(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024124824
(43)【公開日】2024-09-13
(54)【発明の名称】情報処理装置、システム、端末、情報処理方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 10/00 20230101AFI20240906BHJP
【FI】
G06Q10/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023032757
(22)【出願日】2023-03-03
(71)【出願人】
【識別番号】000232254
【氏名又は名称】日本電気通信システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】阿部 憲一
(72)【発明者】
【氏名】日光 聡
(72)【発明者】
【氏名】赤川 敬
【テーマコード(参考)】
5L010
5L049
【Fターム(参考)】
5L010AA00
5L049AA00
(57)【要約】
【課題】作業者が行った作業行動に関する情報を含む多様な情報を用いて、スキル評価を行える情報処理装置、システム、端末、情報処理方法、およびプログラムを提供する。
【解決手段】情報処理装置10は、第1取得部110、項目スコア特定部120、およびスキル特定部130を備える。第1取得部110は、作業者が行った作業行動に関する作業行動情報を少なくとも含む作業関連情報を取得する。項目スコア特定部120は、作業関連情報を用いて、複数の評価項目それぞれの項目スコアを特定する。スキル特定部130は、複数の項目スコアを用いて演算することで、作業者の作業に関するスキルの高さを示すスキル情報を特定する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業者が行った作業行動に関する作業行動情報を少なくとも含む作業関連情報を取得する第1取得手段と、
前記作業関連情報を用いて、複数の評価項目それぞれの項目スコアを特定する項目スコア特定手段と、
前記複数の項目スコアを用いて演算することで、前記作業者の作業に関するスキルの高さを示すスキル情報を特定するスキル特定手段とを備える
情報処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の情報処理装置において、
前記作業行動情報は、センサを用いて得られたセンサデータを含む
情報処理装置。
【請求項3】
請求項2に記載の情報処理装置において、
前記項目スコア特定手段は、前記センサデータを用いて、作業中における前記作業者の視点を特定し、特定した前記視点を示す情報を用いて少なくとも1つの前記項目スコアを特定する
情報処理装置。
【請求項4】
請求項1または2に記載の情報処理装置において、
前記スキル特定手段は、前記複数の項目スコアを用いて演算することで総合スコアを算出し、前記総合スコアに基づいて前記スキル情報を特定し、
当該情報処理装置は、複数の作業者の前記総合スコアの平均、または複数の作業者の前記スキル情報の平均が、所定の条件を満たした場合に、前記項目スコアを特定するためのルールの見直しを促す報知を行う報知手段をさらに備える
情報処理装置。
【請求項5】
請求項1または2に記載の情報処理装置において、
作業者識別情報を取得する第2取得手段と、
前記作業者識別情報に対応する対象作業者に関する、前記スキル情報を対象スキル情報として特定する対象スキル特定手段と、
前記対象スキル情報を用いて、作業を補助するための複数の補助データの中から、前記対象作業者に提示すべき前記補助データを特定する補助データ特定手段と、
特定した前記補助データを端末に送信する送信手段とをさらに備える
情報処理装置。
【請求項6】
請求項5に記載の情報処理装置において、
前記補助データは着目すべき箇所を示す情報を含む
情報処理装置。
【請求項7】
請求項5に記載の情報処理装置と、
前記端末とを備える、
システム。
【請求項8】
対象作業者の作業者識別情報を、請求項5に記載の情報処理装置に送信する送信手段と、
当該情報処理装置から前記補助データを取得する補助データ取得手段と、
取得した前記補助データを出力する補助データ出力手段とを備える
端末。
【請求項9】
一以上のコンピュータが、
作業者が行った作業行動に関する作業行動情報を少なくとも含む作業関連情報を取得し、
前記作業関連情報を用いて、複数の評価項目それぞれの項目スコアを特定し、
前記複数の項目スコアを用いて演算することで、前記作業者の作業に関するスキルの高さを示すスキル情報を特定する
情報処理方法。
【請求項10】
コンピュータを、
作業者が行った作業行動に関する作業行動情報を少なくとも含む作業関連情報を取得する第1取得手段、
前記作業関連情報を用いて、複数の評価項目それぞれの項目スコアを特定する項目スコア特定手段、および
前記複数の項目スコアを用いて演算することで、前記作業者の作業に関するスキルの高さを示すスキル情報を特定するスキル特定手段として機能させる
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置、システム、端末、情報処理方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
点検や修繕等の作業を効率化するためには、作業者のスキルを正しく把握し、底上げすることが必要である。
【0003】
特許文献1には、保守作業者のスキルレベルを判定して、そのスキルレベルに合う保守マニュアルの情報を提供することが記載されている。
【0004】
特許文献2には、センサデータから暗黙的特徴量を得ること、および、得られた暗黙的特徴量に基づいて技能レベルを判定することが記載されている。
【0005】
特許文献3には、スキル、資格、標準業務実績および研修受講実績に関する情報に基づいて技術者の評点を求めることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007-34712号公報
【特許文献2】国際公開第2022/034685号
【特許文献3】特開2004-133860号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した特許文献1には、保守作業者が作業標準時間内に作業を完了したか否かに応じてスキルレベルを上げ下げすること等が記載されている。また、特許文献2には、センサデータを学習モデルに入力して暗黙的特徴量を得ることが記載されている。しかし、特許文献1および特許文献2に記載の技術では、多様なデータを用いたスキル評価を行う点で、改良の余地があった。
【0008】
上述した特許文献3には、スキル項目ごとに評点が予め定められており、合致するスキル項目の評点を合計することにより評点を求めることが記載されている。しかし、特許文献3に記載の評価方法では、たとえば過去の作業における具体的な行動を反映させた評価はできなかった。
【0009】
本発明の目的の一例は、上述した課題を鑑み、作業者が行った作業行動に関する情報を含む多様な情報を用いて、スキル評価を行える情報処理装置、システム、端末、情報処理方法、およびプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様によれば、
作業者が行った作業行動に関する作業行動情報を少なくとも含む作業関連情報を取得する第1取得手段と、
前記作業関連情報を用いて、複数の評価項目それぞれの項目スコアを特定する項目スコア特定手段と、
前記複数の項目スコアを用いて演算することで、前記作業者の作業に関するスキルの高さを示すスキル情報を特定するスキル特定手段とを備える
第1の情報処理装置が提供される。
【0011】
本発明の一態様によれば、
作業者が行った作業行動に関する作業行動情報を少なくとも含む作業関連情報を取得する第1取得手段と、
前記作業関連情報を用いて、複数の評価項目それぞれの項目スコアを特定する項目スコア特定手段と、
前記複数の項目スコアを用いて演算することで、前記作業者の作業に関するスキルの高さを示すスキル情報を特定するスキル特定手段と、
作業者識別情報を取得する第2取得手段と、
前記作業者識別情報に対応する対象作業者に関する、前記スキル情報を対象スキル情報として特定する対象スキル特定手段と、
前記対象スキル情報を用いて、作業を補助するための複数の補助データの中から、前記対象作業者に提示すべき前記補助データを特定する補助データ特定手段と、
特定した前記補助データを端末に送信する送信手段と
を備える第2の情報処理装置と、
前記端末とを備える、
システムが提供される。
【0012】
本発明の一態様によれば、
対象作業者の作業者識別情報を、上記第2の情報処理装置に送信する送信手段と、
当該第2の情報処理装置から前記補助データを取得する補助データ取得手段と、
取得した前記補助データを出力する補助データ出力手段とを備える
端末が提供される。
【0013】
本発明の一態様によれば、
一以上のコンピュータが、
作業者が行った作業行動に関する作業行動情報を少なくとも含む作業関連情報を取得し、
前記作業関連情報を用いて、複数の評価項目それぞれの項目スコアを特定し、
前記複数の項目スコアを用いて演算することで、前記作業者の作業に関するスキルの高さを示すスキル情報を特定する
情報処理方法が提供される。
【0014】
本発明の一態様によれば、
コンピュータを、
作業者が行った作業行動に関する作業行動情報を少なくとも含む作業関連情報を取得する第1取得手段、
前記作業関連情報を用いて、複数の評価項目それぞれの項目スコアを特定する項目スコア特定手段、および
