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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024124788
(43)【公開日】2024-09-13
(54)【発明の名称】鉄道架線柱
(51)【国際特許分類】
   E04H 12/00 20060101AFI20240906BHJP
   E04H 9/14 20060101ALI20240906BHJP
【FI】
E04H12/00 A
E04H12/00 B
E04H9/14 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023032696
(22)【出願日】2023-03-03
(71)【出願人】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100134359
【弁理士】
【氏名又は名称】勝俣 智夫
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100217249
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 耕一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100221279
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 健吾
(74)【代理人】
【識別番号】100207686
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 恭宏
(74)【代理人】
【識別番号】100224812
【弁理士】
【氏名又は名称】井口 翔太
(72)【発明者】
【氏名】冨永 知徳
(72)【発明者】
【氏名】和田 学
【テーマコード(参考)】
2E139
【Fターム(参考)】
2E139AA01
2E139AB00
2E139AC14
2E139AC32
(57)【要約】
【課題】施工の自由度を向上させることができるうえ、簡単な構造で効率よく施工でき、施工にかかる時間やコストを低減することができる鉄道架線柱を提供する。
【解決手段】複数の鋼管柱10の継手部のうち少なくとも最も基礎地盤2に近い継手部にフランジレス継手100が設けられ、フランジレス継手100は、下端部をテーパー状に拡管した拡管部11を有する第1鋼管柱100Aを、上端部をテーパー状に縮管した縮管部12を有する第2鋼管柱100Bに上から嵌合させ、嵌合の際に、縮管部12に嵌合する拡管部11に対して第1鋼管柱100Aから作用する設計軸力を超える軸力を導入した状態で第1鋼管柱100Aと第2鋼管柱100Bとを接合する構成であり、基部1aを構成する第2鋼管柱100Bにおける縮管部12の直下に位置する直線部10bが、基礎地盤2の地表面2aから地上側に配置されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の鋼管柱を管軸方向に継ぎ合わせて一体化した柱全体の基部が基礎地盤に埋設され、鉄道架線を支持する鉄道架線柱であって、
前記複数の鋼管柱の継手部のうち少なくとも最も前記基礎地盤に近い継手部にフランジレス継手が設けられ、
前記フランジレス継手は、
下端部をテーパー状に拡管した拡管部を有する第1鋼管柱を、上端部をテーパー状に縮管した縮管部を有する第2鋼管柱に上から嵌合させ、前記嵌合の際に、前記縮管部に嵌合する前記拡管部に対して前記第1鋼管柱から作用する設計軸力を超える軸力を導入した状態で前記第1鋼管柱と前記第2鋼管柱とを接合する構成であり、
前記基部を構成する前記第2鋼管柱における前記縮管部の直下に位置する直線部が、前記基礎地盤の地表面から地上側に配置されている鉄道架線柱。
【請求項2】
前記地表面から前記縮管部までの前記直線部の高さは、前記直線部の鋼管外径以上、かつ2m以内である、請求項1に記載の鉄道架線柱。
【請求項3】
3本の前記鋼管柱がそれぞれ前記フランジレス継手によって接合されている、請求項1又は2に記載の鉄道架線柱。
【請求項4】
最下部の継手部が前記フランジレス継手であり、他の継手部が溶接継手である、請求項1又は2に記載の鉄道架線柱。
【請求項5】
