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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024124740
(43)【公開日】2024-09-13
(54)【発明の名称】共重合体及びコーティング剤
(51)【国際特許分類】
   C08F 224/00 20060101AFI20240906BHJP
【FI】
C08F224/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023032627
(22)【出願日】2023-03-03
(71)【出願人】
【識別番号】504180239
【氏名又は名称】国立大学法人信州大学
(71)【出願人】
【識別番号】000004341
【氏名又は名称】日油株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100207756
【弁理士】
【氏名又は名称】田口 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100165021
【弁理士】
【氏名又は名称】千々松 宏
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼坂 泰弘
(72)【発明者】
【氏名】川谷 諒
(72)【発明者】
【氏名】長澤 敦
(72)【発明者】
【氏名】原 脩人
【テーマコード(参考)】
4J100
【Fターム(参考)】
4J100AJ02R
4J100AL03Q
4J100AL04Q
4J100AL08Q
4J100AU29P
4J100BC04Q
4J100BC43P
4J100CA05
4J100CA06
4J100DA01
4J100DA48
4J100JA01
(57)【要約】      (修正有)
【課題】表面硬度が高く、密着性や耐アルカリ性に優れた膜を形成することができる共重合体を提供する。
【解決手段】一般式(1)で示されるモノマー(A)を1~99質量%、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(B)を1~99質量%、これらと共重合可能なラジカル重合性モノマー(C)を0~70質量%からなり、重量平均分子量が3,000~1,000,000であることを特徴とする共重合体。

【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で示されるモノマー(A)を1~98質量%、下記一般式(2)で示される(メタ)アクリル酸アルキルエステル(B)を1~98質量%、(メタ)アクリル酸を1~50質量%、これらと共重合可能なラジカル重合性モノマー(C)を0~70質量%からなり重量平均分子量が3,000~1,000,000であることを特徴とする共重合体。
【化1】
(一般式(1)中、Xは単結合、又は酸素原子を示す。)
【化2】
(一般式(2)中、Rは水素原子またはメチル基を示し、Rは炭素数1~8の炭化水素基を示す。)
【請求項2】
請求項1に記載の共重合体を含むことを特徴とするコーティング剤
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の構造を有する新規な共重合体に関するものである。より詳しくは、コーティング剤として好適に使用される共重合体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、耐水性、耐アルカリ性に優れたコーティング剤としては、フッ素系のコーティング剤が用いられてきたが、近年、フルオロカーボンの環境への残留性の問題から、非フッ素系のコーティングが求められている。コーティング剤には耐水、耐アルカリ性だけでなく、基材の保護のための表面硬度や、容易に剥がれないための密着性も要求される。コーティング層と基材の密着性が低い場合、使用中に剥がれたり隙間ができるなどの問題が生じる。密着性の向上には水酸基やカルボキシ基、スルホン酸基を導入することで、基材との相互作用を強くする手法や、コーティング層の柔軟性を上げ、基材への追従性を上げる手法が挙げられる。一方、これらの極性基を導入した場合、水への親和性も向上するため、高温での耐水性や耐アルカリ性が低下し、膜の膨潤や白濁が生じるといった問題がある。また、膜のコーティング層の柔軟性を上げた場合は表面硬度が低下するといった問題も生じる。
【0003】
