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特開2024-124764合成シリカガラス製造装置および合成シリカガラスの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024124764
(43)【公開日】2024-09-13
(54)【発明の名称】合成シリカガラス製造装置および合成シリカガラスの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C03B 20/00 20060101AFI20240906BHJP
【FI】
C03B20/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023032663
(22)【出願日】2023-03-03
(71)【出願人】
【識別番号】507182807
【氏名又は名称】クアーズテック合同会社
(71)【出願人】
【識別番号】592104944
【氏名又は名称】クアーズテック徳山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101878
【弁理士】
【氏名又は名称】木下 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100187506
【弁理士】
【氏名又は名称】澤田 優子
(72)【発明者】
【氏名】千々松 孝
(72)【発明者】
【氏名】生野 浩人
(72)【発明者】
【氏名】前田 功
【テーマコード(参考)】
4G014
【Fターム(参考)】
4G014AH15
(57)【要約】      (修正有)
【課題】シリカガラスインゴットの合成中に合成面への異物の混入を高精度に検出する合成シリカガラス製造装置を提供する。
【解決手段】本発明にかかる合成シリカガラス製造装置1は、炉体を形成する耐火物製のマッフル11と、マッフル11の内部に回転および昇降可能に設置されたターゲット12と、ターゲット12に先端を向けてマッフル11の上部壁11aに設置されたシリカガラスインゴット合成用のバーナ13と、を備え、マッフル11の側壁11bには、インゴットの合成面を撮影するための開口11cが形成されている。さらに、合成シリカガラス製造装置1は、開口11cからインゴットの合成面を撮影するカメラ14と、カメラ14を制御する機能を有するとともに、カメラ14による撮影画像を2値化し、得られた2値化画像に基づいて合成面への落下物の有無を判定する制御装置15と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炉体を形成する耐火物製のマッフルと、前記マッフルの内部に回転および昇降可能に設置されたシリカガラスインゴット形成用のターゲットと、前記ターゲットに先端を向けて前記マッフルの上部壁に設置されたシリカガラスインゴット合成用のバーナと、を備えた合成シリカガラス製造装置であって、
前記マッフルの側壁にはインゴットの合成面を撮影するための開口が形成され、
さらに、
前記開口からインゴットの合成面を撮影するカメラと、
前記カメラを制御する機能を有するとともに、前記カメラによる撮影画像を、規定値以上の輝度変化量の部位である特定輝度変化部位を検出するためのしきい値で2値化し、特定輝度変化部位の水平方向の移動距離、特定輝度変化部位の垂直方向の移動距離、および特定輝度変化部位の軌跡の幅の、3つの判定条件に基づいて、特定輝度変化部位の軌跡が合成面への落下物によるものであるか否かを判定する制御装置と、
を備える、
ことを特徴とする合成シリカガラス製造装置。
【請求項2】
炉体を形成する耐火物製のマッフルと、前記マッフルの内部に回転および昇降可能に設置されたシリカガラスインゴット形成用のターゲットと、前記ターゲットに先端を向けて前記マッフルの上部壁に設置されたシリカガラスインゴット合成用のバーナと、前記マッフルの側壁に形成された開口からインゴットの合成面を撮影するカメラと、記憶部と前記カメラを制御する制御部とを有する制御装置と、を備える合成シリカガラス製造装置による合成シリカガラスの製造方法であって、
前記制御部の制御により前記カメラによる撮影画像を前記記憶部に記憶する記憶ステップと、
前記制御部が、前記記憶部から撮影画像を読み出し、前記撮影画像を、規定値以上の輝度変化量の部位である特定輝度変化部位を検出するためのしきい値で2値化し、撮影時間順に所定枚数分の2値化画像を重ね合わせ、重ね合わせた2値化画像から、特定輝度変化部位の軌跡を抽出する部位抽出ステップと、
前記制御部が、特定輝度変化部位の水平方向の移動距離、特定輝度変化部位の垂直方向の移動距離、および特定輝度変化部位の軌跡の幅の、3つの判定条件に基づいて、特定輝度変化部位の軌跡が合成面への落下物によるものであるか否かを判定する判定ステップと、
を含む、
