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特開2024-124759蓄電池の放電制御装置、蓄電デバイス、及び蓄電池の放電制御方法
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  • 特開-蓄電池の放電制御装置、蓄電デバイス、及び蓄電池の放電制御方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024124759
(43)【公開日】2024-09-13
(54)【発明の名称】蓄電池の放電制御装置、蓄電デバイス、及び蓄電池の放電制御方法
(51)【国際特許分類】
   H02H 7/18 20060101AFI20240906BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20240906BHJP
【FI】
H02H7/18
H02J7/00 302D
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023032654
(22)【出願日】2023-03-03
(71)【出願人】
【識別番号】000237721
【氏名又は名称】FDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】近田 尚章
【テーマコード(参考)】
5G053
5G503
【Fターム(参考)】
5G053AA05
5G053CA04
5G053EA03
5G053EB03
5G053EC01
5G053FA07
5G503BA01
5G503BB01
5G503CC02
5G503DA13
5G503DA15
(57)【要約】
【課題】従来の装置構成或いは閾値設定を著しく変更せずに短絡誤検出を抑制すること。
【解決手段】放電制御装置は、蓄電池から外部負荷への放電経路上に配置された放電スイッチと、前記蓄電池の状態を監視する制御部と、を有し、前記制御部は、放電開始時、前記放電スイッチを繰り返し開閉させて断続的な放電を実行してから、前記放電スイッチを閉状態として連続的な放電を実行する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄電池から外部負荷への放電経路上に配置された放電スイッチと、
前記蓄電池の状態を監視する制御部と、を有し、
前記制御部は、放電開始時、前記放電スイッチを繰り返し開閉させて断続的な放電を実行してから、前記放電スイッチを閉状態として連続的な放電を実行する、
蓄電池の放電制御装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記断続的な放電の実行期間中は短絡のアラートを発出させず、前記断続的な放電の実行期間後は短絡のアラートを発出させる、
請求項1に記載の蓄電池の放電制御装置。
【請求項3】
前記蓄電池の放電制御装置を起動させるよう操作可能な起動スイッチをさらに有し、
前記制御部は、前記起動スイッチの操作に応じて放電が開始される場合に、前記断続的な放電を実行してから前記連続的な放電を実行する、
請求項1に記載の蓄電池の放電制御装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記断続的な放電の実行期間中は短絡検出機能を非アクティブ化し、前記断続的な放電の実行期間後は前記短絡検出機能をアクティブ化する、
請求項1に記載の蓄電池の放電制御装置。
【請求項5】
前記蓄電池の放電制御装置を起動させるよう操作可能な起動スイッチをさらに有し、
前記制御部は、前記起動スイッチの操作に応じて放電が開始される場合に、前記断続的な放電の実行期間中、前記短絡検出機能を非アクティブ化する、
請求項4に記載の蓄電池の放電制御装置。
【請求項6】
前記放電経路における電流を検出する電流検出部をさらに有し、
前記制御部は、閾値を超える電流が前記断続的な放電の実行期間後に検出された場合に、アラートを発出させる、
請求項1に記載の蓄電池の放電制御装置。
【請求項7】
前記断続的な放電の実行期間中、前記放電スイッチの開閉は、検出された電流が前記閾値を超えたことを条件として前記放電スイッチが開状態とされ、さらに所定時間経過後に前記放電スイッチが閉状態とされることにより、実行され、
前記制御部は、前記開閉の繰り返しの度に前記閾値を低下させる、
請求項6に記載の蓄電池の放電制御装置。
【請求項8】
前記外部負荷のコンデンサの電圧を検出する電圧検出部をさらに有し、
前記制御部は、閾値を下回る電圧が前記断続的な放電の実行期間後に検出された場合に、アラートを発出させる、
