(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024124815
(43)【公開日】2024-09-13
(54)【発明の名称】検出装置
(51)【国際特許分類】
G06F 3/041 20060101AFI20240906BHJP
G06F 3/044 20060101ALI20240906BHJP
G09G 5/00 20060101ALI20240906BHJP
【FI】
G06F3/041 490
G06F3/041 580
G06F3/044 124
G06F3/041 422
G09G5/00 550C
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023032744
(22)【出願日】2023-03-03
(71)【出願人】
【識別番号】502356528
【氏名又は名称】株式会社ジャパンディスプレイ
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西本 拓也
(72)【発明者】
【氏名】吉田 公二
【テーマコード(参考)】
5C182
【Fターム(参考)】
5C182AA02
5C182AA03
5C182AA11
5C182AA21
5C182AC03
5C182BA06
5C182BA29
(57)【要約】
【課題】検出領域上の被検出体を検出可能としながら、検出領域がハーフミラーの鏡領域にもなり得る、検出装置を提供する。
【解決手段】検出装置は、検出領域が設けられたセンサ領域と、電極線検出領域に設けられた複数の電極と、電極線複数の電極ごとの検出値に基づき、電極線検出領域上の被検出体を検出する検出回路と、を備える。外部からセンサ領域への入射光に対する電極の反射率が20%以上80%以下を有している。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向の入射光に対して一部の入射光を反射可能である、検出領域と、
前記検出領域に設けられた複数の電極と、
前記複数の電極ごとの静電容量に基づき、前記検出領域の前記第1方向の被検出体に応じた検出値を検出する検出回路と、
を備え、
外部から前記検出領域への入射光に対する前記電極の反射率が20%以上80%以下を有している、
検出装置。
【請求項2】
前面板をさらに備え、
前記第1方向にみて、前記検出領域と重なる領域であって、前記前面板の表面上の空間における前記被検出体の位置が検出可能である、
請求項1に記載の検出装置。
【請求項3】
前記検出領域に設けられた複数の電極は、線状の導体層である電極線を含み、隣り合う電極線の間には、隙間がある、請求項1又は2に記載の検出装置。
【請求項4】
前記第1方向において、前記電極の前記空間側とは反対側に、発光体をさらに備え、
前記検出領域に重なる前記前面板のうち、前記発光体の発光光が入射していない領域が鏡面となる請求項2に記載の検出装置。
【請求項5】
前記検出領域に重なる前記前面板のうち、前記発光体の発光光が入射している領域で前記発光光が視認される、請求項4に記載の検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ガラス材にアルミニウムなどの金属光沢のある金属で、被膜を形成し、形成された金属膜が入射光の一部を反射光として反射させる、いわゆるハーフミラーが記載されている。特許文献1に記載されているハーフミラーでは、人間がセンサから一定距離離れている場合には、光源を消灯させて表示面を通常のミラーとして機能させ、人間がセンサに一定距離内に近づいた場合には、光源を点灯させて画像を表示面に透過表示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の技術では、観察者からみて、金属膜とセンサとが重なり合わない。このような構造とする理由としては、センサが被検出対象との静電容量を検出する場合、金属膜とセンサとが重なり合うと、センサは、金属膜よりも観察者側の静電容量を十分に検出できない可能性があるからである。そこで、センサの検出領域と、ハーフミラーの鏡領域とを重ねあわせても、被検出体が検出可能な検出装置が望まれている。
【0005】
本発明は、検出領域上の被検出体を検出可能としながら、検出領域がハーフミラーの鏡領域にもなり得る、検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る検出装置は、第1方向の入射光に対して一部の入射光を反射可能である、検出領域と、前記検出領域に設けられた複数の電極と、前記複数の電極ごとの静電容量に基づき、前記検出領域の前記第1方向の被検出体に応じた検出値を検出する検出回路と、を備え、外部から前記検出領域への入射光に対する前記電極の反射率が20%以上80%以下を有している。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、実施形態1に係る検出システムの概略構成を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、実施形態1に係る検出装置の検出領域を説明するための平面図である。