前記基部を構成する前記第2鋼管柱の内部には、固化材料が充填されている、請求項1又は2に記載の鉄道架線柱。
【請求項6】
前記基部は、前記基礎地盤に設けられるコンクリート基礎部に固定され、
前記コンクリート基礎部には、軸力を前記フランジレス継手に付与するときの反力を受ける反力受け部材が設けられている、請求項1又は2に記載の鉄道架線柱。
【請求項7】
前記鋼管柱は、亜鉛めっき鋼管、または合金めっき鋼管である、請求項1又は2に記載の鉄道架線柱。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道架線柱に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電車に電力を供給している架線はブラケットによって上方から支持され、ブラケットは線路近傍で、車両限界付近に立設されている鉄道架線柱によって支持されている。鉄道架線柱としては、複数の架線柱同士をフランジ継手によって接合する構成のものが知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1には、鋼管柱にフランジプレートに溶接し、接合する鋼管柱のフランジプレート同士を引張接合ボルトで接合して構築された架線柱について記載されている。
【0003】
特許文献1に示すようなフランジ継手によって鋼管柱を接合する場合には、高所での接合作業がし難いうえ、鋼管柱より径方向外側に張り出すフランジプレートにおける車両限界への影響を避けるため、電車の車体下面よりも下方の高さの位置でフランジ継手による接合作業が行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014-20096号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した特許文献1に記載されるような鉄道架線柱におけるフランジ継手を使用した接合の場合には、鋼管柱の外側にフランジプレートが大きく突出するため、架線柱の建て替えのときはスペースに制限があり、機能上、または美観上の点で不適な場合があった。そのため、施工時に自由度をもたせることが可能な鉄道架線柱の継手構造が求められていた。
【0006】
また、フランジ継手の架線柱の場合には、架線柱の建て替えのときは基礎の築造作業が大掛かりな作業になり、施工にかかる時間やコストが増大するという問題があった。さらに、基礎築造後に建柱するときの作業も、夜間の電車休止時に行うので、短工期が必要となっている。そのため、鋼管柱の接合作業はできるだけ低所で行いたいが、高さ方向で建築限界が異なることから、その点で改善の余地があった。
【0007】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、施工の自由度を向上させることができるうえ、簡単な構造で効率よく施工でき、施工にかかる時間やコストを低減することができる鉄道架線柱を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本発明に係る鉄道架線柱の態様1は、複数の鋼管柱を管軸方向に継ぎ合わせて一体化した柱全体の基部が基礎地盤に埋設され、鉄道架線を支持する鉄道架線柱であって、前記複数の鋼管柱の継手部のうち少なくとも最も前記基礎地盤に近い継手部にフランジレス継手が設けられ、前記フランジレス継手は、下端部をテーパー状に拡管した拡管部を有する第1鋼管柱を、上端部をテーパー状に縮管した縮管部を有する第2鋼管柱に上から嵌合させ、前記嵌合の際に、前記縮管部に嵌合する前記拡管部に対して前記第1鋼管柱から作用する設計軸力を超える軸力を導入した状態で前記第1鋼管柱と前記第2鋼管柱とを接合する構成であり、前記基部を構成する前記第2鋼管柱における前記縮管部の直下に位置する直線部が、前記基礎地盤の地表面から地上側に配置されていることを特徴としている。
【0009】
本発明に係る鉄道架線柱では、拡管部と縮管部とを嵌合させるフランジレス継手を用いることで、発生断面力の大きくなる鉄道架線柱の基部の耐力を効率良く向上させることができるとともに、基部に発生する付加曲げモーメントからの悪影響を低減させることができる。そして、拡管部に縮管部を突っ込み接合することで、縮管部を有する第2鋼管柱側の板厚、鋼管径、強度を大きくすることで耐力を向上させることができ、低コストで、且つ簡単な構成となる。
