IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社きんでんの特許一覧 ▶ 未来工業株式会社の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024124789
(43)【公開日】2024-09-13
(54)【発明の名称】取付治具、および、取付体装置
(51)【国際特許分類】
   H02G 3/12 20060101AFI20240906BHJP
   E04B 2/74 20060101ALI20240906BHJP
【FI】
H02G3/12 060
E04B2/74 541E
H02G3/12
H02G3/12 050
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023032697
(22)【出願日】2023-03-03
(71)【出願人】
【識別番号】000163419
【氏名又は名称】株式会社きんでん
(71)【出願人】
【識別番号】000243803
【氏名又は名称】未来工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】弁理士法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】江川 正人
(72)【発明者】
【氏名】千葉 丈晴
(72)【発明者】
【氏名】桑原 圭汰
【テーマコード(参考)】
5G361
【Fターム(参考)】
5G361AA01
5G361AA02
5G361AB01
5G361AB04
5G361AC01
5G361AE01
(57)【要約】
【課題】取付体を柱材の所定の取付位置により正確かつより容易に取り付けることを補助とする取付治具を提供する。
【解決手段】取付治具100は、柱材Pの基準面P1に当接して配置される当接面111を有する基準部110と、基準部110に連設され、基準面P1を基準とした取付体の取付位置P3を、柱材Pの取付面P2上に特定するための位置特定部130と、を備える。位置特定部130は、基準部110から離間するように延出し、基準部110が基準面P1に宛がわれた状態で、当接面111に対して直交方向に延びるとともに取付面P2に対して対向配置されるように構成された基部131と、基部131の延出方向に変位可能に基部131に保持された可動部141と、を備える。可動部141には、柱材Pの取付面P2上に取付位置P3を特定するための指標となる位置を示す指標表示部142、145が設けられている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1側壁および前記第1側壁と直交して延在する第2側壁を有する柱材への取付体の取付位置を特定する取付治具であって、
前記第1側壁に画定された基準面に当接して配置される当接面を有する基準部と、
前記基準部に連設され、前記基準面を基準とした前記取付体の取付位置を、前記第2側壁に画定された取付面上に特定するための位置特定部と、を備え、
前記位置特定部は、
前記基準部から離間するように延出し、前記基準部が前記基準面に宛がわれた状態で、前記当接面に対して直交方向に延びるとともに前記取付面に対して対向配置されるように構成された基部と、
前記基部の延出方向に変位可能に前記基部に保持された可動部と、を備え、
前記可動部には、前記柱材の前記取付面上に前記取付位置を特定するための指標となる位置を示す指標表示部が設けられていることを特徴とする取付治具。
【請求項2】
前記指標表示部は、前記取付面に罫書き印を付すべく、罫書き用のペン先またはスタンプを差し入れ可能とする挿通孔を含むことを特徴とする請求項1に記載の取付治具。
【請求項3】
前記挿通孔は、前記ペン先を沿わせることで、前記取付体としての丸棒材を前記柱材に挿通して取り付けるための貫通孔の外周を示す円、または前記貫通孔の直径を示す直線を罫書き印として罫書くことが可能な形状を有することを特徴とする請求項2に記載の取付治具。
【請求項4】
前記基準部には、前記挿通孔の高さ方向の中心位置を前記柱材の前記第1側壁側に表示する第1基準部側表示部が設けられていることを特徴とする請求項3に記載の取付治具。
【請求項5】
前記可動部は、前記基部の延出方向に延びる外縁部から突出する突出部を備え、前記突出部は、延出方向に直交する突出方向に延びる端縁部を有しており、
前記指標表示部は、前記端縁部をさらに含み、前記端縁部の前記突出方向の延長線上には、前記挿通孔が位置していることを特徴とする請求項2から4のいずれか一項に記載の取付治具。
【請求項6】
前記突出部が突出する側の前記基部の外縁部は、延出方向に沿って直線形状を有し、前記外縁部および前記端縁部に沿ってL字状の罫書き印を罫書き可能とすることを特徴とする請求項5に記載の取付治具。
【請求項7】
前記基準部には、前記外縁部と同一の仮想平面上に位置し、前記外縁部の位置を前記第1側壁に表示する第2基準部側表示部が設けられていることを特徴とする請求項6に記載の取付治具。
【請求項8】
前記端縁部は、前記端縁部に前記取付体を宛がうことによって、前記取付体を前記第2側壁上の前記取付位置に案内可能であるように構成されていることを特徴とする請求項5に記載の取付治具。
【請求項9】
前記可動部は、前記基部の延出方向に延びる外縁部から突出する突出部を備え、
前記指標表示部は、前記突出部に形成され、前記基部の延出方向と直交する方向に延びる端縁部を含み、前記端縁部は、前記端縁部に前記取付体を宛がうことによって、前記取付体を前記第2側壁上の前記取付位置に案内可能であるように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の取付治具。
【請求項10】
前記基準部と前記基部とを回動可能に接続する接続軸部をさらに備え、
前記基準部および前記基部は、前記接続軸部から互いに同じ方向に延出する折り畳み形態から、前記接続軸部を軸心として270度で相対的に回動した使用時形態で係止されるように構成され、前記使用時形態において、前記基準部の前記当接面と、前記基部の延出方向との間の角度が90度となることを特徴とする請求項1から4および請求項9のいずれか一項に記載の取付治具。
【請求項11】
第1側壁および前記第1側壁と直交して延在する第2側壁を有する柱材に取り付けられる取付体と、前記取付体の取付位置を特定する請求項9に記載の取付治具と、を備える取付体装置であって、
前記突出部の前記端縁部に前記取付体を宛がうことで、前記取付体が前記第1側壁の基準面を基準位置として前記第2側壁の取付面に沿って所定距離離間した取付位置へと案内されることを特徴とする取付体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、柱材に対して取付体の取付位置を特定するための取付治具、ならびに、取付治具および取付体から構成された取付体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、壁裏で立設する柱材に対して配線ボックスなどの配設体を設置する際、配設体を支持する取付体が、柱材の取付面の所定の取付位置に位置決めして取り付けられる。この取付体の取付位置に基づいて、配設体の設置位置が決定されることから、取付体の位置決めが正確に行われる必要がある。
【0003】
例えば、特許文献1は、配設体の設置構造を開示する。以下、当該段落において、()内に特許文献1の符号を示す。特許文献1の設置構造は、軽量形鋼からなる間柱(31)の所定位置に配設体支持具(110)を片持ち状態で固定し、当該配設体支持具(110)に配設体としてのボックス(100)を固定したものである。間柱(31)の前後には、壁材(32)が立設され、壁材(32)の所定位置でボックス(100)を壁表に臨ませるべく、壁表側の壁材(32)に貫通孔(33)が穿設される。そして、貫通孔(33)を介して、ボックス(100)の器具取付部(103)に配線器具が取り付けられる。ボックス(100)の前面は、壁材(32)に干渉せず、且つ、壁材(32)から離間しないように、間柱(31)の前面と略同一平面上に配置されることが必要となる。つまり、ボックス(100)の前後位置を決定するために、配設体支持具(110)の間柱(31)の取付面へ正確に位置決めされることが求められる。特許文献1では、壁材(32)に設けられる貫通孔(33)の位置(高さ)に合わせて配設体支持具(110)を固定する高さを設定して、配設体支持具(110)の固定部(111)を配置する位置を間柱(31)表面に罫書くことによって、配設体支持具(110)の取付位置の特定が行われた。そして、当該罫書きに沿って配設体支持具(110)を間柱(31)に宛がい、間柱(31)の側部に配設体支持具(110)の固定部(111)に設けられた固定孔(111a)にビスを貫通させることにより、配設体支持具(110)を間柱(31)に固定した。さらに、特許文献1の別例の設置構造では、配設体支持具(110)に代えて、支持ボルト(又は固定用ボルト)(110F)が2本の間柱(31)間に架設されている。同様に、支持ボルト(110F)を固定する位置を間柱(31)表面に罫書くことによって、支持ボルト(110F)の取付位置の特定が行われた。
