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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024124798
(43)【公開日】2024-09-13
(54)【発明の名称】自動搬送車
(51)【国際特許分類】
   A47L 11/24 20060101AFI20240906BHJP
   A47L 11/282 20060101ALI20240906BHJP
【FI】
A47L11/24
A47L11/282
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023032709
(22)【出願日】2023-03-03
(71)【出願人】
【識別番号】390014672
【氏名又は名称】株式会社アマダ
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100170575
【弁理士】
【氏名又は名称】森 太士
(72)【発明者】
【氏名】冨永 宏則
(57)【要約】
【課題】搬送効率を低下させずに、車輪にゴミを付着しにくくできる自動搬送車を提供する。
【解決手段】自動搬送車(91)は、複数の車輪ユニット(2W)を備えて床(FL)を走行し、車輪ユニット(2W)は、モータ(22)と、モータ(22)の回転に伴い第1軸線(CL2)まわりに回転する車輪部(23)と、車輪部(23)に連結されて、車輪部(23)と一体的に第1軸線(CL2)まわりに回転する第1かさ歯車(241)と、第1かさ歯車(241)に歯合し第1軸線(CL2)に直交する第2軸線(CL25)まわりに回転する第2かさ歯車(251)と、第2かさ歯車(251)に連結されて、第2かさ歯車(251)と一体的に第2軸線(CL25)まわりに回転するブラシ(252b)と、を備え、車輪部(23)が床(FL)に接触している状態で、ブラシ(252b)の先端が床(FL)に接触している。
【選択図】図1C
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の車輪ユニットを備えて床を走行し、
前記車輪ユニットは、
第1軸線まわりに回転する車輪部と、
前記車輪部に連結されて、前記車輪部と一体的に前記第1軸線まわりに回転する第1かさ歯車と、
前記第1かさ歯車に歯合し前記第1軸線に直交する第2軸線まわりに回転する第2かさ歯車と、
前記第2かさ歯車に連結されて、前記第2かさ歯車と一体的に前記第2軸線まわりに回転するブラシと、
を備え、
前記車輪部が前記床に接触している状態で、前記ブラシの先端が前記床に接触している自動搬送車。
【請求項2】
前記ブラシは前記車輪部を囲む環状に形成されている請求項1記載の自動搬送車。
【請求項3】
前記ブラシは、無端ベルト状に形成され、前記第2かさ歯車を有する前記車輪ユニットの前記車輪部と前記車輪ユニットに隣接する前記車輪ユニットの前記車輪部とを囲むように配置され、前記第2かさ歯車の回転に伴い循環する請求項1記載の自動搬送車。
【請求項4】
前記ブラシは、前記第2軸線の方向の位置を調整可能に備えられている請求項1~3のいずれか1項に記載の自動搬送車。
【請求項5】
複数の車輪ユニットを備えて床を走行し、
前記車輪ユニットは、
第1軸線まわりに回転する車輪部と、
前記車輪部の回転を前記第1軸線に非平行な第2軸線まわりの回転に変換する回転軸方向変換部と、
前記回転軸方向変換部によって回転軸方向が変換された前記車輪部の回転力によって前記第2軸線まわりに回転するブラシと、
を備え、
前記車輪部が前記床に接触している状態で、前記ブラシの先端が前記床に接触している自動搬送車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動搬送車に関する。
【背景技術】
【0002】
自律走行搬送ロボット(AMR:Autonomous Mobile Robot)或いは無人搬送車(AGV:Automatic Guided Vehicle)と称され、車輪を有して床面を走行する自動搬送車が知られており特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭62-88006号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された自動搬送車は、駆動車輪を有して例えば工場内の走行路を走行する。このような自動搬送車の用途では、走行路を繰り返し走行するため、床のゴミが車輪に付着して車輪がスリップする、車輪にゴミが強固に付着すると走行で床面に傷が付く、という問題が生じ得る。そのため、従来、手作業で車輪を清掃したり床に清掃シートを敷設した清掃領域を設けて自動搬送車を定期的に走行させる、などの清掃を実施して車輪にゴミをなるべく付着させないようにしている。
