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特開2024-124768ブロックポリイソシアネート組成物、ブロックポリイソシアネート組成物分散体、水系塗料組成物、塗膜及びコーティング基材
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024124768
(43)【公開日】2024-09-13
(54)【発明の名称】ブロックポリイソシアネート組成物、ブロックポリイソシアネート組成物分散体、水系塗料組成物、塗膜及びコーティング基材
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/80 20060101AFI20240906BHJP
   C08G 18/78 20060101ALI20240906BHJP
   C08G 18/79 20060101ALI20240906BHJP
   C08G 18/48 20060101ALI20240906BHJP
   C08G 18/28 20060101ALI20240906BHJP
   C09D 175/08 20060101ALI20240906BHJP
   C09D 7/63 20180101ALI20240906BHJP
   C09D 5/02 20060101ALI20240906BHJP
【FI】
C08G18/80 070
C08G18/78 037
C08G18/79 010
C08G18/48
C08G18/28 015
C09D175/08
C09D7/63
C09D5/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023032668
(22)【出願日】2023-03-03
(71)【出願人】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100189337
【弁理士】
【氏名又は名称】宮本 龍
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 みお
(72)【発明者】
【氏名】福地 崇史
【テーマコード(参考)】
4J034
4J038
【Fターム(参考)】
4J034BA07
4J034CA02
4J034CB01
4J034CC03
4J034DA01
4J034DB01
4J034DB04
4J034DB07
4J034DG02
4J034DG03
4J034DG04
4J034DG05
4J034DG14
4J034DP18
4J034HA01
4J034HA07
4J034HA08
4J034HC03
4J034HC12
4J034HC22
4J034HC34
4J034HC35
4J034HC46
4J034HC52
4J034HC61
4J034HC64
4J034HC67
4J034HC71
4J034HC73
4J034HD07
4J034HD15
4J034JA01
4J034JA12
4J034JA30
4J034JA32
4J034JA42
4J034JA44
4J034KA01
4J034KB03
4J034KC02
4J034KC16
4J034KC17
4J034KC18
4J034KC23
4J034KD02
4J034KD04
4J034KD07
4J034KD12
4J034KD17
4J034KD24
4J034KE02
4J034QA03
4J034QB12
4J034QB14
4J034QB17
4J034QC05
4J034RA07
4J038DF012
4J038DG131
4J038DG301
4J038JB32
4J038NA04
4J038NA23
4J038NA26
4J038PB06
(57)【要約】
【課題】水分散性に優れ、水分散体としての貯蔵安定性に優れるブロックポリイソシアネート組成物の提供。
【解決手段】下記(A)成分、(B)成分、(C)成分及び(D)成分を含み、イソシアヌレート基及びアロファネート基を有し、前記イソシアヌレート基と前記アロファネート基とのモル比(イソシアヌレート基/アロファネート基)が80/20以上99/1以下である、ブロックポリイソシアネート組成物。(A)成分:脂肪族ジイソシアネート及び脂環族ジイソシアネートから誘導されるポリイソシアネートからなる群より選ばれる少なくとも1種のポリイソシアネート化合物を含むポリイソシアネート成分。(B)成分:1官能以上の活性水素基を含有するノニオン系親水性化合物。(C)成分:2官能ポリエーテルポリオール。(D)成分:ピラゾール系化合物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(A)成分、(B)成分、(C)成分及び(D)成分を含み、
イソシアヌレート基及びアロファネート基を有し、前記イソシアヌレート基と前記アロファネート基とのモル比(イソシアヌレート基/アロファネート基)が80/20以上99/1以下である、ブロックポリイソシアネート組成物。
(A)成分:脂肪族ジイソシアネート及び脂環族ジイソシアネートから誘導されるポリイソシアネートからなる群より選ばれる少なくとも1種のポリイソシアネート化合物を含むポリイソシアネート成分。
(B)成分:1官能以上の活性水素基を含有するノニオン系親水性化合物。
(C)成分:2官能ポリエーテルポリオール。
(D)成分:ピラゾール系化合物。
【請求項2】
さらにウレア基及びウレタン基を有し、前記ウレア基と前記ウレタン基とのモル比(ウレア基/ウレタン基)が80/20以上99/1以下である、請求項1に記載のブロックポリイソシアネート組成物。
【請求項3】
下記(1)及び(2)を満たす、請求項1または2に記載のブロックポリイソシアネート組成物。
(1)前記(B)成分に由来する構造単位に対する、前記(A)成分に由来する構造単位の質量比[(A)/(B)]が50/50以上95/5以下である。
(2)前記(C)成分に由来する構造単位の含有量が、前記ブロックポリイソシアネート組成物の総質量に対して、0.1質量%以上10質量%以下である。
【請求項4】
前記(B)成分は、5.0以上20.0以下のアルキレンオキサイドの繰り返し単位を有する、請求項1又は2に記載のブロックポリイソシアネート組成物。
【請求項5】
前記(C)成分の数平均分子量が300以上3000以下である、請求項1又は2に記載のブロックポリイソシアネート組成物。
【請求項6】
請求項1又は2に記載のブロックポリイソシアネート組成物と水とを含むブロックポリイソシアネート組成物分散体であって、
前記ブロックポリイソシアネート組成物分散体の全量中の水の含有割合は50質量%以上90質量%以下である、ブロックポリイソシアネート組成物分散体。
【請求項7】
請求項6に記載のブロックポリイソシアネート組成物分散体を含む、水系塗料組成物。
【請求項8】
請求項7に記載の水系塗料組成物を硬化させた、塗膜。
【請求項9】
請求項7に記載の水系塗料組成物によってコーティングされた、コーティング基材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブロックポリイソシアネート組成物、ブロックポリイソシアネート組成物分散体、水系塗料組成物、塗膜及びコーティング基材に関する。
【背景技術】
【0002】
脂肪族ジイソシアネート又は脂環族ジイソシアネートから誘導されるポリイソシアネート組成物を硬化剤として用いた2液型ポリウレタン組成物から得られた塗膜は、耐候性や、耐薬品性、耐摩耗性等に優れた性能を示すため、塗料、インキ及び接着剤等として広く使われている。近年は、地球環境問題が高く意識されるようになり、有機溶剤を使用しない、或いは有機溶剤の使用量を減らし、さらに親水基を有した水系2液型ポリウレタン組成物が提案されている。
【0003】
また、ハンドリングを容易とする観点から、主剤と硬化剤とが混和した状態においても、塗料物性が変化しない1液型塗料が望まれている。これらは硬化剤のイソシアネート基をブロック剤により保護し、現場で塗装した後に加熱することで、イソシアネート基の再生と主剤であるポリオールの水酸基との反応により硬化塗膜となる。このようなイソシアネートをブロックポリイソシアネートと呼ぶ。このブロックイソシアネート組成物には溶剤型が主に使用されているが、環境保護の観点より水系化が切望されている。
【0004】
水分散可能なブロックポリイソシアネート組成物については、ポリイソシアネートにノニオン系の親水性基を導入する手法が知られている(例えば特許文献1~3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表平11-512772号公報
【特許文献2】特表2002-511507号公報
【特許文献3】特開2020-143231号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1~3に記載のブロックポリイソシアネート組成物は、水分散体とした場合、分散性が不十分であり、水分散体中のブロックポリイソシアネート成分が貯蔵後に沈降するという問題がある。また、この貯蔵安定性を解消するために、ノニオン系の親水性基の導入量を高めると、分散性は改善するものの、貯蔵安定性は改善せず、さらにこの組成物の硬化性やその塗膜の硬度、耐水性が悪化するという問題があった。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、水分散性に優れ、水分散体としての貯蔵安定性に優れるブロックポリイソシアネート組成物、並びに、このブロックポリイソシアネート組成物を用いて塗膜にしたときの硬化性と硬度、耐水性に優れるブロックポリイソシアネート組成物分散体、水系塗料組成物、塗膜及びコーティング基材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、本発明は、以下の態様を含む。
[1]下記(A)成分、(B)成分、(C)成分及び(D)成分を含み、イソシアヌレート基及びアロファネート基を有し、前記イソシアヌレート基と前記アロファネート基とのモル比(イソシアヌレート基/アロファネート基)が80/20以上99/1以下である、ブロックポリイソシアネート組成物。
(A)成分:脂肪族ジイソシアネート及び脂環族ジイソシアネートから誘導されるポリイソシアネートからなる群より選ばれる少なくとも1種のポリイソシアネート化合物を含むポリイソシアネート成分。
(B)成分:1官能以上の活性水素基を含有するノニオン系親水性化合物。
(C)成分:2官能ポリエーテルポリオール。
(D)成分:ピラゾール系化合物。
[2]さらにウレア基及びウレタン基を有し、前記ウレア基と前記ウレタン基とのモル比(ウレア基/ウレタン基)が80/20以上99/1以下である、[1]に記載のブロックポリイソシアネート組成物。
[3]下記(1)及び(2)を満たす、[1]又は[2]に記載のブロックポリイソシアネート組成物。
(1)前記(B)成分に由来する構造単位に対する、前記(A)成分に由来する構造単位の質量比[(A)/(B)]が50/50以上95/5以下である。
(2)前記(C)成分に由来する構造単位の含有量が、前記ブロックポリイソシアネート組成物の総質量に対して、0.1質量%以上10質量%以下である。
[4]前記(B)成分は、5.0以上20.0以下のアルキレンオキサイドの繰り返し単位を有する、[1]~[3]のいずれか1つに記載のブロックポリイソシアネート組成物。
[5]前記(C)成分の数平均分子量が300以上3000以下である、[1]~[4]のいずれか1つに記載のブロックポリイソシアネート組成物。
[6][1]~[5]のいずれか1つに記載のブロックポリイソシアネート組成物と水とを含むブロックポリイソシアネート組成物分散体であって、前記ブロックポリイソシアネート組成物分散体の全量中の水の含有割合は50質量%以上90質量%以下である、ブロックポリイソシアネート組成物分散体。
[7][6]に記載のブロックポリイソシアネート組成物分散体を含む、水系塗料組成物。
[8][7]に記載の水系塗料組成物を硬化させた、塗膜。
[9][7]に記載の水系塗料組成物によってコーティングされた、コーティング基材。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、分散性に優れ、水分散体としての貯蔵安定性に優れるブロックポリイソシアネート組成物、並びに、このブロックポリイソシアネート組成物を用いて塗膜にしたときの硬化性と硬度、耐水性に優れるブロックポリイソシアネート組成物分散体、水系塗料組成物、塗膜及びコーティング基材を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<ブロックポリイソシアネート組成物>
本実施形態のブロックポリイソシアネート組成物は、下記(A)成分、(B)成分、(C)成分及び(D)成分を含む。
(A)成分:脂肪族ジイソシアネート及び脂環族ジイソシアネートから誘導されるポリイソシアネートからなる群より選ばれる少なくとも1種のポリイソシアネート化合物を含むポリイソシアネート成分。
(B)成分:1官能以上の活性水素基を含有するノニオン系親水性化合物。
(C)成分:2官能ポリエーテルポリオール。
(D)成分:ピラゾール系化合物。
【0011】