前記複数の項目スコアを用いて演算することで、前記作業者の作業に関するスキルの高さを示すスキル情報を特定するスキル特定手段として機能させる
プログラムが提供される。
【発明の効果】
【0015】
本発明の一態様によれば、作業者が行った作業行動に関する情報を含む多様な情報を用いて、スキル評価を行える情報処理装置、システム、端末、情報処理方法、およびプログラムが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】第1の実施形態に係る情報処理装置の概要を示す図である。
【
図2】第1の実施形態に係る情報処理方法の概要を示す図である。
【
図3】第1の実施形態に係る情報処理装置の機能構成を例示する図である。
【
図4】作業項目記憶部に保持された作業項目データベースの構成を例示する図である。
【
図5】作業項目記憶部に保持された作業者データベースの構成を例示する図である。
【
図6】ルール記憶部に保持されたルールデータベースの構成を例示する図である。
【
図7】項目スコア特定部が項目スコアを特定する処理の流れを例示するフローチャートである。
【
図8】スキル情報記憶部に保持される情報の構成を例示する図である。
【
図9】情報処理装置を実現するための計算機を例示する図である。
【
図10】第2の実施形態に係るシステムの概要を示す図である。
【
図11】第2の実施形態に係る端末の概要を示す図である。
【
図12】第2の実施形態に係る情報処理装置の機能構成を例示する図である。
【
図13】第2の実施形態に係る端末の機能構成を例示する図である。
【
図14】補助データ記憶部に保持された情報の構成を例示する図である。
【
図15】第2の実施形態に係るシステムが実行する補助方法の流れを例示するフローチャートである。
【
図16】第3の実施形態に係る情報処理装置の機能構成を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。なお、全ての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0018】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る情報処理装置10の概要を示す図である。情報処理装置10は、第1取得部110、項目スコア特定部120、およびスキル特定部130を備える。第1取得部110は、作業者が行った作業行動に関する作業行動情報を少なくとも含む作業関連情報を取得する。項目スコア特定部120は、作業関連情報を用いて、複数の評価項目それぞれの項目スコアを特定する。スキル特定部130は、複数の項目スコアを用いて演算することで、作業者の作業に関するスキルの高さを示すスキル情報を特定する。
【0019】
この情報処理装置10によれば、作業者が行った作業行動に関する情報を含む多様な情報を用いて、スキル評価を行える。
【0020】
図2は、本実施形態に係る情報処理方法の概要を示す図である。本実施形態に係る情報処理方法は、ステップS10、ステップS20、およびステップS30を含む。ステップS10では、一以上のコンピュータが、作業者が行った作業行動に関する作業行動情報を少なくとも含む作業関連情報を取得する。ステップS20では、一以上のコンピュータが、作業関連情報を用いて、複数の評価項目それぞれの項目スコアを特定する。ステップS30では、一以上のコンピュータが、複数の項目スコアを用いて演算することで、作業者の作業に関するスキルの高さを示すスキル情報を特定する。
【0021】
この情報処理方法によれば、作業者が行った作業行動に関する情報を含む多様な情報を用いて、スキル評価を行える。
【0022】
以下、本実施形態に係る情報処理装置10および情報処理方法の詳細例について説明する。
【0023】
点検や修繕の作業を効率化してコストを低減することが試みられている。一方、点検の結果によっては、再度点検が必要となる場合がある。また、修繕が不完全である場合には、再修繕等のために、余計にコストがかかる場合がある。
【0024】
たとえば、設備点検の経験が浅い作業者が点検した場合には、点検結果の信憑性が低く、再点検となる場合がある。逆に、設備点検に熟練している作業者が点検した場合には、点検結果の信憑性が高く、再点検となることが少ないと言える。同様に、修繕作業においても、作業者の熟練度合いに依存して、修繕結果の信憑性に差が出る。
【0025】
このように、作業者の熟練度合い(スキルレベル)は、点検や修繕の結果(すなわち作業結果)の信憑性に関わる。信憑性が低い作業結果のせいで、再度の点検や修繕が必要となったり、まだ使用可能な設備であっても修繕が行われたりして、コストの増加が問題となる。一方、作業結果の信憑性が高ければ、設備をより長く使用可能となるため、維持にかかるコストの軽減が期待できる。
【0026】
つまり、設備の維持にかかるコストの増加を防ぐには、信憑性の高い作業結果を得ることが必要である。すなわち、作業者のスキルを底上げし、作業結果の信憑性を一定以上に保つことが課題となる。
【0027】
作業者のスキルを底上するためにはたとえば、作業者に、有用な情報を提供することが考えられる。作業者はこの情報を確認しながら作業を行うことができるため、作業手順の誤りを防ぐことができる。このとき、その作業に関する作業者のスキルレベルを正しく把握した上で、適切な情報を提供することが重要である。同じ情報でも、作業にある程度慣れている作業者にとっては有用な情報とは限らないからである。また、提供する情報が作業者にとって高度過ぎる場合には、作業者がその情報を理解しきれなかったり、何が重要なポイントであるか分かりにくかったりするからである。
【0028】
本実施形態に係る情報処理装置10は、作業者の作業に関するスキルの高さを評価する装置である。
【0029】
情報処理装置10は、作業関連情報を用いて、作業者のスキルの高さを評価する。ここで作業関連情報は、複数種類の情報を含んで構成される。本実施形態に係る情報処理装置10は、複数種類の情報それぞれを所定のルールを用いて評価項目ごとの項目スコアに数値化する。そして、複数の項目スコアを統合したスキル情報を特定する。そうすることで、多様な情報を反映させたスキル評価が可能となる。
【0030】
本実施形態において、作業の例としては点検作業、および修繕作業が挙げられる。また、作業の対象設備の例としては、発電、配電等の電力設備、ガス設備、道路や鉄道等の交通設備、製造設備が挙げられる。ただし、作業および対象設備はこれらの例に限定されない。
【0031】
図3は、本実施形態に係る情報処理装置10の機能構成を例示する図である。
図3の例において情報処理装置10は、作業項目記憶部101、ルール記憶部102、およびスキル情報記憶部103をさらに備える。ただし、作業項目記憶部101、ルール記憶部102、およびスキル情報記憶部103のうち一つ以上が情報処理装置10の外部に設けられていてもよい。情報処理装置10の各機能構成部について以下に詳しく説明する。
【0032】
作業項目記憶部101には、作業項目を示す情報が予め保持されている。
【0033】
図4は、作業項目記憶部101に保持された作業項目データベースの構成を例示する図である。作業項目データベースでは、作業内容と、作業項目IDとが対応付けられている。作業項目としてはたとえば、設備Aの点検、設備Bの修繕、設備Cの稼働開始等が挙げられる。この作業項目データベースには作業者が行い得る作業項目が網羅されている。
【0034】
作業項目としては、ある設備の点検や修繕といった大きなカテゴリの項目(以降、「メイン作業項目」と呼ぶ)だけでなく、メイン作業項目に付随する項目(以降、「サブ作業項目」と呼ぶ)も含まれる。また、サブ作業項目はたとえば、各作業に含まれて行われる細分化された作業(たとえばメーターDの読み取りやレバーEの操作)を示す項目である。また、サブ作業項目は、作業時間(作業にかかった時間)といった、作業に関連する項目であってもよい。
【0035】
作業項目には、各作業項目に固有の識別情報(すなわち作業項目ID)が付されている。
図4の例において、メイン作業項目の作業項目IDに枝番を付すことで、そのメイン作業項目の作業に含まれる細分化された作業や、作業時間等の作業に付随する項目を示すサブ作業項目の作業項目IDとしている。すなわち、枝番のない作業項目IDはメイン作業項目の作業項目IDであり、枝番のある作業項目IDはサブ作業項目の作業項目IDである。
【0036】
図4に例示する作業項目データベースではさらに、作業の目的を示す「作業カテゴリ」と、作業対象を示すサブ作業カテゴリが各作業項目IDに関連付けられている。
【0037】
作業項目記憶部101にはさらに、複数の作業者の情報が予め保持されていてもよい。
【0038】
図5は、作業項目記憶部101に保持された作業者データベースの構成を例示する図である。作業者データベースでは、作業者名と、作業者IDとが対応付けられている。
図5の例では、作業者データベースにおいて、各作業者IDにはさらに、作業者の所属先を示す情報が関連付けられている。なお、作業者データベースは、作業項目記憶部101とは異なる記憶部に保持されていてもよい。
【0039】
ルール記憶部102には、項目スコアを特定するために用いるルールを示す情報が、予め保持されている。
【0040】
図6は、ルール記憶部102に保持されたルールデータベースの構成を例示する図である。
