IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社SCREENホールディングスの特許一覧

<>
  • 特開-基板処理方法および基板処理装置 図1
  • 特開-基板処理方法および基板処理装置 図2
  • 特開-基板処理方法および基板処理装置 図3
  • 特開-基板処理方法および基板処理装置 図4
  • 特開-基板処理方法および基板処理装置 図5
  • 特開-基板処理方法および基板処理装置 図6
  • 特開-基板処理方法および基板処理装置 図7
  • 特開-基板処理方法および基板処理装置 図8
  • 特開-基板処理方法および基板処理装置 図9
  • 特開-基板処理方法および基板処理装置 図10
  • 特開-基板処理方法および基板処理装置 図11
  • 特開-基板処理方法および基板処理装置 図12
  • 特開-基板処理方法および基板処理装置 図13
  • 特開-基板処理方法および基板処理装置 図14
  • 特開-基板処理方法および基板処理装置 図15
  • 特開-基板処理方法および基板処理装置 図16
  • 特開-基板処理方法および基板処理装置 図17
  • 特開-基板処理方法および基板処理装置 図18
  • 特開-基板処理方法および基板処理装置 図19
  • 特開-基板処理方法および基板処理装置 図20
  • 特開-基板処理方法および基板処理装置 図21
  • 特開-基板処理方法および基板処理装置 図22
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024124744
(43)【公開日】2024-09-13
(54)【発明の名称】基板処理方法および基板処理装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/306 20060101AFI20240906BHJP
【FI】
H01L21/306 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023032634
(22)【出願日】2023-03-03
(71)【出願人】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】110002310
【氏名又は名称】弁理士法人あい特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100168583
【弁理士】
【氏名又は名称】前井 宏之
(72)【発明者】
【氏名】竹田 大輔
【テーマコード(参考)】
5F043
【Fターム(参考)】
5F043AA08
5F043BB12
5F043DD02
5F043DD05
5F043DD07
5F043DD13
5F043EE01
5F043EE07
5F043EE32
5F043FF10
5F043GG10
(57)【要約】
【課題】エッチング選択性を向上させることが可能な基板処理方法および基板処理装置を提供する。
【解決手段】基板処理方法は、基材Sに支持された積層構造Lに設けられたリセスR内に、積層構造Lを構成する複数の第1層M1および複数の第2層M2のうちの複数の第2層M2の表面を疎水化する疎水化剤SMTを供給する疎水化工程(ステップS6)と、第2層M2の表面が疎水化された状態でリセスR内にエッチング液E2を供給し、第1層M1を選択的にエッチングするエッチング工程(ステップS8)とを含み、疎水化工程(ステップS6)とエッチング工程(ステップS8)とを所定回数繰り返す。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材に支持された積層構造に設けられたリセス内に、前記積層構造を構成する複数の第1層および複数の第2層のうちの前記複数の第2層の表面を疎水化する疎水化剤を供給する疎水化工程と、
前記第2層の表面が疎水化された状態で前記リセス内にエッチング液を供給し、前記第1層を選択的にエッチングするエッチング工程と
を含み、
前記疎水化工程と前記エッチング工程とを所定回数繰り返す、基板処理方法。
【請求項2】
前記第1層および前記第2層は、前記基材の一方面に対して交差する第1方向に積層され、
前記リセスは、前記第1方向に沿って延びており、
前記エッチング工程において、前記第1層を選択的にエッチングすることにより、前記リセスに繋がる複数の凹部が、前記第1方向と交差する第2方向に延びるように形成される、請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項3】
前記凹部の前記第2方向の長さは、前記凹部の前記第1方向の長さの20倍以上である、請求項2に記載の基板処理方法。
【請求項4】
前記疎水化工程の後で、前記エッチング工程の前に、
前記リセス内に置換液を供給することにより、少なくとも前記第2層の表面に前記疎水化剤が残るように、前記疎水化剤を前記置換液に置換する疎水化後置換工程をさらに含む、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の基板処理方法。
【請求項5】
前記エッチング工程の後に、
前記リセス内にリンス液を供給することにより、前記エッチング液を前記リンス液に置換するエッチング後置換工程をさらに含む、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の基板処理方法。
【請求項6】
前記リンス液は、イソプロピルアルコールを含む、請求項5に記載の基板処理方法。
【請求項7】
前記疎水化工程において、前記疎水化剤は、少なくとも前記第2層の表面をコーティングし、
前記エッチング液により前記第2層の表面から前記疎水化剤が無くなる前に、前記エッチング工程から前記エッチング後置換工程に移行する、請求項5に記載の基板処理方法。
【請求項8】
前記第1層は、シリコンゲルマニウムを含み、
前記第2層は、ポリシリコンまたは単結晶シリコンを含む、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の基板処理方法。
【請求項9】
前記疎水化工程において、前記疎水化剤は、少なくとも前記第2層の表面をシリル化する、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の基板処理方法。
【請求項10】
前記疎水化工程において、霧状の前記疎水化剤、または、前記疎水化剤の蒸気を前記基板に供給する、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の基板処理方法。
【請求項11】
前記疎水化工程において、未使用の前記疎水化剤を、前記リセス内に供給する、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の基板処理方法。
【請求項12】
基板に疎水化剤を供給する疎水化剤供給部と、
前記基板にエッチング液を供給するエッチング液供給部と、
前記疎水化剤供給部および前記エッチング液供給部を制御する制御部と
を備え、
前記基板は、基材と、前記基材に支持された積層構造を構成する複数の第1層および複数の第2層とを有し、
前記疎水化剤は、前記第2層の表面を疎水化し、
前記エッチング液は、前記第1層をエッチングし、
前記制御部は、
前記疎水化剤供給部を制御して、前記積層構造に設けられたリセス内に前記疎水化剤を供給することにより、前記複数の第2層の表面を疎水化し、
前記エッチング液供給部を制御して、前記第2層の表面が疎水化された状態で前記リセス内に前記エッチング液を供給することにより、前記第1層を選択的にエッチングし、
前記制御部は、前記第2層の表面の疎水化と、前記第1層の選択的なエッチングとを所定回数繰り返す、基板処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板処理方法および基板処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、基材と、基材に支持された積層構造を構成する複数の第1層および複数の第2層とを備えた半導体基板を処理する基板処理方法が知られている。このような基板処理方法として、例えば、特許文献1には、シリコンとシリコンゲルマニウムとが交互に積層された基板のうち、シリコンゲルマニウムを選択的にエッチングする方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-6405号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1のように、複数の層のうち特定の層を選択的にエッチングする場合、特定の層とは異なる他の層もエッチングされることがある。具体的には、特定の層と他の層とが、同じ物質を含んでいたり、化学的特性の近い物質を含んでいたりする場合、エッチング選択性が低下する。この場合、特定の層を深く(多く)エッチングしようとすると、他の層のエッチング量が多くなる。よって、例えば、他の層の厚みが薄くなるため、この基板を用いて製造される半導体素子は、所望の特性を得られなくなる。
【0005】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、エッチング選択性を向上させることが可能な基板処理方法および基板処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一局面によれば、基板処理方法は、基材に支持された積層構造に設けられたリセス内に、前記積層構造を構成する複数の第1層および複数の第2層のうちの前記複数の第2層の表面を疎水化する疎水化剤を供給する疎水化工程と、前記第2層の表面が疎水化された状態で前記リセス内にエッチング液を供給し、前記第1層を選択的にエッチングするエッチング工程とを含み、前記疎水化工程と前記エッチング工程とを所定回数繰り返す。
【0007】
ある実施形態では、前記第1層および前記第2層は、前記基材の一方面に対して交差する第1方向に積層される。前記リセスは、前記第1方向に沿って延びている。前記エッチング工程において、前記第1層を選択的にエッチングすることにより、前記リセスに繋がる複数の凹部が、前記第1方向と交差する第2方向に延びるように形成される。
【0008】
ある実施形態では、前記凹部の前記第2方向の長さは、前記凹部の前記第1方向の長さの20倍以上である。
【0009】
ある実施形態において、上記基板処理方法は、前記疎水化工程の後で、前記エッチング工程の前に、前記リセス内に置換液を供給することにより、少なくとも前記第2層の表面に前記疎水化剤が残るように、前記疎水化剤を前記置換液に置換する疎水化後置換工程をさらに含む。
【0010】
