(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024124822
(43)【公開日】2024-09-13
(54)【発明の名称】圧電デバイス
(51)【国際特許分類】
H03H 9/02 20060101AFI20240906BHJP
H01L 23/04 20060101ALI20240906BHJP
【FI】
H03H9/02 A
H01L23/04 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023032754
(22)【出願日】2023-03-03
(71)【出願人】
【識別番号】000232483
【氏名又は名称】日本電波工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】金丸 晶浩
【テーマコード(参考)】
5J108
【Fターム(参考)】
5J108BB02
5J108CC04
5J108DD02
5J108EE03
5J108EE07
5J108EE18
5J108GG03
5J108GG11
5J108GG16
5J108JJ04
5J108KK04
(57)【要約】
【課題】小型であっても、圧電振動素子の特性を正確に測定できる構造を有した圧電デバイスを提供する。
【解決手段】圧電デバイス10は、平面視で四角形状の凹部、及び、凹部を囲っていて複数層で構成された壁部を有するパッケージと、凹部の第1の辺側の領域で凹部の底面に片持ち支持で接続されている圧電振動素子と、を備える。そして、壁部の第1層の外側面であって、第1の辺側に当たる外側面に、圧電振動素子の特性測定用の第1端子を備え、壁部の第1層とは異なる第2層の外側面であって、第1の辺側に当たる外側面に、圧電振動素子の特性測定用の第2端子を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面視で四角形状の凹部、及び、前記凹部を囲っていて複数層で構成された壁部を有するパッケージと、前記凹部の第1の辺側の領域で前記凹部内に片持ち支持で接続されている圧電振動素子と、を備える圧電デバイスにおいて、
前記壁部の第1層の外側面であって、前記第1の辺側に当たる外側面に、前記圧電振動素子の特性測定用の第1端子を備え、前記壁部の前記第1層とは異なる第2層の外側面であって、前記第1の辺側に当たる外側面に、前記圧電振動素子の特性測定用の第2端子を備えたこと、
を特徴とする圧電デバイス。
【請求項2】
前記四角形状の凹部は、平面視で長方形状の凹部であり、前記第1の辺は、前記凹部の1つの短辺であることを特徴とする請求項1に記載の圧電デバイス。
【請求項3】
前記複数層で構成されたパッケージは、4層から構成されていることを特徴とする請求項1に記載の圧電デバイス。
【請求項4】
前記第1端子及び第2端子各々の、前記第1の辺に沿う方向の寸法は、前記壁部の前記第1の辺に沿う寸法の30~70%の範囲であることを特徴とする請求項1に記載の圧電デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
圧電デバイスの中には、パッケージの側面に端子を設け、この端子に測定プローブを接触させて圧電デバイスの特性を測定するものがある。その一例が例えば特許文献1に記載されている。
特許文献1に記載の圧電発振器は、パッケージと、パッケージに収納される半導体素子及び圧電振動素子と、蓋部材から構成されている(特許文献1の段落0017)。圧電振動素子は、四角形状のもので、短辺側の部分がパッケージに片持ち支持の状態で接続されている。この圧電発振器のパッケージは、平面視で四角形状であり、四角形の4つの辺のうちの前記圧電振動素子が片持ち支持がされている近くの辺に当たる外壁に、2つの圧電振動素子測定電極(以下、測定電極と言う。)が設けられている。然も、2つの測定電極は、横並びに配置されている(特許文献1の
図1)。この圧電発振器では、外壁に設けた上記2つの測定電極にプローブを当てることによって、圧電振動素子の特性測定が行える(特許文献1の
図3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、圧電発振器等の圧電デバイスの小型化が進むに伴い、圧電デバイス用パッケージの外壁寸法も益々小さくなる。従って、パッケージの外壁に2つの測定電極を横並びに設けている特許文献1の構造の場合、2つの測定電極の絶縁性を確保するため2つの測定電極を近接させるにも限界があるので、2つの測定電極の横並びの方向の寸法を小さくせざるを得ない。上記の寸法が小さいと、測定プローブを測定電極に正確に当てることができないという問題がある。
