IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ セイコーインスツル株式会社の特許一覧

特開2024-124782電気化学セル及び電気化学セルの製造方法
<>
  • 特開-電気化学セル及び電気化学セルの製造方法 図1
  • 特開-電気化学セル及び電気化学セルの製造方法 図2
  • 特開-電気化学セル及び電気化学セルの製造方法 図3
  • 特開-電気化学セル及び電気化学セルの製造方法 図4
  • 特開-電気化学セル及び電気化学セルの製造方法 図5
  • 特開-電気化学セル及び電気化学セルの製造方法 図6
  • 特開-電気化学セル及び電気化学セルの製造方法 図7
  • 特開-電気化学セル及び電気化学セルの製造方法 図8
  • 特開-電気化学セル及び電気化学セルの製造方法 図9
  • 特開-電気化学セル及び電気化学セルの製造方法 図10
  • 特開-電気化学セル及び電気化学セルの製造方法 図11
  • 特開-電気化学セル及び電気化学セルの製造方法 図12
  • 特開-電気化学セル及び電気化学セルの製造方法 図13
  • 特開-電気化学セル及び電気化学セルの製造方法 図14
  • 特開-電気化学セル及び電気化学セルの製造方法 図15
  • 特開-電気化学セル及び電気化学セルの製造方法 図16
  • 特開-電気化学セル及び電気化学セルの製造方法 図17
  • 特開-電気化学セル及び電気化学セルの製造方法 図18
  • 特開-電気化学セル及び電気化学セルの製造方法 図19
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024124782
(43)【公開日】2024-09-13
(54)【発明の名称】電気化学セル及び電気化学セルの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/184 20210101AFI20240906BHJP
   H01M 50/119 20210101ALI20240906BHJP
   H01M 50/109 20210101ALI20240906BHJP
   H01M 50/153 20210101ALI20240906BHJP
   H01M 50/193 20210101ALI20240906BHJP
   H01M 50/169 20210101ALI20240906BHJP
   H01M 50/167 20210101ALI20240906BHJP
   H01G 11/78 20130101ALI20240906BHJP
   H01G 11/84 20130101ALI20240906BHJP
   H01M 50/159 20210101ALI20240906BHJP
   H01M 50/186 20210101ALI20240906BHJP
【FI】
H01M50/184 E
H01M50/119
H01M50/109
H01M50/153
H01M50/193
H01M50/169
H01M50/167
H01G11/78
H01G11/84
H01M50/159
H01M50/186
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023032688
(22)【出願日】2023-03-03
(71)【出願人】
【識別番号】000002325
【氏名又は名称】セイコーインスツル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】玉地 恒昭
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 竜
【テーマコード(参考)】
5E078
5H011
【Fターム(参考)】
5E078AA12
5E078AB01
5E078AB12
5E078HA04
5E078HA12
5E078HA13
5E078HA27
5H011AA01
5H011AA09
5H011BB04
5H011CC06
5H011DD13
5H011DD15
5H011FF02
5H011GG01
5H011HH02
(57)【要約】
【課題】確実な封止性を得ることができるうえ、低コスト化を図ること。
【解決手段】電気化学セル1は、金属製の第1外装部材10と、第1外装部材との間に収容空間4を形成する金属製の第2外装部材11と、を備えた外装体2と、正極電極及び負極電極を有し、収容空間内に収容された電極体20と、を備えている。第1外装部材の外周縁部には水分透過抑制樹脂製の第1封止材12がレーザ溶着されている。第2外装部材の外周縁部には第1封止材と同材質の第2封止材13がレーザ溶着されている。第1外装部材と第2外装部材とは、第1封止材及び第2封止材同士の熱溶着を介して互いに溶着封止されている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製の第1外装部材と、前記第1外装部材との間に収容空間を形成する金属製の第2外装部材と、を備えた外装体と、
正極電極及び負極電極を有し、前記収容空間内に収容された電極体と、を備え、
前記第1外装部材の外周縁部には、全周にわたって水分透過抑制樹脂製の第1封止材がレーザ溶着され、
前記第2外装部材の外周縁部には、全周にわたって前記第1封止材と同材質の第2封止材がレーザ溶着され、
前記第1外装部材と前記第2外装部材とは、前記第1封止材及び前記第2封止材同士の熱溶着を介して互いに溶着封止されていることを特徴とする電気化学セル。
【請求項2】
請求項1に記載の電気化学セルにおいて、
前記第1外装部材及び前記第2外装部材は、主成分としてCr及びNiを他の成分よりも多く含むオーステナイト系ステンレス鋼によって形成されている、電気化学セル。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の電気化学セルにおいて、
前記第2外装部材の外周縁部の一部は、前記第1外装部材の外周縁部を外側から全周にわたって囲むと共に、前記第1外装部材の外周縁部を前記第2外装部材に対して圧着させる加締め部とされている、電気化学セル。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の電気化学セルにおいて、
前記第1外装部材の外周縁部及び前記第2外装部材の外周縁部には、レーザ痕が形成されている、電気化学セル。
【請求項5】
第1外装部材と、前記第1外装部材との間に収容空間を形成する第2外装部材と、を備えた外装体と、
正極電極及び負極電極を有し、前記収容空間内に収容された電極体と、備えた電気化学セルの製造方法であって、
前記第1外装部材の外周縁部に、全周にわたって水分透過抑制樹脂製の第1封止材をレーザ溶着によって予め固着する工程と、
前記第2外装部材の外周縁部に、全周にわたって前記第1封止材と同材質の第2封止材をレーザ溶着によって予め固着する工程と、
前記収容空間内に前記電極体を収容した状態で、前記第1外装部材と前記第2外装部材とを組み合わせる工程と、
前記第1封止材及び前記第2封止材同士を熱溶着させることで、前記第1外装部材と前記第2外装部材とを互いに溶着封止する工程と、を備えていることを特徴とする電気化学セルの製造方法。
【請求項6】
請求項5に記載の電気化学セルの製造方法において、
前記第1外装部材と前記第2外装部材とを互いに溶着封止した後、前記第2外装部材の外周縁部の一部を、前記第1外装部材の外周縁部を外側から全周にわたって囲むように折り曲げ加工すると共に、前記第1外装部材の外周縁部を前記第2外装部材に対して圧着する加締め工程を備えている、電気化学セルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気化学セル及び電気化学セルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から腕時計、スマートウオッチ、スマートフォン、ヘッドセット、補聴器等の小型電子機器やウエアラブル機器用の電源として、リチウムイオン二次電池、電気化学キャパシタ等の電気化学セルが広く活用されている。
近年、この種の電気化学セルへのニーズとして、小型化及び薄型化に対する要求がさらに強くなっている。その一因としては、電気化学セルが実装される各種電子機器におけるIC(集積回路)の極微細化及び低消費電力化による高性能化に伴って、従来にはないハイスペックな機能を具備する電子機器が提案され始めているからである。
【0003】
