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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024124806
(43)【公開日】2024-09-13
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   B65H 7/02 20060101AFI20240906BHJP
   G03G 21/14 20060101ALI20240906BHJP
   B65H 9/14 20060101ALI20240906BHJP
   G03G 15/00 20060101ALI20240906BHJP
【FI】
B65H7/02
G03G21/14
B65H9/14
G03G15/00 450
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023032725
(22)【出願日】2023-03-03
(71)【出願人】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003133
【氏名又は名称】弁理士法人近島国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】スウィセン 賢
【テーマコード(参考)】
2H072
2H270
3F048
3F102
【Fターム(参考)】
2H072AA02
2H072AA13
2H072AA29
2H072AB07
2H072JA02
2H270LC12
2H270LC13
2H270LD03
2H270MC56
2H270MC57
2H270MC59
2H270MC60
2H270MD02
2H270MD10
2H270MD17
2H270PA26
2H270PA53
2H270ZC04
2H270ZC06
3F048AA01
3F048AB01
3F048BA05
3F048BB03
3F048CC03
3F048CC11
3F048CC17
3F048DA07
3F048DC12
3F048EB29
3F048EB30
3F048EB33
3F102AA01
3F102AB01
3F102BA02
3F102BB02
3F102CA03
3F102CB04
3F102EA03
3F102FA05
3F102FA06
3F102FA08
(57)【要約】
【課題】先端レジスト制御における補正精度を向上する。
【解決手段】シートの搬送経路において画像形成部の上流に位置し、シートに画像を形成するタイミングに合わせてシートを画像形成部に搬送するレジストレーションローラ対と、搬送経路においてレジストレーションローラ対と画像形成部との間に位置し、搬送されるシートの先端を検知する検知部と、駆動装置を制御する制御部と、を備える。制御部は、停止しているレジストレーションローラ対に上流ローラ対により搬送されたシートの先端が突き当てられた後にレジストレーションローラ対の回転を開始してシートを画像形成部のプロセス速度Vpsより遅い範囲内でV1まで加速して搬送し、V1で搬送されるシートの先端が検知部により検知された後、シートの搬送速度をV1からV1より速いV2まで加速してから画像形成部に搬送する精度優先モードを実行可能である。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートに画像を形成する画像形成部と、
シートの搬送経路において前記画像形成部の上流に位置し、シートに画像を形成するタイミングに合わせてシートを前記画像形成部に搬送するレジストレーションローラ対と、
前記搬送経路において前記レジストレーションローラ対の上流に位置し、シートを前記レジストレーションローラ対に搬送する上流ローラ対と、
前記搬送経路において前記レジストレーションローラ対と前記画像形成部との間に位置し、搬送されるシートの先端を検知する検知部と、
前記レジストレーションローラ対及び前記上流ローラ対を駆動する駆動装置と、
前記駆動装置を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、
停止している前記レジストレーションローラ対に前記上流ローラ対により搬送されたシートの先端が突き当てられた後に前記レジストレーションローラ対の回転を開始してシートを前記画像形成部のプロセス速度より遅い範囲内で第1速度まで加速して搬送し、前記第1速度で搬送されるシートの先端が前記検知部により検知された後、シートの搬送速度を前記第1速度から前記第1速度より速い第2速度まで加速してから前記画像形成部に搬送する精度優先モードを実行可能であり、
前記精度優先モードの実行時において、
前記レジストレーションローラ対の回転を開始してからシートの先端が前記検知部により検知されるまでの時間が第1時間である場合に、シートの先端が前記検知部により検知されてから搬送速度が前記第2速度に達するまでの時間を第2時間とし、
前記レジストレーションローラ対の回転を開始してからシートの先端が前記検知部により検知されるまでの時間が前記第1時間より長い第2時間である場合に、シートの先端が前記検知部により検知されてから搬送速度が前記第2速度に達するまでの時間を前記第2時間より短い第4時間とする、
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記第2速度は、前記プロセス速度である、
ことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記制御部は、
停止している前記レジストレーションローラ対に前記上流ローラ対により搬送されたシートの先端が突き当てられた後に前記レジストレーションローラ対の回転を開始してシートを前記プロセス速度より速い第3速度まで加速して搬送し、シートの先端が前記検知部により検知された後、搬送速度を前記第3速度から前記第3速度より遅い第4速度まで減速してから前記画像形成部に搬送する速度優先モードを実行可能である、
ことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記第4速度は、前記プロセス速度である、
