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-ホスフィンオキサイド等のアシルホスフィンオキサイド系化合物などを使用することができる。
本発明の感光性樹脂組成物における光重合開始剤の含有割合としては、感光性樹脂組成物の全固形分に対して、0.01質量%~50質量%とすることが好ましく、より好ましくは0.1質量%~25質量%であり、さらに好ましくは0.1質量%~15質量%である。
【0026】
<重合性化合物>
重合性化合物とは少なくとも1個の重合性官能基を有する化合物であって、公知のいかなる化合物も使用することができる。重合性官能基としては、特に限定されず、例えば、ビニル基、(メタ)アクリレート基などの炭素‐炭素不飽和結合を有する基が挙げられ、中でも(メタ)アクリレート基が好ましい。
重合性化合物としては例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、カルビトール(メタ)アクリレート、イソボロニル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられ、2個以上の重合性官能基を有する化合物が好ましく、2種以上を併用してもよい。
本発明の感光性樹脂組成物における重合性化合物の含有割合としては、感光性樹脂組成物の全固形分に対して、3質量%~50質量%とすることが好ましく、より好ましくは5質量%~30質量%であり、さらに好ましくは10質量%~20質量%である。
【0027】
<その他成分>
本発明の感光性樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない限り、溶剤等のその他成分を添加することができる。溶剤としては、公知のいかなる溶剤も用いることができ、2種以上を併用してもよい。
溶剤としては例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、酢酸エチル、酢酸ブチル、アセトン、メチルエチルケトン、N,N-ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、ベンゼン、トルエン、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、酢酸エチレングリコールモノメチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノメチルエーテルなどを挙げることができる。
【0028】
本発明の感光性樹脂組成物は、上記成分を混合して調整することができる。混合方法は特に限定されるものではなく、全成分を同時に混合しても良いし、各成分を順次溶解させても良い。溶解させる順序や作業条件は特に限定されず、公知の方法で調整することができる。
【実施例0029】
以下、実施例および比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【0030】
以下に、感光性樹脂(A)の重合に使用した各モノマーを示す。
<モノマー(A)>
MBDO:2-methylene-4H-benzo[d][1,3]dioxin-4-one(一般式(1)のXが酸素原子)
<モノマー(B)>
MAA:メタクリル酸
<モノマー(C-1)>
MMA:メタクリル酸メチル
CHMA:メタクリル酸シクロヘキシル
<モノマー(C-2)>
St:スチレン
<その他のモノマー>
PhMI:フェニルマレイミド
CHMI:シクロヘキシルマレイミド
【0031】
(重合例1:感光性樹脂1)
300mLビーカーを用い、メタクリル酸(製品名:MAA、株式会社クラレ製)15.0g、メタクリル酸メチル(製品名:MMAモノマー、株式会社クラレ製)35.0g、メタクリル酸シクロヘキシル(製品名:ブレンマーCHMA、日油株式会社製)40.0g、MBDO 10.0g、酢酸プロピレングリコールモノメチルエーテル(製品名:MMPGAC、ダイセル株式会社製)30gを混合した後氷冷し、t-ブチルプロポキシネオドデカネート10.0gを加えた組成物を得た。
続いて撹拌機、温度計、冷却器、滴下ロート及び窒素導入管を取り付けた1Lセパラブルフラスコに、酢酸プロピレングリコールモノメチルエーテル70.0gを仕込み、フラスコ内を窒素置換して、窒素雰囲気下にした。反応容器内を75℃まで昇温し、上記組成物を3時間かけて滴下し、その後75℃で4時間反応させることで感光性樹脂1を得た。
【0032】
(重合例2:感光性樹脂2)
t-ブチルプロポキシネオドデカネートの使用量を4.0gに変更したこと以外は重合例1と同様の手法で感光性樹脂2を得た。
【0033】
(重合例3:感光性樹脂3)
メタクリル酸メチルの使用量を25.0g、MBDOの使用量を20.0gに変更したこと以外は重合例1と同様の手法で感光性樹脂3を得た。
【0034】
(重合例4:感光性樹脂4)
メタクリル酸の使用量を25.0g、メタクリル酸メチルの使用量を25.0gに変更したこと以外は重合例1と同様の手法で感光性樹脂4を得た。
【0035】
(重合例5:感光性樹脂5)
メタクリル酸メチルの使用量を15.0g、MBDOの使用量を30.0gに変更したこと以外は重合例1と同様の手法で感光性樹脂5を得た。
【0036】
(重合例6:感光性樹脂6)
メタクリル酸メチルをスチレンに変更したこと以外は重合例1と同様の手法で感光性樹脂6を得た。
【0037】
(重合例7:感光性樹脂7)
メタクリル酸メチルの使用量を40.0g、MBDOの使用量を5.0gに変更したこと以外は重合例1と同様の手法で感光性樹脂7を得た。
【0038】
(重合例8:感光性樹脂8)
MBDOをフェニルマレイミドに変更したこと以外は重合例1と同様の手法で感光性樹脂8を得た。
【0039】
(重合例9:感光性樹脂9)
MBDOをシクロヘキシルマレイミドに変更したこと以外は重合例1と同様の手法で感光性樹脂9を得た。
