(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024124795
(43)【公開日】2024-09-13
(54)【発明の名称】皮膜剥離具
(51)【国際特許分類】
B23D 79/12 20060101AFI20240906BHJP
B29B 17/02 20060101ALI20240906BHJP
【FI】
B23D79/12 Z
B29B17/02 ZAB
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023032703
(22)【出願日】2023-03-03
(71)【出願人】
【識別番号】000208695
【氏名又は名称】第一高周波工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100365
【弁理士】
【氏名又は名称】増子 尚道
(74)【代理人】
【識別番号】100100066
【弁理士】
【氏名又は名称】愛智 宏
(72)【発明者】
【氏名】羽石 亮平
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 修也
【テーマコード(参考)】
3C050
4F401
【Fターム(参考)】
3C050FD22
4F401AA08
4F401AA13
4F401AD20
4F401CA39
(57)【要約】
【課題】効率良く安定した品質でライニング管端部の皮膜を剥離する。
【解決手段】バイト13とガイドローラ21とを備え、管1の端部1aの周壁をバイトとガイドローラとで挟むように管に装着して管周方向へ移動させることにより内周面に形成されている皮膜をバイトで剥離除去する皮膜剥離具で、バイト支持部12a、ローラ支持部12b及び連結部12cを有する支持フレーム12と、バイトとガイドローラとの間隔を調整する間隔調整手段28,32とを備え、バイトは、管の軸方向と平行に管内周面に刃先が当接可能なようにバイト支持部により支持され、管端部内周面に当接させつつ管周方向へ移動させることにより皮膜を剥離可能で、ガイドローラは、ガイドローラとバイトの間に管端部周壁を挟み込めるようにバイトと間隔を隔てて対向し且つ管端部外周面上を周方向へ転動する。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイトとガイドローラとを備え、加工対象である管状部材の端部周壁を前記バイトと前記ガイドローラとで挟むように当該管状部材に装着して当該管状部材の周方向へ移動させることにより当該管状部材の内周面に形成されている皮膜を前記バイトにより剥離除去する皮膜剥離具であって、
前記バイトを支持するバイト支持部、前記ガイドローラを支持するローラ支持部、および、これらバイト支持部とローラ支持部とを連結する連結部を有する支持フレームと、
前記バイトと前記ガイドローラとの間隔を調整する間隔調整手段と、
を備え、
前記バイトは、前記管状部材の軸方向と略平行に前記管状部材の内周面に刃先が当接可能なように前記バイト支持部により支持されて、前記管状部材の端部内周面に当接させつつ前記管状部材の周方向へ移動させることにより前記皮膜を剥離可能であり、
前記ガイドローラは、当該ガイドローラと前記バイトとの間に前記管状部材の端部周壁を挟み込めるように前記バイトと間隔を隔てて対向し、且つ、前記管状部材の端部外周面上を周方向へ転動することが出来るように備えられている
ことを特徴とする皮膜剥離具。
【請求項2】
バイトとガイドローラとを備え、加工対象である管状部材の端部周壁を前記バイトと前記ガイドローラとで挟むように当該管状部材に装着して当該管状部材の周方向へ移動させることにより当該管状部材の外周面に形成されている皮膜を前記バイトにより剥離除去する皮膜剥離具であって、
前記バイトを支持するバイト支持部、前記ガイドローラを支持するローラ支持部、および、これらバイト支持部とローラ支持部とを連結する連結部を有する支持フレームと、
前記バイトと前記ガイドローラとの間隔を調整する間隔調整手段と、
を備え、