ことを特徴とする請求項3に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記精度優先モードの実行時において、停止している前記レジストレーションローラ対に前記上流ローラ対により搬送されたシートの先端が突き当てられた後に前記レジストレーションローラ対の回転を開始してシートを前記第1速度より遅い範囲内で前記第1速度まで加速して搬送する、
ことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記制御部は、
停止している前記レジストレーションローラ対に前記上流ローラ対により搬送されたシートの先端が突き当てられた後に前記レジストレーションローラ対の回転を開始してシートを前記画像形成部のプロセス速度より速い第5速度まで加速してから前記第5速度及び前記プロセス速度より遅い第6速度まで減速して搬送し、前記第6速度で搬送されるシートの先端が前記検知部により検知された後、シートの搬送速度を前記第6速度から前記第6速度より速い第7速度まで加速してから前記画像形成部に搬送する中間モードを実行可能である、
ことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項7】
装置本体と、
前記装置本体に内蔵されて前記搬送経路において前記上流ローラ対の上流に位置し、前記上流ローラ対に給送されるシートを収容するシートカセットを備え、
前記中間モードは、前記シートカセットから供給されたシートに画像が形成される場合に実行される、
ことを特徴とする請求項6に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記搬送経路において前記上流ローラ対の上流に位置し、前記上流ローラ対に給送されるシートを載置する手差しトレイを備え、
前記精度優先モードは、前記手差しトレイから供給されたシートに画像が形成される場合に実行される、
ことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記レジストレーションローラ対のニップ線は、前記レジストレーションローラ対の軸線方向から視て、水平線との間に形成される小さい方の角度が45度以上であるように設けられている、
ことを特徴とする請求項8に記載の画像形成装置。
【請求項10】
前記画像形成部において第1面に画像を転写されたシートを、前記第1面の反対の第2面に画像を転写させるために反転搬送する反転部と、
前記反転部により反転されたシートが前記上流ローラ対に向けて再び搬送される両面搬送路と、を備え、
前記精度優先モードは、前記両面搬送路から供給されたシートに画像が形成される場合に実行される、
ことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項11】
シートに画像を形成する画像形成部と、
シートの搬送経路において前記画像形成部の上流に位置し、シートに画像を形成するタイミングに合わせてシートを前記画像形成部に搬送するレジストレーションローラ対と、
前記搬送経路において前記レジストレーションローラ対の上流に位置し、シートを前記レジストレーションローラ対に搬送する上流ローラ対と、
前記搬送経路において前記レジストレーションローラ対と前記画像形成部との間に位置し、搬送されるシートの先端を検知する検知部と、
前記レジストレーションローラ対及び前記上流ローラ対を駆動する駆動装置と、
前記駆動装置を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、
停止している前記レジストレーションローラ対に前記上流ローラ対により搬送されたシートの先端が突き当てられた後に前記レジストレーションローラ対の回転を開始してシートを前記画像形成部のプロセス速度より速い第8速度まで加速してから前記第8速度及び前記プロセス速度より遅い第9速度まで減速して搬送し、前記第9速度で搬送されるシートの先端が前記検知部により検知された後、シートの搬送速度を前記第9速度から前記第9速度より速い第10速度まで加速してから前記画像形成部に搬送する中間モードを実行可能であり、
前記中間モードの実行時において、
前記レジストレーションローラ対の回転を開始してからシートの先端が前記検知部により検知されるまでの時間が第5時間である場合に、シートの先端が前記検知部により検知されてから搬送速度が前記第10速度に達するまでの時間を第6時間とし、
前記レジストレーションローラ対の回転を開始してからシートの先端が前記検知部により検知されるまでの時間が前記第5時間より長い第7時間である場合に、シートの先端が前記検知部により検知されてから搬送速度が前記第10速度に達するまでの時間を前記第6時間より短い第8時間とする、
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項12】
装置本体と、
前記装置本体に内蔵されて前記搬送経路において前記上流ローラ対の上流に位置し、前記上流ローラ対に給送されるシートを収容するシートカセットを備え、
前記中間モードは、前記シートカセットから供給されたシートに画像が形成される場合に実行される、
ことを特徴とする請求項11に記載の画像形成装置。
【請求項13】
前記検知部は、前記搬送経路に光を発する発光部と、前記発光部から発せられた光を受光する受光部とを有し、シートの先端の通過を検知するフォトセンサである、
ことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートに画像を形成する画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ファクシミリ装置、複写機、MFP(Multifunction Peripheral)等の画像形成装置としては、画像形成のタイミングに合わせてレジストローラ(レジストレーションローラ)でシートを停止させるものが普及している。このような画像形成装置では、レジストローラによってシートの搬送を再開するタイミングを制御することにより、シートとその上に形成される画像との位置を合わせるようにしている。また、このような画像形成装置では、レジストローラより搬送方向下流、かつ、転写位置より搬送方向上流に配置されたシート位置検知センサ(レジスト後センサという)を有するものが知られている。この画像形成装置では、例えば、レジスト後センサを用いて、画像とシートとの相対的な位置合わせを高精度に行う制御(先端レジスト制御という)を実行することができる。