【
図3】
図3は、実施形態1に係る検出装置の概略構成を示す平面図である。
【
図4】
図4は、実施形態1に係る金属膜で構成される電極の膜厚と検出領域の反射率の関係を説明する説明図である。
【
図5】
図5は、実施形態1に係る検出装置が適用される検出システムの概略断面構成を示す模式図であり、
図3のVI-VI’断面を示している。
【
図6A】
図6Aは、表示パネルの発光光が検出装置に入射されていない状態を説明するための説明図である。
【
図6B】
図6Bは、表示パネルの発光光が検出装置に入射している状態を説明するための説明図である。
【
図7】
図7は、実施形態1に係る検出装置の検出回路の構成例を示すブロック図である。
【
図8A】
図8Aは、検出領域上の空間における被検出体の位置と各電極との位置関係を示す模式図である。
【
図8B】
図8Bは、検出領域上の空間における被検出体の空間座標を示す模式図である。
【
図9】
図9は、実施形態1に係る検出装置における処理の一例を示すフローチャートである。
【
図10】
図10は、実施形態1に係る検出装置の断面図である。
【
図11】
図11は、比較例に係る検出装置の概略構成を示す斜視図である。
【
図13】
図13は、実施形態2に係る検出装置の電極とその配線を示す平面図である。
【
図14】
図14は、実施形態2に係る検出装置の隣り合う電極とその配線を示す拡大図である。
【
図17】
図17は、実施形態2に係る電極線の線幅と検出領域の反射率との関係を説明する説明図である。
【
図18】
図18は、電極線の線幅と検出領域の反射率との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下の実施形態1に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。また、開示はあくまで一例にすぎず、当業者において、発明の主旨を保っての適宜変更について容易に想到し得るものについては、当然に本発明の範囲に含有されるものである。また、図面は説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号を付して、詳細な説明を適宜省略することがある。
【0009】
(実施形態1)
図1は、実施形態1に係る検出システムの概略構成を示す斜視図である。
図1に示すように、実施形態1に係る検出システム100は、発光体として表示装置200と、検出装置1とを備え、表示装置200に検出装置1が重ね合わされている。実施形態1に係る検出装置1は、被検出体17を検出するセンサである。検出装置1は、被検出体17と検出装置1との間に生じる距離D(n)や空間座標に応じた静電容量を検出することができる。
【0010】
実施形態1に係る検出システム100では、表示装置200が画像を表示し、発光光IMが検出装置1を透過すると、表示画像の発光光IMが、観測者OBに到達可能である。表示装置200の発光光IMが検出装置1へ外側から入射する入射光ILよりも弱いか、表示装置200の発光光IMがない場合、入射光ILは、検出装置1により反射され、反射光RLとして、観測者OBに視認される。このように、検出装置1は、ハーフミラーとしても機能する。
【0011】
図2は、実施形態1に係る検出装置1の検出領域を説明するための平面図である。
図2に示すように、検出装置1は、Dz方向にみて、被検出体17を検出可能な検出領域AAと、検出領域の周囲にある額縁領域10Fとがある。
【0012】
検出領域AAは、表示装置200からの光を透過させ、画像などの発光光IMを表示することができる。例えば、
図2では、表示装置200からの画像の発光光IMがボタンのオブジェクトとして観測者OBに視認できる。また、表示装置200から発光光IMが入射しない領域は、入射光ILを反射させてミラー状態とするミラー領域RF2となる。例えば、ミラー領域RF2は、表示装置200からの画像の発光光IMがボタンのオブジェクトがある領域を除く領域である。
【0013】
表示装置200からの画像の発光光IMが検出装置1の背面から入射しないと、
図2に示すボタンのオブジェクトが消失し、検出領域AAの全体が入射光ILを反射させてミラー状態とするミラー領域RF1となる。逆に、ミラー領域RF1がある状態で、表示装置200からの画像の発光光IMが検出装置1の背面から入射すると、入射光ILを反射させてミラー状態とする領域がミラー領域RF2まで縮小し、表示装置200からの画像の発光光IMがボタンのオブジェクトとして観測者OBに視認できるようになる。
【0014】