特許文献1には、メタクリル酸メチル、α―メチルスチレン、環状構造を含むモノマーからなる共重合体が、表面硬度や耐水性やポリカーボネートとの積層性に優れることが示されている。しかしながら、環状構造部分はアルカリ条件下で加水分解されやすく、耐アルカリ性は十分とは言えなかった。特許文献2にはレジスト用の重合体として類似の環状構造を含む共重合体が示されており、密着性には優れるもののアルカリ溶解性を有するため、耐アルカリ性は十分とは言えなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2022-116643号公報
【特許文献2】特開2009-62529号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような問題を解決するべく、本発明は、表面硬度が高く、密着性や耐アルカリ性に優れた膜を形成可能な共重合体及び該共重合体を含むコーティング剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、前記課題を解決すべく検討した結果、構造中に一般式(1)で示されるモノマーと、一般式(2)で示されるモノマーと、(メタ)アクリル酸とを特定量で含む共重合体、および当該共重合体により構成されるコーティング剤により、上記課題を解決できることを見出し本発明を完成させた。
すなわち本発明は以下のものである。
【0007】
[1]下記一般式(1)で示されるモノマー(A)を1~98質量%、下記一般式(2)で示される(メタ)アクリル酸アルキルエステル(B)を1~98質量%、(メタ)アクリル酸を1~50質量%、これらと共重合可能なラジカル重合性モノマー(C)を0~70質量%からなり重量平均分子量が3,000~1,000,000であることを特徴とする共重合体。
【化1】
(一般式(1)中、Xは単結合、又は酸素原子を示す。)
【化2】
(一般式(2)中、Rは水素原子またはメチル基を示し、Rは炭素数1~8の炭化水素基を示す。)
[2]上記[1]に記載の共重合体を含むことを特徴とするコーティング剤
【発明の効果】
【0008】
本発明の共重合体およびコーティング剤は、表面硬度が高く、密着性や耐アルカリ性に優れた膜を形成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を説明する。なお、本発明において「(メタ)アクリル」とは、アクリル及びメタクリルを包含する総称であり、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート及びメタクリレートを包含する総称である。
【0010】
<共重合体>
本発明の共重合体は、構成単位として、一般式(1)で示されるモノマー(A)、一般式(2)で示される(メタ)アクリル酸アルキルエステル(B)、(メタ)アクリル酸を含む。また、本発明の共重合体は、前記モノマー(A)、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(B)及び(メタ)アクリル酸と共重合可能なラジカル重合性モノマー(C)を構成単位として含んでもよい。なお、ラジカル重合性モノマー(C)は、任意の構成単位であり、本発明の共重合体は、ラジカル重合性モノマー(C)を含まなくてもよい。
すなわち、本発明の共重合体は、必須の構成単位であるモノマー(A)、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(B)、及び(メタ)アクリル酸と、任意の構成単位であるラジカル重合性モノマー(C)とから構成される。
【0011】
<モノマー(A)>
本発明のモノマー(A)は、下記一般式(1)で示されるモノマーである。
【化3】
(一般式(1)中、Xは単結合、又は酸素原子を示す。)
モノマー(A)は、表面硬度や耐アルカリ性向上の観点から、Xが酸素原子であることが好ましい。
本発明の共重合体におけるモノマー(A)の含有量としては、共重合体を構成する全単量体に対して1~98質量%であり、好ましくは5~50質量%であり、より好ましくは7~30質量%である。これら範囲にすることで、表面硬度や耐アルカリ性を向上させることができる。
【0012】
<モノマー(B)>
本発明のモノマー(B)は、下記一般式(2)で示されるモノマーである。
【化4】
(一般式(2)中、Rは水素原子またはメチル基を示し、Rは炭素数1~8の炭化水素基を示す。)
【0013】
