(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024124804
(43)【公開日】2024-09-13
(54)【発明の名称】立管支持具
(51)【国際特許分類】
F16L 3/00 20060101AFI20240906BHJP
F16L 3/10 20060101ALI20240906BHJP
【FI】
F16L3/00 H
F16L3/10 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023032723
(22)【出願日】2023-03-03
(71)【出願人】
【識別番号】000151025
【氏名又は名称】株式会社タブチ
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100189555
【弁理士】
【氏名又は名称】徳山 英浩
(72)【発明者】
【氏名】寺田 孝
【テーマコード(参考)】
3H023
【Fターム(参考)】
3H023AA03
3H023AB05
3H023AD08
3H023AD26
3H023AE07
(57)【要約】
【課題】部品点数が少なく作業が容易で、安全且つ確実に立管を固定することができる立管支持具を提供する。
【解決手段】立管を挿入し上下位置を固定する管継手と、前記立管に対する耐荷重を有して前記管継手を挟み込むクランプ部を備えたバンドと、該バンドを介して前記管継手を建築物の躯体に支持するステーとからなり、前記管継手はその外周面に周方向に前記クランプ部に対応した幅と深さの環状溝を設けてなり、該環状溝内に前記クランプ部を巻き付ける。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
立管を挿入し上下位置を固定する管継手と、前記立管に対する耐荷重を有して前記管継手を挟み込むクランプ部を備えたバンドと、該バンドを介して前記管継手を建築物の躯体に支持するステーとからなり、前記管継手はその外周面に周方向に前記クランプ部の縦幅に一致する上下幅の環状溝を設けてなり、該環状溝内に前記クランプ部を巻き付けることを特徴とした立管支持具。
【請求項2】
管継手の外周面から突出するフランジをクランプ部の縦幅だけ離間して上下一対に設けて、該上下一対のフランジとその間の外周面で形成される凹部を環状溝としてクランプ部を巻き付ける請求項1記載の立管支持具。
【請求項3】
管継手の外周面をクランプ部の幅だけ環状に凹陥した部分を環状溝としてクランプ部を巻き付ける請求項1記載の立管支持具。
【請求項4】
環状溝の深さはクランプ部の厚み以上である請求項1記載の立管支持具。
【請求項5】
管継手は、二本の立管それぞれを上下から挿入するもので、その内部に、前記立管それぞれの管端が当接する縮径段部と、前記立管それぞれを抜け止めするロックリングと、前記それぞれの立管の外周面に水密に接するシールリングとを上下一対に設けた請求項1から4のうち何れか一項記載の立管支持具。
【請求項6】
クランプ部は円弧状の二分割体を開閉可能に連結してなる請求項1から4のうち何れか一項記載の立管支持具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、鉛直方向に配管される立管の支持具に関する。
【背景技術】
【0002】
オフィスビル等の空調における冷媒用銅管を鉛直方向に配管する場合など、立管の配管にあっては、各階など適宜間隔で振れ止め支持を行うほか、立管長の中間部1箇所については、国土交通省が定める公共建築工事における配管工事の標準仕様にもあるように、立管を建築物の躯体に確実かつ堅固に固定する必要がある。立管長は現場によって数十mを超えることがあり、管の自重や熱伸縮によって最下部で座屈しないように、中間部を固定して立管の上下変位を規制するためである。なお、冷媒用銅管は保温材で被覆されており、振れ止め支持は保温材の上から施工されるが、中間部は保温材を除去した管表面剥き出しの状態で固定手段が施工される。
【0003】
配管支持具として、特許文献1には、配管抱持部5A・5Bを有する配管支持バンド5と、ボルト3、ナット4、配管抱持部5A・5B夫々の端部である取付片5C・5Dとから主として構成され、建物の壁面にアンカーやボルト等によって固定されたいわゆる羽子板ボルトやT足の如き取付足Tに取り付けられ、配管を支持するものが開示されている(符号は特許文献1に記載されているもの)。しかしながら、この配管支持具において配管支持バンド5は、内面が平滑な一対の配管抱持部5A・5Bにより単に配管を直接締め付けるだけであるから、上述のように数十mを超えるような相当重量を有する立管の上下変位を規制するほどの固定力を得がたく、せいぜい振れ止め支持に適用できるだけである。
【0004】
