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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024124838
(43)【公開日】2024-09-13
(54)【発明の名称】半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/301 20060101AFI20240906BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20240906BHJP
   B28D 5/04 20060101ALI20240906BHJP
   B23K 26/53 20140101ALI20240906BHJP
【FI】
H01L21/78 B
H01L21/304 611Z
B28D5/04 Z
B23K26/53
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023032782
(22)【出願日】2023-03-03
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】520124752
【氏名又は名称】株式会社ミライズテクノロジーズ
(71)【出願人】
【識別番号】000236436
【氏名又は名称】浜松ホトニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 聖也
(72)【発明者】
【氏名】牛島 隆志
(72)【発明者】
【氏名】河口 大祐
(72)【発明者】
【氏名】原 佳祐
【テーマコード(参考)】
3C069
4E168
5F057
5F063
【Fターム(参考)】
3C069AA03
3C069BA08
3C069BB04
3C069BC07
3C069CA05
3C069EA05
4E168AE01
4E168DA43
4E168JA13
5F057AA05
5F057BA15
5F057BB05
5F057CA14
5F057DA22
5F057DA31
5F063AA05
5F063BA42
5F063CC49
5F063DD28
5F063DD29
(57)【要約】
【課題】 歩留まり良く半導体装置を製造することができる技術を提案する。
【解決手段】 半導体装置の製造方法は、第1表面と、第2表面とを有する化合物半導体基板にレーザを照射することによって、化合物半導体基板の第1深さ範囲に、第1表面に平行な特定方向に沿って間隔を空けて配置された複数の第1改質層を形成する工程と、化合物半導体基板にレーザを照射することによって、化合物半導体基板の第1深さ範囲とは異なる第2深さ範囲に、特定方向に沿って間隔を空けて配置された複数の第2改質層を形成する工程であって、化合物半導体基板を上から見たときに特定方向に沿って第1改質層と第2改質層が交互に配置され、特定方向における第2改質層の幅が特定方向における第1改質層の幅よりも狭くなるように、第2改質層を形成する工程と、各第1改質層及び各第2改質層に沿って化合物半導体基板を分割する工程、を備える。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体装置(10)の製造方法であって、
素子構造(6)が形成された第1表面(2a)と、前記第1表面の裏側に位置する第2表面(2b)とを有する化合物半導体基板(2)にレーザ(110)を照射することによって、前記化合物半導体基板の第1深さ範囲(R1)に、前記第1表面に平行な特定方向に沿って間隔を空けて配置された複数の第1改質層(14)を形成する工程と、
前記化合物半導体基板にレーザ(112)を照射することによって、前記化合物半導体基板の前記第1深さ範囲とは異なる第2深さ範囲(R2)に、前記特定方向に沿って間隔を空けて配置された複数の第2改質層(16、19)を形成する工程であって、前記化合物半導体基板を上から見たときに前記特定方向に沿って前記第1改質層と前記第2改質層が交互に配置され、前記特定方向における前記第2改質層の幅(w2)が前記特定方向における前記第1改質層の幅(w1)よりも狭くなるように、前記第2改質層を形成する前記工程と、
前記各第1改質層及び前記各第2改質層に沿って前記化合物半導体基板を前記第1表面側の第1部分(8a)と前記第2表面側の第2部分(8b)に分割する工程、
を備える、製造方法。
【請求項2】
前記第1改質層を形成する前記工程と、前記第2改質層を形成する前記工程では、前記第1表面から前記第1改質層までの距離(d1)と、前記第1表面から前記第2改質層までの距離(d2)が、前記第1改質層と前記第2改質層との間の距離(d3)よりも長くなるように、前記各第1改質層及び前記各第2改質層を形成する、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記第2改質層を形成する前記工程では、前記化合物半導体基板を上から見たときに前記各第2改質層が隣接する2つの前記第1改質層と重複するように前記各第2改質層(16)を形成する、請求項1に記載の製造方法。