【0010】
また、本発明では、フランジレス継手による鋼管柱同士の接合時に第1鋼管柱から作用する設計軸力を超える軸力を予め導入しておくことで、施工後の挙動を安定させることができ、第1鋼管柱と第2鋼管柱とがオーバーラップして拡管部と縮管部とが互いに密着して剛性が高くなることから、地震力等で大きな軸力が作用した場合であっても管軸方向の永久変形の発生を防止することができる。
【0011】
このように、本発明では、基部近くの作業がし易い低い位置にフランジレス継手を設けることが可能となるので、施工の自由度を高めることができ、しかも全長、輸送限界の範囲で設置することができる。
また、本発明では、下側の鋼管柱の上端に形成される縮管部に上側の鋼管柱の下端に形成される拡管部を嵌合させて軸力を導入して接合する簡単なフランジレス継手を用いる構成となるので、施工時間を短縮することができる。
【0012】
(2)本発明の態様2は、態様1の鉄道架線柱において、前記地表面から前記縮管部までの前記直線部の高さは、前記直線部の鋼管外径以上、かつ2m以内であることが好ましい。
【0013】
この場合には、テーパー部のない直線部を基部に少なくとも鋼管外径以上で残されるので、耐力を向上でき、これにより耐震性を向上できる。すなわち、基部に少なくとも鋼管外径以上でテーパー加工をしていない部分を残すことにより、テーパー加工部は残留応力、また、面圧とテーパー部に作用する軸力から発生する付加曲げモーメントという最大耐力について予想しがたい要素のある部分を、最も大きな荷重が作用する基部から外すことで耐力向上の効果が得られる。
【0014】
(3)本発明の態様3は、態様1または態様2の鉄道架線柱において、3本の前記鋼管柱がそれぞれ前記フランジレス継手によって接合されていることを特徴としている。
【0015】
本発明に係る鉄道架線柱では、従来のフランジ継手のような径方向外側に突出する突出部がなくなり、より建築限界に近い場所に設置することができる。
【0016】
(4)本発明の態様4は、態様1または態様2の鉄道架線柱において、最下部の継手部が前記フランジレス継手であり、他の継手部が溶接継手であることが好ましい。
【0017】
この場合には、溶接継手の鋼管柱同士は地組みし、地組した鋼管柱の下端の拡管部を下側の鋼管柱の縮管部に嵌合させて組み付けることができる。
【0018】
(5)本発明の態様5は、態様1から態様4のいずれか一つの鉄道架線柱において、前記基部を構成する前記第2鋼管柱の内部には、固化材料が充填されていることが好ましい。
【0019】
この場合には、第2鋼管柱の内部に例えばコンクリート等の固化材料が充填することで、高耐力化を図ることができるうえ、管軸方向の縮み量がほぼ無くなるように抑制することができる。
また、固化材料を第2鋼管の基部のみに充填することで、鉄道架線柱の全体に固化材を充填する場合に比べて重量が大きくなるのを抑えることができ、重量が大きくなることに伴う地震力の増加を防止することができる。
【0020】
(6)本発明の態様6は、態様1から態様5のいずれか一つの鉄道架線柱において、前記基部は、前記基礎地盤に設けられるコンクリート基礎部に固定され、前記コンクリート基礎部には、軸力を前記フランジレス継手に付与するときの反力を受ける反力受け部材が設けられていることを特徴としてもよい。
【0021】
この場合には、基部がコンクリート基礎部に固定され、軸力を付与するための高さが確保できない場合に、コンクリート基礎部に設けた反力受け部材と基部の上に接合する鋼管柱とを例えばワイヤで接続して、鋼管柱に下向きの軸力を付与して基部がある下側の鋼管柱に上側の鋼管柱を接合することができる。
【0022】
(7)本発明の態様7は、態様1から態様6のいずれか一つの鉄道架線柱において、前記鋼管柱は、亜鉛めっき鋼管、または合金めっき鋼管であることを特徴としてもよい。
【0023】
この場合には、鋼管柱の防食効果を向上させることができ、鉄道架線柱としての耐久性を向上できる。
【発明の効果】
【0024】
本発明の鉄道架線柱によれば、施工の自由度を向上させることができるうえ、簡単な構造で効率よく施工でき、施工にかかる時間やコストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の実施形態による鉄道架線柱を示す側面図である。
図2図1に示すフランジレス継手の縦断面図である。