ある実施形態において、上記基板処理方法は、前記エッチング工程の後に、前記リセス内にリンス液を供給することにより、前記エッチング液を前記リンス液に置換するエッチング後置換工程をさらに含む。
【0011】
ある実施形態では、前記リンス液は、イソプロピルアルコールを含む。
【0012】
ある実施形態では、前記疎水化工程において、前記疎水化剤は、少なくとも前記第2層の表面をコーティングする。前記エッチング液により前記第2層の表面から前記疎水化剤が無くなる前に、前記エッチング工程から前記エッチング後置換工程に移行する。
【0013】
ある実施形態では、前記第1層は、シリコンゲルマニウムを含む。前記第2層は、ポリシリコンまたは単結晶シリコンを含む。
【0014】
ある実施形態では、前記疎水化工程において、前記疎水化剤は、少なくとも前記第2層の表面をシリル化する。
【0015】
ある実施形態では、前記疎水化工程において、霧状の前記疎水化剤、または、前記疎水化剤の蒸気を前記基板に供給する。
【0016】
ある実施形態では、前記疎水化工程において、未使用の前記疎水化剤を、前記リセス内に供給する。
【0017】
本発明の他の局面によれば、基板処理装置は、疎水化剤供給部と、エッチング液供給部と、制御部とを備える。前記疎水化剤供給部は、基板に疎水化剤を供給する。前記エッチング液供給部は、前記基板にエッチング液を供給する。前記制御部は、前記疎水化剤供給部および前記エッチング液供給部を制御する。前記基板は、基材と、前記基材に支持された積層構造を構成する複数の第1層および複数の第2層とを有する。前記疎水化剤は、前記第2層の表面を疎水化する。前記エッチング液は、前記第1層をエッチングする。前記制御部は、前記疎水化剤供給部を制御して、前記積層構造に設けられたリセス内に前記疎水化剤を供給することにより、前記複数の第2層の表面を疎水化する。前記制御部は、前記エッチング液供給部を制御して、前記第2層の表面が疎水化された状態で前記リセス内に前記エッチング液を供給することにより、前記第1層を選択的にエッチングする。前記制御部は、前記第2層の表面の疎水化と、前記第1層の選択的なエッチングとを所定回数繰り返す。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、エッチング選択性を向上させることが可能な基板処理方法および基板処理装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】第1実施形態の基板処理装置の処理ユニット200の内部の構成を示す模式図である。
図2】第1ノズルおよび第2ノズルからリンス液を吐出している状態を示す概略図である。
図3】第3ノズルおよび第4ノズルから置換液を吐出している状態を示す概略図である。
図4】第5ノズルおよび第6ノズルから疎水化剤を吐出している状態を示す概略図である。
図5】第1実施形態の基板処理装置の処理ユニット300の内部の構成を示す模式図である。
図6】処理ユニット300の第1ノズルおよび第2ノズルから処理槽内にエッチング液を吐出している状態を示す概略図である。
図7】基板処理装置を用いて処理された基板の模式的な部分拡大斜視図である。
図8】基板処理装置を用いて処理された基板の模式的な部分拡大図である。
図9】本実施形態の基板処理方法を示すフロー図である。
図10】本実施形態の基板処理方法を説明するためのリセス周辺の拡大断面図である。
図11】本実施形態の基板処理方法を説明するためのリセス周辺の拡大断面図である。
図12】本実施形態の基板処理方法を説明するためのリセス周辺の拡大断面図である。
図13】本実施形態の基板処理方法を説明するためのリセス周辺の拡大断面図である。
図14】本実施形態の基板処理方法を説明するためのリセス周辺の拡大断面図である。
図15】本実施形態の基板処理方法を説明するためのリセス周辺の拡大断面図である。
図16】本実施形態の基板処理方法を説明するためのリセス周辺の拡大断面図である。
図17】本実施形態の基板処理方法を説明するためのリセス周辺の拡大断面図である。
図18】本実施形態の基板処理方法を説明するためのリセス周辺の拡大断面図である。
図19】第2実施形態の基板処理装置による基板処理方法を示すフロー図である。
図20】疎水化処理の有無とSi(シリコン)に対するエッチング量との関係を示す実験結果である。
図21】疎水化処理の有無とSiGe(シリコンゲルマニウム)に対するエッチング量との関係を示す実験結果である。
図22】エッチング後のリンス工程においてリンス液としてIPA(イソプロピルアルコール)を用いることによる効果、および、未使用の疎水化剤を用いることによる効果を確認した実験結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して本発明の基板処理方法および基板処理装置に係る実施形態を説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されない。なお、説明が重複する箇所については、適宜説明を省略する場合がある。また、図中、同一または相当部分については同一の参照符号を付して説明を繰り返さない。
【0021】
本明細書では、理解を容易にするため、互いに直交するX方向、Y方向およびZ方向を記載することがある。典型的には、X方向およびY方向は水平方向に平行であり、Z方向は鉛直方向に平行である。但し、これらの方向の定義により、本発明に係る基板処理方法の実行時の向き、および本発明に係る基板処理装置の使用時の向きを限定する意図はない。
【0022】
本実施形態における「基板」には、半導体ウエハ、フォトマスク用ガラス基板、液晶表示用ガラス基板、プラズマ表示用ガラス基板、FED(Field Emission Display)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、および光磁気ディスク用基板などの各種基板を適用可能である。以下では主として、円盤状の半導体ウエハの処理に用いられる基板処理方法および基板処理装置を例に採って本実施形態を説明するが、上に例示した各種の基板の処理にも同様に適用可能である。また、基板の形状についても各種のものを適用可能である。
【0023】
[第1実施形態]
以下、図1図18を参照して本発明の第1実施形態を説明する。まず、図1図6を参照して第1実施形態の基板処理装置100を説明する。図1は、第1実施形態の基板処理装置100の処理ユニット200の内部の構成を示す模式図である。本実施形態の基板処理装置100はバッチ式である。したがって、基板処理装置100は、複数の基板Wを一括して処理する。具体的には、基板処理装置100は、ロット単位で複数の基板Wを処理する。1ロットは、例えば25枚の基板Wからなる。
【0024】
図1に示すように、基板処理装置100は、処理ユニット200を備える。処理ユニット200は、基板Wに対して疎水化処理を行う。具体的には、処理ユニット200は、チャンバー202と、液受け部材203と、液供給部205と、保持部250と、開閉部260と、昇降部270とを備える。
【0025】
基板Wは、後述するリセスを有する。リセスは、ドライエッチング処理よって基板Wの表面に形成される。具体的には、基板処理装置100は、処理ユニット200以外に、基板Wをドライエッチングする処理ユニットを備える。この処理ユニットによってドライエッチングされた基板Wが、処理ユニット200に搬送(搬入)される。
【0026】
チャンバー202には、液受け部材203と、液供給部205とが収容される。また、チャンバー202には、基板Wの処理時に保持部250が収容される。チャンバー202は、カバー202aを有する。カバー202aは、チャンバー202の上部の開口に装着されている。カバー202aは、開口を開閉するように移動可能である。
【0027】
液供給部205は、チャンバー202内に処理液を供給する。処理液は、例えば、薬液、リンス液(洗浄液)、除去液および/または疎水化剤を含む。具体的には、液供給部205は、保持部250に保持された基板Wに、霧状のリンス液と、霧状の置換液と、霧状の疎水化剤SMTとを供給する。なお、液供給部205は、リンス液の蒸気を基板Wに供給してもよい。また、液供給部205は、置換液の蒸気を基板Wに供給してもよい。また、液供給部205は、疎水化剤SMTの蒸気を基板Wに供給してもよい。
【0028】
図2は、第1ノズル211および第2ノズル212からリンス液を吐出している状態を示す概略図である。図3は、第3ノズル213および第4ノズル214から置換液を吐出している状態を示す概略図である。図4は、第5ノズル215および第6ノズル216から疎水化剤SMTを吐出している状態を示す概略図である。図1に示すように、液供給部205は、第1ノズル211~第6ノズル216を有する。第1ノズル211~第6ノズル216は、チャンバー202の内部であって、液受け部材203の外部に配置される。具体的には、第1ノズル211~第6ノズル216は、液受け部材203の上方に配置される。第1ノズル211および第2ノズル212は、霧状のリンス液を吐出する。第3ノズル213および第4ノズル214は、霧状の置換液を吐出する。第5ノズル215および第6ノズル216は、霧状の疎水化剤SMTを吐出する。
【0029】
本実施形態において、リンス液は、DIW(Deionized Water:脱イオン水)である。また、置換液は、IPA(イソプロピルアルコール)である。
【0030】
疎水化剤SMTは、例えば、シリコン系撥水化剤、またはメタル系撥水化剤である。シリコン系撥水化剤は、シリコンまたはシリコンを含む化合物を撥水化(疎水化)させる。メタル系撥水化剤は、金属または金属を含む化合物を撥水化(疎水化)させる。
【0031】
シリコン系撥水化剤は、例えば、シランカップリング剤である。シランカップリング剤は、例えば、HMDS(ヘキサメチルジシラザン)、TMS(テトラメチルシラン)、フッ素化アルキルクロロシラン、アルキルジシラザン、および非クロロ系疎水化剤の少なくとも一つを含む。非クロロ系疎水化剤は、例えば、ジメチルシリルジメチルアミン、ジメチルシリルジエチルアミン、ヘキサメチルジシラザン、テトラメチルジシラザン、ビス(ジメチルアミノ)ジメチルシラン、N,N-ジメチルアミノトリメチルシラン、N-(トリメチルシリル)ジメチルアミン、およびオルガノシラン化合物の少なくとも一つを含む。
【0032】
メタル系撥水化剤は、例えば、疎水基を有するアミン、および有機シリコン化合物のうちの少なくとも一方を含む。
【0033】
疎水化剤SMTは、親水性有機溶媒に対して相溶解性がある溶媒で希釈されていてもよい。溶媒は、例えば、IPA、またはPGMEA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)である。本実施形態では、溶媒は、PGMEAである。