請求項1に記載の蓄電池の放電制御装置。
【請求項9】
請求項1に記載の蓄電池の放電制御装置と、前記蓄電池と、を有する、
蓄電デバイス。
【請求項10】
放電スイッチが配置された放電経路を介して外部負荷へ放電する蓄電池の状態を監視する制御部により実行される、蓄電池の放電制御方法であって、
前記放電の開始時、前記放電スイッチを繰り返し開閉させて前記放電を断続的に実行してから、前記放電スイッチを閉状態として前記放電を連続的に実行する、
蓄電池の放電制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電池の放電制御装置、蓄電デバイス、及び蓄電池の放電制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
蓄電池を備えると共に、蓄電池の状態を監視して蓄電池の充電又は放電のスイッチを適宜オンオフする制御部を内蔵する、蓄電デバイスが、従来から知られている。このような制御回路が行う監視機能の一つに、短絡保護機能がある。短絡保護機能では、例えば、蓄電デバイスにおいて過放電が検出されると、短絡が発生したと判断して放電スイッチをオフする制御が、行われる(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006-210252号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、蓄電デバイスが、コンデンサを備えた負荷装置と接続される際、蓄電デバイスから負荷装置のコンデンサへ突入電流が流れ、そして、制御部の短絡保護機能により、突入電流が短絡発生に起因するものと誤判断される場合がある。この場合、放電スイッチがオフされて、蓄電デバイスから負荷装置への放電が中止されてしまう。
【0005】
ここで、上記のような、突入電流により生じる短絡の誤判断を予防するため、短絡発生判断に用いる電流値の閾値(短絡検出用閾値)を大幅に高くすることが考えられる。しかしながら、実際に発生し得る短絡の中には、短絡経路に抵抗が含まれる短絡等、必ずしも最大電流が流れない短絡もある。短絡検出用閾値を大幅に高くすると、このような最大電流が流れない短絡の検出が困難となり、短絡を見逃すおそれが生じるため、短絡検出用閾値を高くする変更はあまり望ましくない。
【0006】
本発明の目的は、従来の装置構成或いは閾値設定を著しく変更せずに短絡誤検出を抑制することができる、蓄電池の放電制御装置、蓄電デバイス、及び蓄電池の放電制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る蓄電池の放電制御装置の一態様は、
蓄電池から外部負荷への放電経路上に配置された放電スイッチと、
前記蓄電池の状態を監視する制御部と、を有し、
前記制御部は、放電開始時、前記放電スイッチを繰り返し開閉させて断続的な放電を実行してから、前記放電スイッチを閉状態として連続的な放電を実行する。
【0008】
本発明に係る蓄電デバイスの一態様は、
上記の蓄電池の放電制御装置と、
前記蓄電池と、
を有する。
【0009】
本発明に係る蓄電池の放電制御方法の一態様は、
放電スイッチが配置された放電経路を介して外部負荷へ放電する蓄電池の状態を監視する制御部により実行される、蓄電池の放電制御方法であって、
前記放電の開始時、前記放電スイッチを繰り返し開閉させて前記放電を断続的に実行してから、前記放電スイッチを閉状態として前記放電を連続的に実行する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、従来の装置構成或いは閾値設定を著しく変更せずに短絡誤検出を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本発明の実施の形態1に係る蓄電デバイスの構成を示すブロック図である。
図2図2は、本発明の実施の形態1に係る蓄電デバイスの制御部により実行される放電制御方法の説明に供する図であって、当該放電制御方法に基づいて蓄電デバイスを動作させた結果の一例を示すタイミングチャートである。
図3図3は、本発明の実施の形態1に係る蓄電デバイスの制御部により実行される放電制御方法の説明に供する図であって、当該放電制御方法に基づいて蓄電デバイスを動作させた結果の他の例を示すタイミングチャートである。
図4図4は、本発明の実施の形態1に係る蓄電デバイスの制御部により実行される放電制御方法の説明に供する図であって、当該放電制御方法に基づいて蓄電デバイスを動作させた結果のさらに他の例を示すタイミングチャートである。
図5図5は、本発明の実施の形態2に係る蓄電デバイスの構成を示すブロック図である。