【0005】
しかしながら、これらの対策は、自動搬送車の清掃実施中に部品などの搬送ができず搬送効率の低下が生じるため、搬送効率を低下させずに、車輪にゴミが付着しにくくする技術的な工夫が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明の第1の一態様は次の構成を有する。すなわち、複数の車輪ユニットを備えて床を走行し、前記車輪ユニットは、第1軸線まわりに回転する車輪部と、前記車輪部に連結されて、前記車輪部と一体的に前記第1軸線まわりに回転する第1かさ歯車と、前記第1かさ歯車に歯合し前記第1軸線に直交する第2軸線まわりに回転する第2かさ歯車と、前記第2かさ歯車に連結されて、前記第2かさ歯車と一体的に前記第2軸線まわりに回転するブラシと、を備え、前記車輪部が前記床に接触している状態で、前記ブラシの先端が前記床に接触している自動搬送車である。
【0007】
本発明の一態様である自動搬送車91は、車輪ユニット2Wが、第1軸線CL2まわりに回転する車輪部23と、車輪部23の回転に伴って回転するブラシ252bを有し、車輪部23が床FLを走行する状態でブラシ252bが床FLに接触するようになっている。これにより、車輪部23が回転して自動搬送車91が床FLを走行すると、ブラシ252bも回転して床FLを擦るので、床FLのゴミ及び汚れが除去される。
【0008】
本発明の第2の一態様は次の構成を有する。すなわち、複数の車輪ユニットを備えて床を走行し、前記車輪ユニットは、第1軸線まわりに回転する車輪部と、前記車輪部の回転を前記第1軸線に非平行な第2軸線まわりの回転に変換する回転軸方向変換部と、前記回転軸方向変換部によって回転軸方向が変換された前記車輪部の回転力によって前記第2軸線まわりに回転するブラシと、を備え、前記車輪部が前記床に接触している状態で、前記ブラシの先端が前記床に接触している自動搬送車である。
【0009】
これにより、自動搬送車91は、床FLを走行しながらブラシ252bによって床FLのゴミ及び汚れを除去するので、車輪部23にゴミ及び汚れが付着しにくい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一態様によれば、搬送効率を低下させずに、車輪にゴミを付着しにくくできる、という効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1A図1Aは、本発明の一態様の自動搬送車91の外観を示す斜視図である。
図1B図1Bは、自動搬送車91の模式的下面図である。
図1C図1Cは、図1BのS1C-S1C位置での断面図である。
図2図2は、自動搬送車91が備える駆動車輪ユニット2の外観を示す斜視図である。
図3図3は、駆動車輪ユニット2の下面図である。
図4図4は、図3におけるS4-S4位置での断面図である。
図5図5は、図2におけるS5-S5位置での断面図である。
図6図6は、自動搬送車91が備える従動車輪ユニット5を示す、図1BにおけるS6-S6位置での部分断面を含む前面図である。
図7A図7Aは、駆動車輪ユニット2の変形例である車輪ユニット3A,3Bを有するベルトブラシユニット3Gを示す斜視図である。
図7B図7Bは、ベルトブラシユニット3Gの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の一態様の自動搬送車91について、図1A図6を参照して説明する。図1Aは、本発明の一態様の自動搬送車91の外観を示す斜視図であり、図1Bは、自動搬送車91の模式的下面図であり、図1Cは、図1BのS1C-S1C位置での断面図である。図2は、自動搬送車91が備える駆動車輪ユニット2の外観を示す斜視図である。図3は、駆動車輪ユニット2の下面図である。図4は、図3におけるS4-S4位置での断面図である。図5は、図2におけるS5-S5位置での断面図である。図6は、自動搬送車91が備える従動車輪ユニット5を示す、図1BにおけるS6-S6位置での部分断面を含む前面図である。説明の便宜のため、上下前後左右の各方向を、図1Aに矢印で示される方向に規定する。左右方向は、自動搬送車91の幅方向である。