【0034】
図1に示すように、液受け部材203は、液供給部205から基板Wに供給された液を受ける。具体的には、液受け部材203は、リンス液、置換液および疎水化剤SMTを受ける。
【0035】
保持部250は、複数の基板Wを保持する。具体的には、保持部250は、複数の保持棒251と、本体板252とを有する。本実施形態では、保持部250は、3つの保持棒251を有する。本体板252は、鉛直方向(Z方向)に延びる板状の部材である。保持棒251はそれぞれ、本体板252の一方の主面から水平方向(X方向)に延びる。複数の基板Wのそれぞれの下縁は、複数(ここでは、3つ)の保持棒251に当接する。複数の基板Wは、X方向に間隔をあけて整列した状態で、起立姿勢(鉛直姿勢)で保持される。
【0036】
開閉部260は、カバー202aを開閉させる。すなわち、開閉部260は、カバー202aを開状態と閉状態との間で遷移させる。カバー202aが開閉することにより、チャンバー202の上部の開口が閉塞状態と開放状態との間で遷移する。開閉部260は、駆動源と、開閉機構とを有しており、駆動源によって開閉機構を駆動して、カバー202aを開閉させる。駆動源は、例えば、モータを含む。開閉機構は、例えば、ラック・ピニオン機構を含む。
【0037】
昇降部270は、保持部250を昇降させる。昇降部270が保持部250を昇降させることにより、保持部250に保持されている基板Wが昇降する。昇降部270は、駆動源および昇降機構を有しており、駆動源によって昇降機構を駆動して、保持部250を上昇および下降させる。駆動源は、例えば、モータを含む。昇降機構は、例えば、ラック・ピニオン機構またはボールねじを含む。
【0038】
詳しくは、昇降部270は、チャンバー202の上部の開口を介して、チャンバー202の外部と内部との間で保持部250(基板W)を移動(昇降)させる。すなわち、昇降部270は、チャンバー202内への基板Wの搬入と、チャンバー202外への基板Wの搬出とを行う。
【0039】
続いて、図1を参照して基板処理装置100をさらに説明する。図1に示すように、基板処理装置100は、制御装置110をさらに備える。制御装置110は、基板処理装置100の各部の動作を制御する。具体的には、制御装置110は、処理ユニット200の各部の動作を制御する。制御装置110は、制御部111と、記憶部112とを含む。
【0040】
制御部111は、プロセッサーを有する。制御部111は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、または、MPU(Micro Processing Unit)を有する。あるいは、制御部111は、汎用演算機を有してもよい。
【0041】
記憶部112は、データおよびコンピュータプログラムを記憶する。データは、レシピデータを含む。レシピデータは、複数のレシピを示す情報を含む。複数のレシピの各々は、基板Wの処理内容および処理手順を規定する。
【0042】
記憶部112は、主記憶装置を有する。主記憶装置は、例えば、半導体メモリである。記憶部112は、補助記憶装置をさらに有してもよい。補助記憶装置は、例えば、半導体メモリおよびハードディスクドライブの少なくも一方を含む。記憶部112はリムーバブルメディアを含んでいてもよい。制御部111は、記憶部112に記憶されているコンピュータプログラムおよびデータに基づいて、基板処理装置100の各部の動作を制御する。
【0043】
制御装置110(制御部111)は、開閉部260を制御して、カバー202aを開状態と閉状態との間で遷移させる。詳しくは、制御装置110(制御部111)は、チャンバー202内への基板Wの搬入時、およびチャンバー202外への基板Wの搬出時に、カバー202aを開状態にする。カバー202aが開状態となることにより、チャンバー202の上部の開口が開放状態となり、チャンバー202内への基板Wの搬入、およびチャンバー202外への基板Wの搬出が可能となる。制御装置110(制御部111)は、基板Wの処理時に、カバー202aを閉状態にする。カバー202aが閉状態となることにより、チャンバー202の上部の開口が閉塞状態となる。この結果、チャンバー202の内部が密閉空間となる。基板Wは、密閉空間内で処理される。
【0044】
制御装置110(制御部111)は、昇降部270を制御して、保持部250(基板W)を昇降させる。詳しくは、制御装置110(制御部111)は、チャンバー202内への基板Wの搬入時に、チャンバー202の上部の開口を介して、チャンバー202の外部から内部へ保持部250を移動させて、基板Wをチャンバー202内に搬入する。制御装置110(制御部111)は、チャンバー202外への基板Wの搬出時に、チャンバー202の上部の開口を介して、チャンバー202の内部から外部へ保持部250を移動させて、基板Wをチャンバー202から搬出する。制御装置110(制御部111)は、基板Wの処理時に、チャンバー202内で、保持部250を液受け部材203の上方に保持する。
【0045】
基板処理装置100は、リンス液供給源221と、置換液供給源222と、疎水化剤供給源223と、第1配管231~第3配管233、排液ライン241と、第1バルブV201~第4バルブV204とをさらに備える。
【0046】
リンス液供給源221は、リンス液を供給する。本実施形態では、リンス液供給源221は、DIWを供給する。置換液供給源222は、置換液を供給する。本実施形態では、置換液供給源222は、IPAを供給する。疎水化剤供給源223は、疎水化剤SMTを供給する。
【0047】
第1配管231には、リンス液供給源221からリンス液が供給される。第1配管231は、リンス液供給源221から供給されるリンス液を、第1ノズル211および第2ノズル212まで流通させる。
【0048】
第1ノズル211および第2ノズル212は、中空の管状部材である。第1ノズル211および第2ノズル212にはそれぞれ、複数の吐出孔が形成されている。本実施形態において、第1ノズル211および第2ノズル212はX方向に延びる。第1ノズル211の複数の吐出孔は、X方向に等間隔に形成されている。同様に、第2ノズル212の複数の吐出孔は、X方向に等間隔に形成されている。
【0049】
第1配管231を介して第1ノズル211にリンス液が供給されると、第1ノズル211の複数の吐出孔からチャンバー202の内部へリンス液が吐出される。同様に、第1配管231を介して第2ノズル212にリンス液が供給されると、第2ノズル212の複数の吐出孔からチャンバー202の内部へリンス液が吐出される。
【0050】
第1配管231には、第1バルブV201が介装されている。第1バルブV201は、第1配管231の流路を開閉する開閉弁である。第1バルブV201は、第1配管231を流れるリンス液の流通を制御する。詳しくは、第1バルブV201が開くと、リンス液が第1配管231を介して第1ノズル211および第2ノズル212まで流れる。この結果、第1ノズル211および第2ノズル212からリンス液が吐出される。第1バルブV201が閉じると、リンス液の流通が遮断されて、第1ノズル211および第2ノズル212によるリンス液の吐出が停止する。
【0051】
第1バルブV201は、第1配管231を流れるリンス液の流量を調整する調整弁としても機能する。第1バルブV201は、例えば電磁弁である。第1バルブV201は、制御装置110(制御部111)によって制御される。
【0052】
本実施形態では、第1配管231には、ヒータ(図示せず)が介装されていてもよい。ヒータは、リンス液を加熱して、リンス液を高温にしてもよいし、リンス液を気化させてもよい。つまり、ヒータは、リンス液を高温にしてもよいし、リンス液の蒸気を生成してもよい。そして、第1ノズル211および第2ノズル212は、高温のリンス液またはリンス液の蒸気を吐出してもよい。なお、リンス液供給源221にヒータ(図示せず)を設け、リンス液供給源221から第1配管231に、高温のリンス液を供給してもよいし、リンス液の蒸気を供給してもよい。また、ヒータを設けず、第1ノズル211および第2ノズル212から常温のリンス液を吐出してもよい。
【0053】
第2配管232には、置換液供給源222からIPAが供給される。第2配管232は、置換液供給源222から供給されるIPAを、第3ノズル213および第4ノズル214まで流通させる。
【0054】
第3ノズル213および第4ノズル214は、第1ノズル211および第2ノズル212の下方に配置される。第3ノズル213および第4ノズル214の構成は、第1ノズル211および第2ノズル212と同様である。第3ノズル213および第4ノズル214は、第1ノズル211および第2ノズル212と同様に、チャンバー202の内部へIPAを吐出する。
【0055】
第2配管232には、第2バルブV202が介装されている。第2バルブV202は、第2配管232の流路を開閉する開閉弁である。第2バルブV202は、第1バルブV201と同様に、第2配管232を流れるIPAの流通を制御する。第2バルブV202は、第2配管232を流れるIPAの流量を調整する調整弁としても機能する。第2バルブV202は、例えば電磁弁である。第2バルブV202は、制御装置110(制御部111)によって制御される。
【0056】
本実施形態では、第2配管232には、ヒータ(図示せず)が介装されている。ヒータは、IPAを加熱して、IPAを高温にしてもよいし、IPAを気化させてもよい。つまり、ヒータは、液体のIPAを高温にしてもよいし、IPAの蒸気を生成してもよい。そして、第3ノズル213および第4ノズル214は、高温の液体のIPAまたはIPAの蒸気を吐出してもよい。なお、置換液供給源222にヒータ(図示せず)を設け、置換液供給源222から第3配管233に、高温の液体のIPAを供給してもよいし、IPAの蒸気を供給してもよい。また、ヒータを設けず、第3ノズル213および第4ノズル214から常温の液体のIPAを吐出してもよい。
【0057】
第3配管233には、疎水化剤供給源223から疎水化剤SMTが供給される。第3配管233は、疎水化剤供給源223から供給される疎水化剤SMTを第5ノズル215および第6ノズル216まで流通させる。
【0058】
第5ノズル215および第6ノズル216は、第3ノズル213および第4ノズル214の下方に配置される。第5ノズル215および第6ノズル216の構成は、第1ノズル211および第2ノズル212と同様である。第5ノズル215および第6ノズル216は、第1ノズル211および第2ノズル212と同様に、チャンバー202の内部へ疎水化剤SMTを吐出する。
【0059】