図6図6は、本発明の実施の形態3に係る蓄電デバイスの構成を示すブロック図である。
図7図7は、本発明の実施の形態3に係る蓄電デバイスの制御部により実行される放電制御方法の説明に供する図であって、当該放電制御方法に基づいて蓄電デバイスを動作させた結果の一例を示すタイミングチャートである。
図8図8は、本発明の実施の形態3に係る蓄電デバイスの制御部により実行される放電制御方法の説明に供する図であって、当該放電制御方法に基づいて蓄電デバイスを動作させた結果の他の例を示すタイミングチャートである。
図9図9は、本発明の実施の形態3に係る蓄電デバイスの制御部により実行される放電制御方法の説明に供する図であって、当該放電制御方法に基づいて蓄電デバイスを動作させた結果のさらに他の例を示すタイミングチャートである。
図10図10は、本発明の実施の形態4に係る蓄電デバイスの制御部により実行される放電制御方法の説明に供する図であって、当該放電制御方法に基づいて蓄電デバイスを動作させた結果の一例を示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0013】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係る蓄電デバイス100の構成を示すブロック図である。
【0014】
蓄電デバイス100は、蓄電池110、放電スイッチ120、電流計130、短絡検出部140及び制御部150を有する。蓄電デバイス100は、使用時に、例えばモーター又は電気回路等である外部の負荷装置10に接続され、電源ラインPLを介して蓄電池110から負荷装置10へ電気エネルギーを放電する。電源ラインPLは、放電経路の一例である。また、蓄電デバイス100のうち蓄電池110を除く全ての構成要素の組合せは、蓄電池110の放電制御装置の一例である。放電スイッチ120及び制御部150は、蓄電池110の放電制御装置の主要構成である。
【0015】
蓄電池110は、電気エネルギーを取り出し可能な状態で蓄える装置である。本実施の形態では、蓄電池110は、例えばニッケル水素二次電池等の、電気エネルギーの繰り返し充放電が可能な二次電池である。蓄電池110は、複数の二次電池セルを接続してなる組電池であってもよい。
【0016】
放電スイッチ120は、蓄電池110と外部の負荷装置10とを繋ぐ電源ラインPL上に配置される。放電スイッチ120は、オン状態で電源ラインPLを閉じ(閉状態)、オフ状態で電源ラインPLを開く(開状態)、開閉状態の切替が可能な装置である。放電スイッチ120は、例えば、ゲート電圧を制御することでオンオフ切替が可能なMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)等の、スイッチ素子である。放電スイッチ120は、閉状態のとき、蓄電池110からの電気エネルギーを負荷装置10へ放電させ、開状態のとき、蓄電池110から負荷装置10への電気エネルギーの放電を遮断する。
【0017】
放電スイッチ120は、制御部150の制御下でオンオフの繰り返し切替が高速で行われる場合があるため、高速でオンオフ動作可能な装置であることが好ましい。例えば、放電スイッチ120としてMOSFETが使用される場合は、ゲート抵抗を小さくたり、ゲートの電荷を素早く引き抜くための回路を追加したりすることで、オン(立上り)及びオフ(立下り)の動作高速化を図ることができる。
【0018】
電流計130は、蓄電池110と負荷装置10とを繋ぐ電源ラインPLが閉じられているとき、すなわち蓄電池110からの放電が実施されているときに流れる、放電電流を測定する。電流計130は、測定された放電電流値を示す信号を短絡検出部140に出力する。電流計130は、電源ラインPL上で放電スイッチ120及び蓄電池110に対して直列に接続されている。電流計130は、電流検出部の一例である。
【0019】
短絡検出部140は、電流計130からの入力信号に示された放電電流値に基づいて、蓄電デバイス100における短絡の発生を検出する。より具体的には、短絡検出部140は、電流計130からの入力信号に示された放電電流値を、短絡検出用閾値TH1と比較し、その比較の結果に基づいて、蓄電デバイス100における短絡発生の有無を判定可能とする。
【0020】
例えば、短絡検出部140は、放電電流値を示す、電流計130からの入力信号を非反転入力端子に入力し、短絡検出用閾値TH1を示す信号を反転入力端子に入力して、放電電流値と短絡検出用閾値TH1との大小関係を示す信号を出力端子から出力する、コンパレータである。
【0021】