一方、特許文献2には、立管(配管部材P)に装着した装着部材1を把持部材70で外側から把持して、この把持部材70を建築物の外壁W側のフレーム90に固定部材80を介して固定する配管用固定構造が開示されている。装着部材1は、断面円弧状に二分割した分割体20A・20Bからなり、これら分割体20A・20Bのそれぞれの外周面には鍔部31が周方向に沿って形成されている。これに対応して、把持部材70の円弧状の把持部72にはスリット状の係合孔73が周方向に沿って形成されている。そして、立管(配管部材P)の適宜箇所に分割体20A・20Bを連結装着し、その鍔部31に係合孔7が係合するように把持部材70を装着部材1に対して外装し、固定部材80を介して建築物側のフレーム90に固定することで、配管部材Pの軸方向の変位、即ち自重や熱伸縮による鉛直方向の変位を抑制するとされている(符号は特許文献2に記載されているもの)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010-53913公報
【特許文献2】特開2018-25290号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献2に開示された配管用固定構造は、把持部材70との組み合わせにおいて、上述のように、装着部材1なる部材を別途必要とする。しかも、この装着部材1は二分割された一対の分割体20A・20Bからなるから、使用する部品点数が増加する。このように部品点数が多くなれば、その分、立管の固定作業数も増えるうえ、部材紛失のおそれも高くなる。
【0007】
また、装着部材1は蝋付けにより立管の剥き出し管表面に固着しなければならず、機材(蝋材やバーナー、ガスボンベ等)の準備や蝋付けに精通した作業員の確保も含めて、作業全体に非常な手間を要する。
【0008】
こうした部品点数の多さや蝋付け作業は、コスト高に直結する課題でもある。また、立管の中間部固定が高所作業となることが多いことに鑑みれば、作業員の安全面からも、作業の工程数を減らし、蝋付けなどの熟練を要する作業は避けることが好ましい。
【0009】
本発明は上述した課題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、部品点数が少なく作業が容易で、安全且つ確実に立管を固定することができる立管支持具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した目的を達成するために本発明では、立管を挿入し上下位置を固定する管継手と、前記立管に対する耐荷重を有して前記管継手を挟み込むクランプ部を備えたバンドと、該バンドを介して前記管継手を建築物の躯体に支持するステーとからなり、前記管継手はその外周面に周方向に前記クランプ部の縦幅に一致する上下幅の環状溝を設けてなり、該環状溝内に前記クランプ部を巻き付けることとした。
【0011】
上記手段によれば、管継手の外周面に設けた環状溝にバンドのクランプ部が嵌まり込んだ状態で巻き付けられ、管継手の上下動を防止する。環状溝の上下幅はクランプ部の縦幅と一致するのでガタつきも生じない。したがって、管継手に挿入固定した立管の上下変位や座屈を防止することができる。また、予め管継手にバンドを取り付け、このバンドをステーに連結しておけば、あとは管継手に立管を挿入するだけで固定作業を終えることができる。
【0012】
クランプ部を巻き付ける環状溝は、管継手の外周面から突出するフランジをクランプ部の縦幅だけ離間して上下一対に設けて、該上下一対のフランジとその間の外周面で形成される凹部を環状溝としてクランプ部を巻き付けることができる。
【0013】
別の手段として、管継手の外周面をクランプ部の幅だけ環状に凹陥した部分を環状溝としてクランプ部を巻き付けることができる。
【0014】
ここで環状溝の深さはクランプ部の厚み以上であることが好ましい。クランプ部の耐荷重は、その厚みによる要素が大きく、より厚みのあるクランプ部とすることで耐荷重が増すところ、クランプ部の厚みよりも環状溝が浅いと、立管の荷重によってクランプ部が変形等して環状溝から外れ、管継手が脱落するおそれがあるからである。
【0015】
なお、立管を挿入して上下位置を固定する管継手の固定構造としては、立管を所定量挿入するだけ固定が完了するワンタッチ式のものが有利である。そこで本発明では、その内部に、前記立管それぞれの管端が当接する縮径段部と、前記立管それぞれを抜け止めするロックリングと、前記それぞれの立管の外周面に水密に接するシールリングとを上下一対に設け、二本の立管をそれぞれ上下から挿入する管継手を採用することとした。
【0016】
また、クランプ部は円弧状の二分割体を開閉可能に連結してなることが好ましい。環状の一体物に比べて、管継手の環状溝に装着し(巻き付け)やすいからである。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、立管をバンドで締め付ける従来工法とは違って、立管を管継手に挿入するだけで、立管の上下動を規制した状態で固定作業を完了させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の一実施形態に係る立管支持具の分解斜視図
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の好ましい実施の形態を添付した図面に従って説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る立管P支持具の分解斜視図、