この種の電気化学セルでは、電極体を内部に収容する外装体として、例えば金属ケースを利用したものや、ラミネートフィルムを利用したもの等が知られている。
金属ケースとしては、例えば有底筒状の金属製のケース本体と、ケース本体の開口部を、樹脂製のガスケットを介してカシメ等によって封止する金属製の封口板とを備え、全体としてコイン形状、ボタン形状、筒形状等に構成される場合が多い。
しかしながら、外装体として金属ケースを利用した場合には、ケース本体と封口板とを加締め等によって封止するため、十分な封止性を得られない場合があるうえ、体積効率が悪くなる傾向にある。なお、体積効率とは、電池全体の体積に対する電極が占める体積の割合、すなわち「電極部分体積/電池全体体積」を言う。
【0004】
これに対して、外装体としてラミネートフィルムを利用する場合には、形状自由度を高くすることが可能であるので、電気化学セル自体の小型化及び高容量化等に繋げ易い。しかしながら、一般的に用いられているアルミ層を含むアルミラミネートフィルムを利用した場合、耐久性や封止性(気密性)を維持することが難しい場合がある。
【0005】
例えばアルミラミネートフィルムを、外装体として所定の形状に成形する際に、折曲部分に応力が局所的に集中することで、アルミ層に達する程度のピンホールが生じる可能性がある。或いは、折曲部分に作用するストレス等によって、アルミ層に何らかの欠陥が生じる可能性もある。
このような状況の下、ピンホールや欠陥を通じて外気中の湿気(水分)が電気化学セルの内部まで浸透或いは拡散した場合、湿気によって電解液や支持塩が分解して、電池機能を低下させるおそれがある。さらには電解液の分解成分等によってアルミ層が腐食するおそれもある。さらにはアルミ層と電解液とが接触することで、電気化学反応に起因する腐食を招くおそれもある。
【0006】
このようなことから、長期にわたって高信頼性を有する電気化学セルとする場合には、アルミラミネートフィルムを利用した外装体については課題が残されている。従って、例えばステンレス等の耐食性に優れた部材を利用して外装体を形成することが考えられる。
【0007】
例えば下記特許文献1には、ステンレス製の第1外装部材及び第2外装部材の間に発電要素が収納され、第1外装部材及び第2外装部材の外周縁部同士の間に設けられた樹脂によって、第1外装部材と第2外装部材とが絶縁されている薄型電池が開示されている。
樹脂としては、接着機能及び封止機能を同時に得るために、接着用の第1樹脂及び水分透過抑制用の第2樹脂を備えている。第1樹脂としては、エポキシ樹脂やアクリル樹脂等が用いられている。第2樹脂としては、PFA等の水分透過抑制機能が優れた樹脂が用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2012-15004号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記従来の薄型電池では、材質の異なる複数の樹脂(第1樹脂及び第2樹脂)を利用する必要があるので、コスト増に繋がり、改善の余地がある。
【0010】
本発明は、このような事情に考慮してなされたもので、その目的は、確実な封止性を得ることができるうえ、低コスト化を図ることもできる電気化学セル、及び電気化学セルの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(1)本発明に係る電気化学セルは、金属製の第1外装部材と、前記第1外装部材との間に収容空間を形成する金属製の第2外装部材と、を備えた外装体と、正極電極及び負極電極を有し、前記収容空間内に収容された電極体と、を備えている。前記第1外装部材の外周縁部には、全周にわたって水分透過抑制樹脂製の第1封止材がレーザ溶着されている。前記第2外装部材の外周縁部には、全周にわたって前記第1封止材と同材質の第2封止材がレーザ溶着されている。前記第1外装部材と前記第2外装部材とは、前記第1封止材及び前記第2封止材同士の熱溶着を介して互いに溶着封止されている。
【0012】
本発明に係る電気化学セルによれば、第1外装部材と第2外装部材とが、第1封止材及び第2封止材を介して互いに溶着封止されているので、電極体が収容されている収容空間内を適切に封止することができる。
特に、第1封止材は、第1外装部材の外周縁部に対してレーザ溶着されているので、レーザ溶着時における第1外装部材の局所的な溶融変形、或いは第1外装部材の表面活性化により生じるアンカー効果によって、金属製の第1外装部材と樹脂製の第1封止材とを高い溶着強度で固着することができる。同様に、金属製の第2外装部材と樹脂製の第2封止材とについても、高い溶着強度で固着することができる。そのうえで、同材質の第1封止材及び第2封止材同士を熱溶着しているので、第1外装部材と第2外装部材とを高い封止性を維持した状態で溶着封止することができる。しかも、第1封止材及び第2封止材は、水分透過抑制樹脂であるので、外部からの湿気(水分)の進入等を防止することができ、収容空間内を高い密閉性を維持した状態で封止することができる。
【0013】
これにより、収容空間内を確実に封止することができ、作動信頼性が高い高品質な電気化学セルとすることができる。さらに、同材質の第1封止材及び第2封止材同士を熱溶着するので、従来とは異なり、材質の異なる複数の樹脂を用いる必要がない。従って、低コスト化を図ることができる。
さらに、材質の異なる複数の樹脂を用いる必要がないので、電気化学セル全体に対する樹脂の使用率を抑制することができる。そのため、例えば150℃以上の高温環境下であっても、樹脂の変形等による封止性の低下を抑制することができ、作動信頼性を維持し易い。
【0014】
(2)前記第1外装部材及び前記第2外装部材は、主成分としてCr及びNiを他の成分よりも多く含むオーステナイト系ステンレス鋼によって形成されても良い。
【0015】
この場合には、第1外装部材及び第2外装部材をオーステナイト系ステンレス鋼で形成しているので、耐食性に強く、且つ非磁性の外装体とすることができる。従って、電気化学セルを、高信頼性且つ非磁性が求められる用途に適用することができる。例えば、磁気センサを内蔵した時計、磁気センサを用いた電子コンパス、或いは耳石とそれを内包する器官が有する体内磁気を検出する生体センサ等の電力源として、電気化学セルを好適に適用することができる。
【0016】
(3)前記第2外装部材の外周縁部の一部は、前記第1外装部材の外周縁部を外側から全周にわたって囲むと共に、前記第1外装部材の外周縁部を前記第2外装部材に対して圧着させる加締め部とされても良い。
【0017】
この場合には、第2外装部材の外周縁部の一部を加締め部として機能させ、第1外装部材の外周縁部を第2外装部材に対して機械的に圧着(加締め)させているので、封止性や水分透過抑制機能をさらに向上させることができる。従って、収容空間内をより一層確実に封止することができる。
【0018】
(4)前記第1外装部材の外周縁部及び前記第2外装部材の外周縁部には、レーザ痕が形成されても良い。
【0019】
この場合には、第1外装部材の外周縁部及び第2外装部材の外周縁部に形成されたレーザ痕(例えばレーザビームの照射によって生じる痕)によって、第1外装部材及び第2外装部材に対して第1封止材及び第2封止材が固着していることを容易に認識することができる。従って、収容空間内が確実に封止され、作動信頼性が高い高品質な電気化学セルであることを容易に区別することができる。
【0020】
(5)本発明に係る電気化学セルの製造方法は、第1外装部材と、前記第1外装部材との間に収容空間を形成する第2外装部材と、を備えた外装体と、正極電極及び負極電極を有し、前記収容空間内に収容された電極体と、備えた電気化学セルの製造方法であって、前記第1外装部材の外周縁部に、全周にわたって水分透過抑制樹脂製の第1封止材をレーザ溶着によって予め固着する工程と、前記第2外装部材の外周縁部に、全周にわたって前記第1封止材と同材質の第2封止材をレーザ溶着によって予め固着する工程と、前記収容空間内に前記電極体を収容した状態で、前記第1外装部材と前記第2外装部材とを組み合わせる工程と、前記第1封止材及び前記第2封止材同士を熱溶着させることで、前記第1外装部材と前記第2外装部材とを互いに溶着封止する工程と、を備えている。
【0021】
本発明に係る電気化学セルの製造方法によれば、第1封止材を第1外装部材の外周縁部に対してレーザ溶着することで、レーザ溶着時における第1外装部材の局所的な溶融変形、或いは第1外装部材の表面活性化等により生じるアンカー効果によって、金属製の第1外装部材と樹脂製の第1封止材とを高い溶着強度で予め固着することができる。同様に、金属製の第2外装部材と樹脂製の第2封止材とについても、高い溶着強度で予め固着することができる。
