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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024124813
(43)【公開日】2024-09-13
(54)【発明の名称】脱出システム、及び、脱出方法
(51)【国際特許分類】
   A62B 3/00 20060101AFI20240906BHJP
   E02D 23/04 20060101ALI20240906BHJP
   E02D 23/06 20060101ALI20240906BHJP
   A61G 10/02 20060101ALI20240906BHJP
   A61G 10/00 20060101ALI20240906BHJP
【FI】
A62B3/00 Z
E02D23/04 Z
E02D23/06 Z
A61G10/02 C
A61G10/00 C
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023032740
(22)【出願日】2023-03-03
(71)【出願人】
【識別番号】000207780
【氏名又は名称】大豊建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001793
【氏名又は名称】弁理士法人パテントボックス
(72)【発明者】
【氏名】内田 哲男
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 元治
(72)【発明者】
【氏名】大久保 健治
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 春生
【テーマコード(参考)】
2E184
4C341
【Fターム(参考)】
2E184AA10
2E184BB06
4C341KL04
4C341KL07
(57)【要約】
【課題】オペレータが同乗することなくカプセル内を換気できる脱出システムを提供する。
【解決手段】ニューマチックケーソン10で使用される作業者の脱出システムSであって、作業室14から延びるマテリアルシャフト21と、マテリアルシャフト21の途中に設置されたマテリアルロック22と、加減圧可能に形成されたホスピタルロック30と、作業室14内で作業者を収容するカプセル40であって、圧気状態のままでマテリアルシャフト21及びマテリアルロック22を通過して外部に搬出可能に形成され、ホスピタルロック30内に収納可能に形成されるカプセル40と、カプセル40内の空気を外部から換気するための換気設備50と、を備えている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ニューマチックケーソンで使用される作業者の脱出システムであって、
作業室から延びるシャフトと、
前記シャフトに設置されたロックと、
加減圧可能に形成されたホスピタルロックと、
前記作業室内で作業者を収容するカプセルであって、圧気状態のままで前記シャフト及び前記ロックを通過して外部に搬出可能に形成され、前記ホスピタルロック内に収納可能に形成されるカプセルと、
前記カプセル内の空気を外部から換気するための換気設備と、
を備える、脱出システム。
【請求項2】
前記換気設備は、前記シャフトの上部に配置される換気用ゴンドラと、前記換気用ゴンドラ上に搭載される空気ボンベと、を有する、請求項1に記載された、脱出システム。
【請求項3】
前記ロックは、前記作業室に隣接して直上に配置される、請求項1又は請求項2に記載された、脱出システム。
【請求項4】
前記カプセルは、一人のみを収容可能な大きさに形成されている、請求項1又は請求項2に記載された、脱出システム。
【請求項5】
ニューマチックケーソンの作業室内で作業者をカプセル内に収容して前記カプセルを閉じる工程と、
前記カプセルをシャフト及びロックを通じて外部に搬出する工程と、
前記カプセル内の空気を換気設備を使用して外部から換気する工程と、
前記カプセルをホスピタルロック内に移送する工程と、
前記ホスピタルロック内を加圧する工程と、
前記ホスピタルロック内で前記カプセルを開く工程と、
を備える、作業者の脱出方法。
【請求項6】
前記換気する工程は、前記シャフトの上部に配置された換気用ゴンドラに前記カプセルを載せる工程と、前記換気用ゴンドラ上に搭載された空気ボンベを使用して換気する工程と、を有する、請求項5に記載された、作業者の脱出方法。