【0013】
図1Aに示されるように、自動搬送車91は、上下方向に薄い扁平形状で上面視で長方形となる外郭部11を有する本体部1を備えている。図1A及び図1Bに示されるように、本体部1は、底部の左側部及び右側部それぞれにおいて、前後方向に3列に離隔配置された合計6個の車輪ユニット2Wを有する。車輪ユニット2Wとして、動力源を備えた駆動車輪ユニット2と、動力源を備えていない従動車輪ユニット5とを有する。この例では、前後方向の中央部の左右一対が駆動車輪ユニット2とされ、前端部及び後端部それぞれの左右一対が従動車輪ユニット5とされている。自動搬送車91は、外郭部11の天面が水平となるように配置され、少なくとも一つの駆動車輪ユニット2を含む3個以上の車輪ユニット2Wを有する。
【0014】
図1Cに示されるように、本体部1は、外郭部11の内側に骨格なるシャーシ12を有する。シャーシ12の左の縁部近傍及び右の縁部近傍に、それぞれ駆動車輪ユニット2が所定の姿勢で取り付けられている。所定の姿勢は、駆動車輪ユニット2の車軸である第1軸線の軸線CL2が左右方向に延びる姿勢である。シャーシ12には、制御装置13が取り付けられている。制御装置13は、外部との無線通信機能を有し自動搬送車91の動作を制御する。
【0015】
駆動車輪ユニット2の詳細を、図1Cにおける右側に取り付けられた駆動車輪ユニット2により説明する。図1C及び図2に示されるように、駆動車輪ユニット2は、本体フレーム21,モータ22,車輪部23,かさ歯車部24,及びブラシ部25を備えている。
【0016】
本体フレーム21は、立設部211,取り付け部212,突出枠部213,及び柱部214を有する。
【0017】
立設部211は上下前後方向に延在する平板状の部位である。立設部211には、モータ22が、駆動軸の軸線CL2を左右方向に延びる姿勢にして取り付けられている。取り付け部212は、立設部211の上端からさらに上方に延び右方に90°折れ曲がって形成された側面視でL字状となる部位である。取り付け部212には、雌ねじ部212aを有する孔が複数設けられている。図1Cに示されるように、駆動車輪ユニット2は、取り付け部212の雌ねじ部212aに螺着するボルトなどの固定具Nによってシャーシ12に固定されている。
【0018】
図2に示されるように、突出枠部213は、立設部211の下部から右方に枠状に延出する部位である。突出枠部213は、上面視で矩形の枠状に形成されている。突出枠部213の内側には、後述する車輪部23の下部が入り込んでいる。柱部214は、突出枠部213における前後方向に延びる右枠部213aから下方に延びる一対の柱状部位である。一対の柱部214は、前後に離隔し下方に同じ長さで延びており、それぞれ下端面に開口して雌ねじが形成されたねじ孔を有する。
【0019】
一対の柱部214の下端面の高さ位置は、立設部211の下面と同じ高さ位置にある。立設部211は下面に開口して雌ねじが形成された一対のねじ孔を有する。一対の柱部214のねじ孔と、立設部211の下面の一対のねじ孔には、ボルトN1(図3及び図4参照)によって板状部材の押さえ板27が固定されている。
【0020】
図4に示されるように、車輪部23は、連結部231,基部232,及び接地部233を有する。
連結部231は、モータ22の駆動軸221と一体的に連結し、基部232は連結部231と一体的に連結している。接地部233は、基部232の周面に固定されて床と接触する部位であって床に対して大きい摩擦力が生じる材料(ゴム、ウレタンなど)で形成されている。これにより、制御装置13の制御の下、モータ22が回転すると車輪部23が軸線CL2を中心に回転する。
【0021】
車輪部23の基部232には、かさ歯車部24が一体的に連結されている。かさ歯車部24は、歯車基部241,歯車軸部242,及び挿入軸部243を有する。
【0022】
挿入軸部243は、車輪部23の連結部231に対し軸線CL2上で挿入固定され車輪部23と一体に回転する。挿入軸部243は歯車軸部242の先端に一体的に形成されている。歯車軸部242の右端部には、第1かさ歯車である円板状の歯車基部241が一体的に連結されている。歯車基部241の周面は例えば45°に傾斜してかさ歯車の歯部244が形成されている。これにより、車輪部23が回転すると、かさ歯車部24も軸線CL2まわりに一体的に回転する。