【0004】
特許文献2は、柱材としての軽量形鋼に対して配設体としてのボックスを取り付ける際に用いられるゲージ具を開示する。以下、当該段落において、()内に特許文献2の符号を示す。特許文献2において、軽量間仕切壁は、所定間隔をおいて立設された軽量形鋼(P)の両側から、壁材(1)を挟むようにして立設して形成される。この軽量間仕切壁内にボックス(B)を取付ける場合、次のようにして行われる。最初に、一方の軽量形鋼(P)における背面板部(3)の外側面(3a)の壁厚方向の所定位置に、ボックス固定具(A)の一端部を固定する。他方の軽量形鋼(P)における背面板部(3)の内側面(3b)に、ボックス固定具(A)の他端部を固定する。そして、該ボックス固定具(A)におけるボックス取付面(6a,6b)に、ボックス(B)の底壁(7)を当接して固定する。その際、ボックス(B)の開口面(8)と、軽量形鋼(P)における側板部(4)の外側面(4a)とを略同一平面にすることが必要である。そして、壁材(1)を、前記ボックス(B)の開口面(8)にほぼ当接させた状態で立設する。そのためには、予め取付けられるボックス(B)の厚さ(T)を測定し、該ボックス固定具(A)を、この厚さ(T)だけ壁厚方向に後退させて前記軽量形鋼(P)における背面板部(3)の外側面(3a)に固定させる。そして、該軽量形鋼(P)の壁厚方向におけるボックス固定具(A)の取付位置を、簡単な操作で表示するために、ゲージ具(G1)が使用される。ゲージ具(G1)は、ほぼ直角三角形形状の薄板から成り、その垂直片側の端部に、第1基準部(S1)が形成されている。そして、該第1基準部(S1)の上下には、該第1基準部(S1)と平行に、しかも該基準部(S1)から所定の距離をおいて、第2基準部(S2)が形成されている。そして、ゲージ具(G1)における直角三角形の斜辺側は階段状になっていて、第1基準部(S1)と平行にして、複数の表示部(C1~C6)が形成されている。そして、各表示部(C1~C6)直角な部分に、それぞれ支持部(D1~D6)が形成されている。該ゲージ具(G1)の幅方向における第1基準部(S1)から各表示部(C1~C6)までの間隔(L11~L16)、及び第2基準部(S2)から各表示部(C1~C6)までの間隔(L21~L26)が、各種ボックス(B)の厚さ(T)に対応している。そして、それらの間隔(L11~L16,L21~L26)に対応するボックス(B)の種類とその厚さ(T)が、該ゲージ具(G1)の表面と裏面とに記載されている。ゲージ具(G1)を使用して、ボックス固定具(A)の取付位置を表示するには、まず、軽量形鋼(P)における背面板部(3)の外側面(3a)に、ゲージ具(G1)を当てがう。そして、該ゲージ具(G1)の第1基準部(S1)を、軽量形鋼(P)の壁厚方向に沿った一端縁(22)に当てがって位置合わせする。この状態で、該ゲージ具(G1)を保持し、軽量形鋼(P)における背面板部(3)の外側面(3a)に、取付対象ボックス(B)に対応する該ゲージ具(G1)の表示部(C2)に沿って位置決め線(23)が罫書かれる。この位置決め線(23)に基づいて、該ボックス固定具(A)が軽量形鋼(P)に固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014-117138号公報
【特許文献2】特開平10-219887号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
柱材に対して配設体を設置する際、柱材の一側面を基準面とし、当該基準面からの距離および配設体のサイズに従って、配設体を前面に支持する取付体(配設体支持具、支持ボルト、ボックス固定具)の柱材への壁厚方向の取付位置が予め定められる。そして、特許文献1に示すように、作業者が柱材の取付面に取付体を固定する取付位置をペン等で罫書くことによって、当該取付位置を特定して柱材に表示する。この取付位置の罫書き作業は、作業者が手作業で柱材の一面から距離を測定した上でペンにより罫書き印を付すものであるから、作業者の熟練度によって位置ずれが生じたり、作業に手間がかかることが問題であった。これに対し、特許文献2のように、ゲージ具(取付治具)の使用が提案されている。当該ゲージ具について、ゲージ具を柱材の取付面に宛がった上で、ゲージ具の基準部(端縁)と、柱材の取付面の端縁とを位置合わせして、罫書き印を付す位置が表示部によって取付面上に表示される。しかしながら、このゲージ具の使用には、以下の問題点が存在する。まず、柱材の角部が弧状に湾曲している場合、ゲージ具の基準部と、柱材の取付面の端縁とを位置合わせすることが難しく、ゲージ具の基準部に位置ずれや傾きが生じると、取付体の取付位置を正確に柱材に表示することができないことが問題であった。また、異なるサイズの配設体に対応すべく、ゲージ具に多数の表示部が形成されているため、作業者が、どの表示具を用いるかをその都度確認することを必要とするため手間がかかり、また、どの表示部を用いるかを迷ったり間違えるおそれもあることから、使い勝手が良くない点もまた問題として挙げられる。
【0007】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、取付体を柱材の所定の取付位置により正確かつより容易に取り付けることを補助とする取付治具を提供することにある。また、本発明のさらなる目的は、当該取付治具および取付体から構成される取付装置をも提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の取付治具は、第1側壁および前記第1側壁と直交して延在する第2側壁を有する柱材への取付体の取付位置を特定する取付治具であって、
前記第1側壁に画定された基準面に当接して配置される当接面を有する基準部と、
前記基準部に連設され、前記基準面を基準とした前記取付体の取付位置を、前記第2側壁に画定された取付面上に特定するための位置特定部と、を備え、
前記位置特定部は、
前記基準部から離間するように延出し、前記基準部が前記基準面に宛がわれた状態で、前記当接面に対して直交方向に延びるとともに前記取付面に対して対向配置されるように構成された基部と、
前記基部の延出方向に変位可能に前記基部に保持された可動部と、を備え、
前記可動部には、前記柱材の前記取付面上に前記取付位置を特定するための指標となる位置を示す指標表示部が設けられていることを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の取付治具は、請求項1に記載の取付治具において、前記指標表示部は、前記取付面に罫書き印を付すべく、罫書き用のペン先またはスタンプを差し入れ可能とする挿通孔を含むことを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載の取付治具は、請求項2に記載の取付治具において、前記挿通孔は、前記ペン先を沿わせることで、前記取付体としての丸棒材を前記柱材に挿通して取り付けるための貫通孔の外周を示す円、または前記貫通孔の直径を示す直線を罫書き印として罫書くことが可能な形状を有することを特徴とする。
【0011】
請求項4に記載の取付治具は、請求項3に記載の取付治具において、前記基準部には、前記挿通孔の高さ方向の中心位置を前記柱材の前記第1側壁側に表示する第1基準部側表示部が設けられていることを特徴とする。
【0012】
請求項5に記載の取付治具は、請求項2から4のいずれか一項に記載の取付治具において、前記可動部は、前記基部の延出方向に延びる外縁部から突出する突出部を備え、前記突出部は、延出方向に直交する突出方向に延びる端縁部を有しており、
前記指標表示部は、前記端縁部をさらに含み、前記端縁部の前記突出方向の延長線上には、前記挿通孔が位置していることを特徴とする。
【0013】
請求項6に記載の取付治具は、請求項5に記載の取付治具において、前記突出部が突出する側の前記基部の外縁部は、延出方向に沿って直線形状を有し、前記外縁部および前記端縁部に沿ってL字状の罫書き印を罫書き可能とすることを特徴とする。
【0014】
請求項7に記載の取付治具は、請求項6に記載の取付治具において、前記基準部には、前記外縁部と同一の仮想平面上に位置し、前記外縁部の位置を前記第1側壁に表示する第2基準部側表示部が設けられていることを特徴とする。
【0015】
請求項8に記載の取付治具は、請求項5に記載の取付治具において、前記端縁部は、前記端縁部に前記取付体を宛がうことによって、前記取付体を前記第2側壁上の前記取付位置に案内可能であるように構成されていることを特徴とする。
【0016】
請求項9に記載の取付治具は、請求項1に記載の取付治具において、前記可動部は、前記基部の延出方向に延びる外縁部から突出する突出部を備え、
前記指標表示部は、前記突出部に形成され、前記基部の延出方向と直交する方向に延びる端縁部を含み、前記端縁部は、前記端縁部に前記取付体を宛がうことによって、前記取付体を前記第2側壁上の前記取付位置に案内可能であるように構成されていることを特徴とする。
【0017】
請求項10に記載の取付治具は、請求項1から4および請求項9のいずれか一項に記載の取付治具において、前記基準部と前記基部とを回動可能に接続する接続軸部をさらに備え、