図6の例では、複数の作業項目IDのそれぞれにルールを示す情報が関連付けられている。すなわち、作業項目別に項目スコアを特定するためのルールが定められている。なお、上述した作業項目データベースで定められた作業項目のうち、全ての作業項目についてルールが定められている必要はない。すなわち、一部の作業項目についてはルールが定められていなくてもよい。たとえば、サブ作業項目にのみルールが定められ、メイン作業項目については、ルールが定められていなくてもよい。ルールが定められている作業項目は、評価項目であるということもできる。すなわち、項目スコア特定部120は、評価項目ごとに定められたルールを用いて、項目スコアを特定すると言える。
【0041】
図6の例において、各作業項目IDには、「評価方法」、一つ以上の「評価基準」、「変換基準」、および「分析内容」を示す情報が関連付けられている。
【0042】
「評価方法」は、評価の基本ルールを示す。評価全体の流れが基本ルールとして予め複数定められており、この「評価方法」の内容に従って、いずれの基本ルールを用いるかが特定される。
【0043】
「評価基準」は、項目スコアを特定するために用いる基準である。たとえば、資格の評価を行う場合には、資格と比較すべき基準レベルを評価基準とすることができる。なお、評価基準は二つ以下に限定されず、一つの作業項目IDに対して三つ以上定められていてもよい。各評価基準の使用方法は、基本ルールごとに定められている。基本ルールと評価基準とを用いて、項目スコアが特定される。評価基準の他の例については後述する。
【0044】
「変換基準」は作業関連情報に含まれる情報から変換によってどのような数値を得るべきかを示す。「分析内容」は、作業関連情報に含まれる情報に対してどのような分析をすべきかを示す。
【0045】
各ルールに対応する具体的な項目スコアの特定方法は、詳しく後述する。
【0046】
第1取得部110は、作業関連情報を取得する(ステップS10)。作業関連情報にはたとえば、作業者のグレードに関するグレード情報、作業者のキャリアに関するキャリア情報、作業者が行った作業行動に関する作業行動情報、および作業者が行った作業結果に関する作業結果情報が含まれうる。ただし、本実施形態において作業関連情報は、必ずしもこれらの全ての情報を含む必要はなく、少なくとも作業行動情報を含めばよい。作業関連情報は作業行動情報に加えて、グレード情報、キャリア情報、および作業結果情報のうち一以上をさらに含むことができる。
【0047】
グレード情報はたとえば、作業者の資格および技能レベルの少なくとも一方を示す。技能レベルはたとえば、事前の技能試験等の結果に基づいて認定される等級である。キャリア情報はたとえば、作業者の役職、年齢、業務経験年数、作業実施回数のうち、一以上を示す。作業実施回数は、複数の作業項目のそれぞれに関する回数であり得る。作業結果情報はたとえば、作業結果報告書に含まれる内容およびエビデンス文書に含まれる内容の少なくともいずれかを示す。なお、作業実施回数は、キャリア情報として作業関連情報に含まれる代わりに、作業結果情報として作業関連情報に含まれてもよい。
【0048】
入力者は、情報処理装置10に接続されたキーボードやマウス等の入力装置を用いて、作業者のグレード(資格、技能レベル)や作業者のキャリア(役職、年齢、経験年数、作業実施回数)情報等の入力を行える。入力者は作業者、または作業者以外の者(たとえば監督者)である。第1取得部110は、入力者が情報処理装置10に入力した情報を、グレード情報、およびキャリア情報として取得することができる。
【0049】
入力者は、情報処理装置10に接続されたキーボードやマウス等の入力装置を用いて、作業結果報告書やエビデンス文書に記載された作業結果(「OK」または「NG」や、読み取り値、測定数値等)の入力を行える。第1取得部110はたとえば、入力者が情報処理装置10に入力した情報を、作業結果情報として取得することができる。その他の例として、作業結果は、作業結果報告書やエビデンス文書等の文書データから抽出されてもよい。作業結果の抽出はたとえば、OCR(Optical Character Recognition光学的文字認識)などを利用して行える。第1取得部110は、文書データを取得して、作業結果を抽出することにより、作業結果情報を取得してもよいし、他の装置で抽出された作業結果を作業結果情報として取得してもよい。また、第1取得部110が作業実施回数を作業結果情報として取得する場合、たとえば、入力された作業結果の数を特定の作業ごとにカウントすることで、第1取得部110は作業実施回数を特定できる。
【0050】
作業行動情報はたとえば、作業にかかった時間、および作業中の行動の少なくとも一方を示す。作業にかかった時間は、点検等の作業全体にかかった時間であってもよいし、メーター読み取り等、点検等に含まれる所定の一部作業にかかった時間であってもよい。作業中の行動としてはたとえば、作業時の視点(または視線)や作業時の姿勢、および作業時の手の動かし方が挙げられる。作業行動情報は、センサを用いて得られたセンサデータを含むことができる。
【0051】
第1取得部110はたとえば、入力者が情報処理装置10に入力した情報を、作業行動情報として取得する。入力者はたとえば、作業者の作業行動開始から終了までの時間(作業にかかった時間)を測った結果を、情報処理装置10に接続されたキーボードやマウス等の入力装置を用いて、情報処理装置10に入力することができる。
【0052】
その他の例として、第1取得部110は、センサで得られたセンサデータを作業行動情報として取得してもよい。第1取得部110は、センサまたは他の装置からセンサデータを取得することができる。センサの例には、カメラ、および3Dセンサが含まれる。カメラで得られるデータは、たとえば画像である。この画像は、動画を構成する画像(すなわちフレーム画像)であってもよい。センサデータは動画データであってもよい。3Dセンサで得られるデータは、たとえば三次元の点群データである。センサデータは作業中に得られたデータであり、センサデータが画像または点群データである場合、画像または点群データには、作業者が含まれることが好ましい。
【0053】
第1取得部110が取得するグレード情報、キャリア情報、作業行動情報、および作業結果情報には、どの作業者に関する情報であるかを区別できるよう、作業者IDが付されている。作業者IDは作業者固有の識別情報である。また、第1取得部110が取得する作業行動情報、および作業結果情報には、どの作業に関する情報であるかを区別できるよう、作業項目IDが付されている。第1取得部110が取得するグレード情報が特定の作業に関する資格等である場合、グレード情報にも作業項目IDが付されていてもよい。作業項目IDについては、詳しく後述する。特定の作業項目のみならず、全ての作業項目に関連するキャリア情報やグレード情報には、たとえば、全ての作業項目に共通することを示すIDが、作業項目IDとして付されてもよい。ただし、その際、情報の種類(役職、年齢等)ごとに異なる作業項目IDが付される。
【0054】
たとえば、入力者は、情報処理装置10に各情報を入力する際に、作業者および作業項目を合わせて登録する。ここで、作業項目記憶部101に情報が蓄積されている作業者のリストや作業項目のリストが、情報処理装置10に接続されたディスプレイに表示され、入力者がいずれかの作業者や作業項目を選択することで登録ができてもよい。登録された作業者および作業項目にそれぞれ対応する作業者IDおよび作業項目IDが、第1取得部110が取得する各情報に付される。なお、第1取得部110が取得する情報にはメイン作業項目の作業項目IDのみが付され、メイン作業項目に付随するサブ作業項目の作業項目IDが、情報の種類に基づいて自動的に付されてもよい。
【0055】
図4の例において具体的には、設備Aの点検作業にかかった時間に対して、「0001-0001」という作業項目IDが付される。設備Aのメーターaを読み取った読み取り値に対して「0001-0002」という作業項目IDが付される。作業中の作業者の行動を測定して得られたセンサデータ(たとえば作業中の作業者を撮影して得られた動画)に対して「0001-0003」という作業項目IDが付される。たとえばセンサデータは複数の評価項目に関連する場合もあることから、一つの情報に対して複数の作業項目IDが付されてもよい。
【0056】
以上の通り、作業関連情報は複数の情報を含んで構成され、複数の情報のそれぞれには、作業項目IDが付される。
【0057】
第1取得部110が作業関連情報を取得すると、項目スコア特定部120は、作業関連情報を用いて、複数の評価項目それぞれの項目スコアを特定する(ステップS20)。項目スコア特定部120は、作業関連情報に含まれる情報ごと、言い換えると、第1取得部110が取得した情報に付された作業項目IDごとに、以下の処理を行って項目スコアを特定する。
【0058】
図7は、項目スコア特定部120が項目スコアを特定する処理の流れを例示するフローチャートである。項目スコア特定部120は、ルールデータベース中、作業関連情報に含まれる情報に付された作業項目ID(「対象作業項目ID」と呼ぶ)に、対応付けられた情報を参照する。
【0059】
まず、項目スコア特定部120は、ルールデータベース中、対象作業項目IDに対応付けられた「分析内容」を参照し、分析の要否を特定する(ステップS101)。「分析内容」に何らかの分析内容が示されている場合(ステップS101のYes)には、項目スコア特定部120はその内容に従い分析を行う(ステップS102)。分析はたとえば、センサデータに対して行われる。分析により、行動データが得られる。行動データは、作業時の視点(または視線)や作業時の姿勢、作業時の手の動かし方などを示すデータである。行動データは、センサデータから得られる特徴量であってもよい。センサデータを分析して行動データを得る方法としては、既存の任意の技術を用いることができる。行動データは機械学習が行われた学習済みモデルを用いて生成されてもよい。