【請求項7】
前記換気する工程は、前記カプセル内の空気を第1減圧点まで減圧する工程を有する、請求項6に記載された、作業者の脱出方法。
【請求項8】
前記移送する工程は、前記カプセルを前記換気用ゴンドラごと移送する工程を有する、請求項6又は請求項7に記載された、作業者の脱出方法。
【請求項9】
前記カプセルを前記換気用ゴンドラごと移送する工程において、移送中も前記カプセル内を換気する、請求項8に記載された、作業者の脱出方法。
【請求項10】
ニューマチックケーソンの作業室内で作業者をカプセル内に収容して前記カプセルを閉じる工程と、
前記カプセルをシャフト及びロックを通じて外部に搬出する工程と、
前記カプセル内の空気を換気設備を使用して外部から減圧する工程と、を備え、
前記減圧する工程は、前記シャフトの上部に配置された換気用ゴンドラに前記カプセルを載せる工程と、前記換気用ゴンドラ上に搭載された空気ボンベを使用して前記カプセル内を減圧する工程と、を有する、作業者の脱出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ニューマチックケーソン工法において、緊急に函外に脱出する必要が生じた際の脱出システム、及び、脱出方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、ニューマチックケーソン工法において、通常、掘削作業は無人化されているが、メンテナンスや組立・解体作業等で作業員が高気圧下の函内に入って作業を行う場合がある。また、岩盤を掘削する場合にも、発破作業や削孔、装薬作業等で函内に入る場合がある。
【0003】
このような函内での作業中に、作業員が負傷したり、災害が発生したりして函外に緊急脱出する必要がある場合、従来は、マンロックに一旦移動してから減圧を行い、その後に函外に出て必要な措置を行っていた。このように、減圧を行うためには、マンロックに移動する必要があるが、負傷した場合には移動困難な場合があった。
【0004】
作業員を函内から搬送するための装置として、例えば、特許文献1に記載された技術が知られている。この特許文献1では、マテリアルシャフト内を昇降できるカプセル(救護チャンバー)と、プーリーシステムと、ストレッチャーと、を備える、ニューマチックケーソン工法用の救助施設が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2020-188921号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1を含む従来のカプセルは一人当たりの内空積が小さいため、換気しないと短時間で酸素が不足することになる。つまり、作業室でカプセルを閉じて地上へ引き上げ、ホスピタルロック内に収容し、ホスピタルロック内を加圧し、カプセルを開放するまでに所定の時間を要するため、カプセル内の空気だけでは正常に呼吸を続けることができない。
【0007】
一方で、換気するためには、送気と排気を調整しながら同時に実施してカプセル内の気圧を一定に保持しなければならない。通常、このようなオペレーションを実施するために、対象者以外のオペレータ(介助者)がカプセルに同乗する必要がある。
【0008】
しかしながら、オペレータのカプセルへの同乗には以下のような問題がある。
(1)対象者とオペレータの2人をカプセルに収容するため、カプセル自体が大きくなる。また、カプセル内に呼吸用ガスのボンベ等を設備している必要があり、これもカプセルを大きくする要因となる。カプセルの大型化は、マテリアルロックや減圧するためのロックの大型化につながり、コストが上昇する。外部から接続する場合、最終的な減圧開始までの時間が長くなることで、対象者及びオペレータの高気圧リスクを上げることにもなる。
(2)緊急脱出装置は、あくまでも「緊急用」であるため、狭いカプセル内への収容やクレーンでの移動など身体的精神的ストレスが大きくなる。オペレータが同乗する方式ではオペレータも同様の環境下に置かれることになる。
【0009】
そこで、本発明は、オペレータが同乗することなくカプセル内を換気できる、脱出システム、及び、脱出方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するために、本発明の脱出システムは、ニューマチックケーソンで使用される作業者の脱出システムであって、作業室から延びるシャフトと、前記シャフトに設置されたロックと、加減圧可能に形成されたホスピタルロックと、前記作業室内で作業者を収容するカプセルであって、圧気状態のままで前記シャフト及び前記ロックを通過して外部に搬出可能に形成され、前記ホスピタルロック内に収納可能に形成されるカプセルと、前記カプセル内の空気を外部から換気するための換気設備と、を備えている。