次いで、収容空間内に電極体を収容した状態で第1外装部材と第2外装部材とを組み合わせた後、同材質の第1封止材及び第2封止材同士を熱溶着することで、第1外装部材と第2外装部材とを高い封止性を維持した状態で溶着封止することができる。これにより、電極体が収容されている収容空間内を適切に封止することができる。しかも、第1封止材及び第2封止材は、水分透過抑制樹脂であるので、外部からの湿気(水分)の進入等を防止することができ、収容空間内を高い密閉性を維持した状態で封止することができる。
【0022】
その結果、収容空間内を確実に封止することができ、作動信頼性が高い高品質な電気化学セルとすることができる。さらに、同材質の第1封止材及び第2封止材同士を熱溶着するので、従来とは異なり、材質の異なる複数の樹脂を用いる必要がない。従って、低コスト化を図ることができる。
【0023】
(6)前記第1外装部材と前記第2外装部材とを互いに溶着封止した後、前記第2外装部材の外周縁部の一部を、前記第1外装部材の外周縁部を外側から全周にわたって囲むように折り曲げ加工すると共に、前記第1外装部材の外周縁部を前記第2外装部材に対して圧着する加締め工程を備えても良い。
【0024】
この場合には、第1外装部材と第2外装部材とを互いに溶着封止した後、第2外装部材の外周縁部の一部を折り曲げ加工して、第1外装部材の外周縁部を第2外装部材に対して機械的に圧着(加締め)させている。これにより、第2外装部材の外周縁部の一部を加締め部として機能させることができ、封止性や水分透過抑制機能をさらに向上させることができる。従って、収容空間内をより一層確実に封止することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、確実な封止性を得ることができるうえ、低コスト化を図ることができる電気化学セルを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明に係る二次電池(電気化学セル)の第1実施形態を示す斜視図である。
図2図1に示すA-A線に沿った二次電池の縦断面図である。
図3図2に示す第1外装部材及び第1封止材の縦断面図である。
図4図3に示す加熱領域の周辺を拡大した縦断面図である。
図5図2に示す第2外装部材及び第2封止材の縦断面図である。
図6図2に示す電極体を構成する正極電極、負極電極、セパレータを展開した状態を示す平面図である。
図7図6に示す正極電極及び負極電極を形成するための電極シートの平面図である。
図8図7に示す電極集電体の平面図である。
図9図8に示す電極集電体に複数の凹部を形成した状態を示す平面図である。
図10図9に示す電極集電体に電極活物質層を塗工した状態を示す平面図である。
図11図10に示す電極活物質層をロールプレス成形している状態を示す斜視図である。
図12】電極シートの変形例を示す斜視図である。
図13図12に示すB-B線に沿った電極シートの縦断面図である。
図14図12に示す電極活物質層をロールプレス成形している状態を示す縦断面図である。
図15】ロールプレス成形後の電極シートの斜視図である。
図16】本発明に係る二次電池(電気化学セル)の第2実施形態を示す部分的な縦断面図である。
図17】第2実施形態の変形例を示す二次電池の縦断面図である。
図18】第2実施形態の別の変形例を示す二次電池の縦断面図である。
図19】第1実施形態の変形例を示す二次電池の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
(第1実施形態)
以下、本発明に係る電気化学セルの実施形態について図面を参照して説明する。本実施形態では、電気化学セルとして、非水電解質二次電池の一種であるリチウムイオン二次電池(以下、単に二次電池という。)を例に挙げて説明する。
【0028】
図1及び図2に示すように、本実施形態の二次電池1は、小型且つ超薄型の電池とされ、金属製の外装体2と、外装体2の内部に収容された発電要素3とを備えている。図示の例では、二次電池1は、外形が平面視正方形状に形成されている。
ただし、この場合に限定されるものではなく、二次電池1の外形は適宜変更して構わない。例えば、二次電池1を搭載する各種の電子機器の設置スペースや用途等に応じて、例えば平面視円形状、楕円形状、多角形状、L字形状等、適宜変更して構わない。
【0029】
外装体2は、金属製の第1外装部材10と、第1外装部材10に対して封止され、第1外装部材10との間に収容空間4を形成する金属製の第2外装部材11とを備えている。
発電要素3は、正極電極30(図6参照)及び負極電極40(図6参照)を有する電極体20を備えていると共に、図示しない電解液(電解質溶液)を含んでおり、外装体2の内部に形成された収容空間4内に収容されている。
【0030】
本実施形態では、外装体2の中心を通り上下方向に沿って延びる軸線を電池軸Oという。また、電池軸O方向から見た平面視で、電池軸Oに交差する方向を径方向といい、電池軸O回りに周回する方向を周方向という。さらに、電池軸Oに沿って、第2外装部材11から第1外装部材10に向かう方向を上方といい、その反対を下方という。
【0031】
(外装体)
外装体2について詳細に説明する。
図1及び図2に示すように、第1外装部材10は、厚みの薄いシート状に形成されていると共に、平面視正方形状に形成されている。第1外装部材10は、第2外装部材11及び電極体20よりも上方に配置されている。第1外装部材10の厚みとしては、例えば0.01mm~0.30mm程度とされている。
ただし、各図面では、第1外装部材10を見易くするために第1外装部材10の厚みを誇張して図示している。第1外装部材10は、電極体20に導通する正極用の外部接続端子、或いは負極用の外部接続端子として機能する。
【0032】
第1外装部材10の具体的な金属材質としては、第1外装部材10を正極用の外部接続端子として機能させる、或いは負極用の外部接続端子として機能させるかによっても異なるが、例えばステンレス鋼が好適に用いられる。ただし、第1外装部材10の材質としては、ステンレス鋼に限定されるものではなく、その他の金属材料やクラッド材等を採用しても構わない。
【0033】
ステンレス鋼としては、例えばSUS430やSUS444といったフェライト系ステンレス鋼、SUS329J4Lといったオーステナイト・フェライト二相ステンレス鋼、SUS201、SUS202、SUS303、SUS304、SUS305、SUS316、SUS317、SUS321、SUS347といった各種のオーステナイト系ステンレス鋼を挙げることができる。
【0034】
特に本実施形態の二次電池1を、例えば磁気センサを内蔵した時計、磁気センサを用いた電子コンパス、或いは耳石とそれを内包する器官が有する体内磁気を検出する生体センサ等の用途に用いる場合、第1外装部材10の金属材料としては耐食性に強く、且つ非磁性であることが好ましい。この場合には、第1外装部材10としては、主成分としてCr及びNiを他の成分よりも多く含むオーステナイト系ステンレス鋼を採用することが好ましい。なお、この場合、例えばUNS規格(ユニファイド・ナンバリング・システム)で例を挙げると、UNS S32053、UNS N08354等のいわゆる高耐食スーパーステンレス鋼等を採用しても構わない。
【0035】
図1及び図2に示すように、第2外装部材11は、第1外装部材10と同様に厚みの薄いシート状に形成されていると共に、平面視正方形状に形成されている。第2外装部材11は、電極体20を間に挟んだ状態で第1外装部材10の下方に配置されている。第2外装部材11の厚みとしては、第1外装部材10と同程度とされている。また各図面では、第2外装部材11についても厚みを誇張して図示している。
【0036】
第2外部材は、電極体20に導通する正極用の外部接続端子、或いは負極用の外部接続端子として機能する。第2外装部材11の具体的な金属材質としては、第1外装部材10と同種或いは別種の金属材質を採用することができる。ただし、第2外装部材11としては、ステンレス鋼、特にオーステナイト系ステンレス鋼を採用することが好ましい。
【0037】
上述のように構成された第1外装部材10の外周縁部における下面には、図2及び図3に示すように、周方向に連続して伸びるリング状の第1封止材12が第1外装部材10の全周にわたって固着されている。