前記基準部および前記基部は、前記接続軸部から互いに同じ方向に延出する折り畳み形態から、前記接続軸部を軸心として270度で相対的に回動した使用時形態で係止されるように構成され、前記使用時形態において、前記基準部の前記当接面と、前記基部の延出方向との間の角度が90度となることを特徴とする。
【0018】
請求項11に記載の取付体装置は、第1側壁および前記第1側壁と直交して延在する第2側壁を有する柱材に取り付けられる取付体と、前記取付体の取付位置を特定する請求項9に記載の取付治具と、を備える取付体装置であって、
前記突出部の前記端縁部に前記取付体を宛がうことで、前記取付体が前記第1側壁の基準面を基準位置として前記第2側壁の取付面に沿って所定距離離間した取付位置へと案内されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
請求項1に記載の取付治具によれば、柱材の第1側壁の基準面に基準部の当接面を宛がって当接させることによって、取付体の取付位置を特定するための基準位置を正確に決定することが可能である。また、位置特定部は、基準部を基準面に宛がった状態で、基部が、当接面に対して直交方向に延びるともに取付面に対して対向配置されるように構成されている。これにより、基部が延びる延設方向の長さに基づいて、第2側壁の取付面上における第1側壁の基準面からの距離を正確に測定することが可能である。そして、取付位置の指標となる位置を示す指標表示部を有する可動部が、基部の延出方向に変位可能に基部に保持されている。つまり、基準面を基準として予め定められた一の取付位置(基準面から取付位置までの所定の最短直線距離)に基づいて、可動部を基部の延設方向に沿って移動させることで、指標表示部によって取付面上に取付位置の指標となる位置を示し、柱材への取付体の取付位置を特定することができる。また、所定の取付位置が異なる場合であっても、可動部の移動距離を変更することによって、指標表示部によって取付面上に取付位置の指標となる位置を示し、柱材への取付体の取付位置を特定することができる。したがって、本発明の取付治具は、取付体を柱材の所定の取付位置により正確かつより容易に取り付けることを補助とするものである。
【0020】
請求項2に記載の取付治具によれば、請求項1の発明の効果に加えて、挿通孔に罫書き用のペン先またはスタンプを差し入れることで、指標表示部によって特定した取付位置の指標となる位置に、罫書き印を付すことができる。
【0021】
請求項3に記載の取付治具によれば、請求項2の発明の効果に加えて、作業者が、挿通孔に従って、貫通孔の外周を示す円または貫通孔の直径を示す直線を第2側壁の取付面に罫書くことによって、丸棒材の取り付けるための貫通孔を壁材に正確に穿孔することを補助し、取付体としての丸棒材を柱材に挿通して取り付ける作業が容易となる。さらには、壁材への貫通孔穿孔によって、円または直線状の罫書き印の全体がなくなるか否かによって、作業者が、貫通孔が正確な位置に形成されたかどうかを確認することが可能である。また、円形または線形の罫書き印が、貫通孔の外径を視覚的に示していることから、作業者が間違った穿孔径の穿孔工具を用いることを防止できる。さらに、円形または線形の罫書き印は、貫通孔の中心位置を示す罫書き点と比べて、穿孔工具(例えば、パンチ刃、ドリル刃)の刃先の穿孔時位置合わせを容易とするものである。
【0022】
請求項4に記載の取付治具によれば、請求項3の発明の効果に加えて、第1基準部側表示部が、挿通孔の高さ方向の中心位置を柱材の第1側壁側に表示する。すなわち、作業者が、基準部の第1基準部側表示部を確認することによって、第1側壁側から挿通孔の中心位置を視認することが可能である。これにより、柱材の取付面の正確な高さ位置に、貫通孔を穿設するための罫書き印を罫書くことが容易となる。
【0023】
請求項5に記載の取付治具によれば、請求項2から4のいずれかの発明の効果に加えて、指標表示部が、基準面からの取付位置の相対距離を同様に示す挿通孔および端縁部の2つを含むことによって、作業者が作業環境等に応じて、より罫書き易い方を選択することができる。
【0024】
請求項6に記載の取付治具によれば、請求項5の発明の効果に加えて、指標表示部として端縁部を使用した場合の罫書き印をL字形状とすることによって、罫書き印の垂直線が取付位置の基準面からの相対位置を表示し、かつ、水平線が取付位置の高さ位置を表示することが可能である。
【0025】
請求項7に記載の取付治具によれば、請求項6の発明の効果に加えて、指標表示部として端縁部を使用した場合、第2基準部側表示部が、外縁部の高さ位置を柱材の第1側壁側に表示する。すなわち、作業者が、基準部の第2基準部側表示部を確認することによって、第1側壁側から、(外縁部に沿って罫書かれる予定の)L字形状の罫書き印の水平線の高さ位置を視認することが可能である。これにより、柱材の取付面の正確な高さ位置に、貫通孔を穿設するためのL字状の罫書き印を罫書くことが容易となる。
【0026】
請求項8に記載の取付治具によれば、請求項5の発明の効果に加えて、指標表示部として端縁部を使用した場合、端縁部が取付体の取付位置を特定し、作業者が取付体を当該端縁部に宛がうことによって、取付体を取付位置へと案内して位置合わせすることが可能である。
【0027】
請求項9に記載の取付治具によれば、請求項1の発明の効果に加えて、指標表示部として端縁部が、柱材の取付面上に取付位置の指標となる位置を示すことにより、端縁部が取付体の取付位置を特定し、作業者が取付体を当該端縁部に宛がうことによって、取付体を取付位置へと案内して位置合わせすることが可能である。
【0028】
請求項10に記載の取付治具によれば、請求項1から4および請求項9のいずれかの発明の効果に加えて、取付治具は、基準部および基部が同じ方向に延出するように互いにコンパクトに折り畳まれた折り畳み形態と、当接面と基部の延出方向との間の角度が90度となる使用時形態との間で変位可能である。作業者は、取付治具を使用しない時には、折り畳み形態を選択して、取付治具を嵩張らずに携帯や保管することができる。一方で、取付治具を使用する際、基準部および基部が軸部を軸心として270度で相対的に回動した状態で係止されることから、取付治具の使用時形態が安定的に維持され得る。特には、基準部を柱材に宛がう際に基準部を表面から押圧したとしても、基準部と基部との当たり合いによって、取付治具の使用時形態が崩れることが効果的に抑えられる。
【0029】
請求項11に記載の取付体装置によれば、少なくとも請求項9の取付治具に係る発明の効果を、取付体装置として発揮することが可能である。特には、指標表示部として端縁部が、柱材の取付面上に取付位置の指標となる位置を示すことにより、端縁部が取付体の取付位置を特定し、作業者が取付体を当該端縁部に宛がうことによって、取付体を、第1側壁の基準面を基準位置として第2側壁の取付面に沿って所定距離離間した取付位置へと案内して位置合わせすることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本発明の一実施形態の取付治具の概略斜視図。
図2図1の取付治具の正面図。
図3図1の取付治具の側面図。
図4図1の取付治具の平面図。
図5図2の取付治具の(a)A-A断面図および(b)B-B断面図。
図6図1の取付治具の分解斜視図。
図7図1の取付治具を折り畳んだ姿勢を示す概略斜視図。
図8図7の取付治具において、基準部および基部が相対的に回動可能な範囲を示す模式図。
図9】本発明の一実施形態の第1の取付体装置および柱材を示す概略分解斜視図。
図10】本発明の一実施形態の第1の取付体装置において、取付治具を用いて柱材における取付位置を特定する第1の使用形態を示す概略斜視図。
図11図10の第1の使用形態において、柱材を罫書き印を付した模式図であって、(a)円形の罫書き印を示し、(b)L字形の罫書き印を示す。
図12図11の罫書き印に基づいて、ボックスを支持する丸棒材(取付体)を柱材に設置した第1の設置構造を示す概略斜視図。
図13図12の第1の設置構造の(柱材の基準面から見た)正面図。
図14図12の第1の設置構造の平面図。
図15図10の第1の使用形態の変形例を示す概略斜視図。
図16】本発明の一実施形態の第2の取付体装置および柱材を示す概略分解斜視図。
図17】本発明の一実施形態の第2の取付体装置において、取付治具を用いて柱材における取付位置を特定する第2の使用形態を示す概略斜視図。
図18図17の第2の使用形態において、端縁部によって取付面上に取付位置を表示する形態を示す模式図。
図19図18の取付治具に基づいて、ボックスを支持する支持具(取付体)を柱材に設置した第2の設置構造を示す概略斜視図。
図20図18の第2の設置構造の(柱材の基準面から見た)正面図。
図21図18の第2の設置構造のC-C平面図。
図22図17の第2の使用形態の変形例を示す概略斜視図。
図23】本発明の別実施形態の取付治具の概略斜視図。
