IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ セイコーウオッチ株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-時計 図1
  • 特開-時計 図2
  • 特開-時計 図3
  • 特開-時計 図4
  • 特開-時計 図5
  • 特開-時計 図6
  • 特開-時計 図7
  • 特開-時計 図8
  • 特開-時計 図9
  • 特開-時計 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024124786
(43)【公開日】2024-09-13
(54)【発明の名称】時計
(51)【国際特許分類】
   G04C 3/00 20060101AFI20240906BHJP
【FI】
G04C3/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023032692
(22)【出願日】2023-03-03
(71)【出願人】
【識別番号】502366745
【氏名又は名称】セイコーウオッチ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】奥村 朗人
(72)【発明者】
【氏名】井橋 朋寛
(72)【発明者】
【氏名】中村 征幸
(72)【発明者】
【氏名】及川 亮太
【テーマコード(参考)】
2F101
【Fターム(参考)】
2F101AA00
2F101AB00
2F101AB06
2F101AC01
2F101AC06
2F101AE02
(57)【要約】
【課題】文字板の表示が煩雑になることによるデザイン性の低下を抑制しつつ複数の情報を表示することができる時計を提供する。
【解決手段】時計1は、時刻を示す主針4及び時刻以外の第一情報を示す複数の副針5を備え、時刻を表示する時刻表示モードと、第一情報を表示する多機能モードと、に切り替え可能である。時刻表示モードにおいて、複数の副針5は、通常時に特定の方向を指すとともに、複数の副針5のうち少なくとも2個以上の副針51,52が特定の方向とは異なる同一方向を指すことにより、第一情報とは異なる第二情報を表示する。第二情報は、時計1の電池残量を示す情報である。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
時刻を示す主針及び時刻以外の第一情報を示す複数の副針を備え、
時刻を表示する時刻表示モードと、前記第一情報を表示する多機能モードと、に切り替え可能な時計であって、
前記時刻表示モードにおいて、複数の前記副針は、通常時に特定の方向を指すとともに、複数の前記副針のうち少なくとも2個以上の前記副針が前記特定の方向とは異なる同一方向を指すことにより前記第一情報とは異なる第二情報を表示する
時計。
【請求項2】
前記第一情報は、クロノグラフ計測情報であり、
前記多機能モードは、クロノグラフモードである請求項1に記載の時計。
【請求項3】
前記特定の方向は、前記クロノグラフモードにおけるリセット位置を示す方向である請求項2に記載の時計。
【請求項4】
前記特定の方向は、前記時計の12時方向である請求項1に記載の時計。
【請求項5】
前記第二情報は、前記時計の電池残量を示す情報である請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の時計。
【請求項6】
前記第二情報は、前記時計が機内モードであるか否かを示す情報である請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の時計。
【請求項7】
前記第二情報は、前記時計がパワーセーブモードであるか否かを示す情報である請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の時計。
【請求項8】
前記第二情報は、前記時計がスリープモードであるか否かを示す情報である請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の時計。
【請求項9】
前記第二情報は、ユーザが操作すべき操作ボタンの位置を示す情報である請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の時計。
【請求項10】
前記同一方向を指す複数の副針は、1周あたりのステップ数が互いに異なる請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の時計。
【請求項11】
複数の前記副針を動作させる制御部を有し、
前記制御部は、前記特定の方向とは異なる同一方向を指す複数の前記副針を、互いに異なるタイミングで前記同一方向まで移動させる請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の時計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、時計に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、時刻表示モードと多機能モードとを有するアナログ式多機能時計が知られている。これらの多機能時計では、時刻表示モードにおいて、多機能モード用の副針を用いて多機能モードとは異なる情報を表示する技術が種々提案されている。
【0003】