【0023】
図4に示されるように、駆動車輪ユニット2は、上述の押さえ板27の上方に平行に配置されたほぼ同径のリング状部材である上押さえ板28を有する。上押さえ板28は不図示の固定構造によって突出枠部213に固定されている。
【0024】
駆動車輪ユニット2は、ラジアルボールベアリングであるベアリング26を有する。ベアリング26の内輪261は、上押さえ板28及び押さえ板27に対し、上下方向から挟まれるように固定されている。ベアリング26は、軸線CL2よりも床FL(図5参照)に近い高さ位置に水平姿勢で配置されている。ベアリング26の環の内側には、車輪部23の下部が進入している。
【0025】
図5に示されるように、ベアリング26を含んだブラシ部25が構成されている。すなわち、ブラシ部25は、かさ歯リング251,ブラシリング252,及びベアリング26を有する。
【0026】
かさ歯リング251は、ベアリング26の外輪262の外側に連結する内径を有し、外輪262に溶接などによって一体的に固定されている。これにより、本体フレーム21側に固定されたベアリング26の内輪261に対し、かさ歯リング251は、ベアリング26の軸線として上下方向に延びる第2軸線である軸線CL25まわりに回転可能となっている。この例において、軸線CL25は、軸線CL2に交わって直交するよう設定されているが、軸線CL25は軸線CL2に交わらずに直交する位置にあってもよい。
【0027】
図4及び図5に示されるように、かさ歯リング251の上面の外縁部分は、45°に傾斜した歯部251aとなっており、第2かさ歯車として車輪部23と一体で回転する歯車基部241の歯部244と歯合している。すなわち、第1かさ歯車である歯車基部241と第2かさ歯車であるかさ歯リング251とで、かさ歯車体を構成している。かさ歯リング251の下部には、リング状のブラシリング252が固定されている。ブラシリング252は、かさ歯リング251の下面に固定された剛体で環状のブラシ基部252aと、ブラシ基部252aの下部に植毛され下方に延びるブラシの集合体であるブラシ252bとを有する。ブラシ252bは、樹脂製の毛材などの束が複数近接配置されて形成されている。
【0028】
図4に示されるように、ブラシ252bは、駆動車輪ユニット2を床FLから浮かせた、重力以外の力が加わらない自然の状態で、下端位置が車輪部23における接地部233の下端よりも下方に位置する長さで形成されている。
【0029】
駆動車輪ユニット2は、上述の構成により、制御装置13の制御の下でモータ22が回転すると、車輪部23も軸線CL2まわりに回転する。また、車輪部23に一体的に連結されているかさ歯車部24も、軸線CL2まわりに回転する。かさ歯車部24の歯部244には、ブラシ部25におけるかさ歯リング251の歯部251aが歯合しているので、かさ歯リング251は、モータ22が回転すると軸線CL25まわりに回転するようになっている。
【0030】
従動車輪ユニット5は、駆動車輪ユニット2のように駆動源としてのモータ22を備えているものではなく、車輪が従動回転し、いわゆるキャスタとして車軸が駆動車輪ユニット2の回転に伴い360°の範囲で自由な向きに回転可能となっている。従動車輪ユニット5は、図6に示されるように、基体部51,回転部52,車輪体53,かさ歯車部54,及びブラシ部55を備えている。
【0031】
基体部51は、支柱511,取り付け部512,上押さえ板513,及び下押さえ板514を有する。取り付け部512は、平板状の部材であって、本体部1におけるシャーシ12(図1C参照)の下面に不図示のボルトなどによって固定される。支柱511は、取り付け部512の前後方向の中央から前方の部位において、上下に延びる軸線CL5を挟み左右方向に離隔して下方に延びる一対の柱状の部材である。上押さえ板513は、一対の支柱511それぞれにおいて、同じ高さ位置で互いに遠ざかる方向に延出する短冊状の部位である。下押さえ板514は、一対の支柱511それぞれにおいて、上押さえ板513の下方に離隔し、同じ高さ位置で上押さえ板513と平行に延びる短冊状の部位である。
【0032】
回転部52は、取り付け部512の下面に取り付けられ、上部52a,下部52b,及び不図示のスラストベアリングを有する。上部52aは、取り付け部512に取り付けられ、スラストベアリングの上輪と一体となっている。下部52bは、スラストベアリングの下輪と一体になっている。すなわち、上部52aに対し下部52bが軸線CL5まわりに回転自在となっている。