前記バイトは、前記管状部材の軸方向と略平行に前記管状部材の外周面に刃先が当接可能なように前記バイト支持部により支持されて、前記管状部材の端部外周面に当接させつつ前記管状部材の周方向へ移動させることにより前記皮膜を剥離可能であり、
前記ガイドローラは、当該ガイドローラと前記バイトとの間に前記管状部材の端部周壁を挟み込めるように前記バイトと間隔を隔てて対向し、且つ、前記管状部材の端部内周面上を周方向へ転動することが出来るように備えられている
ことを特徴とする皮膜剥離具。
【請求項3】
前記ガイドローラとして、互いに平行な回転軸を有する一対のガイドローラを含み、
前記バイトは、当該一対のガイドローラの中間位置に刃先が向くように備えられている
請求項1または2に記載の皮膜剥離具。
【請求項4】
前記間隔調整手段は、
前記ガイドローラを前記バイトに対して進退動させることが可能である
請求項3に記載の皮膜剥離具。
【請求項5】
前記皮膜剥離具は、
前記一対のガイドローラを回転可能に支持するローラ支持フレーム
をさらに備え、
前記中間位置から前記バイトに向かう方向を「上」、前記バイトから前記中間位置に向かう方向を「下」としたときに、
前記間隔調整手段は、
前記ローラ支持部を上下方向に貫通する案内孔内に上下動可能に挿通され、前記ローラ支持部に対して前記ローラ支持フレームを上下方向に移動可能に支持する案内竿と、
前記ローラ支持部を上下方向に貫通するねじ孔内に形成された雌ねじに螺合する雄ねじを外周面に備え、前記ねじ孔にねじ込まれ、上端部が前記ローラ支持フレームの下面部に当接することにより前記ローラ支持フレームの下方への移動を規制する、支持竿と、
を有する
請求項4に記載の皮膜剥離具。
【請求項6】
前記支持フレームに備えられ前記皮膜剥離具の操作者が把持可能なハンドル
を備えた請求項5に記載の皮膜剥離具。
【請求項7】
前記ハンドルは、上下方向に延びるように備えられて上端部に前記支持竿を有する
請求項6に記載の皮膜剥離具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膜剥離具に係り、特に、ライニング鋼管などの管状部材の表面(内周面又は外周面)に形成された皮膜を部材端部において剥離する器具に関する。
【背景技術】
【0002】
鋼管等の金属管の表面(内周面や外周面)にポリエチレンや塩化ビニル等の樹脂材料を定着させることにより皮膜を形成したライニング管が様々な産業分野で使用されている。
【0003】
例えば、ポリエチレン粉体を鋼管の表面に熱融着して皮膜を形成したポリエチレン粉体ライニング鋼管(PEL)は、皮膜の化学的・物理的安定性や加工のし易さ等の優れた特長を有することから、防食鋼管として各種流体の輸送用配管として用いられている。
【0004】
一方、かかるライニング管を廃棄したり、皮膜樹脂や金属管を資源として再利用し、あるいは、皮膜を貼り替えてライニング管を再生するときには、管表面に形成された皮膜を引き剥がし、金属材料からなる管本体と、樹脂材料からなる皮膜とを分離する必要がある。
【0005】
このため、例えば下記特許文献1記載の発明では、第1工程で、樹脂被覆層の表面を水冷しながら金属管と皮膜(被覆層)との界面を高周波誘導コイルやガスバーナーにより加熱して当該界面近傍の樹脂を熱分解させ、その後第2工程として、カッターナイフやスクレパーなどを使用して皮膜を剥離する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、皮膜の剥離にあたって上記特許文献1記載の発明のようにライニング管を加熱する場合には、加熱工程の間、何らかの支持具でライニング管を支持し固定しておく必要がある。支持する箇所は、管全体を全長に亘って順次加熱していくことから、管端部が好ましく、上記特許文献1記載の発明では、管端部に備えられているフランジを利用することが可能である。
【0008】
ところが、フランジを備えていない管の場合には、支持具により把持された管端部は他の部分と一緒に連続して剥離を行うことは出来ず、別に剥離作業を行う必要がある。この作業は従来、管端部を別途バーナーで炙り、カッターナイフやスクレパーで皮膜を剥離させることにより行っていたが、作業には時間がかかり作業効率が悪いうえ、皮膜が残ってしまうこともあり品質が安定しなかった。