【0003】
このようなレジスト後センサを用いて先端レジスト制御を実行する画像形成装置としては、例えば、以下のものが開発されている。一例として、レジストローラの回転を再開してシートをプロセス速度で搬送し、レジスト後センサでの検知タイミングが基準より遅いか早いかを検知する。そして、検知結果に基づいてシートを加減速し、転写位置に到達する前にプロセス速度に戻す制御を行う画像形成装置が開発されている(特許文献1参照)。また、他の一例として、レジストローラにより搬送されるシートの搬送速度を、プロセス速度→第1速度(<プロセス速度)→ 第2速度(>第1速度)→プロセス速度と変速する画像形成装置が開発されている(特許文献2参照)。この画像形成装置では、レジスト後センサにより検出されたシート到達時刻に基づいて、第2速度で搬送する期間の長さを調整するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006-248644号公報
【特許文献2】特開2017-161727号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、近年では更なる高画質化の要請があり、先端レジスト制御における精度、即ち搬送方向の位置合わせはより高精度化が求められている。一方、画像形成装置の小型化の要請により、レジストローラから転写位置までの距離が短縮化されたり、手差しトレイや両面搬送経路からレジストローラへのシートの搬送経路が急な湾曲形状に設計される場合がある。従って、先端レジスト制御の高精度化が求められる一方で、ハードとしては高精度化を実現することが困難になっている。
【0006】
上述した特許文献1,2に記載の画像形成装置では、レジストローラで搬送されるときにシートをプロセス速度まで加速し、レジスト後センサによるシートの検知後にシートを減速させている。このため、レジストローラからレジスト後センサまでの距離が短くなると、その短い距離の中でプロセス速度まで加速してから減速することになり、距離に十分な余裕がある場合に比べて誤差が大きくなりやすく、シート位置の補正精度が低下する虞がある。
【0007】
換言すると、例えば、両面給送されたシートがレジスト後センサの検知結果に基づいて遅延と判断された場合に、レジストローラを増速する動作を行う。しかしながら、商業印刷機に比べて小型のオフィス機での両面搬送経路は、本体幅の制限による屈曲が大きく搬送抵抗が大きいため、搬送負荷トルクが大きくなってモータ脱調を発生する虞がある。また、レジストローラから転写位置までの短い経路内で搬送ばらつきによる数mmの遅延を賄うよう増速するには基準速度よりも大きく増速する必要があるが、上記の搬送負荷トルクが大きい給送経路の場合は増速に限度がある。従って、例えば縦搬送経路を用いた画像形成装置では、両面給送時や手差しトレイからの給送時などで、搬送負荷トルクが大きいことがある。このような経路でシートが給送される場合、レジストローラにより搬送された後のシート搬送速度の増速限界によって補正可能な先端レジスト量が小さくなり、先端レジスト制御における補正精度が低下する虞がある。
【0008】
本発明は、先端レジスト制御における補正精度を向上できる画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様は、シートに画像を形成する画像形成部と、シートの搬送経路において前記画像形成部の上流に位置し、シートに画像を形成するタイミングに合わせてシートを前記画像形成部に搬送するレジストレーションローラ対と、前記搬送経路において前記レジストレーションローラ対の上流に位置し、シートを前記レジストレーションローラ対に搬送する上流ローラ対と、前記搬送経路において前記レジストレーションローラ対と前記画像形成部との間に位置し、搬送されるシートの先端を検知する検知部と、前記レジストレーションローラ対及び前記上流ローラ対を駆動する駆動装置と、前記駆動装置を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、停止している前記レジストレーションローラ対に前記上流ローラ対により搬送されたシートの先端が突き当てられた後に前記レジストレーションローラ対の回転を開始してシートを前記画像形成部のプロセス速度より遅い範囲内で第1速度まで加速して搬送し、前記第1速度で搬送されるシートの先端が前記検知部により検知された後、シートの搬送速度を前記第1速度から前記第1速度より速い第2速度まで加速してから前記画像形成部に搬送する精度優先モードを実行可能であり、前記精度優先モードの実行時において、前記レジストレーションローラ対の回転を開始してからシートの先端が前記検知部により検知されるまでの時間が第1時間である場合に、シートの先端が前記検知部により検知されてから搬送速度が前記第2速度に達するまでの時間を第2時間とし、前記レジストレーションローラ対の回転を開始してからシートの先端が前記検知部により検知されるまでの時間が前記第1時間より長い第2時間である場合に、シートの先端が前記検知部により検知されてから搬送速度が前記第2速度に達するまでの時間を前記第2時間より短い第4時間とすることを特徴とする画像形成装置である。
【0010】