【0011】
また、本発明の脱出方法は、ニューマチックケーソンの作業室内で作業者をカプセル内に収容して前記カプセルを閉じる工程と、前記カプセルをシャフト及びロックを通じて外部に搬出する工程と、前記カプセル内の空気を換気設備を使用して外部から換気する工程と、前記カプセルをホスピタルロック内に移送する工程と、前記ホスピタルロック内を加圧する工程と、前記ホスピタルロック内で前記カプセルを開く工程と、を備えている。
【0012】
ここにおいて、明細書中で説明するシステムについて「脱出システム」として説明するが、救護も含むため、「脱出・救護システム」と表現することもできる。同様に、明細書中で説明する方法について「脱出方法」として説明するが、救護も含むため、「脱出・救護方法」と表現することもできる。
【発明の効果】
【0013】
このように、本発明の脱出システムは、シャフトと、ロックと、ホスピタルロックと、作業室内で作業者を収容するカプセルであって、圧気状態のままでシャフト及びロックを通過して外部に搬出可能に形成され、ホスピタルロック内に収納可能に形成されるカプセルと、カプセル内の空気を外部から換気するための換気設備と、を備えている。本発明の脱出システムは、このような構成を備えるため、換気設備を使用してカプセル内の空気を外部から換気できるため、オペレータが同乗することなくカプセル内を換気できるようになる。加えて、ホスピタルロックにカプセルのままで収納できるため、対象者を迅速に救護することができる。
【0014】
また、本発明の脱出方法は、作業室内で作業者をカプセル内に収容してカプセルを閉じる工程と、カプセルをシャフト及びロックを通じて外部に搬出する工程と、カプセル内の空気を換気設備を使用して外部から換気する工程と、カプセルをホスピタルロック内に移送する工程と、ホスピタルロック内を加圧する工程と、ホスピタルロック内でカプセルを開く工程と、を備えている。本発明の脱出方法は、このような工程を備えるため、換気設備を使用してカプセル内の空気を外部から換気できるため、オペレータが同乗しなくてもカプセル内を換気できるようになる。加えて、ホスピタルロックにカプセルのままで収納できるため、対象者を迅速に救護することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施例の脱出システムの全体構成を説明する断面図である。
図2】ニューマチックケーソンの構成を説明する断面図である。
図3】ホスピタルロックの構成を説明する断面図である。
図4】換気設備の側面図である。
図5】換気設備の平面図である。
図6】実施例の脱出方法のフローチャートである。
図7】実施例の脱出システムの作用図である。ゴンドラ上での換気工程である。
図8】実施例の脱出システムの作用図である。ホスピタルロック内に移送する工程である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。ただし、以下の実施例に記載されている構成要素は例示であり、本発明の技術範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【実施例0017】
(全体構成)
本実施例の脱出システムSは、図1に示すように、ニューマチックケーソン10で使用される作業者の脱出システムSであり、主として、シャフトとしての脱出用シャフト21と、ロックとしての脱出用ロック22と、ホスピタルロック30と、カプセル40と、換気設備50と、から構成されている。さらに、図示しないが、ニューマチックケーソン10には、カプセル40を昇降移動させるための楊重設備(クレーン)が設備されている。以下、各要素の具体的な構成について説明する。
【0018】
(ニューマチックケーソンの構成)
ニューマチックケーソン10は、図2に示すように、主として、側壁部11と、作業室天井スラブ12と、刃口部13と、から構成されており、設備として、外気(大気圧)と連通・遮断可能なシャフトとしての脱出用シャフト21と、内部を加減圧可能なロック(気閘室)としての脱出用ロック22と、を備えている。この他、ニューマチックケーソン10は、マテリアルロック(不図示)やマンロック(不図示)も備えている。
【0019】