ことを特徴とする合成シリカガラスの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成シリカガラスインゴットの合成中に合成面への落下物の有無を判定可能な合成シリカガラス製造装置および合成シリカガラスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光学用途向け合成シリカガラスのインゴットは、従来から、四塩化ケイ素等のシリカ原料をバーナから耐火物製の炉内に噴出し、これらを加水分解反応させ、生成したシリカガラス微粒子をターゲット上に堆積させることで、製造されてきた。
【0003】
具体的には、炉体の上部にバーナが設けられ、このバーナから下方に向けて、原料ガス(たとえばSiCl4+O2)、可燃性ガスとしての水素ガス(H2)および支燃性ガスとしての酸素ガス(O2)が供給される。バーナのノズル口付近では、水素と酸素との燃焼反応により高温の水蒸気(H2O)が発生する。そして、この水蒸気と原料ガスが加水分解反応することにより、シリカガラス微粒子(SiO2)が生成される。生成されたシリカガラス微粒子は、バーナから噴出されるガスの流れとともに、鉛直軸周りに回転するターゲット上に堆積、溶融ガラス化され、透明なガラスのインゴットとして製造される。
【0004】
しかしながら、このような工程でインゴットを製造する製造装置においては、インゴットの形成に使われない浮遊シリカガラス微粒子の一部が炉内を浮遊し、また、バーナ近傍や炉内の内壁(上部壁、側壁)に付着、堆積し、インゴット製造中に、この堆積したシリカガラス粒子がインゴットに落下、混入し、その結果として、落下したシリカガラス粒子(落下物)が異物や気泡となってインゴットの品質を低下させることがあった。すなわち、インゴットに脈理、内部欠陥が生じ、高品質な合成シリカガラスを得られないことがあった。
【0005】
一方で、上述したインゴットにおける脈理および内部欠陥を改善し、高品質な合成シリカガラスを得るための様々な技術が検討されている。その1つとして、下記引用文献1には、CCDカメラによる撮影画像を利用して、インゴットの合成炉内の状態を観察し、合成中に不純物の混入を監視することが可能な合成シリカガラス製造装置、が開示されている。
【0006】
具体的には、インゴットの製造中に、CCDカメラにて合成炉内のインゴットの合成面を特定波長の光で観察し、その観察結果(炎色反応を利用したインゴットの不純物濃度の推量結果など)を現在の合成条件にフィードバックする。すなわち、下記引用文献1に記載の合成シリカガラス製造装置においては、合成中に不純物が混入したか否かを常に観察し、その結果をインゴットの製造に反映することによって、光学的性質(屈折率、歪など)が均質な高品質の合成シリカガラスを得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004-244298号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記引用文献1に記載の合成シリカガラス製造装置において、CCDカメラにて合成炉内のインゴットの合成面を観察する場合、混入物が金属不純物であれば、その特有の炎色反応により特定波長を検知することで不純物の混入を確認することができるが、バーナ近傍や炉内の内壁(上部壁、側壁)に付着したシリカガラス粒子が落下した場合には特有の炎色反応が生じず、この落下、混入を確認することが困難である。また、インゴットの合成面には反射によって様々な模様が映り込むため、合成面の観察のみでは、合成中に落下物の混入を精度よく検出することは困難である。さらに、前述したようにシリカガラス粒子が落下した場合には、合成面近傍のシリカガラス微粒子の流れに妨げられることもあり、観察による落下物の混入判定が非常に困難である。
【0009】
なお、インゴットの合成面への落下物は、合成中に気泡となる場合や、発泡せずに溶け込む場合がある。たとえば、気泡となった場合は、合成後に目視観察でその気泡を検出可能であるが、合成中に検出することは非常に困難である。一方、溶け込んだ場合には、インゴットの合成後に、鏡面研磨し目視で観察する方法や、シュリーレン法等、公知の方法により検出可能ではあるが、すべてを検知することは困難であり、精度よく検出するためには、検査工程が複雑化し、コスト高となる。
【0010】
本発明は、上記のような課題に鑑みてなされたものであって、シリカガラスインゴットの合成中に、合成面への異物の混入、特に、バーナ近傍や炉内の内壁(上部壁、側壁)に付着したシリカガラス粒子の落下物の混入を、より高精度に検出する合成シリカガラス製造装置、および合成シリカガラスの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明にかかる合成シリカガラス製造装置は、炉体を形成する耐火物製のマッフルと、マッフルの内部に回転および昇降可能に設置されたシリカガラスインゴット形成用のターゲットと、ターゲットに先端を向けてマッフルの上部壁に設置されたシリカガラスインゴット合成用のバーナと、を備え、マッフルの側壁には、インゴットの合成面を撮影するための開口が形成されている。さらに、本発明にかかる合成シリカガラス製造装置は、上記開口からインゴットの合成面を撮影するカメラと、カメラを制御する機能を有するとともに、カメラによる撮影画像を、規定値以上の輝度変化量の部位である特定輝度変化部位を検出するためのしきい値で2値化し、特定輝度変化部位の水平方向の移動距離、特定輝度変化部位の垂直方向の移動距離、および特定輝度変化部位の軌跡の幅の、3つの判定条件に基づいて、特定輝度変化部位の軌跡が合成面への落下物によるものであるか否かを判定する制御装置と、を備えることを特徴とする。
