(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024124834
(43)【公開日】2024-09-13
(54)【発明の名称】エレベーター監視装置及び方法
(51)【国際特許分類】
B66B 5/00 20060101AFI20240906BHJP
B66B 5/02 20060101ALI20240906BHJP
B66B 7/00 20060101ALI20240906BHJP
【FI】
B66B5/00 D
B66B5/02 L
B66B7/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023032775
(22)【出願日】2023-03-03
(71)【出願人】
【識別番号】000232955
【氏名又は名称】株式会社日立ビルシステム
(74)【代理人】
【識別番号】110002365
【氏名又は名称】弁理士法人サンネクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西迫 竜一
(72)【発明者】
【氏名】西江 聡
【テーマコード(参考)】
3F304
3F305
【Fターム(参考)】
3F304BA24
3F304EA05
3F304EC04
3F305BA02
(57)【要約】
【課題】昇降路内の制御盤及び/又は巻上機の点検又は修理のために作業員がかご上に乗る必要がある種類のエレベーターの監視処理中に、かご上への乗込み不可の位置でのかご停止故障が発生しても、復旧作業の長時間化を抑制する。
【解決手段】昇降路内の部位の点検又は修理のために作業員がかご上に乗る必要がある種類のエレベーターのエレベーター監視装置が、エレベーターの監視処理の開始前又は実施中に、検知されたかご位置である現在かご位置と、作業員がかご上に乗込む階である乗込み階とを比較する。現在かご位置が乗込み階より下方にある場合、エレベーター監視装置が、監視処理を開始又は継続する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
昇降路内の制御盤及び/又は巻上機の点検又は修理のために作業員がかご上に乗る必要がある種類のエレベーターのエレベーター監視装置であって、
エレベーターのかごのかご位置を検知するかご位置検知部と、
前記エレベーターの監視処理の開始前又は実施中に、検知されたかご位置である現在かご位置と、作業員がかご上に乗込む階である乗込み階とを比較する監視部と
を備え、
前記監視部は、前記現在かご位置が前記乗込み階より下方にある場合、前記監視処理を開始又は継続する、
エレベーター監視装置。
【請求項2】
前記監視部は、前記現在かご位置が前記乗込み階と同じかそれより上方にある場合、それぞれ利用者が前記かごに乗り降り可能な階である複数のサービス階のうち、前記乗込み階より下方にあるサービス階に前記かごを移動させる、
請求項1に記載のエレベーター監視装置。
【請求項3】
前記監視部は、前記現在かご位置が前記乗込み階と同じかそれより上方にあり、且つ、かご内が無人の場合、前記乗込み階から作業員がかご上に乗込むことが容易であると定義された位置である乗込み準備位置に前記かごを移動させる、
請求項1に記載のエレベーター監視装置。
【請求項4】
前記監視部は、
診断対象を診断する必要があり且つ利用者によるかご利用が無い場合に、前記現在かご位置と前記乗込み階とを比較し、
前記現在かご位置が前記乗込み階より下方にある場合、前記監視処理として診断処理を開始し、
前記診断対象は、停電時でのかご移動のための電源となるバッテリーと、電源を商用電源から前記バッテリーに切り替える切替部を含んだ電源部とのうちの少なくとも前記電源部を含む、
請求項2又は3に記載のエレベーター監視装置。
【請求項5】
前記監視部は、
天気に関する予報及び/又は警報を表す天気情報を取得し、
前記天気情報が停電を生じさせ得る事象を表す場合に、前記現在かご位置と前記乗込み階とを比較し、
前記現在かご位置が前記乗込み階より下方にある場合、前記監視処理を開始又は継続する、
請求項1に記載のエレベーター監視装置。
【請求項6】
昇降路内の制御盤及び/又は巻上機の点検又は修理のために作業員がかご上に乗る必要がある種類のエレベーターのエレベーター監視方法であって、
コンピュータが、エレベーターのかごのかご位置を検知し、
コンピュータが、前記エレベーターの監視処理の開始前又は実施中に、検知されたかご位置である現在かご位置と、作業員がかご上に乗込む階である乗込み階とを比較し、
コンピュータが、前記現在かご位置が前記乗込み階より下方にある場合、前記監視処理を開始又は継続する、
エレベーター監視方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、エレベーターの監視に関する。