【0009】
したがって、本発明の目的は、効率良く安定した品質で管状部材端部の皮膜を剥離することを可能とする点にある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決し目的を達成するため、本発明に係る第1の皮膜剥離具は、バイトとガイドローラとを備え、加工対象である管状部材の端部周壁をバイトとガイドローラとで挟むように管状部材に装着して管状部材の周方向へ移動させることにより管状部材の内周面に形成されている皮膜をバイトにより剥離除去する皮膜剥離具であって、バイトを支持するバイト支持部、ガイドローラを支持するローラ支持部、および、これらバイト支持部とローラ支持部とを連結する連結部を有する支持フレームと、バイトとガイドローラとの間隔を調整する間隔調整手段とを備えている。また、バイトは、管状部材の軸方向と略平行に管状部材の内周面に刃先が当接可能なようにバイト支持部により支持されて、管状部材の端部内周面に当接させつつ管状部材の周方向へ移動させることにより皮膜を剥離可能であり、ガイドローラは、ガイドローラとバイトとの間に管状部材の端部周壁を挟み込めるようにバイトと間隔を隔てて対向し、且つ、管状部材の端部外周面上を周方向へ転動することが出来るように備えられている。
【0011】
また、本発明に係る第2の皮膜剥離具は、バイトとガイドローラとを備え、加工対象である管状部材の端部周壁をバイトとガイドローラとで挟むように管状部材に装着して管状部材の周方向へ移動させることにより管状部材の外周面に形成されている皮膜をバイトにより剥離除去する皮膜剥離具であって、バイトを支持するバイト支持部、ガイドローラを支持するローラ支持部、および、これらバイト支持部とローラ支持部とを連結する連結部を有する支持フレームと、バイトとガイドローラとの間隔を調整する間隔調整手段とを備えている。また、バイトは、管状部材の軸方向と略平行に管状部材の外周面に刃先が当接可能なようにバイト支持部により支持されて、管状部材の端部外周面に当接させつつ管状部材の周方向へ移動させることにより皮膜を剥離可能であり、ガイドローラは、ガイドローラとバイトとの間に管状部材の端部周壁を挟み込めるようにバイトと間隔を隔てて対向し、且つ、管状部材の端部内周面上を周方向へ転動することが出来るように備えられている。
【0012】
上記本発明に係る第1の皮膜剥離具は、管状部材の内周面に形成された皮膜を剥離する器具であり、第2の皮膜剥離具は、管状部材の外周面に形成された皮膜を剥離する器具であるが、当該器具は、内周面専用の(内周面に形成された皮膜を剥離するためだけの)器具として、あるいは外周面専用の(外周面に形成された皮膜を剥離するためだけの)器具として構成することも出来るし、内外両用の(内周面および外周面のいずれに形成された皮膜を剥離することも出来る)器具とすることも可能であり、本発明は、内周面専用の器具、外周面専用の器具および内外両用の器具のいずれをも含む。なお、本願において「皮膜剥離具」(単に「剥離具」又は「器具」と称することもある)と言った場合には、上記第1の皮膜剥離具と第2の皮膜剥離具の双方を指す。
【0013】
また、本発明が対象とする「管状部材」は、その種類を特に問わない。一例を挙げれば、ポリエチレン粉体ライニング鋼管(PEL)を対象とすることが出来るが、管状部材本体部の構成材料は、様々な金属材料(例えば、ステンレスや銅、鉛、亜鉛、アルミニウム又は各種合金など)あるいは金属以外の材料であっても良い。また、管状部材に形成された「皮膜」は、ポリエチレン以外の樹脂材料であっても良く、めっき皮膜など樹脂以外の材料からなる皮膜であっても構わない。
【0014】
本発明では、次の各態様(1)~(5)を好ましく採用することが出来る。
【0015】
(1)上記剥離具が、ガイドローラとして互いに平行な回転軸を有する一対のガイドローラを含み、当該一対のガイドローラの中間位置に刃先が向くようにバイトを備える。