観測者OBがボタンのオブジェクトを視認し、被検出体17である指でオブジェクトを入力操作する場合、検出装置1は、被検出体17の空間座標を検出することができる。検出装置1は、被検出体17が検出装置1の検出面に接触するタッチ位置を検出してもよく、被検出体17が検出装置1の検出面に非接触の状態での座標位置を検出してもよい。なお、非接触状態において、被検出体の位置を検出することは、ホバー検出と呼ぶことがある。
【0015】
図3は、実施形態1に係る検出装置の概略構成を示す平面図である。
図3に示すように、検出装置1は、センサ領域10と、制御回路20と、を備える。
【0016】
センサ領域10は、センサ基板11と、センサ基板11の検出領域AAに設けられる複数の電極12と、複数の各電極12から延びる配線37と、を有する。制御回路20は、制御基板21と、AFE(Analog Front End)回路22と、処理回路23と、電源回路24と、インターフェース回路25と、を有する。
【0017】
センサ基板11の検出領域AAは、Dx方向及びDy方向にマトリクス状に並ぶ複数の電極12が設けられた領域である。センサ基板11は、例えば、ガラス基板又は透光性を有するフレキシブルプリント基板(FPC:Flexible Printed Circuits)である。
【0018】
本開示において、Dx方向及びDy方向は、センサ基板11の検出領域AAにおいて直交する。また、本開示では、Dx方向及びDy方向に直交する方向をDz方向としている。
【0019】
図3に示す例では、Dx方向に4個の電極12が並び、Dy方向に4個の電極12が並ぶ4×4(=16)個の電極12が設けられた例を示したが、センサ基板11の検出領域AAに設けられる電極12の数はこれに限定されない。
【0020】
電極12は、導電性を持ち金属光沢のある金属膜である。電極12は、例えば、Al、Ag、Moなどの金属膜で形成されている。電極12の金属膜の材料及び膜厚に応じて、検出領域AAの反射率が20%以上80%以下になっている。
【0021】
図4は、実施形態1に係る金属膜で構成される電極の膜厚と検出領域の反射率の関係を説明する説明図である。ここで、検出領域の反射率とは、入射する入射光ILが電極12で反射して反射光RLとなる割合である。
図4に示すように、金属膜である電極12の膜厚が厚くなると、検出領域AAの反射率が高くなり、電極12の膜厚が薄くなると、検出領域AAの反射率が低くなる。電極12は、金属光沢を有し、前面板15から入射した入射光ILの20%から80%以下の反射率になる膜厚を有している。
【0022】
図3において、センサ基板11には、配線基板31を介して制御基板21が電気的に接続される。配線基板31は、例えばフレキシブルプリント基板である。センサ領域10の各電極12は、配線37とつながり、配線基板31を介して、制御回路20のAFE回路22と接続される。
【0023】
制御基板21には、AFE回路22、処理回路23、電源回路24、及びインターフェース回路25が設けられている。制御基板21は、例えばリジット基板である。
【0024】
AFE回路22は、センサ基板11から出力される各電極12の検出信号に基づき、各電極12の検出値を生成する。AFE回路22は、例えばアナログフロントエンドICである。
【0025】
処理回路23は、AFE回路22から出力される各電極12の検出値に基づき、検出領域AA上において被検出体(例えば、操作者の手指等)が存在する位置を示す空間座標を生成する。処理回路23は、例えばFPGA(Field Programmable Gate Array)等のPLD(Programmable Logic Device)であっても良いし、例えばMCU(Micro Control Unit)であっても良い。処理回路23はメモリ23Mを有する。
【0026】
メモリ23Mは、処理回路23における被検出体17が検出領域に存在するか否かの判断基準や、操作者による入力操作の検出判断をする基準となる閾値が保存されている。予めメモリ23Mに記憶された閾値に基づいて、具体的な処理回路23が実行する処理については後述する。
【0027】
電源回路24は、AFE回路22及び処理回路23に電源を供給する回路である。
【0028】
インターフェース回路25は、例えばUSBコントローラICであり、処理回路23と検出システムが搭載されるホストデバイスのホストコントローラ(不図示)との間の通信制御を行う回路である。
【0029】
図5は、実施形態1に係る検出装置が適用される検出システムの概略断面構成を示す模式図であり、
図3のV-V’断面を示している。検出システム100は、検出装置1と、表示装置200と、を含む。表示装置200は、エアギャップAGを介して検出装置1のセンサ領域10に対向配置される。検出装置1のセンサ領域10は、平面視においてセンサ領域10の検出領域AAと表示装置200の表示領域DAとがDz方向に重なるように配置される。
【0030】