例えば特許文献1には、時刻を表示する主針及びクロノグラフモード(多機能モード)で使用される副針を有するアナログ式多機能時計において、副針が、通常時刻モードと多機能モードとで互いに異なる情報を表示する構成が開示されている。例えば通常時刻モードにおいて、副針は、日付や曜日等の情報を表示する。特許文献1に記載の技術によれば、これにより従来通常時刻モードで何の役目も果たしていなかった副針を活用できる、とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭62-130376号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の技術にあっては、副針の周囲に、多機能モード用の数値及び通常時刻モードにおける曜日表示用の文字の両方を記載する必要があるため、文字板の表示が煩雑になり易く、デザイン上の景観を損なうおそれがあった。一方、例えば文字板の表示を減らしてデザイン性を優先した場合、情報を表示するために副針の位置が変わったのか、衝撃などにより副針の位置がずれたのかが判別し難く、ユーザが誤認するおそれがあった。
また、多機能時計の付加機能のひとつとして、時計の電池残量を表示するBLD(Battery Low Display)機能が知られている。電池残量が少なくなると、秒針を2秒運針や4秒運針させることで、ユーザに電池残量の低下を知らせる。しかしながら、秒針が無い時計や2秒運針させない構成とする場合には、やはり文字板への表示が必要である。例えば電池残量が十分(Full)又は空(Empty)であることを表示させる「F」や「E」の文字の表示や、その間の目盛の表示等が必要となる。これにより文字板が煩雑になり、デザイン性が低下するおそれがあった。
よって、従来技術にあっては、文字板の表示が煩雑になることによるデザイン性の低下を抑制しつつ複数の情報を表示する点において、改善の余地があった。
【0006】
そこで、本発明は、文字板の表示が煩雑になることによるデザイン性の低下を抑制しつつ複数の情報を表示することができる時計を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明の一つの形態の時計は、時刻を示す主針及び時刻以外の第一情報を示す複数の副針を備え、時刻を表示する時刻表示モードと、前記第一情報を表示する多機能モードと、に切り替え可能な時計であって、前記時刻表示モードにおいて、複数の前記副針は、通常時に特定の方向を指すとともに、複数の前記副針のうち少なくとも2個以上の前記副針が前記特定の方向とは異なる同一方向を指すことにより前記第一情報とは異なる第二情報を表示する。
【0008】
この構成によれば、時刻表示モードと多機能モードとを有する時計において、多機能モードで使用される複数の副針を、時刻表示モードで特定の方向とは異なる同一の方向を指し示すように動作させる。これにより、時刻表示モードにおいて時刻及び多機能モードで表示される第一情報とは別の第二情報をユーザに表示することができる。つまり、従来では時刻表示モードで何の役目も果たしていなかった副針を用いて、複数の情報を表示できる。また、時刻表示モードにおいて副針の向きにより第二情報を表示できるので、例えば従来技術のように副針の周囲に第二情報に関する複数の文字や記号等を配置する必要が無い。よって、従来技術と比較して、文字板への表示を簡素にすることができる。これによりデザイン上の制約が減り、デザイン性を高めることができる。
さらに、第二情報を表示する際、複数の副針のうち少なくとも2個以上の副針が同一方向を指す。これにより、複数の副針のうち1個のみが特定の方向とは異なる方向を指す場合と比較して、ユーザが情報を気づき易くすることができる。すなわち、複数の副針のうち1個のみが特定の方向とは異なる方向を指した場合には、第二情報を表示するために副針の位置が変わったのか、又は衝撃などにより副針の位置が偶然ずれたのかが判別し難く、ユーザが誤認するおそれがある。これに対して、本発明の構成によれば、少なくとも2個以上の副針が同一方向を指すので、時計が第二情報を表示していることをユーザに容易に認識させることができる。よって、デザイン性を損なうことなくユーザに安定的に複数の情報を表示できる。
したがって、文字板の表示が煩雑になることによるデザイン性の低下を抑制しつつ複数の情報を表示することができる時計を提供できる。
【0009】
また、前記時計において、前記第一情報は、クロノグラフ計測情報であり、前記多機能モードは、クロノグラフモードである。
【0010】
この構成によれば、時計は多機能モードとして、定番機能であるクロノグラフモードを有する。クロノグラフモードでは、例えば秒(Second)、分(Minute)及び時(Hour)をそれぞれ表示するために複数(例えば3個)の副針を有している。或いは1秒、1/10秒、1/100秒など、1秒以下の時刻を表示するための複数の副針を有してもよい。クロノグラフモードよりも多くの時間で使用される時刻表示モードでは、これらのクロノグラフモード用の副針は、特定の方向で停止している。時刻表示モードにおいて第二情報を表示する際には、例えば上述した3個の副針のうち複数(例えば2個)の副針を特定の方向とは異なる同一方向を指すように動作させる。これにより第二情報を表示できる。よって、クロノグラフモードを有する時計に本発明の構成を適用することにより、時刻表示モードにおいて従来ほとんど何の役目も果たしていなかった副針を有効に活用して従来よりも多くの情報をユーザに提供することができる。また、クロノグラフモードのように副針の周囲に複数の文字(目盛)を配置する必要がある時計において、第二情報を表示するためのさらなる表示を設ける必要が無いので、文字板の表示が煩雑になることによるデザイン性の低下を抑制できる。
【0011】
また、前記時計において、前記特定の方向は、前記クロノグラフモードにおけるリセット位置を示す方向である。
【0012】
この構成によれば、クロノグラフモードを有する時計が時刻表示モードであるとき、副針は、クロノグラフモードにおけるリセット位置(0秒位置)で停止している。時刻表示モードにおいて第二情報を表示する際には、複数の副針はリセット位置とは異なる同一方向(例えばリセット位置とは反対側を向く方向)を指す。これにより、ユーザは直観的に第二情報が表示されていることを認識し易くなる。よって、ユーザに情報を気づき易くさせることができる。
【0013】