第1封止材12は、水分透過抑制樹脂製とされ、例えばPFA樹脂とされている。ただし、この場合に限定されるものではない。PFA樹脂(四フッ化エチレン・パーフルオロアルコキシエチレン共重合樹脂)は、熱可塑性樹脂に分類されると共に、いわゆるフッ素樹脂に含まれる。PFA樹脂は、耐熱性、耐寒性、撥水性、耐薬品性等に優れた特性を有していると共に、特に水分透過抑制に優れた特性を有している。
【0038】
第1封止材12は、第1外装部材10の外周縁部に沿うように、外形が平面視正方形状のリング状に形成されている。そして第1封止材12は、第1外装部材10の下面にレーザ溶着によって固着されている。具体的には、第1外装部材10の上方からレーザビームを照射することで、第1外装部材10の下面と第1封止材12の上面との界面を加熱する。このレーザ加熱によって、第1外装部材10と第1封止材12とをレーザ溶着によって固着している。特に、第1外装部材10及び第1封止材12の全周にわたってレーザビームを照射することで、第1外装部材10と第1封止材12とをレーザ溶着によって全周にわたって固着している。
なお、図2を含む各図面では、レーザビームの照射によって加熱された加熱領域Mを太線で模式的に図示している。
【0039】
レーザ溶着の際、図示しないレーザ照射機を固定した状態で溶着対象ワークである第1外装部材10側を動かしながらレーザ溶着を行う、いわゆるワークムーブ方式で行っても構わないし、溶着対象ワークである第1外装部材10側を固定し、レーザ照射器側を動かしながらレーザ溶着を行う、いわゆるヘッドムーブ方式で行っても構わない。
なお、レーザ照射器としては、例えばファイバーレーザやYAGレーザ等のレーザ照射機を採用しても構わないし、ガルバノスキャニング式レーザ照射器等を採用しても構わない。
【0040】
特に本実施形態では、第1外装部材10の上方からレーザビームを照射しているため、図1及び図4に示すように、第1外装部材10の上面には、レーザ痕15が形成されている。レーザ痕15は、第1外装部材10の全周に亘って連続して形成されている。図4では、レーザ痕15を誇張して図示している。
【0041】
レーザ痕15は、レーザビームの照射によって加熱された加熱領域Mの周囲に形成される熱影響部(HAZ:Heat-Affected Zone)等を含む。熱影響部とは、加熱の影響や酸化等による変質によって、元の組織とは異なる組織(組成)を有する部分(領域)である。
また、図4に示すように、レーザビームの照射によって加熱された加熱領域Mにおいては、第1外装部材10の下面の表面活性化等によってアンカー効果が生じる。これにより、第1外装部材10と第1封止材12とを高い溶着強度で固着することが可能とされている。
【0042】
上述した第1外装部材10と同様に、第2外装部材11の外周縁部における上面には、図2及び図5に示すように、周方向に連続して伸びるリング状の第2封止材13が第2外装部材11の全周にわたって固着されている。
第2封止材13は、第1封止材12と同材質で形成されている。従って、第2封止材13は、PFA樹脂等の水分透過抑制樹脂製とされている。第2封止材13は、第2外装部材11の外周縁部に沿うように、外形が平面視正方形状のリング状に形成されている。
【0043】
そして第2封止材13は、第2外装部材11の上面に対してレーザ溶着によって固着されている。具体的には、第2外装部材11の下方からレーザビームを照射することで、第2外装部材11の上面と第2封止材13の下面との界面をレーザ加熱する。これにより、第2外装部材11と第2封止材13とをレーザ溶着によって、全周にわたって固着している。特に、レーザビームの照射によって加熱された加熱領域Mでは、第2外装部材11の上面の表面活性化等によってアンカー効果が生じる。そのため、第2外装部材11と第2封止材13とを高い溶着強度で固着することが可能とされている。
なお、レーザ溶着の方法は、第1外装部材10と同様である。また、第2外装部材11の下面には、図示しないレーザ痕15が形成されている。
【0044】
図1及び図2に示すように、第1外装部材10と第2外装部材11とは、第1封止材12及び第2封止材13の熱溶着を介して互いに溶着封止されている。第1外装部材10に固着された第1封止材12と、第2外装部材11に固着された第2封止材13とは、互いに同材質であるので、熱溶着によって互いの界面が溶融して強固に密着している。これにより、第1外装部材10と第2外装部材11とは、全周にわたって互いに溶融し合いながら一体化されている。なお、図2では図面を見易くするために、第1封止材12及び第2封止材13を区別して図示している。実際には、第1封止材12と第2封止材13とは互いに溶融し合って、一つのまとまった樹脂として存在している。
なお、熱溶着の方法については後に詳細に説明する。
【0045】
(発電要素)
図2に示す発電要素3は、電極体20及び図示しない電解液を含み、外装体2内部の収容空間4内に密封状態で収容されている。なお、図2では電極体20の図示を簡略化している。
電解液としては、例えば支持塩を非プロトン性の非水溶媒に溶解させた液体を好適に用いることが可能である。支持塩としては、例えばフルオロリン酸リチウム(LiPF6)等を用いることができる。溶媒としては、例えばエチレンカーボネート(EC)と共に低沸点溶媒を用いることができる。
【0046】
ただし、電解液に代えて、例えば固体電解質、ポリマー電解質、ゲル電解質等の電解質を利用しても構わない。ポリマー電解質としては例えば、ポリエチレンオキサイド(PEO)やポリプロピレンオキサイド(PPO)やそれら含むブレンドポリマー、ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステル、ポリシロキサン、ポリフォスファゼン等を挙げることができる。また、電解液にポリ(ビニリデンフルオリド-co-ヘキサフルオロプロピレン、PVdF-HFP)を含有したゲル電解質を用いても良い。
【0047】
(電極体)
図6に示すように電極体20は、正極電極30、負極電極40、及び正極電極30と負極電極40との間に配置されたセパレータ50を備えている。
電極体20は、正極電極30と負極電極40との間にセパレータ50を挟み込んだ状態で、例えば捲回や積層等することで薄型に形成されている。電極体20の捲回方法や積層方法等については、特に限定されるものではない。
【0048】
(電極シート)
正極電極30及び負極電極40は、図7に示す電極シート80から形成されている。そこで、電極シート80について詳細に説明する。
図7に示すように、電極シート80は、帯状に形成された電極集電体81と、電極集電体81の主面上に塗工された電極活物質層82と、を備えている。電極活物質層82は、電極集電体81に片面塗工されている。
【0049】
図7及び図8に示すように、電極集電体81は、第1方向L1に沿って長く、且つ平面視で第1方向L1に交差する第2方向L2に沿って短く形成された帯状に形成されている。電極集電体81は、各種の金属材料で厚みの薄いシート状(金属箔)に形成されている。電極集電体81の厚みとしては、例えば数μm~10数μm程度とされている。
さらに、集電箔である電極集電体81は、一般的にプレーン箔と呼ばれる平滑な金属箔の他、例えば電解析出によって製造した際に生じた凸凹を有する粗面の箔、エッチングによって表面を粗面化した箔、凸凹のロールで表面をエンボス加工によって粗面化した箔を用いることが好ましい。さらに、ロール以外の上下駆動のパンチによって表面の粗面化を含む修飾を電極集電体81に施しても良い。
【0050】
電極集電体81の主面は、長手方向である第1方向L1に沿い、且つ短手方向である第2方向L2の中央に位置する塗工領域R1と、第1方向L1に沿い、且つ塗工領域R1を間にして第2方向L2の両側に位置する未塗工領域R2と、を備えている。従って、未塗工領域R2は、電極集電体81における短手方向の両側に位置して、長手方向に沿うように延びている。
【0051】
図7及び図9に示すように電極集電体81の未塗工領域R2には、少なくとも第1方向L1に沿って間隔をあけて並ぶように配置された複数の凹部83が形成されている。
具体的に複数の凹部83は、電極集電体81の主面側に開口するように形成されていると共に、電極集電体81の厚み方向に非貫通となる深さで形成されている。各凹部83は、第2方向L2に沿ったスリット状に形成されている。さらに複数の凹部83は、第2方向L2に沿って間隔をあけて並んだ状態で、第1方向L1に沿って間隔をあけて並ぶように配置されている。この際、第1方向L1に沿って隣り合う凹部83同士は、第2方向L2に位置がずれるように配置されている。