【0060】
一方、対象作業項目IDに対応付けられた「分析内容」が「なし」である場合(ステップS101のNo)には、項目スコア特定部120は何ら分析処理を行わない。
【0061】
次いで、項目スコア特定部120は、ルールデータベース中、対象作業項目IDに対応付けられた「変換基準」を参照し、変換の要否を特定する(ステップS103)。「変換基準」に何らかの変換基準が示されている場合(ステップS103のYes)には、項目スコア特定部120は、その内容に従い変換を行う(ステップS104)。この変換は、作業関連情報に含まれ対象作業項目IDに対応付けられた情報に対して、または、ステップS102で行われた分析の結果に対して行われる。
【0062】
一方、対象作業項目IDに対応付けられた「変換基準」が「なし」である場合(ステップS103のNo)には、項目スコア特定部120は何ら変換処理を行わない。
【0063】
そして、項目スコア特定部120は、ルールデータベース中、対象作業項目IDに対応付けられた「評価方法」に従って評価することで、項目スコアを特定する(ステップS105)。項目スコアは数値である。項目スコアはたとえば、0以上1以下の数値であるが、項目スコアの範囲は特に限定されない。例として、項目スコアが大きいほど、その作業項目のスキルの程度が高いことを示す。項目スコアを特定する際、ルールデータベースに示された評価基準が用いられる。項目スコア特定部120は、作業関連情報に含まれ対象作業項目IDに対応付けられた情報、または、ステップS102で行われた分析の結果、または、ステップS104で行われた変換後のデータに対して、評価基準を適用することで、項目スコアを得る。ステップS105を終えた時点で、対象作業項目IDに対応付けられた情報が評価された状態となる。
【0064】
以下に、項目スコアを特定する処理について、いくつかの例を挙げて具体的に説明する。
【0065】
<作業時間の例>
項目スコア特定部120は、作業関連情報に作業行動情報として含まれる、作業にかかった時間(作業時間)を用いて、少なくとも1つの項目スコアを特定することができる。
【0066】
作業時間は短いほどスキルの程度が高いと言える。項目スコア特定部120は、作業時間が短いほど、高い項目スコアを特定する。以下に詳しく説明する。
【0067】
作業時間には、「0001-0001」という作業項目IDが付される。項目スコア特定部120は、作業時間に対して分析や変換を行わない。
【0068】
そして、項目スコア特定部120は、作業時間に対して「偏差値評価」という評価方法を実施する。項目スコア特定部120は、作業関連情報を用いて偏差値を算出し、算出した偏差値を用いて少なくとも1つの項目スコアを特定することができる。詳しくは、「偏差値評価」では、該当する作業項目に関し、同様にして得られた複数の作業者の値における、対象の作業者について得られた値の偏差値を算出する。そして、項目スコア特定部120は、算出された偏差値に基づいて項目スコアを特定する。この評価方法では、対象の作業者に対して得られた値が、大きいほど、または小さいほど、高い項目スコアが得られる。なお、「複数の作業者の値」とはたとえば、作業者データベースに登録されている作業者のうち、標準偏差の算出に利用可能な情報が存在する全作業者の値である。
【0069】
本例では、ルール記憶部102には、複数の作業者について得られた作業時間の標準偏差および平均値が、作業項目IDに関連付けられて予め保持されている。項目スコア特定部120はその標準偏差と平均値を用いて、対象の作業者について得られた作業時間の偏差値を算出する。
【0070】
ルールデータベースには、評価基準1として、偏差値が、高いほど高い項目スコアとするか、低いほど高い項目スコアとするかが示されている。例では評価基準1に「低」と示されているため、項目スコア特定部120は偏差値が低いほど項目スコアが高くなるよう、項目スコアを特定する。
【0071】
項目スコア特定部120は、たとえば、偏差値に-1を掛けた値を項目スコアとしてもよいし、所定の値(たとえば100)から偏差値を引いた値を項目スコアとしてもよい。または、項目スコア特定部120は、項目スコアが0以上1以下の範囲内で特定されるように、偏差値を線形変換してもよい。
【0072】
一方、評価基準1に「高」と示されている場合には、項目スコア特定部120は偏差値が高いほど項目スコアが高くなるよう、項目スコアを特定する。偏差値が高いほど項目スコアを高くする場合、項目スコア特定部120は偏差値をそのまま項目スコアとしてもよいし、項目スコアが0以上1以下の範囲内で特定されるように、偏差値を線形変換してもよい。
【0073】
たとえば、項目スコア特定部120が、作業関連情報にキャリア情報または作業結果情報として含まれる作業実施回数を用いて、項目スコアを特定する場合にも、「偏差値評価」を用いることが好適である。ただし、作業実施回数が多いほど、すなわちその作業を数多くこなしている人ほど、スキルの程度が高いと言えるため、項目スコア特定部120は、偏差値が高いほど項目スコアを高くする。
【0074】
なお、対象の作業者に対して得られた値(たとえば作業時間や作業実施回数)が、大きいほど、または小さいほど、項目スコアを高くする場合、その値に直接所定の線形変換を施すことにより項目スコアを算出してもよい。
【0075】
<視点の例>
項目スコア特定部120は、作業関連情報に作業行動情報として含まれるセンサデータを用いて、作業中における作業者の視点を特定する。そして、特定した視点を示す情報を用いて少なくとも1つの項目スコアを特定することができる。
【0076】
作業ごとに、その作業中の作業者が注目すべき位置が存在する。すなわち、作業者の視点には最適点が存在する。項目スコア特定部120は、特定した視点が予め定められた最適点に近いほど、高い項目スコアを特定する。以下に詳しく説明する。
【0077】
作業中の作業者を撮影して得たセンサデータには、「0001-0003」という作業項目IDが付される。センサデータはたとえば画像である。
図6の例において項目スコア特定部120は、センサデータを分析して作業者の視点を示す行動データを生成する(ステップS102に相当)。行動データは三次元座標で表される視点の位置である。座標の基準は作業者の位置に基づいてもよいし、作業対象の設備等の位置に基づいてもよい。
【0078】
次いで項目スコア特定部120は、行動データを視点の向きを示す情報に変換する(ステップS104に相当)。視点の向きはたとえば、作業者を基準とした向きであり、二方向(たとえば水平方向および上下方向)の角度の組み合わせで示される。
【0079】
そして、項目スコア特定部120は、「偏差値評価(絶対値)」という評価方法を実施する(ステップS105に相当)。「偏差値評価(絶対値)」では、対象の作業者に対して得られた情報と、参照情報との差の絶対値を算出する。そして、該当する作業項目に関し、同様にして得られた複数の作業者の絶対値における、対象の作業者の絶対値の偏差値を算出する。この評価方法では、対象の作業者に対して得られた情報が、所定の参照情報に近いほど、高い項目スコアが得られる。
【0080】
すなわち、本例では、項目スコア特定部120は、ステップS104で得られた視点の向きと、参照情報として予め定められた視点の向きとの差を角度(絶対値)として算出する。この参照情報は、ルールデータベースにおいて評価基準2として示されている。
【0081】
また、ルール記憶部102には、複数の作業者について同様に得られた角度(絶対値)の標準偏差および平均値が、作業項目IDに関連付けられて予め保持されている。項目スコア特定部120はその標準偏差と平均値を用いて、対象の作業者について得られた角度の偏差値を算出する。
【0082】
そして、項目スコア特定部120は、得られた偏差値に基づいて上述した「偏差値評価」と同様に項目スコアを特定する。本例では評価基準1に「低」と示されているため、偏差値が低いほど項目スコアは高くなる。なお、「偏差値評価(絶対値)」では、評価基準1は常に「低」であるため、この評価基準はルールデータベースに示されなくてもよい。
【0083】
なお、視点の評価には、視点と最適点との距離が用いられてもよい。すなわち項目スコア特定部120は、ステップS105において、行動データに示される視点とその作業項目について予め定められた参照点との距離を算出する。参照点は、上述した作業者の視点の最適点に相当する。参照点も視点と同様、三次元座標で表される。項目スコア特定部120は、複数の作業者について同様に得られた距離における、対象の作業者について得られた距離の偏差値を算出する。そして、角度の偏差値を用いる場合と同様にして項目スコアを特定することができる。
【0084】
<メーター読取値の例>
上述した通り、作業関連情報はたとえば、作業結果情報として作業者によるメーター読取値を含む。項目スコア特定部120はそのメーター読取値を用い、「偏差値評価(絶対値)」の方法で少なくとも1つの項目スコアを特定することができる。以下に詳しく説明する。
【0085】
たとえば、設備Aにおけるメーターaを作業員が読み取った読取値には、「0001-0002」という作業項目IDが付される。
図6の例において、項目スコア特定部120は、読取値に対して分析や変換を行わない。
【0086】