式(2)中、Rは、水素原子またはメチル基である。Rは、炭素数1~8の炭化水素基である。炭素数1~8の炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、iso-ブチル基、tert-ブチル基、n-ヘキシル基、シクロヘキシル基、n-オクチル基、2-エチルヘキシル基、フェニル基、ベンジル基などが挙げられる。表面硬度や耐アルカリ性の観点からメチル基、エチル基、ブチル基、シクロヘキシル基が好ましい。
これらのモノマー(B)は、1種類のみを選択しても良いし、2種類以上含有しても良い。
【0014】
モノマー(B)としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸tert-ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸メチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n-オクチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸フェニルなどが挙げられる。モノマー(B)は1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよいが、モノマー(B)は、(メタ)アクリル酸シクロヘキシルを少なくとも含むことが好ましい。
本発明の共重合体におけるモノマー(B)の含有量としては、共重合体を構成する全単量体に対して1~98質量%であり、好ましくは10~90質量%、より好ましくは50~80質量%である。本範囲とすることで、優れた耐アルカリ性、密着性を両立することができる。
【0015】
<(メタ)アクリル酸>
本発明における(メタ)アクリル酸は、アクリル酸あるいはメタクリル酸である。(メタ)アクリル酸として、アクリル酸あるいはメタクリル酸を単独で使用してもよいし、2種類を併用してもよい。重合性および表面硬度の観点からメタクリル酸が好ましい。
本発明の共重合体における(メタ)アクリル酸の含有量としては、共重合体を構成する全単量体に対して1~50質量%であり、好ましくは1~30質量%であり、より好ましくは5~20質量%であり、さらに好ましくは10~20質量%である。本範囲とすることで、表面硬度及び密着性を向上させることができる。
【0016】
<ラジカル重合性モノマー(C)>
本発明の共重合体は、ラジカル重合性モノマー(C)を構成単位として含んでもよい。
ラジカル重合性モノマー(C)は、上記したモノマー(A)、モノマー(B)及び(メタ)アクリル酸と共重合可能なモノマーである。
ラジカル重合性モノマー(C)としては、例えば、炭素-炭素不飽和二重結合を有するモノマーであって、上記したモノマー(A)、モノマー(B)及び(メタ)アクリル酸以外のモノマーが挙げられる。
ラジカル重合性モノマー(C)としては、例えば、スチレンや(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロニトリルなどが挙げられる。
【0017】
本発明の共重合体におけるラジカル重合性モノマー(C)の含有量としては、共重合体を構成する全単量体に対して0~70質量%であり、好ましくは0~30質量%であり、より好ましくは0~10質量%であり、さらに好ましくは0質量%である。
【0018】
本発明の共重合体における、上記したモノマー(A)、モノマー(B)、(メタ)アクリル酸及びラジカル重合性モノマー(C)の含有量は、本発明の共重合体を重合する際のそれぞれのモノマーの仕込み量によって調整することができる。
【0019】
<重量平均分子量>
本発明の共重合体の重量平均分子量は、3,000~1,000,000であり、好ましくは5,000~100,000、より好ましくは5,000~50,000である。重合体の重量平均分子量が低すぎると、表面硬度やアルカリ耐性が不足し、重量平均分子量が高すぎると溶解性が低下するおそれがある。重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いてポリスチレン換算で求めることができる。
【0020】
<共重合体の合成>
本発明の共重合体は、上記したモノマー(A)、モノマー(B)、及び(メタ)アクリル酸を含むモノマー組成物を重合して得ることができる。なお、該モノマー組成物は、必要に応じてラジカル重合性モノマー(C)を含むことができる。