図24】本発明の別実施形態の取付治具の概略斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、以下の説明において参照する各図の形状は、好適な形状寸法を説明する上での概念図又は概略図であり、寸法比率等は実際の寸法比率とは必ずしも一致しない。つまり、本発明は、図面における寸法比率に限定されるものではない。また、本発明における上下左右の方向は、相対的な位置を示す概念にすぎず、これらを入れ替えて適用可能であることは言うまでもない。
【0032】
本発明の一実施形態の取付治具100は、壁裏に立設された柱材への取付体の取付位置を特定する用途に用いられる。本実施形態において、柱材は、図9等に示されるように、一方向が開放され、3つの側壁のうち隣接する側壁同士が直交して延在する軽量形鋼Pとして例示される。この軽量形鋼Pの前面および後面に沿って軽量間仕切壁として壁材が立設される。取付体は、ボックスを支持する丸棒材11(図9参照)または支持具13(図16参照)として例示され、軽量形鋼Pの(前面および後面と直交する)一の側壁の壁面に取り付けられる。取付体に支持される配設体は、配線配管ボックスであり、該ボックスの開口面が壁材の裏面に沿うように、少なくとも壁厚方向に位置決めされて設置される(図14図20参照)。そして、壁材に壁孔を穿孔することによって、ボックスの開口面(前面)が、壁孔を介して壁表に臨むように配置される。ここで、軽量形鋼Pの前側(または後側)の側壁が第1側壁として定められ、軽量形鋼Pの(第1側壁に隣接して直交する)側方を向く側壁が第2側壁として定められる。軽量形鋼Pの第1側壁の壁面が基準面P1と画定され、軽量形鋼Pの第2側壁の壁面が取付体が取り付けられる取付面P2と画定される。取付体の壁厚方向の取付位置は、ボックスの基準面P1から距離によって予め定められる。つまり、取付体に支持された状態のボックスの厚み(サイズ)に応じて、ボックスの開口面と、軽量形鋼Pの前面(基準面P1)とが略同一の仮想平面上に位置するように、取付体が取付面P2に取り付けられるべき取付位置(基準面P1からの離間距離)が計算される。本実施形態の取付治具100は、(少なくとも基準面P1からの離間距離を示す)予め定められた取付位置を特定するための指標となる位置(例えば、罫書き位置や宛がい位置等)を、軽量形鋼Pの第2側壁の取付面P2上に直接的または間接的(例えば、投影により)に示すことによって、取付体を軽量形鋼Pに固定することを補助するものである。しかしながら、本実施形態は、本発明の一例にすぎず、本発明の技術的範囲から逸脱しない限り、その用途、構成を限定するものではないことは言うまでもない。
【0033】
本明細書において、取付体装置は、取付体と、取付治具とを備える装置として説明される。取付体装置は、任意に、取付体に支持される配設体を含んで解釈されてもよい。取付体装置は、取付体と取付治具とを組み合わせて使用することにより、取付体を柱材の所定の取付位置へと固定可能とするものである。また、取付体、取付治具および1または複数の柱材を備える構成は、配設体設置装置として定義され得る。この配設体設置装置は、任意に、配設体および/または壁材を含んでもよい。作業者は、この配設体設置装置を用いて、配設体を壁材に対して設置した設置構造を構築することができる。
【0034】
以下、本発明の取付治具100の具体的な構成を説明する。図1は、本発明の一実施形態の取付治具100の概略斜視図である。図2は、取付治具100の正面図である。図3は、取付治具100の側面図である。図4は、取付治具100の平面図である。図5(a)、(b)は、取付治具100のA-A、B-B断面図である。なお、図1乃至図5は、使用状態の取付治具100を示している。図6は、取付治具100の分解斜視図である。
【0035】
図1乃至図6に示すとおり、取付治具100は、軽量形鋼Pの第1側壁に画定された基準面P1に当接して配置される第1当接面111を有する基準部110と、該基準部110に連設され、基準面P1を基準とした取付体の取付位置を、第2側壁に画定された取付面P2上に特定するための位置特定部130と、該基準部110および位置特定部130(基部131)を回動可能に接続する接続軸部150とを備える。以下、本実施形態の取付治具100の各構成要素についてより詳細に説明する。
【0036】
基準部110は、予め定められた取付位置を取付面P2上に位置特定部130で特定するための基準位置を成すように構成されている。基準部110は、軽量形鋼Pの基準面P1に宛がわれるように矩形状の平板として形成されている。本実施形態では、基準部110は、透明または半透明な硬質合成樹脂材料から形成された。作業者は、基準部110を軽量形鋼Pの側壁に宛がったときに、必要に応じて、透明または半透明な基準部110を介して側壁表面を目視可能である。また、基準部110は、その裏面に、軽量形鋼Pの基準面P1に面で当接可能な平面を有する第1当接面111を有している。第1当接面111は、第1側壁の平面をなす基準面P1に対して平行な姿勢で面で当接するように構成されている。
【0037】
図2に示すように、基準部110の表面には、壁表側の作業者に対して、取付位置の高さ位置に関する情報を表示するための第1基準部側表示部113、第2基準部側表示部114および第3基準部側表示部115が形成されている。作業者が、第1基準部側表示部113、第2基準部側表示部114および第3基準部側表示部115を壁表側(軽量形鋼Pの第1側壁側)から確認することによって、取付位置の高さ位置に関する指標を視認することが可能である。また、取付位置の高さ位置は、レーザー水準器によって軽量形鋼Pの外面にレーザー照射することによって決定されてもよい。従来、高さ位置特定のためにレーザー水準器を用いる場合、取付面P2にレーザー照射による高さ表示をした上で罫書き印が付される。しかしながら、作業者がペン等で罫書き印を付す際、レーザーが手によって遮られて、罫書き直前や罫書き途中でレーザー照射による高さ表示が消えてしまい、罫書き位置のずれが生じることが問題であった。これに対し、本実施形態の取付治具100では、取付位置の高さ位置を示す、第1基準部側表示部113、第2基準部側表示部114および第3基準部側表示部115が、罫書き印が付される取付面P2に宛がわれる位置特定部130ではなく、基準面P1に宛がわれる基準部110側に形成されている。これにより、レーザー水準器で基準部110側にレーザー照射することで、罫書き作業時にレーザー照射が遮られることが防止される。よって、作業者が、軽量形鋼Pの取付面P2の正確な高さ位置に、罫書き印を罫書くことが容易となる。
【0038】
第1基準部側表示部113は、図2の正面図において、最上段に形成された番号1で表示された水平線であり、位置特定部130の挿通孔142の高さ方向の中心と同一の仮想平面上に位置し、挿通孔142のの中心位置を軽量形鋼Pの第1側壁側に表示するものである。後述するとおり、第1基準部側表示部113は、指標表示部として罫書き用に挿通孔142が選択された場合(図11(a)の円形の罫書き印M1を参照のこと)に、取付体(丸棒材11)の取付位置の高さ位置を間接的に基準面P1上に表示する。
【0039】
また、第2基準部側表示部114は、図2の正面図において、番号2で表示された水平線であり、位置特定部130の基部131の下側の外縁部137と同一の仮想平面上に位置し、外縁部137の高さ方向の位置を軽量形鋼Pの第1側壁側に表示するものである。後述するとおり、第2基準部側表示部114は、指標表示部として罫書き用に端縁部145が選択された場合(図11(b)のL字形の罫書き印M2を参照のこと)に、取付体(丸棒材11または支持具13)の取付位置の高さ位置を間接的に基準面P1上に表示する。
【0040】
さらに、第3基準部側表示部115は、図2の正面図において、番号3、4で表示された2本の水平線であり、取付体である支持具13の高さ方向の中心位置を軽量形鋼Pの第1側壁側に表示するものである。なお、第3基準部側表示部115は、異なる大きさの支持具13に対応するように2本の水平線から構成された。後述するとおり、第3基準部側表示部115は、指標表示部として案内用に端縁部145が選択された場合(図19の設置構造を参照のこと)に、取付体(支持具13)の取付位置の高さ位置を間接的に基準面P1上に表示する。
【0041】
なお、第1基準部側表示部113、第2基準部側表示部114および第3基準部側表示部115は、透明の基準部110の裏面に刻印された、水平方向の直線状に延びる凸条線から構成されたが、印刷や溝であってもよく、あるいは、水平方向に離間する複数の点や孔から構成されてもよい。
【0042】
また、基準部110には、軽量形鋼Pの基準面P1への取付治具100の仮保持を可能とする磁着部117が設けられている。この磁着部117は、磁性金属製の軽量形鋼Pに磁着し、取付治具100の自重落下を防止する磁石を基準部110に有するように構成されている。例えば、磁着部117は、ネオジム磁石などの強力な永久磁石から形成され得る。
【0043】
さらに、基準部110は、軽量形鋼P(柱材)の垂直を確認するための水平器118を有する。作業者が、取付治具100を使用して取付体の取付位置を特定する作業を行う際、基準部110を基準面P1に宛がった状態で、水平器118を用いて、軽量形鋼Pが垂直に立設しているかどうかを確認することができる。すなわち、水平器118は、基準部110および位置特定部130が、軽量形鋼Pの第1側壁の基準面P1および第2側壁の取付面P2に対してそれぞれ平行な姿勢で宛がわれたときに、軽量形鋼Pが垂直である場合にのみ、水平を表示するように構成されている。