検出装置1は、センサ基板11と、電極12と、シールド14と、前面板15と、を備える。センサ基板11は、ガラスや樹脂などの透光性基板である。センサ基板11には、複数の電極12が形成され、電極12が保護層OCで覆われることで、表面を平坦化するとともに電極12が保護される。保護層OCは、透光性の樹脂であり、例えば、アクリル樹脂である。保護層OCは、有機樹脂だけでなく、無機樹脂であってもよく、有機樹脂と、無機樹脂の積層体であってもよい。
【0031】
前面板15は、検出装置の前面を保護する保護パネルである。前面板15は、ガラス基板であれば、カバーガラスとも呼ばれる。前面板15の表面と直交するDz方向において、前面板15は、センサ基板11と積層されている。センサ基板11は、前面板15に接着層ATを介して固定されている。接着層ATは、透光性を有する接着剤であり、OCA(Optical Clear Adhesive)と呼ばれる。接着層ATは、両面粘着性を有する透光性フィルムであってもよい。
【0032】
検出装置1は、表示装置200側から、シールド14、センサ基板11、前面板15の順に積層される。
【0033】
シールド14は、ITO(Indium Tin Oxide)、IZO(Indium Zinc Oxide)、IGO(Indium Gallium Oxide)などの透光性を有する導電材料等の透光性を有する導電材料である。シールド14は、センサ基板11の表示装置200側の第2面に設けられている。
【0034】
電極12は、センサ基板11の第2面の反対側の第1面に設けられている。電極12は、前面板15から入射した入射光の20%から80%以下の反射率であるので、表示装置200からの発光光IMを透過可能である。さらに、シールド14、センサ基板11、保護層OC、接着層AT、前面板15がいずれも透光性を有しているので、表示装置200からの発光光IMは、を観測者OBへ到達可能である。なお、最上層に設けられる前面板15の表面を、「検出面」とも称する。
【0035】
表示装置200は、例えば液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)である。表示装置200は、例えば、有機ELディスプレイ(OLED:Organic Light Emitting Diode)や無機ELディスプレイ(マイクロLED、ミニLED)であっても良い。実施形態1において、表示装置200は、画像を表示させると、表示面から画像の光を照射する発光体である。
【0036】
図6Aは、表示パネルの発光光が検出装置に入射されていない状態を説明するための説明図である。
図6Bは、表示パネルの発光光が検出装置に入射している状態を説明するための説明図である。
図6Aに示す表示パネルの発光光が検出装置に入射されていない状態と、
図6Bに示す表示パネルの発光光が検出装置に入射している状態とでは、観測者OBが視認する検出領域AAの状態が異なる。
【0037】
図6A及び
図6Bに示すように、前面板15から入射した入射光ILは、電極12で、一部が透過光TLとなり、残りが反射光RLとなる。
【0038】
図6Aに示すように、表示装置200の発光光IMが検出装置1に入射されていない状態では、観測者OBが反射光RLを認識することになる。LCDである表示装置200の発光光IMが検出装置1に入射されていない状態とは、バックライトが点灯していない状態、または液晶の駆動状態によりバックライトの発光光IMを遮断し、黒色を表示している状態である。有機ELディスプレイ又は無機ELディスプレイである表示装置200の発光光が検出装置1に入射されていない状態とは、有機ELディスプレイ又は無機ELディスプレイの発光体(発光素子)が光を発していない状態である。
図6Aに示すように、センサ領域10に発光体からの発光光IMの入射がないため、反射光RLのみが観測者OBに届き、検出領域AAはミラーとして機能する。
【0039】
図6Bは、表示パネルの発光光が検出装置に入射している状態を説明するための説明図である。LCDである表示装置200の発光光IMが検出装置1に入射している状態とは、LCDのバックライトが点灯しており、液晶の駆動により黒色以外が表示されている状態である。有機ELディスプレイ又は無機ELディスプレイである表示装置200の発光光が検出装置1に入射されている状態とは、有機ELディスプレイ又は無機ELディスプレイの発光体(発光素子)が光を発している状態である。
図6Bに示すように、表示パネルが発光光IMを発している状態の時には、反射光RLに加えて、表示パネルからの表示画像の発光光IMも観測者OBに届ことになる。表示画像の発光光IMの輝度は反射光RL比で大きいため、観測者OBは検出領域AAには表示画像が表示されているように見える。
【0040】
表示装置200は、検出領域AAの全領域に発光光IMを入射させないことができる。その結果、
図2に示すように、検出領域AAの全域は、ミラー領域RF1として機能することができる。また、表示装置200は、検出領域AAの一部の領域に発光光IMを入射させ、検出領域AAの残部の領域に発光光IMを入射させないこともできる。その結果、
