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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024124801
(43)【公開日】2024-09-13
(54)【発明の名称】植物性の生魚様食品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23J 3/00 20060101AFI20240906BHJP
   A23L 17/00 20160101ALI20240906BHJP
   A23J 3/16 20060101ALI20240906BHJP
【FI】
A23J3/00 507
A23L17/00 Z
A23J3/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023032712
(22)【出願日】2023-03-03
(71)【出願人】
【識別番号】315015162
【氏名又は名称】不二製油株式会社
(72)【発明者】
【氏名】田附 裕子
(72)【発明者】
【氏名】横田 真平
【テーマコード(参考)】
4B042
【Fターム(参考)】
4B042AC05
4B042AC10
4B042AD36
4B042AK06
4B042AK09
4B042AK10
4B042AK13
4B042AP02
4B042AP18
4B042AP21
(57)【要約】
【課題】植物性素材を主原料とする、適度なオイリー感を有する生魚様食品を提供すること。
【解決手段】
粉末状植物性たん白1~10重量%、ジェランガム0.5~5重量%、2価金属塩を2価金属として0.005~0.05重量%、食物繊維0.1~3重量%、澱粉1~10重量%、油脂8~32重量%、水55~85重量%を含有する原材料を均一に混合する。ただし油脂/粉末状植物性たん白の重量比を30~160、かつ、水/粉末状植物性たん白の重量比を80~400とする。ここに食塩0.1~2.5重量部を添加し、生地を調製する。得られた生地を成形加熱後さらに冷凍、解凍する。この工程により好ましい油性感(オイリー感)を有する、生マグロ様食品、生サーモン様食品に例示される生魚様食品を安定的に製造することができる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下(1)~(4)の全工程を含む、植物性の生魚様食品の製造方法。
(1)粉末状植物性たん白0.1~1.5重量%、ジェランガム0.5~5重量%、2価金属塩を2価金属として0.005~0.05重量%、食物繊維0.1~3重量%、澱粉1~10重量%、油脂8~32重量%、水55~85重量%、を含む原材料を混合する工程。ただし粉末状植物性たん白に対する油脂の重量比を30以上160以下、かつ、粉末状植物性たん白に対する水の重量比を80以上400以下とする。
(2) (1)の混合物に食塩0.1~2.5重量%を添加、混合し、生地を調製する工程
(3) (2)の生地を成形、加熱する工程
(4) (3)の加熱後に冷凍、解凍する工程
【請求項2】
生魚様食品が生マグロ様食品、又は生サーモン様食品である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
粉末状植物性たん白0.1~1.5重量%、ジェランガム0.5~5重量%、2価金属塩を2価金属として0.005~0.05重量%、食物繊維0.1~3重量%、澱粉1~10重量%、油脂8~32重量%、及び、水55~85重量%を混合する工程を含む生魚様食品の製造方法において、粉末状植物性たん白に対する油脂の重量比を30以上160以下、かつ、粉末状植物性たん白に対する水の重量比を80以上400以下とすることを特徴とする、生魚様食品の生地を安定的に製造する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は植物性素材を主原料とする生魚様食品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