第3配管233には、第3バルブV203が介装されている。第3バルブV203は、第3配管233の流路を開閉する開閉弁である。第3バルブV203は、第1バルブV201と同様に、第3配管233を流れる疎水化剤SMTの流通を制御する。第3バルブV203は、第3配管233を流れる疎水化剤SMTの流量を調整する調整弁としても機能する。第3バルブV203は、例えば電磁弁である。第3バルブV203は、制御装置110(制御部111)によって制御される。
【0060】
なお、疎水化剤供給源223、第3配管233、第3バルブV203、第5ノズル215および第6ノズル216によって、基板Wに疎水化剤SMTを供給する疎水化剤供給部206が構成されている。
【0061】
本実施形態では、第3配管233には、ヒータ(図示せず)が介装されていてもよい。ヒータは、疎水化剤SMTを加熱して、疎水化剤SMTを高温にしてもよいし、疎水化剤SMTを気化させてもよい。つまり、ヒータは、液体の疎水化剤SMTを高温にしてもよいし、疎水化剤SMTの蒸気を生成してもよい。そして、第5ノズル215および第6ノズル216は、高温の液体の疎水化剤SMT、または、疎水化剤SMTの蒸気を吐出してもよい。なお、疎水化剤供給源223にヒータ(図示せず)を設け、疎水化剤供給源223から第3配管233に、高温の液体の疎水化剤SMTを供給してもよいし、疎水化剤SMTの蒸気を供給してもよい。また、ヒータを設けず、第5ノズル215および第6ノズル216から常温の液体の疎水化剤SMTを吐出してもよい。
【0062】
排液ライン241は、液受け部材203の底部に接続されている。排液ライン241には、第4バルブV204が介装されている。第4バルブV204は、排液ライン241の流路を開閉する開閉弁である。第4バルブV204は、例えば電磁弁である。第4バルブV204は、制御装置110(制御部111)によって制御される。制御装置110(制御部111)は、液受け部材203内に処理液を貯める際に、第4バルブV204を閉じる。一方、制御装置110(制御部111)は、液受け部材203から処理液を排出させる際に、第4バルブV204を開く。第4バルブV204が開くと、液受け部材203に貯められていた処理液が、排液ライン241を介して、液受け部材203からチャンバー202の外部へ排出される。
【0063】
なお、基板処理装置100は、チャンバー202内の圧力を減少させる減圧部(図示せず)を備えてもよい。減圧部は、例えば、排気ポンプを含む。排気ポンプは、例えば、真空ポンプである。減圧部は、カバー202aが閉状態の際にチャンバー202内の気体を排気して、チャンバー202内を大気圧未満に減圧してもよい。
【0064】
次に、図5を参照して、本実施形態の基板処理装置100の処理ユニット300について説明する。図5は、第1実施形態の基板処理装置100の処理ユニット300の内部の構成を示す模式図である。図6は、処理ユニット300の第1ノズル311および第2ノズル312から処理槽303内にエッチング液を吐出している状態を示す概略図である。
【0065】
図5に示すように、基板処理装置100は、処理ユニット300を備える。処理ユニット300は、基板Wに対してエッチング処理を行う。処理ユニット300には、処理ユニット200によって疎水化処理された基板Wが搬送(搬入)される。本実施形態では、処理ユニット300は、基板Wの一部をウェットエッチングする。具体的には、処理ユニット300は、チャンバー302と、処理槽303と、液供給部305と、開閉部360と、昇降部370とを備える。
【0066】
チャンバー302には、処理槽303と、液供給部305とが収容される。また、チャンバー302には、基板Wの処理時に保持部250が収容される。チャンバー302は、カバー302aを有する。カバー302aは、チャンバー302の上部の開口に装着されている。カバー302aは、開口を開閉するように移動可能である。
【0067】
処理槽303は、処理液を貯留する。処理液は、エッチング液を含む。したがって、処理槽303は、エッチング液を貯留する。本実施形態では、エッチング液は、エステル系溶媒と、フッ化アンモニウムと、過酸化水素水とを混合した水溶液である。処理槽303内に基板Wが浸漬されることによって、基板Wに対するエッチング処理が行われる。
【0068】
液供給部305は、チャンバー302内に処理液を供給する。具体的には、液供給部305は、チャンバー302内に、エッチング液を供給する。
【0069】
液供給部305は、エッチング液を処理槽303に供給する。詳しくは、液供給部305は、第1ノズル311と、第2ノズル312とを有する。第1ノズル311および第2ノズル312は、処理槽303内に配置される。図6に示すように、第1ノズル311および第2ノズル312は、処理槽303内にエッチング液を吐出する。
【0070】
図5に示すように、開閉部360は、カバー302aを開閉させる。すなわち、開閉部360は、カバー302aを開状態と閉状態との間で遷移させる。カバー302aが開閉することにより、チャンバー302の上部の開口が閉塞状態と開放状態との間で遷移する。開閉部360は、駆動源と、開閉機構とを有しており、駆動源によって開閉機構を駆動して、カバー302aを開閉させる。駆動源は、例えば、モータを含む。開閉機構は、例えば、ラック・ピニオン機構を含む。
【0071】
昇降部370は、保持部250を昇降させる。なお、保持部250は、図1を用いて説明した保持部250である。保持部250は、基板Wを保持した状態で、処理ユニット200と処理ユニット300との間を移動可能である。昇降部370が保持部250を昇降させることにより、保持部250に保持されている基板Wが昇降する。昇降部370は、駆動源および昇降機構を有しており、駆動源によって昇降機構を駆動して、保持部250を上昇および下降させる。駆動源は、例えば、モータを含む。昇降機構は、例えば、ラック・ピニオン機構またはボールねじを含む。
【0072】
詳しくは、昇降部370は、チャンバー302の上部の開口を介して、チャンバー302の外部と内部との間で保持部250(基板W)を移動(昇降)させる。すなわち、昇降部370は、チャンバー302内への基板Wの搬入と、チャンバー302外への基板Wの搬出とを行う。
【0073】
また、昇降部370は、チャンバー302内において、処理槽303内の処理位置と処理槽303外の待機位置との間で保持部250(基板W)を移動(昇降)させる。保持部250が処理位置へ移動することにより、基板Wが処理槽303内に移動する。保持部250が待機位置へ移動することにより、基板Wが処理槽303外へ移動する。具体的には、待機位置は、処理位置の上方の位置である。保持部250が待機位置へ移動することにより、基板Wが処理槽303の上方の空間へ移動する。なお、図5は、処理位置へ移動した保持部250および基板Wを実線で示し、待機位置へ移動した保持部250および基板Wを2点鎖線で示している。
【0074】
続いて、図5を参照して基板処理装置100をさらに説明する。図5に示すように、制御装置110は、処理ユニット300の各部の動作を制御する。
【0075】
制御装置110(制御部111)は、開閉部360を制御して、カバー302aを開状態と閉状態との間で遷移させる。詳しくは、制御装置110(制御部111)は、チャンバー302内への基板Wの搬入時、およびチャンバー302外への基板Wの搬出時に、カバー302aを開状態にする。カバー302aが開状態となることにより、チャンバー302の上部の開口が開放状態となり、チャンバー302内への基板Wの搬入、およびチャンバー302外への基板Wの搬出が可能となる。制御装置110(制御部111)は、基板Wの処理時に、カバー302aを閉状態にする。カバー302aが閉状態となることにより、チャンバー302の上部の開口が閉塞状態となる。この結果、チャンバー302の内部が密閉空間となる。基板Wは、密閉空間内で処理される。
【0076】
制御装置110(制御部111)は、昇降部370を制御して、保持部250(基板W)を昇降させる。詳しくは、制御装置110(制御部111)は、チャンバー302内への基板Wの搬入時に、チャンバー302の上部の開口を介して、チャンバー302の外部から内部へ保持部250を移動させて、基板Wをチャンバー302内に搬入する。制御装置110(制御部111)は、チャンバー302外への基板Wの搬出時に、チャンバー302の上部の開口を介して、チャンバー302の内部から外部へ保持部250を移動させて、基板Wをチャンバー302から搬出する。制御装置110(制御部111)は、基板Wの処理時に、チャンバー302内で、保持部250を処理位置と待機位置との間で移動(昇降)させる。
【0077】
基板処理装置100は、エッチング液供給源321と、第1配管331と、排液ライン341と、第1バルブV301と、第2バルブV302とをさらに備える。
【0078】
エッチング液供給源321は、エッチング液を供給する。
【0079】
第1配管331には、エッチング液供給源321からエッチング液が供給される。第1配管331は、エッチング液供給源321から供給されるエッチング液を、第1ノズル311および第2ノズル312まで流通させる。
【0080】
第1ノズル311および第2ノズル312は、中空の管状部材である。第1ノズル311および第2ノズル312にはそれぞれ、複数の吐出孔が形成されている。本実施形態において、第1ノズル311および第2ノズル312はX方向に延びる。第1ノズル311の複数の吐出孔は、X方向に等間隔に形成されている。同様に、第2ノズル312の複数の吐出孔は、X方向に等間隔に形成されている。
【0081】
第1配管331を介して第1ノズル311にエッチング液が供給されると、第1ノズル311の複数の吐出孔から処理槽303内へエッチング液が吐出される。同様に、第1配管331を介して第2ノズル312にエッチング液が供給されると、第2ノズル312の複数の吐出孔から処理槽303内へエッチング液が吐出される。
【0082】
第1配管331には、第1バルブV301が介装されている。第1バルブV301は、第1配管331の流路を開閉する開閉弁である。第1バルブV301は、第1配管331を流れるエッチング液の流通を制御する。詳しくは、第1バルブV301が開くと、エッチング液が第1配管331を介して第1ノズル311および第2ノズル312まで流れる。この結果、第1ノズル311および第2ノズル312からエッチング液が吐出される。第1バルブV301が閉じると、エッチング液の流通が遮断されて、第1ノズル311および第2ノズル312によるエッチング液の吐出が停止する。
【0083】
第1バルブV301は、第1配管331を流れるエッチング液の流量を調整する調整弁としても機能する。第1バルブV301は、例えば電磁弁である。第1バルブV301は、制御装置110(制御部111)によって制御される。
【0084】