【0005】
本発明は上記の点に鑑みなされたものであり、従ってこの出願の目的は、小型化が進んでも、圧電振動素子の特性を正確に測定できる構造を有した圧電デバイスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的の達成を図るため、この発明の圧電デバイスによれば、平面視で四角形状の凹部、及び、前記凹部を囲っていて複数層で構成された壁部を有するパッケージと、前記凹部の第1の辺側の領域で前記凹部内に片持ち支持で接続されている圧電振動素子と、を備える圧電デバイスにおいて、
前記壁部の第1層の外側面であって、前記第1の辺側に当たる外側面に、前記圧電振動素子の特性測定用の第1端子を備え、前記壁部の前記第1層とは異なる第2層の外側面であって、前記第1の辺側に当たる外側面に、前記圧電振動素子の特性測定用の第2端子を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
この発明の圧電デバイスによれば、圧電振動素子の特性測定用の端子が、複数層で構成されたパッケージ壁部の外側面の異なる層に設けられているので、特性測定用の端子を横並びに設けていた場合に比べ、圧電デバイスが小型の場合においても、測定プローブが特性測定用の端子に確実に接触するための、特性測定用の端子の寸法を確保できる。然も、圧電振動素子が片持ち支持されている部分と、特性測定用の端子とは、パッケージの1つの側壁を挟んで近接した状態で設けられているため、圧電振動素子の接続部と、特性測定用の端子と、を繋ぐパッケージ層内の配線パターンを短くすることができる。従って、圧電振動素子の特性を正しく測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1の実施形態の圧電発振器10を説明するための図である。
【
図2】第2の実施形態の圧電発振器11を説明するための図である。
【
図3】第3の実施形態の圧電発振器12を説明するための図である。
【
図4】従来の圧電発振器を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、この発明の圧電デバイスの実施形態について、それぞれ説明する。温度補償型発振器において、パッケージに設けた側面の端子が半導体素子の書込みに使用されることがあるため、本実施形態では、圧電デバイスを圧電発振器として説明する。
なお、説明に用いる各図はこの発明を理解できる程度に概略的に示してあるにすぎない。また、説明に用いる各図において、同様な構成成分については同一の番号を付して示し、その説明を省略する場合もある。また、以下の説明で述べる形状、材質等はこの発明の範囲内の好適例に過ぎない。従って、本発明は以下の実施形態のみに限定されるものではない。
【0010】
1.第1の実施形態の圧電発振器
図1を参照して、第1の実施形態の圧電発振器10について説明する。
図1(A)は、圧電発振器10の短辺側の側面図である。
図1(B)は、圧電発振器10の第1層20a及びこの第1層20aとは異なる層である第2層20b各々の上面図である。
図1(C)は、圧電発振器10の蓋部材60を取った状態の上面図である。
図1(D)は、
図1(C)のa-a’線に沿って切った断面図である。
【0011】
圧電発振器10は、パッケージ20と、圧電振動素子30と、第1端子40及び第2端子41と、半導体素子50と、蓋部材60と、を備えている。
【0012】
パッケージ20は、圧電振動素子30及び半導体素子50を実装する平面視で長方形状の凹部20yと、第1層20a、第2層20b、第3層20c及び第4層20dの4層で構成された壁部20xを備えるもので、第1層20aの上部に、シールリング21を備えている。第2層20bの、パッケージ20の対向する短辺側に当たる部分は、第1層20aに比べて、パッケージ20の中心側に張り出している。第2層20bのこの張り出した部分上に、圧電振動素子30を接続するための接続パッド23を備えている。凹部20yの内底面である第3層20c上に、半導体素子50を接続するための接続端子(図示せず)を備えている。またパッケージ20は、セラミック製の積層構造のものとするのが好ましい。
【0013】