【0012】
また、本発明にかかる合成シリカガラスの製造方法は、炉体を形成する耐火物製のマッフルと、マッフルの内部に回転および昇降可能に設置されたシリカガラスインゴット形成用のターゲットと、ターゲットに先端を向けてマッフルの上部壁に設置されたシリカガラスインゴット合成用のバーナと、マッフルの側壁に形成された開口からインゴットの合成面を撮影するカメラと、記憶部とカメラを制御する制御部とを有する制御装置と、を備える合成シリカガラス製造装置による合成シリカガラスの製造方法であって、制御部の制御によりカメラによる撮影画像を記憶部に記憶する記憶ステップと、制御部が、記憶部から撮影画像を読み出し、当該撮影画像を、規定値以上の輝度変化量の部位である特定輝度変化部位を検出するためのしきい値で2値化し、撮影時間順に所定枚数分の2値化画像を重ね合わせ、重ね合わせた2値化画像から、特定輝度変化部位の軌跡を抽出する部位抽出ステップと、制御部が、特定輝度変化部位の水平方向の移動距離、特定輝度変化部位の垂直方向の移動距離、および特定輝度変化部位の軌跡の幅の、3つの判定条件に基づいて、特定輝度変化部位の軌跡が合成面への落下物によるものであるか否かを判定する判定ステップと、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明にかかる合成シリカガラス製造装置および合成シリカガラスの製造方法によれば、シリカガラスインゴットの合成中に、合成面への異物の混入、特に、バーナ近傍や炉内の内壁(上部壁、側壁)に付着したシリカガラス粒子の落下物の混入を、より高精度に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、本発明にかかる合成シリカガラス製造装置の一実施形態を示す断面模式図である。
図2図2は、合成面への落下物の有無を判定する処理を示すフローチャートである。
図3図3は、制御装置として動作するコンピュータのハードウェア構成例を示す図である。
図4図4は、判定処理の一例を示すフローチャートである。
図5図5は、特定輝度変化部位の軌跡の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明にかかる合成シリカガラス製造装置および合成シリカガラスの製造方法の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態により本発明が限定されるものではない。また、図面は、説明のために形状を模式的に示したものであり、図示した形状、寸法等に本発明が限定されるものではない。また、本発明の説明に不要な、その他の装置や部材は図示していない。
【0016】
<構成>
図1は、本発明にかかる合成シリカガラス製造装置の一実施形態を示す断面模式図である。本実施形態の合成シリカガラス製造装置1は、炉体を形成する耐火物製のマッフル11と、マッフル11の内部(炉内)に回転および昇降可能に設置されたシリカガラスインゴット(以降、単にインゴットと呼ぶ場合がある)形成用のターゲット12と、ターゲット12に先端を向けてマッフル11の上部壁11aに設置されたシリカガラスインゴット合成用のバーナ13とを備え、マッフル11の側壁11bには、インゴットの合成面を撮影するための開口11cが形成されている。
【0017】
さらに、本実施形態の合成シリカガラス製造装置1は、開口11cからインゴットの合成面を撮影するカメラ14と、カメラ14を制御する機能を有するとともに、カメラ14による撮影画像を、規定値以上の輝度変化量の部位である特定輝度変化部位を検出するためのしきい値で2値化し、特定輝度変化部位の水平方向の移動距離、特定輝度変化部位の垂直方向の移動距離、および特定輝度変化部位の軌跡の幅の、3つの判定条件に基づいて、特定輝度変化部位の軌跡が合成面への落下物によるものであるか否かを判定する制御装置15と、を備える。なお、上記しきい値および3つの判定条件の詳細については後述する。
【0018】
ここで、上記のように構成される合成シリカガラス製造装置1をさらに詳細に説明する。
【0019】
マッフル11は、上部壁11aおよび側壁11bからなる有底筒状の形状を有し、マッフル11の側壁11bには、上述したように、インゴットの合成面を撮影するための開口11cが形成されている。より詳細には、インゴットの合成面を撮影するために、側壁11bにマッフル11の外部(炉外)から炉内に貫通する開口11cが形成されている。この開口11cは、インゴットの合成面と略同一の高さ位置に形成され、さらに開口11cには開口部分を塞ぐようにシリカガラス製の透明な窓11dが取り付けられている。また、上部壁11aの中央部には貫通孔が形成され、バーナ13は、この貫通孔に嵌着され一体化される。