また、本実施形態のブロックポリイソシアネート組成物は、イソシアヌレート基及びアロファネート基を有する。さらにイソシアヌレート基とアロファネート基とのモル比(イソシアヌレート基/アロファネート基)が80/20以上99/1以下であり、85/15以上98/2以下が好ましく、90/10以上98/2以下がより好ましい。イソシアヌレート基/アロファネート基が上記範囲にあることにより、貯蔵安定性と塗膜の硬度が向上する傾向にある。
【0012】
本実施形態のブロックポリイソシアネート組成物は、さらにウレア基及びウレタン基を有し、ウレア基とウレタン基とのモル比(ウレア基/ウレタン基)は80/20以上99/1以下が好ましい。
ウレア基/ウレタン基のモル比における下限値は、60/40がより好ましく、50/50がさらに好ましい。また、上限値は98/2がより好ましい。ウレア基/ウレタン基のモル比が上記範囲にあることにより、貯蔵安定性と硬化性、塗膜の硬度と耐水性が良好な傾向にある。
【0013】
本実施形態のブロックポリイソシアネート組成物中のイソシアネート基に由来する上記各構造の含有モル比は、13C-NMR測定により求めることができる。例えばBruker社製Biospin Avance600(商品名)を用いて、以下の測定条件で測定を行う。
(測定条件)
13C-NMR装置:AVANCE600(Bruker社製)
クライオプローブ(Bruker社製)
CryoProbe(登録商標)
CPDUL
600S3-C/H-D-05Z
共鳴周波数:150MHz
濃度:60wt/vol%
シフト基準:CDCl(77ppm)
積算回数:10000回
パルスプログラム:zgpg30(プロトン完全デカップリング法、待ち時間2sec)
【0014】
以下のシグナルの積分値を、測定している炭素の数で除して、前記イソシアヌレート基/アロファネート基のモル比、および前記ウレタン基/ウレア基のモル比を算出する。
【0015】
イソシアヌレート基:(148.6ppm付近の積分値)÷3
アロファネート基:(154ppm付近の積分値)÷1
ウレタン基:{(156~157ppm付近の積分値)-(154ppm付近の積分値)}÷1
ウレア基:(151ppm付近の積分値)÷1
【0016】
≪(A)成分≫
(A)成分は、脂肪族ジイソシアネート及び脂環族ジイソシアネートから誘導されるポリイソシアネートからなる群より選ばれる少なくとも1種のポリイソシアネート化合物を含むポリイソシアネート成分である。
【0017】
脂肪族ジイソシアネートとしては、特に限定されないが、例えば、1,4-ジイソシアナトブタン、1,5-ジイソシアナトペンタン、エチル(2,6-ジイソシアナト)ヘキサノエート、1,6-ジイソシアナトヘキサン(以下、「HDI」と称する場合がある)、1,9-ジイソシアナトノナン、1,12-ジイソシアナトドデカン、2,2,4-又は2,4,4-トリメチル-1、6-ジイソシアナトヘキサン等が挙げられる。
【0018】
脂環族ジイソシアネートとしては、特に限定されないが、例えば、1,3-又は1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(以下、「水添XDI」と称する場合がある)、1,3-又は1,4-ジイソシアナトシクロヘキサン、3,5,5-トリメチル1-イソシアナト-3-(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(以下、「IPDI」と称する場合がある)、4-4’-ジイソシアナト-ジシクロヘキシルメタン(以下、「水添MDI」と称する場合がある)、2,5-又は2,6-ジイソシアナトメチルノルボルナン等が挙げられる。
【0019】
芳香族ジイソシアネートとしては、特に限定されないが、例えば、キシリレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート等が挙げられる。
【0020】
中でも、ジイソシアネートとしては、耐候性の観点でHDI、IPDI、水添XDI又は水添MDIが好ましく、HDI又はIPDIがより好ましい。
【0021】
また、ポリイソシアネート化合物として、脂肪族トリイソシアネートを含んでもよい。脂肪族トリイソシアネートとしては、例えば、1,3,6-トリイソシアナトヘキサン、1,8-ジイソシアナト-4-イソシアナートメチルオクタン、2-イソシアナトエチル-2,6-ジイソシアナト-ヘキサノエート等が挙げられる。
【0022】
また、これらのポリイソシアネート化合物は、単独で、又は、2種以上組み合わせて使用することもできる。
【0023】
上記ジイソシアネートから誘導されるポリイソシアネート化合物としては、特に限定されないが、例えば、以下の(a)~(h)に示すポリイソシアネート等が挙げられる。
(a):2つのイソシアネート基を環化二量化して得られるウレトジオン基を有するポリイソシアネート。
(b):3つのイソシアネート基を環化三量化して得られるイソシアヌレート基又はイミノオキサジアジンジオン基を有するポリイソシアネート。
(c):3つのイソシアネート基と1つの水分子とを反応させて得られるビウレット基を有するポリイソシアネート。
(d):2つのイソシアネート基と1分子の二酸化炭素とを反応させて得られるオキサジアジントリオン基を有するポリイソシアネート。
(e):1つのイソシアネート基と1つの水酸基を反応させて得られるウレタン基を複数有するポリイソシアネート。
(f):2つのイソシアネート基と1つの水酸基とを反応させて得られるアロファネート基を有するポリイソシアネート。
(g):1つのイソシアネート基と1つのカルボキシ基とを反応させて得られるアシル尿素基を有するポリイソシアネート。
(h):1つのイソシアネート基と1つの1級又は2級アミンとを反応させて得られるウレア基を有するポリイソシアネート。
【0024】
中でも、ポリイソシアネート化合物としては、イソシアヌレート基およびアロファネート基を有するものが好ましい。すなわち、これらの官能基のうち1種を有するポリイソシアネート化合物の混合物を含んでもよく、あるいは、これらの官能基のうち、2種以上を有するポリイソシアネート化合物の混合物を含んでもよく、あるいは、上記2種以外の官能基を有するポリイソシアネート化合物を含んでもよい。
【0025】
イソシアヌレート基は、3つのイソシアネート基を環化三量化して得られる官能基であり、下記式(I)で表される構造をいう。
アロファネート基は、アルコールの水酸基とイソシアネート基との反応により形成される官能基であり、下記式(II)で表される構造をいう。
【0026】
ウレトジオン基は、2つのイソシアネート基を環化二量化して得られる官能基であって、下記式(III)で表される構造をいう。
イミノオキサジアジンジオン基は、3つのイソシアネート基を環化三量化して得られる官能基であり、下記式(IV)で表される構造をいう。
【0027】
【化1】
【0028】
本実施形態に用いるポリイソシアネート化合物において、イソシアヌレート基、アロファネート基、ウレトジオン基、及びイミノオキサジアジンジオン基の合計モル量(100モル%)に対して、イソシアヌレート基のモル比率は、80.0モル%以上99.0モル%以下であることが好ましく、85.0モル%以上98.0モル%以下であることがより好ましい。イソシアヌレート基のモル比率が上記範囲にあることで、得られる塗膜の硬度及び耐水性により優れる。
【0029】
本実施形態に用いるポリイソシアネート化合物において、イソシアヌレート基、アロファネート基、ウレトジオン基、及びイミノオキサジアジンジオン基の合計モル量(100モル%)に対して、アロファネート基のモル比率が、1.0モル%以上20.0モル%以下であることが好ましく、1.5モル%以上15.0モル%以下であることがより好ましい。
【0030】
本実施形態に用いるポリイソシアネート化合物において、イソシアヌレート基、アロファネート基、ウレトジオン基、及びイミノオキサジアジンジオン基の合計モル量(100モル%)に対して、ウレトジオン基の合計含有量は、0.1モル%以上10.0モル%以下であることが好ましく、0.2モル%以上5.0モル%以下であることがより好ましい。
【0031】
本実施形態に用いるポリイソシアネート化合物において、イソシアヌレート基、アロファネート基、ウレトジオン基、及びイミノオキサジアジンジオン基の合計モル量(100モル%)に対して、イミノオキサジアジンジオン基のモル比率は、0.05モル%以上3.5モル%以下であることが好ましく、0.1モル%以上3.0モル%以下であることがより好ましい。
【0032】
本実施形態に用いるポリイソシアネート化合物において、前記4種類の結合に加えて、ウレタン基、ウレア基、アシルウレア基、ビウレット基、オキサジアジントリオン基等の結合が含まれていてもよい。前記結合のモル比率は、イソシアヌレート基、アロファネート基、ウレトジオン基、及びイミノオキサジアジンジオン基の合計モル量(100モル%)に加えて0.01モル%以上10.0モル%以下が含まれていることが好ましい。
【0033】
(ポリイソシアネート化合物の製造方法)
本実施形態のポリイソシアネート化合物の製造方法は、ジイソシアネートから、下記に示す触媒やアルコール等を用いる方法が挙げられる。またこの方法以外に、(B)成分と(C)成分のいずれか1種とジイソシアネートを用いて製造してもよい。
下記に各結合を含むポリイソシアネート化合物の製造方法を示す。
【0034】
(1)イソシアヌレート基を含むポリイソシアネート化合物の製造方法
イソシアヌレート基を含むポリイソシアネートの製造方法としては、特に限定されないが、例えば、ジイソシアネートを触媒等によりイソシアヌレート化反応を行い、所定の転化率になったときに該反応を停止し、未反応のジイソシアネートを除去する方法が挙げられる。
【0035】
イソシアヌレート化反応に用いられる触媒としては、特に限定されないが、塩基性を示すものが好ましく、具体的には、テトラアルキルアンモニウムのハイドロオキサイド及び有機弱酸塩、ヒドロキシアルキルアンモニウムのハイドロオキサイド及び有機弱酸塩、アルキルカルボン酸のアルカリ金属塩、金属アルコラート、アミノシリル基含有化合物、マンニッヒ塩基類、第3級アミン類とエポキシ化合物との併用、燐系化合物等が挙げられる。
【0036】
テトラアルキルアンモニウムとしては、例えば、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム等が挙げられる。
【0037】
有機弱酸としては、例えば、酢酸、カプリン酸等が挙げられる。ヒドロキシアルキルアンモニウムとしては、例えば、トリメチルヒドロキシプロピルアンモニウム、トリメチルヒドロキシエチルアンモニウム、トリエチルヒドロキシプロピルアンモニウム、トリエチルヒドロキシエチルアンモニウム等が挙げられる。
【0038】
アルキルカルボン酸としては、例えば、酢酸、カプロン酸、オクチル酸、ミリスチン酸等が挙げられる。
【0039】
アルカリ金属塩を構成する金属としては、例えば、錫、亜鉛、鉛等が挙げられる。
【0040】
金属アルコラートとしては、例えば、ナトリウムアルコラート、カリウムアルコラート等が挙げられる。
【0041】
アミノシリル基含有化合物としては、例えば、ヘキサメチルジシラザン等が挙げられる。
【0042】
燐系化合物としては、例えば、トリブチルホスフィン等が挙げられる。
【0043】
これらの触媒の使用量は、原料である、ジイソシアネート(及び、必要に応じてアルコール)の総質量に対して、10ppm以上1.0%以下が好ましい。また、イソシアヌレート化反応を終了させるために、触媒を中和する酸性物質の添加、熱分解、化学分解等により不活性化してもよい。触媒を中和する酸性物質としては、例えば、リン酸、酸性リン酸エステル等が挙げられる。
【0044】
ポリイソシアネートの収率は、一般的には、10質量%以上70質量%以下となる傾向にあり、35質量%以上60質量%以下が好ましい。より高い収率で得られたポリイソシアネートは、より粘度が高くなる傾向にある。収率は、原料成分の総質量に対する得られたポリイソシアネートの質量の割合から算出できる。
【0045】
イソシアヌレート化反応の反応温度は、特に限定されないが、50℃以上200℃以下であることが好ましく、50℃以上150℃以下であることがより好ましい。反応温度が上記下限値以上であることで、反応がより進み易くなる傾向にあり、反応温度が上記上限値以下であることで、着色を引き起こすような副反応をより抑制することができる傾向にある。
【0046】
イソシアヌレート化反応の終了後には、未反応のジイソシアネートを薄膜蒸発缶、抽出等により除去することが好ましい。ポリイソシアネートは、未反応のジイソシアネートを含んでいた場合であっても、ジイソシアネートの含有量がポリイソシアネートの総質量に対して、3.0質量%以下が好ましく、1.0質量%以下がより好ましく、0.5質量%以下がさらに好ましい。残留未反応ジイソシアネート濃度が上記範囲内であることにより、硬化性がより優れる傾向にある。
【0047】
イソシアヌレート化反応の終了後には、未反応のジイソシアネートを薄膜蒸発缶、抽出等により除去することが好ましい。ポリイソシアネートは、未反応のジイソシアネートを含んでいた場合であっても、ジイソシアネートの含有量がポリイソシアネートの総質量に対して、3.0質量%以下が好ましく、1.0質量%以下がより好ましく、0.5質量%以下がさらに好ましい。残留未反応ジイソシアネート濃度が上記範囲内であることにより、硬化性がより優れる傾向にある。