【0040】
(重合例10:感光性樹脂10)
メタクリル酸メチルの使用量を40.0g、シクロヘキシルマレイミドの使用量を5.0gに変更したこと以外は重合例9と同様の手法で感光性樹脂10を得た。
【0041】
(重合例11:感光性樹脂11)
メタクリル酸メチルの使用量を25.0g、シクロヘキシルマレイミドの使用量を20.0gに変更したこと以外は重合例9と同様の手法で感光性樹脂11を得た。
【0042】
(重合例12:感光性樹脂12)
メタクリル酸の使用量を25.0g、メタクリル酸メチルの使用量を25.0gに変更したこと以外は重合例9と同様の手法で感光性樹脂12を得た。
【0043】
(重合例13:感光性樹脂13)
メタクリル酸メチルの使用量を45.0gに変更しMBDOの使用量を0gに変更したこと以外は重合例1と同様の手法で感光性樹脂13を得た。
【0044】
(重合例14:感光性樹脂14)
シクロヘキシルメタクリレートの使用量を55.0gに変更し、メタクリル酸の使用量の0gに変更したこと以外は重合例1と同様の手法で感光性樹脂14を得た。
【0045】
<感光性樹脂の評価>
重合例1~14で製造された感光性樹脂を用いて評価した。
【0046】
〔重量平均分子量、分散度の測定〕
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて以下の条件により、感光性樹脂1~14の重量平均分子量および分散度を求めた。
装置:東ソー(株)社製、HLC-8220
カラム:shodex社製、LF-804
標準物質:ポリスチレン
溶離液:THF(テトラヒドロフラン)
流量:1.0mL/min
カラム温度:40℃
検出器:RI(示差屈折率検出器)
【0047】
<実施例1>
重合例1で得た感光性樹脂1を用いて、以下の耐熱性、現像性(樹脂)、現像性(硬化膜)、密着性、及び耐薬品性の各評価を行った。結果を表1に示す。
【0048】
<実施例2~7、比較例1~7>
感光性樹脂の種類を表4~5のとおり変更した以外は、実施例1と同様に評価した。結果を表1~2に示す。
【0049】
〔耐熱性の評価〕
感光性樹脂を120℃に加温し、10hPa以下の真空下で30分間乾燥した。乾燥したサンプルは熱重量分析装置にて5%重量減少温度を求め、耐熱性の評価をした。5%重量減少温度とは、熱重量分析装置において、40℃から400℃まで、10℃/分で昇温する測定において、測定前の試料の重量の5%分が減少する温度を意味する。
感光性樹脂の5%減少温度が250℃未満を×、250℃以上を〇とした。
【0050】
〔現像性(樹脂)の評価〕
感光性樹脂10gにプロピレングリコールモノメチルエーテル10gを混合した希釈溶液をガラス基板にスピンコートし、120℃で乾燥させ、膜厚10μmの樹脂膜を得た。この樹脂膜が形成されたガラス基板を1.0%水酸化カリウム水溶液に1分間浸漬した。浸漬後のガラス基板を目視にて観察し、重合体の残存の有無を評価した。30秒以内に感光性樹脂が溶解する場合を○、溶解に30秒以上かかる場合を×とした。
【0051】
〔感光性樹脂組成物の調製〕
感光性樹脂10gに、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(共栄社化学株式会社製「ライトアクリレートDPE-6A」)1.5g、光重合開始剤(ビーエーエスエフ製「イルガキュア907」)0.5g、プレピレングリコールモノメチルエーテルアセテート20gを混合し、孔径0.5μmのフィルターを通過させ、感光性樹脂組成物を調製した。
【0052】
〔硬化膜の作製〕
調製した感光性樹脂組成物をガラス基板上にスピンコートにより塗布し、90℃で2分乾燥して厚み3μmの感光性樹脂組成物層からなる塗膜を形成した。得られた塗膜を超高圧水銀ランプにてマスクを介して200mJ/cm2の強度で紫外線を照射して、硬化膜を形成した。
【0053】
〔現像性(硬化膜)〕
感光性樹脂組成物層の露光部および未露光部をそれぞれ1%KOH水溶液に対し60秒間浸透させ、現像性を評価した。30秒以内に未露光部が溶解し露光部が溶解しない場合を◎、60秒以内に未露光部が溶解し露光部が溶解しない場合を〇、未露光部および露光部が溶解するまたはどちらも溶解しない場合を×とした。
【0054】
〔密着性〕
硬化膜に対してクロスカット試験(JIS K5400)を行い、密着性を評価した。
10×10マス(100マス)の内、剥離したマス(1mm角の塗膜)およびマスの角にカケがなく100のマスが残存しているものを◎とし、マスの角にカケが見られ100のマスが残存しているものを〇とし、マスにカケや剥離が見られ、90以上99以下のマスが残存しているものを△とし、マスにカケや剥離が見られ、89以下のマスが残存しているものを×と評価した。
【0055】
〔耐薬品性の評価〕
硬化膜を碁盤目にクロスカット(100マス)した後、クロスカットを行った部分をN-メチルピロリドン(NMP)に90秒間浸漬させ、付着した液をふきとったのち、その前後の硬化膜のマス目の残存数を目視にて確認した。マス目が100マス残存している場合を◎、90以上99以下のマスが残存している場合を〇、50以上89以下のマスが残存している場合を△、50マス未満のマスが残存している場合を×とし評価した。
【0056】
【0057】
【0058】
実施例1~7では、感光性樹脂の現像性を損なわず、耐熱性が高くなり、それを用いた感光性樹脂組成物にて硬化膜を作製することで、密着性、耐薬品性に優れた硬化膜となった。
比較例1~5では、マレイミド骨格を導入することで、感光性樹脂の現像性を損なわずに耐熱性は向上しているものの、優れた密着性と耐薬品性の両立には至らなかった
比較例6では、感光性樹脂の優れた耐熱性は得られず、硬化膜の密着性が低くなった。
比較例7では、感光性樹脂の優れた耐熱性と現像性は得られず、硬化膜の密着性および耐薬品性も低くなった。