【0033】
下部52bには車輪体53が一体的に連結されている。車輪体53は、シャフト531,支持部532,及び車輪部533を有し、支持部532の上面が下部52bの下面に取り付けられている。支持部532は、下方側が開放された上下逆向きのU字形状に形成され前後方向に延材する部材である。支持部532と下部52bとは一体に形成されていてもよい。
【0034】
車輪部533にはシャフト531が一体的に取り付けられている。シャフト531は、支持部532の下部に、ナットである固定具N2の締め付けによって水平方向(図6において左右方向)に延びる軸線CL53まわりに回転自由に支持されている。軸線CL53は、軸線CL5と交わらない位置にある。この図6に示される例では軸線CL5よりも前方側にある。
【0035】
シャフト531には、かさ歯車部54が一体的に連結されている。かさ歯車部54は、歯車基部541,歯車軸部542,及び歯部544を有する。シャフト531の右端には同芯で棒状の歯車軸部542が一体的に連結されており、歯車軸部542の右端には、軸線CL53に直交する姿勢で円盤状の歯車基部541が固定されている。歯車基部541の周縁部は、右方に向かうに従って径が拡大する45°の傾斜面となっており、その傾斜面には、かさ歯車としての歯部544が形成されている。
【0036】
一方、基体部51の上押さえ板513と下押さえ板514との間には、すべり軸受けとなる細いリング状のカラー56とかさ歯リング551の内周部とが、カラー56が下側となるように上下方向に重なり軸線CL55まわりに回転可能に介装されている。軸線CL55は、軸線CL53と交わって上下方向に延びる軸線である。
【0037】
かさ歯リング551の外周面は上方に向かうに従って径が拡大する45°の傾斜面となっており、その傾斜面には、かさ歯車としての歯部551aが形成されている。歯部551aは、かさ歯車部54の歯部544と歯合している。これにより、車輪部533が回転すると、回転軸方向が変換されてかさ歯リング551が回転する。
【0038】
かさ歯リング551は、ブラシ部55の構成部材である。すなわち、ブラシ部55は、かさ歯リング551及びブラシリング552を有する。ブラシリング552は、環状の剛体であるブラシ基部552aと、ブラシ基部552aの下部において全周にわたり植毛されて下方に環状に延びるブラシ552bとを有する。ブラシ552bは、樹脂製の毛材などの束が複数近接配置されて形成されている。
【0039】
図6に示されるように、ブラシ552bは、重力以外の力が加わらない自然の状態で、下端位置が車輪部553の下端よりも下方に位置する長さで形成されている。かさ歯リング551には、ブラシ552bの上下方向の位置を調整可能な上下位置調整部551bが備えられている。
【0040】
上述のように、駆動車輪ユニット2において、ブラシ252bは、自然状態で下端位置が車輪部23の接地部233の下端よりも下方に位置する長さで形成されている。自動搬送車91は、車輪ユニット2Wを3個以上有し、床FLに置いたときに天面が水平となる。また、図5に示されるように、ブラシ252bは、自動搬送車91を床FLに置いたときに自重によって変形し、車輪部23の接地部233が床に接触するよう材質及び毛材の太さなどが設定されている。
【0041】
このように、接地部233が床FLに接地した状態で、ブラシ252bは床FLに押し付けられて撓んだ状態となり、モータ22が動作して車輪部23が回転し自動搬送車91が走行すると、ブラシ252bは、自動搬送車91の走行に伴い軸線CL25まわりに床FLを擦りながら回転する。それと共に、ブラシ252bは、自動搬送車91の進行方向にも擦り上げていく。ここで進行方向とは、前進方向(前方)と後進方向(後方)とを含む。このように、ブラシ部25は、床FLに対して回転と直動とを合わせた擦り運動によって良好な清掃力を発揮する。これにより、自動搬送車91は、ブラシ252bによって、走行しながら床FLに付着したゴミや汚れを良好に除去できる。
【0042】
また、接地部233は、水平の周囲全方向がブラシ252bに覆われている。すなわち、自動搬送車91が走行するときに接地部233が接触する床FLは、すでにブラシ252bの進行方向への直動と回転とが組み合わされた擦り運動によって清掃が実行されている。そのため、床FLにおける接地部233が接触する部位は、ゴミ及び汚れが十分に除去された状態になっているので、接地部233にゴミ及び汚れはほとんど付着しないようになっている。