図2は完成品の斜視図、
図3は完成品の側面図であって、10は管継手、21・22は二分割されたバンドの分割体、30はステーである。管継手10は立管Pを挿入して上下位置を固定するもので、内部構造の詳細は後述する。バンド分割体21・22は、管継手10を抱持するように巻き付ける円弧状のクランプ部21a・22aを有し、その遊端側には横手に突出する連結板部21b・22bを一体的に有している。ステー30は、建築物の躯体に固定されるベース部31と、バンド分割体21・22の連結板部21b・22bで挟み込まれ、ボルトB・ナットNによって結合する迫り出し部32とを直角に設けたL字アングルである。なお、この実施形態ではベース部31自体を垂直板状としているが、躯体側の構造に応じて、
図7に示すように、C形チャンネル310とすることもある。
【0020】
管継手10は、その外周面に上下一対のフランジ10a・10bを設け、その間の凹部を環状溝11としている。この環状溝11の上下幅(フランジ10a・10bの間隔)や深さ(フランジ10a・10bの高さ)は、
図4に示すように、バンド分割体21・22におけるクランプ部21a・22aに対応している。より具体的には、環状溝11の深さはクランプ部21a・22aの厚みよりも大きい。さらに、両者とも断面矩形状である。したがって、環状溝11に対してクランプ部21a・22aが完全に収容された状態で装着される(巻き付けられる)。また、両者とも断面矩形状であることによって、管継手10やクランプ部21a・22aに作用する上下方向の力はフランジ10a・10bの水平内面とクランプ部21a・22aの上下水平縁が当接することで吸収され、クランプ部21a・22aが環状溝11から滑り出すことがないことから、管継手10の脱落を確実に防止することができる。なお、クランプ部21a・22aはリブ等を設けることで、全体的な厚みは必ずしも均一ではない場合もあるが、本発明における厚みとは立管Pに対する耐荷重をもたらす厚みと理解すべきである。
【0021】
また、この実施形態では、一方のクランプ部21aにはT形のキー21c、他方のクランプ部22aにはキー穴22cが形成されており、キー21cをキー穴22cに係入することで両クランプ部21a・22aを開閉可能に連結するようにしている。したがって、連結状態でクランプ部21a・22aを開き、管継手10の環状溝11に巻掛けた後、連結板部21b・22bをステー30の迫り出し部32に締結すれば、の環状溝11にクランプ部21a・22aを巻き締めした状態で管継手10を躯体に固定することができる。
【0022】
ステー30の迫り出し部32については、ボルトBの挿通部33を迫り出し方向に沿った長孔としているので、バンドの取り付け位置を前後に調整できる。この結果、管継手10の位置も、立管Pと躯体の離間距離に合わせて微調整することができる。
【0023】
なお、この調整に付随して、迫り出し部32が管継手10に干渉する場合も想定できるため、この実施形態では、
図1から明らかなように、迫り出し部32の先端側は、環状溝11に対応する部分を残し、その上下角32a・32bは切除している。
【0024】
また、クランプ部21a・22aの連結構造は、上述したT形キー21cに限らず、
図7に示すように、ヒンジ40であってもよい。さらに、バンドを二分割ではなく、
図8に示すように一体物としてもよい。ただし、この場合は管継手を挟み込むためにクランプ部を開く力が必要となる。
【0025】
次に、管継手10の内部構造を詳述すると、本実施形態では二本の立管Pを上下から挿入固定するものとして、
図5に示すように、その内部中央に立管Pの管端が当接する縮径段部1を設け、その一次側と二次側それぞれに、ロックリング2と、シールリング3を上下対称に設けている。ロックリング2は金属製であって、管挿通部に複数の爪2aが設けられ、立管Pの挿通は許容するが、引抜き方向の力が働くと爪2aの先端が管表面に食い込んで、立管Pが引き抜かれることを阻止する。また、ロックリング2はシールリング3よりも奥端側に位置しているため、立管Pを挿入した場合、立管Pはシールリング3を通過した後にロックリング2を通過し、縮径段部1に至る。したがって、ロックリング2によって立管Pの管表面が傷ついたとしても、これよりも開口側でシールリング3が管表面に水密に外接することになるため、ロックリング2による傷から漏れる流体を確実にせき止めることができる。
【0026】
ところで、管継手への環状溝の形成にあっては、上下一対のフランジによらず、
図6に示すように、外周面を環状に凹陥110したものであってもよい。さらに、この環状の凹陥110は、鋳型によって形成できる他、鋳造後に切削加工等で切除(凹陥)することによっても形成することができる。
【符号の説明】
【0027】
P 立管
10 管継手
10a・10b フランジ
11 環状溝
1 縮径端部
2 ロックリング
3 シールリング
21・22 バンド(分割体)
21a・22a クランプ部
30 ステー