残留未反応ジイソシアネート濃度は、ガスクロマトグラフィー分析により測定できる。
【0048】
(2)アロファネート基を含むポリイソシアネート化合物の製造方法
アロファネート基を含むポリイソシアネートの製造方法としては、例えば、ジイソシアネートにアルコールを添加し、アロファネート化反応触媒を用いることにより得られる。
【0049】
アロファネート基の形成に用いられるアルコールは、炭素、水素及び酸素のみで形成されるアルコールが好ましい。
前記アルコールとして具体的には、以下に限定されるものではないが、例えば、モノアルコール、ジアルコール等が挙げられる。これらアルコールは1種のみを単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0050】
モノアルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナノール等が挙げられる。
ジアルコールとしては、例えば、エチレングリコール、1,3-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、2-エチルヘキサンジオール等が挙げられる。
【0051】
アルコールの水酸基のモル量に対するジイソシアネートのイソシアネート基のモル量の比は、10/1以上1000/1以下が好ましく、100/1以上1000/1以下がより好ましい。当該モル比が上記下限値以上であることによって、イソシアネート基平均数(平均官能基数)をより十分に確保することができる。当該モル比が上記上限値以下であることで、表面硬度が優れるという効果がある。
【0052】
アロファネート化反応触媒としては、以下に限定されないが、例えば、錫、鉛、亜鉛、ビスマス、ジルコニウム、ジルコニル等のアルキルカルボン酸塩等が挙げられる。
錫のアルキルカルボン酸塩(有機錫化合物)としては、例えば、2-エチルヘキサン酸錫、ジブチル錫ジラウレート等が挙げられる。
鉛のアルキルカルボン酸塩(有機鉛化合物)としては、例えば、2-エチルヘキサン酸鉛等が挙げられる。
亜鉛のアルキルカルボン酸塩(有機亜鉛化合物)としては、例えば、2-エチルヘキサン酸亜鉛等が挙げられる。
ビスマスのアルキルカルボン酸塩としては、例えば、2-エチルヘキサン酸ビスマス等が挙げられる。
ジルコニウムのアルキルカルボン酸塩としては、例えば、2-エチルヘキサン酸ジルコニウム等が挙げられる。
ジルコニルのアルキルカルボン酸塩としては、例えば、2-エチルヘキサン酸ジルコニル等が挙げられる。これら触媒は、1種を単独又は2種以上を併用することができる。
【0053】
また、上記イソシアヌレート化反応触媒もアロファネート化反応触媒となり得る。上記イソシアヌレート化反応触媒を用いて、アロファネート化反応を行なう場合は、イソシアヌレート型ポリイソシアネートも当然のことながら生成する。
中でも、アロファネート化反応触媒として、上記イソシアヌレート化反応触媒を用いて、アロファネート化反応とイソシアヌレート化反応とを行うことが経済的生産上、好ましい。
【0054】
上述したアロファネート化反応触媒の使用量の上限値は、仕込んだジイソシアネートの質量に対して、10000質量ppmが好ましく、1000質量ppmがより好ましく、500質量ppmがさらに好ましい。一方、上述したイソシアヌレート化反応触媒の使用量の下限値は、特別な限定はないが、例えば、10質量ppmであってもよい。
【0055】
また、アロファネート化反応温度の下限値としては、60℃が好ましく、70℃がより好ましく、80℃がさらに好ましく、90℃が特に好ましい。一方、アロファネート化反応温度の上限値としては、160℃が好ましく、155℃がより好ましく、150℃がさらに好ましく、145℃が特に好ましい。
【0056】
すなわち、アロファネート化反応温度としては、60℃以上160℃以下が好ましく、70℃以上155℃以下がより好ましく、80℃以上150℃以下がさらに好ましく、90℃以上145℃以下が特に好ましい。
アロファネート化反応温度が上記下限値以上であることによって、反応速度をより向上させることが可能である。アロファネート化反応温度が上記上限値以下であることによって、ポリイソシアネートの着色等の特性変化をより効果的に抑制できる傾向にある。
【0057】
アロファネート化反応時間の下限値としては、0.2時間が好ましく、0.4時間がより好ましく、0.6時間がさらに好ましく、0.8時間が特に好ましく、1時間が最も好ましい。一方、アロファネート化反応時間の上限値としては、8時間が好ましく、6時間がより好ましく、4時間がさらに好ましく、3時間が特に好ましく、2時間が最も好ましい。
すなわち、アロファネート化反応時間は、0.2時間以上8時間以下が好ましく、0.4時間以上6時間以下がより好ましく、0.6時間以上4時間以下がさらに好ましく、0.8時間以上3時間以下が特に好ましく、1時間以上2時間以下が最も好ましい。
アロファネート化反応時間が上記下限値以上であることにより、ポリイソシアネートをより低粘度とすることができ、一方、上記上限値以下であることにより、ポリイソシアネートの着色等の特性変化をより効果的に抑制できる傾向にある。
【0058】
所望の収率となった時点で、リン酸、パラトルエンスルホン酸メチル等のアロファネート化反応触媒の失活剤を添加してアロファネート化反応を停止する。
【0059】
(3)ウレトジオン基を含むポリイソシアネート化合物の製造方法
ウレトジオン基を含むポリイソシアネートの製造方法としては、ウレトジオン化反応触媒を用いる方法が挙げられる。
【0060】
上記ウレトジオン化反応触媒の具体的な化合物の例としては、以下に限定されないが、第3ホスフィンである、トリ-n-ブチルホスフィン、トリ-n-オクチルホスフィン等のトリアルキルホスフィン;トリス-(ジメチルアミノ)ホスフィン等のトリス(ジアルキルアミノ)ホスフィン;シクロヘキシル-ジ-n-ヘキシルホスフィン等のシクロアルキルホスフィンが挙げられる。
これらの化合物の多くは、同時にイソシアヌレート化反応も促進し、ウレトジオン基含有ポリイソシアネートに加えてイソシアヌレート基含有ポリイソシアネートを生成する。
【0061】
所望の収率となった時点で、リン酸、パラトルエンスルホン酸メチル等のウレトジオン化反応触媒の失活剤を添加してウレトジオン化反応を停止する。
【0062】
上述した触媒を、仕込んだジイソシアネートの質量に対して、好ましくは10質量ppm以上10000質量ppm以下、より好ましくは10質量ppm以上1000質量ppm以下、さらに好ましくは10質量ppm以上500質量ppm以下の量で使用する。
【0063】
ウレトジオン化反応温度を20℃以上120℃以下で行うことが好ましい。反応温度の下限値は、25℃であることがより好ましく、さらに好ましくは30℃であり、よりさらに好ましくは35℃である。また、反応温度の上限値は、110℃であることがより好ましく、さらに好ましくは100℃であり、よりさらに好ましくは90℃である。ウレトジオン化反応温度が上記上限値以下であることにより、着色等の特性変化がより抑制できる傾向にある。
【0064】
また、上記のようなウレトジオン化反応触媒を用いることなく、ジイソシアネートを加熱することによりウレトジオン基を得ることもできる。その加熱温度としては、130℃以上180℃以下が好ましい。加熱温度の下限値としては140℃がより好ましく、さらに好ましくは145℃であり、よりさらに好ましくは150℃であり、さらにより好ましくは155℃である。また、加熱温度の上限値は、170℃がより好ましく、さらに好ましくは165℃であり、よりさらに好ましくは162℃であり、さらにより好ましくは160℃である。
【0065】
また、加熱時間は0.2時間以上8.0時間以下であることが好ましい。加熱時間の下限値は、0.4時間がより好ましく、さらに好ましくは0.6時間であり、よりさらに好ましくは0.8時間であり、さらにより好ましくは1.0時間である。加熱時間の上限値は、6.0時間がより好ましく、さらに好ましくは4.0時間であり、よりさらに好ましくは3.0時間であり、さらにより好ましくは2.0時間である。加熱時間を上記下限値以上とすることで、低粘度化をより発現できることができる傾向にあり、上記上限値以下とすることで、ポリイソシアネート自体の着色をより抑制することができる傾向にある。
【0066】
ウレトジオン化反応触媒を使用せずに、本実施形態のポリイソシアネート組成物を得る場合、加熱のみによるウレトジオン化反応と上述したイソシアヌレート化反応とが終了した後、未反応ジイソシアネートを除去することが、未反応ジイソシアネート濃度の低減、得られたポリイソシアネート組成物の貯蔵後の分子量変化率の低減、及び高温焼付時の黄変性の低減の観点から好ましい。
【0067】
(4)イミノオキサジアジンジオン基を含むポリイソシアネート化合物の製造方法
ジイソシアネートからイミノオキサジアジンジオン基を含有するポリイソシアネートを誘導するための触媒としては、特に限定されないが、例えば一般にイミノオキサジアジンジオン化反応触媒として知られている下記(i)又は(ii)の触媒が使用できる。
【0068】
(i)テトラメチルアンモニウムフルオリド水和物、テトラエチルアンモニウムフルオリド等の、一般式M[Fn]、又は一般式M[Fn(HF)m]で表される(ポリ)フッ化水素(式中、m及びnは、m/n>0の関係を満たす各々整数であり、Mは、n荷電カチオン(混合物)又は合計でn価の1個以上のラジカルを示す。)
(ii)3,3,3-トリフルオロカルボン酸;4,4,4,3,3-ペンタフルオロブタン酸;5,5,5,4,4,3,3-ヘプタフルオロペンタン酸;3,3-ジフルオロプロパ-2-エン酸等の一般式R1-CR’2-C(O)O-、又は、一般式R2=CR’-C(O)O-(式中、R1、及びR2は、必要に応じて分岐状、環状、及び/又は不飽和の炭素数1~30のパーフルオロアルキル基を示し、R’は、同一又は異なって、水素原子、炭素数1~20のアルキル基、及びアリール基からなる群から選択され、必要に応じてヘテロ原子を含有するものを示す。)と、第4級アンモニウムカチオン、又は第4級ホスホニウムカチオンからなる化合物。
【0069】
入手容易性の観点から上記(i)が好ましく、安全性の観点から上記(ii)が好ましい。
上述したイミノオキサジアジンジオン化反応触媒の配合量は、仕込んだジイソシアネートの質量に対して、好ましくは10ppm以上1000ppm以下である。その下限値は、より好ましくは20ppmであり、さらに好ましくは40ppmであり、よりさらに好ましくは80ppmである。
その上限値は、より好ましくは800ppmであり、さらに好ましくは600ppmであり、よりさらに好ましくは500ppm以下である。
【0070】
また、イミノオキサジアジンジオン化反応温度としては、好ましくは40℃以上120℃以下である。
その下限値は、より好ましくは50℃であり、さらに好ましくは55℃である。その上限値は、より好ましくは100℃であり、さらに好ましくは90℃であり、よりさらに好ましくは80℃である。
イミノオキサジアジンジオン化反応温度が40℃以上であることによって、反応速度を高く維持することが可能である傾向にある。イミノオキサジアジンジオン化反応温度が120℃以下であることによって、ポリイソシアネートの着色等を効果的に抑制できる傾向にある。
【0071】
[ポリイソシアネート化合物の物性]
前記製造方法にて製造したポリイソシアネート化合物の25℃における粘度は、コーティング組成物の分散性及びポットライフを向上させ、塗膜としたときの外観と耐水性を向上させる観点から、300mPa・s以上5,000mPa・s以下が好ましい。
粘度の下限は形成した塗膜の耐水性、耐候性等を向上させる観点から350mPa・sがより好ましく、450mPa・sがさらに好ましい。一方、粘度の上限は分散性を向上させる観点から、4,000mPa・sがより好ましく、3,000mPa・sがさらに好ましい。
ポリイソシアネート化合物の粘度は、例えば、標準ローター(1°34’×R24)を用いて、E型粘度計(株式会社トキメック社製)により25℃で測定することができる。
【0072】
未反応の脂肪族ジイソシアネートを除いた状態で、ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基含有率(NCO%)は、18質量%以上25質量%以下が好ましく、19質量%以上24質量%以下がより好ましく、20質量%以上24質量%以下がさらに好ましい。
イソシアネート基含有率が上記下限値以上であることにより、塗膜としたときの耐水性、及び耐候性がより向上する。一方、上記上限値以下であることにより、コーティング組成物の分散性がより向上する。
ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基含有率(NCO%)は、後述する実施例に記載の滴定法により測定することができる。
【0073】
ポリイソシアネート化合物の数平均分子量は、塗膜の耐溶剤性の観点から、450以上4,000以下が好ましく、500以上3,500以下がより好ましく、550以上3,000以下がさらに好ましい。