本発明の他の一態様は、シートに画像を形成する画像形成部と、シートの搬送経路において前記画像形成部の上流に位置し、シートに画像を形成するタイミングに合わせてシートを前記画像形成部に搬送するレジストレーションローラ対と、前記搬送経路において前記レジストレーションローラ対の上流に位置し、シートを前記レジストレーションローラ対に搬送する上流ローラ対と、前記搬送経路において前記レジストレーションローラ対と前記画像形成部との間に位置し、搬送されるシートの先端を検知する検知部と、前記レジストレーションローラ対及び前記上流ローラ対を駆動する駆動装置と、前記駆動装置を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、停止している前記レジストレーションローラ対に前記上流ローラ対により搬送されたシートの先端が突き当てられた後に前記レジストレーションローラ対の回転を開始してシートを前記画像形成部のプロセス速度より速い第8速度まで加速してから前記第8速度及び前記プロセス速度より遅い第9速度まで減速して搬送し、前記第9速度で搬送されるシートの先端が前記検知部により検知された後、シートの搬送速度を前記第9速度から前記第9速度より速い第10速度まで加速してから前記画像形成部に搬送する中間モードを実行可能であり、前記中間モードの実行時において、前記レジストレーションローラ対の回転を開始してからシートの先端が前記検知部により検知されるまでの時間が第5時間である場合に、シートの先端が前記検知部により検知されてから搬送速度が前記第10速度に達するまでの時間を第6時間とし、前記レジストレーションローラ対の回転を開始してからシートの先端が前記検知部により検知されるまでの時間が前記第5時間より長い第7時間である場合に、シートの先端が前記検知部により検知されてから搬送速度が前記第10速度に達するまでの時間を前記第6時間より短い第8時間とすることを特徴とする画像形成装置である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、先端レジスト制御における補正精度を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施の形態に係る画像形成装置を示す断面図である。
図2】実施の形態に係る画像形成装置の制御系を示すブロック図である。
図3】実施の形態に係る画像形成装置のレジローラ対から二次転写部までを示す断面図である。
図4】実施の形態に係る画像形成装置における先端レジスト制御の速度優先モードの動作を示すグラフである。
図5】実施の形態に係る画像形成装置における先端レジスト制御の精度優先モードの動作を示すグラフである。
図6】実施の形態に係る画像形成装置における先端レジスト制御の中間モードの動作を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本実施形態について図を用いて説明する。まず、本実施形態に係る画像形成装置1の概略構成を、図1を用いて説明する。画像形成装置1の構成部品の寸法、材質、その相対位置等は、特に特定的な記載がない限りは、本発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。また、本実施形態では画像形成装置1として、感光ドラムを複数備えたフルカラーの複写機を適用している。但し、これには限られず、感光ドラムを1つ備えたモノクロやモノカラーの複写機やプリンタにも適用することができる。
【0014】
[画像形成装置]
図1は、本実施形態に係る画像形成装置1の概略図である。画像形成装置1は、外部PCから入力された画像情報や原稿から読取った画像情報に基づいて、記録媒体として用いられるシートに画像を形成する。記録媒体として用いられるシートには、厚紙、普通紙、薄紙等の坪量が異なる紙、封筒、オーバーヘッドプロジェクタ用のプラスチックフィルム、並びに布等の材質及びサイズが異なる多様なシート材が含まれる。
【0015】
画像形成装置1は、シートSに画像を形成する画像形成部150を収容する装置本体100Aと、装置本体100Aの上方に配置され原稿から画像情報を読み取る画像読取装置300と、を備える。画像形成部150は、4つの画像形成ステーションPY,PM,PC,PK、中間転写ベルト155及び定着器160を含む中間転写方式の電子写真ユニットである。
【0016】
各画像形成ステーションPY~PKは、電子写真プロセスを実行して像担持体である感光ドラム151の表面にトナー像を形成する。即ち、画像形成ステーションPY~PKに対してトナー像の形成が要求されると、感光体からなる感光ドラム151が回転駆動され、帯電装置が感光ドラム151の表面を一様に帯電させる。装置本体100Aの下部に設けられた露光装置152は、画像情報に基づくレーザ光を感光ドラム151に照射してドラム表面を露光し、感光ドラム151に静電潜像を書き込む。現像装置153は、感光ドラム151に帯電したトナー粒子を供給し、ドラム表面の静電潜像をトナー像として現像する。
【0017】
画像形成ステーションPY~PKにおいて各感光ドラム151の表面に形成された各色のトナー像は、中間転写ベルト155及び二次転写ローラ159を介して最終的にシートSに転写される。まず、一次転写ローラ154により、各感光ドラム151に担持されたトナー像が中間転写ベルト155に一次転写される。感光ドラム151に残留したトナー等の付着物は、各画像形成ステーションPY~PKに設けられたクリーニング装置によって除去される。
【0018】
中間転写体である中間転写ベルト155は、二次転写内ローラ156、テンションローラ157、及び張架ローラ158に巻き回されており、図中R1方向に回転駆動される。中間転写ベルト155に担持されたトナー像は、二次転写内ローラ156に対向する二次転写ローラ159と中間転写ベルト155との間に形成される二次転写部13においてシートSに二次転写される。中間転写ベルト155に残留したトナー等の付着物は、ベルトクリーニング装置によって除去される。
【0019】
トナー像を転写されたシートSは、定着器160へ受け渡される。本実施形態の定着手段である定着器160は、シートSを搬送する回転体としての定着ローラと、定着ローラと共にシートSを挟持する加圧ローラと、シート上のトナー像を加熱する熱源(例えば、ハロゲンランプ)とを有する。定着器160は、シートSを搬送しながらトナー像に熱及び圧力を付与することによりトナーを溶融させ、その後トナーが固着することで、シートSに画像が定着する。
【0020】