【0044】
位置特定部130は、基準部110に連設され、該基準部110からの距離に基づいて、基準面P1を基準とした取付体の取付位置を、軽量形鋼Pの取付面P2上に特定するように構成されている。位置特定部130は、軽量形鋼Pの基準面P1に宛がわれるように全体として矩形状の平板として形成されている。そして、位置特定部130は、基準部110から離間するように延出する基部131と、該基部131の延出方向に変位可能に該基部131に保持された可動部141と、を備える。本実施形態では、基部131および可動部141は、透明または半透明な硬質合成樹脂材料から形成された。作業者は、位置特定部130を軽量形鋼Pの側壁に宛がったときに、必要に応じて、透明または半透明な位置特定部130を介して側壁表面を目視可能である。
【0045】
基部131は、基準部110から離間するように延出し、延出方向に長手状に延びる矩形板状体からなる。基部131は、基準部110が基準面P1に宛がわれた状態で、第1当接面111に対して直交方向に延びるともに取付面P2に対して対向配置されるように構成されている。具体的には、図4に示すように、使用時形態の取付治具100において、基部131平面が、基準部110の第1当接面111に対して直交方向に延びている。また、基部131は、その裏面に、軽量形鋼Pの側壁に面で当接可能な平面を有する第2当接面132を有している。そして、第1当接面111および第2当接面132は、互いに直角をなしている。この第2当接面132は、第2側壁の平面をなす取付面P2に対して平行な姿勢で対向配置されるように構成されている。
【0046】
また、図3に示すように、基部131には、基端側(基準部110側)から先端近傍にかけて延出方向に沿って延びる第1スライド溝133と、該第1スライド溝133の下方で延びる第2スライド溝134が貫通形成されている。第1スライド溝133および第2スライド溝134は、可動部141を基部131の延出方向にスライド可能に保持するための溝である。第1スライド溝133には、可動部141の挿通孔142が配置され、第2スライド溝134には、可動部141のロック部147が配置されている。第2スライド溝134の上下には、表面側に突出した一対の規制壁135が設けられている。一対の規制壁135は、可動部141のロック部147の回転量を規制するものである。一対の規制壁135は、第2スライド溝134の基端側部位には形成されず、基端側部位以外の部位の全体に亘って延在している。
【0047】
そして、基部131の延設方向に直交する縦幅方向の一方(上側)の端縁近傍には、目盛部136が形成されている。目盛部136は、基準部110の第1当接面111が第2当接面132と交差する箇所を基準位置(すなわち0位置)として、延出方向に沿った基準位置からの距離(cm)を表示するものである。また、基部131の延設方向に直交する縦幅方向の他方(下側)の端縁には、延出方向に沿って延びる外縁部137が定められている。外縁部137は、後述するL字状の罫書き印の水平線を罫書き可能とするように直線形状を有している。
【0048】
可動部141は、図3図5および図6に示すように、基部131の延出方向に変位可能に基部131に保持され、基部131上の相対位置によって、予め定められた取付位置を取付面P2上に特定することを可能とするものである。可動部141の相対位置(つまり、第1当接面111との離間距離)は、目盛部136によって測定可能である。可動部141は、基部131の延出方向に直交する縦幅方向に長手状に延びる矩形板状体からなる。
【0049】
可動部141は、図5(a)に示すように、矩形板状体の下側部位に設けられたロック部147によって基部131に保持されている。ロック部147は、基部131の第2スライド溝134を介して可動部141を基部131に圧接させることで保持するものである。また、ロック部147は、可動部141を基部131の延出方向の所定位置に仮固定するように構成されている。作業者は、ロック部147による仮固定を簡単に解除操作することも可能である。
【0050】
図6に示すように、ロック部147は、作業者によって操作されるロック部材147aと、可動部141の下側部位に穿設されたロック孔147bとから構成される。ロック部材147aは、摘まみ部、円形鍔部および軸部からなる。ロック部材147aの軸部は、第2スライド溝134を貫通して、ロック孔147bに螺合するように構成されている。ロック部材147aがロック孔147bに締め付けられることによって、円形鍔部と可動部141本体とで、基部131を挟圧することが可能である。ロック部材147aのロック孔147bへの締結を緩めることによって、可動部141がロック解除されてスライド可能となる。また、ロック部材147aの摘まみ部は、円形鍔部の外周から突出するように延在している。そして、第2スライド溝134の上下に延びる一対の規制壁135間の距離が、ロック部材147aの摘まみ部の長さよりも小さい。これにより、ロック部材147aが、一対の規制壁135間で必要以上に回転してロック孔147bから抜け落ちることが規制される。一方で、一対の規制壁135よりも基端側の位置では、ロック部材147aを回転させてロック孔147bから離脱させることが可能である。
【0051】
また、可動部141には、軽量形鋼Pの取付面P2上に取付位置を特定するための指標となる位置を示す指標表示部が設けられている。本実施形態では、指標表示部は、挿通孔142および突出部144(端縁部145)を含む2つの手段から構成されている。
【0052】
図3に示すように、可動部141の矩形板状体の上側部位には、指標表示部として挿通孔142が貫通形成されている。挿通孔142は、基部131の第1スライド溝133内に配置され、第1スライド溝133内を基部131の延出方向に沿って相対移動可能である。また、挿通孔142は、取付面P2に罫書き印を付すべく、罫書き用のペン先またはスタンプを差し入れ可能とするように構成されている。挿通孔142は、その内周縁にペン先を沿わせることで、取付体としての丸棒材11を軽量形鋼Pに挿通して取り付けるための貫通孔の外周を示す円を罫書き印M1(図11(a)参照)として罫書くことが可能な形状を有する。この挿通孔142は、丸棒材11の外周形状に対応する円形状を有する。あるいは、挿通孔142は、該貫通孔の直径を示す直線を罫書き印として罫書くことが可能な形状を有してもよい。例えば、挿通孔142は、図示しないが、線溝や十字溝である。また、挿通孔142周縁には、挿通孔142の中心を目盛部136に指し示す矢印(指示部)148が表示されている。作業者は、目盛部136および矢印148に従って、挿通孔142の中心を基部131上の基準位置から正確な距離に変位させることができる。したがって、挿通孔142は、取付体の取付位置の少なくとも壁厚方向の位置を特定するものである。
【0053】
なお、本発明において、罫書き用のペンに替えて、罫書き用のスタンプが使用されてもよい。例えば、罫書き用のスタンプは、挿通孔142に差し入れ可能であるように可動部141(例えば挿通孔142周縁部分)に一体的に形成、または着脱式に装着されてもよい。特には、罫書き用のスタンプは、押すと罫書き印を表示できる浸透印タイプのスタンプであってもよい。スタンプによる罫書き印は、好ましくは、貫通孔の外周を示す円形状や、貫通孔の直径を示す1本の直線や十字形状であるが、任意に定められ得る。
【0054】
さらに、可動部141の矩形板状体の下端部には、図3および図5(b)に示すように、基部131の延出方向に延びる外縁部137から突出する突出部144が設けられている。突出部144は、基部131の延出方向に直交する突出方向に延びる端縁部145を有している。また、端縁部145は、突出部144の突出方向に沿って直線状に延びている。換言すると、取付治具100が位置決めのために軽量形鋼Pに宛がわれた状態において、端縁部145は、軽量形鋼P(柱材)の高さ方向に沿って、かつ、第2側面の取付面P2に沿って延びるように構成されている。この端縁部145が、第2の指標表示部として機能する。本実施形態では、突出部144の突出長さ(端縁部145の長さ)が、挿通孔142の内径と等しく、貫通孔の直径に対応している。しかしながら、本発明において、突出部144の突出長さは任意に定められてもよい。なお、突出部144の表面には、作業者に対して、端縁部145が指標表示部であることを指し示す矢印(指示部)が表示されてもよい(図示せず)。
【0055】
より具体的には、端縁部145は、指標表示部として、取付体(丸棒材11、支持具13)の取付位置を示す垂直線の罫書き印を取付面P2にペン先で罫書くことを可能とする。また、端縁部145は、指標表示部として、当該端縁部145に支持具13を宛がうことによって、支持具13を第2側壁の取付面P2上の取付位置に案内可能であるように構成されている。換言すると、端縁部145は、指標表示部として、支持具13の取付位置またはその指標を取付面P2以外の箇所に間接的に表示するものである。したがって、端縁部145は、取付体の取付位置の少なくとも壁厚方向の位置を特定するものである。