図2に示すように、検出領域AAの一部の領域は、ミラー領域RF2として機能することができる。表示装置200は、検出領域AAの全領域に発光光IMを入射させると、
図2に示す検出領域AAは、ミラーとしての機能を発揮しなくなる。
【0041】
図7は、実施形態1に係る検出装置1の検出回路の構成例を示すブロック図である。
図7に示すように、検出回路40は、検出タイミング制御回路41と、信号検出回路42と、A/D変換回路43と、信号処理回路44と、座標抽出回路45と、を備える。本開示において、検出タイミング制御回路41、信号検出回路42、及びA/D変換回路43は、AFE回路22に含まれる。信号処理回路44、及び座標抽出回路45は、処理回路23に含まれる。
【0042】
検出タイミング制御回路41は、信号検出回路42及びA/D変換回路43における検出動作タイミングを制御する構成部である。
【0043】
信号検出回路42は、センサ基板11から出力される各電極12の検出信号Det(n)(nは、1からNまでの自然数、Nは、検出領域AA内の電極数)に基づき、電極12ごとの出力値GV(n)を生成する。A/D変換回路43は、信号検出回路42の出力値GV(n)をサンプリングして離散値の検出値Raw(n)に変換する。
【0044】
信号処理回路44は、電極12ごとの検出値Raw(n)に対し、所定の信号処理を実行し、電極12ごとの信号値S(n)を算出する。信号処理回路44における具体的な処理の具体例については後述する。
【0045】
座標抽出回路45は、信号処理回路44から出力される電極12ごとの信号値S(n)に基づき、被検出体が存在する位置の空間座標を抽出する。
【0046】
図8Aは、検出領域上の空間における被検出体の位置と各電極との位置関係を示す模式図である。
図8Aに示すように、検出領域AAの各電極12には、検出領域AA上の空間に存在する被検出体17と各電極12との距離D(n)に応じた静電容量が生じ、当該静電容量に応じた信号値S(n)が取得される。
【0047】
図8Bは、検出領域上の空間における被検出体の空間座標を示す模式図である。処理回路23は、生成された各電極12の信号値S(n)を用いて、
図8Bに示す検出領域AA上の空間における被検出体17の位置を示す空間座標R(Rx,Ry,Rz)を抽出する。
【0048】
処理回路23は、生成された各電極12の信号値S(n)を用いて、
図8Bに示す検出領域AA上の空間における被検出体17の位置を示す空間座標R(Rx,Ry,Rz)を抽出する。
【0049】
図8A及び
図8Bでは、検出領域AA上の空間に被検出体17が存在する例を示している。
【0050】
本開示において、空間座標R(Rx,Ry,Rz)は、検出領域AA上におけるDx方向(第1方向)の位置を示す第1データRx、検出領域AA上におけるDy方向(第2方向)の位置を示す第2データRy、Dx方向(第1方向)及びDy方向(第2方向)に直交すえるDz方向(第3方向)の位置を示す第3データRzを含む。
【0051】
また、本開示において、空間座標R(Rx,Ry,Rz)は、前面板15の表面を検出面として、検出面上の空間に存在する被検出体17の位置を示している。
【0052】
本開示に係る検出装置1は、上述したように、各電極12に生じた静電容量を検出して検出領域AA上の被検出体17が存在する位置の空間座標を検出する構成である。
【0053】
本開示に係る検出装置1は、検出領域の空間に被検出体17の存在有無を検出する第1期間と、検出領域上の空間における被検出体17の位置を検出する第2期間と、を有する。
【0054】
本実施形態1に係る検出装置1は、第1期間において検出面上の空間に存在する被検出体17を検出して第2期間に移行する。また、検出装置1は、第2期間において検出面上の空間における被検出体17の位置を検出できない場合に第1期間に移行する。
【0055】
この検出装置における処理について、
図9を参照して説明する。
図9は、実施形態1に係る検出装置における処理の一例を示すフローチャートである。
【0056】
検出装置1は、第1期間における検出動作を開始すると(ステップS101)、信号処理回路44は、電極12ごとの信号値S(n)を取得し(ステップS102)、電極12ごとの信号値S(n)の合計値Ssumを算出する(ステップS103)。
【0057】
そして、信号処理回路44は、ステップS103において算出した合計値Ssumと合計閾値Ssumthとの比較演算処理を行う(ステップS104)。
【0058】
電極12ごとの信号値S(n)の合計値Ssumが合計閾値Ssumth未満である場合(Ssum<Ssumth、ステップS104;No)、ステップS102からステップS104の処理を繰り返し実行する。
【0059】
電極12ごとの信号値S(n)が合計閾値Ssumth以上となると(Ssum≧Ssumth、ステップS104;Yes)、検出装置1は、第1期間PWから第2期間PDに移行する(ステップS105)。