なお、エッチング液供給源321、第1配管331、第1バルブV301、第1ノズル311および第2ノズル312によって、基板Wにエッチング液を供給するエッチング液供給部306が構成されている。
【0085】
また、第1配管331には、ヒータ(図示せず)が介装されていてもよい。ヒータは、エッチング液を加熱して、エッチング液を高温にする。なお、ヒータを設けず、第1ノズル311および第2ノズル312から常温のエッチング液を吐出してもよい。
【0086】
排液ライン341は、処理槽303の底部に接続している。排液ライン341には、第2バルブV302が介装されている。第2バルブV302は、排液ライン341の流路を開閉する開閉弁である。第2バルブV302は、例えば電磁弁である。第2バルブV302は、制御装置110(制御部111)によって制御される。制御装置110(制御部111)は、処理槽303内に処理液を貯める際に、第2バルブV302を閉じる。一方、制御装置110(制御部111)は、処理槽303から処理液を排出させる際に、第2バルブV302を開く。第2バルブV302が開くと、処理槽303に貯められていた処理液が、排液ライン341を介して、処理槽303からチャンバー302の外部へ排出される。
【0087】
なお、基板処理装置100は、チャンバー302内の圧力を減少させる減圧部(図示せず)を備えていてもよい。減圧部は、例えば、排気ポンプを含む。排気ポンプは、例えば、真空ポンプである。減圧部は、カバー302aが閉状態の際にチャンバー302内の気体を排気して、チャンバー302内を大気圧未満に減圧してもよい。
【0088】
次に、図7および図8を参照して、本実施形態の基板処理装置100を用いて処理された基板Wを説明する。図7は、基板処理装置100を用いて処理された基板Wの模式的な部分拡大斜視図である。図8は、基板処理装置100を用いて処理された基板Wの模式的な部分拡大図である。なお、図7では、基板Wの基材Sの主面に対して直交する方向をz方向と示しており、z方向に直交する方向をx方向およびy方向と示している。
【0089】
図7および図8に示すように、基板Wは、基材Sと、積層構造Lとを有する。基材Sは、xy平面に広がる薄板状である。積層構造Lは、基材Sの主面Saに形成される。基材Sは、積層構造Lを支持する。積層構造Lは、基材Sの主面Saからz方向に延びるように形成される。基材Sは、例えば、半導体を含む。基材Sの材質は、特に限定されるものではないが、例えば、シリコン(以下、Siと記載することがある)を含む。本実施形態では、基材Sは、単結晶シリコンを含む。なお、主面Saは、本発明の「一方面」の一例である。また、z方向は、本発明の「第1方向」の一例である。
【0090】
積層構造Lは、複数の第1層M1と、複数の第2層M2とを有する。第1層M1と第2層M2とは交互に積層される。第1層M1および第2層M2は、基材Sの主面Saに対して交差するz方向に積層される。
【0091】
第1層M1および第2層M2は、例えば、半導体を含む。第1層M1および第2層M2は、特に限定されるものではないが、例えば、同じ元素を含む。第1層M1および第2層M2は、例えば、シリコン元素を含む。本実施形態では、第1層M1は、シリコンゲルマニウム(以下、SiGeと記載することがある)を含む。第2層M2は、ポリシリコンまたは単結晶シリコンを含む。このように、Si層とSiGe層とが積層されている基板Wは、例えば、MOSFET(金属酸化膜半導体電解効果トランジスタ)の半導体素子の製造に用いられる。
【0092】
第1層M1に含まれるゲルマニウム(以下、Geと記載することがある)の組成比は、50%よりも小さい。第1層M1に含まれるGeの組成比は、特に限定されるものではないが、例えば、5%以上、25%以下である。本実施形態では、第1層M1に含まれるGeの組成比は、20%以下である。
【0093】
複数の第1層M1のそれぞれは、基材Sの主面Saと平行に延びる。基材Sの厚み方向(z方向)において、第1層M1は、第2層M2同士の間、または、第2層M2と基材Sとの間に配置されている。
【0094】
例えば、第1層M1の厚み(z方向に沿った長さ)は、1nm以上50nm以下である。また、例えば、第2層M2の厚み(z方向に沿った長さ)は、1nm以上50nm以下である。第1層M1の厚みは、特に限定されるものではないが、例えば、第2層M2の厚みよりも小さくてもよい。本実施形態では、第1層M1の厚みは、例えば、5nm以上、15nm以下である。
【0095】
また、例えば、1層の第1層M1の厚みと1層の第2層M2の厚みとの合計は20nm以上100nm以下である。積層構造Lは、例えば、2層以上100層以下の第1層M1と、2層以上100層以下の第2層M2とを備える。
【0096】
基板Wは、リセスRを有する。リセスRは、積層構造Lに設けられる。リセスRは、積層構造Lに対して例えばドライエッチングを行うことによって形成される。リセスRは、基材Sの主面Saに対して交差する方向に沿って延びる。具体的には、リセスRは、基材Sの主面Saに対して垂直方向(z方向)に延びる。リセスRは、積層構造Lの表面Laから基材Sに向かって延びる。本実施形態では、リセスRは、積層構造Lの表面Laから基材Sまで延びる。なお、本実施形態では、リセスRは、基材Sの内部まで延びているが、基材Sの主面Saにエッチングストップ層(図示せず)を設け、リセスRが基材Sの内部まで到達しないように構成してもよい。
【0097】
リセスRは、基板Wの厚み方向(z方向)から見て、長手方向と短手方向とを有する細長形状に形成されている。本実施形態では、長手方向はy方向であり、短手方向はx方向である。以下、リセスRの短手方向の長さをリセスRの幅と記載することがある。
【0098】
リセスRの幅は、ナノオーダーである。例えば、リセスRの幅は、20nm以上300nm以下である。リセスRの幅は、50nm以上200nmであってもよい。
【0099】
基板Wは、複数の凹部Cを有する。複数の凹部Cは、リセスRに繋がる。凹部Cは、厚み方向(z方向)において、第2層M2同士の間、または、第2層M2と基材Sとの間に配置される。凹部Cは、厚み方向(z方向)と交差するx方向に延びるように形成される。なお、x方向は、本発明の「第2方向」の一例である。
【0100】
以下、凹部Cのz方向の長さを凹部Cの幅と記載し、凹部Cのx方向の長さを凹部Cの深さと記載することがある。凹部Cのアスペクト比(凹部Cの幅に対する深さの大きさ)は、特に限定されるものではないが、例えば、10以上、100以下である。本実施形態では、凹部Cのアスペクト比は、20以上である。言い換えると、凹部Cの深さ(x方向の長さ)は、凹部Cの幅(z方向の長さ)の20倍以上である。また、本実施形態では、凹部Cのアスペクト比は、例えば、30以上、50以下である。
【0101】
ここで、凹部Cは、リセスR内にエッチング液が導入され、第1層M1がウェットエッチングされることによって、形成される。このとき、エッチング液が、第1層M1および第2層M2のうち、第1層M1を選択的にエッチングする機能を有していたとしても、第1層M1と第2層M2との間で化学的特性が近い物質を含んでいる場合、エッチング選択性が低下する。具体的には、エッチング液が第1層M1だけをエッチングすることは困難で、第2層M2もエッチングしてしまう。このため、エッチングする部分(凹部C)のアスペクト比が大きくなるほど、エッチングにより第2層M2の厚みが薄くなるため、この基板Wを用いて製造される半導体素子が所望の特性を得られないことがある。
【0102】
詳細は後述するが、本実施形態によれば、凹部Cのアスペクト比が大きい場合であっても、第1層M1を選択的にエッチングできる。これにより、第2層M2の厚みが薄くなることを抑制できる。
【0103】
続いて、図9図18を参照して本実施形態の基板処理方法を説明する。図9は、本実施形態の基板処理方法を示すフロー図である。図10図18は、本実施形態の基板処理方法を説明するためのリセスR周辺の拡大断面図である。本実施形態の基板処理方法は、ステップS1~ステップS10を含む。ステップS1~ステップS10は、制御部111によって実行される。なお、ステップS6は、本発明の「疎水化工程」の一例である。また、ステップS7は、本発明の「疎水化後置換工程」の一例である。また、ステップS8は、本発明の「エッチング工程」の一例である。また、ステップS9は、本発明の「エッチング後置換工程」の一例である。
【0104】
図9に示すように、ステップS1において、基板Wの酸化膜を除去する。具体的には、図10に示す基板WのリセスRに形成された自然酸化膜(図示せず)を除去する。基板処理装置100で処理する基板Wは、基材Sと、積層構造Lと、積層構造Lに設けられたリセスRとを有する。なお、ステップS1では、凹部Cは、基板Wに形成されていない。
【0105】
本実施形態では、図5に示した処理ユニット300、または、処理ユニット300と同様の構造を有する処理ユニットを用いて、基板Wの自然酸化膜を除去する。具体的には、薬液が処理槽303に貯留される。薬液は、基板Wの自然酸化膜を除去可能な薬液である。薬液は、特に限定されるものではないが、例えば、フッ酸を含む。薬液は、例えば、数10倍以上、数1000倍以下に希釈されたフッ酸(希フッ酸)を含む。
【0106】
例えば、制御部111は、保持部250を処理位置へ移動させて、チャンバー202内に搬入された基板Wを、処理槽303に貯留されている薬液に浸漬させる。これにより、基板WのリセスRの内面に形成された自然酸化膜が薬液によって除去される。制御部111は、基板Wを薬液に浸漬させてから所定時間経過すると、保持部250を待機位置へ移動させる。
【0107】
次に、ステップS2において、基板Wをリンスする。具体的には、図1に示した処理ユニット200、または、処理ユニット200と同様の構造を有する処理ユニット200を用いて、基板Wをリンスする。
【0108】
例えば、制御部111は、保持部250をチャンバー302からチャンバー202内に移動させて、基板Wをチャンバー202内に配置する。制御部111は、第1ノズル211および第2ノズル212から基板Wにリンス液を供給する。本実施形態では、制御部111は、第1ノズル211および第2ノズル212から基板Wに向けて霧状のリンス液を吹き付ける。これにより、基板Wの表面に付着している薬液が、リンス液によって洗い流される。制御部111は、基板Wへのリンス液の供給を開始してから所定時間経過すると、リンス液の供給を停止する。なお、本実施形態では、リンス液は、DIWである。
【0109】
次に、ステップS3において、第1層M1の一部をエッチングする。具体的には、図5に示した処理ユニット300を用いて、第1層M1の一部をエッチングする。
【0110】