脱出用シャフト21の下部にはアンカーハッチ21aが取り付けられている。脱出用ロック22には、加圧/減圧ができるように、圧気設備(送気設備、排気設備)が接続されている。そして、本実施例の脱出用ロック22は、脱出用シャフト21の最下部に、すなわち作業室天井スラブ12の直上に、作業室(14)に隣接して配置されている。なお、ここでは、図面を用いた説明の便宜のために、脱出用ロック22に隣接してすぐ上に換気設備50を設置する場合(浅い場合)について説明するが、深い場合には脱出用ロック22と換気設備50の間にさらに脱出用シャフト21が配置されることになる。
【0020】
作業室天井スラブ12と刃口部13と地山Gによって囲まれて作業室14が形成される。作業室14は高気圧下に保持されて、周囲から水の浸入を防ぐようになっている。そして、作業室天井スラブ12の地山に向いた下面には、レール(不図示)が取り付けられており、地山Gを掘削する掘削機(不図示)がレールに沿って走行できるようになっている。掘削機は、操作室からモニタを見ながら遠隔操作できるようになっている。
【0021】
この他、図示を省略するが、ニューマチックケーソン10には作業室14やマテリアルロック(不図示)やマンロック(不図示)内に圧縮空気を送り込んだり排気したりするための圧気設備(送気設備、排気設備)が配置されている。
【0022】
(ホスピタルロックの構成)
さらに、地上には、中央監視室(不図示)とホスピタルロック(再圧室)30が設置されている。ホスピタルロック30は、図3(a)、(b)に示すように、地上に配置されている(図1参照)。ホスピタルロック30の形状・大きさは限定されるものではなく、円筒形のものであってもよいし、箱形状(直方形状、小判型、異型)のものであってもよい。
【0023】
ホスピタルロック30の内部は、主室31と副室32の2室に区画されている。外部と副室32の間にはハッチ35が設置され、副室32と主室31の間にもハッチ34が設置される。主室31及び副室32には、それぞれ圧気設備36(送気バルブ、排気バルブ)が設置されており、各室を独立して加圧/減圧できるようになっている。
【0024】
(カプセルの構成)
脱出用のカプセル40は、中空の円筒状に形成されており、対象者を座った状態又は寝た状態で収納できるようになっている(図4参照)。すなわち、カプセル40内には、担架、又はイスが設置されている。カプセル40は、気密性を保持する構造となっており、一方の端部には開閉自在の蓋(ハッチ)41が取り付けられている。また、二つに分割して、接合する構造でもよい。
【0025】
さらに、本実施例のカプセル40は、対象者を一人のみ収容可能な小型のものとされている。なお、具体的なカプセル40の形状・大きさは限定されるものではないが、例えば直径1000mm×高さ2500mm程度の円筒形とすることができる。
【0026】
さらに、本実施例のカプセル40には、外部から操作できる圧気設備(送気弁と排気弁)が設置されており、カプセル40内の気圧を外部から調整できるようになっている。すなわち、カプセル40は、オペレータが外部から空気ボンベ(52)を接続し、外部から送気弁や排気弁を開閉操作できる構造となっている。
【0027】
上述したように、本実施例の脱出システムSは、昇降自在に吊下げられて対象者を救出するためのカプセル40と、マテリアルロック(不図示)やマンロック(不図示)とは別に配置された、脱出用シャフト21及び脱出用ロック22と、ホスピタルロック(再圧室)30と、を備えていることを特徴としている。ただし、脱出用シャフト21と脱出用ロック22としては、マテリアルシャフトやマテリアルロック、又はマンシャフトやマンロックを兼用することも可能である。
【0028】
(換気設備の構成)
そして、本実施例の脱出システムSは、図4図5に示すように、カプセル40内の空気をホスピタルロック30への移動途中で外部から換気するための換気設備50をさらに備えている。この換気設備50は、脱出用シャフト21の上部に配置される換気用ゴンドラ51と、換気用ゴンドラ51上に搭載される空気ボンベ52、・・・とから、構成されている。換気用ゴンドラ51は、脱出用シャフト21に対して取り外し可能に設置されて、後から設置することもできる。
【0029】