このような画像形成プロセスに並行して、カセット給送部110又はマルチ給送部115から画像形成部150へ向けてシートSが1枚ずつ給送される。カセット給送部110は、上下2段の給送カセット111,111と、各給送カセット111からシートSを給送する給送ユニット112とを含む。給送カセット111は、装置本体100Aに内蔵されて搬送経路においてレジ前ローラ対11の上流に位置し、レジ前ローラ対11に給送されるシートSを収容するシートカセットの一例である。
【0021】
また、マルチ給送部115は、マルチトレイ116と、マルチトレイ116にセットされたシートSを給送する給送ユニット117とを含む。給送ユニット112,117は、シートSを送り出す給送ローラ112a,117aと、給送ローラ112a,117aによって搬送されるシートSを他のシートから分離する分離ローラ112b,117bとを含む。なお、給送ユニット112,117は、分離パッド方式やエア給送方式等の他の機構に置き換えてもよい。マルチトレイ116は、搬送経路においてレジ前ローラ対11の上流に位置し、レジ前ローラ対11に給送されるシートSを載置する手差しトレイの一例である。
【0022】
給送ユニット112,117によって給送されるシートSは、引抜ローラ対113,119を介して斜行補正部10に搬送される。本実施形態の斜行補正部10は、レジ前ローラ対11(レジストレーション前ローラ対)及びレジローラ対12によって構成される。詳しくは後述するように、斜行補正部10は、シートSの斜行を補正し、画像形成部150による画像形成プロセスの進捗に合わせたタイミングでシートSを二次転写部13に送り込む。
【0023】
レジローラ対12は、シートSの搬送経路において画像形成部150の上流に位置し、シートSに画像を形成するタイミングに合わせてシートSを画像形成部150に搬送するレジストレーションローラ対の一例である。レジ前ローラ対11は、搬送経路においてレジローラ対12の上流に位置し、シートSをレジローラ対12に搬送する上流ローラ対の一例である。尚、本実施形態では、画像形成装置1は縦パス搬送構成を有している。即ち、レジローラ対12のニップ線は、レジローラ対12の軸線方向から視て、水平線との間に形成される小さい方の角度が45度以上であるように設けられている。
【0024】
二次転写部13及び定着器160を通過することで画像を形成されたシートSは、定着後搬送部170により排出ローラ171に搬送される。排出ローラ171は、画像形成済みのシートSを排出し、装置本体100Aの上部に設けられた排出トレイ180に積載する。なお、本実施形態では、鉛直方向における装置本体100Aと画像読取装置300との間にシートSを積載するための排出空間(排出トレイ180の上方空間)が設けられたいわゆる胴内排出型の構成を採用している。
【0025】
排出ローラ171は、画像形成部150において第1面に画像を転写されたシートSを、第1面の反対の第2面に画像を転写させるために反転搬送する反転部の一例である。即ち、両面印刷の場合、排出ローラ171は第1面に画像形成されたシートSを搬送し、シートSの後端が分岐部172を超えたら搬送方向を反転させてシートSをスイッチバックさせる。これによってシートSは両面搬送部190に受け渡され、両面搬送部190の再搬送ローラ対193,194により両面パス192を介してレジローラ対12に向けて搬送される。両面パス192は、排出ローラ171により反転されたシートSが再搬送ローラ対194からレジローラ対12に向けて再び搬送される両面搬送路の一例である。尚、再搬送ローラ対194は、搬送経路においてレジローラ対12の上流に位置し、シートSをレジローラ対12に搬送する上流ローラ対の一例である。そして、レジローラ対12により再び斜行補正された後、二次転写部13及び定着器160を通過することで第2面に画像を形成されたシートSは、排出ローラ171によって排出されて排出トレイ180に積載される。
【0026】
以上の説明において、画像形成部150は画像形成手段の一例であり、直接転写方式の電子写真ユニットや、インクジェット方式又はオフセット印刷方式の画像形成ユニットを用いてもよい。
【0027】
[制御系]
次に、画像形成装置1が有する機能構成を制御する制御部20について、図2を用いて説明する。図2は、画像形成装置1の制御部20を説明するためのブロック図である。制御部200は、CPU201(Central Processing Unit)、メモリ202、操作部203、画像形成制御部205、シート搬送制御部206、センサ制御部207などの各機能部を有する。
【0028】
CPU201は、所定の制御プログラムなどを実行することにより画像形成装置1が行う各種処理を実現する。メモリ202は、例えばRAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)などであり、各種プログラムおよび各種データを所定の記憶領域に記憶する。操作部203は、ユーザが印刷に使用するシートSに関する各種情報(サイズ情報、坪量情報、表面性の情報等)、印刷実行あるいはその中断の指示などユーザが行う各種操作を受信する。
【0029】
画像形成制御部205は、露光装置152を含む画像形成部150に対して指示を送信し、画像形成を制御する。シート搬送制御部206は、給送モータ101、レジストレーションモータ102、両面モータ103、引抜モータ104などへ指示を送信し、シートSの搬送を制御する。センサ制御部207は、収納庫サイズ検知センサ31、レジストレーションセンサ32、レジ後センサ33などの検知開始、あるいはその停止を制御するとともに、これら各センサの検知結果を受信する。なお、例えばネットワークを介して接続されたコンピュータ(例えば、図2に示すコンピュータ204)を介して印刷に使用するシートSに関する各種情報を受信可能に構成することもできる。
【0030】
給送モータ101はレジ前ローラ対11を回転し、レジストレーションモータ102はレジローラ対12を回転し、両面モータ103は再搬送ローラ対193、194を回転し、引抜モータ104は引抜ローラ対119を回転する。即ち、給送モータ101、レジストレーションモータ102、両面モータ103は、レジローラ対12、レジ前ローラ対11、再搬送ローラ対194を駆動する駆動装置の一例であり、制御部20により制御される。
【0031】