従って、スリット状に形成された複数の凹部83は、第1方向L1に沿って交互に配置(いわゆる千鳥状に配置)されている。
【0052】
図7及び図10に示すように、電極活物質層82は、電極集電体81の主面上における塗工領域R1に形成されている。電極活物質層82は、該電極活物質層82を形成するための構成材料を含む塗布液(スラリー)を電極集電体81に塗布した後、所定温度、所定時間等で乾燥させることにより形成される。
この際、電極活物質層82は、図11に示すように電極集電体81の主面上に所定の厚みを有するように形成される。なお、図11では、電極集電体81及び電極活物質層82を模式的に図示している。また複数の凹部83の図示を省略していると共に、電極集電体81の厚みを誇張して図示している。
【0053】
電極集電体81の主面上に形成された電極活物質層82は、第1方向L1に沿ってロールプレス成形されることで、全体的に圧縮されて厚みが薄くなると共に、第1方向L1に伸びた状態となる。これにより、電極シート80の全体は、第1方向L1に伸びた状態となり、図10に示す状態から図7に示す状態に移行する。さらに、電極活物質層82はロールプレス成形によって密度が高まった状態となる。
ロールプレス成形を含めた電極シート80の製造方法については、後に詳細に説明する。
【0054】
そして図7に示す電極シート80は、第1切断線K1に沿って第1方向L1に切断加工されることで、複数の小分けされた電極シート80となる(以下、小片電極シート80aと称する)。さらに複数の小片電極シート80aのそれぞれについて、第2切断線K2に沿って一方の未塗工領域R2(複数の凹部83を含む)を切断加工する。
これにより、小片電極シート80aを図6に示す正極電極30及び負極電極40とすることができる。なお、本実施形態では、小片電極シート80aの長手方向に沿って間隔をあけながら一定幅Hで、電極活物質層82を部分的に除去する。これにより、電極集電体81の主面上に、複数の電極活物質層82が間隔をあけて形成された正極電極30及び負極電極40とすることができる。
【0055】
(正極電極)
上述した電極シート80を利用して正極電極30とする場合には、電極集電体81が正極集電体として機能し、電極活物質層82が正極活物質層として機能する。
【0056】
正極集電体として機能させる場合、電極集電体81は、例えばアルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス等の金属材料で形成される。さらに電極集電体81における未塗工領域R2(複数の凹部83を含む)の部分は、正極端子タブ31として機能する。
【0057】
さらに正極活物質層として機能させる場合、電極活物質層82の形成材料として、正極活物質に加え、導電助剤(例えば、カーボンブラックやグラファイト等)、バインダ(例えば、ポリフッ化ビニリデン等)、溶剤(例えばN-メチルピロリドン等の任意の溶媒)を混合して正極用スラリー(塗布液)を作製することができる。
この正極用スラリーを正極集電体(電極集電体81)に塗布し、乾燥させることにより正極活物質層を形成できる。
なお、正極活物質としては、例えばニッケル-マンガン-コバルト酸リチウム(NMC)、ニッケル-コバルト-アルミ酸リチウム(NCA)、チタン酸リチウム(LTO)、マンガン酸リチウム(LMO)等のように、リチウムと遷移金属とを含む複合酸化物が挙げられる。
【0058】
(負極電極)
電極シート80を利用して負極電極40とする場合には、電極集電体81が負極集電体として機能し、電極活物質層82が負極活物質層として機能する。
【0059】
負極集電体として機能させる場合、電極集電体81は、例えば銅、銅合金、ニッケル及びステンレス等の金属材料で形成される。さらに電極集電体81における未塗工領域R2(複数の凹部83を含む)の部分は、負極端子タブ41として機能する。
【0060】
さらに負極活物質層として機能させる場合、電極活物質層82の形成材料として、負極活物質に加え、導電助剤(例えば、カーボンブラックやグラファイト等)、バインダ(例えば、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)のディスパージョン等)、増粘剤(例えば、セルロースナノファイバー(CNF:Cellulose Nano Fiber)、カルボキシメチルセルロース(CMC)等)、溶剤(例えば、純水等の任意の溶媒)を混合して負極用スラリー(塗布液)を作製することができる。
この負極用スラリーを負極集電体(電極集電体81)に塗布し、乾燥させることにより負極活物質層を形成することができる。
なお、負極活物質としては、例えばシリコン、シリコン酸化物、グラファイト(ニードルコークスやMCMBを含む)、ハードカーボン、チタン酸リチウム(LTO)、LiAl等の単体又は混合物等が挙げられる。
【0061】
上述のように構成された正極電極30及び負極電極40は、図6に示すようにセパレータ50を挟んだ状態で捲回、積層等されることで電極体20を構成する。
なお、セパレータ50は、例えばポリオレフィン等の樹脂製のマイクロポーラスフィルムや、ガラス製若しくは樹脂製の不織布、セルロース繊維等の繊維の積層体等により形成され、図示しないイオン透過孔を通じてリチウムイオンを通過させることが可能とされている。さらにセパレータ50として、例えば空孔内に電解液を保持できる多孔質体や、リチウムイオン導電性を有する樹脂層等を採用できる。
さらにセパレータ50は、上述のようにポリオレフィン等の素材のマイクロポーラスフィルムを用いることが出来るが、レーザによる伝熱の影響を避けるため、マイクロポーラス以外に不織布を用いることや、耐熱性を有する素材であることが好ましい。例えばセパレータ50として、ポリアミド、セルロース、ガラス繊維等を用いることができる。
【0062】
さらに、電解液を保持する目的で、無機材料の微粒子を添加し、電解液と混合した状態で使用することができる。保液性微粒子としては、例えば酸化アルミニウム、水酸化アルミナ(ベーマイト等)、酸化チタン(ルチル、アナターゼ、ブルッカイト)、二酸化ケイ素、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、二酸化ジルコニウム、五酸化ニオブを単体あるいは混合物として用いることができる。これらの保液性微粒子の平均粒径(D50)としては、例えば100μm以下が好ましく、より好ましくは5nm以上1μm以下が好ましい。
電解液と混合した微粒子は、塗料として正極電極30或いは負極電極40に塗布し、塗膜とすることでセパレータ50として用いることができる。また、上述のマイクロポーラスフィルム等からなるセパレータ50と合わせて用いることで、セパレータ50を補強することができる。
【0063】
電極体20は、正極電極30及び負極電極40のうちの一方の電極が第1外装部材10に導通(電気的接続)し、他方の電極が第2外装部材11に導通(電気的接続)した状態で、外装体2の内部に収容される。なお、電気的接続とは、例えば炭素系材料を介した接触、金属同士の溶接、或いは金属同士の接触等が挙げられる。
これにより、第1外装部材10及び第2外装部材11を、正極用及び負極用の外部接続端子として機能させることができる。
【0064】
なお、正極電極30を第1外装部材10又は第2外装部材11に導通させる場合には、例えば正極端子タブ31を、直接的又は間接的に第1外装部材10又は第2外装部材11に電気的接続させても構わない。同様に負極電極40を第1外装部材10又は第2外装部材11に導通させる場合には、例えば負極端子タブ41を、直接的又は間接的に第1外装部材10又は第2外装部材11に電気的接続させても構わない。
【0065】
(二次電池の作用)
上述のように構成された二次電池1によれば、図1及び図2に示すように、正極用及び負極用の外部接続端子として機能する第1外装部材10及び第2外装部材11が外部に露出している。従って、第1外装部材10及び第2外装部材11を通じて外部と電気的接続することができ、二次電池1を使用することが可能となる。
【0066】
特に本実施形態の二次電池1では、第1外装部材10と第2外装部材11とが、第1封止材12及び第2封止材13を介して互いに溶着封止されているので、電極体20が収容されている収容空間4内を適切に封止することができる。
しかも、第1封止材12は、第1外装部材10の外周縁部に対してレーザ溶着されているので、レーザ溶着時における第1外装部材10の局所的な溶融変形、或いは第1外装部材10の表面活性化により生じるアンカー効果(図4参照)によって、金属製の第1外装部材10と樹脂製の第1封止材12とを高い溶着強度で固着することができる。同様に、金属製の第2外装部材11と樹脂製の第2封止材13とについても、高い溶着強度で固着することができる。