換気用ゴンドラ51は、中心にカプセル40が通過する円形孔を有する円板形のステージと51a、ステージ51aの周囲に立設される柵(手すり)51bと、から構成されている。ステージ51a上には複数の空気ボンベ52、・・・が搭載されている。空気ボンベ52としては、圧縮した空気が充填されたボンベ、圧縮したヘリウム混合ガスが充填されたボンベ、及び/又は、酸素ボンベ等が配置される。換気用ゴンドラ51には、吊り上げ時にシャックルを掛止できるように、複数の吊りピース(不図示)が設置されている。換気用ゴンドラ51には、カプセル40が通過する円形孔51cが形成されており、その上にカプセル40を設置可能な蓋51dを有する。なお、蓋51dはスライド式でも、片側もしくは両側(観音開き)に開閉する構造でもよい。蓋ではなく、カプセル40に引っかけて固定する構造でもよい。
【0030】
(脱出方法の手順)
次に、図6図8を参照しながら、本実施例の脱出方法の手順について説明する。本実施例の脱出方法は、以下に説明するように、作業室内で作業者をカプセル40内に収容してカプセル40を閉じる工程(ステップS1-S3)と、カプセル40を脱出用シャフト21及び脱出用ロック22を通じて外部に搬出する工程(ステップS4)と、カプセル40内の空気を外部から換気設備50を使用して換気する工程(ステップS5-S7)と、カプセル40をホスピタルロック30内に移送する工程(ステップS8-S9)と、ホスピタルロック30内を加圧する工程(ステップS10)と、ホスピタルロック30内でカプセル40を開く工程(ステップS11)と、を備えている。その後、減圧が完了すれば、対象者を医療機関に搬送する工程となる。以下、図6のフローチャートを参照しながら、各工程について順に説明する。
【0031】
(ステップS1)換気用ゴンドラをあらかじめ設置する:
換気用ゴンドラ51は、あらかじめ脱出用ロック22及び脱出用シャフト21の上方に設置しておく。換気用ゴンドラ51は、後の工程で、カプセル40ごと吊り上げられるように、脱出用シャフト21に対して脱着可能に設置されることが好ましい。
【0032】
(ステップS2)クレーンでカプセルを脱出用ロック経由で作業室内に吊り降ろす:
カプセル40をクレーンで吊り、脱出用ロック22に入れる。次に、脱出用ロック22を函内圧力まで加圧し、下部のハッチを開けて、作業室14内に下ろす。この時、カプセル40内に空気が流入するように、カプセル40のハッチ41又はバルブを開けた状態とする。
【0033】
(ステップS3)作業室内で対象者をカプセル内に収容する:
カプセル40を横に寝かせる(フェンダーやガイドを取り付けている場合は、少なくとも片側を取り外すか、又は、折り畳む)。又は、カプセル40にイスを設ける場合には、カプセル40を縦に立たせる。介助者(P2)は、対象者P1を担架ごとカプセル40内に収容し、担架をカプセル40内に固定する。又は、対象者P1が自らカプセル40内のイスに座る。
【0034】
(ステップS4)クレーンでカプセル吊り上げ脱出用ロックを介して外へ出す:
ハッチ41を閉め、カプセル40を吊り上げ、脱出用シャフト21内を吊り上げ、脱出用ロック22内で停止させる。脱出用ロック22の下部のハッチを閉めて、脱出用ロック22内を大気圧まで減圧し、脱出用ロック22の上部のハッチを開けて、カプセル40を吊り上げる。
【0035】
(ステップS5)カプセルを換気用ゴンドラに載せる:
脱出用ロック22を介して外へ出されたカプセル40を、換気用ゴンドラ51の中央の孔を通じて換気用ゴンドラ51のステージ51aへ載せる。カプセル40は、後工程で吊り上げた際に動かないように、換気用ゴンドラ51に固定しておく。
【0036】
(ステップS6)呼吸用ボンベと接続する:
図7に示すように、換気用ゴンドラ51で呼吸用ガスを供給する空気ボンベ52を換気用ホース53でカプセル40に接続する。換気用ゴンドラ51に同乗している人員(オペレータ)が、換気しながらカプセル40内の気圧を維持する。
【0037】
(ステップS7)第一減圧停止点まで減圧する:
さらに、減圧完了までの時間を短縮するために、この時点でカプセル40内を減圧し、第一減圧停止点まで下げることができる。なお、この工程は、後のステップS11で実施することも可能である。
【0038】
(ステップS8)カプセルをゴンドラごと吊り上げる:
クレーンで、カプセル40を換気用ゴンドラ51ごと吊り上げる。すなわち、カプセル40が載置・固定された換気用ゴンドラ51の吊りピースにワイヤを掛けて、クレーンで吊り上げる。なお、ここでは、カプセル40を換気用ゴンドラ51ごと吊り上げる場合について説明したが、これに限定されるものではなく、空気ボンベを取り付けてカプセル40のみを吊り上げてもよい。
【0039】