制御部111は、保持部250をチャンバー202からチャンバー302内に移動させて、基板Wをチャンバー302内に配置する。制御部111は、第1ノズル311および第2ノズル312から処理槽303にエッチング液E1を供給する。なお、エッチング液E1は、基板Wがチャンバー302内に移動される前に、処理槽303に貯留されていてもよい。
【0111】
エッチング液E1は、第1層M1をエッチング可能な液である。第1層M1に対するエッチング液E1のエッチング量(エッチング速度)は、第2層M2に対するエッチング液E1のエッチング量(エッチング速度)に比べて、約5倍以上であることが好ましく、約10倍以上であることがより好ましい。本実施形態では、第1層M1に対するエッチング液E1のエッチング量は、第2層M2に対するエッチング液E1のエッチング量に比べて、約20倍である。
【0112】
エッチング液E1の成分は、第1層M1および第2層M2の材質によって適宜設定されるものであり、特に限定されるものではない。本実施形態では、エッチング液E1は、エステル系溶媒と、フッ化アンモニウムと、過酸化水素水とを混合した水溶液である。
【0113】
制御部111は、保持部250を待機位置から処理位置に移動させる。つまり、制御部111は、保持部250を処理槽303内に移動させる。これにより、基板Wがエッチング液E1に浸漬される。
【0114】
図11に示すように、エッチング液E1は、リセスR内に流入する。そして、エッチング液E1は、少なくとも第1層M1をエッチングする。本実施形態では、エッチング液E1は、第2層M2に比べて約20倍大きいエッチング速度で、第1層M1をエッチングする。これにより、積層構造Lに凹部C(図12参照)が形成される。そして、制御部111は、保持部250を処理槽303内に移動させてから所定時間経過すると、保持部250を待機位置から処理位置に移動させる。つまり、制御部111は、保持部250を処理槽303から引き上げる。なお、ステップS3で形成される凹部Cの深さ(x方向の長さ)は、図8に示した凹部Cの深さよりも小さい。ステップS3で形成される凹部Cのアスペクト比は、例えば、10よりも小さい。
【0115】
次に、ステップS4において、基板Wをリンスする。具体的には、図1に示した処理ユニット200を用いて、基板Wをリンスする。
【0116】
例えば、制御部111は、保持部250をチャンバー302からチャンバー202内に移動させて、基板Wをチャンバー202内に配置する。制御部111は、第1ノズル211および第2ノズル212から基板Wにリンス液を供給する。本実施形態では、制御部111は、第1ノズル211および第2ノズル212から基板Wに向けて霧状のリンス液(ここでは、DIW)を吹き付ける(図2参照)。これにより、基板Wの表面に付着しているエッチング液E1が、リンス液によって洗い流される。制御部111は、基板Wへのリンス液の供給を開始してから所定時間経過すると、リンス液の供給を停止する。
【0117】
次に、ステップS5において、基板Wに付着しているリンス液を置換液に置換する。具体的には、置換液は、基板Wの表面に存在するリンス液(ここでは、DIW)を置換可能な液である。また、置換液は、疎水化剤SMTに対して親和性を有する液が好ましい。置換液は、例えば、有機溶剤またはアルコールを含んでもよい。本実施形態では、置換液は、IPAを含む。
【0118】
例えば、制御部111は、第3ノズル213および第4ノズル214から基板Wに置換液を供給する。本実施形態では、制御部111は、第3ノズル213および第4ノズル214から基板Wに向けて霧状の置換液を吹き付ける(図3参照)。これにより、基板Wの表面に付着しているリンス液が、置換液に置換される。本実施形態では、未使用の置換液が、第3ノズル213および第4ノズル214から基板Wに供給される。なお、1回以上使用された後に回収された使用済みの置換液が、基板Wに供給されてもよい。
【0119】
制御部111は、基板Wへの置換液の供給を開始してから所定時間経過すると、置換液の供給を停止する。
【0120】
図12に示すように、ステップS5では、基板Wに吹き付けられた置換液は、蒸発して、リセスRおよび凹部C内に残留しないことが好ましい。なお、ステップS5において、リセスRおよび凹部C内に置換液が残留してもよい。
【0121】
次に、ステップS6において、疎水化剤SMTを基板Wに供給して第2層M2の表面を疎水化する。
【0122】
例えば、制御部111は、第5ノズル215および第6ノズル216から基板Wに疎水化剤SMTを供給する。本実施形態では、制御部111は、第5ノズル215および第6ノズル216から基板Wに向けて霧状の疎水化剤SMTを吹き付ける(図4参照)。これにより、図13に示すように、第2層M2の表面を疎水化する疎水化剤SMTが、リセスR内および凹部C内に流入する。このため、第2層M2の表面が疎水化される。具体的には、疎水化剤SMTは、少なくとも第2層M2の表面をコーティングする。また、疎水化剤SMTは、少なくとも第2層M2の表面をシリル化する。本実施形態では、疎水化剤SMTは、第1層M1および第2層M2の両方の表面を疎水化する。このため、第1層M1および第2層M2の両方の表面が疎水化される。具体的には、疎水化剤SMTは、第1層M1および第2層M2の両方の表面をコーティングする。また、疎水化剤SMTは、第1層M1および第2層M2の両方の表面をシリル化する。
【0123】
より具体的には、疎水化剤SMTに含まれるシリル基は、Si-O基にもGe-O基にも結合する。つまり、疎水化剤SMTに含まれるシリル基は、第1層M1の表面にも第2層M2の表面にも結合する。そして、第1層M1の表面および第2層M2の表面には、疎水化剤SMTのシリル基が結合した疎水層Ls(図14参照)が形成される。言い換えると、第1層M1の表面および第2層M2の表面が、疎水化剤SMTからなる疎水層Lsで覆われる。なお、理解を容易にするために、図中、疎水層Lsを太線で描いている。
【0124】
また、本実施形態では、未使用の疎水化剤SMTが、第5ノズル215および第6ノズル216から基板Wに供給される。そして、未使用の疎水化剤SMTが、リセスR内に供給される。なお、1回以上使用された後に回収された使用済みの疎水化剤SMTが、基板Wに供給されてもよい。
【0125】
制御部111は、基板Wへの疎水化剤SMTの供給を開始してから所定時間経過すると、疎水化剤SMTの供給を停止する。
【0126】
次に、ステップS7において、少なくとも第2層M2の表面に疎水化剤SMT(疎水層Ls)が残るように、基板Wに存在する疎水化剤SMTを置換液に置換する。具体的には、置換液は、基板Wに存在する疎水化剤SMTを置換可能な液である。また、置換液は、疎水化剤SMTに対して親和性を有する液が好ましい。置換液は、例えば、有機溶剤またはアルコールを含んでもよい。本実施形態では、置換液は、IPAを含む。
【0127】
例えば、制御部111は、第3ノズル213および第4ノズル214から基板Wに置換液を供給する。本実施形態では、制御部111は、第3ノズル213および第4ノズル214から基板Wに向けて霧状の置換液を吹き付ける(図3参照)。これにより、基板Wに存在する疎水化剤SMTが、置換液に置換される。ただし、少なくとも第2層M2の表面の疎水化剤SMT(疎水層Ls)を残す。本実施形態では、疎水層Lsが残るように、疎水化剤SMTを置換液に置換する。本実施形態では、未使用の置換液が、基板Wに供給される。なお、使用済みの置換液が、基板Wに供給されてもよい。
【0128】
制御部111は、基板Wへの置換液の供給を開始してから所定時間経過すると、置換液の供給を停止する。
【0129】
図14に示すように、ステップS7では、基板Wに吹き付けられた置換液は、蒸発して、リセスRおよび凹部C内に残留しないことが好ましい。なお、ステップS7において、リセスRおよび凹部C内に置換液が残留してもよい。
【0130】
次に、ステップS8において、第1層M1を選択的にエッチングする。具体的には、図5に示した処理ユニット300を用いて、第1層M1を選択的にエッチングする。
【0131】
制御部111は、保持部250をチャンバー202からチャンバー302内に移動させて、基板Wをチャンバー302内に配置する。制御部111は、第1ノズル311および第2ノズル312から処理槽303にエッチング液E2を供給する。エッチング液E2は、第1層M1をエッチング可能な液である。なお、エッチング液E2は、基板Wがチャンバー302内に移動される前に、処理槽303に貯留されていてもよい。
【0132】
第1層M1に対するエッチング液E2のエッチング量(エッチング速度)は、第2層M2に対するエッチング液E2のエッチング量(エッチング速度)に比べて、約5倍以上であることが好ましく、約10倍以上であることがより好ましい。本実施形態では、第1層M1に対するエッチング液E2のエッチング量は、第2層M2に対するエッチング液E2のエッチング量に比べて、約20倍である。
【0133】
エッチング液E2の成分は、第1層M1および第2層M2の材質によって適宜設定されるものであり、特に限定されるものではない。本実施形態では、エッチング液E2は、エステル系溶媒と、フッ化アンモニウムと、過酸化水素水とを混合した水溶液である。なお、本実施形態では、エッチング液E2は、エッチング液E1と同じ成分である。
【0134】
制御部111は、保持部250を待機位置から処理位置に移動させる。つまり、制御部111は、保持部250を処理槽303内に移動させる。これにより、基板Wがエッチング液E2に浸漬される。
【0135】
図15に示すように、第2層M2の表面が疎水化された状態で、エッチング液E2はリセスR内および凹部C内に流入する。このとき、後述するように、エッチング液E2は、第1層M1および第2層M2のうち、第1層M1を選択的にエッチングする。具体的には、凹部Cの内面の一部は、疎水層Lsで覆われなくなる。このため、第1層M1はエッチングされる一方、第2層M2はほとんどエッチングされない。これにより、凹部Cのx方向の長さが大きくなる。言い換えると、凹部Cの深さが大きくなる(図16参照)。
【0136】
そして、制御部111は、保持部250を処理槽303内に移動させてから所定時間経過すると、保持部250を待機位置から処理位置に移動させる。つまり、制御部111は、保持部250を処理槽303から引き上げる。所定時間は、保持部250を処理槽303内に移動させてから、第2層M2の表面から疎水化剤SMTが無くなるまでの時間よりも短い時間である。つまり、制御部111は、エッチング液E2により第2層M2の表面から疎水化剤SMTが無くなる前に、エッチング工程(ステップS8)から次のエッチング後置換工程(ステップS9)に移行する。所定時間は、例えば、1分以上、60分以下である。所定時間は、例えば、5分以上、30分以下であってもよいし、10分以上、25分以下であってもよい。