圧電振動素子30は、平面視で四角形状であり、この場合例えばATカットの水晶片30aと、その表裏の面に励振用電極32と、それぞれの励振用電極32から圧電振動素子30の一つの短辺に引き出した、引き出し電極31a及び31bと、を備えている。引き出し電極31a及び31bは、パッケージ20の第2層20b上の接続パッド23と、導電性接着剤22を介して接続しており、従って、圧電振動素子30は、一つの辺である第1の辺の側の領域でパッケージ20の接続パッド23a、23bに接続した、いわゆる片持ち支持となっている。導電性接着剤22は、任意のものでよいが、例えばシリコーン系導電性接着剤が好ましい。
【0014】
第1端子40及び第2端子41は、圧電振動素子30の特性測定や、または、温度補償用のデータを半導体素子50に書き込むため等に使用するものであり、パッケージ20の壁部20xのうちのパッケージ20の短辺側に当たる部分に設けてある。然も、第1端子40は、4層で構成された壁部20xのうちの第1層20aに設けてあり、第2端子41は、第1層20aとは異なる第2層20bに設けてある。然も、第1端子40及び第2端子41は、上記した短辺側の壁部20xであって、上記短辺の中心を境にした左側領域に一方の端子を、右側領域に他方の端子を設けてある。第1端子40及び第2端子41各々は、上記短辺側の壁の外側面から壁の厚み方向にやや凹んだ凹部として形成してある。
第1端子40及び第2端子41各々の横方向の寸法は、測定プローブを当てるため大きい程好ましいが、その上限はパッケージの長辺方向に沿う壁等の制約によって規定される。しかし、本発明の場合、第1端子40、第2端子41を別々の層に設けてあるため、第1端子40及び第2端子41各々の横方向の寸法は、パッケージ20の短辺の寸法に対し、30~70%程度にはできると言える。ただし、第1実施形態の場合は、上記の通り、短辺の中心を境にした左側領域に一方の端子を、右側領域に他方の端子を設ける例であるので、第1端子40及び第2端子41各々の横方向の寸法は、パッケージ20の短辺の寸法に対し、30%程度が妥当である。と第1端子40及び第2端子41の凹部内には、金メッキが施されている。第1端子40及び第2端子41は、パッケージ20層内の配線パターン(図示せず)と接続パッド23a及び23bとを介して、引き出し電極31a及び31bと繋がっている。このように導通が取れているため、第1端子40及び第2端子41に測定プローブを接触させることで、圧電振動素子30の特性を測定することが可能となる。
なお、
図1では、パッケージの凹部20yを囲う外壁のうちの凹部20yの短辺に相当する2つの外壁各々に第1端子40、第2端子41を対で設けたような状態となっているが、これはパッケージ製造時のセラミックウエハ状態で隣接していた隣接パッケージ間を分割した際の名残りであり当該第1端子、第2端子に相当するものではない(詳細略)。
【0015】
半導体素子50は、平面視において四角形状であり、第3層20cと接合する面に球形状のバンプ(図示せず)を備えたものである。半導体素子50は、バンプを介してパッケージ20に接続している。なお、バンプは、金又ははんだで形成されている。
蓋部材60は、平面視において四角形状であり、例えば金属製である。パッケージ20の凹部20y内に、半導体素子50及び圧電振動素子30を接続し、適度な真空又は不活性ガス雰囲気にした後、シールリング21と蓋部材60をシーム溶接で接合し、封止する。
【0016】
4層で構成されるパッケージ20において、圧電振動素子30の特性測定用の第1端子40及び第2端子41を異なる層に設ける上記の構造にすることで、従来の1つの層に特性測定用の端子を横並びに設けていた構造と比較すると、特性測定用の端子の寸法を広くすることができる。具体的には、上記したように、第1端子40、第2端子41各々の横方向の寸法は、パッケージ20の短辺の寸法に対し、少なくとも30%にできる。第1端子40、第2端子41を1つの層に横並びに設けていた場合、同比率は11%程度であった。従って、第1の実施形態の場合、第1端子40及び第2端子41の横方向の寸法は、約19%増加する。従って、本発明によれば、圧電デバイスが小型になった場合においても、測定プローブを確実に接触させることができる特性測定用の第1端子40及び第2端子41の寸法を確保できる。
【0017】