【0043】
また、従動車輪ユニット5において、既述のように、ブラシ552bはその下端が自然状態で下端位置が車輪部533の下端よりも下方に位置する長さで形成されている。ブラシ552bは、自動搬送車91を床FLに置いたときに、自重によってブラシ552bが変形し車輪部533が床に接触するよう材質及び毛材の太さなどが設定されている。
【0044】
このように、車輪部533が床FLに接地した状態で、ブラシ552bは床FLに押し付けられて撓んだ状態となる。駆動車輪ユニット2が動作して走行を開始すると、従動車輪ユニット5の車輪部533が従動回転し、ブラシ552bは、自動搬送車91の走行に伴い軸線CL55まわりに床FLを擦りながら回転する。それと共に、ブラシ552bは、自動搬送車91の進行方向にも擦り上げていく。このように、ブラシ部55は、床FLに対して回転と直動とを合わせた擦り運動によって良好な清掃力を発揮する。これにより、自動搬送車91は、ブラシ552bによって、走行しながら床FLに付着したゴミや汚れを良好に除去できる。
【0045】
また、従動車輪ユニット5において、車輪部533は、水平の周囲全方向がブラシ552bに覆われている。すなわち、自動搬送車91が走行するときに車輪部533が接触する床FLは、すでにブラシ552bの進行方向への直動と回転とが組み合わされた擦り運動によって清掃が実行されている。そのため、床FLにおける車輪部533が接触する部位は、ゴミ及び汚れが十分に除去された状態になっているので、車輪部533にゴミ及び汚れはほとんど付着しないようになっている。
【0046】
すなわち、自動搬送車91は、物品を搬送しながら床FLを清掃し車輪部23の接地部233及び車輪部533にゴミ及び汚れがつきにくくしているので、搬送時間以外の清掃時間が不要となり、搬送効率を低下させずに車輪部23及び車輪体53にゴミを付着しにくくできる。
【0047】
本発明の実施例は、上述した構成に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において変形例としてもよい。
【0048】
自動搬送車91は、長時間の走行により、ブラシ252bの先端が摩滅し、床FLへの押し付け力が経時的に弱くなる。そこで、ベアリング26の固定位置を上下方向に調整可能とする、或いは、ブラシ基部252aを上下方向に伸縮可能として、ブラシ基部252aの下方への長さが所望の長さとなるよう上下位置を調整可能な構造にしてもよい。例えば、図4に示されるように、立設部211及び柱部214に、それぞれ上下位置調整部211a,214aを設けてベアリング26の上下方向の位置を調整可能とする。
【0049】
上述の駆動車輪ユニット2及び環状のブラシ部25は、それぞれ二つの車輪ユニット3A,3B及びベルトブラシ36に置き換えたベルトブラシユニット3Gに変形してもよい。車輪ユニット3A,3Bは、両方がモータ32を備えた駆動車輪ユニットであってよく、一方が従動車輪ユニットであってもよい。また、自動搬送車91が、駆動車輪ユニットを有する別のベルトブラシユニット3Gを備えている場合は、車輪ユニット3A,3Bの両方が従動車輪ユニットであってもよい。ここでは、車輪ユニット3A,3Bのいずれもがモータ32を備えた駆動車輪ユニットである場合を説明する。
【0050】
ベルトブラシユニット3Gについて図7及び図7Bを参照して説明する。図7Aは、駆動車輪ユニット2の変形例である車輪ユニット3A,3Bを有するベルトブラシユニット3Gを示す斜視図である。図7Bは、ベルトブラシユニット3Gの側面図である。
【0051】
図7A及び図7Bに示されるように、ベルトブラシユニット3Gは、2個の車輪ユニット3A,3Bと、ベルトブラシ36とを有して構成されている。
【0052】
車輪ユニット3Aは、モータ32,車輪部333,モータブラケット311A,車輪かさ歯部334,従動かさ歯部34,及びプーリ35(図7B参照)を有する。車輪ユニット3Aにおいて、車輪部333は、モータ32の駆動軸に連結されて駆動軸と一体的に回転する。
【0053】
車輪かさ歯部334も、モータ32の駆動軸に連結されて、駆動軸と同じ軸線CL3まわりに一体的に回転する。車輪かさ歯部334は、周縁部にかさ歯部334aを有する。従動かさ歯部34は、モータブラケット311Aの下部から水平に折れ曲がって枠状に形成された枠部312Aに、鉛直方向に延びる軸線CL34まわりに回転自由に取り付けられている。従動かさ歯部34は、周縁部に歯部34aを有する。