【0067】
そのうえで、同材質の第1封止材12及び第2封止材13同士を熱溶着しているので、第1外装部材10と第2外装部材11とを高い封止性を維持した状態で溶着封止することができる。しかも、第1封止材12及び第2封止材13は、PFA等の水分透過抑制樹脂であるので、外部からの湿気(水分)の進入等を防止することができ、収容空間4内を高い密閉性を維持した状態で封止することができる。
【0068】
これにより、収容空間4内を確実に封止することができ、作動信頼性が高い高品質な二次電池1とすることができる。さらに、同材質の第1封止材12及び第2封止材13同士を熱溶着するので、従来とは異なり、材質の異なる複数の樹脂を用いる必要がない。従って、低コスト化を図ることができる。
【0069】
以上説明したように、本実施形態の二次電池1によれば、確実な封止性を得ることができるうえ、低コスト化を図ることができる。さらに、材質の異なる複数の樹脂を用いる必要がないので、二次電池1に対する樹脂の使用率を抑制することができる。そのため、例えば150℃以上の高温環境下であっても、樹脂の変形等による封止性の低下を抑制することができ、作動信頼性を維持し易い。
【0070】
さらに第1外装部材10及び第2外装部材11をオーステナイト系ステンレス鋼で形成した場合には、耐食性に強く、且つ非磁性の外装体2とすることができる。従って、二次電池1を、高信頼性且つ非磁性が求められる用途に適用することができ、例えば磁気センサを内蔵した時計、磁気センサを用いた電子コンパス、或いは耳石とそれを内包する器官が有する体内磁気を検出する生体センサ等の電力源として好適に適用することができる。
【0071】
さらに、第1外装部材10の外周縁部及び第2外装部材11の外周縁部に形成されたレーザ痕15によって、第1外装部材10及び第2外装部材11に対して第1封止材12及び第2封止材13が固着していることを容易に認識することができる。従って、収容空間4内が確実に封止され、作動信頼性が高い高品質な二次電池1であることを容易に区別することができる。
【0072】
さらに本実施形態の二次電池1の電極体20は、図7に示す電極シート80を利用して正極電極30及び負極電極40が形成されている。
電極シート80では、電極集電体81の主面のうち塗工領域R1に電極活物質層82が形成され、未塗工領域R2に複数の凹部83が形成されている。そして複数の凹部83は、電極集電体81の長手方向である第1方向L1に沿って間隔をあけて並ぶように形成されている。
従って、電極シート80を製造するにあたって、電極集電体81の主面上に塗工された電極活物質層82を第1方向L1に沿ってロールプレス成形した際、電極集電体81と電極活物質層82との伸び率の違いがあったとしても、伸び率の違いに起因する伸びの差分を、複数の凹部83を利用して吸収することができる。
【0073】
例えばロールプレス成形した場合、第1方向L1に伸び難い電極集電体81に対して、電極活物質層82を押潰しながら第1方向L1に伸ばすことができる。そのため、電極活物質層82の伸びに引っ張られて電極集電体81の塗工領域R1が強制的に伸びようとするので、塗工領域R1と未塗工領域R2との間に伸びの差分が生じ易い。このとき、未塗工領域R2に第1方向L1に沿って複数の凹部83が配置されているので、各凹部83のそれぞれを第1方向L1に拡径するように広げることができる、さらには、第1方向L1に隣り合う凹部83同士の間隔を広げることができる。そのため、各凹部83の拡径等を利用して電極集電体81の未塗工領域R2についても、塗工領域R1や電極集電体81の伸びに追従するように第1方向L1に伸ばすことができる。具体的には、図10に示す第1切断線K1同士の間隔H1よりも、図7に示す第1切断線K1同士の間隔H2が大きくなるように、電極シート80を第1方向L1に伸ばすことができる。
【0074】
従って、上記伸びの差分を吸収(緩和)することができるので、電極集電体81に反りや皺が発生することを抑制することができる。その結果、反りや皺の発生が抑制された薄型の電極シート80とすることができる。またロールプレス成形によって、電極活物質層82の密度を高めることができるので、優れた充放電特性に繋がる電極シート80とすることができる。
【0075】
そして、電極シート80を利用して正極電極30及び負極電極40を形成しているので、捲回や積層等を行い易く、反りや皺の発生が抑制された薄型の正極電極30及び負極電極40とすることができる。従って、これら正極電極30及び負極電極40を含む電極体20についても薄型に形成することができると共に、優れた充放電特性を具備する電極体20とすることができる。
その結果、図1及び図2に示すように、二次電池1の全体の厚みを抑制することができ、非常に薄型の二次電池1とすることができる。従って、小型且つ超薄型の各種の電子機器に好適に利用することができる。さらに高エネルギー密度化や、急速充電等にも対応した二次電池1とすることができる。
【0076】
さらに本実施形態の電極シート80では、図7に示すように複数の凹部83が、電極集電体81の主面側に開口するように形成されていると共に、第2方向L2に沿って間隔をあけて並んだ状態で第1方向L1に沿って間隔をあけて並ぶように配置されている。さらに、複数の凹部83は第1方向L1に沿って交互に配置されている。
従って、電極集電体81の未塗工領域R2を第1方向L1に効率良く伸ばすことができ、電極集電体81に反りや皺が発生することをさらに抑制することができる。
【0077】
さらに複数の凹部83は、電極集電体81の厚み方向に非貫通となる深さで形成されている。従って、電極集電体81の主面上に電極活物質層82を形成する際、スラリーが未塗工領域R2に流れたとしても、凹部83内に収容することができる。従って、スラリーを周囲に飛散させることなく、電極活物質層82を形成することができる。
【0078】
(二次電池の製造方法)
次に、第1実施形態の二次電池1の製造方法の一例について以下に簡単に説明する。
はじめに、電極シート80の製造方法について説明する。
この場合は、図8に示す電極集電体81を準備した後、図9に示すように電極集電体81の主面上における未塗工領域R2に複数の凹部83を形成する。本実施形態では、電極集電体81の主面側に開口し、且つ電極集電体81の厚み方向に非貫通となる深さで凹部83を形成する。さらに各凹部83を第2方向L2に沿ったスリット状に形成すると共に、第2方向L2に沿って間隔をあけて並んだ状態で第1方向L1に沿って間隔をあけて並ぶように形成する。さらに、第1方向L1に沿って隣り合う凹部83同士が第2方向L2に位置がずれるように形成することで、複数の凹部83を第1方向L1に沿って交互に配置する。
なお、凹部83の形成方法としては、特に限定されるものではなく、例えば打ち抜きを伴うプレス加工等によって形成しても構わない。
【0079】
次いで、図10に示すように、凹部83が形成された電極集電体81の主面上における塗工領域R1に、スラリーを塗布した後、乾燥させることで電極活物質層82を塗工する。次いで、図11に示すように、第1方向L1に沿って電極活物質層82をロールプレス成形する。
具体的には、電極集電体81の下方に配置した第1ローラ85と、電極活物質層82の上方に配置した第2ローラ86とで、電極シート80を上下から挟み込んだ後、第1ローラ85及び第2ローラ86を回転させながら第1方向L1に沿って移動させる。これにより、電極活物質層82を第1方向L1に沿って押潰すようにロールプレス成形することができる。
【0080】
この際、先に述べたように電極集電体81と電極活物質層82との伸び率の違いがあったとしても、伸び率の違いに起因する伸びの差分を、複数の凹部83を利用して吸収(緩和)することができる。従って、電極集電体81に反りや皺が発生することを抑制することができる。
その結果、反りや皺の発生が抑制された薄型の電極シート80を製造することができる。またロールプレス成形によって、電極活物質層82の密度を高めることができるので、優れた充放電特性に繋がる電極シート80とすることができる。
【0081】
次いで、電極シート80を製造した後、図7に示すよう第1切断線K1に沿って切断加工して小片電極シート80aに小分けした後、第2切断線K2に沿って一方の未塗工領域R2を切断加工する。さらに、小片電極シート80aにおいて、一定幅Hで電極活物質層82を部分的に除去する。