数平均分子量は、例えば、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定することができる。
【0074】
ポリイソシアネート化合物の平均官能基数は、硬化性と、塗膜の硬度、耐水性の点から、1.8以上6.2以下が好ましく、2.0以上5.6以下がより好ましく、2.5以上4.6以下がさらに好ましい。
平均官能基数は、ポリイソシアネート化合物1分子が統計的に有するイソシアネート官能基の数であり、ポリイソシアネート化合物の数平均分子量(Mn)とイソシアネート基含有率(NCO%)とから以下の式を用いて算出することができる。
【0075】
[平均官能基数]=Mn×NCO%/4,200
【0076】
≪(B)成分≫
(B)成分は、1官能以上の活性水素基を含有するノニオン系親水性化合物である。
ノニオン系親水性化合物は、1つのイソシアネート基と反応するために、ポリイソシアネート化合物が有するイソシアネート基と反応するための活性水素基を、親水性化合物1分子に対して、1つ以上有する。活性水素基として、具体的には、水酸基、メルカプト基、カルボン酸基、アミノ基、チオール基が挙げられる。
前記ノニオン系親水性化合物は、単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0077】
ノニオン系親水性化合物としては、特に限定されないが、例えば、ポリアルキレングリコールアルキルエーテルが挙げられる。ポリアルキレングリコールアルキルエーテルが有する水酸基の数は、ポリイソシアネート組成物の粘度を低くする観点から、1つであることが好ましい。
【0078】
好ましいポリアルキレングリコールアルキルエーテルは、下記一般式(V)で表される構造を有する。
【0079】
【化2】
【0080】
(一般式(V)中、R11は炭素数1以上4以下のアルキレン基であり、R12は炭素数1以上4以下のアルキル基であり、n11は4.0以上25以下である。)
【0081】
ポリアルキレングリコールアルキルエーテルは、単一成分ではなく、重合度を示すn(以下、「重合度n」又は単に「n」と称する場合がある)の数が異なる物質の集合体である。そのため、重合度nは、その平均値で表す。
【0082】
ポリイソシアネートを水系主剤に配合する際、主剤と混ぜたときの増粘が問題となる場合が多い。増粘が多い場合は、ポリイソシアネートが主剤へ均一に分散することができず、塗膜物性の低下につながる傾向にある。
【0083】
そのため、nは、水分散性と主剤への分散性及との観点から、4.0以上25.0以下が好ましく、6.0以上20.0以下がより好ましい。nが上記下限値以上であることで、乳化力が増すため分散性が向上する傾向にあり、一方、上記上限値以下であることで、粘度上昇を防ぐため、容易に分散することができる傾向にある。
【0084】
ポリアルキレングリコールアルキルエーテルは、nが異なるものを2種以上組み合わせて使用することもできる。ポリアルキレングリコールアルキルエーテルのnは、プロトン核磁気共鳴(NMR)法により測定することができる。
【0085】
一般式(V)中、R11は、親水性付与の観点から、炭素数1以上4以下のアルキレン基であり、より親水性が付与できる観点から、炭素数2のエチレン基が好ましい。
【0086】
また、R12は、親水性付与の観点から炭素数1以上4以下のアルキル基であり、より親水性が付与できる観点から、炭素数1のメチル基が好ましい。
【0087】
ポリアルキレングリコールアルキルエーテルとしては、以下のものに限定されないが、例えば、ポリエチレングリコール(モノ)メチルエーテル、ポリ(エチレン、プロピレン)グリコール(モノ)メチルエーテル、ポリエチレングリコール(モノ)エチルエーテルが挙げられる。中でも、親水性付与の観点から、ポリエチレングリコール(モノ)メチルエーテルが好ましい。
【0088】
ポリアルキレングリコールアルキルエーテルの市販品としては、例えば、日油株式会社製の商品名「ユニオックスM-400」、「ユニオックスM-550」、「ユ ニオックスM-1000」、「ユニオックスM-2000」、日本乳化剤株式会社製の商品名 「MPG-081」、「MPG-130」等が挙げられる。
【0089】
ポリアルキレングリコールアルキルエーテルを用いて、(A)成分の変性を行った場合に、ポリアルキレングリコールモノアルキルエーテルの水酸基と、ポリイソシアネート成分(A)のイソシアネート基とが反応して、下記一般式(VI)で表されるウレタン結合を形成することで、ポリアルキレングリコールモノアルキルエーテルの水酸基を除く残基が変性後のポリイソシアネートに導入される。
【0090】
【化3】
【0091】
(B)成分に由来する構造単位に対する(A)成分に由来する構造単位の質量比[(A)/(B)]は、50/50以上95/5以下が好ましい。(A)成分における最小値は60/40がより好ましく、70/30がさらに好ましい。また、最大値は90/10がより好ましく、85/15がさらに好ましい。質量比[(A)/(B)]を上記範囲とすることで、貯蔵安定性と塗膜硬度、耐水性が両立する傾向にある。
【0092】
[(A)/(B)]は、H-NMR測定により算出できる。具体的な測定方法としては、まず、ポリイソシアネート組成物のCDCl溶液を調製する。次いで、得られた溶液を以下の測定条件でH-NMR測定を行い、(A)成分由来のメチレン基及び(B)成分由来のメチレン基を確認する。各組成物の特徴的ピーク(化学シフト値)は、(A)成分由来のメチレン基が1.4ppm付近であり、(B)成分由来のメチレン基が3.5ppm付近、(B)成分由来のメチル基が3.4ppm付近である。(A)成分由来のメチレン基のH-NMR積分値をx、(B)成分由来のメチレン基のH-NMR積分値をy、(B)成分由来のメチル基のH-NMR積分値をzとしたときに、[(A)/(B)]は以下の式で算出することができる。
【0093】
(A)/(B)=(x×168/4)/(y×44/4+z×76/3)
【0094】
≪(C)成分≫
(C)成分は、2官能ポリエーテルポリオールである。
本実施形態のブロックポリイソシアネート組成物の原料であるポリエーテルポリオールとしては、多価ヒドロキシ化合物に、リチウム、ナトリウム、カリウム等の水酸化物、アルコラート、アルキルアミン等の強塩基性触媒を使用して、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、シクロヘキセンオキサイド、スチレンオキサイド等のアルキレンオキサイドを付加して得られるポリエーテルポリオール類;エチレンジアミン類等の多官能化合物にアルキレンオキサイドを反応させて得られるポリエーテルポリオール類、並びに、これらポリエーテルポリオール類を媒体としてアクリルアミド等を重合して得られるいわゆるポリマーポリオール類が挙げられる。
【0095】
前記触媒としては、例えば、アルカリ金属の水酸化物、強塩基性触媒、複合金属シアン化合物錯体等が挙げられる。アルカリ金属としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム等が挙げられる。強塩基性触媒としては、例えば、アルコラート、アルキルアミン等が挙げられる。複合金属シアン化合物錯体としては、例えば、金属ポルフィリン、ヘキサシアノコバルト酸亜鉛錯体等が挙げられる。
【0096】
ポリエーテルポリオールの数平均分子量は300以上3,000以下が好ましく、より好ましくは300以上1,000以下である。上記範囲とすることにより、有効NCO含有率が高く、貯蔵安定性と硬化性、塗膜硬度が良好な傾向にある。
【0097】
なお、本実施形態において、「数平均分子量」とは、ポリオールの水酸基価を測定して次式により求めた値である。
数平均分子量=水酸基価×N×1,000/56.11
水酸基価:JIS K-1577の6.4に準じて測定した値
N:ポリオールの平均官能基数(ポリオール1分子中の水酸基の数平均数)
【0098】
前記ポリエーテルポリオールの平均官能基数の最小値は分散性と貯蔵安定性の点で2が好ましい。最大値は、硬化性と塗膜の硬度、耐水性の両立の点で、5が好ましく、4がより好ましく、3が最も好ましい。
【0099】
前記ポリエーテルポリオールを用いて、(A)成分の変性を行った場合に、(C)成分の水酸基と、(A)成分のイソシアネート基とが反応して、前記ウレタン結合を形成することで、(C)成分の水酸基を除く残基が変性後のポリイソシアネートに導入される。
【0100】
(C)成分に由来する構造単位の含有量は、ブロックポリイソシアネート組成物の総質量に対して、0.1質量%以上20質量%以下であることが好ましく、1質量%以上15質量%以下がより好ましく、2質量%以上10質量%以下がさらに好ましい。
【0101】
≪(D)成分≫
(D)成分は、ピラゾール系化合物である。
本実施形態のブロックポリイソシアネート組成物の原料であるピラゾール系化合物は、熱解離性ブロック剤としての役割を果たす。ピラゾール系化合物として、ピラゾール、3-メチルピラゾール、3,5-ジメチルピラゾール等が挙げられる。また、これらピラゾール系化合物を1種単独で用い てもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。中でも入手性と低温または短時間の乾燥で硬化性がより優れる傾向にあることから、3,5-ジメチルピラゾールがより好ましい。
【0102】
(D)成分を用いて、(A)成分の変性を行った場合に、(D)成分のアミノ基と、(A)成分のイソシアネート基とが反応して、下記一般式(VII)で表されるウレア結合を形成することで、(A)成分のイソシアネート基が封鎖される。
【0103】
【化4】
【0104】
(一般式(VII)中、Rはピラゾール系化合物との結合基、または水素基である。)
【0105】
≪その他構成成分≫
・酸性リン酸エステル類
本実施形態のブロックポリイソシアネート組成物には、ブロックポリイソシアネート化合物に加えて、さらに酸性リン酸エステル類を含んでいてもよい。
酸性リン酸エステルとしては、以下のものに限定されないが、例えば、メチルアシッドホスフェート、エチルアシッドホスフェート、イソプロピルアシッドホスフェート、ブチルアシッドホスフェート、ジブチルピロホスフェート、ブトキシエチルアシッドホスフェート、2--エチルヘキシルアシッドホスフェート、アルキル(C12、C14、C16、C18)アシッドホスフェート、イソデシルアシッドホスフェート、イソトリデシルアシッドホスフェート、ラウリルアシッドホスフェート、ステアリルアシッドホスフェート、オレイルアシッドホスフェート、テトラコシルアシッドホスフェート、エチレングリコールアシッドホスフェート、2-ヒドロキシエチルメタクリレートアシッドホスフェート、ジブチルホスフェート、ビス(2-エチルヘキシル)ホスフェートなどが挙げられる。
【0106】
酸性リン酸エステル類の含有量は、前記ブロックポリイソシアネート組成物に対して下限は5質量ppm以上であり、10質量ppm以上が好ましく、15質量ppm以上がより好ましい。また、上限は95質量ppm以下であり、92質量ppm以下が好ましく、90質量ppm以下がより好ましい。
【0107】
・任意成分
本実施形態のブロックポリイソシアネート組成物は、ブロックポリイソシアネート化合物に加えて、その他の成分を含んでいてもよい。その他の成分としては、特に限定されないが、例えば、溶剤、防腐剤、酸化防止剤、光安定剤、重合禁止剤、界面活性剤、過酸化防止剤等が挙げられる。
【0108】
(溶剤)
溶剤は、親水性溶剤でもよく、疎水性溶剤でもよい。これら溶剤は単独又は混合して使用することができる。
【0109】
疎水性溶剤としては、特に限定されないが、例えば、ミネラルスピリット、ソルベントナフサ、LAWS(Low Aromatic White Spirit)、HAWS(High Aromatic White Spirit)、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、エステル類、ケトン類、アミド類が挙げられる。
【0110】
エステル類としては、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル等が挙げられる。
【0111】
ケトン類としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等が挙げられる。
【0112】
アミド類としては、例えば、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド等が挙げられる。
【0113】
親水性溶剤としては、特に限定されないが、例えば、アルコール類、エーテル類、エーテルアルコール類のエステル類が挙げられる。
【0114】
アルコール類としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、2-エチルヘキサノール等が挙げられる。
【0115】
エーテル類としては、例えば、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル等が挙げられる。
【0116】