短絡検出部140は、放電電流値と短絡検出用閾値TH1との大小関係を示す信号を制御部150へ出力する。なお、放電電流値が短絡検出用閾値TH1を超えている場合は、短絡検出部140からの出力信号は、短絡の発生が有ることを示し、放電電流値が短絡検出用閾値TH1以下である場合は、短絡検出部140からの出力信号は、短絡の発生が無いことを示す。
【0022】
制御部150は、蓄電池110の状態を監視し、蓄電池110の状態に応じて種々の制御を行う装置である。
【0023】
制御部150は、例えば、蓄電デバイス100の装置全体の制御を司るCPU(Central Processing Unit)等から構成される演算処理装置と、演算処理装置の作業領域として動作する例えばRAM(Random Access Memory)等から構成される主記憶装置と、演算処理装置の動作プログラムを記憶する例えばフラッシュメモリ又はハードディスク等の不揮発性メモリから構成される補助記憶装置と、を有する。演算処理装置は、各種制御プログラム及び当該プログラムに付随する各種データ等(以下、各種制御プログラム及び各種データ等を纏めて「プログラム等」という)を、補助記憶装置から読み出して主記憶装置に記憶させ、データ等を使用しつつ制御プログラムを実行して、制御部150の各種機能を実現させる。
【0024】
なお、補助記憶装置は、蓄電デバイス100に着脱可能な記憶媒体であってもよい。また、制御部150を外部と通信可能に構成して、プログラム等が通信ネットワークを介して外部から制御部150(の主記憶装置又は補助記憶装置)にダウンロードされるようにしてもよい。
【0025】
上述した主記憶装置及び補助記憶装置は、非一時的でコンピュータ読み取り可能な記憶媒体の一例である。
【0026】
制御部150が担う監視機能のうち主たる機能の一つに、短絡保護機能がある。短絡保護機能は、短絡検出機能を含む。短絡検出機能は、要するに、短絡検出部140からの出力信号が示す内容に基づいて、短絡の発生の有無を判定(短絡を検出)することである。また、短絡保護機能は、要するに、短絡発生有無の判定結果(短絡検出結果)に基づいて、放電スイッチ120を適宜オフさせることによって、蓄電デバイス100及び負荷装置10を保護することである。
【0027】
以上、蓄電デバイス100の構成について説明した。
【0028】
ところで、上述した通り、従来、蓄電デバイスが、コンデンサを備えた負荷装置と接続される際、蓄電デバイスから負荷装置のコンデンサへ突入電流が流れる場合があった。そして、このような場合、蓄電デバイスの制御部の短絡保護機能により、突入電流が短絡発生に起因するものと誤判断され、放電スイッチがオフされる場合があった。その結果として、蓄電池から負荷装置に対して開始された放電が、中止されるという課題があった。
【0029】
このような課題に対して、突入電流により生じる短絡の誤判断を予防するため、短絡検出用閾値を高くすることが考えられる。しかしながら、実際に発生し得る短絡の中には、短絡経路に抵抗が含まれる短絡等、必ずしも最大電流が流れない短絡もある。短絡検出用閾値を高くすると、このような最大電流が流れない短絡の検出が困難となり、短絡を見逃すおそれが生じるため、短絡検出用閾値を高くする変更は望ましくない。
【0030】
そこで、本実施の形態では、制御部150は、放電開始時、特に、蓄電デバイス100を負荷装置10に接続して蓄電デバイス100を起動した際、放電スイッチ120の繰り返し開閉を実行する。これにより、放電開始の初期段階では、断続的な放電が蓄電池110から負荷装置10に対して行われる。
【0031】
図2は、制御部150により実行される放電制御方法の説明に供する図であって、当該放電制御方法に基づいて蓄電デバイス100を動作させた結果の一例を示すタイミングチャートである。
【0032】
蓄電デバイス100が負荷装置10に接続され、時刻t=0にて蓄電デバイス100が起動されると、制御部150は、放電スイッチ120を閉状態(オン)とする。負荷装置10が例えばコンデンサ11を備えている場合、蓄電池110からの放電開始時(蓄電デバイス100の起動時)に放電スイッチ120が閉じられると、蓄電池110からの放電電流が一時的に過大となる、つまり負荷装置10に対する突入電流が発生する場合がある。典型的な突入電流の電流値は、短絡検出用閾値TH1よりも高い。放電電流が突入電流である場合、制御部150は、短絡検出部140から通知される放電電流値と短絡検出用閾値TH1との大小関係に基づき、短絡の発生があったと判定(短絡を検出)する。そして、制御部150は、その判定結果に従って、放電スイッチ120を開状態(オフ)とする。制御部150は、区間Aとして図示される、放電スイッチ120のオン時間が、所定の時間長となるように、放電スイッチをオフさせるタイミングを制御する。
