(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024124741
(43)【公開日】2024-09-13
(54)【発明の名称】共重合体及び光学用ハードコートフィルム
(51)【国際特許分類】
C08F 290/06 20060101AFI20240906BHJP
C08F 218/02 20060101ALI20240906BHJP
【FI】
C08F290/06
C08F218/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023032628
(22)【出願日】2023-03-03
(71)【出願人】
【識別番号】504180239
【氏名又は名称】国立大学法人信州大学
(71)【出願人】
【識別番号】000004341
【氏名又は名称】日油株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100207756
【弁理士】
【氏名又は名称】田口 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100165021
【弁理士】
【氏名又は名称】千々松 宏
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼坂 泰弘
(72)【発明者】
【氏名】川谷 諒
(72)【発明者】
【氏名】松井 彩香
(72)【発明者】
【氏名】原 脩人
(72)【発明者】
【氏名】長澤 敦
【テーマコード(参考)】
4J100
4J127
【Fターム(参考)】
4J100AG01P
4J100AG02P
4J100AL08Q
4J100AL66S
4J100AL67R
4J100BA39S
4J100BC58P
4J100CA03
4J100CA23
4J100DA22
4J100DA47
4J100DA48
4J100DA62
4J100EA03
4J100FA03
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4J100JA01
4J127AA04
4J127BB021
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4J127CC031
4J127CC033
4J127CC161
4J127CC181
4J127EA13
4J127FA08
(57)【要約】
【課題】薄膜でも耐擦傷性、耐熱性、透明性、および耐湿性に優れるハードコートフィルムを形成できる共重合体を提供する。
【解決手段】 一般式(1)で示されるモノマー(A)、ポリエーテル骨格またはポリカーボネート骨格を有するウレタン(メタ)アクリレートであるモノマー(B)、1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有するモノマー(C)、及び前記モノマー(A)、(B)、(C)と共重合可能なその他のモノマー(D)を構成単位として含み、
一般式(1)で示されるモノマー(A)の含有量が1~45質量%、ポリエーテル骨格またはポリカーボネート骨格を有するウレタン(メタ)アクリレートであるモノマー(B)と、1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有するモノマー(C)の合計の含有量が25~90質量%、前記モノマー(A)、(B)、(C)と共重合可能なその他のモノマー(D)の含有量が5~74質量%であることを特徴とする共重合体。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で示されるモノマー(A)、ポリエーテル骨格またはポリカーボネート骨格を有するウレタン(メタ)アクリレートであるモノマー(B)、1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有するモノマー(C)、及び前記モノマー(A)、(B)、(C)と共重合可能なその他のモノマー(D)を構成単位として含み、
下記一般式(1)で示されるモノマー(A)の含有量が1~45質量%、ポリエーテル骨格またはポリカーボネート骨格を有するウレタン(メタ)アクリレートであるモノマー(B)と、1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有するモノマー(C)の合計の含有量が25~90質量%、前記モノマー(A)、(B)、(C)と共重合可能なその他のモノマー(D)の含有量が5~74質量%であることを特徴とする共重合体。
【化1】
(一般式(1)中、Xは単結合、又は酸素原子を示す。)
【請求項2】
請求項1に記載の共重合体を含むことを特徴とする光学用ハードコートフィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄膜においても耐擦傷性、耐熱性、透明性および耐湿性に優れる光学用ハードコートフィルムを作製することが可能な共重合体、及び該共重合体を含む光学用ハードコートフィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