そして、項目スコア特定部120は、読取値に対して「偏差値評価(絶対値)」の評価方法を実施する。すなわち、本例では、項目スコア特定部120は、作業関連情報に示されたメーター読取値と、ルールデータベースにおいて評価基準2として示された参照値との差を絶対値として算出する。また、ルール記憶部102には、複数の作業者について得られた絶対値の標準偏差および平均値が、作業項目IDに関連付けられて予め保持されている。項目スコア特定部120はその標準偏差と平均値を用いて、対象の作業者について得られた絶対値の偏差値を算出する。そして、項目スコア特定部120は、得られた偏差値に基づいて、上述したように項目スコアを特定する。
【0087】
<資格の例>
項目スコア特定部120は、作業関連情報にグレード情報として含まれる、資格を示す情報を用いて、少なくとも1つの項目スコアを特定することができる。以下に詳しく説明する。
【0088】
図4や
図6には示されていないが、資格にも何らかの作業項目IDが付される。そして、項目スコア特定部120は、ルールデータベースの内容に従い、資格を評価した項目スコアを特定する。
【0089】
資格は、1級から5級(1級が最もグレードが高い)のいずれかであるとする。項目スコア特定部120は、資格を示す情報に対して分析や変換を行わない。上述した通り、ルールデータベースには評価基準として、資格と比較すべき基準レベルが示されている。たとえば、最大値を示す基準レベルとして1級が、最小値を示す基準レベルとして5級が定められている。この場合、項目スコア特定部120は、5級から1級までが0から1までの項目スコアに対応するような尺度で、対象の作業者の資格を項目スコアに変換する。すなわち、資格が5級である場合、項目スコアが0となり、資格が1級である場合、項目スコアが1となる。2級から4級は、線形変換で項目スコアに変換することができる。すなわち、資格が2級である場合に0.25の項目スコア、資格が3級である場合に0.5の項目スコア、資格が4級である場合に0.75の項目スコアが特定される。
【0090】
以上のようにして、作業関連情報に含まれる複数の情報を用いて、複数の項目スコアが特定される。複数の情報のそれぞれが項目スコアとして数値化されることにより、それらを統合した総合的なスキル評価が可能となる。
【0091】
スキル特定部130が行う処理について、以下に説明する。
【0092】
スキル特定部130は、複数の項目スコアを用いて演算することで総合スコアを算出する。総合スコアの算出のためには、情報の種類ごとの重みが予め定められている。そして、総合スコアは、重み付け和として算出される。たとえば、グレード情報について0.3、キャリア情報について0.1、作業行動情報について0.3、および作業結果情報について0.3の重みを予め定めることができる。なお、以下の処理は、メイン作業項目ごとに行われる。たとえば、「設備Aの点検」というメイン作業項目に対して、一つの総合スコアが算出され、一つのスキル情報が特定される。
【0093】
ここでたとえば、作業行動情報について、複数の項目スコアが特定されている場合、スキル特定部130は、それらの項目スコアの平均値を算出する。そして、算出された平均値を、作業行動情報についてのスコアとする。グレード情報、キャリア情報、作業結果情報についても同様である。そうすることで、情報の種類ごとに一つのスコアが得られる。ただし、情報の種類(作業行動情報、グレード情報、キャリア情報、作業結果情報)ごとではなく、総合スコアの算出に用いられる項目スコアごとに、重みが予め定められていてもよい。この場合、平均値の算出は不要である。
【0094】
スキル特定部130は、複数のスコア(または複数の項目スコア)と、予め定められた複数の重みとを用い、重み付け和を総合スコアとして算出する。総合スコアは0以上1以下の数値として得られる。
【0095】
スキル特定部130は、総合スコアを用いてスキル情報を特定する。スキル特定部130は、総合スコアをそのままスキル情報としてもよい。または、スキル特定部130は、たとえば総合スコアに5を乗じて0以上5以下の数値に変換してもよい。さらに、スキルレベルとして分かりやすくするため、スキル特定部130は、所定の基準値を用いて総合スコアを5段階等のレベルに変換したものをスキル情報としてもよい。スキル情報は、数字ではなく、アルファベット等の記号であってもよい。スキル情報の形式は特に限定されず、-1以上1以下の数値であってもよい。また、スキル情報は、たとえばグレード情報、キャリア情報、作業行動情報、作業結果情報等の各スコアに基づく、2軸や複数軸で示される情報であってもよい。
【0096】
スキル特定部130は、特定したスキル情報に作業者IDおよび(メイン作業項目の)作業項目IDを関連付ける。スキル特定部130は、たとえばスキル情報記憶部103にスキル情報、作業者ID、および作業項目IDを保持させる。スキル特定部130は、他の装置に対してスキル情報、作業者ID、および作業項目IDを出力してもよい。スキル特定部130は、特定したスキル情報を情報処理装置10のディスプレイ等に表示させてもよいし、電子メールや電子的なメッセージで所定の宛先に送信してもよい。
【0097】
図8は、スキル情報記憶部103に保持される情報の構成を例示する図である。
図8の例において、スキル情報は、5段階のスキルレベルで示されている。このようにスキル情報記憶部103に複数の作業者のスキル情報が蓄積されることで、スキルデータベースが構築される。
【0098】
情報処理装置10のハードウエア構成について以下に説明する。情報処理装置10の各機能構成部(第1取得部110、項目スコア特定部120、およびスキル特定部130)は、各機能構成部を実現するハードウエア(例:ハードワイヤードされた電子回路など)で実現されてもよいし、ハードウエアとソフトウエアとの組み合わせ(例:電子回路とそれを制御するプログラムの組み合わせなど)で実現されてもよい。以下、情報処理装置10の各機能構成部がハードウエアとソフトウエアとの組み合わせで実現される場合について、さらに説明する。
【0099】
図9は、情報処理装置10を実現するための計算機1000を例示する図である。計算機1000は任意の計算機である。たとえば計算機1000は、SoC(System On Chip)、Personal Computer(PC)、サーバマシン、タブレット端末、またはスマートフォンなどである。計算機1000は、情報処理装置10を実現するために設計された専用の計算機であってもよいし、汎用の計算機であってもよい。また、情報処理装置10は、一つの計算機1000で実現されても良いし、複数の計算機1000の組み合わせにより実現されても良い。
【0100】
計算機1000は、バス1020、プロセッサ1040、メモリ1060、ストレージデバイス1080、入出力インタフェース1100、およびネットワークインタフェース1120を有する。バス1020は、プロセッサ1040、メモリ1060、ストレージデバイス1080、入出力インタフェース1100、およびネットワークインタフェース1120が、相互にデータを送受信するためのデータ伝送路である。ただし、プロセッサ1040などを互いに接続する方法は、バス接続に限定されない。プロセッサ1040は、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、または FPGA(Field-Programmable Gate Array)などの種々のプロセッサである。メモリ1060は、RAM(Random Access Memory)などを用いて実現される主記憶装置である。ストレージデバイス1080は、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)、メモリカード、または ROM(Read Only Memory)などを用いて実現される補助記憶装置である。
【0101】
入出力インタフェース1100は、計算機1000と入出力デバイスとを接続するためのインタフェースである。たとえば入出力インタフェース1100には、キーボード、マウス、スキャナなどの入力装置や、ディスプレイなどの出力装置が接続される。入出力インタフェース1100が入力装置や出力装置に接続する方法は、無線接続であってもよいし、有線接続であってもよい。
【0102】
ネットワークインタフェース1120は、計算機1000をネットワークに接続するためのインタフェースである。この通信網は、たとえば LAN(Local Area Network)や WAN(Wide Area Network)である。ネットワークインタフェース1120がネットワークに接続する方法は、無線接続であってもよいし、有線接続であってもよい。
【0103】
ストレージデバイス1080は、情報処理装置10の各機能構成部を実現するプログラムモジュールを記憶している。プロセッサ1040は、これら各プログラムモジュールをメモリ1060に読み出して実行することで、各プログラムモジュールに対応する機能を実現する。
【0104】
作業項目記憶部101が情報処理装置10の内部に設けられる場合、たとえば作業項目記憶部101は、ストレージデバイス1080を用いて実現される。ルール記憶部102が情報処理装置10の内部に設けられる場合、たとえばルール記憶部102は、ストレージデバイス1080を用いて実現される。スキル情報記憶部103が情報処理装置10の内部に設けられる場合、たとえばスキル情報記憶部103は、ストレージデバイス1080を用いて実現される。
【0105】
計算機1000には、入出力インタフェース1100またはネットワークインタフェース1120を介して、上述したセンサが接続されていてもよい。
【0106】
以上、本実施形態によれば、項目スコア特定部120は、作業関連情報を用いて、複数の評価項目それぞれの項目スコアを特定する。また、作業関連情報は、作業者が行った作業行動に関する作業行動情報を少なくとも含む。したがって、作業者が行った作業行動に関する情報を含む多様な情報を用いて、スキル評価を行える。