【0020】
また、マッフル11は、耐火物で形成されているが、この耐火物としては、一般的な合成シリカガラス製造装置に用いられる公知の材料が広く適用できる。一例として、アルミナ、または、アルミナを主成分とするセラミックスを使用可能である。
【0021】
ターゲット12は、インゴット昇降軸12aの動作に連動して軸回転および昇降する。この際、ターゲット12は、合成シリカガラス(インゴット)の堆積速度に合わせて、バーナ13の先端とインゴットの合成面との距離を一定に保つように下降する。
【0022】
バーナ13は、たとえば、シリカガラス製のものが使用され、下方に向けて、原料ガス(たとえばSiCl4+O2)と可燃性ガス(H2)と支燃性ガス(O2)とを導出して火炎流を形成する。なお、本実施形態においては、バーナ13のノズル形状について特に制限はなく、公知のシリカガラスインゴット合成用のバーナを適用可能である。
【0023】
カメラ14は、たとえば、開口11cからインゴットの合成面を撮影する産業用カメラであり、制御装置15の制御により、インゴットの合成中に合成面の動画を撮影する。詳細には、鉛直軸周りに回転するターゲット12(インゴット)の回転軸方向に対し直交する方向からインゴットの合成面の動画を撮影する。すなわち、カメラ14は、インゴットの合成面をその側面側から撮影することになる。これにより、窓11dとインゴットの合成面との間の空間、およびインゴットの合成面、を撮影した動画が得られるとともに、この動画に基づいて合成面に落下した落下物の垂直方向および水平方向の移動を検知することができる。なお、インゴットの合成面とは、合成されたシリカガラスが堆積する部分のことをいい、この合成面は、通常、インゴットの回転軸方向の上方に頂部を有する略半球状のもしくは頂部が丸まった略円錐状の曲面となる。
【0024】
制御装置15は、カメラ14により撮影されたインゴットの合成面の動画から時系列的に静止画を取得し、それらの静止画を、特定輝度変化部位(上述した「規定値以上の輝度変化量の部位」に相当)を検出するためのしきい値で2値化する。
【0025】
また、上記しきい値は以下のように決定する。たとえば、インゴットの製造中に、バーナ近傍や炉内の内壁(上部壁、側壁)にシリカガラス微粒子が付着し堆積したシリカガラス粒子がインゴットの合成面に落下した場合、その落下物が付着した部分は、インゴットの合成面のその他の部分と比較して輝度(明るさを表す指標)が変化する。具体的には、落下物が付着した部分は、合成面のその他の部分よりも明るくなる。そこで、本実施形態においては、このような落下物(シリカガラス粒子の合成面への落下)による輝度の変化を利用して、たとえば、落下物が付着した部分を抽出できるように、より具体的には、特定輝度変化部位を検出できるように、予め輝度のしきい値を決めておく。すなわち、制御装置15は、予め決めておいた輝度のしきい値に基づいて、インゴットの合成面の撮影画像を時系列で2値化する。
【0026】
そして、制御装置15は、時系列的に取得した2値化後の画像(撮影時間順の静止画)を用いて、検出された特定輝度変化部位の水平方向の移動距離(水平移動距離)を計測する。この際、制御装置15は、水平移動距離がインゴットの回転速度により規定される第1の距離未満の特定輝度変化部位の軌跡については、合成面近傍の浮遊シリカガラス微粒子によるものであると判定する。一方、水平移動距離が上記第1の距離以上の特定輝度変化部位の軌跡については、合成面に付着しインゴットの回転に伴い水平方向へ移動した落下物によるものである可能性が高いと判定することができる。
【0027】
さらに、制御装置15は、上述した2値化後の画像を用いて、検出された特定輝度変化部位の垂直方向の移動距離(垂直移動距離)および特定輝度変化部位の軌跡の幅を計測する。この際、制御装置15は、垂直移動距離が特定の第2の距離を超える特定輝度変化部位の軌跡、または、幅が特定の長さを超える軌跡、については、インゴットと側壁11bとの間の空間に落下した落下物によるものであると判定する。一方、垂直移動距離が上記第2の距離以下であって、かつ幅が上記特定の長さ以下である、特定輝度変化部位の軌跡については、合成面に付着した落下物によるものである可能性が高いと判定することができる。すなわち、制御装置15は、水平移動距離が上記第1の距離以上、垂直移動距離が上記第2の距離以下、かつ幅が上記特定の長さ以下である特定輝度変化部位の軌跡を、合成面に付着した落下物によるものであると判定する。
【0028】
このように、カメラ14によるインゴットの合成面の撮影画像を時系列で2値化することにより、制御装置15は、特定輝度変化部位の軌跡が合成面への落下物によるものであるか否かを精度よく判定することができる。
【0029】