【0016】
このような態様(1)によれば、本剥離具を管状部材の周方向へ移動させて剥離作業を行うときに、管状部材の外周面(又は内周面)に安定してガイドローラを当接させ、管状部材の内周面(又は外周面)に略一定の力でバイトを押し当てることが出来るから、管状部材端部の皮膜を残らず除去することが可能となる。
【0017】
(2)間隔調整手段が、ガイドローラをバイトに対して進退動させることが可能である。
【0018】
(3)上記態様(2)において、皮膜剥離具が、一対のガイドローラを回転可能に支持するローラ支持フレームをさらに備え、前記中間位置からバイトに向かう方向を「上」、バイトから前記中間位置に向かう方向を「下」としたときに、間隔調整手段が、ローラ支持部を上下方向に貫通する案内孔内に上下動可能に挿通されてローラ支持部に対してローラ支持フレームを上下方向に移動可能に支持する案内竿と、ローラ支持部を上下方向に貫通するねじ孔内に形成された雌ねじに螺合する雄ねじを外周面に備え且つ前記ねじ孔にねじ込まれて上端部がローラ支持フレームの下面部に当接することによりローラ支持フレームの下方への移動を規制する支持竿とを有する。
【0019】
(4)上記態様(3)において、支持フレームに備えられて当該皮膜剥離具の操作者が把持可能なハンドルを備える。剥離具の操作性を高め、剥離作業をやり易くするためである。
【0020】
(5)上記態様(4)において、ハンドルが、上下方向に延びるように備えられて上端部に前記支持竿を有する。このような態様(5)では、ハンドルを回すことにより支持竿を回転させることが出来る。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係る皮膜剥離具によれば、効率良く安定した品質で管状部材の端部の皮膜を剥離することが出来る。
【0022】
本発明の他の目的、特徴および利点は、図面に基いて述べる以下の本発明の実施の形態の説明により明らかにする。なお、本発明は下記の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載の範囲内で種々の変更を行うことができることは当業者に明らかである。また、各図中、同一の符号は、同一又は相当部分を示す。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る皮膜剥離具を示す正面図である。
【
図2】
図2は、前記実施形態に係る皮膜剥離具を示す左側面図である。
【
図3】
図3は、前記実施形態に係る皮膜剥離具を示す右側面図である。
【
図4】
図4は、前記実施形態に係る皮膜剥離具を示す縦断面図(
図1のA-A矢視断面)である。
【
図5】
図5は、前記実施形態に係る皮膜剥離具を示す縦断面図(
図2のB-B矢視断面)である。
【
図6】
図6は、前記実施形態に係る皮膜剥離具の使用状態を示す正面図(加工対象であるライニング鋼管については
図7のD-D矢視断面を示す)である。
【
図7】
図7は、前記実施形態に係る皮膜剥離具の使用状態を示す左側面図(加工対象であるライニング鋼管については
図6のC-C矢視断面を示す)である。
【
図8】
図8は、前記実施形態に係る皮膜剥離具の別の使用状態(小径管を加工対象とする場合)を
図7と同様に示す左側面図である。
【
図9】
図9は、前記実施形態に係る皮膜剥離具のさらに別の使用状態(大径管を加工対象とする場合)を
図7と同様に示す左側面図である。
【
図10】
図10は、前記実施形態に係る皮膜剥離具のさらに別の使用状態(大径管の外周面に形成された皮膜を剥離する場合)を
図7と同様に示す左側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1から
図7に示すように、本発明の一実施形態に係る皮膜剥離具11は、ライニング管1の内周面(管本体部2の内側表面)に形成された皮膜3を剥離するバイト13と、バイト13に対向するように配置されてライニング管1の外周面(管本体部2の外側表面)に沿って転動可能な一対のガイドローラ21(21a,21b)と、これら一対のガイドローラ21a,21bとバイト13を支持する本体フレーム12と、バイト13に対してガイドローラ21を進退動させてバイト13とガイドローラ21との間隔Wを調整する間隔調整機構(間隔調整手段)28,32と、本器具11の操作者が把持可能なハンドル41とを有する。