【0107】
(変形例)
本変形例は以下に説明する点を除いて、第1の実施形態に係る情報処理装置10と同じである。
【0108】
本変形例において、スキル特定部130は、項目スコア特定部120で特定された各項目スコアに作業者IDおよび(サブ作業項目の)作業項目IDを関連付ける。そして、スキル情報記憶部103に、一以上の項目スコアをスキル情報等と共に保持させる。この際、スキル特定部130は、項目スコアを、スキル情報と同様、所定の範囲内の数値や、5段階等のレベルに変換したものをスキル情報記憶部103に保持させてもよい。すなわち、スキルデータベースには、複数の項目スコアに基づく情報が示される。
【0109】
また、本変形例において、スキル特定部130は、各項目スコアを評価情報としてさらに出力してもよい。スキル特定部130は、評価情報を情報処理装置10のディスプレイ等に表示させてもよいし、電子メールや電子的なメッセージで所定の宛先に送信してもよい。
【0110】
本変形例においては第1の実施形態と同様の作用および効果が得られる。加えて、本変形例によれば、スキル特定部130は、各項目スコアを評価情報としてさらに出力する。したがって、作業者や監督者は、より詳しい作業項目ごとに改善や補助の要否を把握することができる。ひいては、作業者の効率的なスキル向上を図れる。
【0111】
(第2の実施形態)
図10は、第2の実施形態に係るシステム50の概要を示す図である。本実施形態に係るシステム50は、情報処理装置10と、端末20とを備える。
【0112】
図11は、本実施形態に係る端末20の概要を示す図である。本実施形態に係る端末20は、送信部210、補助データ取得部220、および補助データ出力部230を備える。送信部210は、対象作業者の作業者識別情報を、本実施形態に係る情報処理装置10に送信する。補助データ取得部220は、情報処理装置10から補助データを取得する。補助データ出力部230は、取得した補助データを出力する。
【0113】
図12は、本実施形態に係る情報処理装置10の機能構成を例示する図である。本実施形態に係る情報処理装置10は、第2取得部150、対象スキル特定部160、補助データ特定部170、および送信部180をさらに備える点を除いて、第1の実施形態に係る情報処理装置10と同じである。
【0114】
第2取得部150は、作業者識別情報を取得する。対象スキル特定部160は、作業者識別情報に対応する対象作業者に関する、スキル情報を対象スキル情報として特定する。補助データ特定部170は、対象スキル情報を用いて、作業を補助するための複数の補助データの中から、対象作業者に提示すべき補助データを特定する。送信部180は、特定した補助データを端末20に送信する。
【0115】
図12の例において情報処理装置10は補助データ記憶部104をさらに備える。ただし、補助データ記憶部104は情報処理装置10の外部に設けられていてもよい。
【0116】
本実施形態に係るシステム50によれば、作業者のスキルに応じた補助が可能となり、作業の質向上、作業時間の短縮、スキルの向上に資する。
【0117】
図13は、本実施形態に係る端末20の機能構成を例示する図である。本図の例において、端末20は、作業情報取得部200をさらに備える。
【0118】
本実施形態に係る情報処理装置10を実現する計算機のハードウエア構成は、第1の実施形態と同様に、たとえば
図9によって表される。ただし、本実施形態の情報処理装置10を実現する計算機1000のストレージデバイス1080には、本実施形態の第2取得部150、対象スキル特定部160、補助データ特定部170、および送信部180の機能を実現するプログラムモジュールがさらに記憶される。補助データ記憶部104が情報処理装置10の内部に設けられる場合、たとえば補助データ記憶部104は、情報処理装置10を実現する計算機1000のストレージデバイス1080を用いて実現される。
【0119】
本実施形態に係る端末20を実現するための計算機のハードウエア構成は、情報処理装置10と同様に、たとえば
図9によって表される。ただし、本実施形態の端末20を実現する計算機1000のストレージデバイス1080には、本実施形態の端末20の各機能構成部(作業情報取得部200、送信部210、補助データ取得部220、および補助データ出力部230)を実現するプログラムモジュールが記憶されている。後述するように、端末20がメガネ型またはゴーグル型のデバイスである場合、そのデバイスは計算機1000を含んで構成される。
【0120】
情報処理装置10と端末20とは互いに通信可能である。たとえば互いの入出力インタフェース1100またはネットワークインタフェース1120を介して情報処理装置10と端末20が通信できる。
【0121】
端末20によればたとえば、ディスプレイやプロジェクター等による表示およびスピーカーからの音声出力の少なくとも一方により、作業者への情報提供が行われる。端末20はたとえば、頭部に装着するメガネ型またはゴーグル型のデバイスである。この場合、作業者は、端末20を装着して作業を行う。たとえばメガネの透光部に情報が投影されてディスプレイとして機能する。または、端末20に小型のプロジェクターが搭載され、作業者の視野内に情報を投影できてもよい。ただし、端末20は、タブレットやスマートフォン等であってもよい。作業者は、作業を行う際に端末20を用いる。また、端末20はカメラ等のセンサを搭載してもよい。
【0122】
端末20によって、作業者のスキルに合わせた情報、または、スキルを向上させることができる情報が、作業者に提供される。端末20から作業者に情報を提供するためのデータを「補助データ」と呼ぶ。端末20によって提供される情報の例としては、マニュアル、次の作業工程、着目箇所、着目ポイント(たとえば作業を効率的に進めるためのポイント)、作業時の姿勢等が挙げられる。すなわち、補助データは作業マニュアルを含むことができる。また、補助データは、着目すべき箇所を示す情報を含むことができる。そのほか、補助データは、作業工程の説明を順次示すものであってもよい。
【0123】
図14は、補助データ記憶部104に保持された補助データベースの構成を例示する図である。補助データ記憶部104には予め、端末20に提供するための補助データが複数保持されている。補助データベースにおいて各補助データには、作業項目IDと、スキル情報が関連付けられている。したがって、作業項目IDと作業者のスキル情報に基づいて、提供すべき補助データを特定できる。たとえばマニュアルであっても、詳しさや内容が異なる複数種類のマニュアルが準備されており、スキル情報に応じたマニュアルが補助データとして提示される。
【0124】
図14の例において、スキル情報は5段階のスキルレベルで示されている。なお、スキル情報がスコア(たとえば0以上1以下の数値)である場合、補助データには、スキル情報に代えて、スキル情報の範囲(「0以上0.2以下」、「0.2超過0.4以下」等)が関連付けられる。なお、
図14の例において、補助データにはさらに、データ種別が関連付けられている。
【0125】
図15は、本実施形態に係るシステム50が実行する補助方法の流れを例示するフローチャートである。
【0126】
入力者は、作業者の作業開始に先立ち、端末20に対し、作業者ID、および作業項目IDを設定(入力)する。ここで設定する作業者IDは、これから作業を行おうとする作業者(対象作業者)の作業者IDである。ここで設定する作業項目IDは、これから作業を実施しようとするメイン作業項目のIDである。設定のための操作は、端末20に設けられたボタンや、タッチパネル等を用いて行える。この設定は、作業現場で行われてもよいし、作業現場以外で行われてもよい。端末20の作業情報取得部200は、入力された作業者IDおよび作業項目IDを取得する(ステップS201)。第1取得部110は、入力された作業者IDおよび作業項目IDを一時的に保持することができる。
【0127】
端末20がメガネ型、またはゴーグル型のデバイスである場合、作業者は、作業現場において、端末20を装着する。また、作業者は、端末20に対して、作業を開始することを示す所定の操作(たとえば所定のボタンを押す)を行う。
【0128】
作業を開始することを示す所定の操作が行われると、送信部210は、情報処理装置10に対し、作業情報取得部200が取得した作業者IDおよび作業項目IDを送信する(ステップS202)。そして、情報処理装置10の第2取得部150は、端末20から作業者IDおよび作業項目IDを受信することにより、作業者IDおよび作業項目IDを取得する(ステップS203)。次いで、情報処理装置10の対象スキル特定部160は、スキルデータベースと、第2取得部150が取得した作業者IDと、第2取得部150が取得した作業項目IDとを用いて、対象スキル情報を特定する(ステップS204)。対象スキル情報は、スキルデータベースにおいて、第2取得部150が取得した作業者IDおよび作業項目IDに対応するスキル情報である。対象スキル特定部160は、スキル情報記憶部103にアクセスすることでスキルデータベースを確認できる。
【0129】
続くステップS205において、補助データ特定部170は、補助データベースと、対象スキル特定部160が特定した対象スキル情報と、第2取得部150が取得した作業項目IDとを用いて、対象作業者に提示すべき補助データを特定する。対象作業者に提示すべき補助データは、補助データベースにおいて、対象スキル情報および、第2取得部150が取得した作業項目IDに対応する補助データである。対象スキル特定部160は、補助データ記憶部104にアクセスすることで補助データベースを確認し、補助データを読み出すことができる。