【背景技術】
【0002】
エレベーターの監視の一つとして、エレベーターの自動診断がある。自動診断中に故障が発生した場合、作業員(保守員)が出動しエレベーターを停止させて作業することとなる。利用者にとっては、予定外のサービス停止となるため、早期復旧が望まれる。
【0003】
また、エレベーターのかごは、停止故障することがある。「停止故障」とは、回路又はその他の部位の故障によりかごを制御により移動させることができない停止、つまり、制御による移動不可の停止を意味する。
【0004】
エレベーターの制御盤や巻上機が昇降路内に設けられ、且つ、かご上に乗らないと作業員が制御盤等の故障の点検又は修理ができない種類のエレベーターが知られている。この種のエレベーターでは、作業のための乗込み階より上にかごが停止故障していた場合、かごを何らかの方法で降下させてから乗込む必要がある。一般的に、無積載のかごとおもりでは、おもりの方が重く、故に、ブレーキを強制解除してもかごは上昇することとなる。そのため、かごを重くしてから作業する必要がある。結果として、作業時間が長期化する可能性がある。
【0005】
特許文献1では、おもりを脱着式にすることでかごとのバランスを変える手法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
かごの停止故障が発生した場合、特許文献1に開示の技術では、おもりを取り外すことでかごの方が重くなってかごが下降してから作業が可能な状態になるので、復旧作業の長時間化のおそれがある。これは、自動診断以外の監視についても起こり得る。
【0008】
そこで、本発明の目的は、昇降路内の制御盤及び/又は巻上機の点検又は修理のために作業員がかご上に乗る必要がある種類のエレベーターの監視処理中に、かご上への乗込み不可の位置でのかご停止故障が発生しても、復旧作業の長時間化を抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
昇降路内の制御盤及び/又は巻上機の点検又は修理のために作業員がかご上に乗る必要がある種類のエレベーターのエレベーター監視装置が、エレベーターの監視処理の開始前又は実施中に、検知されたかご位置である現在かご位置と、作業員がかご上に乗込む階である乗込み階とを比較する。現在かご位置が乗込み階より下方にある場合、エレベーター監視装置が、監視処理を開始又は継続する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、昇降路内の制御盤及び/又は巻上機の点検又は修理のために作業員がかご上に乗る必要がある種類のエレベーターの監視処理中に、かご上への乗込み不可の位置でのかご停止故障が発生しても復旧作業の長時間化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係るエレベーターの構成図である。
【
図2】第1の実施形態に係るエレベーター監視装置の構成図である。
【
図4】第1の実施形態に係る監視処理全体を示すフロー図である。
【
図7】他階移動処理の変形例を示すフロー図である。
【
図8】第2の実施形態に係るエレベーター監視装置の構成図である。
【
図9】第2の実施形態に係る監視処理全体を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、幾つかの実施形態を説明する。
[第1の実施形態]
【0013】
まず、
図1を用いて、本発明の第1の実施形態に係るエレベーターの構成を説明する。
【0014】
図1において、かご101はおもり104とロープ107を介してつながっており、巻上機102の駆動に伴いかご101が昇降する。一般的に、利用者(乗客)が乗った際にかご101とおもり104のバランスがとれるように、おもり104はかごより重くなっている。
【0015】
制御盤103は、巻上機102の駆動制御やかご101のドア開閉制御などを行うための制御部212(
図2参照)と、巻上機102やかごドアといった各制御機器の電源を供給するための電源部108と、停電時に最寄り階までかご101を移動させるための電源であるバッテリー109とを有する。巻上機102及び制御盤103は昇降路頂部に設置されている。
【0016】
制御盤103に格納されている機器の作業を行うためには、かご上(かご101の天井)に乗る必要があり、作業員は、最上階乗り場105にて、かご101を乗込み可能な位置に移動させた後、乗場ドアを開いてかご上に乗込む。
【0017】
次に、
図2を用いて、本実施形態のエレベーター監視装置の機器構成を説明する。
【0018】