図3図2に示すフランジレス継手において、下側鋼管と上側鋼管の接合前の状態を示す図である。
図4図1の鉄道架線柱において基部にコンクリートを充填した状態を示す側面図である。
図5】他の実施形態による鉄道架線柱を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態による鉄道架線柱について、図面に基づいて説明する。
【0027】
図1に示すように、本実施形態による鉄道架線柱1は、電車に電力を供給している鉄道架線を支持し、線路近傍の車両限界付近に建てられている。鉄道架線柱1は、複数(ここでは3本)の鋼管柱10を管軸方向に継ぎ合わせて一体化した柱全体の基部1aが基礎地盤2に埋設されている。
【0028】
鉄道架線柱1は、3本の鋼管柱10A、10B、10Cがそれぞれフランジレス継手100によって接合されている。符号10Aの鋼管柱(以下、下管ともいう)は、鉄道架線柱1の最も下に位置して鉄道架線柱1の基部1aに相当し、下部が基礎地盤2に埋設されている。符号10Bの鋼管柱(以下、中管ともいう)は、鉄道架線柱1の上下方向中間に位置している。符号10Cの鋼管柱(以下、上管ともいう)は、鉄道架線柱1の最も上に位置している。下管10A(基部1a)と中管10Bとを接合する第1継手部T1および中管10Bと上管10Cとを接合する第2継手T2は、それぞれフランジレス継手100によって接合されている。
【0029】
鋼管柱10は、亜鉛めっき鋼管、または合金めっき鋼管を採用することができる。
【0030】
なお、本実施形態では、3本の鋼管柱10A、10B、10Cを接合する2箇所の継手部の両方ともにフランジレス継手100を用いる一例としているが、フランジレス継手100は少なくとも最も基礎地盤2に近い継手部に設けられていればよく、この実施形態については他の実施形態で後述する。
【0031】
ここで、鉄道架線柱1(各鋼管柱10)の中心軸線を管軸Oといい、この管軸Oに直交する方向を径方向とする。鉄道架線柱1は、管軸Oを上下方向に向けて配置され、鋼管柱10の拡管部11(後述)側が管軸O方向に沿って下側に配置され、縮管部12(後述)側が管軸O方向に沿って上側に配置されている。
【0032】
図2および図3に示すように、フランジレス継手100は、下端部をテーパー状に拡管した拡管部11を有する第1鋼管柱10(符号100A)を、上端部をテーパー状に縮管した縮管部12を有する第2鋼管柱10(符号100B)に上から嵌合させ、嵌合の際に、縮管部12に嵌合する拡管部11に対して第1鋼管柱100Aから作用する設計軸力を超える軸力Pを導入した状態で第1鋼管柱100Aと第2鋼管柱100Bとを接合する構成となっている。
【0033】
図1に示すように、フランジレス継手100を有する鋼管柱10の製造限界の長さ寸法は、例えば7mである。そして、鋼管柱10の全長が12mを超えると、輸送コストが増大するため不適である。また、鉄道架線柱1の耐震性は基部1aで決まる。
【0034】
鉄道架線柱1は、下管10Aの長さL1が例えば2.75mであり、中管10Bの長さL2が例えば5.75mであり、上管10Cの長さL3が例えば7mであり、3本の鋼管柱10A、10B、10Cが接合されたときの全長L4が14mに設定されている。すなわち、1箇所のフランジレス継手100における拡管部11と縮管部12との嵌合長(後述するオーバーラップ長Lo)が0.75mである。また、鉄道架線柱1の基部1aの埋設長L5が1mであるので、地表面2aからの全高が13mとなる。
【0035】
図2および図3に示すように、フランジレス継手100は、上下方向に接合される一対の第1鋼管柱100A及び第2鋼管柱100Bのうち上側に接合される第1鋼管柱100Aの下端に形成された拡管部11を、同じく下側に接合される第2鋼管柱100Bの上端に形成された縮管部12に嵌合させることにより接合する構造であり、拡管部11と縮管部12とが所定のオーバーラップ長Loでオーバーラップしており、このオーバーラップ部において上述した軸力Pで密接している。
【0036】
第1鋼管柱100Aの拡管部11は、下端部分において上方の直線部10bから下端部10aに向かうに従い漸次、拡径されるテーパー状に形成されている。
第2鋼管柱100Bの縮管部12は、上端部分において下方の直線部10bから上端部10cに向かうに従い漸次、縮径されるテーパー状に形成されている。
【0037】