【0130】
そして、ステップS206において、送信部180は、補助データ特定部170が特定した補助データを端末20に送信する。端末20の補助データ取得部220は、情報処理装置10から補助データを受信することで、補助データを取得する(ステップS207)。
【0131】
そして、端末20の補助データ出力部230は、補助データ取得部220が取得した補助データを出力する(ステップS208)。すなわち、補助データ出力部230は、端末20のディスプレイ等に補助データを表示させたり、端末20のスピーカーから音声を出力させたりする。このようにして、補助的な情報が作業中の対象作業者に提供される。
【0132】
以上ではメイン作業項目の作業項目IDが入力される場合について説明したが、メイン作業項目の作業項目IDに代えて、または加えて、サブ作業項目の作業項目IDが入力されてもよい。変形例において上述したように、スキルデータベースに複数の項目スコアに基づく情報が示されている場合、サブ作業項目に対応するスキルレベルが存在する。したがって、サブ作業項目の作業項目IDに基づいて、同様の方法で対象作業者に情報が提供される。なお、補助データベースでは、各サブ作業項目の作業項目IDに対して補助データが関連付けられている。たとえばメイン作業項目の作業項目IDに基づいてそのメイン項目の作業全体のマニュアル等が提示されうる。一方、サブ作業項目の作業項目IDに基づいて、より細分化された特定の項目についての情報が提示されうる。
【0133】
なお、端末20による補助データの出力形式は特に限定されない。たとえば、端末20がメガネ型またはゴーグル型のデバイスである場合、端末20に設けられたカメラにより、作業者の視野を特定し、適切な位置に情報が表示されるようにしてもよい。そうすることでたとえば、着目すべきポイントにマークを表示するといったことが可能となる。具体的には、カメラの画角やカメラで撮像された設備等を分析することで、情報を表示すべき位置を特定する。そして、特定された位置に情報が表示される。このような分析は、既存の技術を用いて行える。分析は、情報処理装置10で行われてもよいし、端末20で行われてもよい。分析が情報処理装置10で行われる場合、端末20から情報処理装置10へカメラの画角や画像を送信し、分析結果を情報処理装置10から端末20へ送信する。
【0134】
なお、端末20がカメラ等のセンサを備える場合、端末20に備えられたセンサで得られたデータが、作業行動情報として、作業者のスキル情報特定にさらに用いられてもよい。
【0135】
なお、対象作業者に提供する補助データのレベルは、任意に設定できてもよい。その場合、作業開始に先立ち、入力者は作業者IDに代えてスキル情報を入力する。そして、補助データ特定部170は、補助データベースと、入力されたスキル情報と、第2取得部150が取得した作業項目IDとを用いて、対象作業者に提示すべき補助データを特定する。
【0136】
次に、本実施形態の作用および効果について説明する。本実施形態においては第1の実施形態と同様の作用および効果が得られる。加えて、本実施形態に係るシステム50において、情報処理装置10の補助データ特定部170は、対象スキル情報を用いて、作業を補助するための複数の補助データの中から、対象作業者に提示すべき補助データを特定する。そして、端末20は、特定された補助データを取得して出力する。したがって、作業者のスキルの程度に合わせた情報を、その作業者に提供し、作業者の作業を補助したり、スキルアップを図ったりできる。
【0137】
(第3の実施形態)
図16は、第3の実施形態に係る情報処理装置10の機能構成を例示する図である。本実施形態に係る情報処理装置10は、報知部140を備える点を除いて、第1または第2の実施形態に係る情報処理装置10と同じである。
【0138】
本実施形態に係るスキル特定部130は、第1の実施形態で説明した通り、複数の項目スコアを用いて演算することで総合スコアを算出する。そして、スキル特定部130は、総合スコアに基づいてスキル情報を特定する。そして報知部140は、複数の作業者の総合スコアの平均、または複数の作業者のスキル情報の平均が所定の条件を満たした場合に、項目スコアを算出するためのルールの見直しを促す報知を行う。以下に詳しく説明する。
【0139】
作業者のスキルは変化していくことが想定される。特に第2の実施形態では、補助データが作業者に提供されることでスキルが向上することが期待できる。そのように、複数いる作業者のスキルが全体的に変化していくような場合でも、適切にスキル評価が行える必要がある。
【0140】
本実施形態において、報知部140はたとえば、スキル情報記憶部103に保持された複数の作業者のスキル情報をモニタする。具体的には、報知部140は、所定の日数ごと等、所定のタイミングで、スキル情報記憶部103から複数の作業者のスキル情報を読み出す。そして、報知部140は、読み出したスキル情報の平均を算出する。ただし、平均の算出には、同じ作業項目IDに関連付けられたスキル情報のみを用いる。すなわち、平均の算出は作業項目IDごとに行われる。
【0141】
平均の算出に用いる、複数の作業者のスキル情報は、スキル情報記憶部103に保持された全ての作業者のスキル情報であってもよいし、一部の作業者(たとえば所属先が特定の条件を満たす作業者)のスキル情報であってもよい。
【0142】
報知部140は平均を算出すると、算出した平均が、所定の条件を満たすか否か判定する。所定の条件はたとえば、平均が所定の基準範囲を外れることである。平均が所定の条件を満たす場合、報知部140は、項目スコアを算出するためのルールの見直しを促す報知を行う。平均が所定の条件を満たさない場合、報知部140は何の報知も行わずにそのタイミングでの処理を終了する。または、報知部140は、ルールの見直しが必要ない旨の報知を行ってもよい。
【0143】
スキル情報と総合スコアとが異なる場合、報知部140は、たとえば5段階のスキルレベル等のスキル情報に代えて、総合スコアの平均を算出し、平均が所定の条件を満たした場合に、項目スコアを算出するためのルールの見直しを促す報知を行ってもよい。この場合、スキル特定部130は、スキル情報を特定した際、スキル情報、作業者ID、および作業項目IDに加え、総合スコアをこれらにさらに関連付けてスキル情報記憶部103に保持させる。そうすることで、報知部140はスキル情報記憶部103にアクセスして総合スコアをモニタできる。
【0144】
報知部140が行う報知について以下に説明する。報知部140はたとえば、情報処理装置10の管理者に対し、電子メールまたは電子的なメッセージによって、報知を行う。報知部140はたとえば、管理者に対し、「ルールの見直しが必要です。」等のメッセージを送信する。メッセージには、どの作業項目に関する見直しが必要であるかを特定するための情報(作業項目ID等)が含まれてもよい。また、メッセージには、算出された平均が示されても良い。メッセージを確認した管理者は、ルールデータベースを見直すことで、スキル情報を制御することができる。ひいては、適切なスキル評価により、さらなるスキルの向上に寄与することができる。
【0145】
本実施形態に係る情報処理装置10を実現する計算機のハードウエア構成は、第1の実施形態と同様に、たとえば
図9によって表される。ただし、本実施形態の情報処理装置10を実現する計算機1000のストレージデバイス1080には、本実施形態の報知部140の機能を実現するプログラムモジュールがさらに記憶されている。
【0146】
本実施形態に係る情報処理装置10も、第2取得部150、対象スキル特定部160、補助データ特定部170、および送信部180を備えて、第2の実施形態に係るシステム50を構成しうる。すなわち、本実施形態に係る情報処理装置10を備えるシステム50が実現可能である。ルールを変更することで、端末20による作業者への補助の程度を変更することができる。したがって、持続的なスキル向上が図られる。また、特に向上させたい作業項目のルールを調整することで、補助の程度を制御し、向上させたい作業項目のスキル向上を図れる。
【0147】
次に、本実施形態の作用および効果について説明する。本実施形態においては第1の実施形態と同様の作用および効果が得られる。加えて、本実施形態に係る報知部140は、複数の作業者の総合スコアまたはスキル情報の平均が所定の条件を満たした場合に、項目スコアを算出するためのルールの見直しを促す報知を行う。したがって、複数いる作業者のスキルが全体的に変化していくような場合でも、適切にスキル評価が行える。
【0148】
以上、図面を参照して本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【0149】
また、上述の説明で用いた複数のフローチャートでは、複数の工程(処理)が順番に記載されているが、各実施形態で実行される工程の実行順序は、その記載の順番に制限されない。各実施形態では、図示される工程の順番を内容的に支障のない範囲で変更することができる。また、上述の各実施形態は、内容が相反しない範囲で組み合わせることができる。
【0150】
上記の実施形態の一部または全部は、以下の付記のようにも記載されうるが、以下に限られない。
1-1. 作業者が行った作業行動に関する作業行動情報を少なくとも含む作業関連情報を取得する第1取得手段と、
前記作業関連情報を用いて、複数の評価項目それぞれの項目スコアを特定する項目スコア特定手段と、
前記複数の項目スコアを用いて演算することで、前記作業者の作業に関するスキルの高さを示すスキル情報を特定するスキル特定手段とを備える