【0025】
なお、図面の各図には前後方向、左右方向および上下方向を表す互いに直交する二次元座標を示し、本実施形態の説明はこれらの方向に基いて行う。ただし、本発明および本実施形態に係る皮膜剥離具は様々な向きで使用することが可能であり、当該各方向は説明の便宜上のものであって本発明の各部構成はこれらの方向によって何ら限定されるものではない。
【0026】
本体フレーム12は、左右方向に水平に延びてバイト13を支持するバイト支持部12aと、バイト支持部12aに平行に延在してローラ支持フレーム23を介してガイドローラを支持するローラ支持部12bと、バイト支持部12aおよびローラ支持部12bの各一端部において両支持部(バイト支持部12a及びローラ支持部12b)を繋ぐ連結部12cとを有し、全体として略C字状の正面形状を有する。
【0027】
バイト13は、刃先13aが左右方向に水平に延び、且つ、一対のガイドローラ21a,21bの前後方向の中間位置にバイト13の刃先13aが向くように(
図2,
図4参照)バイト支持部12aに固定される。
【0028】
一方、一対のガイドローラ21a,21bは、一定の間隔を隔てて互いに平行に且つバイト13の刃先13aと平行になるように、言い換えれば、各ガイドローラ21a,21bの回転軸22a,22bが互いに平行に且つ左右方向に延びるように、ベアリング(図示せず)を介してローラ支持フレーム23に回転自在に支持してある。
【0029】
また、一対のガイドローラ21a,21bは、間隔調整機構28,32を使用してローラ支持フレーム23をバイト13に対して進退動(上下動)させることにより、バイト13との間隔Wを調整することが可能である。
【0030】
この間隔調整機構28,32は、左右方向に一定の間隔を隔ててローラ支持部12bを上下方向に貫通するように備えられた2本の(一対の)案内竿28(28a,28b)と、これら一対の案内竿28a,28bの中間位置においてローラ支持部12bを上下方向に貫通するように備えられた支持竿32とを有する。
【0031】
案内竿28は、先端(上端)がローラ支持フレーム23に固定されたボルト(「ローラ支持ボルト」と称する)24と、当該ローラ支持ボルト24が内部に通されてローラ支持ボルト24の頭部25とローラ支持フレーム23との間に挟持されたスリーブ26とからなり、これらが、ローラ支持部12bを上下方向に貫通する案内孔27内に上下方向に摺動可能に挿通されている。したがって、ローラ支持フレーム23は、本体フレーム12のローラ支持部12bに対して上下方向に相対移動させることが可能である。
【0032】
一方、支持竿32は、その外周面に雄ねじ32aを備え、ローラ支持部12bを上下方向に貫通するねじ孔31にねじ込んである。ねじ孔31の内周面には、支持竿32の外周面に形成した雄ねじ32aに螺合する雌ねじ31aが形成されている。また、支持竿32の先端(上端)は、ローラ支持フレーム23の下面に突き当てられており、これによりローラ支持フレーム23の下方への移動が(即ちガイドローラ21とバイト13の間隔が広がることが)阻止されている。
【0033】
ガイドローラ21とバイト13の間隔Wを調整(変更)するには、支持竿32を回転させれば良い。支持竿32を一方向(第1の方向)に回転させるとねじ(雄ねじ32a及び雌ねじ31a)の相互作用により支持竿32は上方へ移動し、これによりローラ支持フレーム23が上方へ突き上げられ、各ガイドローラ21a,21bが上方に持ち上げられてガイドローラ21a,21bとバイト13の間隔を狭めることが出来る。また、支持竿32を逆方向(第2の方向)に回転させると支持竿32は下方へ移動するから、ローラ支持フレーム23を下方へ移動させて(例えば手で押し下げて)ガイドローラ21a,21bとバイト13の間隔を広げることが可能となる。
【0034】