図1に示すように、基部1aを構成する第2鋼管柱100B(下管10A)における縮管部12の直下に位置する直線部10bは、基礎地盤2の地表面2aから地上側に配置されている。さらに、下管10Aにおいて、地表面2aから縮管部12までの直線部10bの高さHは、直線部10bの鋼管外径D(図2参照)以上(鋼管外径Dの1倍以上)、かつ2m以内である。2mは、作業員が作業しやすい高さであって、2mを超えると作業がし難くなり、作業効率が低下することになる。
【0038】
図4に示すように、基部1aを構成する第2鋼管柱100B(下管10A)の内部には、コンクリート3(固化材料)が充填されている。コンクリート3は、鉄道架線柱1の基礎地盤2に設置される基部1aのみに充填されるものである。すなわち、第2鋼管柱100Bの内部において、縮管部12の直下の位置から基礎地盤2までの領域にコンクリート3が充填されている。
【0039】
図1に示すように、基礎地盤2は、コンクリート基礎部2Aであってもよい。この場合、鉄道架線柱1の基部1aは、コンクリート基礎部2Aに固定される。そして、コンクリート基礎部2Aには、軸力Pをフランジレス継手100に付与するときの反力を受ける反力受け部材4が設けられている。これは下側では、基部1aにおいて鋼管がストレート(直線部10b)であるため、反力を取ることが困難であるからである。
【0040】
次に、鉄道架線柱1の製造方法および施工方法については、先ず、図1に示すように、本実施形態の鉄道架線柱1を現場などで施工する場合においては、第2鋼管柱100B(下管10A)を管軸Oを上下方向に向けて縮管部12を上にした状態で基礎地盤2に埋設する。
【0041】
その後、下管10Aの縮管部12に対して第1鋼管柱100A(中管10B)の拡管部11を所定の軸力Pを導入しつつ管軸O方向に嵌合させることで、双方の鋼管柱10A、10B同士が接合される。このときの軸力Pの導入方法としては、例えば軸力導入側の中管10Bにワイヤ5(図1の二点鎖線)を取り付けて、そのワイヤ5を油圧ジャッキ等(図示省略)で引っ張る方法により行うことができる。このとき、上側は鋼管柱のテーパー部分で容易に反力を取ることができる。
【0042】
さらに、中管10Bを管軸Oを上下方向に向けて縮管部12を上にした状態で固定しておき、その縮管部12に上管10Cの拡管部11を被せつつ嵌合させる。この場合には、導入する軸力Pは拡管部11の自重による荷重が作用するので、残りの荷重分を油圧ジャッキ等で導入することにより行うことができる。
以上のようにして、鉛直に改修された鉄道架線柱1が得られる。
【0043】
以上説明した鉄道架線柱によれば、拡管部11と縮管部12とを嵌合させるフランジレス継手100を用いることで、発生断面力の大きくなる鉄道架線柱1の基部1aの耐力を効率良く向上させることができるとともに、基部1aに発生する付加曲げモーメントからの悪影響を低減させることができる。そして、拡管部11に縮管部12を突っ込み接合することで、縮管部12を有する第2鋼管柱100B側の板厚、鋼管径、強度を大きくすることで耐力を向上させることができ、低コストで、且つ簡単な構成となる。
【0044】
また、本実施形態では、フランジレス継手100による鋼管柱10同士の接合時に第1鋼管柱100Aから作用する設計軸力を超える軸力Pを予め導入しておくことで、施工後の挙動を安定させることができ、第1鋼管柱100Aと第2鋼管柱100Bとがオーバーラップして拡管部11と縮管部12とが互いに密着して剛性が高くなることから、地震力等で大きな軸力が作用した場合であっても管軸方向の永久変形の発生を防止することができる。
【0045】
また、本実施形態では、基部1a近くの作業がし易い低い位置にフランジレス継手100を設けることが可能となるので、施工の自由度を高めることができ、しかも全長、輸送限界の範囲で設置することができる。
また、本実施形態では、下側の鋼管柱10の上端に形成される縮管部12に上側の鋼管柱10の下端に形成される拡管部11を嵌合させて軸力Pを導入して接合する簡単なフランジレス継手100を用いる構成となるので、施工時間を短縮することができる。
【0046】
本実施形態では、地表面2aから縮管部12までの直線部10bの高さは、直線部10bの鋼管外径D以上、かつ2m以内である。