また、前記時計において、前記特定の方向は、前記時計の12時方向である。
【0014】
この構成によれば、時刻表示モードにおいて、通常時に副針は12時方向を指している。第二情報を表示する際には、複数の副針は12時方向とは異なる同一方向(例えば6時方向等)を指す。これにより、ユーザは、通常時(すなわち第二情報を表示していない場合)と時計が第二情報を表示している場合との差異を直観的に認識でき、第二情報が表示されていることを認識し易くなる。よって、ユーザに情報を気づき易くさせることができる。
【0015】
また、前記時計において、前記第二情報は、前記時計の電池残量を示す情報である。
【0016】
この構成によれば、複数の副針が特定の方向とは異なる同一方向を指すことにより、例えば時計の電池残量が所定値以下となったことをユーザに知らせることができる。これにより、ユーザは時計が電池交換のタイミングであることを認識できる。また、副針の方向により電池残量に関する情報を表示できるので、従来技術のように秒針を2秒運針や4秒運針させることなく電池残量に関する情報を表示できる。また、例えば秒針が無い時計であっても電池残量の低下をユーザに表示できる。さらに、文字板に対して電池残量を示す文字の表示や目盛等が不要となる。よって、従来技術と比較して、文字板の表示が煩雑になることを抑制し、これによるデザイン性の低下を抑制できる。
【0017】
また、前記時計において、前記第二情報は、前記時計が機内モードであるか否かを示す情報である。
【0018】
この構成によれば、例えば複数の副針が特定の方向とは異なる同一方向を指すことにより、時計が機内モードであることをユーザに知らせることができる。よって、時計の汎用性を向上できる。また、ユーザが機内モードに設定したことを忘れてしまうのを抑制できる。よって、ユーザの利便性を向上できる。
【0019】
また、前記時計において、前記第二情報は、前記時計がパワーセーブモードであるか否かを示す情報である。
【0020】
この構成によれば、例えば複数の副針が特定の方向とは異なる同一方向を指すことにより、時計がパワーセーブモードであることをユーザに知らせることができる。よって、時計の汎用性を向上できる。また、パワーセーブモードに設定されていることをユーザが忘れたまま時計を使用し続けることを抑制できる。よって、ユーザの利便性を向上できる。
【0021】
また、前記時計において、前記第二情報は、前記時計がスリープモードであるか否かを示す情報である。
【0022】
この構成によれば、例えば複数の副針が特定の方向とは異なる同一方向を指すことにより、時計がスリープモードであることをユーザに知らせることができる。よって、時計の汎用性を向上できる。また、スリープモードに設定されていることをユーザが気付かないまま時計を使用し続けることを抑制できる。よって、ユーザの利便性を向上できる。
【0023】
また、前記時計において、前記第二情報は、ユーザが操作すべき操作ボタンの位置を示す情報である。
【0024】
この構成によれば、例えば竜頭の他に時計の周囲に複数の操作ボタンが設けられる時計において、複数の副針が特定の方向とは異なる同一方向を指すことにより、ユーザが現在どの操作ボタンを操作すべきかをユーザに知らせることができる。例えば、ユーザに操作させたい操作ボタンのある方向を指すことにより、ユーザは複数の操作ボタンの中から、操作すべき操作ボタンを直観的に理解できる。これにより、普段使用しない機能などにおいて、長期間その操作をしてこなかったユーザがどの操作ボタンを操作すればよいか分からなくなった場合であっても、ユーザに操作すべき操作ボタンの位置を示すことができる。よって、特に操作ボタンの多い多機能時計に適用した場合に、時計の汎用性を向上できるとともに、ユーザの操作性を向上できる。
【0025】
また、前記時計において、前記同一方向を指す複数の副針は、1周あたりのステップ数が互いに異なる。
【0026】
この構成によれば、1周あたりのステップ数が互いに異なる複数の副針が特定の方向とは異なる同一方向を指すことにより、ユーザに第二情報を知らせることができる。ここで、互いにステップ数が異なる複数の副針が偶然に同一方向を指す可能性は低い。このため、これらの副針が同一方向を指した場合には、故障等ではなく第二情報を表示しているということがユーザに認識され易い。よって、ユーザの誤認の可能性を低減し、より好適にユーザに情報を通知できる。
【0027】
また、前記時計において、複数の前記副針を動作させる制御部を有し、前記制御部は、前記特定の方向とは異なる同一方向を指す複数の前記副針を、互いに異なるタイミングで前記同一方向まで移動させる。
【0028】
この構成によれば、全ての副針が同じタイミングで移動する場合と比較して、全ての副針が同一方向を向くまでに時間がかかる。これにより、ユーザが副針の移動を視認できる確率を上げることができる。特に、複数の副針を1個ずつ順に移動させた場合には、ユーザが副針の移動を視認できる確率をより高めることができる。よって、ユーザに情報を気づき易くさせることができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、文字板の表示が煩雑になることによるデザイン性の低下を抑制しつつ複数の情報を表示することができる時計を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】第1実施形態に係る時計の平面図。
図2】第1実施形態に係る時計の時刻表示モードにおいて第二情報を表示している状態を示す平面図。
図3】第2実施形態に係る時計の平面図。
図4】第2実施形態に係る時計の時刻表示モードにおいて第二情報を表示している状態を示す平面図。
図5】第2実施形態に係る時計の時刻表示モードにおいて第二情報を表示している状態を示す平面図。
図6】第2実施形態の第1変形例に係る時計の時刻表示モードにおいて第二情報を表示している状態を示す平面図。