エレベーター監視装置201は、診断部202、かご位置検知部203、判定部204、階情報データベース205、走行指令部206、故障検知部207及び通信部208を有する。エレベーター監視装置201は、インターフェース装置、記憶装置及びそれらに接続されたプロセッサを有する。インターフェース装置が制御盤103と通信可能に接続されている。記憶装置が、階情報データベース205を記憶する。記憶装置が記憶するプログラムを実行することで、診断部202、かご位置検知部203、判定部204、走行指令部206、故障検知部207及び通信部208といった機能が実現される。これらの機能のうちの少なくとも一つは、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field-Programmable Gate Array)といったハードウェアにより実現されてもよい。また、これらの機能のうち二つ以上の機能が一つの機能とされてもよいし、一つの機能が二つ以上の機能に別れていてもよい。
【0019】
診断部202は、制御盤103の電源部108と通信し、停電時に正常にバッテリー109から電源供給が可能となっているか、また回路の異常やバッテリー109の劣化などを定期的に自動で診断する。
【0020】
かご位置検知部203は、巻上機102の駆動状態を検知するエンコーダー211からのデータを基に、かご101の位置を検知する。
【0021】
判定部204は、かご位置検知部203が出力する情報(かご101の位置情報)と階情報データベース205が有する情報とを基に診断可否を判定し、判定結果を診断部202へ伝える。階情報データベース205は、各階に関する情報や、サービス階、サービス停止階及び乗込み階を表す情報を含む。「サービス階」は、利用者の乗り降りが可能な階(例えば許可されている階)である。「サービス停止階」は、利用者の乗り降りが不可能な階(例えば禁止されている階)である。「乗込み階」は、作業員がかご上に乗込む階である。
【0022】
走行指令部206は、判定部204からかご移動の指令があった場合に制御部212へかごを移動させるための指令を行う。
【0023】
故障検知部207は、エレベーターに関し故障を検知した場合に、通信部208により管制センター(図示せず)へ故障を通知する。
【0024】
次に、
図3を用いて、本実施形態の電源部診断時の動作を説明する。
【0025】
電源部108(例えば電源回路)は、切替部303と電源供給部304とを有する。
【0026】
電源供給部304は、供給された電力を各機器に必要な電圧に変換して制御部212や巻上機102などに供給する。
【0027】
切替部303は、商用電源301と電源供給部304を接続する回路を有する。停電時には切替部303がバッテリー109と電源供給部304を接続する回路に切り替える。つまり、切替部303は、電源供給部304への電源を切り換える。電源は、商用電源301又はバッテリー109である。なお、電源部108にはコンバータなどによる整流回路が組み込まれており、商用電源301とバッテリー109のどちらが電源でも駆動が可能である。
【0028】
切替部303は、エレベーター監視装置201(診断部202)からの指令により電源をバッテリー109に切り替え、動作の診断を行う。また、バッテリー109の電源供給状態を確認するために、切替部303はバッテリー109に負荷をかけてもよい。
【0029】
次に、
図4を用いて、本実施形態における監視処理について説明する。
図4は、第1の実施形態に係る監視処理全体を示すフロー図である。
【0030】
診断部202が、S401にて、診断条件が成立したか否かを判定する。診断条件としては、開始条件(例えば、前回の診断から一定時間が経過した、又は、所定の機器の動作回数が所定値を超過したという条件)と、実施条件(エレベーターの利用が無いこと)との二つの条件がある。二つの条件のいずれも満たされている場合に、診断条件が成立である。なお、エレベーターの利用の有無は、かご101の荷重センサの値やかご101の待機時間から判定することができる。
【0031】
診断条件が成立した場合(S401でYes)、S402にて、かご位置検知部203が、現在かご101が停止している位置を取得する。
【0032】
S403にて、判定部204が、診断開始許可の判定処理を行う。S403の詳細は
図5にて説明する。
【0033】
S403の結果として、現在の停止位置で診断が許可である場合(S404でNo)、S408にて、診断部202が、診断を開始する。
【0034】
S403の結果として、現在の停止位置で診断が不許可である場合(S404でYes)、現在のかご位置では停止故障が発生した場合にかご上に作業員が乗込むことが難しいため、S405にて、走行指令部206が、他の階へかご101を移動させる。S405の詳細は
図6にて説明する。
【0035】
S405にてかご101が他の階へ移動した後、再度、判定部204が、S406にて、診断開始許可の判定処理を行う。