【0060】
第2期間PDに移行すると(ステップS105)、検出タイミング制御回路41は、電極12の充放電回数(カウント値)Cvをリセット(Cv=0)する(ステップS106)。
【0061】
検出タイミング制御回路41は、信号検出回路42の出力値GV(n)を取得し(ステップS108)、電極12ごとの積算値Vint(n)を算出する(ステップS109)。
【0062】
そして、検出タイミング制御回路41は、ステップS109において算出した電極12ごとの積算値Vint(n)と積算閾値Vintthとの比較演算処理を行う(ステップS110)。
【0063】
全ての電極12の積算値Vint(n)が積算閾値Vintth未満であれば(Vint(n)<Vintth)(ステップS110;No)、検出タイミング制御回路41は、電極12の充放電回数(カウント値)Cvとカウント閾値Cvthとの比較演算処理を行う(ステップS111)。
【0064】
電極12の充放電回数(カウント値)Cvがカウント閾値Cvth未満である場合(Cv<Cvth、ステップS111;No)、ステップS108の処理に戻り、電極12ごとの積算値Vint(n)のうちの1つが積算閾値Vintth以上となるか(Vint(n)≧Vintth)(ステップS110;Yes)、あるいは、電極12の充放電回数(カウント値)Cvがカウント閾値Cvth以上となるまで(Cv≧Cvth、ステップS111;Yes)、上述した処理を繰り返し実行する。
【0065】
電極12ごとの積算値Vint(n)の1つが積算閾値Vintth以上となると(Vint(n)≧Vintth)(ステップS110;Yes)、AFE回路22の検出タイミング制御回路41は、A/D変換回路43のサンプリングタイミングを制御し、A/D変換回路43は、信号検出回路42の出力値GV(n)のサンプリング処理を実行して、検出値Raw(n)を取得する。AFE回路22は、そのときの電極12の充放電回数(カウント値)Cv及びA/D変換回路43によって取得された検出値Raw(n)を後段の処理回路23に出力する(ステップS112)。そして、ステップS106の処理に戻り、電極12ごとの積算値Vint(n)の1つが積算閾値Vintth以上となるか(Vint(n)≧Vintth)(ステップS110;Yes)、あるいは、電極12の充放電回数(カウント値)Cvがカウント閾値Cvth以上となるまで(Cv≧Cvth、ステップS111;Yes)、上述した処理を繰り返し実行する。
【0066】
電極12の充放電回数(カウント値)Cvがカウント閾値Cvth以上となると(Cv≧Cvth、ステップS111;Yes)、ステップS101の処理に戻る。これにより、検出装置1は、第2期間から第1期間に移行する(ステップS101)。
【0067】
以上より本実施形態1に係る検出装置1は、第2期間において、電極12ごとの信号値S(n)に対し、電極12の充放電回数(カウント値)Cvに応じた重み付けを実行し、被検出体17が存在する位置の空間座標抽出処理を行う。これにより、被検出体17の検出面上のDz方向の位置情報が補完される。
【0068】
第2期間において、検出領域AA内の何れの電極12の積算値Vint(n)も積算閾値Vintth以上となることなく、電極12の充放電回数(カウント値)Cvがカウント閾値Cvth以上となった場合には、第2期間から第1期間に移行する。これにより、検出領域AA上の空間に被検出体17が存在しない場合において、被検出体17を誤検出することを防ぐことができる。
【0069】
図10は実施形態1に係る検出装置1の断面図である。
図10において、被検出体17のDz方向の座標がZ2(検出面15UFよりh1+h2上方の位置)より上方の場合は検出領域上に被検出体17が存在しないと処理回路23において判断される。具体的には、Dz方向の座標がZ2における電極12ごとの信号値S(n)の合計値Ssumthが閾値としてメモリ23Mに保存されている。
図9におけるフローチャートのステップS104において、被検出体17の空間位置における電極12ごとの信号値S(n)の合計値Ssumと閾値Ssumthを処理回路23が比較する。閾値以上の場合は、検出領域上に被検出体17が存在していると判断し、フローチャートの第2期間に移行する。
【0070】
第2期間においては、Z1(検出面15UFよりh1上方の位置)におけるRz座標がインプット操作座標閾値としてメモリ23Mに保存されている。取得された被検出体17の第3データRzの値とインプット操作座標閾値が処理回路23により比較され、閾値以下の場合は操作者によるインプット操作と判断する。
【0071】
検出装置1は、h1の値を0に設定すれば被検出体17が検出面15UFに接触することでインプット操作を認識するタッチセンサーとして機能し、h1を0より大きい値に設定すれば、非接触での入力操作のジェスチャを認識できるホバーセンサーとして機能する。
【0072】
図11は、比較例に係る検出装置の概略構成を示す斜視図である。