図7】第2実施形態の第2変形例に係る時計の時刻表示モードにおいて第二情報を表示している状態を示す平面図。
図8】第3実施形態に係る時計の時刻表示モードにおいて第二情報を表示している状態を示す平面図。
図9】第3実施形態に係る時計の時刻表示モードにおいて第二情報を表示している状態を示す平面図。
図10】第3実施形態に係る時計の時刻表示モードにおいて第二情報を表示している状態を示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。以下の説明では、同一または類似の機能を有する構成に同一の符号を付す。そして、それら構成の重複する説明は省略する場合がある。以下の説明では、時計1の主針4の回転軸Cに沿う方向を軸方向といい、軸方向に直交する方向を径方向といい、回転軸C回りの方向を周方向という場合がある。
【0032】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る時計1の平面図である。
時計1は、不図示のケース蓋及びガラスを有する時計ケース2内に、不図示のムーブメントや時刻に関する情報を示す目盛22等を有する文字板3、各種指針(主針4及び複数の副針5)等が組み込まれて構成されている。本実施形態の時計1は、主針4として時針41、分針42及び秒針43を有する。時計1は、複数の副針5として第一副針51及び第二副針52を有する。
【0033】
時計1は、現在時刻(以下、単に時刻という場合がある。)を表示する時刻表示モードと、時刻表示モードで表示される情報とは別の第一情報を表示する多機能モードと、に切り替え可能に構成されている。本実施形態において、多機能モードは、例えばクロノグラフモードである。この場合、多機能モード(クロノグラフモード)で表示される第一情報とは、クロノグラフ計測情報である。
【0034】
時計ケース2の外周部には、竜頭11と、複数(本実施形態では2個)の操作ボタン15と、が設けられている。竜頭11は、段階的に引き上げ又は押し込みが可能となっており、竜頭11を操作することにより上述した複数のモードに切り替えられる。時計ケース2の内部には、詳しくは後述する複数の副針5の動作を制御する制御部10が収容されている。なお、図2以降の図では制御部10の図示を省略している。
【0035】
文字板3は、時計ケース2内に収容されている。文字板3には、時刻表示モードにおける時刻や多機能モード(クロノグラフモード)における第一情報(クロノグラフ計測情報)等を表示するための数字や目盛22等が設けられている。これらの数字や目盛22等は、例えば文字板3に印刷されている。図1に示すように、本実施形態では、文字板3の外周部に、文字板3の外周を12等分するようにそれぞれマーク21が設けられている。各マーク21の間には、文字板3の外周を60等分するように設けられた目盛22が記載されている。これらのマーク21及び目盛22は、時刻を表示する。
【0036】
文字板3にはさらに、多機能モードで使用される複数の目盛等が記載されている。本実施形態では、平面視において時計1の3時方向に円形状の第一クロノグラフ表示部31が設けられ、時計1の9時方向に第二クロノグラフ表示部32が設けられている。第一クロノグラフ表示部31は、例えば多機能モードにおいて1/10秒を表示するための目盛等を含む。第二クロノグラフ表示部32は、例えば多機能モードにおいて1分を表示するための目盛等を含む。
【0037】
主針4は、文字板3に対して回転軸Cを中心として回転可能に取り付けられている。主針4は、時針41と、分針42と、秒針43と、を有する。各主針4は、文字板3の外周部に設けられた所定の値を指し示すことで時刻を表示する。時針41は、時計ケース2内に収容された不図示のムーブメントに接続されて、所定の回転速度、すなわち12時間で1回転する。分針42は、ムーブメントに接続されて所定の回転速度、すなわち1時間で1回転する。秒針43は、ムーブメントに接続されて所定の回転速度、すなわち1分間で1回転する。
【0038】
複数の副針5は、第一副針51と、第二副針52と、を有する。第一副針51及び第二副針52は、時計ケース2内に収容されたモータ及びこのモータを制御する制御部10により、互いに独立して駆動される。複数の副針5(第一副針51及び第二副針52)は、文字板3に設けられた所定の値を指し示すことで時刻以外の第一情報(本実施形態ではクロノグラフ計測情報)を示す。
【0039】
第一副針51は、文字板3の第一クロノグラフ表示部31の中心を回転中心として文字板3に回転可能に取り付けられている。第一副針51は、多機能モードにおいて1/10秒針として機能する。また、第一クロノグラフ表示部31には、1周を20分割するように目盛が設けられている。よって、第一副針51は、多機能モードにおいて2秒で1回転する。
【0040】
第二副針52は、文字板3の第二クロノグラフ表示部32の中心を回転中心として文字板3に回転可能に取り付けられている。第二副針52は、多機能モードにおいて分針42として機能する。また、第二クロノグラフ表示部32には、1周を60分割するように目盛が設けられている。よって、第二副針52は、多機能モードにおいて1時間で1回転する。このように、第一副針51と第二副針52とは、1周あたりのステップ数が互いに異なる。
【0041】
第一副針51及び第二副針52は、時刻表示モードにおいて通常時に特定の方向を向いた状態で停止している。具体的に、本実施形態では、第一副針51及び第二副針52は、時刻表示モードにおいて、それぞれのクロノグラフモードにおけるリセット位置、すなわち12時方向を指す位置で停止している。換言すれば、「特定の方向」とは、クロノグラフモードにおけるリセット位置であり、かつ12時方向である。複数の副針5は、時刻表示モードでは基本的に停止しており、クロノグラフモードでは動いていることから、今現在のモードが時刻表示モードなのかクロノグラフモードなのかを判断する手段としても使用可能となっている。
【0042】