【0036】
S406の結果として、移動先の階での診断が許可である場合(S407でYes)、S408にて、診断部202が、診断を開始する。S408での診断対象は、電源部108である。
【0037】
診断において、故障(例えば、切替部303の故障による電源供給断)が生じた場合(S409でYes)、S410にて、制御部212が、平常サービスができないことを検出しアラートを故障検知部207に出し、故障検知部207が、通信部208により管制センターに故障を通知する。S412にて、通知を受信した管制センターは、作業員に出動を指示し、作業員が、現地で復旧作業を行う。このとき、かご101は、点検又は修理の対象の一例である制御盤103が設置されている位置よりも下にあるため、エレベーターが駆動できない場合においても、短時間で作業員がかご上に乗込むことができる。
【0038】
診断が正常に終了し故障がない場合(S409でNo)、S411にて、走行指令部206が、利用者が最後に利用した階(S402にて取得したかご位置)にかご101を移動させる。
【0039】
なお、診断した結果、バッテリー109の劣化等が発見された場合、診断部202が、通信部208を介して管制センターに通知(バッテリー109のバッテリーの劣化等の発見を表す通知)を送信してもよい。
【0040】
診断条件が成立しない場合(S401でNo)や、診断が不許可である場合(S407でNo)、診断部202が診断を実施しない。
【0041】
S407の判定で診断が不許可である場合の例として、他階移動処理(S405)において、現在のかご停止階より下の階がサービス停止階である等の理由によりかご101の移動ができないことが挙げられる。いずれの階がサービス停止階であるかは、階情報データベース205から特定可能である。
【0042】
次に
図5を用いて診断開始判定処理(S403)の詳細を説明する。
【0043】
診断開始判定処理では、S501にて、判定部204が、かご位置情報(S401でかご位置検知部203が取得したかご位置情報)を取得する。当該かご位置情報が、現在のかご位置を表す。
【0044】
S502にて、判定部204が、階情報データベース205から、乗込み階情報を取得する。乗込み階情報は、制御盤103の作業を行うためにかご上に乗込むための乗込み階を表す情報である。本実施形態では、乗込み階は、最上階である。
【0045】
S503にて、判定部204が、S501で取得した現在のかご位置と、S502で取得した乗込み階とを比較し、現在のかご位置が乗込み階より下方にあるか否かを判定する。
【0046】
現在のかご位置が乗込み階と同じかそれより上方にある場合(S503でNo)、停止故障が生じた場合にかご上への乗込みが困難となるため、S505にて、判定部204が、判定結果を、診断開始不許可とする。
【0047】
現在のかご位置が乗込み階より下方にある場合(S503でYes)、S504にて、判定部204が、判定結果を、診断開始許可する。
【0048】
階移動においては、毎回診断時に特定階に移動することも可能だが、利用者による利用(かご移動)を伴わない動作においては、不要なかご移動は控えることが望ましい。
【0049】
次に
図6を用いて他階移動処理(S405)の詳細を説明する。
【0050】
S601にて、走行指令部206が、階情報データベース205から、乗込み階情報を取得する。
【0051】
建物構造やセキュリティにより、特定階が時間帯に又は時間帯に関わらずサービス停止階である場合がある。つまり、特定階は、時間や権限等により禁止と許可の切り替えが柔軟である場合がある。そこで、S602にて、走行指令部206が、階情報データベース205から、現在のサービス階情報を取得する。
【0052】
次に、取得した階情報を基に、S603にて、走行指令部206が、乗込み階より下方のサービス階を検出する。例えば、10階床の建物において、9階がサービス停止階の場合、S603にて検出される階は、8階(サービス停止階より下方の階のうちの最上階)でよい。
【0053】
S603にて階が検出された場合(S604でYes)、S605にて、走行指令部206が、当該検出された階を行先階に設定する。S606にて、走行指令部206が、制御部212に対して、S605で設定した行先階への走行指令を送信する。制御部212は、当該走行指令に従い、行先階へかご101を移動させる。
【0054】
現在階(現在のかご位置)と行先階が一致した場合(S607でYes)、処理が終了する。走行指令の送信から或る程度時間が経過しても現在階と行先階が一致しない場合(S607でNo)、例えば、かご101が移動できない状態である場合、S609にて、故障検知部207が、通信部208により故障を管制センターに通知する。通知を受信した管制センターは、サービス階などの確認を行い、正常稼働でないと判断した場合には作業員へ復旧指示を出す。