エーテルアルコール類のエステル類としては、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等が挙げられる。
【0117】
本実施形態のブロックポリイソシアネート組成物において、溶剤の含有量は、分散しやすさの視点で本実施形態のポリイソシアネート組成物の全質量に対して、0質量%以上90質量%以下であることが好ましく、0質量%以上50質量%以下であることがより好ましく、0質量%以上30質量%以下であることがさらに好ましい。
【0118】
さらに、本実施形態のブロックポリイソシアネート組成物に水を添加し、分散体にすることも可能である。この水分散体に含む水の質量分率は後述する。
このブロックポリイソシアネート組成物分散体の平均分散粒子径(メジアン径)は、貯蔵安定性の点で1nm以上200nm以下が好ましく、1nm以上100nm以下がより好ましい。
【0119】
(防腐剤)
防腐剤としては、例えば1,2-ベンゾチアゾリン-3-オン、4,5-ジクロロ-2-n-オクチル-4-イソチアゾリン-3-オン、2-n-オクチル-4-イソチアゾリン-3-オン又はこれらの塩等のイソチアゾリン系化合物;4,5-ジクロロ-1,2-ジチオラン-3-オン等の有機塩素系化合物;2-ブロモ-2-ニトロプロパン-1,3-ジオール、2,2-ジブロモ-2-ニトロエタノール等の有機臭素系化合物;3-ヨード-2-プロピニルブチルカーバメート、ジヨードメチル-p-トリルスルホン等の有機ヨード系化合物;ホルムアルデヒド、グルタルアルデヒド、о-フタルアルデヒド等のアルデヒド系化合物;3-メチル-4-イソプロピルフェノール、2-イソプロピル-5-メチルフェノール等のフェノール系化合物;8-オキシキノリン、2,3,5,6-テトラクロロ-4-(メチルスルホニル)ピリジン、ビス(2-ピリジト-1-オキシド)亜鉛等のピリジン系化合物;N,N’,N”-トリスヒドロキシエチルヘキサヒドロ-S-トリアジン等のトリアジン系化合物;3,4,4’-トリクロロカルバニリド、3-トリフルオロメチル-4,4’-ジクロロカルバニリド等のアニリド系化合物;2-(チオシアノメチルチオ)ベンズチアゾール等のチアゾール系化合物;2-(4’-チアゾリル)ベンズイミダゾール、2-ベンズイミダゾールカルバミン酸メチル等のイミダゾール系化合物;2,4,5,6-テトラクロロイソフタロニトリル、5-クロロ-2,4,6-トリフルオロイソフタロニトリル等のニトリル系化合物;N-(フルオロジクロロメチルチオ)フタルイミド等のフタルイミド系化合物等が挙げられる。中でも、水分散体の長期保存安定性を得るため、イソチアゾリン系化合物を用いることが好ましい。
【0120】
防腐剤の含有量は、ブロックポリイソシアネートの水分散体の総質量に対して、100質量ppm以上10,000質量ppm以下が好ましく、500質量ppm以上5,000質量ppm以下がより好ましく、1,000質量ppm以上3,000質量ppm以下がさらに好ましい。防腐剤の含有量が上記下限値以上であることで、ブロックポリイソシアネート組成物の水分散体にバクテリアが繁殖することをより効果的に抑制することができる。また、防腐剤の含有量が上記上限値以下であることで、人の肌への刺激が強くなることをより効果的に抑制することができる。
【0121】
(酸化防止剤及び光安定剤)
酸化防止剤及び光安定剤としては、例えば、以下の(a)~(e)に示すもの等が挙げられる。これらを単独で含有してもよく、2種以上含有してもよい。
(a)燐酸若しくは亜燐酸の脂肪族、芳香族又はアルキル基置換芳香族エステルや次亜燐酸誘導体。
(b)フェニルホスホン酸、フェニルホスフィン酸、ジフェニルホスホン酸、ポリホスホネート、ジアルキルペンタエリスリトールジホスファイト、ジアルキルビスフェノールAジホスファイト等のリン化合物。
(c)フェノール系誘導体(特に、ヒンダードフェノール化合物)。
(d)チオエーテル系化合物、ジチオ酸塩系化合物、メルカプトベンズイミダゾール系化合物、チオカルバニリド系化合物、チオジプロピオン酸エステル等のイオウを含む化合物。
(e)スズマレート、ジブチルスズモノオキシド等のスズ系化合物。
【0122】
(重合禁止剤)
重合禁止剤としては、例えば、ハイドロキノン類、フェノール類、クレゾール類、カテコール類、ベンゾキノン類等が挙げられる。重合禁止剤として具体的には、例えば、ベンゾキノン、p-ベンゾキノン、p-トルキノン、p-キシロキノン、ナフトキノン、2,6-ジクロロキノン、ハイドロキノン、トリメチルハイドロキノン、カテコール、p-tert-ブチルカテコール、2,5-ジ-tert-ブチルハイドロキノン、モノメチルハイドロキノン、p-メトキシフェノール、2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾール、ハイドロキノンモノメチルエーテル等が挙げられる。これらを単独で含有してもよく、2種以上含有してもよい。
【0123】
(界面活性剤)
界面活性剤としては、例えば、公知のアニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤等が挙げられる。
【0124】
本実施形態のポリイソシアネート組成物において、酸化防止剤、光安定剤、重合禁止剤及び界面活性剤の合計含有量は、本実施形態のポリイソシアネート組成物の全質量に対して、0質量%以上10質量%以下であることが好ましく、0質量%以上5質量%以下であることがより好ましく、0質量%以上2質量%以下であることがさらに好ましい。
【0125】
≪ポリイソシアネート組成物の製造方法≫
本実施形態のブロックポリイソシアネート組成物の製造方法は、(A)成分と、(B)成分と、(C)成分と、(D)成分とを反応させることで得られる。例えば、(A)成分、(B)成分、(C)成分、(D)成分と、を同時に反応させてもよく、まず(A)成分と(B)成分とを反応させ、次に(C)成分と(D)成分とを反応させるなど、段階的に反応を行ってもよい。中でも(A)成分、(B)成分、(C)成分とで反応を行い、そのあとで(D)成分との反応を行う方が好ましい。
【0126】
反応工程においては、有機金属塩、3級アミン系化合物、アルカリ金属のアルコラート を触媒として用いてもよい。有機金属塩に含まれる金属としては、例えば、錫、亜鉛、鉛等が挙げられる。アルカリ金属としては、例えば、ナトリウム等が挙げられる。
反応温度は、-20℃以上150℃以下が好ましい。また、反応時間は30分間以上48時間以下であることが好ましい。
【0127】
また、ポリイソシアネート化合物と親水性化合物との反応において、場合により既知の通常の触媒を使用してもよい。当該触媒としては、特に限定されないが、例えば、以下の(a)~(f)に示すもの等が挙げられる。これらは単独又は混合して使用してもよい。
(a)オクタン酸スズ、2-エチル-1-ヘキサン酸スズ、エチルカプロン酸スズ、ラウリン酸スズ、パルミチン酸スズ、ジブチルスズオキシド、ジブチルスズジクロライド、ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジマレート、ジブチルスズジラウレート、ジオクチルスズジアセテート、ジオクチルスズジラウレート等の有機スズ化合物;
(b)塩化亜鉛、オクタン酸亜鉛、2-エチル-1-ヘキサン酸亜鉛、2-エチルカプロン酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛、ナフテン酸亜鉛、アセチルアセトン酸亜鉛等の有機亜鉛化合物;
(c)有機チタン化合物;
(d)有機ジルコニウム化合物;
(e)トリエチルアミン、トリブチルアミン、N,N-ジイソプロピルエチルアミン、N,N-ジメチルエタノールアミン等の三級アミン類;
(f)トリエチレンジアミン、テトラメチルエチレンジアミン、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン等のジアミン類。
【0128】
本実施形態のポリイソシアネート組成物の製造方法において、溶剤を使用してもよく、使用しなくてもよい。本実施形態のポリイソシアネート組成物の製造方法に用いられる溶剤は、親水性溶剤でもよく、疎水性溶剤でもよい。親水性溶剤及び疎水性溶剤としては、上記その他構成成分において例示されたものと同様のものが挙げられる。
【0129】
前記ノニオン系親水性化合物が未反応状態で残存しないよう、完全にポリイソシアネート成分と反応させることが好ましい。前記ノニオン系親水性化合物が残存しないことにより、ポリイソシアネート組成物の水分散性及び貯蔵安定性がより良好なものになる傾向にある。
【0130】
≪ブロックポリイソシアネート組成物の物性≫
[有効イソシアネート基(NCO)含有率]
本実施形態のブロックポリイソシアネート組成物において、固形分あたりの有効NCO含有率は、特に制限されないが、ブロックポリイソシアネート組成物の貯蔵安定性がより良好となることから、1質量%以上16質量%以下が好ましく、2質量%以上14質量%以下がより好ましく、3質量%以上13質量%以下がさらに好ましい。なお、有効NCO含有率は、後述する実施例に記載の方法を用いて算出することができる。
【0131】
<水分散体の粘度>
本発明の一態様は、前記本実施形態のブロックポリイソシアネート組成物と水とを含むブロックポリイソシアネート組成物分散体である。
ブロックポリイソシアネート組成物分散体の全量中の水の含有割合は50質量%以上90質量%以下でが好ましく、55質量%以上85質量%以下であることがより好ましく、55質量%以上80質量%以下であることがさらに好ましい。また、この水分散体中に、水以外の溶剤を、水を含めた溶剤の総質量に対し20質量%まで含むことができる。
【0132】
本実施形態のブロックポリイソシアネート組成物における、水分散体とした場合の25℃の粘度は、特に制限されないが、ブロックポリイソシアネート組成物の貯蔵安定性がより良好となることから、1mPa・s以上2,000mPa・s以下が好ましく、3mPa・s以上1,500mPa・s以下がより好ましく、5mPa・s以上1,000mPa・s以下がさらに好ましい。なお、粘度は、後述する実施例に記載の方法を用いて測定することができる。
【0133】
<水系塗料組成物>
本実施形態の水系塗料組成物は、上記ブロックポリイソシアネート組成物と、主剤と、を含む。
本実施形態の水系塗料組成物は、上記のブロックポリイソシアネート組成物を含むことで、塗膜にしたときの硬化性及び硬度、耐水性に優れる。
【0134】
(主剤)
水系塗料組成物に用いられる主剤としては、水性ポリオールが好ましい。水性ポリオールとしては、水酸基を含有する、ラテックス、エマルジョン、ディスパージョン、水溶性樹脂と表現されるもの全てを含む。水性ポリオールとして具体的には、例えば、ポリ塩化ビニリデン共重合体、ポリ塩化ビニル共重合体、酢酸ビニル共重合体、水溶性アクリル樹脂、水溶性ポリエステル樹脂、ウレタンディスパージョン、アクリルエマルジョン、フッ素共重合体エマルジョン、スチレンブタジエン共重合体ラテックス、アクリロニトリルブタジエン共重合体、ゴム系ラテックス、ポリブタジエン共重合体、ウレタンアクリルエマルジョン、及び、これらコポリマー又は混合物等が挙げられる。
【0135】
中でも、水性ポリオールとしては、操作性及び耐水性が優れることから、ラテックス、エマルジョン又はディスパージョンと表現されるものが好ましい。また、中でも、塗膜としたときの耐候性、光沢及び強靭性に特に優れることから、アクリルエマルジョン、フッ素共重合体エマルジョン、ウレタンディスパージョン又はこれらのポリマーが特に好ましい。
【0136】
ラテックス、エマルジョン又はディスパージョンと表現される水性ポリオールを用いる場合、それらの粒子径の下限値は、5nmが好ましく、10nmがより好ましく、40nmがさらに好ましい。一方で、粒子径の上限値は、1.0μmが好ましく、500nmがより好ましく、300nmがさらに好ましい。
すなわち、粒子径は、5nm以上1.0μm以下が好ましく、10nm以上500nm以下がより好ましく、40nm以上300nm以下がさらに好ましい。
粒子径が上記範囲であることで、塗膜としたときの光沢がより高く、耐水性もより優れる。また、ラテックス、エマルジョン又はディスパージョンとしての安定性もより十分なものとなる。
【0137】
水性ポリオールの水酸基価の下限値は、1mgKOH/gが好ましく、5mgKOH/gがより好ましく、10mgKOH/gがさらに好ましい。一方で、水酸基価の上限値は、300mgKOH/gが好ましく、200mgKOH/gがより好ましく、150mgKOH/gがさらに好ましい。
すなわち、水性ポリオールの水酸基価は、1mgKOH/g以上300mgKOH/g以下が好ましく、5mgKOH/g以上200mgKOH/g以下がより好ましく、10mgKOH/g以上150mgKOH/g以下がさらに好ましい。
水性ポリオールの水酸基価が上記範囲であることで、架橋点がより十分なものとなり、より柔軟で強靱な塗膜を得ることができる。
【0138】
本実施形態の塗料組成物において、水性ポリオールの水酸基に対する上記ポリイソシアネート組成物のイソシアネート基のモル比(イソシアネート基/水酸基)の下限値は、0.3が好ましく、0.5がより好ましく、0.6がさらに好ましい。一方で、モル比の上限値は、5.0が好ましく、3.0がより好ましく、2.5がさらに好ましい。