重合は公知の方法で行うことができる。例えば、溶液重合、懸濁重合、乳化重合などが挙げられるが、共重合体の重量平均分子量を上記範囲内に調整しやすいという面で、溶液重合が好ましい。開始剤およびモノマーを投入するに際しては、例えば、全量を一括仕込みしても良いし、一部を一括仕込みして残りを滴下しても良いし、あるいは全量を滴下しても良い。発熱の制御しやすさから、一部を一括仕込みして残りを滴下するか、または全量を滴下するのが好ましい。
重合開始剤は、公知のものを使用することができる。例えば、t-ブチルプロポキシネオドデカネートやt-ブチルパーオキシネオデカノエートなどの有機過酸化物、2,2’-アゾビスイソブチロニトリルなどのアゾ系重合開始剤などを挙げることができる。これらの重合開始剤は1種類のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
重合温度としては、使用する有機溶剤や開始剤などによって変動するが、一般的に40~180℃の範囲である。重合温度が上記範囲であることにより、良好に重合反応を進行させることができる。上記範囲を超えると、(メタ)アクリルポリマーの解重合や、着色などの不具合が起こる恐れがある。上記範囲を下回ると、重合反応が十分に進行せず、未反応のモノマーが残存しやすくなる。
以上の重合反応を行なうことにより、重合体が得られる。得られた重合体は、そのまま用いてもよいし、重合反応後の反応液に、ろ取や精製を施して単離してもよい。
【0021】
<コーティング剤組成物>
本発明のコーティング剤組成物は、上記した本発明の共重合体を含み、さらに溶剤を含むことが好ましい。
【0022】
溶剤としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、酢酸エチル、酢酸ブチル、アセトン、メチルエチルケトン、N,N-ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、ベンゼン、トルエン、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどを挙げることができる。
共重合体の溶解性や塗布時の揮発性の観点から酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートが好ましい。
【0023】
コーティング剤組成物における本発明の共重合体の含有量としては、特に限定されないが、コーティング剤組成物の全量に対して5質量%~90質量%とすることが好ましく、より好ましくは10質量%~50質量%であり、さらに好ましくは15質量%~30質量%である。
本発明のコーティング剤組成物は、上記成分を混合して調整することができる。混合方法は特に限定されるものではなく、全成分を同時に混合しても良いし、各成分を順次溶解させても良い。溶解させる順序や作業条件は特に限定されず、公知の方法で調整することができる。
【実施例0024】
以下、実施例および比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【0025】
以下に、共重合体の重合に使用した各モノマーを示す。
<モノマー(A)>
MBDO:2-methylene-4H-benzo[d][1,3]dioxin-4-one(一般式(1)のXが酸素原子)
<モノマー(B)>
MMA:メタクリル酸メチル
CHMA:メタクリル酸シクロヘキシル
<(メタ)アクリル酸>
MAA:メタクリル酸
<その他のモノマー>
CHMI:シクロヘキシルマレイミド
【0026】
(重合例1:共重合体A)
300mLビーカーを用い、メタクリル酸(製品名:MAA、株式会社クラレ製)15.0g、メタクリル酸メチル(製品名:MMAモノマー、株式会社クラレ製)30.0g、メタクリル酸シクロヘキシル(製品名:ブレンマーCHMA、日油株式会社製)45.0g、MBDO 10.0g、酢酸プロピレングリコールモノメチルエーテル(製品名:MMPGAC、ダイセル株式会社製)30gを混合した後氷冷し、t-ブチルプロポキシネオドデカネート5.0gを加えた。
続いて撹拌機、温度計、冷却器、滴下ロート及び窒素導入管を取り付けた1Lセパラブルフラスコに、酢酸プロピレングリコールモノメチルエーテル70.0gを仕込み、フラスコ内を窒素置換して、窒素雰囲気下にした。反応容器内を75℃まで昇温し、組成物を3時間かけて滴下し、その後75℃で4時間反応させることで共重合体Aを得た。
【0027】
(重合例2:共重合体B)
メタクリル酸メチルの使用量を35.0g、MBDOの使用量を5.0gに変更したこと以外は重合例1と同様の手法で共重合体Bを得た。