これにより、図6に示すように、電極集電体81の主面上に、複数の電極活物質層82が間隔をあけて形成された正極電極30及び負極電極40を得ることができる。
【0082】
次いで、上述のように製造された正極電極30及び負極電極40を、間にセパレータ50を挟んだ状態で捲回、積層等することで電極体20を製造する。
また、電極体20の製造と同時、或いは前後して、図3に示すように第1外装部材10の外周縁部に全周にわたってPFA等の第1封止材12をレーザ溶着によって予め固着する工程と、図5に示すように、第2外装部材11の外周縁部に全周にわたってPFA等の第2封止材13をレーザ溶着によって予め固着する工程を行う。
【0083】
特に、第1封止材12を第1外装部材10の外周縁部に対してレーザ溶着することで、レーザ溶着時における第1外装部材10の局所的な溶融変形、或いは第1外装部材10の表面活性化により生じるアンカー効果によって、金属製の第1外装部材10と樹脂製の第1封止材12とを高い溶着強度で予め固着することができる。同様に、金属製の第2外装部材11と樹脂製の第2封止材13とについても、高い溶着強度で予め固着することができる。
【0084】
次いで、収容空間4内に電極体20を収容した状態で、第1外装部材10と第2外装部材11とを組み合わせる。この際、第1封止材12及び第2封止材13が互いに面接触した状態で重なり合うように、第1外装部材10と第2外装部材11とを組み合わせると共に、収容空間4内に電解液を注液する。
次いで、同材質である第1封止材12及び第2封止材13同士を熱溶着することで、第1外装部材10と第2外装部材11とを高い封止性を維持した状態で溶着封止する。
【0085】
なお、熱溶着の方法としては、特に限定されるものではない。
例えば、ヒーターによる加熱のほか、レーザビームの照射による加熱、高周波を利用した誘導加熱といった方法を採用しても構わない。これらの方法を用いることで、ヒーターを用いて加熱する場合に比べて、より短時間で、且つ局所的、選択的に加熱を行うことができ、効率的に熱溶着を行うことができる。
【0086】
レーザビームの照射の場合、例えばファイバーレーザやYAGレーザ等のレーザ照射機を用いることができる。レーザビームの照射径は、数十μm程度であり、これを連続的或いはパルスとして線形に照射することができる。従って、第1封止材12と第2封止材13とが重なりあう領域において、レーザビームを照射することで、第1封止材12と第2封止材13とをリング状に熱溶着することができる。
【0087】
誘導加熱を行う場合には、電磁波を上方から照射することで、レーザビームの照射と同様に、第1封止材12と第2封止材13とが接触する界面部分のみが局所的に溶融して密着する。
なお、誘導加熱には、例えば超長波(VLF)~センチメートル波(SHF)の周波数帯の電磁波を利用することができる。具体的には、例えば300MHz~30GHzの周波数帯のいわゆるマイクロ波を用いることができる。特に、周波数が2.45GHz帯のマグネトロンを用いた発振器を用いることで、照射装置を安価に構成することができる。
さらに、コイル式の装置を用いて、10~500kHzの周波数帯、特に電磁誘導加熱式調理器に用いられる20~100kHzの周波数帯の電磁波を照射することも好適である。
【0088】
さらに、予め第1封止材12及び第2封止材13の接触面にそれぞれ表面処理を施すことで、第1封止材12と第2封止材13との密着性を向上させることができる。具体的には例えば、電子線照射等を用いて金属表面の酸化被膜を除去する等して、清浄な面とすることができる。さらに電子線照射やオゾン酸化といった手法を用いて、樹脂表面を改質し性状を整えることができる。
【0089】
上述のように、第1封止材12及び第2封止材13同士を熱溶着することで、第1外装部材10と第2外装部材11とを高い封止性を維持した状態で溶着封止することで、電極体20が収容されている収容空間4内を適切に封止することができる。その結果、図1及び図2に示す二次電池1を得ることができる。
【0090】
(第1実施形態の変形例)
【0091】
第1実施形態では、図7に示すように、電極集電体81の未塗工領域R2に、第1方向L1に沿って交互(千鳥状)に複数の凹部83を形成した場合を例に挙げて説明したが、複数の凹部83の配置パターンはこの場合に限定されるものではない。複数の凹部83の配置としては、少なくとも第1方向L1に沿って間隔をあけて並ぶように配置されていれば良い。
【0092】
例えば図12及び図13に示すように、電極シート80の主面上における未塗工領域R2に、複数の凹部83を第1方向L1に沿って一列に並ぶように間隔をあけて連続的に配置しても構わない。図示の例では、複数の凹部83は電極集電体81の主面側に開口するように形成されていると共に、電極集電体81の厚み方向に非貫通となる深さで形成されている。さらに各凹部83は、第2方向L2に沿ったスリット状に形成されている。
【0093】
この場合であっても、第1実施形態と同様の作用効果を奏功することができる。
例えば図14に示すように、第1ローラ85及び第2ローラ86を利用して電極シート80を上下から挟み込んだ後、第1ローラ85及び第2ローラ86を回転させながら第1方向L1に沿って移動させる。これにより、電極活物質層82を第1方向L1に沿って押潰すようにロールプレス成形することができる。
【0094】
この際、図14に示すように、ロールプレス成形に伴って、各凹部83のそれぞれを第1方向L1に順々に拡径するように広げることができる。そのため、図15に示すように、各凹部83の拡径を利用して電極集電体81の未塗工領域R2についても、塗工領域R1や電極集電体81の伸びに追従するように第1方向L1に伸ばすことができる。
従って、電極集電体81と電極活物質層82との伸び率の違いがあったとしても、伸び率の違いに起因する伸びの差分を、複数の凹部83を利用して吸収(緩和)することができる。そのため、電極集電体81に反りや皺が発生することを抑制することができる。その結果、反りや皺の発生が抑制された薄型の電極シート80を製造することができると共に、ロールプレス成形によって、電極活物質層82の密度を高めることができるので優れた充放電特性に繋がる電極シート80とすることができる。
【0095】
(第2実施形態)
次に、本発明に係る電気化学セルの第2実施形態について図面を参照して説明する。なお、この第2実施形態においては、第1実施形態における構成要素と同一の部分については、同一の符号を付しその説明を省略する。
【0096】
図16に示すように、本実施形態の二次電池(本発明に係る電気化学セル)100は、第1外装部材10の形状が第1実施形態と異なっている。
本実施形態の第1外装部材10は、第2外装部材11に対して電極体20を挟んで電池軸O方向に向かい合うように配置された頂壁部10aと、頂壁部10aの外周縁部の全周にわたって連設され、頂壁部10aから下方に向かうにしたがって径方向の外側に伸びた環状の傾斜壁部10bと、傾斜壁部10bの下端部に全周にわたって連設され、径方向の外側に向けて延びた環状の外周縁部10cと、を備えた有頂筒状に形成されている。
【0097】
外周縁部10cは、第1外装部材10全体の外周縁部として機能する。外周縁部10cには、第1封止材12がレーザ溶着によって固着されている。なお、図示の例では、外周縁部10cと第1封止材12とは、レーザビームの照射によって加熱された2箇所の加熱領域Mによって、全周にわたってレーザ溶着されている。同様に、第2外装部材11の外周縁部10cと第2封止材13とは、レーザビームの照射によって加熱された2箇所の加熱領域Mによって、全周にわたってレーザ溶着されている。
そして、第1外装部材10と第2外装部材11とは、第1封止材12及び第2封止材13の熱溶着を介して互いに溶着封止されている。
【0098】
(二次電池の作用)
このように構成された本実施形態の二次電池100であっても、第1実施形態と同様の作用効果を奏功することができる。特に、第1実施形態よりも電極体20の厚みが生じたとしても、第1外装部材10が有頂筒状に形成されているため、収容空間4内を高い気密封止性で封止することができる。
【0099】
(第2実施形態の変形例)
上記第2実施形態において、例えば図17に示すように、第2外装部材11の外周縁部の一部を上方に向けて折り曲げ加工することで、加締め部120として機能させた二次電池(本発明に係る電気化学セル)110としても構わない。
【0100】