【請求項4】
前記化合物半導体基板を上から見たときに前記化合物半導体基板の前記第1改質層と前記第2改質層とが重複する範囲で、レーザ(114)の焦点を前記化合物半導体基板の厚さ方向に沿って移動させることで、前記化合物半導体基板に前記第1改質層と前記第2改質層を接続する第3改質層(18)を形成する工程をさらに備える、請求項3に記載の製造方法。
【請求項5】
前記第1表面から前記第1深さ範囲までの距離は、前記第1表面から前記第2深さ範囲までの距離よりも短く、
前記第1改質層を形成する前記工程と、前記第2改質層を形成する前記工程では、前記第2表面側からレーザを照射し、
前記第1改質層を形成する前記工程を実施した後に、前記第2改質層を形成する前記工程を実施する、請求項3または4に記載の製造方法。
【請求項6】
前記第2改質層を形成する前記工程では、前記化合物半導体基板を上から見たときに前記各第2改質層が隣接する2つの前記第1改質層と重複しないように前記各第2改質層(19)を形成する、請求項1に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示の技術は、半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、半導体基板の加工方法が開示されている。特許文献1では、半導体基板の内部に集光するレーザを照射することによって、半導体基板の内部に改質層を形成する。改質層は、半導体基板の表面に沿って広がるように形成される。このような改質層を形成することで、半導体基板を加工することができる。例えば、改質層に沿って半導体基板を分割することで、より薄い半導体基板を得ることができる。
【0003】
半導体基板の内部に改質層を形成するときに、改質層でガスが発生することがある。発生したガスの圧力によって、半導体基板の意図しない方向にクラックが生じ得る。特許文献1では、改質層を形成した後に改質層を溶融することで、発生したガスをその圧力によって溶融した改質層とともに半導体基板の端面から外部に排出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-183600号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
半導体基板の表面と端面の接続部分は曲率を有しているため、半導体基板の外周端近傍では所望の深さにレーザを集光させることが難しい。すなわち、半導体基板の外周端に達するように改質層を形成することが難しい。このため、好適にガスを外部に排出できない場合がある。また、半導体基板の厚さが比較的薄い場合には、半導体基板の内部に形成した改質層と半導体基板の表面との間に位置する部分の距離が短く、当該部分の機械的強度が低くなる。その結果、ガスの圧力によって生じたクラックが半導体基板の表面側へ進展し得る。半導体基板の表面には、半導体装置の機能を実現するための構造(例えば、トレンチゲートや電極等)を形成することがあり、クラックが半導体基板の表面側へ進展すると、当該構造に悪影響を及ぼす。このように、特許文献1の技術では、改質層で発生したガスの圧力によって、半導体基板の意図しない方向(例えば半導体基板の表面側)に向かってクラックが生じ得る。本明細書では、歩留まり良く半導体装置を製造することができる技術を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書が開示する半導体装置(10)の製造方法は、素子構造(6)が形成された第1表面(2a)と、前記第1表面の裏側に位置する第2表面(2b)とを有する化合物半導体基板(2)にレーザ(110)を照射することによって、前記化合物半導体基板の第1深さ範囲(R1)に、前記第1表面に平行な特定方向に沿って間隔を空けて配置された複数の第1改質層(14)を形成する工程と、前記化合物半導体基板にレーザ(112)を照射することによって、前記化合物半導体基板の前記第1深さ範囲とは異なる第2深さ範囲(R2)に、前記特定方向に沿って間隔を空けて配置された複数の第2改質層(16、19)を形成する工程であって、前記化合物半導体基板を上から見たときに前記特定方向に沿って前記第1改質層と前記第2改質層が交互に配置され、前記特定方向における前記第2改質層の幅(w2)が前記特定方向における前記第1改質層の幅(w1)よりも狭くなるように、前記第2改質層を形成する前記工程と、前記各第1改質層及び前記各第2改質層に沿って前記化合物半導体基板を前記第1表面側の第1部分(8a)と前記第2表面側の第2部分(8b)に分割する工程、を備える。
【0007】