【0028】
(重合例3:共重合体C)
メタクリル酸メチルの使用量を20.0g、MBDOの使用量を20.0gに変更したこと以外は重合例1と同様の手法で共重合体Cを得た。
【0029】
(重合例4:共重合体D)
メタクリル酸メチルの使用量を0g、MBDOの使用量を40.0gに変更したこと以外は重合例1と同様の手法で共重合体Dを得た。
【0030】
(重合例5:共重合体E)
メタクリル酸メチルの使用量を0g、CHMAの使用量を75.0gに変更したこと以外は重合例1と同様の手法で共重合体Eを得た。
【0031】
(重合例6:共重合体F)
メタクリル酸メチルの使用量を44.0g、メタクリル酸の使用量を1.0gに変更したこと以外は重合例1と同様の手法で共重合体Fを得た。
【0032】
(重合例7:共重合体G)
t-ブチルプロポキシネオドデカネートの使用量を10.0gに変更したこと以外は重合例1と同様の手法で共重合体Gを得た。
【0033】
(重合例8:共重合体H)
t-ブチルプロポキシネオドデカネートの使用量を1.0gに変更したこと以外は重合例1と同様の手法で共重合体Hを得た。
【0034】
(重合例9:共重合体I)
メタクリル酸メチルの使用量を40.0g、MBDOの使用量を0gに変更したこと以外は重合例1と同様の手法で共重合体Iを得た。
【0035】
(重合例10:共重合体J)
メタクリル酸メチルの使用量を55.0g、MBDOの使用量を0g、メタクリル酸の使用量を0gに変更したこと以外は重合例1と同様の手法で共重合体Jを得た。
【0036】
(重合例11:共重合体K)
MBDOの使用量を0g、CHMIの使用量を10.0gに変更したこと以外は重合例1と同様の手法で共重合体Kを得た。
【0037】
〔重量平均分子量、分散度の測定〕
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて以下の条件により、重量平均分子量および分散度を求めた。
装置:東ソー(株)社製、HLC-8220
カラム:shodex社製、LF-804
標準物質:ポリスチレン
溶離液:THF(テトラヒドロフラン)
流量:1.0mL/min
カラム温度:40℃
検出器:RI(示差屈折率検出器)
【0038】
<実施例1>
重合例1で製造された共重合体AをPGMEAにて固形分20%になるように調製し、コーティング剤を得た。調製したコーティング剤をガラス基板上にスピンコートにより塗布し、90℃で2分乾燥して厚み3μmのコーティング膜を形成した。該コーティング膜について、以下のとおり、表面硬度、密着性、耐薬品性(アルカリ耐性)の評価を行った。
【0039】
<実施例2~8、比較例1~3>
共重合体の種類を表1~2のとおり変更した以外は、実施例1と同様にしてコーティング膜を作製した。該コーティング膜について、以下のとおり、表面硬度、密着性、耐薬品性(アルカリ耐性)の評価を行った。
【0040】
〔表面硬度〕
コーティング膜に対して、JIS K5600に準拠して、荷重750gの条件で引掻き硬度(鉛筆法)を測定し、下記の基準で評価した。
◎:鉛筆硬度が5H以上
○:鉛筆硬度が4H
×:鉛筆硬度が3H以下
【0041】
〔密着性〕
コーティング膜に対してクロスカット試験(JIS K5400)を行い、密着性を評価した。10×10マスの内、剥離したマス(1mm角の塗膜)およびマスの角にカケがなく100/100のマスが残存しているものを◎、マスの角にカケ見られ100/100マス残存しているものを〇、マスにカケや剥離が見られ、一部のマスに剥離が見られるものを×と評価した。
【0042】
〔耐薬品性(アルカリ耐性)の評価〕
コーティング膜を碁盤目にクロスカット(100マス)した後、クロスカットを行った部分を1%水酸化ナトリウム水溶液に90秒間浸漬させ、その前後の硬化膜のマス目の残存数を目視にて確認した。マス目が100マス残存している場合を◎、マス目が70~99マス残存している場合を〇、残存しているマス目の数が70マス未満を×とし評価した。
【0043】
【表1】
【0044】
【表2】
【0045】
実施例1~8の結果より、本発明の共重合体を含むコーティング剤による形成されたコーティング膜は、表面硬度が高く、密着性及び耐アルカリ性に優れていた。
一方で、比較例1~3の結果より、本発明の要件を満足しない共重合体を用いて形成したコーティング膜は、表面硬度、密着性及び耐アルカリ性の少なくともいずれかにおいて、実施例よりも劣る結果となった。