【0033】
ただし、本実施の形態では、制御部150は、ここで短絡が検出されても、短絡発生をユーザに通知するためのアラートを発出させることはなく、区間Bとして図示される所定のインターバルを経て再び、放電スイッチ120を閉状態とする。制御部150は、このような放電スイッチ120の開閉の繰り返しをN回行う(Nは2以上の整数)。制御部150は、放電スイッチ120のN回繰り返し開閉の期間(断続放電期間。断続的な放電の実行期間の一例。)の間は、短絡が検出されてもアラートを発出しない。
【0034】
放電スイッチ120の開閉を繰り返すことで断続的な放電が行われる間、短絡が実際に発生していない場合は、パルス状の放電電流のピーク値は、徐々に低下する。その理由は、蓄電池110の電池電圧と負荷装置10のコンデンサ11の電圧(外部電圧)との電圧差が、徐々に縮小するからである。そして、所定の時間t1が経過して断続放電期間が終了した後、再び放電スイッチ120が閉状態とされると、放電電流のピーク値は、短絡検出用閾値TH1を超えない。その結果、制御部150は、短絡の発生は無いと判定するため、放電スイッチ120がこれ以上オフされることは無く、したがって、連続的な放電が行われることになる。
【0035】
図2に示す例では、断続放電期間において、外部電圧(つまりコンデンサ11の電圧)は、パルス状の放電電流が流入する度に徐々に上昇し、断続放電期間が終わると、放電電流の流入により負荷装置10の駆動電圧に到達して、連続放電期間が続く限り維持される。
【0036】
このように、図2に示す例では、突入電流に起因する短絡の誤検出(偽検出)を回避することができる。また、図2に示す例では、短絡の誤検出(偽検出)に基づくアラームの誤発出を抑制することができる。
【0037】
ちなみに、負荷装置10のコンデンサ11が一定レベル以上充電された状態であるときは、蓄電デバイス100が負荷装置10に接続された瞬間に電荷が蓄電池110からコンデンサ11に引き込まれることが無いため、図2に示すような突入電流が発生することは無い。
【0038】
なお、断続放電期間は、時間の長さによって定めてもよいし、放電スイッチ120の開閉繰り返しの回数Nによって定めてもよい。また、放電スイッチ120の開閉繰り返しの回数N、或いは、断続放電期間の時間長を、コンデンサ11に容量に基づいて定めると、連続放電期間に入った後に行われる、短絡発生有無の確定的な判定の精度を確保することができる。
【0039】
図3は、制御部150により実行される放電制御方法の説明に供する図であって、当該放電制御方法に基づいて蓄電デバイス100を動作させた結果の他の例を示すタイミングチャートである。なお、この例では、蓄電デバイス100において実際に短絡が発生しているものと仮定する。
【0040】
図3に示す例では、実際に短絡が発生しているため、放電スイッチ120の開閉を繰り返しても、放電電流のピーク値が高い状態を維持し(突入電流が発生し続け)、外部電圧が全く上昇しない。よって、断続放電期間が終わった後も、放電電流のピーク値は短絡検出用閾値TH1を超えるため、制御部150は、短絡の発生があったとの確定的な判定を行い、即座に放電スイッチ120をオフさせ、アラートを発出させる。
【0041】
なお、アラートは、音声の出力、画面の表示又はインジケータの点灯等の形態を採ることができる。アラート発出部として用いられる音声出力手段(例えばスピーカ)、表示手段(例えばディスプレイ)又は点灯手段(例えばLEDランプ)等は、蓄電デバイス100自体が備えていてもよいし、蓄電デバイス100と通信可能に接続されるユーザ端末が備えていてもよい。
【0042】
図3に示す例では、断続放電期間中に検出される短絡についてはアラートを発出させないが、断続放電期間後に検出される短絡についてはアラートを発出させることができる。すなわち、短絡の誤検出(偽検出)の可能性の有る期間中のアラート発出を控えて、短絡発生の確定的な判定をしてからアラート発出を行うため、短絡発生アラートの精度を向上させることができる。
【0043】
なお、図3に示す例のように、実際に短絡が発生している場合は、放電スイッチ120に負荷がかかって発熱する。よって、放電スイッチ120での発熱をできるだけ抑制するよう、区間A(放電スイッチ120のオン時間)の長さを短く(例えば1ms以下程度)することが好ましい。区間Aを短くする手法としては、例えば、短絡検出部140からの出力信号に対する制御部150の反応速度を高速とすること、短絡検出用閾値TH1を適切に設定すること、放電スイッチ120のデューティ(つまり、区間A/(区間A+区間B))を低く(例えば10%)とすること、等が挙げられる。