図2は、第1実施形態に係る時計1の時刻表示モードにおいて第二情報を表示している状態を示す平面図である。
図2に示すように、第一副針51及び第二副針52は、時刻表示モードにおいて、上述した特定の方向とは異なる同一方向を指すことにより第一情報(クロノグラフ計測情報)とは異なる第二情報をユーザに表示する。本実施形態において、第二情報は、時計1の電池残量を示す情報である。具体的に、時計1の電池残量が予め設定された所定値以下となった場合に、第一副針51及び第二副針52は、時刻表示モードにおいて通常時とは異なる6時方向を指す。これにより第一副針51及び第二副針52は、時計1の電池残量が低下していることをユーザに知らせる。このとき、秒針43等の主針4は通常時と同様の回転数及びステップで運針される。換言すれば、第一副針51及び第二副針52が特定の方向とは異なる同一方向を指すことにより、秒針43を2秒運針や4秒運針させることなく電池残量の低下をユーザに知らせることが可能となっている。
【0043】
さらに、本実施形態において、副針5の動作を制御する制御部10は、電池残量の低下時に6時方向を指す複数の副針5(第一副針51及び第二副針52)を、互いに異なるタイミングで6時方向まで移動させる。具体的には、制御部10は、始めに第一副針51を12時方向から6時方向まで移動(回転)させる。第一副針51の移動(回転)が完了した後、制御部10は、第二副針52を12時方向から6時方向まで回転させる。第一副針51及び第二副針52を異なるタイミングで順に移動させることにより、ユーザが副針5の移動を視認する確率を向上させている。
【0044】
(作用、効果)
次に、上述の時計1の作用、効果について説明する。
本実施形態の時計1によれば、時刻表示モードと多機能モードとを有する時計1において、多機能モードで使用される複数の副針5を、時刻表示モードで特定の方向とは異なる同一の方向を指し示すように動作させる。これにより、時刻表示モードにおいて時刻及び多機能モードで表示される第一情報とは別の第二情報をユーザに表示することができる。つまり、従来では時刻表示モードで何の役目も果たしていなかった副針5を用いて、複数の情報を表示できる。また、時刻表示モードにおいて副針5の向きにより第二情報を表示できるので、例えば従来技術のように副針5の周囲(本実施形態では第一クロノグラフ表示部31及び第二クロノグラフ表示部32の周囲)に第二情報に関する複数の文字や記号等を配置する必要が無い。よって、従来技術と比較して、文字板3への表示を簡素にすることができる。これによりデザイン上の制約が減り、デザイン性を高めることができる。
さらに、第二情報を表示する際、複数の副針5のうち少なくとも2個以上の副針51,52が同一方向を指す。これにより、複数の副針5のうち1個のみが特定の方向とは異なる方向を指す場合と比較して、ユーザが情報を気づき易くすることができる。すなわち、複数の副針5のうち1個のみが特定の方向とは異なる方向を指した場合には、第二情報を表示するために副針5の位置が変わったのか、又は衝撃などにより副針5の位置が偶然ずれたのかが判別し難く、ユーザが誤認するおそれがある。これに対して、本発明の構成によれば、少なくとも2個以上の副針5が同一方向を指すので、時計1が第二情報を表示していることをユーザに容易に認識させることができる。よって、デザイン性を損なうことなくユーザに安定的に複数の情報を表示できる。
したがって、文字板3の表示が煩雑になることによるデザイン性の低下を抑制しつつ複数の情報を表示することができる時計1を提供できる。
【0045】
第一情報は、クロノグラフ計測情報であり、多機能モードは、クロノグラフモードである。これにより、時計1は多機能モードとして、定番機能であるクロノグラフモードを有する。クロノグラフモードでは、例えば秒(Second)、分(Minute)及び時(Hour)をそれぞれ表示するために複数(例えば3個)の副針5を有している。或いは1秒、1/10秒、1/100秒など、1秒以下の時刻を表示するための複数の副針5を有してもよい。クロノグラフモードよりも多くの時間で使用される時刻表示モードでは、これらのクロノグラフモード用の副針5は、特定の方向で停止している。時刻表示モードにおいて第二情報を表示する際には、例えば上述した3個の副針5のうち複数(例えば2個)の副針5を特定の方向とは異なる同一方向を指すように動作させる。これにより第二情報を表示できる。よって、クロノグラフモードを有する時計1に本発明の構成を適用することにより、時刻表示モードにおいて従来ほとんど何の役目も果たしていなかった副針5を有効に活用して従来よりも多くの情報をユーザに提供することができる。また、クロノグラフモードのように副針5の周囲に複数の文字(目盛)を配置する必要がある時計1において、第二情報を表示するためのさらなる表示を設ける必要が無いので、文字板3の表示が煩雑になることによるデザイン性の低下を抑制できる。
【0046】
特定の方向は、クロノグラフモードにおけるリセット位置を示す方向である。このため、クロノグラフモードを有する時計1が時刻表示モードであるとき、副針5は、クロノグラフモードにおけるリセット位置(0秒位置)で停止している。時刻表示モードにおいて第二情報を表示する際には、複数の副針5はリセット位置とは異なる同一方向(例えばリセット位置とは反対側を向く方向)を指す。これにより、ユーザは直観的に第二情報が表示されていることを認識し易くなる。よって、ユーザに情報を気づき易くさせることができる。
【0047】
特定の方向は、時計1の12時方向である。このため、時刻表示モードにおいて、通常時に副針5は12時方向を指している。第二情報を表示する際には、複数の副針5は12時方向とは異なる同一方向(例えば6時方向等)を指す。これにより、ユーザは、通常時(すなわち第二情報を表示していない場合)と時計1が第二情報を表示している場合との差異を直観的に認識でき、第二情報が表示されていることを認識し易くなる。よって、ユーザに情報を気づき易くさせることができる。