上記の製造方法では、化合物半導体基板を上から見たときに、特定方向に沿って第1改質層と第2改質層とが交互に配置されるように、各第1改質層及び各第2改質層を形成する。各改質層が形成されると、各改質層の内部にガスが発生する。このガスにより、各改質層の内圧が上昇する。この状態で、化合物半導体基板を第1改質層及び第2改質層に沿って分割する。第1改質層と第2改質層は特定方向に沿って交互に配置されているので、第1改質層とこの第1改質層に隣接する第2改質層との間の距離は比較的短い。すなわち、隣接する改質層間に位置する半導体領域は、他の半導体領域(例えば、改質層の上側や下側に位置する半導体領域)よりも薄く、機械的な強度が低い。このため、化合物半導体基板を分割するときには、ガスの圧力によって、隣接する改質層の間に位置する半導体領域(すなわち、強度が低い部分)に向かってクラックが生じる。その結果、第1改質層と第2改質層に沿って特定方向に化合物半導体基板を分割することができる。このように、上記の製造方法では、ガスの圧力による意図しない方向へのクラックを抑制することができ、歩留まり良く半導体装置を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】化合物半導体基板の平面図。
図2図1のII-II線における断面図。
図3】実施例1の第1改質層形成工程の説明図。
図4】実施例1の第2改質層形成工程の説明図。
図5】実施例1の分割工程の説明図。
図6】実施例1の研磨、個片化工程の説明図。
図7】実施例2の第3改質層形成工程の説明図。
図8】実施例3の第2改質層形成工程の説明図。
図9】実施例3の分割工程の説明図。
図10】実施例3において第2改質層を形成する範囲を説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書が開示する一例の製造方法では、前記第1改質層を形成する前記工程と、前記第2改質層を形成する前記工程では、前記第1表面から前記第1改質層までの距離と、前記第1表面から前記第2改質層までの距離が、前記第1改質層と前記第2改質層との間の距離よりも長くなるように、前記各第1改質層及び前記各第2改質層を形成してもよい。
【0010】
このような構成では、第1改質層と第2改質層の間に位置する半導体領域の厚さが、第1表面と各改質層の間の半導体領域の厚さよりも薄く、機械的強度が低くなる。したがって、各改質層内で生じるガスの圧力によりクラックが生じる場合、第1改質層と第2改質層の間に位置する半導体領域に向かってクラックをより生じさせ易い。このため、意図しない方向(例えば、素子構造(例えば、トレンチやゲート電極等)が形成された第1表面側)に向かってクラックが生じることがより抑制される。
【0011】
本明細書が開示する一例の製造方法では、前記第2改質層を形成する前記工程では、前記化合物半導体基板を上から見たときに前記各第2改質層が隣接する2つの前記第1改質層と重複するように前記各第2改質層を形成してもよい。
【0012】
このような構成では、第1改質層と第2改質層とが重複する範囲において、第1改質層と第2改質層の間の距離が短くなる。したがって、第1改質層と第2改質層の間に位置する半導体領域に向かってクラックがより生じ易く、クラックの方向の制御がより容易となる。
【0013】
本明細書が開示する一例の製造方法では、前記化合物半導体基板を上から見たときに前記化合物半導体基板の前記第1改質層と前記第2改質層とが重複する範囲で、レーザの焦点を前記化合物半導体基板の厚さ方向に沿って移動させることで、前記化合物半導体基板に前記第1改質層と前記第2改質層を接続する第3改質層を形成する工程をさらに備えてもよい。
【0014】
このような構成では、第1改質層と第2改質層を半導体基板の厚さ方向に接続する第3改質層が形成される。このため、半導体基板を分割するときには、第1改質層、第2改質層、第3改質層に沿って、より弱い力で分割することができる。
【0015】
本明細書が開示する一例の製造方法では、前記第1表面から前記第1深さ範囲までの距離は、前記第1表面から前記第2深さ範囲までの距離よりも短くてもよく、前記第1改質層を形成する前記工程と、前記第2改質層を形成する前記工程では、前記第2表面側からレーザを照射してもよく、前記第1改質層を形成する前記工程を実施した後に、前記第2改質層を形成する前記工程を実施してもよい。
【0016】
レーザを照射すると、化合物半導体が加熱されて分解されることにより改質層が形成される。このとき、金属等が析出することにより、改質層を形成した領域が変色し得る。上記の構成では、レーザの照射面(第2表面)から遠い範囲に位置する第1改質層を先に形成する。レーザの照射面(第2表面)に対して奥側(第1表面側)に位置する第1改質層を先に形成するため、第2改質層を形成するときにも、変色した領域によってレーザの進行が妨げられることが抑制される。
【0017】