【0044】
以上説明したように、本実施の形態によれば、蓄電池110の放電制御装置は、蓄電池110から負荷装置10への放電経路(電源ラインPL)上に配置された放電スイッチ120と、蓄電池110の状態を監視する制御部150と、を有し、制御部150は、放電開始時、放電スイッチ120を繰り返し開閉させて断続的な放電を実行してから、放電スイッチ120を閉状態として連続的な放電を実行する。このようにして、断続放電期間中の突入電流の発生を許容することにより、従来の装置構成或いは閾値設定を著しく変更することなく、短絡誤検出を抑制することができる。
【0045】
また、本実施の形態によれば、蓄電池110の放電制御装置は、放電経路(電源ラインPL)における電流を検出する電流計130をさらに有し、制御部150は、短絡検出用閾値TH1を超える電流が断続放電期間後に検出された場合に、アラートを発出させる。これにより、蓄電池110の状態監視手段として一般的な蓄電デバイスに通常備わっている電流計130を用いて、容易に上記効果を実現することができる。
【0046】
なお、図3に示す例では、断続放電期間において、短絡のアラートを発出させることはないが、短絡の検出は行われていた。しかし、図4に示す例のように、断続放電期間においては、短絡の検出が一切行われないようにしてもよい。図4に示す例では、制御部150は、断続放電期間中、短絡検出部140からの出力信号に基づく短絡発生有無の判定を行わない。すなわち、制御部150は、断続放電期間中、短絡検出機能を非アクティブ化する。そして、制御部150は、断続放電期間後、短絡検出機能をアクティブ化する。この場合でも、図3に示す例と同様の効果を実現することができる。しかも、断続放電期間中の余計な短絡検出を回避することができるため、制御部150にかかる負荷の軽減を図ることもできる。
【0047】
(実施の形態2)
以下、本発明の実施の形態2について説明する。本実施の形態では、上記実施の形態との相違部分を中心に説明する。また、上記実施の形態と共通する構成には同じ参照符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0048】
図5は、実施の形態2に係る蓄電デバイス200の構成を示すブロック図である。実施の形態2では、起動スイッチ210が、蓄電デバイス200の筐体に、ユーザが操作可能な形態で設けられている。起動スイッチ210は、操作されると、蓄電デバイス200(主に制御部150及び短絡検出部140)を起動させる。
【0049】
すなわち、蓄電デバイス200が、蓄電デバイス200を起動させる手段として起動スイッチ210を備えている点のみ、実施の形態1に係る蓄電デバイス100と相違し、その余の点では実施の形態1に係る蓄電デバイス100と同様である。したがって、蓄電デバイス200が起動した後の、蓄電デバイス200の動作は全て、実施の形態1で説明した蓄電デバイス100の動作と同様である。
【0050】
したがって、本実施の形態によれば、蓄電池110の放電制御装置は、蓄電デバイス200を起動させるよう操作可能な起動スイッチ210をさらに有し、制御部150は、起動スイッチ210の操作に応じて放電が開始される場合に、断続的な放電を実行してから連続的な放電を実行する。これにより、本実施の形態に係る蓄電池110の放電制御装置でも、実施の形態1で説明した効果を実現することができる。また、断続的な放電を実行してから連続的な放電を実行するという短絡誤検出回避動作を、ユーザによる起動操作時に発生させることができる。
【0051】
なお、起動スイッチ210の操作方法によって制御内容を区別するようにしてもよい。例えば、ユーザが起動スイッチ210を長押しした場合には、短絡誤検出回避動作を実行させ、ユーザが起動スイッチ210を短押しした場合には、短絡誤検出回避動作を実行させず、従来通りの、断続放電期間の無い動作を実行させてもよい。
【0052】
また、ユーザが起動スイッチ210を長押しした場合には、長押ししてから一定期間を、或いは、長押ししている期間を、断続放電期間として、その期間中、制御部150の短絡検出機能を非アクティブ化するようにしてもよい。この場合、ユーザが起動スイッチ210を操作(長押し操作)した際に、実施の形態1で図4を用いて説明した効果を実現することができる。
【0053】
(実施の形態3)
以下、本発明の実施の形態3について説明する。本実施の形態では、上記実施の形態との相違部分を中心に説明する。また、上記実施の形態と共通する構成には同じ参照符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0054】