【0048】
第二情報は、時計1の電池残量を示す情報である。これにより、複数の副針5が特定の方向とは異なる同一方向を指すことにより、例えば時計1の電池残量が所定値以下となったことをユーザに知らせることができる。これにより、ユーザは時計1が電池交換のタイミングであることを認識できる。また、副針5の方向により電池残量に関する情報を表示できるので、従来技術のように秒針43を2秒運針や4秒運針させることなく電池残量に関する情報を表示できる。また、例えば秒針43が無い時計1であっても電池残量の低下をユーザに表示できる。さらに、文字板3に対して電池残量を示す文字の表示や目盛等が不要となる。よって、従来技術と比較して、文字板3の表示が煩雑になることを抑制し、これによるデザイン性の低下を抑制できる。
【0049】
同一方向を指す複数の副針5は、1周あたりのステップ数が互いに異なる。1周あたりのステップ数が互いに異なる複数の副針5が特定の方向とは異なる同一方向を指すことにより、ユーザに第二情報を知らせることができる。ここで、互いにステップ数が異なる複数の副針5が偶然に同一方向を指す可能性は低い。このため、これらの副針5が同一方向を指した場合には、故障等ではなく第二情報を表示しているということがユーザに認識され易い。よって、ユーザの誤認の可能性を低減し、より好適にユーザに情報を通知できる。
【0050】
制御部10は、特定の方向とは異なる同一方向を指す複数の副針5を、互いに異なるタイミングで同一方向まで移動させる。これにより、全ての副針5が同じタイミングで移動する場合と比較して、全ての副針5が同一方向を向くまでに時間がかかる。これにより、ユーザが副針5の移動を視認できる確率を上げることができる。特に、複数の副針5を1個ずつ順に移動させた場合には、ユーザが副針5の移動を視認できる確率をより高めることができる。よって、ユーザに情報を気づき易くさせることができる。
【0051】
(第2実施形態)
次に、本発明に係る第2実施形態について説明する。図3は、第2実施形態に係る時計201の平面図である。図4及び図5は、第2実施形態に係る時計201の時刻表示モードにおいて第二情報を表示している状態を示す平面図である。第2実施形態では、副針5が3個設けられている点及びこれらの副針5が段階的に移動する点で上述した第1実施形態と相違している。
【0052】
図3から図5に示すように、第2実施形態において、文字板3は、上述した第1実施形態における第一クロノグラフ表示部31及び第二クロノグラフ表示部32に加え、さらに第三クロノグラフ表示部233を有している。第三クロノグラフ表示部233は、平面視において時計201の6時方向に設けられている。第三クロノグラフ表示部233は、例えば多機能モードにおいて1秒を表示するための目盛等を含む。
【0053】
複数の副針5は、第一副針51と、第二副針52と、第三副針253と、を有する。第一副針51、第二副針52及び第三副針253は、互いに独立して駆動される。第一副針51及び第二副針52の構成は、第1実施形態における第一副針51及び第二副針52の構成と同等である。第三副針253は、文字板3の第三クロノグラフ表示部233の中心を回転中心として文字板3に回転可能に取り付けられている。第三副針253は、多機能モードにおいて1秒針として機能する。また、第三クロノグラフ表示部233には、1周を60分割するように目盛が設けられている。よって、第三副針253は、多機能モードにおいて1分で1回転する。第一副針51と第二副針52と第三副針253とは、1周あたりのステップ数が互いに異なる。
【0054】
図3に示すように、各副針5は、時刻表示モードにおいて通常時にそれぞれのクロノグラフモードにおけるリセット位置、すなわち12時方向を指す位置で停止している。
図4に示すように、時刻表示モードにおいて、副針5は、複数の副針5のうち少なくとも2個以上の副針5が特定の方向とは異なる同一方向を指すことにより、第一情報(クロノグラフ計測情報)とは異なる第二情報として電池残量を示す情報をユーザに表示する。具体的に、図4に示すように、時計201の電池残量が予め設定された所定値M1以下となった場合、第一副針51及び第二副針52は、時刻表示モードにおいて6時方向を指す。これにより、ユーザは、時計201の電池残量が低下していることを認識できる。
【0055】
さらに、図5に示すように、時計201の電池残量が上述の所定値M1よりも小さい所定値M2以下となった場合、第三副針253も時刻表示モードにおいて6時方向を指す。これにより、ユーザは、時計201の電池残量がさらに低下したことを認識できる。
第2実施形態の時計201によれば、複数の副針5を用いて電池残量の低下をユーザに段階的に知らせることができる。
【0056】
なお、第2実施形態では、3個の副針5の全てが、電池残量を示す情報を表示するための副針5として利用されたが、これに限られない。例えば3個以上の副針5を有する時計201において、そのうちの2個以上の副針5が、第二情報を表示するための副針5として利用されてもよい。すなわち、複数の副針5のうち、第二情報を表示するための副針5として利用されない副針5があってもよい。
【0057】
(第2実施形態の第1変形例)
次に、本発明に係る第2実施形態の第1変形例について説明する。図6は、第2実施形態の第1変形例に係る時計301の時刻表示モードにおいて第二情報を表示している状態を示す平面図である。本変形例における時計301の構成部品は、上述した第2実施形態における時計201の構成部品と同等である。第2実施形態の第1変形例では、第二情報として電池残量を示す情報に加え、時計301が機内モードであるか否かを示す情報を表示する点で上述した第2実施形態と相違している。
【0058】