また、この発明の場合、圧電振動素子30の接続部を、パッケージ20の凹部20yを囲う壁のうち、パッケージ20の短辺側の壁に近接した位置に設け、この壁の外側面に特性測定用の第1端子40及び第2端子41を設けているので、圧電振動素子30の接続部と特性測定用の第1端子40及び第2端子41とを接続するためのパッケージ20層内の配線パターンの引き回しを短くすることができる。そのため、圧電振動素子30の特性を正しく測定することができる。
【0018】
2.その他の実施形態
2-1.第2の実施形態の圧電発振器
図2を参照して、第2の実施形態の圧電発振器11について説明する。
図2(A)は、圧電発振器11の短辺側の側面図である。
図2(B)は、圧電発振器11の第1層20aの上面図である。
図2(C)は、圧電発振器11の第2層20bの上面図である。
図2(D)は、圧電発振器11の蓋部材60を取った状態の上面図である。
【0019】
第1の実施形態の場合は、第1端子40及び第2端子41は、4層で構成された壁部20xのうちの異なる層に設けてあり、然も、第1端子40及び第2端子41は、パッケージ20の短辺側の壁部20xであって、上記短辺の中心を境にした左側領域に一方の端子を、右側領域に他方の端子を設けていた。これに対し、第2の実施形態の場合は、第1端子40及び第2端子41は、パッケージ20の短辺側の壁部20xの全域を可能な限り利用して、縦並びに設けている。すなわち、第1端子40は、壁部20xの第1層20aの全域を可能な限り利用して設けてあり、第2端子41は、第1層20aとは異なる第3層20cの全域を可能な限り利用して設けてある。パッケージの長辺方向に沿う壁等の制約があるが、第1端子40及び第2端子41各々の横方向の寸法は、パッケージ20の短辺の寸法に対し、70%にできる。また、第1層20aと第3層20cの間である第2層20bには、絶縁層を設けている。
【0020】
4層で構成されるパッケージ20において、圧電振動素子30の特性測定用の第1端子40及び第2端子41を異なる層に設け、然も、2つの端子がパッケージ20の壁部20xの全域を可能な限り利用した上記の構造にすることで、特性測定用の端子の寸法を最大限広くすることができる。具体的には、上記したように、第1端子40、第2端子41各々の横方向の寸法は、パッケージ20の短辺の寸法に対し、70%にできる。従来の第1端子40及び第2端子41を1つの層に横並びに設けていた場合、同比率は11%程度であった。従って、第2の実施形態の場合、第1端子40及び第2端子41の横方向の寸法は、約59%増加する。従って、本発明によれば、圧電デバイスが小型になった場合においても、測定プローブを確実に接触させることができる特性測定用の第1端子40及び第2端子41の寸法を確保できる。
【0021】
2-3.第3の実施形態の圧電発振器
図3を参照して、第3の実施形態の圧電発振器12について説明する。
図3(A)は、圧電発振器12の長辺側の側面図である。
図3(B)は、圧電発振器12の第1層20a及び第2層20bの上面図である。
図3(C)は、圧電発振器12の蓋部材60を取った状態の上面図である。
図3(D)は、
図3(C)のb-b’線に沿って切った断面図である。
【0022】
第3の実施形態の圧電発振器12は、パッケージ20の両長辺側の側面に、第1端子40及び第2端子41を設けた例である。この場合、圧電振動素子30もパッケージ20の凹部20yを囲う壁のうち、長辺側の壁の内側面に、片持ち支持となるよう接続される。このような構造とすることで、第1の実施形態と同様の効果が得られる。
【0023】
本発明は、圧電デバイスが小型化された場合であってもパッケージの短辺側に測定端子を設け易いという効果が得られる。従って、例えば、パッケージ20の長辺、短辺、高さの各寸法で示して、2.5×2.0×0.9(単位:mm)以下の、いわゆる2520サイズ以下の圧電デバイスに適用するのが、有用である。
本実施形態では、複数層で構成された壁部20xの層数を4層とする例を示したが、層数は4層に限られず、3層、あるいは5層以上でも良い。
【符号の説明】
【0024】
10:第1の実施形態の圧電発振器 11:第2の実施形態の圧電発振器
12:第3の実施形態の圧電発振器 13:従来の圧電発振器
20:パッケージ 20a:パッケージの第1層
20b:パッケージの第2層 20c:パッケージの第3層
20d:パッケージの第4層 20x:壁部
20y:凹部 21:シールリング
22:導電性接着剤 23、23a、23b:接続パッド
30:圧電振動子 31a、31b:引き出し電極
32:励振電極 40:測定用の第1端子
41:測定用の第2端子 50:半導体素子
60:蓋部材