これにより、本実施形態では、テーパー部のない直線部10bを基部に少なくとも鋼管外径以上で残されるので、耐力を向上でき、これにより耐震性を向上できる。すなわち、基部に少なくとも鋼管外径D以上でテーパー加工をしていない部分を残すことにより、テーパー加工部は残留応力、また、面圧とテーパー部に作用する軸力から発生する付加曲げモーメントという最大耐力について予想しがたい要素のある部分を、最も大きな荷重が作用する基部から外すことで耐力向上の効果が得られる。
【0047】
また、本実施形態では、3本の鋼管柱10がそれぞれフランジレス継手100によって接合されているので、従来のフランジ継手のような径方向外側に突出する突出部がなくなり、より建築限界に近い場所に設置することができる。
【0048】
また、本実施形態では、基部を構成する第2鋼管柱100Bの内部には、固化材料が充填されている。
これにより、第2鋼管柱100Bの内部に例えばコンクリート3等の固化材料が充填することで、高耐力化を図ることができるうえ、管軸方向の縮み量がほぼ無くなるように抑制することができる。
また、本実施形態では、コンクリート3を第2鋼管柱の基部1aのみに充填することで、鉄道架線柱1の全体にコンクリートを充填する場合に比べて重量が大きくなるのを抑えることができ、重量が大きくなることに伴う地震力の増加を防止することができる。
【0049】
また、本実施形態では、基礎地盤2に設けられるコンクリート基礎部2Aに固定され、コンクリート基礎部2Aには、軸力Pをフランジレス継手100に付与するときの反力を受ける反力受け部材4が設けられている。
これにより、基部がコンクリート基礎部2Aに固定され、軸力Pを付与するための高さが確保できない場合に、コンクリート基礎部2Aに設けた反力受け部材4と基部1aの上に接合する鋼管柱10とを例えばワイヤ5で接続して、鋼管柱10に下向きの軸力Pを付与して基部1aがある下側の鋼管柱10に上側の鋼管柱10を接合することができる。
【0050】
また、本実施形態では、鋼管柱は、亜鉛めっき鋼管、または合金めっき鋼管であるので、鋼管柱の防食効果を向上させることができ、鉄道架線柱としての耐久性を向上できる。
【0051】
上述のように本実施形態による鉄道架線柱では、施工の自由度を向上させることができるうえ、簡単な構造で効率よく施工でき、施工にかかる時間やコストを低減することができる。
【0052】
以上、本発明による鉄道架線柱の実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0053】
例えば、図5に示すように、他の本実施形態による鉄道架線柱1Aは、下管10A、中管10D、上管10Eを有し、下管10Aと中管10Dとの継手部がフランジレス継手100であり、中管10Dと上管10Eとが溶接継手200により接合されている。この場合には、溶接継手200の鋼管柱10D、10E同士を予め地表面2aで溶接により接合し、接合した状態の中管10Dの下端の拡管部11を下側の基部1aに相当する下管10Aの縮管部12に嵌合させて接合される。
【0054】
この場合の鉄道架線柱1Aは、下管10Aの長さL1が例えば2.75mであり、中管10Dの長さL6が例えば7mであり、上管10Eの長さL7が例えば5mであり、中管10Dと上管10Eとの合計の長さL8が12mであり、3本の鋼管柱10A、10B、10Cが接合されたときの全長L9が14mに設定されている。すなわち、1箇所のフランジレス継手100における拡管部11と縮管部12との嵌合長(後述するオーバーラップ長Lo)が0.75mである。また、鉄道架線柱1Aの基部1aの埋設長L5が1mであるので、地表面2aからの全高が13mとなる。
【0055】
また、本実施形態では、地表面2aから縮管部12までの直線部10bの高さHとして、直線部10bの鋼管外径D以上、かつ2m以内としているが、この範囲を僅かに外れてもかまわない。
【0056】
また、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能である。
【符号の説明】
【0057】
1、1A 鉄道架線柱
2 基礎地盤
2a 地表面
2A コンクリート基礎部
3 コンクリート(固化材料)
4 反力受け部材
10 鋼管柱
10A 下管
10B、10D 中管
10C、10E 上管
10a 下端部
10b 直線部
11 拡管部
12 縮管部
100 フランジレス継手
200 溶接継手
O 管軸
P 軸力
図1
図2
図3
図4
図5