すなわち、水性ポリオールの水酸基に対する上記ポリイソシアネート組成物のイソシアネート基のモル比(イソシアネート基/水酸基)は、0.3以上5.0以下が好ましく、0.5以上3.0以下がより好ましく、0.6以上2.5以下がさらに好ましい。
モル比(イソシアネート基/水酸基)が上記範囲であることで、架橋点がより十分なものとなり、より柔軟で強靱な塗膜を得ることができる。
【0139】
(その他の成分)
本実施形態の水系塗料組成物は、上述したポリイソシアネート組成物及び樹脂類の他に、更に、一般的に塗料に加えられる添加剤を含んでもよい。該添加剤としては、例えば、無機顔料、有機顔料、体質顔料、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、有機リン酸塩、有機亜リン酸塩、増粘剤、レベリング剤、チキソ化剤、消泡剤、凍結安定剤、艶消し剤、架橋反応触媒(硬化促進用の触媒)、皮張り防止剤、分散剤、湿潤剤、充填剤、可塑剤、潤滑剤、還元剤、防腐剤、防黴剤、消臭剤、黄変防止剤、紫外線吸収剤、静電防止剤又は帯電調整剤、沈降防止剤等が挙げられる。これら添加剤を単独で含んでもよく、2種以上を組み合わせて含んでもよい。
【0140】
架橋反応触媒(硬化促進用の触媒)としては、以下に限定されないが、例えば、以下の(a)又は(b)に示すもの等が挙げられる。
(a)ジブチルスズジラウレート、2-エチルヘキサン酸スズ、2-エチルヘキサン酸亜鉛、コバルト塩等の金属塩。
(b)トリエチルアミン、ピリジン、メチルピリジン、ベンジルジメチルアミン、N,N-ジメチルシクロヘキシルアミン、N-メチルピペリジン、ペンタメチルジエチレントリアミン、N,N’-エンドエチレンピペラジン、N,N’-ジメチルピペラジン等の3級アミン類。
【0141】
本実施形態の水系塗料組成物は、塗料への分散性を良くするために、上述したポリイソシアネート組成物及び樹脂類の他に、更に界面活性剤を含んでもよい。
【0142】
本実施形態の水系塗料組成物は、塗料の保存安定性を良くするために、上述したポリイソシアネート組成物及び樹脂類の他に、更に酸化防止剤、光安定剤、重合禁止剤を含んでもよい。
【0143】
≪水系塗料組成物の製造方法≫
本実施形態の水系塗料組成物は、上記ポリイソシアネート組成物及び樹脂類と、必要に応じて、その他成分等とを、公知の方法を用いて、混合することで得られる。
【0144】
水系塗料組成物の場合には、樹脂類又はその水分散体若しくは水溶物に、必要に応じて、上記その他成分で例示された添加剤を加える。次いで、上記ポリイソシアネート組成物又はその水分散体を硬化剤として添加し、必要に応じて、水や溶剤を更に添加して、粘度を調整する。次いで、攪拌機器により強制攪拌することによって、水系コーティング組成物を得ることができる。
【0145】
≪溶剤系塗料組成物の製造方法≫
本発明の一態様において、溶剤ベースのコーティング組成物を製造してもよい。
溶剤ベースのコーティング組成物を製造する場合には、まず、樹脂類又はその溶剤希釈物に、必要に応じて、上記その他成分で例示された添加剤を加える。次いで、上記ポリイソシアネート組成物を硬化剤として添加し、必要に応じて、溶剤を更に添加して、粘度を調整する。次いで、手攪拌又はマゼラー等の攪拌機器を用いて攪拌することによって、溶剤ベースのコーティング組成物を得ることができる。
【0146】
<コーティング基材>
本実施形態のコーティング基材は、上述の水系塗料組成物又は溶剤系塗料組成物によってコーティングされたコーティング基材である。本実施形態のコーティング基材は、上述の水系塗料組成物又は溶剤系塗料組成物を含むコーティング層を有するものであることが好ましい。
【0147】
本実施形態のコーティング基材は、上述の水系塗料組成物又は溶剤系塗料組成物を硬化させてなる塗膜を備えることから、外観、耐水性及び硬度に優れる。
【0148】
本実施形態のコーティング基材は、上述の水系塗料組成物又は溶剤系塗料組成物を、ロール塗装、カーテンフロー塗装、スプレー塗装、ベル塗装、静電塗装等の公知の方法を用いて、基材上に塗装し、常温乾燥又は焼付け工程を経て、硬化させることで得られる。
【0149】
本実施形態のコーティング基材は、所望の基材と、場合により、コーティング前に通常のプライマーと、を備えてもよい。
前記基材としては、例えば、金属、木材、ガラス、石、セラミック材料、コンクリート、硬質及び可撓性プラスチック、繊維製品、皮革製品、紙等が挙げられる。
【実施例0150】
以下、本発明を実施例および比較例を挙げてより具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
実施例及び比較例における、ポリイソシアネート組成物の物性及び評価は、以下のとおり測定した。なお、特に明記しない場合は、「部」及び「%」は、「質量部」及び「質量%」を意味する。
【0151】
<測定方法>
[物性1]
(粘度)
粘度はE型粘度計(株式会社トキメック社製)により25℃で測定した。標準ローター(1°34’×R4)を用いた。回転数は、以下のとおりである。
【0152】
(回転数)
100r.p.m. (128mPa・s未満の場合)
50r.p.m. (128mPa・s以上256mPa・s未満の場合)
20r.p.m. (256mPa・s以上640mPa・s未満の場合)
10r.p.m. (640mPa・s以上1280mPa・s未満の場合)
5r.p.m. (1280mPa・s以上2560mPa・s未満の場合)
2.5r.p.m. (2560mPa・s以上5120mPa・s未満の場合)
【0153】
[物性2]
(イソシアネート基含有率(NCO%))
合成例で得られたポリイソシアネート化合物、並びに、実施例及び比較例で得られたポリイソシアネート組成物を試料として、イソシアネート基含有率の測定は、JIS K7301-1995(熱硬化性ウレタンエラストマー用トリレンジイソシアネート型プレポリマー試験方法)に記載の方法に従って実施した。以下に、より具体的なイソシアネート基含有率(NCO%)の測定方法を示す。
【0154】
(1)試料1g(Wg)を200mL三角フラスコに採取し、該フラスコにトルエン20mLを添加し、試料を溶解させた。
(2)その後、上記フラスコに2.0Nのジ-n-ブチルアミン・トルエン溶液20mLを添加し、15分間静置した。
(3)上記フラスコに2-プロパノール70mLを添加し、溶解させて溶液を得た。
(4)上記(3)で得られた溶液について、1mol/L塩酸を用いて滴定を行い、試料滴定量(VmL)を求めた。
(5)試料を添加しない場合にも、上記(1)~(3)と同様の方法で測定を実施し、ブランク滴定量(VmL)を求めた。
【0155】
上記で求めた試料滴定量及びブランク滴定量から、イソシアネート基含有率(NCO%)を以下に示す式を用いて、算出した。
【0156】
イソシアネート基含有率(質量%)=(V-V)×42/[W(1g)×1000]×100
【0157】
[物性3]
(ブロックイソシアネート基含有率(有効NCO含有率))
得られたブロックポリイソシアネート組成物の有効NCO含有率は、次のように求めた。ここでいう有効NCO含有率(質量%)とは、ブロック化反応後のブロックポリイソシアネート成分中に存在する架橋反応に関与しうるブロックイソシアネート基量を定量化するものであり、イソシアネート基の質量%として表される。以下に示す式により、有効NCO含有率を算出した。なお、以下に示す式において、「S」はブロックポリイソシアネート成分の不揮発分(質量%)を表す。「W1」は反応に使用したポリイソシアネートの質量(g)を表す。「A」はポリイソシアネートのイソシアネート基含有率(質量%)を表す。「W2」はブロック化反応後のブロックポリイソシアネートの質量(g)を表す。
【0158】
有効NCO含有率(質量%)={S×(W1×A)}/W2
【0159】
(数平均分子量)
数平均分子量は下記の装置を用いたゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)測定によるポリスチレン基準の数平均分子量である。GPC測定の具体的な測定条件は、以下のとおりとした。
【0160】
装置:東ソー(株)製、HLC-802A
カラム:東ソー(株)製、G1000HXL×1本、G2000HXL×1本、G3000HXL×1本
キャリア:テトラヒドロフラン
検出方法:示差屈折計
【0161】
(イソシアヌレート基とアロファネート基のモル比)
得られたブロックポリイソシアネート組成物のイソシアヌレート基とアロファネート基の比は、H-NMRにより求めた具体的な測定条件は、以下のとおりとした。
NMR装置:Bruker Biospin Avance600(商品名)
観測核:
周波数:600MHz
溶媒:CDCl
シフト基準:TMS(0ppm)
3.85ppm付近のイソシアヌレート基に隣接するHDI由来のメチレン基の水素原子のシグナルの面積(2H分)と、8.50ppm付近のアロファネート結合の窒素に結合した水素原子のシグナルの面積(1H)の比を測定、算出して求めた。
イソシアヌレート基/アロファネート基=(3.85ppm付近のシグナル面積/6)/(8.50ppm付近のシグナル面積)
【0162】
(ウレア基/ウレタン基のモル比)
得られたブロックポリイソシアネート組成物のウレア基とウレタン基のモル比は、13C-NMRの測定により求めた。具体的な測定条件は、以下のとおりとした。
13C-NMR装置:AVANCE600(ブルカー社製)
クライオプローブ(ブルカー社製)
CryoProbe(登録商標)
CPDUL
600S3-C/H-D-05Z
共鳴周波数:150MHz
濃度:60wt/vol%
溶媒、シフト基準:CDCl(77ppm)
積算回数:10000回
パルスプログラム:zgpg30(プロトン完全デカップリング法、待ち時間2sec)
ウレア基/ウレタン基=(151ppm付近の積分値)/{(156~157ppm付近の積分値)-(154ppm付近の積分値)}
【0163】
(水系コーティング組成物の製造)
実施例及び比較例で得られたブロックポリイソシアネート組成物に対し、後述する合成例2で得られたアクリル樹脂水分散体(固形分42%、樹脂分水酸基価66mgKOH/g、酸価16mgKOH/g)を、官能基比率(NCO/OH)が1.0となる割合で配合した。さらに、この混合物に、固形分が40%となる割合で脱イオン水を加え、ディスパー羽根を使用し、1000rpmで5分間撹拌し、水系コーティング組成物を調製した。
【0164】
<評価方法>
[評価1]
(ブロックポリイソシアネート組成物の水分散性)
実施例及び比較例で得られたポリイソシアネート組成物を試料として、紫外可視分光光度計(紫外可視分光光度計 日本分光株式会社製、型式:V-650)にて波長550nmの透過率を0.5cmセルで測定し、水分散性を下記の基準に基づいて評価した。
【0165】
(評価基準)
○:透過率50%以上
△:透過率20%以上50%未満
×:透過率20%未満または沈降物あり
【0166】
[評価2]
(ブロックポリイソシアネート組成物の貯蔵安定性)
実施例及び比較例で得られたポリイソシアネート組成物を40℃14日間、または60℃7日間貯蔵したあとの透過率を(ブロックポリイソシアネート組成物の水分散性)と同様の方法にて測定、および外観観察を行い、下記の基準に基づいて評価した。
【0167】
(評価基準)
○:透過率50%以上
△:透過率20%以上50%未満
×:透過率20%未満または沈降物あり
【0168】
[評価3]
(水系コーティング組成物の硬化性)
各水系コーティング組成物をポリプロピレン板上に塗装し、140℃にて30分間乾燥させて膜厚40μmの塗膜を作製した。次いで、作製した塗膜のアセトンに23℃×24時間後浸漬後、未溶解部分の質量を浸漬前の質量で除し、未溶解部分の割合(質量%)を算出した。塗膜の硬化性を以下の評価基準に従い、評価した。
【0169】
(評価基準)
◎:85質量%以上
○:70質量%以上85質量%未満
×:70質量%未満
【0170】
[評価4]
(塗膜の硬度)
各水系コーティング組成物を、ガラス板上に塗装した後、140℃で30分間加熱して膜厚40μmの塗膜を得た。得られた塗膜を常温(23℃)で1週間保管した後、ケーニッヒ硬度計でケーニッヒ硬度(回)を測定した。塗膜の硬度を以下の評価基準に従い、評価した。
【0171】
(評価基準)
○:80回以上
△:50回以上80回未満
×:50回未満
【0172】
[評価5]
(塗膜の耐水性)
各水系コーティング組成物をガラス板上に塗装した後、140℃で30分間加熱して膜厚40μmの塗膜を得た。次いで、得られた塗膜を常温(23℃)で1日間保管し、40℃の水に72時間浸漬した後の塗膜外観を観察した。観察結果から、塗膜の耐水性を以下の評価基準に従い、評価した。
【0173】
(評価基準)
◎:白化、プリスターがほぼ見られなかったもの
○:浸漬部の一部にブリスターが見られた場もの
△:浸漬部にうっすらと白化が見られたもの
×:浸漬部の白化が明らかなもの
【0174】
〔合成例1-1〕
(ポリイソシアネート化合物P-1の合成)