【0054】
かさ歯部334aと歯部34aとは、かさ歯車として歯合している。また、従動かさ歯部34には、軸線CL34と同軸で下方に延びるプーリ35(図7B参照)が連結されている。これらの構成により、車輪ユニット3Aは、モータ32が回転すると、かさ歯部334aと歯部34aとの歯合によりプーリ35が回転する。
【0055】
車輪ユニット3Bは、モータ32,車輪部333,モータブラケット311B,及び従動プーリ37(図7B参照)を有する。車輪ユニット3Bにおいて、車輪部333は、モータ32の駆動軸に連結されて回転する。従動プーリ37は、モータブラケット311Bの下部から水平に折れ曲がって枠状に形成された枠部312Bに、鉛直方向に延びる軸線CL37(図7B参照)まわりに回転自由に取り付けられている。
【0056】
プーリ35及び従動プーリ37には、無端ベルト状のベルトブラシ36が、水平面内で循環するように掛け渡されている。ベルトブラシ36は、剛体の基部361と、基部361の下端部に植毛され下方に延びるブラシ362とを有する。
【0057】
以上の構成により、車輪ユニット3A,3Bはそれぞれのモータ32が回転することで車輪部333が回転して床FL上を走行する。車輪ユニット3Aのモータ32の回転によってプーリ35が回転し、従動プーリ37との間に掛け渡されたベルトブラシ36が循環する。ベルトブラシ36のブラシ362の下端部は、自然状態で車輪部333の接地位置よりも下方に位置している。そのため、ブラシ362は撓んで床FLを押し付けながら回転する。これにより、床FLのゴミ及び汚れがブラシ362によって除去される。
【0058】
自動搬送車91は、一対の駆動車輪ユニット2の替わりにベルトブラシユニット3Gを有するものに変形してもよい。この場合、床FLにおける、二つの車輪部333が接触する部位は、ゴミ及び汚れが十分に除去された状態になっているので、二つの車輪部333にゴミ及び汚れはほとんど付着しない。
【0059】
ベルトブラシユニット3Gは、摩滅に対応するため上下方向の位置を調整可能とするものであってもよい。例えば、図7Bに示されるように、プーリ35及び従動プーリ37に、ベルトブラシ36が掛け渡される位置を上下移動可能な、それぞれ上下位置調整部35a,37aを設けてもよい。
【0060】
車輪部23は、モータ22の駆動軸に直結しているものに限定されない。モータ22と車輪部23との間に変速機などが介在していてもよい。すなわち、モータ22の回転力によって車輪部23が回転するものであればよい。従って、モータ22の駆動軸と車輪部23の回転軸である軸線CL2は一致していなくてもよく、平行であっても非平行であってもよい。
【0061】
自動搬送車91の駆動車輪ユニット2において、第1軸線である軸線CL2と第2軸線である軸線CL25とは直交するものに限らず、非平行であればよい。すなわち、自動搬送車91は、車輪部23の回転軸方向を第1軸線である軸線CL2から第2軸線である軸線CL25に変換する回転軸方向変換部KH(図1C図4参照)を有する。回転軸方向変換部KHの一例が上述の第1かさ歯車である歯車基部241と第2かさ歯車であるかさ歯リング251とのかさ歯車体である。回転軸方向変換部KHは、このようなかさ歯車体に限定されず、自在継手などを用いてもよい。
【0062】
また、自動搬送車91の従動車輪ユニット5において、第1軸線である軸線CL53と第2軸線である軸線CL55とは直交するものに限らず、非平行であればよい。すなわち、自動搬送車91は、車輪部533の回転軸方向を第1軸線である軸線CL53から第2軸線である軸線CL55に変換する回転軸方向変換部KH(図6参照)を有する。回転軸方向変換部KHの一例が上述の第1かさ歯車である歯車基部541と第2かさ歯車であるかさ歯リング551とのかさ歯車体である。回転軸方向変換部KHは、このようなかさ歯車体に限定されず、自在継手などを用いてもよい。
【0063】
以上、詳述したように、本発明の自動搬送車の第1の一態様は、複数の車輪ユニット2Wを備えて床FLを走行し、第1軸線CL2まわりに回転する車輪部23と、車輪部23に連結されて、車輪部23と一体的に第1軸線CL2まわりに回転する第1かさ歯車241と、第1かさ歯車241に歯合し第1軸線CL2に直交する第2軸線CL25まわりに回転する第2かさ歯車251と、第2かさ歯車251に連結されて、第2かさ歯車251と一体的に第2軸線CL25まわりに回転するブラシ252bと、を備え、車輪部23が床FLに接触している状態で、ブラシ252bの先端が床FLに接触している自動搬送車91である。