本明細書が開示する一例の製造方法では、前記第2改質層を形成する前記工程では、前記化合物半導体基板を上から見たときに前記各第2改質層が隣接する2つの前記第1改質層と重複しないように前記各第2改質層を形成してもよい。
【0018】
このような構成では、第1改質層と第2改質層が、特定方向に沿って間隔を空けて交互に配置されるように各改質層を形成する。このため、第1改質層の形成と第2改質層の形成において、特定方向におけるレーザの照射領域が重複し難い。このため、各改質層を形成するためのレーザの進行が妨げられ難く、好適に各改質層を形成することができる。
【0019】
(実施例1)
図面を参照して、実施例1の製造方法を説明する。図1は、複数の素子構造6がマトリクス状に配置された化合物半導体基板2(以下、単に半導体基板2という)の平面図である。各素子構造6は、半導体基板2の第1表面2a上に形成されている。各素子構造6は、例えば、トレンチやゲート電極等、半導体装置の機能を実現するための構造を含む。半導体基板2の内部には、各素子構造6に対応する位置にトランジスタやダイオードの機能を有する構造がそれぞれ形成されている。半導体基板2は、GaNにより構成されている。なお、半導体基板2は、光透過性を有する他の半導体(例えば、Ga、AlN、BrN等の化合物半導体)によって構成されていてもよい。図2等に示すように、半導体基板2は、第1表面2aの裏側に位置する第2表面2bを有している。
【0020】
実施例の製造方法は、第1改質層形成工程、第2改質層形成工程、分割工程を含む。
【0021】
(第1改質層形成工程)
図3に示すように、半導体基板2の内部に複数の第1改質層14を形成する第1改質層形成工程を実施する。第1改質層形成工程では、第2表面2b側から半導体基板2にレーザ110を照射する。レーザ110は、半導体基板2の内部の深さ範囲R1で焦点S1を形成するように照射される。深さ範囲R1の上端は、半導体基板2の第1表面2aから距離d1の位置に配置されている。焦点S1の位置では、GaNが加熱されて分解される。その結果、焦点S1の位置に、ガリウムの析出層等によって構成された第1改質層14が形成される。第1改質層14の強度は、元のGaN単結晶よりも低い。したがって、第1改質層14の強度は、その周囲のGaN単結晶よりも低い。ここでは、レーザ110の照射位置を半導体基板2の第1表面2a及び第2表面2bと平行な方向(図3の左右方向)に移動させながら、レーザ110のオンオフを制御することで、半導体基板2内部の深さ範囲R1に、横方向に沿って間隔を空けて配置された複数の第1改質層14を形成する。また、この工程では、各第1改質層14が、図3の紙面に垂直な方向に伸びるように形成される。すなわち、半導体基板2を上から見たときに、各第1改質層14が矩形状に広がるように、各第1改質層14が形成される。
【0022】
(第2改質層形成工程)
次に、図4に示すように、半導体基板2の内部に複数の第2改質層16を形成する第2改質層形成工程を実施する。第2改質層形成工程では、第1改質層形成工程と同様に、第2表面2b側から半導体基板2にレーザ112を照射する。レーザ112は、半導体基板2の内部の深さ範囲R2で焦点S2を形成するように照射される。深さ範囲R2の上端は、半導体基板2の第1表面2aから距離d2の位置に配置されている。距離d2は距離d1よりも長い。すなわち、深さ範囲R2は、深さ範囲R1よりも半導体基板2の第2表面2b側に位置している。そして、レーザ112の照射位置を半導体基板2の第1表面2a及び第2表面2bと平行な方向(図4の左右方向)に移動させながら、レーザ112のオンオフを制御することで、半導体基板2内部の深さ範囲R2に、横方向に沿って間隔を空けて配置された複数の第2改質層16を形成する。この工程では、各第2改質層16が、2つの隣接する第1改質層14の間の間隔と重なるように、レーザ112の照射位置を移動させながらレーザ112のオンオフを制御する。すなわち、半導体基板2を上から見たときに横方向に沿って第1改質層14と第2改質層16が交互に配置されるように、各第2改質層16を形成する。また、この工程では、図4の左右方向における第2改質層16の幅w2が、第1改質層14の幅w1よりも狭くなるように、各第2改質層16を形成する。さらに、この工程では、半導体基板2を上から見たときに、第2改質層16が隣接する2つの第1改質層14と重複するように、各第2改質層16が形成される。すなわち、第1改質層14と第2改質層16とが重複範囲20を有するように、各第2改質層16が形成される。なお、この工程では、上述した距離d1及び距離d2が、第1改質層14と第2改質層16との間の最短距離d3(本実施例では、深さ範囲R1の下端から深さ範囲R2の上端までの距離)よりも長くなるように、各第2改質層16が形成される。以下では、半導体基板2のうち、改質層14、16よりも第1表面2a側の部分を第1部分8aといい、改質層14、16よりも第2表面2b側の部分を第2部分8bという。