【0055】
また、S603にて階が検出されなかった場合(S604でNo)、S608にて、走行指令部206が、かごを現在階で待機させる。
【0056】
なお、S603で階の検出がされない場合の例として、乗込み階が中間階であり、中間階より高い階のみがサービス階で、中間階と同じかそれより低い階のいずれもサービス停止階である場合が挙げられる。
【0057】
次に
図7を用いて、他階移動処理の一変形例を説明する。
【0058】
乗込み階より下方のサービス階への移動に代えて、
図7が示す他階移動処理では、走行指令部206が、かご101を乗込み準備位置に移動させる。
【0059】
「乗込み準備位置」とは、かご上面が乗込み階の乗場床面と同じ高さとなる位置のように作業員にとって乗込み階からかご上に乗込み易いかご位置である。
【0060】
S701にて、走行指令部206が、階情報データベース205から乗込み階情報を取得する。
【0061】
S702にて、走行指令部206が、荷重センサの値と、かご内カメラの撮影画像とを取得する。
【0062】
S703にて、走行指令部206が、取得した荷重センサの値及びかご内カメラの撮影画像を用いて、かご内の有人無人を判定する。
【0063】
無人が判定された場合には(S703でYes)、走行指令部206が、かご101を乗込み階の乗場床とかご上面が同一の高さとなる位置にかごを移動させる(S704)。これにより、停止故障が生じた場合、ブレーキ開放などを実施せずにかご上への作業員による乗込みが可能となる。
【0064】
有人が判定された場合(S703でNo)、S705にて、走行指令部206が、診断開始を不許可とする。
[第2の実施形態]
【0065】
次に、
図8及び
図9を用いて、第2の実施形態を説明する。その際、第1の実施形態との相違点を主に説明し、第1の実施形態との共通点については説明を省略又は簡略する。
【0066】
図8は、第2の実施形態に係るエレベーター監視装置の構成図である。
【0067】
エレベーター監視装置801は、診断部202に代えて(又は加えて)天気情報取得部802を有し、判定部204に代えて(又は加えて)判定部804を有する。
【0068】
天気情報取得部802は、監視対象のエレベーターを有する建物の周辺地域の天気予報や警報等を表す天気情報を取得する。天気情報は、インターネット等の通信ネットワーク経由でサーバから取得されてもよいし、エレベーター監視装置801の記憶装置に天気情報が格納されていて当該記憶装置から取得されてもよい。
【0069】
判定部804は、天気情報取得部802が取得した情報と、かご位置検知部203が取得した情報と、階情報データベース205の情報とを基に、かご101の移動可否を判定する。
【0070】
図9は、第2の実施形態に係る監視処理全体を示すフロー図である。
【0071】
S901にて、天気情報取得部802が、天気情報を取得する。
【0072】
S902にて、判定部804が、取得された天気情報が、建物がある地域で落雷の予報や警報があるか否かを判定する。
【0073】
建物がある地域で落雷の予報や警報がある場合(S902でYes)、落雷等による停止故障の可能性があるため、走行指令部206が、かごを乗込み階(例えば最上階)以外の階に移動させる。
【0074】
具体的には、S903にて、走行指令部206が、かご位置検知部203が取得したかご位置情報(現在のかご位置)を取得する。S904にて、走行指令部206が、現在のかご位置が乗込み階より上方にあるか否かを判定する。
【0075】
現在のかご位置が乗込み階より上方にある場合(S905でYes)、停止故障時にかご上への乗込みが困難となるため他階への移動を行う。すなわち、S905にて、走行指令部206が、エレベーターがサービスを終了し待機状態であるかを判定する。サービス中の場合(S905でNo)、走行指令部206はサービス(利用者による利用)を優先する。エレベーターが待機状態の場合(S905でYes)、走行指令部206が、S405(他階移動処理)を行う。
【0076】
他階移動後に利用者による呼びが作成された場合には、走行指令部206は、サービス(利用者による呼びに応じかご移動)を行う。これにより、利用者にとっての利便性の低下を抑制することができる。
【0077】
天気情報は定期的に取得されてよい。落雷の予報や警報等が無くなった場合(S902でNo)、走行指令部206は、他階移動処理を行わずに通常のサービスを継続する。
【0078】
なお、天気情報による階移動制御は、落雷に限らず、降雨により冠水による故障が懸念される場合においても同様に、走行指令部206は、停止故障時に乗込み容易となる位置にかごを移動させてもよい。
【0079】