【0064】
これにより、自動搬送車91は、床FLを走行しながらブラシ252bによって床FLのゴミ及び汚れを除去するので、車輪部23にゴミ及び汚れが付着しにくい。
【0065】
また、この一態様は、ブラシ252bが車輪部23を囲む環状に形成されているものであってもよい。
【0066】
これにより、床FLにおける車輪部23が通過する部位は、予めブラシ252bによってゴミ及び汚れが除去されているので、車輪部23にゴミ及び汚れがより一層付着しにくくなる。
【0067】
また、この一態様は、ブラシ252bが無端ベルト状のブラシ362とされ、ブラシ362が第2かさ歯車251を有する駆動車輪ユニット2の車輪部23と駆動車輪ユニット2に隣接する駆動車輪ユニット2の車輪部23とを囲むように配置されて第2かさ歯車251の回転に伴い循環するようにしてもよい。
【0068】
これにより、無端ベルト状の一つのブラシ362によって少なくとも二つの車輪部23に対しゴミ及び汚れの付着を阻止できるので、車輪部23の数に対するブラシの個数が減少してコスト上昇を抑制できる。
【0069】
また、この一態様は、ブラシ252b,362が、第2軸線CL25の方向の位置を調整可能に備えられているものであってもよい。
【0070】
これにより、ブラシ252b,362が摩滅して下端位置が上昇しても、ブラシ252b,362が最適な付勢力で床FLを擦るように調整できるので、経時的にゴミ及び汚れの排除効果が低下することを防止できる。
【0071】
また、本発明の自動搬送車の第2の一態様は、複数の駆動車輪ユニット2を備えて床FLを走行し、第1軸線CL2まわりに回転する車輪部23と、車輪部23の回転を第1軸線CL2に非平行な第2軸線CL25まわりの回転に変換する回転軸方向変換部KHと、回転軸方向変換部KHによって回転軸方向が変換された車輪部23の回転力によって第2軸線CL25まわりに回転するブラシ252bと、を備え、車輪部23が床FLに接触している状態で、ブラシ252bの先端が床FLに接触している自動搬送車91である。
【0072】
これにより、自動搬送車91は、床FLを走行しながらブラシ252bによって床FLのゴミ及び汚れを除去するので、車輪部23にゴミ及び汚れが付着しにくい。
【符号の説明】
【0073】
1 本体部
11 外郭部
12 シャーシ
13 制御装置
2 駆動車輪ユニット
2W 車輪ユニット
21 本体フレーム
211 立設部
211a 上下位置調整部
212 取り付け部
212a 雌ねじ部
213 突出枠部
213a 右枠部
214 柱部
214a 上下位置調整部
22 モータ
221 駆動軸
23 車輪部
231 連結部
232 基部
233 接地部
24 かさ歯車部
241 歯車基部
242 歯車軸部
243 挿入軸部
244 歯部
25 ブラシ部
251 かさ歯リング
251a 歯部
252 ブラシリング
252a ブラシ基部
252b ブラシ
26 ベアリング
261 内輪
262 外輪
27 押さえ板
28 上押さえ板
3A,3B 車輪ユニット
311A,311B モータブラケット
312A,312B 枠部
32 モータ
333 車輪部
334 車輪かさ歯部
334a かさ歯部
34 従動かさ歯部
34a 歯部
35 プーリ
35a 上下位置調整部
36 ベルトブラシ
361 基部
362 ブラシ
37 従動プーリ
37a 上下位置調整部
3G ベルトブラシユニット

5 従動車輪ユニット
51 基体部
511 支柱
512 取り付け部
513 上押さえ板
514 下押さえ板
52 回転部
52a 上部
52b 下部
53 車輪体
531 シャフト
532 支持部
533 車輪部
54 かさ歯車部
541 歯車基部
542 歯車軸部
544 歯部
55 ブラシ部
551 かさ歯リング
551a 歯部
551b 上下位置調整部
552 ブラシリング
552a ブラシ基部
552b ブラシ
56 カラー
91 自動搬送車
CL2,CL25,CL3,CL34,CL37,CL5,CL55 軸線
FL 床
KH 回転軸方向変換部
N,N1,N2 固定具(ボルト)
図1A
図1B
図1C
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B