[シート搬送制御]
次に、レジローラ対12から二次転写部13までの基本的なシート搬送制御について、図3を用いて説明する。図3は、画像形成装置1のレジローラ対12から二次転写部13にかけての構成の正面断面図である。
【0032】
まず、部品の配置構成について説明する。二次転写内ローラ156の上流には、中間転写ベルト155が張架された二次転写前ローラ14が設けられている(図1には不図示)。レジローラ対12の下流、及び二次転写部13の上流に、レジ後センサ33(レジストレーション後センサ)が配置される。レジ後センサ33は、検知ポイントP1をシートSの先端が通過したことを検知する。制御部20は、レジローラ対12の駆動を再開したタイミング(以下、レジONと称す)とレジ後センサ33を通過したタイミングとを検知して、レジローラ対12からレジ後センサ33までのシート搬送に要した時間を検出する。
【0033】
レジ後センサ33は、搬送経路においてレジローラ対12と画像形成部150との間に位置し、搬送されるシートSの先端を検知する検知部の一例である。本実施形態では、レジ後センサ33は、搬送経路に光を発する発光部33aと、発光部33aから発せられた光を受光する受光部33bとを有し、シートSの先端の通過を検知するフォトセンサであるようにしている。尚、発光部と受光部とが搬送経路を介して対向して配置されたフォトセンサを適用してもよい。尚、検知部としては、シートSの先端のエッジを直接検知するフォトセンサや機械的なスイッチなど、適宜なものを適用することができる。あるいは、シートSの先端のエッジを直接検知しなくても、例えばシート幅センサを利用して、検知結果からシートSの先端位置を算出するようにしてもよい。
【0034】
次に、シート搬送制御について説明する。シートSは、レジONとともに、レジON後の速度Vonで搬送される。シートSは、レジ後センサ33を通過した後、二次転写前ローラ14に近接するより前に画像形成のプロセス速度Vpsへと変速する。中間転写ベルト155に接触した状態でシートSが変速した場合、中間転写ベルト155上の転写画像を剪断して乱す虞があるため、二次転写前ローラ14に近接する前に変速を完了する。
【0035】
[速度優先モード]
次に、画像先端の余白を高精度化するための先端レジスト制御の速度優先モードについて、図4を用いて説明する。図4は、先端レジスト制御に係るレジローラ対12のシート搬送制御の速度優先モードを示すグラフである。図4は、横軸を時間、縦軸をシート搬送速度とし、レジONの時刻を横軸=0とする。
【0036】
制御部20は、二次転写部13に画像の先端が到達するタイミングt2trに、シートSが間に合うように逆算してレジONする。シートSはレジON後、速度Von(=V1)で搬送され、レジ後センサ33を通過する。このとき、レジ後センサ33を通過する時刻であるtsnにはばらつきがある場合がある。レジ後センサ33の通過時刻のばらつきの原因は、主にシートSのレジローラ対12での停止位置ばらつきと、レジON後の搬送速度ばらつきとによる。また、シートSの厚みや坪量、表面性、レジローラ対12の連続通紙による摩耗による径・摩擦係数の変化、レジローラ対12の圧力、レジローラ対12での突き当てループ量によってもばらつきが発生する。更には、給送段に依存するレジローラ対12でのシート停止姿勢、停止時間、モータの駆動特性などでもばらつきが発生する。これらによりもたらされるシート搬送タイミングのばらつきを搬送距離に換算すると±2mm程度となり、これを最悪値と想定する。
【0037】
先端レジスト制御では、1枚ごとのレジ後センサ33通過時刻の偏差△tを検知し、シート搬送速度をレジ後センサ33の通過時のシート搬送速度V1からレジ後センサ33の通過後シート搬送速度V2に変速するタイミングを計算し、変速を実行する。これにより、二次転写部13にシートSが到達するタイミングを安定化し、画像のシート先端余白長さを安定化することができる。
【0038】
図4に示す先端レジスト制御は、V1>V2の関係とする速度優先モードである。V1はレジON後の速度Vonと等しく、V2は画像形成のプロセス速度Vpsと等しい。V1をプロセス速度Vpsよりも速い速度とすることで、レジローラ対12から二次転写部13までのシート搬送時間t2trを短縮し印刷動作の生産性を高められる。
【0039】
即ち、速度優先モードでは、停止しているレジローラ対12に、例えば再搬送ローラ対194により搬送されたシートSの先端が突き当てられる。その後、レジローラ対12の回転を開始してシートSをプロセス速度Vpsより速いV1(第3速度)まで加速して搬送する。そして、シートSの先端がレジ後センサ33により検知された後、搬送速度をV1からV1より遅いV2(第4速度)まで減速してから画像形成部150に搬送する。
【0040】
V1>V2のとき、レジ後センサ33の通過時間が所定値であるtsnよりも遅かった場合にはV1からV2に変速開始する時間(tch-tsn)を所定値よりも長くして、V2より高速なV1で搬送される距離を長くして遅延を挽回する。ここで、制御可能な最遅延の場合、tsn1にてレジ後センサ33でシートSを検出するものとする(図4中、一点鎖線で示す)。この場合でも、前述の通り二次転写前ローラ14に近接する前にV1からV2に変速完了する必要がある。
【0041】
また、レジ後センサ33の通過時刻が所定値よりも速かった場合にはV1からV2に変速開始する時間を所定値よりも短くする。ここで、制御可能な最早着の場合、tsn2にてレジ後センサ33でシートSを検出するものとする(図4中、二点鎖線で示す)。制御部20は、レジ後センサ33を通過した信号を受け取ってからV1からV2に変速開始する時間を計算しレジストレーションモータ102に変速指令を出すという一連の動作に約10msの時間を要する。このため、最早着の場合であっても、レジ後センサ33通過から変速開始までに時間Texを保証しなければならない。
【0042】
図4の斜線部で示した領域Arは、先端レジスト制御によって補正可能なシート搬送距離(以降、補正しろと称す)を示す。先端レジスト精度に直結する補正しろは、V1とV2の速度差△Vと、V1からV2に変速開始するタイミング差△Tの積で示される。