【0137】
ステップS8で、第1層M1はエッチングされる一方、第2層M2はほとんどエッチングされないのは、以下の理由によるものと考えられる。具体的には、Si-O基にもGe-O基にもシリル基が結合することによって、第1層M1の表面も第2層M2の表面も疎水化される。しかしながら、Ge-O基は、Si-O基に比べて、水に対して非常に溶解しやすい。このため、Ge-O基を含む第1層M1は、Ge-O基を含まない第2層M2に比べて、エッチングされやすい。従って、第1層M1ではエッチングに伴い疎水層Lsが除去される一方、第2層M2ではエッチングの進行が遅いため疎水層Lsが残存しやすいと考えられる。なお、GeO2の水に対する溶解度は、4.47g/Lであり、SiO2の水に対する溶解度は、0.12g/Lである。つまり、GeO2は、SiO2に比べて、水に対して約37倍溶解しやすい。
【0138】
次に、ステップS9において、基板Wをリンスする。具体的には、図1に示した処理ユニット200を用いて、基板Wをリンスする。
【0139】
例えば、制御部111は、保持部250をチャンバー302からチャンバー202内に移動させて、基板Wをチャンバー202内に配置する。制御部111は、第1ノズル211および第2ノズル212から基板Wにリンス液を供給する。本実施形態では、制御部111は、第1ノズル211および第2ノズル212から基板Wに向けて霧状のリンス液(ここでは、DIW)を吹き付ける。これにより、基板Wの表面に付着しているエッチング液E2が、リンス液によって洗い流される。本実施形態では、未使用のリンス液が基板Wに供給される。なお、使用済みのリンス液が基板Wに供給されてもよい。
【0140】
制御部111は、基板Wへのリンス液の供給を開始してから所定時間経過すると、リンス液の供給を停止する。
【0141】
次に、ステップS10において、制御部111は、ステップS8の選択的エッチングを所定回数(例えば、5回)実行したか否かを判定する。
【0142】
ステップS10で、ステップS8の選択的エッチングを所定回数実行していないと制御部111が判定した場合、処理はステップS5に戻る。そして、ステップS5の後、ステップS6において、図17に示すようにリセスR内および凹部C内に疎水化剤SMTを流入させる。これにより、図18に示すように、リセスRの表面および凹部Cの表面に疎水層Lsが形成される。言い換えると、第1層M1の表面および第2層M2の表面が、疎水層Lsで覆われる。ステップS7以降は、上述したステップS7以降と同様である。
【0143】
一方、ステップS10で、ステップS8の選択的エッチングを所定回数(例えば、5回)実行したと制御部111が判定した場合、処理は終了する。これにより、図8に示した構造を有する基板Wが得られる。
【0144】
以上、図1図18を参照して本発明の第1実施形態を説明した。本実施形態では、上記のように、リセスR内に疎水化剤SMTを供給する疎水化工程(ステップS6)と、第2層M2の表面が疎水化された状態でリセスR内にエッチング液E2を供給し、第1層M1を選択的にエッチングするエッチング工程(ステップS8)とを所定回数繰り返す。従って、第2層M2がエッチングされることを抑制しながら、第1層M1を選択的にエッチングできる。そして、疎水化工程(ステップS6)とエッチング工程(ステップS8)とを所定回数繰り返すことによって、アスペクト比の大きい凹部Cを形成することができる。このように、本実施形態では、エッチング選択性を向上させることができる。
【0145】
また、上記のように、エッチング工程(ステップS8)において、第1層M1を選択的にエッチングすることにより、リセスRに繋がる複数の凹部Cが、第2方向(y方向)に延びるように形成される。従って、リセスRに繋がる複数の凹部Cを、基板Wと略平行に容易に形成することができる。
【0146】
また、上記のように、凹部Cの第2方向(y方向)の長さは、凹部Cの第1方向(z方向)の長さの20倍以上である。つまり、凹部Cのアスペクト比は、20以上である。通常、エッチング液が特定の層(第1層M1)および他の層(第2層M2)の両方をエッチングする機能を有する場合、凹部Cのアスペクト比が大きくなるほど他の層(第2層M2)に対するエッチング量が増加する。しかしながら、本実施形態では、疎水化工程(ステップS6)とエッチング工程(ステップS8)とを繰り返すことによって、アスペクト比が例えば20以上の凹部Cを容易に形成できる。従って、アスペクト比の大きい凹部Cを形成する場合に本発明を適用することは、特に効果的である。
【0147】
また、上記のように、リセスR内に置換液を供給することにより、少なくとも第2層M2の表面に疎水化剤SMTが残るように、疎水化剤SMTを置換液に置換する疎水化後置換工程(ステップS7)を設ける。従って、第2層M2の表面に疎水化剤SMTを残しながら、リセスR内にエッチング液E2が浸入しにくくなることを抑制できる。
【0148】
また、上記のように、エッチング工程(ステップS8)の後に、リセスR内にリンス液を供給することにより、エッチング液E2をリンス液に置換するエッチング後置換工程(ステップS9)を設ける。従って、エッチング液E2をリセスR内から容易に除去できる。
【0149】
また、上記のように、エッチング液E2により第2層M2の表面から疎水化剤SMT(疎水層Ls)が無くなる前に、エッチング工程(ステップS8)からエッチング後置換工程(ステップS9)に移行する。従って、エッチング液E2により第2層M2がエッチングされることをより抑制できる。よって、エッチング選択性をより向上させることができる。
【0150】
また、上記のように、第1層M1は、シリコンゲルマニウムを含み、第2層M2は、ポリシリコンまたは単結晶シリコンを含む。このように、第1層と第2層とが同じ物質を含んでいたり、化学的特性の近い物質(ここでは、同族元素)を含んでいたりする場合、エッチング選択性は低くなりやすい。このような場合に本発明を適用してエッチング選択性を向上させることは、特に効果的である。
【0151】
また、上記のように、第1層M1に含まれるGeの組成比は、20%以下である。このように、第1層と第2層との80%よりも多くが、同じ物質で形成されている場合、エッチング選択性はさらに低くなりやすい。このような場合に本発明を適用してエッチング選択性を向上させることは、非常に効果的である。
【0152】
また、上記のように、疎水化剤SMTは、少なくとも第2層M2の表面をシリル化する。従って、第2層M2の表面を容易に疎水化できる。
【0153】
また、上記のように、霧状の疎水化剤SMT、または、疎水化剤SMTの蒸気を基板Wに供給する。従って、例えば、疎水化剤SMTのいわゆる連続流を基板Wに供給する場合に比べて、疎水化剤SMTの使用量を低減できる。
【0154】
また、上記のように、疎水化工程(ステップS6)において、未使用の疎水化剤SMTを、リセスR内に供給する。従って、後述するように、使用済みの疎水化剤SMTを用いる場合に比べて、エッチング選択性をより向上させることができる。
【0155】
[第2実施形態]
次に、図19を参照して本発明の第2実施形態を説明する。図19は、第2実施形態の基板処理装置100による基板処理方法を示すフロー図である。第2実施形態では、エッチング後置換工程(ステップS9)においてリンス液としてIPAを用いる例について説明する。本実施形態の基板処理方法は、ステップS1~ステップS4、ステップS6~ステップS10を含む。
【0156】
図19に示すように、ステップS1~ステップS3は、第1実施形態と同様である。
【0157】
次に、ステップS4において、基板Wをリンスする。リンス液は、疎水化剤SMTに対して親和性を有する液が好ましい。リンス液は、例えば、有機溶剤またはアルコールを含んでもよい。本実施形態では、リンス液として、IPAを用いる。
【0158】
制御部111は、第1ノズル211および第2ノズル212から基板Wに向けて霧状のリンス液(ここでは、IPA)を吹き付ける。これにより、基板Wの表面に付着しているエッチング液E1が、リンス液によって洗い流される。制御部111は、基板Wへのリンス液の供給を開始してから所定時間経過すると、リンス液の供給を停止する。
【0159】
次に、第1実施形態と同様にして、ステップS6~ステップS8が実行される。
【0160】
次に、ステップS9において、基板Wをリンスする。リンス液は、疎水化剤SMTに対して親和性を有する液が好ましい。リンス液は、例えば、有機溶剤またはアルコールを含んでもよい。本実施形態では、リンス液として、IPAを用いる。
【0161】
制御部111は、第1ノズル211および第2ノズル212から基板Wに向けて霧状のリンス液(ここでは、IPA)を吹き付ける。これにより、基板Wの表面に付着しているエッチング液E2が、リンス液によって洗い流される。制御部111は、基板Wへのリンス液の供給を開始してから所定時間経過すると、リンス液の供給を停止する。
【0162】
次に、第1実施形態と同様にして、ステップS10が実行される。なお、ステップS10で、ステップS8の選択的エッチングを所定回数実行していないと制御部111が判定した場合、処理はステップS6に戻る。
【0163】
以上のようにして、基板Wに対する処理が終了する。
【0164】
第2実施形態の基板処理装置100の構造、および、その他の基板処理方法は、第1実施形態と同様である。
【0165】
以上、図19を参照して本発明の第2実施形態を説明した。本実施形態では、上記のように、エッチング後置換工程(ステップS9)で用いるリンス液は、IPAを含む。従って、例えば、リンス液としてDIWを用いる場合に比べて、リンス液の表面張力を小さくできる。よって、凹部Cの幅(z方向の長さ)が小さい(例えば5nm以上、15nm以下)場合であっても、凹部C内にリンス液が浸入しにくくなることを抑制できる。このため、リンス液としてIPAを用いることによって、エッチング液E2を凹部C内から除去しにくくなることを抑制できる。よって、その後の疎水化工程(ステップS6)において凹部C内に疎水化剤SMTが浸入しにくくなることを抑制できる。その結果、エッチング選択性が低下することを抑制できる。
【0166】
第2実施形態のその他の効果は、第1実施形態と同様である。
【0167】
次に、図20図22を参照して、上記実施形態の効果を確認するために行った確認実験について説明する。まず、図20および図21を参照して、疎水化処理の有無とSiおよびSiGeに対するエッチング量との関係を確認した実験について説明する。図20は、疎水化処理の有無とSiに対するエッチング量との関係を示す実験結果である。図21は、疎水化処理の有無とSiGeに対するエッチング量との関係を示す実験結果である。
【0168】