プラスチックやガラス材料の光学用成形体への進出は著しく、液晶表示装置やプラズマディスプレイ、有機EL表示装置等のフラットディスプレイ、カラーフィルター用保護膜、 眼鏡レンズ、フレネルレンズ、レンチキュラーレンズ、TFT(Thin Film Transistor)用のプリズムレンズシート、非球面レンズ、光ディスク用コーティング剤および光ファイバー接続用接着剤、光導波路用コア材およびクラッド材等の様々な光学用成形体への検討が盛んに行われている。
これら光学用成形体に使用されるハードコートフィルムの要求される物性として、耐擦傷性や耐熱性、透明性や耐湿性が求められており、近年では小型化の需要も増加しており様々な検討が行われてきた。
ポリメチルメタクリレートに代表されるアクリル系樹脂は透明性に優れ、高い光線透過率や低複屈折率、低位相差の光学等方材料として使用され、かつ、フレキシブル性に優れ取扱いやすく注目されてきたが、一般的に、耐擦傷性や耐熱性、耐湿性に乏しく、近年需要が高まっている小型製品に適応できるよう薄膜化すると、さらに耐擦傷性や耐湿性に劣り用途が限られていた。
【0003】
耐擦傷性と耐熱性、及び耐湿性に優れるアクリル系樹脂としては、マレイミド類を共重合したマレイミド系共重合体等が知られている(特許文献1参照)。しかし、マレイミドの導入によりアクリル樹脂のメリットであった透明性が低下し、優れた耐熱性、耐湿性を付与するには透明性の維持は難しかった。
一方、耐熱性と透明性を有するアクリル系樹脂としては、分子鎖中に水酸基とエステル基とを有する化合物をラクトン環化縮合反応させることによって得られるラクトン環含有化合物が知られている(特許文献2参照)。しかし、薄膜状では充分な耐擦傷性や耐湿性は得られなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2008/050573号
【特許文献2】特開2009-161583号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、薄膜でも耐擦傷性、耐熱性、透明性、および耐湿性に優れる光学用ハードコートフィルムを形成することが可能な共重合体、及び該共重合体を含む光学用ハードコートフィルムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、前記課題を解決すべく検討した結果、特定構造のモノマーを特定量含む共重合体を用いることにより上記課題を解決できることを見出した。
すなわち、本発明は、以下のものである。
【0007】
[1]下記一般式(1)で示されるモノマー(A)、ポリエーテル骨格またはポリカーボネート骨格を有するウレタン(メタ)アクリレートであるモノマー(B)、1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有するモノマー(C)、及び前記モノマー(A)、(B)、(C)と共重合可能なその他のモノマー(D)を構成単位として含み、
下記一般式(1)で示されるモノマー(A)の含有量が1~45質量%、ポリエーテル骨格またはポリカーボネート骨格を有するウレタン(メタ)アクリレートであるモノマー(B)と、1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有するモノマー(C)の合計の含有量が25~90質量%、前記モノマー(A)、(B)、(C)と共重合可能なその他のモノマー(D)の含有量が5~74質量%であることを特徴とする共重合体。
【化1】
(一般式(1)中、Xは単結合、又は酸素原子を示す。)
[2]上記[1]に記載の共重合体を含むことを特徴とする光学用ハードコートフィルム。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、薄膜でも耐擦傷性、耐熱性、透明性、および耐湿性に優れる光学用ハードコートフィルムを形成することが可能な共重合体、及び該共重合体を含む光学用ハードコートフィルムを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を説明する。なお、本発明において「(メタ)アクリル」とは、アクリル及びメタクリルを包含する総称であり、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート及びメタクリレートを包含する総称であり、「(メタ)アクリロイル」とは、アクリロイル及びメタクリロイルを包含する総称である。
【0010】
<共重合体>