(ステップS9)カプセルをホスピタルロックの近傍に降ろす:
クレーンによって、換気用ゴンドラ51ごと吊り上げられたカプセル40を、ホスピタルロック30近傍に降ろす。その後、カプセル40のみを再度クレーンで吊り上げるか、人力で移動させて、図8に示すように、カプセル40を架台(ローラ)33に載せる。ホスピタルロック30の入口のハッチ35およびハッチ34を開けておく。
【0040】
(ステップS10)カプセルのみをホスピタルロック内に収納する:
カプセル40を、架台(ローラ)33上を移動させ、人力でホスピタルロック30内の主室31に搬入する。その後、ホスピタルロック30内の主室31の入り口のハッチ34を閉める。
【0041】
(ステップS11)作業者(対象者)を引き出す:
介助者(P2)と、必要に応じて医師が、ホスピタルロック30内に入り、ホスピタルロック30をカプセル40内の気圧と同じ気圧まで加圧する。次に、カプセル40のハッチ41を開放し、対象者P1を引き出す。
【0042】
(その後)応急処置が必要な場合は、応急処置を行い、時間をかけて大気圧まで減圧する。処置と減圧の順序は、負傷の程度や圧力により適宜選択する。酸素減圧を行う場合は、必要に応じて介助者(P2)がマスクの付け外しの補助を行う。減圧終了後、対象者P1をホスピタルロック30内から出し、医療機関へ搬送する。
【0043】
以上のような各工程により、対象者(負傷者)を脱出させる際に、カプセル40自体に換気設備がなくても、対象者の安全な呼吸を維持することができる。ここにおいて、カプセル40内を換気できない時間帯として、以下の2回が想定される。
・1回目:
作業室14内でカプセル40に対象者を収容し閉じてから換気用ゴンドラ51で換気用ホース53を接続し換気を開始するまで。
・2回目:
ホスピタルロック30内に収容するために換気用ホース53を取り外してからホスピタルロック30内を加圧してカプセル40を開放するまで。
なお、カプセル40にボンベを接続した状態で、ホスピタルロック30内に一緒に収容すれば、この2回目の時間帯は不要となる。
この2回の時間は、それぞれ数分と想定される。カプセル40内の気積は対象者1人が、想定される時間中、安全に呼吸するのに十分な量を有している。
【0044】
(効果)
次に、本実施例の作業者の脱出システムSの奏する効果を列挙して説明する。
【0045】
(1)上述したように、本実施例の脱出システムSは、ニューマチックケーソン10で使用される作業者の脱出システムSであって、作業室14から延びるマテリアルシャフト21と、マテリアルシャフト21の途中に設置されたマテリアルロック22と、加減圧可能に形成されたホスピタルロック30と、作業室14内で作業者を収容するカプセル40であって、圧気状態のままで脱出用シャフト21及び脱出用ロック22を通過して外部に搬出可能に形成され、ホスピタルロック30内に収納可能に形成されるカプセル40と、カプセル40内の空気を外部から換気するための換気設備50と、を備えている。このような構成であれば、対象者はカプセル40に収容されたままでホスピタルロック30まで負担なく移動できる、脱出システムSとなる。さらに、換気設備50を使用してカプセル40内の空気を外部から換気できるため、オペレータが同乗することなくカプセル40内を換気できるようになる。加えて、ホスピタルロック30にカプセル40のままで収納できるため、対象者を迅速に救護することができる。
【0046】
したがって、カプセル40内に呼吸用ガスのボンベ等を設備している必要がない。さらに、専用の脱出システムSを備えることで、対象者のみが高気圧下の環境に置かれ、介助者(オペレータ)が高気圧下の環境に置かれることはない。
【0047】
(2)また、換気設備50は、脱出用シャフト21の上部に配置される換気用ゴンドラ51と、換気用ゴンドラ51上に搭載される空気ボンベ52と、から構成されるため、換気用ゴンドラ51上にカプセル40を載置して空気ボンベ52をホースで接続することで、介助者が外部からカプセル40内の圧力を調整しながら換気できる。このように換気用ゴンドラ51を使用すれば、作業室14にきわめて近い場所で、特別な作業ヤードを準備することなく外部から換気できる。
【0048】
(3)さらに、脱出用ロック22が、作業室14に隣接して直上に配置されるため、カプセル40を閉じてから、ロック内の気圧を大気圧に戻し、カプセルを取り出すまでの時間が短くなる。また、カプセル40内を減圧開始するまでの時間も短くなる。
【0049】