図12は、比較例に係る検出装置の断面図である。
図11及び
図12に示すように、比較例に係る検出装置は、表示装置200と、検出装置1と、ハーフミラー30とを備える検出システムである。検出装置1は、表示装置200の前面に配置され、ハーフミラー30は、検出装置1の前面に配置される。
【0073】
図12に示すように、ハーフミラー30は、基板であるガラス層15Mと、金属膜(ミラー層)16とを備える。金属膜(ミラー層)の材質は、AL、Ag等の金属光沢を有する導電性の金属材料である。
【0074】
図12に示すように、表示装置200の発光光IMが検出装置1へ外側から入射する入射光ILよりも弱いか、表示装置200の発光光IMがない場合、入射光ILは、金属膜(ミラー層)16により反射され、反射光RLとして、観測者OBに視認される。
【0075】
ここで、金属膜16が被検出体17と電極12の間にあるので、電極12は、金属膜16の表面における静電容量を測定してしまい、被検出体17における静電容量十分に検出できない可能性がある。
【0076】
これに対して、実施形態1の検出装置1は、Dz方向の入射光ILに対して一部の入射光を反射可能である、検出領域AAと、検出領域AAに設けられた複数の電極12と、複数の電極12ごとの静電容量に基づき、検出領域AAのDz方向の被検出体17に応じた検出値を検出する検出回路と、を備える。そして、検出領域AAが入射光ILに対する反射光RLの反射率が反射率20%以上80%以下である。この構造により、被検出体17と電極12の間に比較例のような金属膜(ミラー層)16がなく、実施形態1の検出装置1は、センサ領域10上の被検出体17の静電容量の測定が可能である。
【0077】
実施形態1の検出装置1は、前面板15を有している。実施形態1の検出装置1は、Dz方向にみて、検出領域AAと重なる領域であって、前面板15の表面上の空間における被検出体17の位置が検出可能である。これにより、指で鏡面を直接触ることなく、入力操作ができる。その結果、指紋などで生じる前面板15の表面の汚れが抑制される。
【0078】
実施形態1の検出装置1は、前面板15の検出面上の空間における被検出体17の位置が検出可能である。そして、Dz方向において、表示装置200は、発光体として、電極12の上述した被検出体17を検出する空間側とは反対側に、配置される。検出領域AAに重なる前面板15のうち、表示装置200の発光光IMが入射していない領域が鏡面となる。そして、検出領域AAに重なる前面板15のうち、表示装置の発光光IMが入射している領域で観測者OBに発光光IMが視認され、上述したオブジェクトが認識可能となる。このように、検出装置1は、検出領域AA上の被検出体17を検出可能としながら、検出領域AAがハーフミラーの鏡領域にもなり得る。
【0079】
(実施形態2)
図13は、実施形態2に係る検出装置の電極とその配線を示す平面図である。以下の説明において、実施形態1と同様の構成要素について同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
図13に示すように、電極12はメッシュ状、ジグザク線状、または波線状に繋がった電極線である。電極線は、Al、Mo、Tiなどの金属膜で形成されている。このように、電極線は、導電性を持ち金属光沢のある金属膜である。このように、電極線は、線状の導体層である。
【0080】
電極12は、Dx方向に隙間SPx、Dy方向に隙間SPyの間隔をもって配置され、配線37に接続し、配線基板31を介してAFE回路22に接続している。
【0081】
図14は、実施形態2に係る検出装置の隣り合う電極とその配線を示す拡大図である。
図14に示すように、電極12は、Du方向に平行な電極線33Uと、Du方向とは異なるDv方向に平行な電極線33Vが交差し、メッシュ状となった電極線33U及び電極線33Vの集合体である。電極線33U及び電極線33Vは、配線37に電気的に接続している。
【0082】
図14に示すように、電極12間の隙間SPxを通る配線37は、Du方向とDv方向に交互に延びるジグザグ形状になっている。配線37は、Du方向とDv方向に交互に延びる波線形状であってもよい。隣り合う配線37の間には、隙間GPがあり、隣り合う配線37は、短絡しない。なお、配線37は、1つの配線としたが、電気抵抗を低減させるため、電極線33U及び電極線33Vと同様のメッシュ状としてもよい。なお、配線37は、
図14において破線で示しているが、配線37は、電極線と同じ金属膜が連続した配線である。
【0083】
隙間SPxに配置された複数の配線37は、電極線33U又は電極線33Vに平行であり、電極線33U及び電極線33Vのメッシュ状の形状と似ている構造であるので、隙間SPxが目立たなくなり、不可視化される。
【0084】
Dy方向の電極12の間の隙間SPxは、電極12の不可視化のために、小さい方が望ましい。なお、隙間SPxだけではなく、隙間SPyにも、配線37を配置するようにしてもよい。