この確認実験では、基板Wとして、上記実施形態と同様の基板Wを用いた。具体的には、単結晶シリコンからなる基材Sと、SiGeからなる第1層M1およびポリシリコンからなる第2層M2で構成される積層構造Lとを有する基板Wを用いた。また、第1層M1に含まれるGeの組成比は、約15%であった。
【0169】
そして、基板Wを複数枚準備して、一方の基板Wには、疎水化処理を行い、他方の基板Wには疎水化処理を行わなかった。なお、この確認実験では、ステップS3、S4およびS10を行わなかった。
【0170】
具体的には、一方の基板Wに対して、上記ステップS1~ステップS2、ステップS5~ステップS9までを行った。また、他方の基板Wに対して、上記ステップS1~ステップS2、ステップS7~ステップS9までを行った。
【0171】
そして、これら基板Wに対するステップS8のエッチング時間と、第1層M1(SiGe)および第2層M2(Si)に対するエッチング量との関係を調べた。その結果を図20および図21に示す。
【0172】
図20を参照して、Siの表面に疎水化処理を施すことによって、Siに対するエッチング性が低下することが判明した。具体的には、Siの表面に疎水化処理を施さない場合(図20の黒丸)、基板Wをエッチング液E2に浸漬させた直後からSiがエッチングされた。その一方、Siの表面に疎水化処理を施した場合(図20の白丸)、基板Wをエッチング液E2に浸漬させてから25分以上経過するまでSiはほとんどエッチングされなかった。そして、エッチング液E2に浸漬させてから25分以上経過した後、Siがエッチングされた。従って、Siの表面に疎水化処理を施すことによって、所定時間(例えば25分以上)経過するまでは、Siに対するエッチング性を低下させることが可能であることが判明した。
【0173】
その一方、図21を参照して、SiGeの表面に疎水化処理を施したとしても、SiGeに対するエッチング性はほとんど低下しないことが判明した。具体的には、SiGeの表面に疎水化処理を施した場合(図21の白丸)も疎水化処理を施さない場合(図21の黒丸)も、基板Wをエッチング液E2に浸漬させた直後からSiGeがエッチングされた。
【0174】
図20および図21に示した結果から、第1層M1の表面、および、第2層M2の表面に疎水化処理を施すことによって、第2層M2をほとんどエッチングすることなく、第1層M1をエッチングできることが確認できた。
【0175】
次に、図22を参照して、エッチング後のリンス工程(ステップS9)においてリンス液としてIPAを用いることによる効果、および、未使用の疎水化剤SMTを用いることによる効果を確認した実験について説明する。図22は、エッチング後のリンス工程においてリンス液としてIPAを用いることによる効果、および、未使用の疎水化剤SMTを用いることによる効果を確認した実験結果を示す図である。この確認実験では、本実施形態に対応する実施例1~3と、本実施形態に対応しない比較例1とを用いた。実施例1~実施例3および比較例1の作成条件の比較を以下の表1に示す。
【0176】
【表1】
【0177】
(実施例1)
表1を参照して、実施例1では、基板Wとして、上記実施形態と同様の基板Wを用いた。具体的には、単結晶シリコンからなる基材Sと、SiGeからなる第1層M1およびポリシリコンからなる第2層M2で構成される積層構造Lとを有する基板Wを用いた。また、第1層M1に含まれるGeの組成比は、約15%であった。
【0178】
そして、基板Wに対して、上記ステップS1~ステップS2、ステップS5~ステップS10までを行った。なお、ステップS8のエッチング時間を5分/回とした。また、ステップS10における判定基準である所定回数を「5回」とした。
【0179】
また、ステップS6において、1回以上使用して回収した使用済みの疎水化剤SMTを用いた。また、ステップS9において、リンス液として、DIWを用いた。
【0180】
(実施例2)
実施例2では、実施例1と同様の基板Wを用いた。そして、基板Wに対して、実施例1と同様の処理を行った。ただし、実施例2では、ステップS6において、未使用の疎水化剤SMTを用いた。
【0181】
(実施例3)
実施例3では、実施例1と同様の基板Wを用いた。そして、基板Wに対して、実施例1と同様の処理を行った。ただし、実施例3では、ステップS6において、未使用の疎水化剤SMTを用いた。また、ステップS9において、リンス液として、IPAを用いた。
【0182】
(比較例1)
比較例1では、実施例1と同様の基板Wを用いた。そして、基板Wに対して、上記ステップS1~ステップS2、ステップS7~ステップS10までを行った。つまり、比較例1では、疎水化処理を行わなかった。また、ステップS9において、リンス液として、DIWを用いた。
【0183】
その後、実施例1~実施例3および比較例1について、凹部Cにおける、第2層M2(Si)のエッチング量に対する第1層M1(SiGe)のエッチング量を算出した。そして、比較例1について算出した値を「1」として規格化を行った。その結果を図22に示す。
【0184】
図22を参照して、基板Wに疎水化処理を施すことによって、エッチング選択性が高くなることが判明した。具体的には、第2層M2のエッチング量に対する第1層M1のエッチング量である算出値は、実施例1~実施例3のいずれも比較例1に比べて大きかった。
【0185】
また、未使用の疎水化剤SMTを用いることによって、エッチング選択性が高くなることが判明した。具体的には、第2層M2のエッチング量に対する第1層M1のエッチング量である算出値は、実施例2が実施例1に比べて大きかった。これは、以下の理由によるものと考えられる。すなわち、未使用の疎水化剤SMTは、1回以上使用した使用済みの疎水化剤SMTに比べて不純物が少ないため、基板Wの表面のほぼ全てのSi-O基にシリル基が結合できた。このため、未使用の疎水化剤SMTを用いることによって、エッチング選択性が高くなったと考えられる。
【0186】
また、ステップS9において、リンス液としてIPAを用いることによって、リンス液としてDIWを用いる場合に比べて、エッチング選択性が高くなることが判明した。具体的には、第2層M2のエッチング量に対する第1層M1のエッチング量である算出値については、実施例3が実施例2よりも大きかった。これは、以下の理由によるものと考えられる。すなわち、第1層M1の厚みは非常に小さい(例えば5nm以上、15nm以下)。このため、リンス液としてDIWを用いた場合、DIWの表面張力が比較的大きいため、凹部C内に入りにくい。その一方、リンス液としてIPAを用いた場合、IPAの表面張力はDIWの表面張力に比べて小さいため、リンス液は凹部C内に比較的入りやすい。従って、リンス液としてIPAを用いることによって、エッチング液E2を凹部C内から除去しやすい。よって、その後の疎水化工程(ステップS6)において、凹部C内に疎水化剤SMTを浸入させやすくなる。このため、リンス液としてIPAを用いることによって、エッチング選択性が低下することを抑制できる。
【0187】
以上、図面を参照して本発明の実施形態について説明した。ただし、本発明は、上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の態様において実施できる。また、上記の実施形態に開示される複数の構成要素は適宜改変可能である。例えば、ある実施形態に示される全構成要素のうちのある構成要素を別の実施形態の構成要素に追加してもよく、または、ある実施形態に示される全構成要素のうちのいくつかの構成要素を実施形態から削除してもよい。
【0188】
図面は、発明の理解を容易にするために、それぞれの構成要素を主体に模式的に示しており、図示された各構成要素の厚さ、長さ、個数、間隔等は、図面作成の都合上から実際とは異なる場合もある。また、上記の実施形態で示す各構成要素の構成は一例であって、特に限定されるものではなく、本発明の効果から実質的に逸脱しない範囲で種々の変更が可能であることは言うまでもない。
【0189】
例えば、上記実施形態では、基板処理装置として、バッチ式の基板処理装置を用いる例について示したが、本発明はこれに限らない。例えば、基板処理装置として、基板を1枚ずつ処理する枚葉式の基板処理装置を用いてもよい。
【0190】
また、例えば上記第1実施形態では、ステップS2、S4~S7およびS9において、基板Wに対して処理液を吹き付ける例について示したが、本発明はこれに限らない。例えば、ステップS2、S4~S7およびS9において、処理ユニット300等を用いて、処理槽303に貯留した処理液に基板Wを浸漬させてもよい。
【0191】
また、上記実施形態では、疎水化剤SMTが第1層M1および第2層M2の両方の表面を覆う例について示したが、本発明はこれに限らない。例えば、第2層M2の表面のみを覆う疎水化剤SMTを用いてもよい。
【0192】
また、上記実施形態では、自然酸化膜を除去した後、図10に示す状態から基板Wにエッチング液E1を供給する例について示したが、本発明はこれに限らない。例えば、自然酸化膜を除去した後、図10に示す状態から基板Wに疎水化剤SMTを供給してもよい。つまり、自然酸化膜を除去した後、エッチング処理の前に、疎水化処理を行ってもよい。
【0193】
また、上記実施形態では、積層構造Lが、SiGeを含む第1層M1と、Siを含む第2層M2とを有する例について示したが、本発明はこれに限らない。例えば、積層構造は、SiNを含む第1層と、SiO2を含む第2層とを有してもよい。また、例えば、積層構造は、GaAsを含む第1層と、AlGaAsを含む第2層とを有してもよい。また、例えば、積層構造は、GaNを含む第1層と、AlGaNを含む第2層とを有してもよい。
【0194】
また、上記実施形態では、基板Wの厚み方向(z方向)から見て、リセスRが、長手方向と短手方向とを有する細長形状に形成されている例について示したが、本発明はこれに限らない。リセスRは、基板Wの厚み方向から見て、例えば円形状、長円形状または正方形状を有してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0195】
本発明は、基板を処理する方法および装置に有用である。
【符号の説明】
【0196】
100 :基板処理装置
111 :制御部
206 :疎水化剤供給部
306 :エッチング液供給部
C :凹部
E2 :エッチング液
L :積層構造
M1 :第1層
M2 :第2層
R :リセス
S :基材
S6 :ステップ(疎水化工程)
S7 :ステップ(疎水化後置換工程)
S8 :ステップ(エッチング工程)
S9 :ステップ(エッチング後置換工程)
SMT :疎水化剤
Sa :主面(一方面)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22