図6に示すように、本変形例における時計301は、上述した第2実施形態と同様に3個の副針5を有する。副針5の配置や目盛の数、ステップ数等は第2実施形態と同様である。本変形例において、3個の副針5のうち第一副針51及び第二副針52は、第二情報として、電池残量を示す情報と、時計301が機内モードであるか否かを示す情報と、を表示可能となっている。具体的に、時刻表示モードにおいて、第一副針51及び第二副針52は、6時方向を指すことにより、第二情報として電池残量を示す情報をユーザに表示する。すなわち、時計301の電池残量が予め設定された所定値以下となった場合、第一副針51及び第二副針52は、時刻表示モードにおいて6時方向を指す。これにより、ユーザは、時計301の電池残量が低下していることを認識する。
【0059】
さらに、時刻表示モードにおいて、第一副針51及び第二副針52は、3時方向を指すことにより、第二情報として、時計301が機内モードであるか否かを示す情報をユーザに表示する。機内モードとは、例えば時刻修正等を行うための電波の受信を中止させるモードである。具体的には、ユーザが竜頭11や操作ボタン15等を操作することにより時計301が機内モードに設定された場合、第一副針51及び第二副針52は、時刻表示モードにおいて3時方向を指す。これにより、ユーザは、時計301が機内モードであることを認識する。
【0060】
第2実施形態の第1変形例によれば、複数の副針5が特定の方向とは異なる同一方向(本実施形態では3時方向)を指すことにより、時計301が機内モードであることをユーザに知らせることができる。よって、時計301の汎用性を向上できる。また、ユーザが機内モードに設定したことを忘れてしまうのを抑制できる。よって、ユーザの利便性を向上できる。
なお、第2実施形態の第1変形例において、第三副針353は、第二情報を表示するために使用されなくてもよい。
【0061】
(第2実施形態の第2変形例)
次に、本発明に係る第2実施形態の第2変形例について説明する。図7は、第2実施形態の第2変形例に係る時計401の時刻表示モードにおいて第二情報を表示している状態を示す平面図である。本変形例における時計401の構成部品は、上述した第2実施形態における時計201の構成部品と同等である。第2実施形態の第2変形例では、第二情報として電池残量を示す情報に加え、時計401がパワーセーブモードであるか否かを示す情報を表示する点で上述した第2実施形態と相違している。
【0062】
図7に示すように、本変形例における時計401は、上述した第2実施形態と同様に3個の副針5を有する。副針5の配置や目盛の数、ステップ数等は第2実施形態と同様である。本変形例において、3個の副針5のうち第一副針51及び第二副針52は、第二情報として、電池残量を示す情報と、時計401がパワーセーブモードであるか否かを示す情報と、を表示可能となっている。具体的に、時刻表示モードにおいて、第一副針51及び第二副針52は、6時方向を指すことにより、第二情報として電池残量を示す情報をユーザに表示する。すなわち、時計401の電池残量が予め設定された所定値以下となった場合、第一副針51及び第二副針52は、時刻表示モードにおいて6時方向を指す。これにより、ユーザは、時計401の電池残量が低下していることを認識する。
【0063】
さらに、時刻表示モードにおいて、第一副針51及び第二副針52は、9時方向を指すことにより、第二情報として、時計401がパワーセーブモードであるか否かを示す情報をユーザに表示する。パワーセーブモードとは、例えば節電のために主針4の一部(例えば秒針43のみ)の動作を停止させるモードである。具体的には、ユーザが竜頭11や操作ボタン15等を操作することにより(或いは電池残量の低下等により自動的に)時計401がパワーセーブモードに設定された場合、第一副針51及び第二副針52は、時刻表示モードにおいて9時方向を指す。これにより、ユーザは、時計401がパワーセーブモードであることを認識する。
【0064】
第2実施形態の第2変形例によれば、複数の副針5が特定の方向とは異なる同一方向(本実施形態では9時方向)を指すことにより、時計401がパワーセーブモードであることをユーザに知らせることができる。よって、時計401の汎用性を向上できる。また、パワーセーブモードに設定されていることをユーザが忘れたまま時計401を使用し続けることを抑制できる。よって、ユーザの利便性を向上できる。
なお、第2実施形態の第2変形例において、第三副針453は、第二情報を表示するために使用されなくてもよい。
【0065】
なお、上述した第2実施形態の第1変形例及び第2変形例において、機内モードであるか否かを示す情報及びパワーセーブモードであるか否かを示す情報に代えて(又は加えて)、時計301,401がスリープモードであるか否かを示す情報を第二情報として表示してもよい。スリープモードとは、例えば時計301,401を長期間使用しない場合に、主針4の運針を完全に停止させるモードである。時計301,401がスリープモードに設定された場合、第一副針51及び第二副針52は、時刻表示モードにおいて3時方向又は9時方向を指すようにしてもよい。これにより、例えば複数の副針5が特定の方向とは異なる同一方向を指すことにより、時計301,401がスリープモードであることをユーザに知らせることができる。よって、時計301,401の汎用性を向上できる。また、スリープモードに設定されていることをユーザが気付かないまま時計301,401を使用し続けることを抑制できる。よって、ユーザの利便性を向上できる。
【0066】
上述した第2実施形態の第1変形例及び第2変形例のように、副針5の向きによって複数の第二情報を表示する場合には、副針5の各向きがそれぞれ何の情報を表示しているのかを表すための記号等を別途設けてもよい。この場合、記号等が増えることで文字板3が煩雑になるのを抑制するために、例えば各クロノグラフ表示部31,32,233の外周部には記載せず、文字板3全体の端に記号等を記載してもよい。これにより、記号等を記載しない場合と比べて文字板3への記載は増えるものの、クロノグラフ表示部31,32,233の外周部に表示が必要な従来技術と比較して、記号等の全体的な記載量を減少させることができる。また、クロノグラフ表示部31,32,233の外周部以外の箇所に記載可能であるため、従来技術と比較してデザイン性を向上できる。これにより、ユーザの視認性と読み取り易さとのバランスを考慮した自由度の高い表示とすることができる。