また、インゴットの合成面を精度よく撮影するため、本実施形態で使用するカメラ14は、100万画素以上のものが好ましく、200万画素以上のものがより好ましい。また、カメラ14の設置位置が炉体に近すぎると熱ダメージが大きいため、必要に応じ、1.5~3倍率程度のズームレンズ16を用い、熱ダメージを受けない程度にカメラ14を熱源から遠ざけることが望ましい。また、合成面は非常に高輝度であるため、1/250~1/750程度の減光フィルタ17を用いることが望ましい。減光フィルタ17は、色には影響を与えず光の量だけを減らす、一般的な減光フィルタを使用可能とする。
【0030】
なお、本発明にかかる合成シリカガラス製造装置は、上記図1に示す構成要素以外の構成要素、さらには図示しないその他の部材について、格別の制限はなく、広く公知の態様において実施することができる。
【0031】
また、インゴットの合成面を撮影するカメラ14は、産業用カメラに限るものではなく、画質、耐熱性等、上述したカメラ性能を満たすものであれば、どのようなカメラであってもよい。
<製造方法>
【0032】
つぎに、本実施形態の合成シリカガラス製造装置1を用いた合成シリカガラスの製造方法について説明する。
【0033】
本実施形態の合成シリカガラスの製造方法は、炉体を形成する耐火物製のマッフル11と、マッフル11の内部(炉内)に回転および昇降可能に設置されたシリカガラスインゴット形成用のターゲット12と、ターゲット12に先端を向けてマッフル11の上部壁11aに設置されたシリカガラスインゴット合成用のバーナ13と、マッフル11の側壁11bに形成された開口11cからインゴットの合成面を撮影するカメラ14と、記憶部(後述する制御部22に相当)とカメラ14を制御する制御部(後述する制御部21に相当)とを有する制御装置15と、を備える合成シリカガラス製造装置1による製造方法である。
【0034】
そして、この制御方法は、上記制御部の制御によりカメラ14による撮影画像を上記記憶部に記憶する記憶ステップと、上記制御部が、上記記憶部から撮影画像を読み出し、この撮影画像を、特定輝度変化部位を検出するためのしきい値で2値化し、撮影時間順に所定枚数分の2値化画像を重ね合わせ、重ね合わせた2値化画像から、特定輝度変化部位の軌跡を抽出する部位抽出ステップと、上記制御部が、予め規定された判定条件、すなわち、特定輝度変化部位の水平方向の移動距離、特定輝度変化部位の垂直方向の移動距離、および特定輝度変化部位の軌跡の幅の、3つの判定条件に基づいて、特定輝度変化部位の軌跡が合成面への落下物によるものであるか否かを判定する判定ステップと、を含むものである。
【0035】
以下、本実施形態の合成シリカガラスの製造方法をさらに詳細に説明する。
【0036】
本実施形態の合成シリカガラス製造装置1では、シリカガラスインゴット合成用のバーナ13を用いて、原料ガス(たとえばSiCl4+O2)と可燃性ガスである水素ガス(H2)と支燃性ガスである酸素ガス(O2)とを導入する。
【0037】
このとき、バーナ13のノズル口付近では、水素と酸素との燃焼反応により、高温の水蒸気(H2O)が発生する。そして、この水蒸気と原料ガスが加水分解反応することにより、シリカガラス微粒子(SiO2)が生成される。インゴット合成時の温度は、たとえば、約1400℃となるように調整する。
【0038】
生成されたシリカガラス微粒子は、バーナ13から噴出されるガスの流れとともに、鉛直軸周りに回転するターゲット12上に堆積、溶融ガラス化され、インゴットとして合成シリカガラスが製造される。この際、合成シリカガラスの製造は、合成シリカガラスの堆積速度に合わせて、バーナ13の先端からインゴットの合成面までの距離が一定に保たれるように、ターゲット12を下降させながら行われる。
【0039】
一方で、合成シリカガラスの製造中(インゴットの合成中)は、インゴットの合成に使われない浮遊シリカガラス微粒子の一部が、炉内を浮遊し、さらには、バーナ13の近傍や炉体の内壁(マッフル11の上部壁11aおよび側壁11b等)に付着し堆積する。そして、この堆積したシリカガラス粒子はインゴットの合成面に落下、混入する場合があり、この場合、落下したシリカガラス粒子は、異物や気泡となってインゴットの品質を低下させる要因となる。
【0040】
そこで、本実施形態の合成シリカガラス製造装置1において、制御装置15(後述する制御部21に相当)では、インゴットの品質向上を目的として、インゴットの合成中に、合成面への落下物の有無を判定する処理(図2参照)を実行する。
【0041】
具体的にいうと、まず、制御装置15では、インゴットの合成開始待ちの状態において(ステップS1,No)、合成開始を検知した場合(ステップS1,Yes)、カメラ14に対し動画の撮影を指示する。炉外に設置されたカメラ14は、制御装置15からの指示に従い、開口11c(窓11d)を介してインゴットの合成面の動画撮影を開始し、その撮影画像を制御装置15内の記憶部(後述する記憶部22に相当)に記憶する(ステップS2:撮影開始)。このとき、制御装置15では、カメラ14により撮影された動画を、所定の長さ(時間)の動画ファイルに分割しながら保存する。