環境問題への関心や食に対する意識の多様化、健康志向などを背景とし、植物性食品へのニーズが増加している。魚介類を含む動物性食品の中でもサーモン、マグロ、生レバーなど、適度な油性感を特徴とする食品を植物性の素材で提供する試みはこれまでにも行われている。
【0003】
特許文献1には特定粒子径の油滴を含有する水中油型乳化物ゲル食品によって生魚肉様、生レバー様の食感を再現する技術について記載されている。特許文献2には植物性タンパク質、油脂及び水を原料とする、未加熱動物組織様の食品の製造方法が開示されている。
特許文献3によれば分離大豆蛋白、豆乳クリーム、油中水型乳化物、水を含む混合物に食用油脂を加え、トランスグルタミナーゼを加えて反応させ加熱することで生魚肉、特に生マグロ肉に近似した食感を有する素材を得ることができる。
特許文献4にはエンドウ豆タンパクと微細藻類抽出物を含む、スモークサーモン代用品の実施例が記載されている。
【0004】
特許文献5は加熱凝固性タンパク(卵白、大豆)、タピオカ澱粉、増粘多糖類(カラギーナン、サイリウム)、食用油、水を用い、魚肉を使用せずに蒲鉾様の食品を製造する方法の出願である。
特許文献6には粉末状植物性たん白、ジェランガム、2価金属塩、水を生地中に含有する、水産練り製品様食品の製造方法について開示されている。
【0005】
本出願人は特許文献7において、特定比率の特定原材料を用い、油脂を食塩より後に混合して生地を調製することにより、好ましい油性感を有する植物性の生魚様食品や生レバー様食品が製造可能であることを見出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開WO2013/190921号パンフレット
【特許文献2】特開2014-87316号公報
【特許文献3】特開2021-52705号公報
【特許文献4】特表2020-520635号公報
【特許文献5】特開平5-153915号公報
【特許文献6】国際公開WO2022/070913号パンフレット
【特許文献7】特願2022-122366
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は植物性の生魚様食品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは特許文献1~5の従来技術より更に本物に近い食感の植物性食品を目指し検討を行った。
特許文献6には植物油を11~18%配合した実施例が記載されているが、油脂は生地中に分散して練り込まれ弾性が強い食感であり、油性感は感じられにくいものであった。
特許文献7は特許文献6に着想を得て完成させた技術であるが、製造設備や規模によっては生地を安定的に製造することが難しい場合があった。本発明者らは鋭意検討を進め、配合をさらに特定された範囲とすることで、主原材料を一括混合して生地を調製しても、適度な好ましい油性感が得られることを見出し、本発明を完成させた。
【0009】
すなわち本発明は
1.以下(1)~(4)の全工程を含む、植物性の生魚様食品の製造方法、
(1)粉末状植物性たん白0.1~1.5重量%、ジェランガム0.5~5重量%、2価金属塩を2価金属として0.005~0.05重量%、食物繊維 0.1~3重量%、澱粉1~10重量%、油脂8~32重量%、水55~85重量%、を含む原材料を混合する工程、ただし粉末状植物性たん白に対する油脂の重量比を30以上160以下、かつ、粉末状植物性たん白に対する水の重量比を80以上400以下とする。
(2) (1)の混合物に食塩0.1~2.5重量%を添加、混合し、生地を調製する工程
(3) (2)の生地を成形、加熱する工程
(4) (3)の加熱後に冷凍、解凍する工程
2. 生魚様食品が生マグロ様食品、又は生サーモン様食品である、1.に記載の製造方法、
3.粉末状植物性たん白0.1~1.5重量%、ジェランガム0.5~5重量%、2価金属塩を2価金属として0.005~0.05重量%、食物繊維0.1~3重量%、澱粉1~10重量%、油脂8~32重量%、水55~85重量%を混合する工程を含む生魚様食品の製造方法において、粉末状植物性たん白に対する油脂の重量比を30以上160以下、かつ粉末状植物性たん白に対する水の重量比を80以上400以下とすることを特徴とする、生魚様食品の生地を安定的に製造する方法、である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば植物性の生魚様食品を安定的に製造、供給することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を具体的に説明する。