【0056】
また、端縁部145の突出方向の延長線上には、挿通孔142の中心が位置している。つまり、基準位置(基準部110の第1当接面111)と端縁部145との(延出方向の)離間距離と、基準位置と挿通孔142の中心との離間距離とが等しい。すなわち、可動部141を目盛部136および矢印148に従って移動させると、可動部141の変位に伴って、挿通孔142および端縁部145が、その相対位置を維持したまま連れ移動可能である。これにより、作業者は、可動部141の位置を変更することなく、罫書き場所の状況や作業者の好みに応じて、挿通孔142および端縁部145のいずれを指標表示部(または罫書き手段)として使用するかを選択可能である。
【0057】
さらに、図5および図6に示すように、可動部141の下端部には、突出部144に隣接して端縁部145と直交方向(すなわち、基部131の延出方向)に延びる水平端縁部146が設けられている。この水平端縁部146は、基部131の外縁部137に沿って直線状に延びている。すなわち、端縁部145および水平端縁部146が、2本の直線が直交するL字形状を成している。この端縁部145は、水平端縁部146と協働して、外縁部137および端縁部145に沿ってL字形の罫書き印M2(図11(b)参照)を罫書くことを可能とする。また、本実施形態では、端縁部145と水平端縁部146の長さがほぼ等しくなるように定められた。
【0058】
接続軸部150は、基準部110と位置特定部130の基部131とを回動可能に接続するように構成されている。接続軸部150は、図6に示すように、基部131の延出方向に直交する縦幅方向に延伸する軸材であり、基準部110の端部と基部131の端部とを軸着するものである。図4に示すように、取付治具100の使用時形態では、基準部110の端面と基部131の裏面とが面で当たり合っていることから、第1当接面111および第2当接面132が直角に維持されている。特には、基準部110を軽量形鋼Pに宛がう際に基準部110を表面(壁表側)から押圧したとしても、基準部110と基部131との当たり合いによって、取付治具100の使用時形態が崩れることが効果的に抑えられる。
【0059】
図7および図8は、折り畳み形態の取付治具100の斜視図および平面図である。上述したとおり、基準部110および位置特定部130が接続軸部150によって回動可能に接続されていることから、取付治具100は、使用時形態と折り畳み形態とに相互に変位可能である。この折り畳み形態では、取付治具100は、基準部110および基部131が同じ方向に延出するように互いにコンパクトに折り畳まれている。図8の矢印に示すように、基準部110および位置特定部130は、折り畳み形態から開始して、接続軸部150を軸心として270度で相対的に回動した使用時形態で係止されるように構成されている。そして、使用時形態において、基準部110の第1当接面111と、基部131の延出方向(第2当接面132)との間の角度が90度となる。
【0060】
図9は、第1の取付体装置10および柱材である軽量形鋼Pを示す概略分解斜視図である。第1の取付体装置10は、軽量形鋼Pの第2側壁の取付面P2に取り付けられる丸棒材11(取付体)と、軽量形鋼Pの第1側壁の基準面P1に基づいて丸棒材11の取付位置を取付面P2上に特定する取付治具100と、を備える装置である。本実施形態では、丸棒材11は長尺のボルト軸からなる。
【0061】
本形態では、基準面P1は、軽量形鋼Pの前面に定められ、取付面P2は前面と後面との間の側壁外面に定められた。また、図9において、ボックスB(図12参照)の形状に基づいて予め定められた取付位置(または取付予定位置)がP3で示されている。ここで、取付位置P3は、丸棒材11を挿通して固定するために形成されるべき貫通孔の外周円として、図9に点線で示されている。つまり、取付面P2の取付位置P3に貫通孔が形成され、当該貫通孔に丸棒材11が挿通されることで、丸棒材11が軽量形鋼Pの取付面P2に固定される。さらに付記すると、配設体設置装置は、丸棒材11(取付体)、取付治具100、および1または複数の軽量形鋼P(柱材)を備える。この配設体設置装置は、任意に、ボックスBおよび/または壁材を含んでもよい。
【0062】
次いで、第1の取付体装置10について、取付治具100を用いて取付位置P3を特定する方法について説明する。図10は、取付治具100の第1の使用形態の斜視図である。まず、取付治具100を折り畳み形態から使用時形態へと変位させる。そして、使用時形態の取付治具100を操作して、基準部110の第1当接面111を基準面P1に宛がうとともに、基部131の第2当接面132を取付面P2へと宛がう。このとき、第1当接面111を基準面P1に対して平行な姿勢で当接させ、かつ、第2当接面132を取付面P2に対して平行な姿勢で対向配置して当接させる。取付治具100は、自重で落下しないように磁着部117によって軽量形鋼Pに保持され得る。そして、予め定められた基準面P1と取付位置P3との壁厚方向の離間距離に基づいて、可動部141を基部131の所定位置へと相対移動させる。なお、可動部141を基部131の所定位置に相対移動させた後に、取付治具100が軽量形鋼Pに宛がわれてもよい。任意に、取付位置P3の高さ位置を合わせる必要がある場合、例えば、レーザー水準器を用いて基準面P1上に高さ位置を特定し、第1基準部側表示部113または第2基準部側表示部114を用いて、取付治具100の高さ位置を調整する。そして、第1の使用形態において、取付治具100の位置特定部130によって、取付面P2上に取付位置P3が特定される。
【0063】
図11(a)は、第1の使用形態において、作業者が指標表示部として挿通孔142を選択し、取付面P2上に円形の罫書き印M1を付した形態を示している。作業者は、罫書き用のペン先を挿通孔142に差し入れ、挿通孔142の内周縁にペン先を沿わせることで、丸棒材11(または他の種類の取付体でもよい)を取付位置P3に固定するための円形の罫書き印M1を取付面P2に罫書くことができる。この罫書き印M1の中心の高さ位置は、第1基準部側表示部113によって取付面P2上に表示されている。なお、ペンの代わりに、挿通孔142に挿入可能なスタンプによって罫書き印M1が付されてもよい。また、罫書き印M1は傷やシールなどであってもよい。
【0064】
罫書き印M1は、貫通孔の穿孔(予定)位置に、丸棒材11を軽量形鋼Pの側壁に挿通して取り付けるための貫通孔の外周を示す円を表示している。罫書き印M1は、挿通孔を貫通孔の直径に対応する直線状の貫通溝(図23を参照)とすることで、形成されるべき貫通孔の直径を示す直線形としてもよい。ここで、罫書き印M1が、貫通孔の外周に対応する円形、または貫通孔の直径に対応する直線であることにより、穿孔工具の(貫通孔径に対応する)円形の穿孔刃(パンチ刃、ドリル刃)の外形状を利用して位置合わせをすることが容易である。例えば、穿孔工具で貫通孔を形成する場合、中心位置を示す罫書き点では、穿孔刃の位置合わせがやりにくいが、罫書き印が円形や直径を示す直線であると位置合わせがしやすい。また、作業者は、罫書き印M1を目視することによって、穿孔工具の穿孔刃の選択を迅速に行うことが可能である。罫書き印M1と宛がった穿孔工具の大きさが違うことにも気づきやすく、誤った大きさの貫通孔を形成することがない。さらに、罫書き印M1と貫通孔の形状とが対応していることから、貫通孔が正しく形成されると、罫書き印M1が取付面P2上から消えることになる。作業者は、罫書き印M1が取付面P2上に残っていないことを目視することで、貫通孔が正しく取付位置P3に形成されたことを確認することができる。例えば、作業者が、誤って、罫書き印M1よりも小さい孔を貫通孔として形成した場合、使用する穿孔刃の径を間違ったことに気付いて、穿孔作業をやり直すことができる。
【0065】
図11(b)は、第1の使用形態において、作業者が指標表示部として端縁部145を選択し、取付面P2上にL字形状の罫書き印M2を付した形態を示している。作業者は、罫書き用のペン先を端縁部145および水平端縁部146に沿わせることで、丸棒材11(または他の種類の取付体でもよい)を取付位置P3に固定するためのL字形の罫書き印M2を取付面P2に罫書くことができる。罫書き印M2の水平線の高さ位置は、第2基準部側表示部114によって取付面P2上に表示されている。
【0066】
一般に、丸棒材11を取り付けるための円形の貫通孔を軽量形鋼Pに形成する場合、作業者が指標表示部として挿通孔142を選択することが好ましい。一方で、2本の軽量形鋼P間の狭い空間など、軽量形鋼Pの側面からペンを立てて挿通孔142に差し込めないような作業空間においては、指標表示部として端縁部145が選択され得る。端縁部145が選択された場合、作業者は、ペンを斜めに傾けた姿勢で端縁部145に沿って罫書き可能である。穿孔工具をセンター合わせしたい場合にもL字形の交差部分で表示できる。
【0067】