【0023】
(分割工程)
次に、図5に示すように、第1改質層14及び第2改質層16に沿って、半導体基板2を分割する。ここでは、第1部分8aに対して第2部分8bから離れる方向に力を加えながら半導体基板2に対して外部から衝撃を加えることで、第1改質層14及び第2改質層16に沿って半導体基板2を分割する。すなわち、第1部分8aを第2部分8bから分離させる。上述したように、第1改質層14及び第2改質層16の強度はGaN単結晶の強度よりも低いので、第1部分8aと第2部分8bを引き離す方向に力を加えると、第1改質層14及び第2改質層16では、第1部分8aが第2部分8bから容易に剥離される。また、半導体基板2へのレーザ110、112の照射によってGaNが分解されるとき(すなわち、第1改質層14及び第2改質層16が形成されるとき)に、窒素ガス(すなわち、Nガス)が発生する。第1改質層14と第2改質層16との間に位置する半導体領域(距離d3)は、他の半導体領域(例えば、第1表面2aから第1改質層14までの半導体領域(距離d1)、第1表面2aから第2改質層16までの半導体領域(距離d2))よりも薄く、当該他の半導体領域よりも機械的な強度が低い。このため、半導体基板2を分割するときに外部から衝撃を加えると、窒素ガスの圧力によって、各改質層14、16から、改質層14、16の間に位置する半導体領域(すなわち、強度が低い部分)に向かってクラックが生じ易く、当該半導体領域に劈開が生じる。半導体基板2が劈開することにより、第1改質層14による分割面と第2改質層16による分割面が繋がる。その結果、図5に示すように、第1改質層14と第2改質層16に沿って、半導体基板2を第1部分8aと第2部分8bに分割することができる。
【0024】
その後、図6に示すように、必要に応じて、第1部分8aの下面(すなわち、分割面)を研磨及び洗浄する。そして、レーザやブレードによるダイシング等の公知の方法を用いて、それぞれが素子構造6を含むように第1部分8aを個片化する。これにより、複数の半導体装置10が完成する。
【0025】
なお、第2部分8bは、その後、半導体装置の製造に再利用されてもよい。例えば、第2部分8bの分割面を研磨、エッチング等し、その後、分割面上にGaN層をエピタキシャル成長させることで、第2部分8bの厚みを元の厚みまで増加させることができる。厚みを増加させた第2部分8bを再利用して、半導体装置の製造を行うことができる。
【0026】
上述したように、実施例1の製造方法では、第1改質層14と第2改質層16が横方向に沿って交互に配置されている。また、第1改質層14と第2改質層16との間の距離d3が短い。すなわち、隣接する改質層14、16間に位置する半導体領域は、他の半導体領域(例えば、各改質層14、16の第1表面2a側に位置する半導体領域)よりも薄く、機械的な強度が低い。このため、半導体基板2を分割するときには、ガスの圧力によって、隣接する改質層14、16の間に位置する半導体領域(すなわち、強度が低い部分)に向かってクラックが生じ易く、当該半導体領域に劈開が生じる。その結果、第1改質層14と第2改質層16に沿って横方向に半導体基板2を分割することができる。このように、本実施例の製造方法では、ガスの圧力による意図しない方向へのクラックを抑制することができ、歩留まり良く半導体装置10を製造することができる。
【0027】
また、本実施例では、第1改質層14及び第2改質層16を形成するときに、第1改質層14と第2改質層16とが重複する重複範囲20を有するように、各改質層14、16が形成される。このため、第1改質層14と第2改質層16の間の距離d3がより短くなり、半導体基板2を分割するときに、第1改質層14と第2改質層16の間の半導体領域に向かってよりクラックが生じ易い構成となっている。このため、クラックの方向の制御がより容易となる。
【0028】
(実施例2)
次に、実施例2の製造方法について説明する。実施例2では、実施例1の図4に示す工程の後に、図7に示す第3改質層形成工程を実施する。第3改質層形成工程では、第2表面2b側から半導体基板2にレーザ114を照射する。レーザ114は、半導体基板2の内部の第1改質層14から第2改質層16の間の深さ範囲で焦点S3を形成するように照射される。ここでは、半導体基板2を上から見たときに、半導体基板2の第1改質層14と第2改質層16との重複範囲20で、レーザ114の照射位置を半導体基板2の厚さ方向に沿って移動させることで、半導体基板2の内部に、第1改質層14と第2改質層16を接続する第3改質層18を形成する。その後、実施例1の図5に示す工程と同様にして、半導体基板2を分割する。この工程では、第1改質層14、第2改質層16及び第3改質層18に沿って、半導体基板2を分割する。
【0029】