【0042】
そして、制御装置15は、上記記憶部から動画ファイル(撮影画像)を読み出し、その撮影画像に基づいて、合成面への落下物の有無を判定する(ステップS3:判定処理)。この判定処理は、インゴットの合成が開始されてから合成が終了するまでの間(ステップS1,Yes、ステップS4,No)、制御装置15によるソフトウェア処理にて継続して行われる。
【0043】
その後、合成終了を検知すると(ステップS4,Yes)、制御装置15は、カメラ14を制御して撮影を停止させ、合成面への落下物の有無を判定する処理を終了する(ステップS5)。
【0044】
<判定処理の詳細>
ここで、上記ステップS3における判定処理を詳細に説明する。図3は、本実施形態の制御装置15として動作するコンピュータのハードウェア構成例を示す図である。本実施形態の制御装置15は、上記ステップS3の判定処理を行うホストコンピュータとして動作する。
【0045】
図3において、制御装置15は、CPU(Central Processing Unit)およびFPGA(Field Programmable Gate Array)等で構成される制御部21と、ROM(Read Only Memory),RAM(Random Access Memory)等の各種メモリを含む記憶部22と、キーボードおよびマウス等のユーザインタフェースを含む入力部23と、印刷やスキャン等の入出力処理を行うインタフェース(I/F)部24と、ディスプレイである表示部25と、所定のネットワークを介して外部と通信を行う通信部26とを備える。なお、図3では、キーボードおよびマウス等のユーザインタフェースを含む入力部23を備えることとしたが、本実施形態の制御装置15は、これに限るものではなく、表示部25にタッチパネルの機能を持たせることによって、入力部23を設けない構成、または入力部23と併用する構成としてもよい。
【0046】
図3において、制御部21は、本実施形態の制御装置15による上記判定処理(ステップS3)を実現するために、たとえば、インゴットの合成中に、合成面への落下物の有無を判定する製造用プログラムを実行する。記憶部22は、製造用プログラムおよび各種情報(動画ファイル等)や、処理の過程で得られた各種データ(後述する2値化画像等)等を記憶する。制御部21では、記憶部22に記憶されている各種プログラムを読み出すことにより、本実施形態の判定処理を実行する。なお、記憶部22は、内部メモリに限るものではなく、たとえば、DVD(Digital Versatile Disc)やSDメモリ等の外部記憶媒体であってもよいし、また、内部メモリおよび外部記憶媒体(DVDやSDメモリ等)の両方で構成されることとしてもよい。また、本実施形態の制御装置15のハードウェア構成は、説明の便宜上、本実施形態の判定処理にかかわる構成を列挙したものであり、制御装置15を構成するコンピュータのすべての機能を表現したものではない。
【0047】
また、本実施形態の制御装置15は、デスクトップパソコン、ノートパソコン等の汎用PCを想定しているが、これらに限るものではなく、たとえば、スマートフォン、タブレット端末等の携帯端末であってもよい。
【0048】
つづいて、本実施形態の制御装置15における判定処理(ステップ3の処理に相当)を図4に従い詳細に説明する。図4は、ステップS3の判定処理の一例を示すフローチャートである。
【0049】
図4において、制御部21は、記憶部22から動画ファイルを読み出し、この動画ファイルから特定の頻度で静止画を取得し(ステップS11)、さらに、取得順(撮影時間順)に静止画を2値化する(ステップS12)。なお、上記特定の頻度は、10枚~30枚/secの範囲内であることが望ましい。また、2値化のためのしきい値は、落下物による輝度変化が抽出可能、すなわち、特定輝度変化部位が検出可能となるように、予め最適化されているものする。これにより、合成面への落下物の有無の判定に必要なデータが得られる。
【0050】
つぎに、制御部21は、2値化後の画像(2値化画像と呼ぶ)からインゴットの合成面のエッジを検出し、合成面の範囲(位置)を特定する(ステップS13)。そして、制御部21は、特定した合成面の位置(エッジ)が一致するように、撮影時間順に所定枚数分の2値化画像を重ね合わせ、重ね合わせた2値化画像から特定輝度変化部位の軌跡を抽出する(ステップS14)。2値化画像の重ね合わせは、10枚~30枚/secの頻度で取得した2値化画像を撮影時間順に20~30枚重ね合わせることが望ましい。なお、上述した2値化のためのしきい値は、さらにインゴットの合成面のエッジを検出可能な値であることを前提とする。
【0051】
つぎに、制御部21は、重ね合わせた2値化画像から抽出した特定輝度変化部位の軌跡が、下記の判定条件(a),(b),(c)を満たしているかどうかを判断する(ステップS15)。
(a)特定輝度変化部位の水平方向の移動距離(水平移動距離)が2mm以上
(b)特定輝度変化部位の垂直方向の移動距離(垂直移動距離)が10mm以下