本発明の共重合体は、その構成単位として、下記一般式(1)で示されるモノマー(A)、ポリエーテル骨格またはポリカーボネート骨格を有するウレタン(メタ)アクリレートであるモノマー(B)、1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリレートであるモノマー(C)、及び前記モノマー(A)、(B)、(C)と共重合可能なその他のモノマー(D)を含む。
また、本発明の共重合体は、下記一般式(1)で示されるモノマー(A)の含有量が1~40質量%、ポリエーテル骨格またはポリカーボネート骨格を有するウレタン(メタ)アクリレートであるモノマー(B)と、1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有するモノマー(C)の合計の含有量が25~90質量%、前記モノマー(A)、(B)、(C)と共重合可能なその他のモノマー(D)の含有量が5~74質量%である。
本発明の共重合体により、薄膜でも耐擦傷性、耐熱性、透明性、および耐湿性に優れる光学用ハードコートフィルム(以下、単にハードコートフィルムと記載することもある)を得ることができる。
【0011】
<モノマー(A)>
本発明におけるモノマー(A)は、下記一般式(1)で示されるモノマーである。
【化2】
(一般式(1)中、Xは単結合、又は酸素原子を示す。)
式(1)中、Xは単結合または酸素原子である。耐擦傷性および耐湿性の観点から酸素原子が好ましい。
本発明の共重合体におけるモノマー(A)の含有量としては、1~45質量%であり、好ましくは10~38質量%、より好ましくは20~35質量%である。これらの範囲とすることで、優れた耐擦傷性、耐熱性および耐湿性をもつハードコートフィルムを得ることができる。モノマー(A)の含有量が1質量%未満となる場合、充分な耐擦傷性、耐熱性および耐湿性の向上効果が得られない。また、モノマー(A)の含有量が45質量%を超える場合、耐擦傷性、耐熱性および耐湿性は得られるものの、透明性が低下する。
なお、本明細書において、各モノマー(モノマー(A)~モノマー(D))は、共重合体中では、各モノマーを原料として重合された共重合体を構成する構成単位として存在する。本明細書において、共重合体におけるモノマーの含有量とは、共重合体全量を基準とした、各モノマー由来の構成単位の含有量を意味する。
【0012】
<モノマー(B)>
本発明におけるモノマー(B)は、ポリエーテル骨格またはポリカーボネート骨格を有するウレタン(メタ)アクリレートである。
ウレタン(メタ)アクリレートは、1分子中にウレタン結合と(メタ)アクリロイル基とを有する化合物を意味する。ウレタン(メタ)アクリレートの製造方法は特に限定されないが、例えば多価アルコール、イソシアネート又はイソシアヌレートなどのポリイソシアネート、及び水酸基を有する(メタ)アクリレートまたはイソシアネート基を有する(メタ)アクリレートを反応させることによって得られる。
本発明におけるウレタン(メタ)アクリレートとしては、ハードコートフィルムの耐熱性、耐湿性の観点から、ポリエーテル骨格を有するウレタン(メタ)アクリレート、またはポリカーボネート骨格を有するウレタン(メタ)アクリレートである。これらの中でも、ウレタン(メタ)アクリレートとしては、ポリカーボネート骨格を有するウレタン(メタ)アクリレートが好ましい。
【0013】
ウレタン(メタ)アクリレートを単独で硬化させた硬化体のガラス転移点は、ハードコートフィルムの室温下での十分な耐擦傷性、耐熱性、耐湿性を得る観点から、好ましくは-10℃以上であり、より好ましくは0℃以上であり、さらに好ましくは20℃以上である。また、上記ガラス転移点は、作業性の観点からは、特に限定されないが、好ましくは60℃以下であり、より好ましくは50℃以下であり、さらに好ましくは40℃以下である。なお、ガラス転移点は、例えば示差走査熱量計を用いて測定することができる。
ウレタン(メタ)アクリレートの市販品としては、例えばポリエーテル骨格をもつウレタン(メタ)アクリレートとして、三菱ケミカル(株)製、製品名:UV-3300B、UV-3700B、UV-6640B、根上工業(株)製、製品名:UN-6200、UN-6207、UN-6060S、ポリカーボネート骨格をもつウレタン(メタ)アクリレートとして、三菱ケミカル(株)製、製品名:UV-3310B、ダイセル・オルネクス(株)製、製品名:EBECRYL 8301R、EBECRYL 8254等が挙げられる。
これらのモノマー(B)は、1種類のみを選択しても良いし、2種類以上含有しても良い。
【0014】
<モノマー(C)>
本発明におけるモノマー(C)は、1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリレートである。