以上、幾つかの実施形態を説明したが、これらは本発明の説明のための例示であって、本発明の範囲をこれらの実施形態にのみ限定する趣旨ではない。本発明は、他の種々の形態でも実行することが可能である。
【0080】
例えば、上述の説明を下記のように総括することができる。下記の総括は、補足説明や変形例の説明を含んでよい。
【0081】
昇降路内の制御盤(103)及び/又は巻上機(103)の点検又は修理のために作業員がかご上に乗る必要がある種類のエレベーターのエレベーター監視装置(201又は801)が、エレベーターのかご101のかご位置を検知するかご位置検知部(203)と、エレベーターの監視処理の開始前又は実施中に現在かご位置(検知されたかご位置)と乗込み階(作業員がかご上に乗込む階)とを比較する監視部とを備える。監視部は、現在かご位置が乗込み階より下方にある場合、監視処理を開始又は継続する。言い換えれば、現在かご位置が乗込み階と同じかそれより上方にある場合には、監視処理が開始又は継続されない。このため、監視処理中に、かご上への乗込み不可の位置でのかご停止故障が発生しても、復旧作業の長時間化を抑制することができる。具体的には、監視処理の開始前に上記比較がされるならば、現在かご位置が乗込み階と同じかそれより上方にある状態で停止故障が発生することはないので、復旧作業の長時間化を抑制することができる。一方、監視処理の実施中に上記比較がされるならば、監視処理中に現在かご位置が乗込み階と同じかそれより上方にある状態で停止故障が発生する可能性を低減できるので(例えばそのような状態が特定された場合にかごを乗込み階より下方の階に移動させるといった他階移動処理を実施できるので)、復旧作業の長時間化を抑制することができる。
【0082】
ここで、「監視処理」とは、電源部108やバッテリー109の自動診断といった狭義の監視処理でも良いし、自動診断の開始の有無の判定や天気情報の取得を含んだ広義の監視処理でも良い。
【0083】
また、「現在かご位置が乗込み階より下方にある」とは、現在かご位置が、かご位置を下げること無しに作業員が乗込み階からかご上(かご天井)に乗込むことが可能と定義された位置範囲に属していることを意味して良い。一方、「現在かご位置が乗込み階と同じかそれより上方にある」とは、現在かご位置が、かご位置を下げない限り作業員が乗込み階からかご上(かご天井)に乗込むことが不可と定義された位置範囲に属していることを意味して良い。
【0084】
また、「監視部」は、
図2に示した診断部202、判定部204及び走行指令部206を含んだ機能でも良いし、
図8に示した天気情報取得部802、判定部804及び走行指令部206を含んだ機能でも良い。
【0085】
監視部は、現在かご位置が乗込み階と同じかそれより上方にある場合、それぞれ利用者がかごに乗り降り可能な階である複数のサービス階のうち、乗込み階より下方にあるサービス階にかごを移動させて良い。これにより、停止故障が発生しかご内に利用者がいても利用者の降車を保証することができる。
【0086】
監視部は、現在かご位置が乗込み階と同じかそれより上方にあり、且つ、かご内が無人の場合、乗込み階から作業員がかご上に乗込むことが容易であると定義された位置である乗込み準備位置にかごを移動させて良い。これにより、停止故障が発生した時点でかごが乗込みに最適な位置にあるので復旧作業に要する時間の短縮化が期待できる。
【0087】
監視部は、診断対象を診断する必要があり且つ利用者によるかご利用が無い場合に、現在かご位置と前記乗込み階とを比較して良い。現在かご位置が前記乗込み階より下方にある場合、監視部は、監視処理として診断処理(自動診断)を開始して良い。診断対象は、停電時でのかご移動のための電源となるバッテリーと、電源を商用電源からバッテリー(109)に切り替える切替部(303)を含んだ電源部(108)とのうちの少なくとも電源部(108)を含んで良い。これにより、停電時でのかご移動のための電力供給が保証されるかの診断処理において停止故障が発生することを避けることができる。
【0088】
監視部は、天気に関する予報及び/又は警報を表す天気情報を取得して良い。天気情報が停電を生じさせ得る事象(例えば、建物周辺での落雷予報等)を表す場合に、監視部は、現在かご位置と乗込み階とを比較して良い。現在かご位置が乗込み階より下方にある場合、監視部は、監視処理を開始又は継続して良い。これにより、停電を生じさせ得る事象が発生しそれに伴い停止故障が生じても、復旧作業の長時間化を抑制することができる。
【0089】
なお、第1の実施形態と第2の実施形態の組合せが実施されても良い。例えば、S401での診断条件が、天気情報が停電を生じさせ得る事象を表していることを含んでも良い。
【符号の説明】
【0090】
101・・・・・かご
102・・・・・巻上機
103・・・・・制御盤
104・・・・・おもり
201・・・・・エレベーター監視装置