(c)特定輝度変化部位の軌跡の幅が5mm以下
【0052】
図5は、特定輝度変化部位の軌跡の一例を示す模式図である。ここでは、重ね合わせた2値化画像から抽出した特定輝度変化部位の軌跡と、その始点および終点、が示されており、ステップS15においては、これらの情報から、水平移動距離、垂直移動距離および幅の判定条件を満たしているかどうかを、抽出したすべての特定輝度変化部位の軌跡について判断する。
【0053】
なお、上記3つの判定条件は、たとえば、撮影部分のインゴットの直径がφ100~300mm、ターゲット12の回転速度が4rpmの場合において、抽出した特定輝度変化部位の軌跡が合成面への落下物によるものであるか否かを判定するための条件である。詳細には、(a)は、特定輝度変化部位の軌跡が、合成面近傍の浮遊シリカガラス微粒子によるものか、または、合成面に付着しターゲット12(インゴット)の回転に伴い水平方向へ移動した落下物によるものか、を判定するための条件である。また、(b)および(c)は、特定輝度変化部位の軌跡が、インゴットと側壁11bとの間の空間に落下した落下物によるものか、または、合成面に付着した落下物によるものか、を判定するための条件である。
【0054】
すなわち、水平移動距離が2mm未満の場合には、特定輝度変化部位の軌跡が、インゴット合成面に付着した落下物によるものではなく、合成面近傍の浮遊シリカガラス微粒子によるものであると識別される。2mm以上の水平移動距離が確認されることにより、特定輝度変化部位の軌跡が合成面に付着した落下物によるものである可能性が高い、と判定することができる。また、垂直移動距離が10mmを超える場合、または、軌跡の幅が5mmを超える場合には、特定輝度変化部位の軌跡が、インゴット合成面に付着した落下物によるものではなく、インゴットと側壁11bとの間に落下した落下物(シリカガラス粒子)によるものであると識別される。10mm以上の水平移動距離、かつ5mm以下の軌跡の幅が確認されることにより、特定輝度変化部位の軌跡が合成面に付着した落下物によるものである可能性が高い、と判定することができる。なお、(a)、(b)および(c)の数値は、合成するインゴットの直径およびターゲットの回転速度に応じて、適宜設定されるものである。
【0055】
そして、上記ステップS15の判断処理において、すべての判定条件を満たしている場合(ステップS16,Yes)、制御部21は、「合成面への落下物である」と判定し、その旨を表示部25に表示する(ステップS17)。そして、落下物による特定輝度変化部位の軌跡を示す2値化画像およびその2値化画像に対応する動画ファイルを、合成面に落下した時刻とともに記憶部22に記憶する。一方、いずれか1つでも判定条件が満たされていない場合には(ステップS16,No)、ステップS14にて抽出された特定輝度変化部位の軌跡が反射等により写り込んだ部位(誤認識)であると判断し、「合成面への落下物ではない」と判定する(ステップS18)。
【0056】
以上のように、本実施形態の合成シリカガラス製造装置および合成シリカガラスの製造方法によれば、シリカガラスインゴットの合成中に、合成面への異物の混入、特に、バーナ近傍や炉内の内壁(上部壁11a、側壁11b)にシリカガラス微粒子が付着し堆積したシリカガラス粒子の落下物の混入を、より高精度に検出することができる。
【0057】
なお、ステップS3による判定処理において、落下物が連続して確認された場合には、インゴットが所定重量に至らなくとも合成を中断し、原因解析を行うことができるため、必要な処置を施した後、初めから合成を行うことで無駄な合成を行わずに済む、というメリットがある。また、合成を中断した製造途中のインゴットは、最低限必要な重量が満たされていれば、通常の加熱成形工程、スライス工程、研削工程等を経て、フォトマスク用基板の製造に用いることができる。
【0058】
また、制御装置15によってステップS3による判定結果を得ることによって、インゴット合成中の落下物を低減させるための解析が捗るとともに、合成中に不良率が予測できるため、生産量を安定させることができる。
【0059】
さらに、合成中に「合成面への落下物である」と判定された場合には、製造条件へフィードバックすることが可能となるため、歩留を向上させることができる。たとえば、「合成面への落下物である」と判定された場合には、排管内での詰まり傾向が予測されるため、排気量を多くする条件変更を行うことなど、製造条件へのフィードバックが可能となる。この際、インゴットに混入した落下物については、インゴットの製造後にその部位を除くように切断する。そして、切断後のインゴットについては、最低限必要な重量が満たされていれば上記のとおり次工程が行われる。
【実施例0060】
つづいて、本発明にかかる合成シリカガラス製造装置1の実施例について説明する。なお、本発明は下記実施例により制限されるものではない。
【0061】
<実施例1>