撹拌機、温度計、還流冷却管、窒素吹き込み管、滴下ロートを取り付けた4ツ口フラスコ内を窒素雰囲気にし、HDI:1000g、及び、イソブタノール:4.0gを仕込み、撹拌下反応器内温度を70℃に保持した。これにテトラメチルアンモニウムカプリエートを加え、収率が40質量%になった時点で燐酸を添加して反応を停止した。次いで、反応液をろ過した後、薄膜蒸発缶を用いて未反応のHDIを除去し、ポリイソシアネート化合物P-1を得た。得られたポリイソシアネート化合物P-1の25℃における粘度は2700mPa・s、イソシアネート基含有率は21.7質量%であった。1H-NMRを測定したところ、イソシアヌレート基/アロファネート基のモル比は95/5であった。
【0175】
〔合成例1-2〕
(ポリイソシアネート化合物P-2の合成)
イソブタノール4.0gに代えて、イソブタノール7.0gを用いたこと以外は、合成例1-1と同様の方法により、ポリイソシアネート化合物P-2を得た。得られたポリイソシアネート化合物P-2の25℃における粘度は1,050mPa・s、NCO含有率は21.2%であった。H-NMRを測定したところ、イソシアヌレート基/アロファネート基のモル比は81/19であった。
【0176】
〔合成例1-3〕
(ポリイソシアネート化合物P-3の合成)
合成例1-1と同様の反応容器に、HDI1000gを仕込み、ポリプロピレングリコール(サンニックスPP-400、数平均分子量:400、官能基数:2、三洋化成工業株式会社製)35.0gを仕込み、撹拌下反応器内温度を100℃に保持し、ウレタン化反応を進行させた。その後、イソシアヌレート化反応触媒であるテトラメチルアンモニウムカプリエートを加え、収率が60%になった時点で燐酸を添加し反応を停止した。反応液をろ過した後、薄膜蒸発缶を用いて未反応のHDIを除去し、ポリイソシアネート化合物P-3を得た。得られたポリイソシアネート化合物P-3の25℃における粘度は8,000mPa・s、イソシアネート基含有率は18.5質量%であった。1H-NMRを測定したところ、イソシアヌレート基/アロファネート基のモル比は88/12であった。
【0177】
〔合成例1-4〕
(ポリイソシアネート化合物P-4の合成)
合成例1-1と同様の反応容器にHDI1000gと2-エチルヘキサノール30gを仕込み、撹拌下90℃で1時間ウレタン化反応を行った。90℃で、触媒としてカプリン酸テトラメチルアンモニウムの固形分5%イソブタノール溶液を0.6g加えた。さらに2時間撹拌した後、リン酸85%水溶液0.06gを加え、反応を停止した。反応液を濾過後、薄膜蒸留装置を用いて、未反応のHDIを除去して、ポリイソシアネート化合物P-4を得た。得られたポリイソシアネート化合物P-4の25℃における粘度が340mPa・sであり、NCO基含有率が20.3%であった。1H-NMRを測定したところ、イソシアヌレート基/アロファネート基のモル比は50/50であった。
【0178】
〔合成例1-5〕
(ポリイソシアネート化合物P-5の合成)
合成例1と同様の反応容器にHDI600gを仕込み、70℃で撹拌下、触媒としてテトラメチルアンモニウムカプリエートを加え、収率が40%になった時点で燐酸を添加し、反応を停止した。その後、反応液を濾過した後、未反応のHDIモノマーを薄膜蒸留装置により除去することにより、ポリイソシアネート化合物P-5を得た。得られたポリイソシアネート化合物P-5の25℃における粘度は1,800mPa・s、イソシアネート含有量は22.0%であった。H-NMRを測定したところ、イソシアヌレート基/アロファネート基のモル比は100/0であった。
【0179】
[合成例2]
(アクリル樹脂水分散体の合成)
合成例1と同様の反応容器内に、脱イオン水:70質量部、40%乳化剤水溶液:2質量部、メチルメタクリレート:0.37質量部、n-ブチルアクリレート:0.23質量部、n-ブチルメタクリレート:0 .24質量部、2-ヒドロキシエチルメタクリレート:0.15質量部、及び、アクリル酸:0.01質量部を仕込み、窒素気流中で混合し、60℃で3%過硫酸アンモニウム水溶液:4質量部を加えた。次に、70℃に昇温して、メチルメタクリレート:29質量部、n-ブチルアクリレート:18質量部、n-ブチルメタクリレート:19質量部、2-ヒドロキシエチルメタクリレート:12質量部、アクリル酸:1質量部、40%乳化剤水溶液:2質量部、3%過硫酸アンモニウム水溶液:4質量部、及び、脱イオン水:40質量部からなる混合液を反応液に3時間かけて添加した。次に、70℃に保持したまま、メチルメタクリレート:7.63質量部、n-ブチルアクリレート:3.77質量部、n-ブチルメタクリレート:4.76質量部、2-ヒドロキシエチルメタクリレート:2.85質量部、アクリル酸:0.99質量部、及び、3%過硫酸アンモニウム水溶液:4質量部からなる混合液を反応液に2時間かけて添加した。1時間熟成後、脱イオン水:15質量部を反応液に2添加し、30℃に降温した。ジメチルエタノールアミンで中和して、固形分42%のアクリル樹脂水分散体を得た。アクリル樹脂水分散体の樹脂分水酸基価は66mgKOH/g、酸価は16mgKOH/g、数平均分子量は150,000、pHは7.1、平均粒子径は0.1μmであり、外観は乳白色であった。なお、平均粒子径は、平均粒子径測定器(サブミクロン粒度分布測定装置、商標「コールターN4Plus」、ベックマンコールター株式会社製)を用いて測定した値である。
【0180】
<ブロックポリイソシアネート組成物の合成>
[合成例3-1]
(ブロックポリイソシアネート組成物PA-1の合成)
合成例1-1と同様の反応容器に、ポリイソシアネート化合物P-1:100質量部、およびメトキシポリエチレングリコール(MPG-081、エチレンオキサイド繰り返し単位:15個、日本乳化剤株式会社製):21.4質量部、2-エチルヘキシルアシッドホスフェート(JP-508、城北化学工業株式会社製):0.01質量部、ポリプロピレングリコール(サンニックスPP-400):10.3質量部を混合して120℃で4時間撹拌し、ウレタン化反応を行った。反応液を80℃まで冷却し、ブロック剤として3,5-ジメチルピラゾール:42.9質量部を添加、撹拌した。赤外スペクトルでイソシアネート基の特性吸収がなくなったことを確認し、イオン交換水:261.9質量部を添加、撹拌し、ブロックポリイソシアネート組成物PA-1を得た。得られたブロックポリイソシアネート組成物PA-1の物性を表1に示す。
【0181】
[合成例3-2]
(ブロックポリイソシアネート組成物PA-2の合成)
合成例1-1と同様の反応容器に、ポリイソシアネート化合物P-1:100質量部、およびメトキシポリエチレングリコール(MPG-081):28.5質量部、2-エチルヘキシルアシッドホスフェート(JP-508):0.01質量部、ポリプロピレングリコール(サンニックスPP-400):10.3質量部を混合して120℃で4時間撹拌し、ウレタン化反応を行った。反応液を80℃まで冷却し、ブロック剤として3,5-ジメチルピラゾール:41.9質量部を添加、撹拌した。赤外スペクトルでイソシアネート基の特性吸収がなくなったことを確認し、イオン交換水:271.1質量部を添加、撹拌し、ブロックポリイソシアネート組成物PA-2を得た。得られたブロックポリイソシアネート組成物PA-2の物性を表1に示す。
【0182】
[合成例3-3]
(ブロックポリイソシアネート組成物PA-3の合成)
合成例1-1と同様の反応容器に、合成例1で得られたポリイソシアネート化合物P-1:100質量部、ノニオン系親水性化合物としてメトキシポリエチレングリコール(MPG-081):35.6質量部、2-エチルヘキシルアシッドホスフェート(JP-508):0.01質量部、2官能ポリエーテルポリオールとしてポリプロピレングリコール(サンニックスPP-400):10.3質量部を添加し、を混合し、120℃で4時間撹拌し、ウレタン化反応を行った。反応液を80℃まで冷却し、ブロック剤として3,5-ジメチルピラゾール:40.9質量部を添加、撹拌した。赤外スペクトルでイソシアネート基の特性吸収がなくなったことを確認し、イオン交換水:280.2質量部を添加、撹拌し、ブロックポリイソシアネート組成物PA-3を得た。得られたブロックポリイソシアネート組成物PA-3の物性を表1に示す。
【0183】
[合成例3-4]
(ブロックポリイソシアネート組成物PA-4の合成)
合成例1-1と同様の反応容器に、ポリイソシアネート化合物P-1:100質量部、およびメトキシポリエチレングリコール(MPG-081):44.6質量部、2-エチルヘキシルアシッドホスフェート(JP-508):0.01質量部、ポリプロピレングリコール(サンニックスPP-400):10.3質量部を混合し、120℃で4時間撹拌し、ウレタン化反応を行った。反応液を80℃まで冷却し、ブロック剤として3,5-ジメチルピラゾール:39.6質量部を添加、撹拌した。赤外スペクトルでイソシアネート基の特性吸収がなくなったことを確認し、イオン交換水:291.8質量部を添加、撹拌し、ブロックポリイソシアネート組成物PA-4を得た。得られたブロックポリイソシアネート組成物PA-4の物性を表1に示す。
【0184】
[合成例3-5]
(ブロックポリイソシアネート組成物PA-5の合成)
合成例1-1と同様の反応容器に、ポリイソシアネート化合物P-1:100質量部、およびメトキシポリエチレングリコール(MPG-081):35.6質量部、2-エチルヘキシルアシッドホスフェート(JP-508):0.01質量部、ポリプロピレングリコール(サンニックスPP-400):2.0質量部を混合して120℃で4時間撹拌し、ウレタン化反応を行った。反応液を80℃まで冷却し、ブロック剤として3,5-ジメチルピラゾール:45.0質量部を添加、撹拌した。赤外スペクトルでイソシアネート基の特性吸収がなくなったことを確認し、イオン交換水:273.9質量部を添加、撹拌し、ブロックポリイソシアネート組成物PA-5を得た。得られたブロックポリイソシアネート組成物PA-5の物性を表1に示す。
【0185】
[合成例3-6]
(ブロックポリイソシアネート組成物PA-6の合成)
合成例1-1と同様の反応容器に、ポリイソシアネート化合物P-1:100質量部、およびメトキシポリエチレングリコール(MPG-081):35.6質量部、2-エチルヘキシルアシッドホスフェート(JP-508):0.01質量部、ポリプロピレングリコール(サンニックスPP-400):12.9質量部を混合し、120℃で4時間撹拌し、ウレタン化反応を行った。反応液を80℃まで冷却し、ブロック剤として3,5-ジメチルピラゾール:39.6質量部を添加、撹拌した。赤外スペクトルでイソシアネート基の特性吸収がなくなったことを確認し、イオン交換水:282.2質量部を添加、撹拌し、ブロックポリイソシアネート組成物PA-6を得た。得られたブロックポリイソシアネート組成物PA-6の物性を表1に示す。
【0186】
[合成例3-7]
(ブロックポリイソシアネート組成物PA-7の合成)
合成例1-1と同様の反応容器に、ポリイソシアネート化合物P-1:100質量部、およびメトキシポリエチレングリコール(MPG-081):28.5質量部、2-エチルヘキシルアシッドホスフェート(JP-508):0.01質量部、ポリプロピレングリコール(サンニックスPP-400):20.7質量部を混合して120℃で4時間撹拌し、ウレタン化反応を行った。反応液を80℃まで冷却し、ブロック剤として3,5-ジメチルピラゾール:36.8質量部を添加、撹拌した。赤外スペクトルでイソシアネート基の特性吸収がなくなったことを確認し、イオン交換水:279.0質量部を添加、撹拌し、ブロックポリイソシアネート組成物PA-7を得た。得られたブロックポリイソシアネート組成物PA-7の物性を表1に示す。
【0187】
[合成例3-8]
(ブロックポリイソシアネート組成物PA-8の合成)
合成例1-1と同様の反応容器に、ポリイソシアネート化合物P-1:100質量部、およびメトキシポリエチレングリコール(MPG-081):53.5質量部、2-エチルヘキシルアシッドホスフェート(JP-508):0.01質量部、ポリプロピレングリコール(サンニックスPP-400):10.3質量部を混合して120℃で4時間撹拌し、ウレタン化反応を行った。反応液を80℃まで冷却し、ブロック剤として3,5-ジメチルピラゾール:38.3質量部を添加、撹拌した。赤外スペクトルでイソシアネート基の特性吸収がなくなったことを確認し、イオン交換水:303.2質量部を添加、撹拌し、ブロックポリイソシアネート組成物PA-8を得た。得られたブロックポリイソシアネート組成物PA-8の物性を表1に示す。
【0188】
[合成例3-9]
(ブロックポリイソシアネート組成物PA-9の合成)
合成例1-1と同様の反応容器に、ポリイソシアネート化合物P-1:100質量部、およびメトキシポリエチレングリコール(MPG-081):71.3質量部、2-エチルヘキシルアシッドホスフェート(JP-508):0.01質量部、ポリプロピレングリコール(サンニックスPP-400):10.3質量部を混合して120℃で4時間撹拌し、ウレタン化反応を行った。反応液を80℃まで冷却し、ブロック剤として3,5-ジメチルピラゾール:35.8質量部を添加、撹拌した。赤外スペクトルでイソシアネート基の特性吸収がなくなったことを確認し、イオン交換水:326.1質量部を添加、撹拌し、ブロックポリイソシアネート組成物PA-9を得た。得られたブロックポリイソシアネート組成物PA-9の物性を表1に示す。