図6は、実施の形態3に係る蓄電デバイス300の構成を示すブロック図である。実施の形態3では、蓄電池110に関する監視対象の状態が、放電電流ではなく外部電圧である点で、実施の形態1と相違し、その余の点では実施の形態1と共通する。
【0055】
蓄電デバイス300は、実施の形態1に係る蓄電デバイス100が備えていた電流計130の代わりに、電圧計310を備える。電圧計310は、電源ラインPL上の放電スイッチ120及び蓄電池110に対して並列に接続されている。電圧計310は、この位置に配置されることで、外部電圧(負荷装置10のコンデンサ11の電圧)を測定することができる。電圧計310は、測定された外部電圧値を示す信号を短絡検出部140に出力する。電圧計310は、電圧検出部の一例である。
【0056】
短絡検出部140は、電圧計310からの入力信号に示された外部電圧値に基づいて、蓄電デバイス300における短絡の発生を検出する。より具体的には、短絡検出部140は、電圧計310からの入力信号に示された外部電圧値を、短絡検出用閾値TH2と比較し、その比較の結果に基づいて、蓄電デバイス300における短絡発生の有無を判定可能とする。
【0057】
例えば、短絡検出部140は、外部電圧値を示す、電圧計310からの入力信号を非反転入力端子に入力し、短絡検出用閾値TH2を示す信号を反転入力端子に入力して、外部電圧値と短絡検出用閾値TH2との大小関係を示す信号を出力端子から出力する、コンパレータである。
【0058】
短絡検出部140は、外部電圧値と短絡検出用閾値TH2との大小関係を示す信号を制御部150へ出力する。なお、外部電圧値が短絡検出用閾値TH2を下回っている場合は、短絡検出部140からの出力信号は、短絡の発生が有ることを示し、外部電圧値が短絡検出用閾値TH2以上である場合は、短絡検出部140からの出力信号は、短絡の発生が無いことを示す。
【0059】
図7は、制御部150により実行される放電制御方法の説明に供する図であって、当該放電制御方法に基づいて蓄電デバイス300を動作させた結果の一例を示すタイミングチャートである。
【0060】
蓄電デバイス100が負荷装置10に接続され、時刻t=0にて蓄電デバイス100が起動されると、制御部150は、放電スイッチ120を所定の区間Aにわたり閉状態(オン)とする。負荷装置10が例えばコンデンサ11を備えている場合、蓄電池110からの放電開始時(蓄電デバイス300の起動時)に放電スイッチ120が閉じられると、蓄電池110からの放電電流が一時的に過大となる、つまり負荷装置10に対する突入電流が発生する場合がある。短絡が実際に発生していなければ、放電電流の流入によりコンデンサ11の電圧(外部電圧)が区間Aの間、上昇するが、短い区間Aの終了時点では、外部電圧は短絡検出用閾値TH2に到達しない。よって、制御部150は、短絡検出部140から通知される外部電圧値と短絡検出用閾値TH2との大小関係に基づき、短絡の発生があったと判定(短絡を検出)する。
【0061】
ただし、本実施の形態では、制御部150は、ここで短絡が検出されても、短絡発生をユーザに通知するためのアラートを発出させることはなく、区間Bとして図示される所定のインターバルを経て再び、放電スイッチ120を閉状態とする。制御部150は、このような放電スイッチ120の開閉の繰り返しをN回行う(Nは2以上の整数)。制御部150は、放電スイッチ120のN回繰り返し開閉が行われる断続放電期間の間は、短絡が検出されてもアラートを発出しない。
【0062】
放電スイッチ120の開閉を繰り返すことで断続的な放電が行われる間、短絡が実際に発生していない場合は、外部電圧値は、徐々に上昇する。そして、所定の時間t1が経過して断続放電期間が終了した後、再び放電スイッチ120が閉状態とされると、外部電圧値は、短絡検出用閾値TH2を超える。その結果、制御部150は、短絡の発生は無いと判定するため、放電スイッチ120がこれ以上オフされることは無く、したがって、連続的な放電が行われることになる。
【0063】
このように、図7に示す例では、突入電流に起因する短絡の誤検出(偽検出)を回避することができる。また、図7に示す例では、短絡の誤検出(偽検出)に基づくアラームの誤発出を抑制することができる。
【0064】
図8は、制御部150により実行される放電制御方法の説明に供する図であって、当該放電制御方法に基づいて蓄電デバイス300を動作させた結果の他の例を示すタイミングチャートである。なお、この例では、蓄電デバイス300において実際に短絡が発生しているものと仮定する。
【0065】