多官能(メタ)アクリレートとしては、2つの(メタ)アクリロイル基を有する2官能(メタ)アクリレート、3つの(メタ)アクリロイル基を有する3官能(メタ)アクリレート、4つの(メタ)アクリロイル基を有する4官能(メタ)アクリレートが挙げられる。ハードコートフィルムの耐擦傷性、耐熱性、耐湿性の観点から、3官能(メタ)アクリレート、4官能(メタ)アクリレートが好ましく、3官能(メタ)アクリレートの中でも、ペンタエリトリトールトリ(メタ)アクリラート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリラート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリラート、ジペンタエリトリトールトリ(メタ)アクリラートが好ましく、4官能(メタ)アクリレートの中でも、ペンタエリトリトールテトラ(メタ)アクリラート、ジペンタエリトリトールテトラ(メタ)アクリラート、ジペンタエリトリトールテトラ(メタ)アクリラート、ソルビトールテトラ(メタ)アクリラートが好ましく、3官能(メタ)アクリレートのペンタエリトリトールトリ(メタ)アクリラートがより好ましい。
これらのモノマー(C)は、1種類のみを選択しても良いし、2種類以上含有しても良い。
【0015】
本発明の共重合体における、モノマー(B)とモノマー(C)の合計の含有量は25~90質量%であり、好ましくは30~85質量%であり、より好ましくは50~75質量%である。モノマー(B)とモノマー(C)の合計の含有量が25質量%未満であると、ハードコートフィルムを作製した際に充分な透明性が得られず、90質量%超であると耐擦傷性、耐熱性、耐湿性に劣る。
【0016】
<モノマー(D)>
本発明のモノマー(D)は、モノマー(A)、モノマー(B)、及びモノマー(C)と共重合可能なモノマーであれば特に限定されないが、例えば、スチレン、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、カルビトール(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニルエチル(メタ)アクリレート、イソボロニル(メタ)アクリレート等の単官能の(メタ)アクリレートが挙げられる。モノマー(D)は、モノマーの溶解性、耐擦傷性、耐熱性および耐湿性の観点から環状構造を有する化合物が好ましく、ベンゼン環を有する化合物がより好ましく、1つのベンゼン環を有する化合物がさらに好ましく、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニルエチル(メタ)アクリレートが特に好ましい。
モノマー(d)は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0017】
本発明の共重合体におけるモノマー(D)の含有量としては、5~74質量%であり、好ましくは10~50質量%、より好ましくは10~30質量%である。これらの範囲とすることで、本発明の共重合体により作製されるハードコートフィルムを無溶剤系として使用できる。モノマー(D)の含有量が10質量%未満となる場合、ハードコートフィルムの溶解性が悪く透明性が低下する。また、モノマー(D)の含有量が74質量%を超える場合、充分な耐擦傷性、耐熱性および耐湿性が得られない。
【0018】
本発明の共重合体における、上記したモノマー(A)、モノマー(B)、モノマー(C)及びモノマー(D)の含有量は、後述するハードコートフィルムを製造するためのハードコートフィルム組成物の(A)~(D)それぞれの含有量(仕込み量)によって調整することができる。なお、ハードコートフィルム組成物を光照射により硬化することで、本発明の共重合体を含有するハードコートフィルムを得ることができる。
本発明の共重合体は、上記したモノマー(A)、モノマー(B)、モノマー(C)及びモノマー(D)以外の他のモノマーを構成単位として含んでもよいが、他のモノマーを構成単位として含まないことが好ましい。すなわち、本発明の共重合体は、構成単位として、モノマー(A)、モノマー(B)、モノマー(C)及びモノマー(D)のみからなることが好ましい。
【0019】
<光重合開始剤>
本発明のハードコートフィルムを製造するためのハードコートフィルム組成物は、上記したモノマー(A)、モノマー(B)、モノマー(C)、及びモノマー(D)を含有し、さらにこれらのモノマーを共重合させるための光重合開始剤を含有することが好ましい。
光重合開始剤は、光照射により重合性化合物の重合反応の起点となる化合物であり、公知のいかなる光重合開始剤も使用することができる。光照射する光の波長については特に限定されるものではないが、波長に適した開始剤種を選択し使用することができる。本発明における光重合開始剤は単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0020】
本発明の光重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン、N,N’-テトラアルキル-4,4’-ジアミノベンゾフェノン、1-ヒドロキシシクロヘキサン-1-イルフェニルケトン等の芳香族ケトン類、アルキルアントラキノン、フェナントレンキノン等のキノン類、ベンゾイン、アルキルベンゾイン等のベンゾイン化合物、ベンゾインアルキルエーテル、ベンゾインフェニルエーテル等のベンゾインエーテル化合物、ベンジルジメチルケタール等のベンジル誘導体などを使用することができる。