なお、本実施形態の剥離具11において、前記ハンドル41は、本体フレーム12(ローラ支持部12b)の下面部から垂直下方に延びるように備えられ、操作者が握ることが可能なグリップ41aとハンドル軸部41bとを有するが、上記支持竿32は、ハンドル軸部41bの上端にハンドル軸部41bと一体に備えてある。したがって、上記支持竿32の回転操作は、ハンドル41のグリップ41aを回すことにより行うことが出来る。
【0035】
本実施形態に係る皮膜剥離具11は、次のようにして使用することが出来る。
【0036】
図6および
図7に示すように、皮膜3を剥離するライニング管1の一端から管内にバイト13およびバイト支持部12aを挿し込み、バイト13とガイドローラ21a,21bとでライニング管1の端部周壁を挟むように剥離具11をライニング管端部1aに装着する。このとき、管内周面に形成された皮膜3にバイト13の刃先13aが当接するとともに、一対のガイドローラ21a,21bが管外周面に当接するように、間隔調整機構28,32を操作(ハンドル41を回転操作)することによりバイト13とガイドローラ21a,21bとの間隔Wを調整する。
【0037】
そして、ハンドル41のグリップ41aを握って剥離具11をライニング管1の周方向へ管周壁に沿って移動させれば(
図7の矢印E参照)、バイト13によって管内の皮膜3が引き剥がされ、ライニング管端部1aの皮膜3を取り除くことが出来る。
【0038】
なお、本実施形態におけるライニング管1は、鋼管2の内周面にポリエチレンからなる皮膜3を形成したポリエチレン粉体ライニング鋼管(PEL)であるが、ライニング管1の種類(管状部材本体部2及び皮膜3の各構成材料)は様々なものであって良く、これに限定されないことは既に述べたとおりである。
【0039】
また、本剥離具11は、バイト13とガイドローラ21a,21bの間隔Wを調整することにより、様々な管厚(管周壁の肉厚)のライニング管の皮膜剥離を行うことが出来るだけなく、管径が様々に異なるライニング管の皮膜を剥離することが可能である。
【0040】
例えば、
図8に示すようにバイト13とガイドローラ21a,21bの間隔Wを狭めることにより、管径の小さなライニング管4の皮膜3を剥離することが出来るし、
図9に示すようにバイト13とガイドローラ21a,21bの間隔Wを広げることにより、管径の大きなライニング管5の皮膜3を剥離することが可能である。
【0041】
さらに、
図10に示すように、ガイドローラ21a,21bとローラ支持部12bを管内に差し込み、ガイドローラ21a,21bを管内周面に当接させるとともにバイト13を管外周面に当接させるようにすれば、外周面に皮膜3aを備えたライニング管6の皮膜3aを剥離することが出来る。
【0042】
したがって、本実施形態の剥離具11によれば、内外両面に皮膜が形成されたライニング管についても、内周面の皮膜剥離と外周面の皮膜剥離をそれぞれ行うことにより対応することが出来る。
【0043】
また本実施形態の剥離具11は、可搬性があり、動力が不要で、作業者がハンドルグリップ41aを握ってライニング管1,4,5,6の周壁に沿ってガイドローラ21を転がすだけの簡便な操作で効率良く皮膜3,3aを剥離することが出来る。さらに、バイト13と、対向配置された一対のガイドローラ21a,21bとによりライニング管1,4,5,6を挟持し、安定して操作を行うことが出来るから、剥離残しの無い質の高い作業が可能となる。
【符号の説明】
【0044】
1,4,5,6 ライニング管(管状部材)
2 管本体部
3 皮膜
3a 皮膜
11 皮膜剥離具
12 本体フレーム
12a バイト支持部
12b ローラ支持部
12c 連結部
13 バイト
13a バイトの刃先
21,21a,21b ガイドローラ
22a,22b ガイドローラの回転軸
23 ローラ支持フレーム
24 ローラ支持ボルト
25 ローラ支持ボルトの頭部
26 スリーブ
27 案内孔
28,28a,28b 案内竿
31 ねじ孔
31a 雌ねじ
32 支持竿
32a 雄ねじ
41 ハンドル
41a ハンドルグリップ
41b ハンドル軸部