実施例1では、図1に示す合成シリカガラス製造装置1を使用した。バーナ13は一般的なシリカガラス製の多重管構造とし、炉体を形成するマッフル11は高さ700mmおよび直胴部800mmのアルミナ製とした。
【0062】
また、インゴットの製造条件として、インゴット製造時の温度は、1400℃前後となるように調整した。ガス条件は、SiCl4:70g/min+O2ガス:10リットル/min、O2ガス:225リットル/min、H2ガス:500リットル/minを、それぞれ炉内に導入した。O2ガス/H2ガス比は0.45とした。そして、合成シリカガラス製造装置1を用いて、外径φ650mm、重量700kgの合成シリカガラスインゴットを製造した。
【0063】
また、インゴットの合成中に、マッフル11の開口11c(窓11d)を介して、インゴットの成長方向(ターゲット12の回転軸方向)に対し直交する方向から、カメラ14で合成面の動画を撮影した。カメラ14は、1.5倍のズームレンズ16、および1/500の減光フィルタ17を取り付けた状態で、窓11dから2mの位置に設置した。
【0064】
そして、カメラ14には、撮影画像保存および画像解析のために、図4に示す製造用プログラムがインストールされた制御装置15(パソコン)を接続し、制御装置15が、表1に示す実施例1の判定条件による判定処理を実施した。
【0065】
制御装置15による判定処理は、10枚/secの頻度で取得した2値化画像を撮影時間順に20枚重ね合わせて、インゴットの合成が開始されてから合成が終了するまでの間、継続して実施した。この際、判定条件は、前述したステップS15に示す、(a)特定輝度変化部位の水平移動距離が2mm以上、(b)特定輝度変化部位の垂直移動距離が10mm以下、(c)特定輝度変化部位の軌跡の幅が5mm以下、を採用した(表1参照)。
【0066】
【表1】
【0067】
<比較例1>
比較例1では、制御装置が実施例1とは異なる判定条件で判定処理を実施した。制御装置以外の合成シリカガラス製造装置の構成、および製造条件は、実施例1と同様である。
【0068】
比較例1において、判定処理は、30枚/secの頻度で取得した2値化画像を撮影時間順に30枚重ね合わせて、インゴットの合成が開始されてから合成が終了するまでの間、継続して実施した。この際、判定条件は、(a)の「特定輝度変化部位の水平移動距離が2mm以上」のみを採用した(表1参照)。(b)の「特定輝度変化部位の垂直移動距離が10mm以下」および(c)の「特定輝度変化部位の軌跡の幅が5mm以下」の判定は行っていない。
【0069】
<比較例2>
比較例2では、制御装置が実施例1および比較例1とは異なる判定条件で判定処理を実施した。制御装置以外の合成シリカガラス製造装置の構成、および製造条件は、実施例1と同様である。
【0070】
比較例2において、判定処理は、30枚/secの頻度で取得した2値化画像を撮影時間順に30枚重ね合わせて、インゴットの合成が開始されてから合成が終了するまでの間、継続して実施した。この際、判定条件は、(a)の「特定輝度変化部位の水平移動距離が2mm以上」、(b)の「特定輝度変化部位の垂直移動距離が10mm以下」、を採用した(表1参照)。(c)の「特定輝度変化部位の軌跡の幅が5mm以下」の判定は行っていない。
【0071】
<判定結果>
実施例1の判定処理では、「合成面への落下物である」と判定した特定輝度変化部位の軌跡が3件検出された。また、実施例1で製造したインゴットの検査の結果、2か所から気泡が検出され、その他の1か所からインクルージョンが検出された。この3か所以外には気泡およびインクルージョンは検出されなかった。すなわち、実施例1において「合成面への落下物である」と判定された3件に、誤認識はなかった。
【0072】
比較例1の判定処理では、「合成面への落下物である」と判定した特定輝度変化部位の軌跡が50件検出された。また、比較例1で製造したインゴットの検査の結果、2か所から気泡が検出され、その他の1か所からインクルージョンが検出された。この3か所以外には気泡およびインクルージョンは検出されなかった。すなわち、検出された50件のうち47件の判定は、「合成面への落下物である」と誤認識したものであった。
【0073】
比較例2の判定処理では、「合成面への落下物である」と判定した特定輝度変化部位の軌跡が20件検出された。また、比較例2で製造したインゴットの検査の結果、1か所から気泡が検出され、その他の2か所からインクルージョンが検出された。この3か所以外には気泡およびインクルージョンは検出されなかった。すなわち、検出された20件のうち17件の判定は、「合成面への落下物である」と誤認識したものであった。
【符号の説明】
【0074】
1 合成シリカガラス製造装置
11 マッフル
11a 上部壁
11b 側壁
11c 開口
11d 窓
12 ターゲット
12a インゴット昇降軸
13 バーナ
14 カメラ(産業用カメラ)
15 制御装置
16 ズームレンズ
17 減光フィルタ
21 制御部
22 記憶部
23 入力部
24 インタフェース(I/F)部
25 表示部
26 通信部

図1
図2
図3
図4
図5