図8に示す例では、実際に短絡が発生しているため、放電スイッチ120の開閉を繰り返しても、外部電圧が全く上昇しない。よって、断続放電期間が終わった後も、外部電圧値は短絡検出用閾値TH2を下回るため、制御部150は、短絡の発生があったとの確定的な判定を行い、即座に放電スイッチ120をオフさせ、アラートを発出させる。
【0066】
なお、図8に示す例では、断続放電期間において、短絡のアラートを発出させることはないが、短絡の検出は行われていた。しかし、図9に示す例のように、断続放電期間においては、短絡の検出が一切行われないようにしてもよい。図9に示す例では、制御部150は、断続放電期間中、短絡検出部140からの出力信号に基づく短絡発生有無の判定を行わない。すなわち、制御部150は、断続放電期間中、短絡検出機能を非アクティブ化する。そして、制御部150は、断続放電期間後、短絡検出機能をアクティブ化する。この場合でも、図8に示す例と同様の効果を実現することができる。しかも、断続放電期間中の余計な短絡検出を回避することができるため、制御部150にかかる負荷の軽減を図ることもできる。
【0067】
以上のように、本実施の形態によれば、蓄電池110の放電制御装置は、負荷装置10のコンデンサ11の電圧(外部電圧)を検出する電圧計310をさらに有し、制御部150は、短絡検出用閾値TH2を下回る外部電圧が断続放電期間後に検出された場合に、アラートを発出させる。これにより、蓄電池110の状態監視手段として一般的な蓄電デバイスに通常備わっている電圧計310を用いて、容易に上記効果を実現することができる。
【0068】
(実施の形態4)
以下、本発明の実施の形態4について説明する。本実施の形態では、上記実施の形態との相違部分を中心に説明する。また、上記実施の形態と共通する構成には同じ参照符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0069】
本実施の形態に係る蓄電デバイスの構成は、実施の形態1に係る蓄電デバイス100と同様である。よって、本実施の形態に係る蓄電デバイスも、蓄電デバイス100という。
【0070】
本実施の形態に係る蓄電デバイス100では、放電電流値の閾値判定に用いる短絡検出用閾値TH3(n)及び短絡検出用閾値TH3(N+1)が、実施の形態1で説明した短絡検出用閾値TH1と異なる(nは1以上N以下の整数)。
【0071】
図10に示されるように、短絡検出用閾値TH3(n)は、断続放電期間中、放電スイッチ120の開閉の繰り返し回数が増えるにつれて、低下するように設定されている。不等式を用いて言い換えれば、TH3(1)>TH3(2)>TH3(3)>・・・>TH3(N)である。断続放電期間後の連続放電期間中に用いられる短絡検出用閾値TH3(N+1)は、断続放電期間の最後に用いられる短絡検出用閾値TH3(N)よりもさらに一段階低い数値に設定されている(TH3(N)>TH3(N+1))。
【0072】
このように、本実施の形態によれば、蓄電池110の放電制御装置では、放電電流が短絡検出用閾値TH3(n)を超えたことを条件として放電スイッチ120が開状態とされ、さらに区間Bの経過後に放電スイッチ120が閉状態とされることにより、断続放電期間中、放電スイッチ120の開閉が実行され、制御部150は、その開閉の繰り返しの度に短絡検出用閾値TH3(n)を低下させる。このように、開閉繰り返しの回数が進むと共に、短絡が検出しやすくなるように、短絡検出用閾値TH3(n)が徐々に厳しい値に変更されて最終的に最も厳しい短絡検出用閾値TH3(N+1)に達するため、短絡の見逃しの可能性を一層低く抑えることができる。
【0073】
以上、本発明の実施の形態を具体的に説明したが、本発明は上述した特定の実施の形態に限定されるものではない。特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内で、上記実施の形態に記載された具体例に対する種々の変形及び変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明は、例えば、蓄電池の状態を監視する機能を備える蓄電デバイスに、好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0075】
10 負荷装置(外部負荷)
11 コンデンサ
100、200、300 蓄電デバイス
110 蓄電池
120 放電スイッチ
130 電流計
140 短絡検出部
150 制御部
210 起動スイッチ
310 電圧計
PL 電源ライン(放電経路)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10