【0012】
(植物性食品)
本発明は植物性食品、特に適度な油性感(オイリー感)を特徴とする植物性食品の製造方法に関する。より具体的には生魚様食品に例示される。適度な油性感、オイリー感について更に説明する。咀嚼前には油脂分が組織中に保持され、喫食時の咀嚼により口中に油脂が適度に滲み出し、いわば好ましい「油っぽさ」が感じられる状態のことをいう。
なお本発明における「植物性食品」とは植物由来の原材料を主体とする食品を指し、魚介類を含む動物性原材料を配合しない。その商品設計によっては動物性原材料を一部配合、併用することも妨げないが、本発明によればこれらを一切用いずとも良好な食感を実現できる。
【0013】
(生魚様食品)
本発明においては、生の魚肉様の食感を有する植物性食品を「生魚様食品」と称する。特に脂質含量の比較的多い赤身の魚、より具体的には生マグロ(トロ、大トロ)様、生サーモン様に例示される食品を製造することができる。
また本発明の技術によれば、色素や調味料、フレーバー等の副原料を適宜調整することで、スモークサーモン様食品、さらには生レバー様食品などを製造することも可能である。
【0014】
(粉末状植物性たん白)
本発明に用いる粉末状植物性たん白としては大豆、小麦、エンドウに例示される植物性原材料から製造される市販品を適宜選択することができる。特に大豆を原材料とする粉末状大豆たん白が好ましい。粉末状植物性たん白は所望の物性や風味色調に応じ適宜選択することができるが、固形分中の粗蛋白質含量は80重量%以上が好ましく、より好ましくは85重量%以上である。また通常一般の水産練り製品用途の市販品を好適に使用できる。
生地中配合量は0.1重量%以上1.5重量%以下、より好ましくは0.1~1.0重量%である。配合量がこの範囲外であると、適度な乳化状態の生地が得られにくい場合がある。
【0015】
本発明においては配合中の水、油脂と粉末状植物性たん白の比率をそれぞれ一定範囲とすることで、主原材料を一括して均一に混合しても、適度な乳化状態の生地を得ることができる。
粉末状植物性たん白に対する油脂の重量比(油脂/粉末状植物性たん白)は30以上、好ましくは35以上である。上限は160以下が好ましく、より好ましくは130以下、最も好ましくは100以下である。かつ、粉末状植物性たん白に対する水の重量比(水/粉末状植物性たん白)は80以上、好ましくは90以上、より好ましくは100以上である。上限は400以下が好ましく、より好ましくは350以下である。比率がこの範囲外であると、生地調製中の適度な乳化状態が得られにくくなったり、冷凍解凍後の適度な油性感が得られにくくなったりする場合がある。
【0016】
(ジェランガム)
ジェランガムとは非病原性微生物Sphingomonas elodeaが産生する多糖類であり、脱アシル型とネイティブ型の2種類がある。本発明においてはネイティブ型ジェランガムが好適であり、市販品を適宜選択し用いることができる。配合量は生地中0.5重量%以上5重量%以下、好ましくは0.7~4重量%、より好ましくは0.7~3重量%である。これより少ないと好ましい食感、具体的には適度な弾力、しなやかさ、歯切れの良さが得られない場合がある。これより多いと弾力が強すぎて生地の調製が困難になったり、ゴムのような好ましくない食感となったりする場合がある。
【0017】
(2価金属)
本発明にはカルシウム、マグネシウムに例示される2価金属を含有させることで好ましい食感、より具体的には適度な硬さ、弾力、歯切れの良さなどを付与することができる。
生地中には2価金属塩として配合する。2価金属として0.005重量%以上0.05重量%以下、好ましくは0.01~0.04重量%となるように配合するのが望ましい。