【0043】
ここで、本実施形態では、縦パス搬送構成が適用されており、レジローラ対12からレジ後センサ33,さらに二次転写前ローラ14がいずれも近接して配置されている(図3参照)。このような縦パス搬送構成においてV1からV2に変速開始するタイミング差△Tを大きくすることは難しいため、V1とV2の速度差△Vを大きくすることで補正しろDを確保するようにする。本実施形の構成では、具体的にV1をV2の約1.4倍の速度とする。
【0044】
[搬送トルクと先端レジスト制御との両立]
次に、本実施形態の縦パス系搬送断面を参照し、先端レジスト制御を行う上での課題を説明する。図1に示すように、画像形成装置1は、マルチ給送部115や両面搬送部190からレジローラ対12に対してシートSが給送された場合、給送カセット111から給送した場合と比較して搬送負荷トルクが大きくなる縦パス機に特徴的な課題を有する。
【0045】
搬送負荷トルクが増加する2つの理由を説明する。まず、縦パス機の特徴としてマルチ給送部115や両面パス192からレジローラ対12への搬送パスの屈曲が大きいためシートSが各パスの搬送ガイドと接触する接触圧が高く、搬送抵抗が増加し搬送負荷トルクが増加する。次に、縦パス機ではコストダウンの観点から1つのモータで2つ以上のローラを駆動する構成が適用される。本実施形態では、引抜ローラ対119とレジ前ローラ対11とが引抜モータ104で駆動され、再搬送ローラ対193、194が両面モータ103で駆動されるため、二本分のローラの加減速トルクを1つのモータで賄う必要があり搬送負荷トルクが高くなる。
【0046】
レジスト後シート搬送制御における搬送負荷トルクは、レジローラ対12でシートSを停止している状態からシート搬送を再開しレジON後の速度Vonへの過程で最大となり、引抜モータ104や両面モータ103の脱調リスクが最大となる。従って、先端レジスト制御を用いない旧来のレジスト後シート搬送制御では、マルチ給送時や両面搬送時のレジ後の速度Vonを抑制していた。これを先端レジスト制御にそのまま適用すると、レジON後の速度Vonを抑制することはレジ後センサ33通過時のシート搬送速度V1を抑制することになり、V1とV2の速度差△Vが小さくなってしまい補正しろ(領域Ar)が小さくなるという課題を生じる。
【0047】
[精度優先モード]
そこで、これを解決するために、上記搬送トルクが課題となる系において先端レジスト制御を成立させる本実施形態の構成について、図5を用いて説明する。図5は、先端レジスト制御に係るレジローラ対12のシート搬送制御の精度優先モードを示すグラフである。図4と同等に、横軸を時間、縦軸をシート搬送速度とし、レジONの時刻を横軸=0とする。
【0048】
図5に示すように、精度優先モードでのレジローラ対12のシート搬送制御は、V1<V2であることを特徴とする。そのようにして得られたV1とV2の速度差△Vによって補正しろDを確保する。
【0049】
例えば、レジ後センサ33の通過時刻が所定値であるtsnよりも遅く、tsn1にてレジ後センサ33でシートSを検出した場合について想定する(図5中、一点鎖線で示す)。この場合、V1からV2に変速開始する時間Tchを所定値よりも短くして、高速なV2で搬送される距離を長くして遅延を挽回する。逆に、例えば、レジ後センサ33の通過時刻が所定値であるtsnよりも早く、tsn2にてレジ後センサ33でシートSを検出した場合について想定する(図5中、二点鎖線で示す)。この場合、V1からV2に変速開始する時間Tchを所定値よりも長くして、高速なV2で搬送される距離を短くする。
【0050】
即ち、精度優先モードでは、停止しているレジローラ対12に、例えばレジ前ローラ対11により搬送されたシートSの先端が突き当てられる。その後、レジローラ対12の回転を開始してシートSをプロセス速度Vpsより遅い範囲内でV1(第1速度)まで加速して搬送する。そして、V1で搬送されるシートSの先端がレジ後センサ33により検知された後、シートSの搬送速度をV1からV1より速いV2(第2速度)まで加速してから画像形成部150に搬送する。また、精度優先モードの実行時において、レジローラ対12の回転を開始してからシートSの先端がレジ後センサ33により検知されるまでの時間を、Tsn(第1時間)とする。この場合に、シートSの先端がレジ後センサ33により検知されてから搬送速度がV2に達するまでの時間を、Tch(第2時間)とする。このとき、レジローラ対12の回転を開始してからシートSの先端がレジ後センサ33により検知されるまでの時間が、Tsnより長いTsn1(第3時間)であるとする。この場合に、シートSの先端がレジ後センサ33により検知されてから搬送速度がV2に達するまでの時間を、Tchより短いTex(第4時間)とする。
【0051】
これにより、速度優先モードのようにプロセス速度Vpsより大きく増速する必要がなくなるので、搬送負荷トルクが大きい場合でも、モータ脱調を起こすことなく増速できる。よって、先端レジスト量を大きく確保できるようになり、先端レジスト制御における補正精度を向上することができる。
【0052】
本実施形態では、精度優先モードの実行時において、シートSの速度はV1になるまでV1を超えないようにしている。即ち、停止しているレジローラ対12に例えばレジ前ローラ対11により搬送されたシートSの先端が突き当てられた後にレジローラ対12の回転を開始して、シートSをV1より遅い範囲内でV1まで加速して搬送する。これにより、シートSの増速を極力抑えることができるので、先端レジスト制御における補正精度をより向上することができる。
【0053】
[レジスト後シート搬送制御の切替]
本実施形態の画像形成装置1は、上記で説明した速度優先モード(V1>V2)と精度優先モード(V1<V2)の2種のレジスト後シート搬送制御を、選択された給送部によって選択して切り替える先端レジスト制御を実行可能である。
【0054】
制御部20は、画像形成指示を受け給送部が確定次第、給送部の種別によって先端レジスト制御に関わるV1とV2を確定する。例えば、搬送負荷トルクが小さく生産性を優先したい給送カセット111からの給送が指示された場合、速度優先モードとなるV1を選択する。即ち、速度優先モードは、給送カセット111に収容されたシートSに画像が形成される場合に実行される。V1、V2の値は、シート種に応じて、予めメモリ202に格納された速度値を参照する。V2はプロセス速度Vpsに近似した数値が参照される。