【0189】
[合成例3-10]
(ブロックポリイソシアネート組成物PA-10の合成)
合成例1-1と同様の反応容器に、ポリイソシアネート化合物P-1:100質量部、およびメトキシポリエチレングリコール(MPG-130、エチレンオキサイド繰り返し単位:9個、日本乳化剤株式会社製):35.5質量部、2-エチルヘキシルアシッドホスフェート(JP-508):0.01質量部、ポリプロピレングリコール(サンニックスPP-400):12.9質量部を混合して120℃で4時間撹拌し、ウレタン化反応を行った。反応液を80℃まで冷却し、ブロック剤として3,5-ジメチルピラゾール:36.5質量部を添加、撹拌した。赤外スペクトルでイソシアネート基の特性吸収がなくなったことを確認し、イオン交換水:277.4質量部を添加、撹拌し、ブロックポリイソシアネート組成物PA-10を得た。得られたブロックポリイソシアネート組成物PA-10の物性を表1に示す。
【0190】
[合成例3-11]
(ブロックポリイソシアネート組成物PA-11の合成)
合成例1-1と同様の反応容器に、ポリイソシアネート化合物P-1:100質量部、およびメトキシポリエチレングリコール(ユニオックスM-1000、日油株式会社製):51.7質量部、2-エチルヘキシルアシッドホスフェート(JP-508):0.01質量部、ポリプロピレングリコール(サンニックスPP-400):12.9質量部を混合して120℃で4時間撹拌し、ウレタン化反応を行った。反応液を80℃まで冷却し、ブロック剤として3,5-ジメチルピラゾール:39.6質量部を添加、撹拌した。赤外スペクトルでイソシアネート基の特性吸収がなくなったことを確認し、イオン交換水:306.3質量部を添加、撹拌し、ブロックポリイソシアネート組成物PA-11を得た。得られたブロックポリイソシアネート組成物PA-11の物性を表2に示す。
【0191】
[合成例3-12]
(ブロックポリイソシアネート組成物PA-12の合成)
合成例1-1と同様の反応容器に、ポリイソシアネート化合物P-1:100質量部、およびメトキシポリエチレングリコール(ユニオックスM-1000):77.5質量部、2-エチルヘキシルアシッドホスフェート(JP-508):0.01質量部、ポリプロピレングリコール(サンニックスPP-400):10.3質量部を混合して120℃で4時間撹拌し、ウレタン化反応を行った。反応液を80℃まで冷却し、ブロック剤として3,5-ジメチルピラゾール:38.3質量部を添加、撹拌した。赤外スペクトルでイソシアネート基の特性吸収がなくなったことを確認し、イオン交換水:339.2質量部を添加、撹拌し、ブロックポリイソシアネート組成物PA-12を得た。得られたブロックポリイソシアネート組成物PA-12の物性を表2に示す。
【0192】
[合成例3-13]
(ブロックポリイソシアネート組成物PA-13の合成)
合成例1-1と同様の反応容器に、ポリイソシアネート化合物P-1:100質量部、およびメトキシポリエチレングリコール1(MPG-130):4.3質量部、メトキシポリエチレングリコール2(MPG、エチレンオキサイド繰り返し単位:4個、日本乳化剤株式会社製):17.1質量部、2-エチルヘキシルアシッドホスフェート(JP-508):0.01質量部、ポリプロピレングリコール(サンニックスPP-400):10.3質量部を混合して120℃で4時間撹拌し、ウレタン化反応を行った。反応液を80℃まで冷却し、ブロック剤として3,5-ジメチルピラゾール:37.5質量部を添加、撹拌した。赤外スペクトルでイソシアネート基の特性吸収がなくなったことを確認し、イオン交換水:253.8質量部を添加、撹拌し、ブロックポリイソシアネート組成物PA-13を得た。得られたブロックポリイソシアネート組成物PA-13の物性を表2に示す。
【0193】
[合成例3-14]
(ブロックポリイソシアネート組成物PA-14の合成)
合成例1-1と同様の反応容器に、ポリイソシアネート化合物P-2:100質量部、およびメトキシポリエチレングリコール(MPG-081):35.6質量部、2-エチルヘキシルアシッドホスフェート(JP-508):0.01質量部、ポリプロピレングリコール(PP-400):12.9質量部を混合して120℃で4時間撹拌し、ウレタン化反応を行った。反応液を80℃まで冷却し、ブロック剤として3,5-ジメチルピラゾール:39.0質量部を添加、撹拌した。赤外スペクトルでイソシアネート基の特性吸収がなくなったことを確認し、イオン交換水:281.3質量部を添加、撹拌し、ブロックポリイソシアネート組成物PA-14を得た。得られたブロックポリイソシアネート組成物PA-14の物性を表2に示す。
【0194】
[合成例3-15]
(ブロックポリイソシアネート組成物PA-15の合成)
合成例1-1と同様の反応容器に、ポリイソシアネート化合物P-1:100質量部、およびメトキシポリエチレングリコール(MPG-081):35.6質量部、2-エチルヘキシルアシッドホスフェート(JP-508):0.01質量部、ポリプロピレングリコール(サンニックスPP-1000、数平均分子量:1,000、三洋化成工業株式会社製):12.9質量部を混合して120℃で4時間撹拌し、ウレタン化反応を行った。反応液を80℃まで冷却し、ブロック剤として3,5-ジメチルピラゾール:43.4質量部を添加、撹拌した。赤外スペクトルでイソシアネート基の特性吸収がなくなったことを確認し、イオン交換水:287.9質量部を添加、撹拌し、ブロックポリイソシアネート組成物PA-15を得た。得られたブロックポリイソシアネート組成物PA-15の物性を表2に示す。
【0195】
[合成例3-16]
(ブロックポリイソシアネート組成物PA-16の合成)
合成例1-1と同様の反応容器に、ポリイソシアネート化合物P-1:100質量部、およびメトキシポリエチレングリコール(MPG-081):35.6質量部、2-エチルヘキシルアシッドホスフェート(JP-508):0.01質量部、ポリプロピレングリコール(サンニックスPP-200、数平均分子量:200、三洋化成工業株式会社製):15.5質量部を混合して120℃で4時間撹拌し、ウレタン化反応を行った。反応液を80℃まで冷却し、ブロック剤として3,5-ジメチルピラゾール:30.7質量部を添加、撹拌した。赤外スペクトルでイソシアネート基の特性吸収がなくなったことを確認し、イオン交換水:272.7質量部を添加、撹拌し、ブロックポリイソシアネート組成物PA-16を得た。得られたブロックポリイソシアネート組成物PA-16の物性を表2に示す。
【0196】
[合成例3-17]
(ブロックポリイソシアネート組成物PA-17の合成)
合成例1-1と同様の反応容器に、ポリイソシアネート化合物P-1:100質量部、およびメトキシポリエチレングリコール(MPG-081):35.6質量部、2-エチルヘキシルアシッドホスフェート(JP-508):0.01質量部、ポリプロピレングリコール(サンニックスPP-2000、数平均分子量:2,000、三洋化成工業株式会社製):15.5質量部を混合して120℃で4時間撹拌し、ウレタン化反応を行った。反応液を80℃まで冷却し、ブロック剤として3,5-ジメチルピラゾール:44.4質量部を添加、撹拌した。赤外スペクトルでイソシアネート基の特性吸収がなくなったことを確認し、イオン交換水:293.3質量部を添加、撹拌し、ブロックポリイソシアネート組成物PA-17を得た。得られたブロックポリイソシアネート組成物PA-17の物性を表2に示す。
【0197】
[合成例3-18]
(ブロックポリイソシアネート組成物PA-18の合成)
合成例1-1と同様の反応容器に、ポリイソシアネート化合物P-1:100質量部、およびメトキシポリエチレングリコール(MPG-081):35.6質量部、2-エチルヘキシルアシッドホスフェート(JP-508):0.01質量部、ポリプロピレングリコール(サンニックスGP-600、数平均分子量:600、官能基数:3、三洋化成工業株式会社製):12.9質量部を混合して120℃で4時間撹拌し、ウレタン化反応を行った。反応液を80℃まで冷却し、ブロック剤として3,5-ジメチルピラゾール:39.6質量部を添加、撹拌した。赤外スペクトルでイソシアネート基の特性吸収がなくなったことを確認し、イオン交換水:282.2質量部を添加、撹拌し、ブロックポリイソシアネート組成物PA-18を得た。得られたブロックポリイソシアネート組成物PA-18の物性を表2に示す。
【0198】
[合成例3-19]
(ブロックポリイソシアネート組成物PA-19の合成)
合成例1-1と同様の反応容器に、ポリイソシアネート化合物P-3:100質量部、およびメトキシポリエチレングリコール(MPG-081):38.0質量部、2-エチルヘキシルアシッドホスフェート(JP-508):0.01質量部を混合して120℃で4時間撹拌し、ウレタン化反応を行った。反応液を80℃まで冷却し、ブロック剤として3,5-ジメチルピラゾール:38.1質量部を添加、撹拌した。赤外スペクトルでイソシアネート基の特性吸収がなくなったことを確認し、イオン交換水:260.9質量部を添加、撹拌し、ブロックポリイソシアネート組成物PA-19を得た。得られたブロックポリイソシアネート組成物PA-19の物性を表2に示す。
【0199】
[合成例3-20]
(ブロックポリイソシアネート組成物PB-1の合成)
合成例1-1と同様の反応容器に、ポリイソシアネート化合物P-4:100質量部、およびメトキシポリエチレングリコール(MPG-081):36.1質量部、2-エチルヘキシルアシッドホスフェート(JP-508):0.01質量部、ポリプロピレングリコール(PP-400):13.1質量部を混合して120℃で4時間撹拌し、ウレタン化反応を行った。反応液を80℃まで冷却し、ブロック剤として3,5-ジメチルピラゾール:40.1質量部を添加、撹拌した。赤外スペクトルでイソシアネート基の特性吸収がなくなったことを確認し、イオン交換水:284.0質量部を添加、撹拌し、ブロックポリイソシアネート組成物PB-1を得た。得られたブロックポリイソシアネート組成物PB-1の物性を表3に示す。
【0200】
[合成例3-21]
(ブロックポリイソシアネート組成物PB-2の合成)
合成例1-1と同様の反応容器に、ポリイソシアネート化合物P-5:100質量部、およびメトキシポリエチレングリコール(MPG-081):33.8質量部、2-エチルヘキシルアシッドホスフェート(JP-508):0.01質量部、ポリプロピレングリコール(PP-400):12.3質量部を混合して120℃で4時間撹拌し、ウレタン化反応を行った。反応液を80℃まで冷却し、ブロック剤として3,5-ジメチルピラゾール:39.6質量部を添加、撹拌した。赤外スペクトルでイソシアネート基の特性吸収がなくなったことを確認し、イオン交換水:278.6質量部を添加、撹拌し、ブロックポリイソシアネート組成物PB-2を得た。得られたブロックポリイソシアネート組成物PB-2の物性を表3に示す。
【0201】
[合成例3-22]
(ブロックポリイソシアネート組成物PB-3の合成)
合成例1-1と同様の反応容器に、ポリイソシアネート化合物P-1:100質量部、およびメトキシポリエチレングリコール(MPG-081):35.6質量部、2-エチルヘキシルアシッドホスフェート(JP-508):0.01質量部を混合して120℃で4時間撹拌し、ウレタン化反応を行った。反応液を80℃まで冷却し、ブロック剤として3,5-ジメチルピラゾール:46.0質量部を添加、撹拌した。赤外スペクトルでイソシアネート基の特性吸収がなくなったことを確認し、イオン交換水:272.4質量部を添加、撹拌し、ブロックポリイソシアネート組成物PB-3を得た。得られたブロックポリイソシアネート組成物PB-3の物性を表3に示す。
【0202】
[合成例3-23]
(ブロックポリイソシアネート組成物PB-4の合成)
合成例1-1と同様の反応容器に、ポリイソシアネート化合物P-1:100質量部、2-エチルヘキシルアシッドホスフェート(JP-508):0.01質量部、ポリプロピレングリコール(PP-400):12.9質量部を混合して120℃で4時間撹拌し、ウレタン化反応を行った。反応液を80℃まで冷却し、ブロック剤として3,5-ジメチルピラゾール:44.7質量部を添加、撹拌した。赤外スペクトルでイソシアネート基の特性吸収がなくなったことを確認し、イオン交換水:236.4質量部を添加、撹拌したところ、分散せずに沈降した。
【0203】
[実施例1~19、比較例1~4]
合成例3-1~22、25、26にて合成したブロックポリイソシアネート組成物PA-1~19、PB-1~3を用いて、上記記載の評価方法に従い、各種物性の測定及び評価を行った。評価結果を表1、2及び3に示す。
【0204】
【表1】
【0205】
【表2】
【0206】
【表3】
【産業上の利用可能性】
【0207】
本実施形態のブロックポリイソシアネート組成物によれば、分散性に優れ、水に分散体としての貯蔵安定性に優れる。また、前記ブロックポリイソシアネート組成物を含んだ塗膜は、硬化性と硬度、耐水性に優れる。さらに前記態様のコーティング基材は、前記コーティング組成物を硬化させてなる塗膜を備え、硬度と耐水性に優れる。