本発明のハードコートフィルム組成物における光重合開始剤の含有量としては、ハードコートフィルム組成物に対して、0.01質量%~50質量%とすることが好ましく、より好ましくは0.1質量%~25質量%であり、さらに好ましくは0.1質量%~15質量%である。
【0021】
<その他>
ハードコートフィルム組成物には、本発明の効果を阻害しない範囲で、上記したモノマー(A)、モノマー(B)、モノマー(C)、モノマー(D)、及び光重合開始剤以外のその他の成分を含んでもよい。
その他の成分としては、例えば、溶剤等を添加することができる。溶剤としては、公知のいかなる溶剤も用いることができ、2種以上を併用してもよい。
溶剤としては例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、酢酸エチル、酢酸ブチル、アセトン、メチルエチルケトン、N,N-ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、ベンゼン、トルエン、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、酢酸エチレングリコールモノメチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノメチルエーテルなどが挙げられる。
【0022】
<ハードコートフィルム>
本発明のハードコートフィルムは、上記した共重合体を含むフィルムである。
本発明のハードコートフィルムは、モノマー(A)、モノマー(B)、モノマー(C)、モノマー(D)と、光重合開始剤を含むハードコートフィルム組成物を光照射により光重合させた硬化物である。
本発明のハードコートフィルムは、揮発性有機化合物を含まない無溶剤系のハードコートフィルムとすることが好ましい。なお、揮発性有機化合物は、沸点が260℃以下の有機溶媒を意味することとする。
無溶剤系の場合であっても、本発明のハードコートフィルムは、上記した特定のモノマーを特定量含むため、耐擦傷性や耐熱性を良好にすることができる。
【0023】
ハードコートフィルムにおける上記した共重合体の含有量は、特に限定されないが、好ましくは60質量%以上であり、より好ましくは80質量%以上であり、さらに好ましくは95質量%以上である。
【0024】
本発明のハードコートフィルムの厚みは、好ましくは2~20μmであり、より好ましくは3~15μmであり、さらに好ましくは5~10μmである。本発明のハードコートフィルムは、薄膜であっても耐擦傷性、耐熱性、透明性および耐湿性に優れる。
【実施例0025】
以下、実施例および比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【0026】
以下に、ハードコートフィルムの作製に使用した各モノマーを示す。
<モノマー(A)>
MBDO:2-methylene-4H-benzo[d][1,3]dioxin-4-one(一般式(1)のXが酸素原子)
<モノマー(B)>
ウレタンアクリレート:三菱ケミカル(株)製、UV-3310B
<モノマー(C)>
ペンタエリトリトールトリアクリラート
<モノマー(D)>
ベンジルアクリレート
<その他のモノマー(a’)>
N-シクロヘキシルマレイミド
α-メチレン-γ-ブチロラクトン
<光重合開始剤>
1-ヒドロキシシクロヘキサン-1-イルフェニルケトン:BASF製、イルガキュア184
【0027】
(作製例1:ハードコートフィルム1)
100mLの褐色スクリュー管に、MBDO 2.0g、ウレタンアクリレート(三菱ケミカル(株)製、UV-3310B)21.0g、ペンタエリトリトールトリアクリラート(キシダ化学(株)製)21.0g、ベンジルアクリレート(東京化成工業(株)製)5.0g、1-ヒドロキシシクロヘキサン-1-イルフェニルケトン(東京化成工業(株)製)1.0gを均一液となるまで撹拌混合し、ハードコートフィルム組成物を得た。
続いて、ハードコートフィルム組成物をメスピペットにてガラス基板(松浪硝子工業(株)製、S2112、ヘーズ0.3)上に約1mL滴下し、バーコーター(φ8×300mm)にて10μmと5μmの膜を形成させ、超高圧水銀ランプにてマスクを介して200mJ/cm2の強度の紫外線を約5分間照射することで、本発明の共重合体を含むハードコートフィルム1を作製した。
【0028】
(作製例2:ハードコートフィルム2)
MBDO 5.0g、ウレタンアクリレート(三菱ケミカル(株)製、UV-3310B)19.5g、ペンタエリトリトールトリアクリラート(キシダ化学(株)製)19.5gに変更したこと以外は作製例1と同様の手法で、本発明の共重合体を含むハードコートフィルム2を得た。
【0029】
(作製例3:ハードコートフィルム3)