(4)また、カプセル40は、一人のみを収容可能な大きさに形成されているため、カプセル40自体を小さくできる。加えて、カプセルを小型化できれば、脱出用ロック22等を小型化でき、コストを抑制できる。
【0050】
(5)そして、本実施例の作業者の脱出方法は、作業室14内で対象者P1をカプセル40内に収容してカプセル40を閉じる工程と、カプセル40を脱出用シャフト21及び脱出用ロック22を通じて外部に搬出する工程と、カプセル40内の空気を換気設備50を使用して外部から換気する工程と、カプセル40をホスピタルロック30内に移送する工程と、ホスピタルロック30内を加圧する工程と、ホスピタルロック30内でカプセル40を開く工程と、を備えている。このような手順によれば、対象者はカプセル40に収容されたままでホスピタルロック30まで負担なく移動できる。さらに、換気設備50を使用してカプセル40内の空気を外部から換気できるため、オペレータが同乗することなくカプセル40内を換気できるようになる。加えて、ホスピタルロック30にカプセル40のままで収納できるため、対象者を迅速に救護することができる。
【0051】
(6)また、換気する工程は、脱出用シャフト21の上部に配置された換気用ゴンドラ51にカプセル40を載せる工程と、換気用ゴンドラ51上に搭載された空気ボンベ52を使用して換気する工程と、を有するため、換気用ゴンドラ51上にカプセル40を載置して空気ボンベ52をホースで接続することで、介助者が外部からカプセル40内の圧力を調整しながら換気できる。このように換気用ゴンドラ51を使用すれば、作業室14にきわめて近い場所で、特別な作業ヤードを準備することなく外部から換気できる。
【0052】
(7)さらに、換気する工程において、カプセル40内の空気を第一減圧停止点まで減圧する工程を実施することが好ましい。このように換気用ゴンドラ51上で換気と同時に途中まで減圧できれば、高気圧下の時間を短縮することができる。さらに、ホスピタルロック30内での加圧時間も短縮できるため、換気できない時間(前述の「2回目:」を参照)を短くできる。
【0053】
(8)また、移送する工程は、カプセル40を換気用ゴンドラ51ごと移送する工程を有するため、移送の途中においてもカプセル40内を換気することができる。さらに、換気用ゴンドラ51に搭乗した介助者も一緒に安全な場所に移送することができる。
【0054】
(9)さらに、カプセル40を換気用ゴンドラ51ごと移送する工程において、移送の途中でもカプセル40内を換気することが好ましい。
【0055】
(10)さらには、別の作業者の脱出方法として、換気用ゴンドラ51上において換気用ホース53を接続した後に、そのまま減圧を実施することも可能である。すなわち、ニューマチックケーソン10の作業室14内で作業者P1をカプセル40内に収容してカプセル40を閉じる工程と、カプセル40を脱出用シャフト21及び脱出用ロック22を通じて外部に搬出する工程と、カプセル40内の空気を換気設備50を使用して外部から減圧する工程と、を備え、この減圧する工程は、脱出用シャフト21の上部に配置された換気用ゴンドラ51にカプセル40を載せる工程と、換気用ゴンドラ51上に搭載された空気ボンベ52を使用してカプセル40内を減圧する工程と、を有している。そうすれば、ホスピタルロック30が不要となる。このように、カプセル40を常時、換気用ゴンドラ51上に搭載しておけば、緊急時に素早い対応が可能となる。
【0056】
以上、図面を参照して、本発明の実施例を詳述してきたが、具体的な構成は、この実施例に限らず、本発明の要旨を逸脱しない程度の設計的変更は、本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0057】
10 :ニューマチックケーソン
11 :側壁部
12 :作業室天井スラブ
13 :刃口部
14 :作業室
21 :脱出用シャフト
21a :アンカーハッチ
22 :脱出用ロック
30 :ホスピタルロック
31 :主室
32 :副室
33 :架台
34 :ハッチ
35 :ハッチ
36 :圧気設備
40 :カプセル
41 :ハッチ(蓋)
50 :換気設備
51 :換気用ゴンドラ
51a :ステージ
51b :柵(手すり)
51c :円形孔
51d :蓋
52 :空気ボンベ
53 :換気用ホース
G :地山
P1 :対象者
P2 :介助者
S :脱出システム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8