【0067】
(第3実施形態)
次に、本発明に係る第3実施形態について説明する。図8から図10は、第3実施形態に係る時計501の時刻表示モードにおいて第二情報を表示している状態を示す平面図である。第3実施形態における時計501の構成部品は、上述した第2実施形態における時計201の構成部品と同等である。第3実施形態では、第二情報としてユーザが操作すべき操作ボタン15の位置を示す情報を表示する点で上述した第2実施形態と相違している。
【0068】
第3実施形態において、時計501は、例えば竜頭11を複数段階に引き上げ操作することで複数のモードに切り替えることが可能となっている。例えば、竜頭11を1段引き上げた場合、上述したクロノグラフモードに切り替えられる。竜頭11を2段引き上げた場合、例えば時差修正モードに切り替えられる。なお、時差修正モードの他に、時刻修正モードやアラームのON/OFFを切り替えるモード、通信のON/OFFを切り替えるモード等に切り替えられてもよい。以下、時差修正モードを例に説明する。
【0069】
時差修正モードなどの機能は普段めったに使用されないため、長期間これらの操作をしてこなかったユーザが久しぶりにこれらのモードを使用しようとした場合、複数ある操作ボタン15のどの操作ボタン15を操作すればよいか分からなくなる場合がある。
そこで、第3実施形態の時計501では、複数(本実施形態では3個)の副針5のうち第一副針51及び第二副針52は、第二情報として、ユーザが操作すべき操作ボタン15の位置を示す情報を表示する。具体的に、図8に示すように、例えば時差修正が必要な状態である場合、第一副針51及び第二副針52は、3時方向を指すことにより、時計501の3時方向に位置する竜頭11を操作して時差修正モードに切り替えるべきことをユーザに知らせる。これを受けてユーザが竜頭11を2段引き上げて時差修正モードに切り替わると、図9に示すように、次に第一副針51及び第二副針52は、2時方向を指すことにより、時計501の2時方向に位置する操作ボタン15を操作して時差修正のための都市選択を実行すべきことをユーザに知らせる。よって、ユーザは2時方向に位置する操作ボタン15を操作して都市を選択することで、時差修正を完了する。
【0070】
図10に示すように、第一副針51及び第二副針52は、2時方向ではなく4時方向を指すことにより、時計501の4時方向に位置する操作ボタン15を操作すべきことをユーザに知らせてもよい。また、2時方向の操作ボタン15と4時方向の操作ボタン15とで異なる設定が行えるようにしてもよい。
【0071】
第3実施形態によれば、例えば竜頭11の他に時計501の周囲に複数の操作ボタン15が設けられる時計501において、複数の副針5が特定の方向とは異なる同一方向を指すことにより、ユーザが現在どの操作ボタン15を操作すべきかをユーザに知らせることができる。例えば、ユーザに操作させたい操作ボタン15のある方向を指すことにより、ユーザは複数の操作ボタン15の中から、操作すべき操作ボタン15を直観的に理解できる。これにより、普段使用しない機能などにおいて、長期間その操作をしてこなかったユーザがどの操作ボタン15を操作すればよいか分からなくなった場合であっても、ユーザに操作すべき操作ボタン15の位置を示すことができる。よって、特に操作ボタン15の多い多機能時計に適用した場合に、時計501の汎用性を向上できるとともに、ユーザの操作性を向上できる。
【0072】
なお、本発明の技術範囲は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、上述の実施形態では、第二情報として、電池残量を示す情報や時計1,201,301,401,501が機内モードであるか否かを示す情報、時計1,201,301,401,501がパワーセーブモードであるか否かを示す情報、時計1,201,301,401,501がスリープモードであるか否かを示す情報等を表示する例を説明したが、表示する情報を適宜組み合わせてもよい。また、上記以外の情報を組み合わせて表示してもよい。
【0073】
第3実施形態では操作ボタン15が2個設けられる場合を例に説明したが、操作ボタン15が例えば3個や4個、又は5個以上設けられていてもよい。例えば4個の操作ボタン15を有する場合には、時計501の2時方向、4時方向、8時方向、10時方向にそれぞれ操作ボタン15を設けてもよい。複数の副針5は、これらの操作ボタン15を操作すべきタイミングで、2時方向、4時方向、8時方向、10時方向のいずれかの同一方向を指すようにしてもよい。
【0074】
時刻表示モードにおける副針5の「特定の方向」は、12時方向に限定されない。「特定の方向」は、クロノグラフモードにおけるリセット位置に限定されない。例えばクロノグラフモードにおけるリセット位置と12時方向とが一致しない場合、リセット位置の方向又は12時方向のいずれかを特定の方向としてもよい。
【0075】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上述した実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上述した実施形態を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0076】
1 時計
4 主針
5 (複数の)副針
10 制御部
15 操作ボタン
51 第一副針(副針)
52 第二副針(副針)
253,353,453 第三副針(副針)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10