MBDO 10.0g、ウレタンアクリレート(三菱ケミカル(株)製、UV-3310B)17.0g、ペンタエリトリトールトリアクリラート(キシダ化学(株)製)17.0gに変更したこと以外は作製例1と同様の手法で、本発明の共重合体を含むハードコートフィルム3を得た。
【0030】
(作製例4:ハードコートフィルム4)
MBDO 15.0g、ウレタンアクリレート(三菱ケミカル(株)製、UV-3310B)14.5g、ペンタエリトリトールトリアクリラート(キシダ化学(株)製)14.5gに変更したこと以外は作製例1と同様の手法で、本発明の共重合体を含むハードコートフィルム4を得た。
【0031】
(作製例5:ハードコートフィルム5)
MBDO 20.0g、ウレタンアクリレート(三菱ケミカル(株)製、UV-3310B)12.0g、ペンタエリトリトールトリアクリラート(キシダ化学(株)製)12.0gに変更したこと以外は作製例1と同様の手法で、本発明の共重合体を含むハードコートフィルム5を得た。
【0032】
(作製例6:ハードコートフィルム6)
MBDO 0g、ウレタンアクリレート(三菱ケミカル(株)製、UV-3310B)22.0g、ペンタエリトリトールトリアクリラート(キシダ化学(株)製)22.0gに変更したこと以外は作製例1と同様の手法でハードコートフィルム6を得た。
【0033】
(作製例7:ハードコートフィルム7)
MBDO 0g、ウレタンアクリレート(三菱ケミカル(株)製、UV-3310B)14.5g、ペンタエリトリトールトリアクリラート(キシダ化学(株)製)14.5gに変更し、追加でN-シクロヘキシルマレイミド 15.0gを使用したこと以外は作製例1と同様の手法でハードコートフィルム7を得た。
【0034】
(作製例8:ハードコートフィルム8)
MBDO 0g、ウレタンアクリレート(三菱ケミカル(株)製、UV-3310B)14.5g、ペンタエリトリトールトリアクリラート(キシダ化学(株)製)14.5gに変更し、追加でα-メチレン-γ-ブチロラクトン 15.0gを使用したこと以外は作製例1と同様の手法でハードコートフィルム8を得た。
【0035】
<ハードコートフィルムの評価>
作製例1~8で製造されたハードコートフィルムを用いて評価した。
<実施例1>
作製例1で得たハードコートフィルム1を用いて、以下の耐擦傷性、耐熱性、透明性、耐湿性の評価を行った。結果を表2に示す。
<実施例2~5、比較例1~3>
ハードコートフィルムの種類を表2~3のとおり変更した以外は、実施例1と同様に評価した。結果を表2~3に示す。
【0036】
〔耐擦傷性の評価〕
ガラス基板上に塗布されたハードコートフィルム表面と粗さP400のサンドペーパー間の動摩擦係数を、静動摩擦測定器((株)トリニティーラボ製、TL201Tt)にて測定し、耐擦傷性の評価をした。動摩擦係数が小さいほどハードコートフィルムとサンドペーパー間の滑り性がよく、フィルムがサンドペーパーに削られにくく耐擦傷性が高いことを意味する。
動摩擦係数のN=3の測定における平均値が0.10以下を◎、0.10を超え0.20未満を〇、0.20以上を×とした。
【0037】
〔耐熱性の評価〕
ガラス基板上に塗布されたハードコートフィルムを基板上から剥がし、得られたフィルム樹脂を熱重量分析装置にて、流量200ml/minの窒素雰囲気下での5%重量減少温度を求め、耐熱性の評価をした。5%重量減少温度とは、熱重量分析装置において、40℃から400℃まで、10℃/分で昇温する測定において、測定前の試料の重量の5%分が減少する温度を意味する。
ハードコートフィルムの5%減少温度が240℃以下を×、240℃を超え260℃未満を〇とし、260℃以上を◎とした。
【0038】
〔透明性の評価〕
ガラス基板上に塗布されたハードコートフィルム膜のヘーズ値を、濁度系(日本電色工業(株)製、NDH5000)を用いて測定し、透明性を評価した。ヘーズ値が小さいほど透明性が高いことを意味する。
ヘーズ値が1.5以下を◎、1.5を超え2.5未満の場合〇、2.5以上を×とした。
【0039】
〔耐湿性の評価〕
ガラス基板上に塗布されたハードコートフィルムを80℃、相対湿度95%に設定した小型環境試験機(エスペック(株)製)に入れ、8時間、18時間、30時間、45時間、60時間、72時間、80時間、100時間、130時間、168時間経過後の外観の変化の有無を確認した。外観の変化が生じるまでに要した時間が20時間以下は×、20時間を超え72時間未満は〇、72時間以上は◎とした。
【0040】
【0041】
【0042】
実施例1~5では、薄膜においても耐擦傷性、耐熱性、透明性、耐湿性に優れたハードコートフィルムとなった。
比較例1~2では、マレイミド骨格を導入することで、ハードコートフィルムの耐擦傷性と耐熱性、耐湿性は向上しているものの、透明性が悪化し、薄膜にすると耐湿性も低下した。
比較例3では、ハードコートフィルムの耐熱性と透明性、耐湿性が向上したものの、耐擦傷性は十分でなく、薄膜にすると耐湿性も低下した。