情報処理装置。
1-2. 1-1.に記載の情報処理装置において、
前記作業行動情報は、センサを用いて得られたセンサデータを含む
情報処理装置。
1-3. 1-2.に記載の情報処理装置において、
前記項目スコア特定手段は、前記センサデータを用いて、前記作業中における前記作業者の視点を特定し、特定した前記視点を示す情報を用いて少なくとも1つの前記項目スコアを特定する
情報処理装置。
1-4. 1-1.から1-3.のいずれか一つに記載の情報処理装置において、
前記項目スコア特定手段は、前記作業関連情報を用いて偏差値を算出し、算出した前記偏差値を用いて少なくとも1つの前記項目スコアを特定する
情報処理装置。
1-5. 1-1.から1-4.のいずれか一つに記載の情報処理装置において、
前記スキル特定手段は、前記複数の項目スコアを用いて演算することで総合スコアを算出し、前記総合スコアに基づいて前記スキル情報を特定し、
当該情報処理装置は、複数の作業者の前記総合スコアの平均、または複数の作業者の前記スキル情報の平均が、所定の条件を満たした場合に、前記項目スコアを特定するためのルールの見直しを促す報知を行う報知手段をさらに備える
情報処理装置。
1-6. 1-1.から1-5.のいずれか一つに記載の情報処理装置において、
作業者識別情報を取得する第2取得手段と、
前記作業者識別情報に対応する対象作業者に関する、前記スキル情報を対象スキル情報として特定する対象スキル特定手段と、
前記対象スキル情報を用いて、作業を補助するための複数の補助データの中から、前記対象作業者に提示すべき補助データを特定する補助データ特定手段と、
特定した前記補助データを端末に送信する送信手段とをさらに備える
情報処理装置。
1-7. 1-6.に記載の情報処理装置において、
前記補助データは作業マニュアルを含む
情報処理装置。
1-8. 1-6.に記載の情報処理装置において、
前記補助データは着目すべき箇所を示す情報を含む
情報処理装置。
2-1. 1-6.から1-8.のいずれか一つに記載の情報処理装置と、
前記端末とを備える、
システム。
3-1. 対象作業者の作業者識別情報を、1-6.から1-8.のいずれか一つに記載の情報処理装置に送信する送信手段と、
当該情報処理装置から前記補助データを取得する補助データ取得手段と、
取得した前記補助データを出力する補助データ出力手段とを備える
端末。
4-1. 一以上のコンピュータが、
作業者が行った作業行動に関する作業行動情報を少なくとも含む作業関連情報を取得し、
前記作業関連情報を用いて、複数の評価項目それぞれの項目スコアを特定し、
前記複数の項目スコアを用いて演算することで、前記作業者の作業に関するスキルの高さを示すスキル情報を特定する
情報処理方法。
4-2. 4-1.に記載の情報処理方法において、
前記作業行動情報は、センサを用いて得られたセンサデータを含む
情報処理方法。
4-3. 4-2.に記載の情報処理方法において、
前記一以上のコンピュータは、前記センサデータを用いて、前記作業中における前記作業者の視点を特定し、特定した前記視点を示す情報を用いて少なくとも1つの前記項目スコアを特定する
情報処理方法。
4-4. 4-1.から4-3.のいずれか一つに記載の情報処理方法において、
前記一以上のコンピュータは、前記作業関連情報を用いて偏差値を算出し、算出した前記偏差値を用いて少なくとも1つの前記項目スコアを特定する
情報処理方法。
4-5. 4-1.から4-4.のいずれか一つに記載の情報処理方法において、
前記一以上のコンピュータは、前記複数の項目スコアを用いて演算することで総合スコアを算出し、前記総合スコアに基づいて前記スキル情報を特定し、
前記一以上のコンピュータはさらに、複数の作業者の前記総合スコアの平均、または複数の作業者の前記スキル情報の平均が、所定の条件を満たした場合に、前記項目スコアを特定するためのルールの見直しを促す報知を行う
情報処理方法。
4-6. 4-1.から4-5.のいずれか一つに記載の情報処理方法において、
前記一以上のコンピュータはさらに、
作業者識別情報を取得し、
前記作業者識別情報に対応する対象作業者に関する、前記スキル情報を対象スキル情報として特定し、
前記対象スキル情報を用いて、作業を補助するための複数の補助データの中から、前記対象作業者に提示すべき補助データを特定し、
特定した前記補助データを端末に送信する
情報処理方法。
4-7. 4-6.に記載の情報処理方法において、
前記補助データは作業マニュアルを含む
情報処理方法。
4-8. 4-6.に記載の情報処理方法において、
前記補助データは着目すべき箇所を示す情報を含む
情報処理方法。
5-1.
情報処理装置が、
作業者が行った作業行動に関する作業行動情報を少なくとも含む作業関連情報を取得し、
前記作業関連情報を用いて、複数の評価項目それぞれの項目スコアを特定し、
前記複数の項目スコアを用いて演算することで、前記作業者の作業に関するスキルの高さを示すスキル情報を特定し、
端末が、対象作業者の作業者識別情報を情報処理装置に送信し、
前記情報処理装置が、
前記作業者識別情報を取得し、
前記作業者識別情報に対応する対象作業者に関する、前記スキル情報を対象スキル情報として特定し、
前記対象スキル情報を用いて、作業を補助するための複数の補助データの中から、前記対象作業者に提示すべき補助データを特定し、
特定した前記補助データを前記端末に送信し、
前記端末が、
前記情報処理装置から前記補助データを取得し、
取得した前記補助データを出力する
補助方法。
6-1. 一以上のコンピュータが、
対象作業者の作業者識別情報を1-6.から1-8.のいずれか一つに記載の情報処理装置に送信し、
当該情報処理装置から前記補助データを取得し、
取得した前記補助データを出力する
情報処理方法。
7-1. コンピュータを、
作業者が行った作業行動に関する作業行動情報を少なくとも含む作業関連情報を取得する第1取得手段、
前記作業関連情報を用いて、複数の評価項目それぞれの項目スコアを特定する項目スコア特定手段、および
前記複数の項目スコアを用いて演算することで、前記作業者の作業に関するスキルの高さを示すスキル情報を特定するスキル特定手段として機能させる
プログラム。
7-2. 7-1.に記載のプログラムにおいて、
前記作業行動情報は、センサを用いて得られたセンサデータを含む
プログラム。
7-3. 7-2.に記載のプログラムにおいて、
前記項目スコア特定手段は、前記センサデータを用いて、前記作業中における前記作業者の視点を特定し、特定した前記視点を示す情報を用いて少なくとも1つの前記項目スコアを特定する
プログラム。
7-4. 7-1.から7-3.のいずれか一つに記載のプログラムにおいて、
前記項目スコア特定手段は、前記作業関連情報を用いて偏差値を算出し、算出した前記偏差値を用いて少なくとも1つの前記項目スコアを特定する
プログラム。
7-5. 7-1.から7-4.のいずれか一つに記載のプログラムにおいて、
前記スキル特定手段は、前記複数の項目スコアを用いて演算することで総合スコアを算出し、前記総合スコアに基づいて前記スキル情報を特定し、
当該プログラムは、前記コンピュータをさらに、複数の作業者の前記総合スコアの平均、または複数の作業者の前記スキル情報の平均が、所定の条件を満たした場合に、前記項目スコアを特定するためのルールの見直しを促す報知を行う報知手段として機能させる
プログラム。
7-6. 7-1.から7-5.のいずれか一つに記載のプログラムにおいて、
前記コンピュータをさらに、
作業者識別情報を取得する第2取得手段、
前記作業者識別情報に対応する対象作業者に関する、前記スキル情報を対象スキル情報として特定する対象スキル特定手段、
前記対象スキル情報を用いて、作業を補助するための複数の補助データの中から、前記対象作業者に提示すべき補助データを特定する補助データ特定手段、および
特定した前記補助データを端末に送信する送信手段として機能させる
プログラム。
7-7. 7-6.に記載のプログラムにおいて、
前記補助データは作業マニュアルを含む
プログラム。
7-8. 7-6.に記載のプログラムにおいて、
前記補助データは着目すべき箇所を示す情報を含む
プログラム。
8-1. コンピュータを、
対象作業者の作業者識別情報を、1-6.から1-8.のいずれか一つに記載の情報処理装置に送信する送信手段、
当該情報処理装置から前記補助データを取得する補助データ取得手段、および
取得した前記補助データを出力する補助データ出力手段として機能させる
プログラム。
9-1. 7-1.から7-8.のいずれか一つに記載のプログラムを記録しているコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
10-1. 8-1.に記載のプログラムを記録しているコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【符号の説明】
【0151】
10 情報処理装置
20 端末
50 システム
101 作業項目記憶部
102 ルール記憶部
103 スキル情報記憶部
104 補助データ記憶部
110 第1取得部
120 項目スコア特定部
130 スキル特定部
140 報知部
150 第2取得部
160 対象スキル特定部
170 補助データ特定部
180 送信部
200 作業情報取得部
210 送信部
220 補助データ取得部
230 補助データ出力部
1000 計算機
1020 バス
1040 プロセッサ
1060 メモリ
1080 ストレージデバイス
1100 入出力インタフェース
1120 ネットワークインタフェース