実施例2の製造方法では、第1改質層14と第2改質層16を接続する第3改質層18をさらに形成する。半導体基板2の内部には、第1表面2a及び第2表面2bに沿って、強度が低い第1改質層14、第3改質層18及び第2改質層16が連続して形成されるので、より弱い力で各改質層14、16、18に沿って半導体基板2を分割することができる。
【0030】
(実施例3)
次に、実施例3の製造方法について説明する。実施例3では、図8に示す第2改質層形成工程が実施例1と異なっている。実施例3では、各第2改質層19を形成する深さ範囲R2と、第1表面2aから第2改質層19までの距離d2とは、実施例1の第2改質層16と略等しい。ただし、実施例3では、図8の左右方向における第2改質層16の幅が、実施例1の第2改質層16の幅よりも狭い。換言すると、実施例3では、半導体基板2を上から見たときに、第2改質層19が隣接する2つの第1改質層14と重複しないように、各第2改質層19が形成される。すなわち、半導体基板2を上から見たときに、第1改質層14と第2改質層19の間に間隔を有するように、各第2改質層19が形成される。第1改質層14と第2改質層16との間の距離d3は、上記距離d1及び距離d2よりも短い。
【0031】
その後、図9に示すように、実施例1と同様にして、第1改質層14及び第2改質層19に沿って、半導体基板2を第1部分8aと第2部分8bに分割する。
【0032】
実施例3では、第1改質層14と第2改質層19が、横方向に沿って間隔を空けて交互に配置されるように各改質層14、19が形成される。このため、第1改質層14の形成におけるレーザ110の照射領域と、第2改質層19の形成におけるレーザ112の照射領域とが、横方向において重複し難い。このため、各改質層14、19を形成するためのレーザ110、112の半導体基板2内部における進行が妨げられ難く、好適に各改質層14、19を形成することができる。以下、第1表面2aに沿う方向における、第1改質層14と第2改質層19の間の間隔についてより詳細に説明する。
【0033】
図10は、実施例3において第2改質層19を形成すべき領域を示す図である。ハッチングされた領域19aが第2改質層19を形成する予定の領域(形成予定領域19aという)である。実施例3では、図10に示すように、第1改質層14を形成するときのレーザ110のビーム角を2θ、焦点S1の深さから形成予定領域19aの下端までの距離をtとしたときに、第1改質層14の端部から距離tsinθ以上の間隔を空けて第2改質層19を形成する。このように、第1改質層14の端部から距離tsinθ以上の間隔を空けて第2改質層19を形成することにより、第1改質層14を形成するためのレーザ110の集光領域と、第2改質層19を形成するためのレーザ112の集光領域とが重複することを効果的に抑制することができる。その結果、各レーザ110、112の進行を妨げずに好適に第2改質層19を形成することができる。
【0034】
上述した実施例1及び3では、深さ範囲R1と深さ範囲R2の一部が重複してもよい。例えば、実施例1では、第1改質層14と第2改質層16が繋がるように各改質層14、16を形成してもよい。
【0035】
また、実施例3の製造方法では、半導体基板2の内部に各第2改質層19を形成した後に、各第1改質層14を形成してもよい。レーザの照射領域が重複し難い。このため、レーザの照射面から近い範囲に位置する第2改質層を先に形成しても、第1改質層を形成するためのレーザの進行が妨げられ難い。
【0036】
また、上述した各実施例では、第1表面2a側に幅広の第1改質層14を形成し、第2表面2b側に幅狭の第2改質層16、19を形成した。しかしながら、第1表面2a側に幅狭の複数の改質層を形成し、第2表面2b側に幅広の複数の改質層を形成してもよい。このような構成であっても、各改質層に沿って半導体基板を分割することができる。
【0037】
以上、実施形態について詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例をさまざまに変形、変更したものが含まれる。本明細書または図面に説明した技術要素は、単独あるいは各種の組み合わせによって技術有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組み合わせに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの1つの目的を達成すること自体で技術有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0038】
2:化合物半導体基板、2a:第1表面、2b:第2表面、6:素子構造、8a:第1部分、8b:第2部分、10:半導体装置、14:第1改質層、16:第2改質層、18:第3改質層、20:重複範囲
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10