図11に示すように、取付面P2上に罫書き印M1、M2が付された後、取付治具100が軽量形鋼Pから取り外される。そして、作業者は、罫書き印M1、M2に基づいて、丸棒材11を取り付けるための貫通孔を取付位置P3に穿設し、軽量形鋼Pの正確な位置に丸棒材11を取り付けることが可能である。
【0068】
図12乃至図14は、第1の取付体装置10による、丸棒材11(取付体)およびボックスB(配設体)の設置構造を示している。設置構造において、軽量形鋼Pの前面および後面に壁材が設置されるが、壁材の描写を省略する。一方、図14において、軽量形鋼Pの第1側壁前面と同一平面上の壁材内面の位置を示す壁面位置Wが仮想線で描かれている。また、通常、設置構造は、取付治具100を含まないが、説明の便宜上、取付治具100が使用形態のままで描写されている。さらに、図示しないが、一般に、丸棒材11は、2本の軽量形鋼Pの間に架け渡されるものであることから、2本の軽量形鋼Pのそれぞれについて、取付治具100を用いて取付位置が特定されて貫通孔の形成されたものとする。
【0069】
図12に示すように、丸棒材11が軽量形鋼Pの取付面P2に穿設された貫通孔に固定されている。一般的に、丸棒材11は、ナットなどの固定部材によって貫通孔を介して側壁に固定されるが、図示を省略する。そして、丸棒材11は、その前面側においてボックスBを支持している。ボックスBの開口面は、壁表側を向くように配置された。当該設置構造において、丸棒材11の取付位置は、取付治具100の挿通孔142の位置に合致している。また、図13に示すように、第1基準部側表示部113の高さ位置と、丸棒材11の高さ位置とが合致している。そして、図14に示すように、ボックスBの開口面が、軽量形鋼Pの基準面P1(壁面位置W)と略同一平面上に配置されている。すなわち、当該設置構造は、丸棒材11およびボックスBを軽量形鋼Pの壁厚方向の位置および高さ方向の位置に正確に設置したものである。
【0070】
図15は、図10の第1の使用形態の変形例を示している。図15に示すように、図10に軽量形鋼Pの反対側の面を基準面P1(または第1側壁)と定めて、基準面P1に基づいて、取付面P2上に取付位置を特定してもよい。この場合、取付治具100は、上下反転して使用されるが、上記形態と同様に、指標表示部としての挿通孔142および端縁部145によって、取付面P2上に取付位置を特定するための指標となる位置が示され得る。さらに、図10および図15の第1の使用形態に基づいて、丸棒材11の代わりに、図16に示す支持具13が軽量形鋼Pに固定されてもよい。この場合、図11に示す罫書き印が、支持具13の固定部13aの固定位置(固定部13aを固定する固定ビスを打ち込む位置であったり、固定部13aの端縁を位置合わせすることで特定される位置)を示し得る。あるいは、図10および図15の第1の使用形態に基づいて、支持具13などの取付体を端縁部145に当接させて、取付体の位置合わせがなされてもよい。
【0071】
図16は、第2の取付体装置10’および柱材である軽量形鋼Pを示す概略分解斜視図である。第2の取付体装置10’は、軽量形鋼Pの第2側壁の取付面P2に取り付けられる支持具13(取付体)と、軽量形鋼Pの第1側壁の基準面P1に基づいて支持具13の取付位置を取付面P2上に特定する取付治具100と、を備える装置である。支持具13は、その基端から先端まで延びる平面視L字形状の長板であり、その基端に位置する固定部13aと、当該固定部13aからその先端に向けて長手状に延在する支持部13bとからなる。この固定部13aには、ビス孔が穿設されており、当該ビス孔を介して固定部13aが軽量形鋼Pの側壁に固定される。すなわち、支持具13は片持ち状態で軽量形鋼Pに固定される。そして、支持部13bには、配設体としてのボックスBを固定するための複数の長孔が穿設されている。さらに、支持部13bの表面には目盛が刻印されており、配設体(ボックスB)を取り付ける位置の目安として用いられる。
【0072】
本形態では、基準面P1は、軽量形鋼Pの前面に定められ、取付面P2は前面と後面との間の側壁内面に定められた。また、図16において、ボックスB(図18参照)の形状に基づいて予め定められた取付位置(または取付予定位置)はP3で示されている。ここで、取付位置P3は、軽量形鋼Pに固定されるべき支持具13の支持部13b前面が取付面P2上に投影された直線として、図16に点線で示されている。つまり、取付面P2の取付位置P3に、支持具13の支持部13bの前面が配置されるように、支持具13が軽量形鋼Pの取付面P2に位置合わせされて固定される。さらに付記すると、配設体設置装置は、支持具13(取付体)、取付治具100、および1または複数の軽量形鋼P(柱材)を備える。この配設体設置装置は、任意に、ボックスBおよび/または壁材を含んでもよい。
【0073】
次いで、第2の取付体装置10’について、取付治具100を用いて取付位置P3を特定する方法について説明する。図17は、取付治具100の第2の使用形態の斜視図である。まず、取付治具100を折り畳み形態から使用時形態へと変位させる。そして、使用時形態の取付治具100を操作して、基準部110の第1当接面111を基準面P1に宛がうとともに、基部131の第2当接面132を取付面P2に対向する開口面のフランジ部分に宛がう。このとき、第1当接面111を基準面P1に対して平行な姿勢で当接させ、かつ、第2当接面132を取付面P2に対して平行な姿勢で対向配置する。つまり、基部131(第2当接面132)は、必ずしも、取付面P2に宛がわれなくてもよい(または、当接しなくてもよい)。取付治具100は、自重で落下しないように磁着部117によって軽量形鋼Pに保持され得る。そして、予め定められた基準面P1と取付位置P3との壁厚方向の離間距離に基づいて、可動部141を基部131の所定位置へと相対移動させる。なお、可動部141を基部131の所定位置に相対移動させた後に、取付治具100が軽量形鋼Pに宛がわれてもよい。任意に、取付位置P3の高さ位置を合わせる必要がある場合、例えば、レーザー水準器を用いて基準面P1上に高さを特定し、第3基準部側表示部115を用いて、支持具13の種類に従って、取付治具100の高さ位置を調整する。そして、第2の使用形態において、取付治具100の位置特定部130によって、取付面P2上に取付位置P3が特定される。
【0074】
図18は、第2の使用形態において、指標表示部として端縁部145が、取付面P2上に取付位置P3を特定するための指標となる位置を示す形態を示している。ここで、取付位置P3は、支持具13の支持部13bの位置に対応する。図18に示すように、基部131の表面から見た軽量形鋼Pの側面視において、端縁部145が、取付位置P3を取付面P2に示している。換言すると、端縁部145を取付面P2上に投影すると、取付位置P3および端縁部145とが合致するように端縁部145が配置されている。このとき、端縁部145は、当該端縁部145に支持具13の支持部13bを宛がうことによって、支持具13の支持部13bを取付位置P3に案内し、固定部13aを取付面P2上の固定位置に配置可能である。
【0075】
そして、図18に示すような、端縁部145によって取付面P2上に取付位置P3が指示された状態から、作業者は、支持具13の固定部13aを取付面P2に宛がいつつ、支持部13b前面を端縁部145に当接させるとともに、支持部13b上端面を水平端縁部146(外縁部137)に当接させることによって、支持具13を所定の取付位置P3へと案内することができる。作業者は、この位置関係を維持しつつ、固定部13aを軽量形鋼Pの取付面P2上にビスで固定することによって、軽量形鋼Pの正確な位置に支持具13を取り付けることが可能である。
【0076】
図19乃至図21は、第2の取付体装置10’による、支持具13(取付体)およびボックスB(配設体)の設置構造を示している。設置構造において、軽量形鋼Pの前面および後面に壁材が設置されるが、壁材の描写を省略する。一方、図20において、軽量形鋼Pの第1側壁前面と同一平面上の壁材内面の位置を示す壁面位置Wが仮想線で描かれている。また、通常、設置構造は、取付治具100を含まないが、説明の便宜上、取付治具100が使用形態のままで描写されている。
【0077】
図19に示すように、支持具13の固定部13aが軽量形鋼Pの第2側壁の取付面P2の固定されている。支持具13の支持部13bは、その前面側においてボックスBを支持している。ボックスBの開口面は、壁表側を向くように配置された。当該設置構造において、図20に示すように、第3基準部側表示部115の片方(番号3)の高さ位置と、支持部13bの上下幅方向中心の高さ位置とが合致している。また、図21に示すように、支持具13の取付位置は、壁厚方向において、支持部13b前面が取付治具100の端縁部145の位置に合致する位置である。そして、図21に示すように、ボックスBの開口面が、軽量形鋼Pの基準面P1(壁面位置W)と略同一平面上に配置されている。すなわち、当該設置構造は、支持具13およびボックスBを軽量形鋼Pの壁厚方向の位置および高さ方向の位置に正確に設置したものである。
【0078】