この場合の第2外装部材11の外周縁部は、上記折り曲げ加工前の段階では、第1外装部材10における外周縁部10cよりも径方向の外側に突出するように形成されている。そして第1外装部材10と第2外装部材11とを、第1封止材12及び第2封止材13の熱溶着を介して互いに溶着封止させた後、第2外装部材11の外周縁部のうち第1外装部材10の外周縁部10cよりも径方向の外側に突出している部分を、上方に向けて折り曲げるように折り曲げ加工すると共に、第2外装部材11に対して圧着させる加締め工程を行う。
【0101】
これにより、第2外装部材11の外周縁部のうち第1外装部材10の外周縁部10cよりも径方向の外側に突出している部分を加締め部120として機能させることができる。加締め部120は、第1外装部材10の外周縁部10cを外側から全周にわたって囲むと共に、第1外装部材10の外周縁部10cを第2外装部材11に対して機械的に圧着している。
【0102】
この場合の二次電池110によれば、第2実施形態と同様の作用効果を奏功することができることに加えて、加締め部120を有しているので、封止性や水分透過抑制機能をさらに向上させることができる。従って、収容空間4内をより一層確実に封止することができる。
なお、図示の例では、加締め部120を形成した後、第1外装部材10における外周縁部10cの外周端面と第1封止材12との間に、レーザビームの照射によって加熱された加熱領域Mを形成している。
【0103】
さらに加締め部120を形成する場合、例えば図18に示すように、180度折り返すように折り曲げ加工して、第1外装部材10の外周縁部10cを上方から第2外装部材11に対して機械的に圧着するように加締めても構わない。この場合には、収容空間4内の封止性をさらに効果的に高めることができる。
なお、図示の例では、加締め部120を形成する前後において、第1外装部材10と第1封止材12との間、及び第2外装部材11と第2封止材13との間を、レーザビームの照射によって適宜加熱して加熱領域Mを形成している。
【0104】
以上、本発明の実施形態を説明したが、これらの実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。実施形態は、その他様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。実施形態やその変形例には、例えば当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、均等の範囲のものなどが含まれる。
【0105】
例えば、上記各実施形態において、第1外装部材及び第2外装部材の形状は適宜変更して構わない。さらに上記各実施形態において、電極シートに形成する凹部の形状は、スリット状に限定されるものではなく、適宜変更して構わない。さらに凹部としては、電極集電体の主面上に形成する場合に限定されるものではなく、電極活物質層が形成される主面とは反対側の面に開口するように形成しても構わない。
さらに電極集電体を貫通するように凹部を形成しても構わない。ただしスラリーを収容できる点において、電極集電体を貫通しないように形成することが好ましい。
【0106】
さらに上記各実施形態において、第1外装部材及び第2外装部材を、電極体に導通する正極用の外部接続端子、負極用の外部接続端子として機能させたが、この場合に限定されるものではない。例えば図19に示すように、正極端子タブ31(電極集電体81における未塗工領域R2(複数の凹部83を含む))を、熱溶着されている第1封止材12及び第2封止材13から外部に引き出して露出させても構わない。この場合、正極端子タブ31を正極用の外部接続端子として利用できるので、第1外装部材10を正極電極30に導通させる必要がない。
ない、正極端子タブ31に代えて、負極端子タブ41を外部に露出させても構わない。
【0107】
さらに上記各実施形態では、電極体と一例として、電極シートによって形成した正極電極及び負極電極を含む場合を例に挙げて説明したが、電極体の構成はこの場合に限定されるものではなく、適宜変更して構わない。
さらに電気化学セルの一例として二次電池を例に挙げて説明したが、この場合に限定されるものではなく、例えば電気二重層キャパシタや、リチウムイオンキャパシタ等の各種蓄電デバイスに適用しても構わない。
【0108】
電気化学セルを電気二重層キャパシタに適用する場合には、正極電極及び負極電極を一対の分極性電極として利用すれば良い。この場合の分極性電極としては、例えば賦活処理にて得られる粉末状の活性炭を、導電助剤やバインダと共に混合し、電極集電体上に塗工したシート電極をロールプレス成形したものが挙げられる。
電解液としては、例えば4級アンモニウム塩等の支持塩を非水溶媒に溶解させたもの等が挙げられる。なお、混合の際に、スラリーを経て、塗工・乾燥後に電極に加工し、使用することもできる。また、バインダとしてはポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を用いて、混錬して成型した板状材料を、集電箔に導電性ペーストで貼り合わせたものを電極として用いることも可能である。
【0109】
電気化学セルをリチウムイオンキャパシタに適用する場合には、正極電極及び負極電極のうちの一方の電極のみを、上述の分極性電極を用い、他方の電極にはリチウムイオン電池用の電極を用いることができる。電解液としては、リチウムイオン電池と同じものを用いることができる。特に、リチウムイオン電池用の電極として、チタン酸リチウム(LTO)を用いることで、電流特性を向上することができる。
【0110】
さらに本発明は、以下の態様を含む。
<1>
金属製の第1外装部材と、前記第1外装部材との間に収容空間を形成する金属製の第2外装部材と、を備えた外装体と、
正極電極及び負極電極を有し、前記収容空間内に収容された電極体と、を備え、
前記第1外装部材の外周縁部には、全周にわたって水分透過抑制樹脂製の第1封止材がレーザ溶着され、
前記第2外装部材の外周縁部には、全周にわたって前記第1封止材と同材質の第2封止材がレーザ溶着され、
前記第1外装部材と前記第2外装部材とは、前記第1封止材及び前記第2封止材同士の熱溶着を介して互いに溶着封止されていることを特徴とする電気化学セル。
<2>
<1>に記載の電気化学セルにおいて、
前記第1外装部材及び前記第2外装部材は、主成分としてCr及びNiを他の成分よりも多く含むオーステナイト系ステンレス鋼によって形成されている、電気化学セル。
<3>
<1>又は<2>に記載の電気化学セルにおいて、
前記第2外装部材の外周縁部の一部は、前記第1外装部材の外周縁部を外側から全周にわたって囲むと共に、前記第1外装部材の外周縁部を前記第2外装部材に対して圧着させる加締め部とされている、電気化学セル。
<4>
<1>から<3>のいずれか一つに記載の電気化学セルにおいて、
前記第1外装部材の外周縁部及び前記第2外装部材の外周縁部には、レーザ痕が形成されている、電気化学セル。
<5>
第1外装部材と、前記第1外装部材との間に収容空間を形成する第2外装部材と、を備えた外装体と、
正極電極及び負極電極を有し、前記収容空間内に収容された電極体と、備えた電気化学セルの製造方法であって、
前記第1外装部材の外周縁部に、全周にわたって水分透過抑制樹脂製の第1封止材をレーザ溶着によって予め固着する工程と、
前記第2外装部材の外周縁部に、全周にわたって前記第1封止材と同材質の第2封止材をレーザ溶着によって予め固着する工程と、
前記収容空間内に前記電極体を収容した状態で、前記第1外装部材と前記第2外装部材とを組み合わせる工程と、
前記第1封止材及び前記第2封止材同士を熱溶着させることで、前記第1外装部材と前記第2外装部材とを互いに溶着封止する工程と、を備えていることを特徴とする電気化学セルの製造方法。
<6>
<5>に記載の電気化学セルの製造方法において、
前記第1外装部材と前記第2外装部材とを互いに溶着封止した後、前記第2外装部材の外周縁部の一部を、前記第1外装部材の外周縁部を外側から全周にわたって囲むように折り曲げ加工すると共に、前記第1外装部材の外周縁部を前記第2外装部材に対して圧着する加締め工程を備えている、電気化学セルの製造方法。
【符号の説明】
【0111】
1、100、110…二次電池(電気化学セル)
2…外装体
4…収容空間
10…第1外装部材
11…第2外装部材
12…第1封止材
13…第2封止材
15…レーザ痕
20…電極体
30…正極電極
40…負極電極
120…加締め部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19