2価金属塩としては具体的にはカルシウム塩、マグネシウム塩を挙げることができ、風味の点ではカルシウム塩が望ましい。カルシウム塩としては硫酸カルシウム、乳酸カルシウム、塩化カルシウム、炭酸カルシウムが挙げられ、より望ましくは乳酸カルシウム、硫酸カルシウム、塩化カルシウムであり、さらに望ましくは乳酸カルシウムである。食品用途の乳酸カルシウム(5水和物)を用いる場合、ジェランガム1重量部に対して0.05~0.15重量部、より好ましくは0.08~0.13重量部配合することが望ましい。配合量がこれより少ないと弾力不足でねちゃついた食感となる場合がある。一方、これより多いと生地の乳化が不十分となる場合がある。油脂配合量が比較的多いことを特徴とする本発明においては、全体のバランスも勘案しながら適宜調整することが望ましい。
【0018】
(食物繊維)
本発明には生地中に食物繊維を配合することで良好な食感、具体的には適度な歯応えや歯切れの良さを得ることができる。セルロース、オート麦ファイバーに例示される不溶性食物繊維が好ましく、より好ましくはオート麦ファイバーである。本発明でいうオート麦ファイバーとは、いわゆるオート麦のフスマ部分、すなわち外皮部分から水溶性繊維等の水溶性成分を除去した不溶性の繊維部分のことを指す。
配合量は生地中0.1重量%以上3重量%以下、好ましくは0.2~2重量%、さらに好ましくは0.3~1.5重量%である。これより少ないと食感改良効果が不十分な場合があり、またこれより多いと粉っぽい食感になってしまう場合がある。
【0019】
(澱粉)
本発明においては澱粉を配合することで適度な保形性と硬さが得られやすくなる。澱粉としては例えばタピオカ澱粉、馬鈴薯澱粉、エンドウ澱粉、小麦澱粉、トウモロコシ澱粉、及び/又はこれらの加工澱粉類から選ばれる1種類以上を単独あるいは適宜組み合わせて用いることができる。
生地中配合量は1重量%以上10重量%以下、より好ましくは1~8重量%、最も好ましくは2~7重量%である。これより少ない場合は前述の効果が十分に得られない場合がある。また、これより多い場合は澱粉に由来する食感が強くなりすぎ、好ましい食感が得られにくい場合がある。
【0020】
(水)
本発明には水道水の他、蒸留水、イオン交換水など、通常の食品製造用に用いられる水をいずれも用いることができる。水温は特に限定されないが、高温では原材料の混合時にダマになってしまう場合があるため、常温以下とするのが好ましい。冷水ないしは氷水として配合しても良い。
配合量は使用する粉末状植物性たん白の種類、その組成や特性に応じて適宜調整することができるが生地中55重量%以上85重量%以下、好ましくは60~80重量%である。水の量がこれより少ないと食感が硬くなりすぎ、これより多いと柔らかすぎて好ましい食感が得られない場合がある。
【0021】
(食塩)
本発明においては食塩を配合する。配合量は生地中0.1~2.5重量%が例示できる。なお、配合原材料中の粉末状植物性たん白と同時に食塩を混合すると植物性たん白の溶解性や乳化性に影響を及ぼす場合があるため、植物性たん白を含む原材料を均一に混合した後で加えることが望ましい。
【0022】
(油脂)
本発明に用いる油脂の種類は特に限定されず、大豆油、菜種油、コーン油、パーム油、ヤシ油、サフラワー油、オリーブ油、綿実油、ひまわり油、グレープシードオイル、ゴマ油等の食用油脂類をいずれも用いることができるが、常温(20℃)で液体である油脂が好ましい。
油脂の配合量は8重量%以上32重量%以下であり、より好ましくは10~30重量%、さらに好ましくは12~27重量%である。これより少ないと適度なオイリー感が得られにくい場合がある。これより多いと加熱後に生地の形状が崩れてしまったり、オイルオフが多すぎて外観や食感を損ねてしまったりする場合がある。生地調製工程中、油脂は植物性たん白などの主原材料と一括して混合(オールインワン)することができる。
【0023】
(その他原材料)
本発明には前述の他にも各種調味料、糖類、香料、色素、乳化剤等の原材料を、本発明の効果を阻害しない範囲で何れも用いることができる。
【0024】
(生地の調製)