【0055】
また、制御部20は、搬送負荷トルクが大きいマルチ給送部115や両面搬送部190からの給送が指示された場合、精度優先モードとなるV1を選択する。即ち、精度優先モードは、マルチトレイ116から供給されたシートSに画像が形成される場合、及び両面パス192から供給されたシートSに画像が形成される場合に実行される。レジ後センサ33の通過時間の基準値であるTsnと、V1からV2への変速開始する時間Tchとは、シート種に応じて、予めメモリ202に格納された数値を参照する。
【0056】
上述したように、本実施形態の画像形成装置1によれば、精度優先モードを実行できるので、速度優先モードのようにプロセス速度Vpsより大きく増速する必要がなくなるので、搬送負荷トルクが大きい場合でも、モータ脱調を起こすことなく増速できる。よって、先端レジスト量を大きく確保できるようになり、先端レジスト制御における補正精度を向上することができる。
【0057】
また、本実施形態の画像形成装置1によれば、速度優先モードと精度優先モードとを切り替えて実行できるので、生産性を保ちつつ補正可能な先端レジスト量を大きくすることができる。
【0058】
また、本実施形態の画像形成装置1によれば、精度優先モードの実行時において、シートSの速度はV1になるまでV1を超えないようにしている。このため、シートSの増速を極力抑えることができるので、先端レジスト制御における補正精度をより向上することができる。
【0059】
尚、上述した実施形態では、速度優先モードと精度優先モードとの2つのモードを有する場合について説明したが、これには限られず、例えば精度優先モードのみを有するようにしてもよい。
【0060】
また、速度優先モードと精度優先モードとを組み合わせた中間モードを適用してもよい。以下、中間モードの一例について、図6を用いて説明する。図6は、先端レジスト制御に係るレジローラ対12のシート搬送制御の中間モードを示すグラフである。図4と同等に、横軸を時間、縦軸をシート搬送速度とし、レジONの時刻を横軸=0とする。
【0061】
図6に示す中間モードは、レジON後、速度Vonからレジ後センサ33の通過前にシート搬送速度V1へと変化し、Vonは搬送負荷トルクをモータが許容する上限速度であって、かつV1<V2であることを特徴とする。即ち、停止しているレジローラ対12にレジ前ローラ対11により搬送されたシートSの先端が突き当てられた後に、レジローラ対12の回転を開始する。その後、シートSをプロセス速度Vpsより速いVon(第5速度、第8速度)まで加速してから、Von及びプロセス速度Vpsより遅いV1(第6速度、第9速度)まで減速して搬送する。そして、V1で搬送されるシートSの先端がレジ後センサ33により検知された後、シートSの搬送速度をV1からV1より速いV2(第7速度、第10速度)まで加速してから画像形成部150に搬送する。
【0062】
この中間モードの実行時において、レジローラ対12の回転を開始してからシートSの先端がレジ後センサ33により検知されるまでの時間をTsn(第5時間)であるとする。この場合に、シートSの先端がレジ後センサ33により検知されてから搬送速度がV2に達するまでの時間をTch(第6時間)とする。このとき、レジローラ対12の回転を開始してからシートSの先端がレジ後センサ33により検知されるまでの時間が、Tsnより長いTsn1(第7時間)であるとする。この場合に、シートSの先端がレジ後センサ33により検知されてから搬送速度がV2に達するまでの時間を、Tchより短いTex(第8時間)とする。
【0063】
図6に示す中間モードによって、図5に示すVon=V1<V2となる速度を用いる場合に比べ、レジローラ対12から二次転写部13までに要する時間が短いため生産性を増加可能である。これにより、例えば、精度優先モードでは生産性が足りない場合でも、生産性を確保することができるようになる。このとき、例えば、レジローラ対12の再回転でプロセス速度Vpsにまで上昇することも考えられるが、それでは生産性の確保は不十分であるため、本実施形態ではプロセス速度Vpsを超える速度まで増速するようにしている。中間モードによれば、速度優先モードよりも精度よく、かつ、精度優先モードよりも生産性を向上することができる。尚、レジONからレジ後センサ33の通過までにVonからV1へと変速する必要があるため、Vonを維持する整定時間Tstが短くなる。搬送負荷トルクについて、Vonへの加速完了時点にモータ脱調リスクが最大となることから、加速完了時点からすぐにモータに変速指令を与えるとモータの脱調リスクがより高まってしまうため、十分な整定時間Tstを取ることが望ましい。
【0064】
例えば、上述した実施形態のように速度優先モードと精度優先モードとの2つのモードを有する画像形成装置1に中間モードを加えて3つのモードを選択して実行できるようにしてもよい。この場合、例えば、給送カセット111から給送されるシートSにおいて、全画面印刷など、生産性を多少低減しても特に高い精度が必要なときに実行することが好ましい。あるいは、速度優先モードと精度優先モードとの2つのモードを有さずに、中間モードのみを有するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0065】
1…画像形成装置、11…レジ前ローラ対(上流ローラ対)、12…レジローラ対(レジストレーションローラ対)、33…レジ後センサ(検知部)、33a…発光部、33b…受光部、100A…装置本体、111…給送カセット(シートカセット)、116…マルチトレイ(手差しトレイ)、150…画像形成部、171…排出ローラ(反転部)、192…両面パス(両面搬送路)、194…再搬送ローラ対(上流ローラ対)、V1…(第1速度、第3速度、第6速度、第9速度)、V2…(第2速度、第4速度、第7速度、第10速度)、Vps…プロセス速度、Von…(第5速度、第8速度)
図1
図2
図3
図4
図5
図6