図22は、図17の第1の使用形態の変形例を示している。図22に示すように、図17に軽量形鋼Pの反対側の面を基準面P1(または第1側壁)と定めて、基準面P1に基づいて、取付面P2上に取付位置を特定してもよい。この場合、取付治具100は、上下反転して使用されるが、上記形態と同様に、指標表示部としての端縁部145によって、取付面P2上に取付位置を特定するための指標となる位置が示され得る。さらに、図17および図22の第2の使用形態に基づいて、支持具13の代わりに、図11に示す丸棒材11が軽量形鋼Pに固定されてもよい。この場合、ペンまたはスタンプを取付面P2に垂直な姿勢で端縁部145に宛がって、または挿通孔142に挿通することで、取付面P2に罫書き印を罫書いてもよい。
【0079】
以下、本発明の一実施形態に係る取付治具100および取付体装置10、10’の作用効果について説明する。
【0080】
本実施形態の取付治具100(または取付体装置10、10’)によれば、柱材である軽量形鋼Pの第1側壁の基準面P1に基準部110の第1当接面111を宛がって当接させることによって、予め定められた取付体(丸棒材11、支持具13)の取付位置P3を特定するための基準位置を正確に決定することが可能である。また、位置特定部130は、基準部110を基準面P1に宛がった状態で、基部131平面が、第1当接面111に対して直交方向に延びるともに取付面P2に対して平行な姿勢で対向配置されるように構成されている。これにより、基部131が延びる延設方向の長さに基づいて、第2側壁の取付面P2上における第1側壁の基準面P1からの離間距離を正確に測定することが可能である。そして、取付位置P3の指標となる位置を示す指標表示部としての挿通孔142および端縁部145を有する可動部141が、基部131の延出方向に変位可能に基部131に保持されている。つまり、基準面P1を基準として予め定められた一の取付位置P3(基準面P1から取付位置P3までの所定の最短直線距離)に基づいて、可動部141を基部131の延設方向に沿って移動させることで、2つの指標表示部(挿通孔142および端縁部145)によって取付面P2上に取付位置P3の指標となる位置を示し、軽量形鋼Pへの取付体の取付位置P3を特定することができる。また、ボックスBの大きさや種類に応じて所定の取付位置P3が異なる場合であっても、可動部141の移動距離を変更することによって、指標表示部によって取付面P2上に取付位置P3の指標となる位置を示し、軽量形鋼Pへの取付体の取付位置を特定することができる。
【0081】
さらに、本実施形態の取付治具100は、挿通孔142および端縁部145という2つの異なる種類の指標表示部を備える。従来(特許文献2)のゲージ具は、支持具の位置決めを可能するものであるが、丸棒材のようなタイプの取付体に対応していないことが課題として挙げられる。これに対し、取付治具100は、作業者が挿通孔142および端縁部145の2つの指標表示部から選択することで、丸棒材11および支持具13を含む異なる種類の取付体に対応可能としたものである。
【0082】
したがって、本実施形態の取付治具100は、取付体を軽量形鋼Pの所定の取付位置により正確かつより容易に取り付けることを補助とするものである。
【0083】
本発明は、上記実施形態に限定されず、種々の別実施形態や変形例を取り得る。以下、本発明の別実施形態および変形例を説明する。なお、別実施形態および各変形例において、三桁で示される構成要素において下二桁が共通する構成要素は、説明がない限り、同一又は類似の特徴を有し、その説明を一部省略する。
【0084】
(1)本発明の取付治具は、上記実施形態の構成に限定されない。上記実施形態の取付治具では、指標表示部が挿通孔および端縁部(突出部)の2つの手段で構成されたが、本発明はこれに限定されない。図23は、別実施形態の取付治具200を概略斜視図である。取付治具200は、柱材の第1側壁に画定された基準面に当接して配置される当接面を有する基準部210と、該基準部210に連設され、基準面を基準とした取付体の取付位置を、第2側壁に画定された取付面上に特定するための位置特定部230と、を備える。位置特定部230は、基準部210から離間するように延出し、基準部210が基準面に宛がわれた状態で、当接面211に対して直交方向に延びるとともに取付面に対して対向配置されるように構成された基部231と、該基部231の延出方向に変位可能に基部231に保持された可動部241と、を備える。可動部241には、柱材の取付面上に取付位置を特定するための指標となる位置を示す指標表示部として、挿通孔242のみが設けられている。本形態では、挿通孔242は、直線状の貫通溝である。すなわち、挿通孔242は、柱材に形成すべき貫通孔の直径を示す直線を罫書き印として罫書くことが可能な形状を有している。あるいは、挿通孔は、取付体を取り付けるための中心点を罫書くための点であってもよい。したがって、本実施形態の取付治具200は、取付体を柱材の所定の取付位置により正確かつより容易に取り付けることを補助とするものである。他方、本実施形態の取付治具200では、基準部210および基部231が互いに回動しないように直角に固定されている。また、取付治具200において、基準部側表示部等の構成が省略されている。すなわち、本発明の取付治具において、本発明の技術的範囲に属する限り、必要に応じて各種構成が適宜省略されてもよい。
【0085】
(2)本発明の取付治具は、上記実施形態の構成に限定されない。上記実施形態の取付治具では、指標表示部が挿通孔および端縁部(突出部)の2つの手段で構成されたが、本発明はこれに限定されない。図24は、別実施形態の取付治具300の概略斜視図である。取付治具300は、柱材の第1側壁に画定された基準面に当接して配置される当接面を有する基準部310と、該基準部310に連設され、基準面を基準とした取付体の取付位置を、第2側壁に画定された取付面上に特定するための位置特定部330と、を備える。位置特定部330は、基準部310から離間するように延出し、基準部310が基準面に宛がわれた状態で、当接面311に対して直交方向に延びるとともに取付面に対して対向配置されるように構成された基部331と、該基部331の延出方向に変位可能に基部331に保持された可動部341と、を備える。可動部341には、柱材の取付面上に取付位置を特定するための指標となる位置を示す指標表示部として、突出部344および端縁部345のみが設けられている。この端縁部345は、柱材の取付面に罫書き印を付すことを補助し、かつ、取付体(支持具)を取付面上の取付位置に案内可能である。したがって、本実施形態の取付治具300は、取付体を柱材の所定の取付位置により正確かつより容易に取り付けることを補助とするものである。
【0086】
(3)本発明の取付治具および取付体装置は、上記実施形態の構成に限定されない。上記実施形態では、取付治具によって位置合わせされる取付体は、丸棒材および支持具として例示されたが、柱材の所定の取付位置に取り付けられる任意の対象を含み得る。例えば、取付体は、ボックス(配設体)やケーブル支持具などであってもよい。
【0087】
(4)本発明の取付体装置または取付治具の形状や形態は、本発明の技術的範囲内であれば、任意に変更され得る。例えば、本発明の取付治具は、矩形板状の基準部と矩形板状の基部とを直角に連設したものであるが、基準部および基部は、本発明の技術的思想の下、多角形、楕円、長円等の種々の形状で形成されてもよい。
【0088】
(5)本発明の取付治具および取付体装置は、上記実施形態の構成に限定されない。上記実施形態では、取付治具および取付体装置は、壁裏に立設され、その前後面に沿って壁材が構築される軽量形鋼に適用される用途で構成されたが、本発明は当該用途に限定されない。すなわち、本発明の取付治具および取付体装置は、少なくとも、第1側壁および該第1側壁と直交して延在する第2側壁を有する任意の形状の柱材に対して適用され得る。例えば、柱材は、木製の角柱であってもよく、あるいは、I字型、H字型、T字型、L字型断面の鋼材などであってもよい。
【0089】
本発明は上述した実施形態や変形例に限定されるものではなく、本発明の技術的範囲に属する限りにおいて種々の態様で実施しうるものである。すなわち、本発明の技術的範囲の下で、本実施形態の一部の構成が省略又は修正されてもよく、あるいは、他の構成が追加されてもよい。
【符号の説明】
【0090】
10 取付体装置
11 丸棒材(取付体)
13 支持具(取付体)
13a 固定部
13b 支持部
100 取付治具
110 基準部
111 第1当接面
113 第1基準部側表示部
114 第2基準部側表示部
115 第3基準部側表示部
117 磁着部
118 水平器
130 位置特定部
131 基部
132 第2当接面
133 第1スライド溝
134 第2スライド溝
135 規制壁
136 目盛部
137 外縁部
141 可動部
142 挿通孔(指標表示部)
144 突出部
145 端縁部(指標表示部)
146 水平端縁部
147 ロック部
147a ロック部材
147b ロック孔
148 矢印(指示部)
150 接続軸部
P 軽量形鋼(柱材)
P1 基準面
P2 取付面
P3 取付位置
B ボックス(配設体)
M1 罫書き印(円形)
M2 罫書き印(L字形)
W 壁面位置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24