【0085】
図15は、実施形態2に係る電極の拡大図である。
図15に示すように、メッシュ状の電極線はDu方向に平行な電極線33Uと、Dv方向に平行な電極線33Vを有し、電極線33U及び電極線33Vの線幅tは、一定である。ここで、電極線33U及び電極線33Vの線幅tは、Du方向又はDv方向に直交する方向の金属膜の幅である。
【0086】
図16は、
図15におけるXVI-XVI´断面を示している。
図16に示すように、電極線33Vが存在する部分において入射光ILを反射光RLとして反射し、電極線の存在しない領域CLにおいて光は透過する。同様に、電極線33Uが存在する部分において入射光ILを反射光RLとして反射する。つまり、電極線33U及び電極線33Vが存在しない領域CLを小さくすることで、電極12の反射率が向上する。電極線33U及び電極線33Vが存在しない領域CLとは、隣り合う電極線33Uの隙間、隣り合う電極線33Vの隙間、隣り合う電極線33Uと電極線33Vとの隙間のいずれかである。
【0087】
図17は、実施形態2に係る電極線の線幅と検出領域の反射率との関係を説明する図である。
図18は、電極線の線幅と検出領域の反射率との関係を示すグラフである。
図18では、横軸に電極12を構成する電極線の線幅t、縦軸に検出領域AAの反射率を示している。
図17及び
図18において、電極線33U及び電極線33Vの線幅tが変わっても電極線33U及び電極線33VのDz方向の厚みtzは一定である。
【0088】
図17及び
図18に示すように、実施形態2に係る検出領域AAの反射率は、電極線33U及び電極線33Vの線幅に応じて変化する。電極線33U及び電極線33Vの線幅が太くなると、
図16に示す電極線33U及び電極線33Vの存在しない領域CLが小さくなるため、検出領域AAの反射率が高くなる。電極線33U及び電極線33Vの線幅が細くなると、
図16に示す電極線33U及び電極線33Vの存在しない領域CLが大きくなるため、検出領域AAの反射率が低くなる。
【0089】
図15において、Du方向に平行な電極線と、Dv方向に平行な電極線により形成された菱形形状において、Dx方向の対角線距離(隙間)をPx、Dy方向の対角線距離(隙間)をPyとしたときに、線幅tを太くすると、各対角線距離(隙間)に対するt(電極線)の割合(t/Px&t/Py)が上がる。
【0090】
図16で示したように電極12の電極線部において光の反射が生じることから、各対角線距離(隙間)に対するt(電極線)の割合(t/Px&t/Py)が上がることで電極12における反射率も上がる。
【0091】
実施形態2に係る電極12の電極線の線幅tは、検出領域AAの反射率が20%以上80以下になるように設定されている。この構造により、被検出体17と電極12の間に比較例のような金属膜(ミラー層)16がなく、実施形態2の検出装置1は、センサ領域10上の被検出体17の静電容量の測定が可能である。そして、Dz方向において、表示装置200は、発光体として、電極12の上述した被検出体17を検出する空間側とは反対側に、配置される。検出領域AAに重なる前面板15のうち、表示装置200の発光光IMが入射していない領域が鏡面となる。
【0092】
電極線33U及び電極線33Vの存在しない領域CLは、表示装置の発光光IMを透過するので、検出領域AAに重なる前面板15のうち、表示装置の発光光IMが入射している領域で観測者OBに発光光IMが視認され、
図2に示すようなオブジェクトが認識可能となる。このように、検出装置1は、検出領域AA上の被検出体17を検出可能としながら、検出領域AAがハーフミラーの鏡領域にもなり得る。
【0093】
以上、本開示の好適な実施の形態を説明したが、本開示はこのような実施の形態に限定されるものではない。実施の形態で開示された内容はあくまで一例にすぎず、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。本開示の趣旨を逸脱しない範囲で行われた適宜の変更についても、当然に本開示の技術的範囲に属する。
【0094】
例えば、上述した表示装置200は、発光体である。上述した実施形態の表示装置200に代えて、光源と、
図2に示したオブジェクトを投影するスクリーンとで発光体が構成されてもよい。
【符号の説明】
【0095】
1 検出装置
10 センサ領域
10F 額縁領域
11 センサ基板
12 電極
14 シールド
15 前面板
15М ハーフミラーのガラス層
16 金属膜(ミラー層)
17 被検出体
20 制御回路
21 制御基板
22 AFE回路
23 処理回路
23М メモリ
24 電源回路
30 ハーフミラー
31 配線基板
200 表示パネル
AA 検出領域
AG エアギャップ
AT 接着層
OC 保護層
IL 入射光
RL 反射光
OB 観測者
IM 表示画像
SPx Dx方向間隔
SPy Dy方向間隔
GP 配線隙間
t 電極線幅