生地の調製手順としては以下が例示できる。まず混合容器に所定量の粉末状植物性たん白、ジェランガム、2価金属、食物繊維、澱粉、水、油脂、並びに食塩以外の調味料類を入れて均一に混合する。混合には剪断力のある機器を用いることが望ましく、ロボクープ、サイレントカッター、ボールカッターなどが例示できる。混合時間は2~10分程度が目安として例示できる。さらに食塩を加えて1~10分程度混合し、生地を得る。
なお、本発明における「生地」とは食塩を含むすべての原材料が添加、混合された状態を指し、前項までの各原材料説明における「生地中」とは全原材料合計量に対する比率を表すものとする。
【0025】
(成形)
生地は所望の形態に応じて成形する。手作業でも一般の成形機などを用いてもよい。塊状、ブロック状、柵状などに成形し加熱、喫食時に適宜スライスして提供することで生魚様の外観、食感が得られやすくなる。
【0026】
(加熱)
成形された生地は蒸し、ボイルなどに例示される任意の手段により加熱する。レトルト加熱とすることもできる。加熱条件はその組成や成形形状により適宜設定することができるが、70℃以上で10分間以上、好ましくは80℃以上100℃以下で20~100分間、より好ましくは90~100℃で20~90分間が例示できる。
【0027】
(冷凍、解凍)
加熱、放冷後にこれを冷凍し、喫食前に解凍する。解凍手段は特に限定されないが、自然解凍(流水、冷蔵)が望ましい。これにより適度な解乳化が起こり咀嚼時に口中に油脂が滲み出し、好ましいオイリー感が得られる。
【0028】
以降に実施例を記載し、本発明をより詳細に説明する。なお本文中「部」および「%」は特に断りのない限り重量基準を意味する。
【0029】
(検討1)生魚様食品(マグロ様食品)の製造
表1の配合に従い、食塩以外の原材料を合わせ、カッターミキサー(ロボクープ、機種:R-3D)で2分間混合した。続いて食塩を加えて3分間混合した。
得られた生地を80gずつ袋に入れ、柵状に成形して真空脱泡後、95℃、30分間蒸し加熱(包装蒸し)を行った。放冷後に冷凍保管、冷蔵庫で自然解凍後に評価した。
なお、表中の原材料は下記製品を使用した。
粉末状植物性たん白:フジプロ748(不二製油株式会社、粉末状大豆たん白、固形分中の粗蛋白質90.5%)
ジェランガム:ケルコゲルLT-100(CPケルコ社、ネイティブ型)
植物油:菜種油
澱粉:馬鈴薯澱粉
加工澱粉:以下2種類を等量混合
フードスターチT5(リン酸架橋澱粉、松谷化学工業株式会社)
ウルトラスパース5(アセチル化アジピン酸架橋澱粉、イングレディオン・ジャパン株式会社)
食物繊維:オート麦ファイバー(レッテンマイヤージャパン株式会社)
カルシウム塩:乳酸カルシウム(5水和物)
【0030】
(官能評価)
官能評価は熟練したパネラー5名にて実施した。生魚様、具体的には生マグロ(トロ)様の食感を基準とし、「適度で、好ましいオイリー感」を5点満点で評価、その平均点(小数点以下は四捨五入)を評点とした。
5点:適度なオイリー感を有し、外観ともに特に良好
4点:適度なオイリー感を有し、良好
3点:オイリー感がやや強い、またはやや弱いが、許容範囲
2点:オイリー感が強い、または弱い
1点:オイリー感が強すぎる、または弱すぎ、生魚様食品としては不適当
結果を表1に示した。評点3以上を合格とした。
【0031】
(表1)生地配合(単位:重量部)及び官能評価結果
【0032】
植物油の配合量を15%、20%とした実施例3、4は適度なオイリー感を備え、かつ油浮きもなく、良好な生魚様食品(生マグロ様食品)が得られた。
植物油の配合量を20%、25%とした実施例1、2は少量の油浮きがみられ、実施例5(植物油25%)はややオイリー感が強めだが、いずれも生魚様食品としての商品価値を有するものであった。
また植物油30%の実施例6はオイリー感が強く感じられ、許容範囲ではあるが好みが分かれる場合があると判断した。
一方、植物油の配合量20%、25%であっても粉末状植物性たん白の配合量が異なる比較例1、2においては適度なオイリー感が感じられず、生魚様食品としての品質は不十分であり、また植物油35%の比較例3はオイルオフが多すぎて商品価値の劣るものであった。
以上より、油脂の配合量、粉末状植物性たん白に対する油脂の重量比、粉末状植物性たん白に対する水の重量比をいずれも特定範囲に調整することで、植物性の生魚様食品として適度な好ましい物性、食感が得られることが明らかになった。