IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ キヤノン株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-像加熱装置及び画像形成装置 図1
  • 特開-像加熱装置及び画像形成装置 図2
  • 特開-像加熱装置及び画像形成装置 図3
  • 特開-像加熱装置及び画像形成装置 図4
  • 特開-像加熱装置及び画像形成装置 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024124845
(43)【公開日】2024-09-13
(54)【発明の名称】像加熱装置及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/20 20060101AFI20240906BHJP
【FI】
G03G15/20 515
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023032791
(22)【出願日】2023-03-03
(71)【出願人】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000718
【氏名又は名称】弁理士法人中川国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】上原 崇
(72)【発明者】
【氏名】宮本 明知
(72)【発明者】
【氏名】小栗 寛司
(72)【発明者】
【氏名】武本 沙利志
【テーマコード(参考)】
2H033
【Fターム(参考)】
2H033AA03
2H033BA11
2H033BA12
2H033BA25
2H033BA26
2H033BA27
2H033BB03
2H033BB05
2H033BB06
2H033BB13
2H033BB14
2H033BB15
2H033BB18
2H033BB21
2H033BB29
2H033BB30
2H033BB33
2H033BE00
2H033BE03
(57)【要約】
【課題】ヒータが有する発熱体から定着ベルトへの熱伝達効率の低下を抑制する。
【解決手段】円筒状のベルトと、記録材の搬送方向に並べた複数の発熱体を有し、ベルトを加熱する加熱手段と、ベルトを介して加熱手段に対向して配置され、ベルトとの間に記録材を挟持する挟持部において加熱手段とベルトとを接触させる接触部を形成する加圧部材と、を備えた像加熱装置であって、加圧部材は、軸部と、軸部の周囲に積層された、記録材の搬送方向に直交する長手方向の中央より端部の層厚が大きい弾性層と、を有し、挟持部の端部における接触部の第二の接触幅が、挟持部の中央部における接触部の第一の接触幅よりも大きい接触部を形成し、複数の発熱体は、搬送方向に直交する長手方向に分割され、搬送方向に重ならない位置に設けられた発熱領域を有し、加熱手段は、各発熱体の発熱領域の少なくとも一部を接触部の内側に配置する。
【選択図】 図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状のベルトと、
記録材の搬送方向に並べた複数の発熱体を有し、前記ベルトを加熱する加熱手段と、
前記ベルトを介して前記加熱手段に対向して配置され、前記ベルトとの間に記録材を挟持する挟持部において前記加熱手段と前記ベルトとを接触させる接触部を形成する加圧部材と、を備え、
前記加熱手段の熱によって記録材に形成された画像を加熱する像加熱装置であって、
前記加圧部材は、軸部と、前記軸部の周囲に積層された、記録材の搬送方向に直交する長手方向の中央より端部の層厚が大きい弾性層と、を有し、前記挟持部の前記長手方向の端部における前記接触部の前記搬送方向の第二の接触幅が、前記挟持部の前記長手方向の中央部における前記接触部の前記搬送方向の第一の接触幅よりも大きい前記接触部を形成し、
前記複数の発熱体は、前記搬送方向に直交する長手方向に分割され、前記搬送方向に重ならない位置に設けられた発熱領域を有し、
前記加熱手段は、各発熱体の発熱領域の少なくとも一部を前記接触部の内側に配置し、
前記複数の発熱体のうち、長手方向の中央よりも端部寄りの発熱領域を有する少なくとも1つの発熱体は、その発熱領域が前記接触部において長手方向の中央の第一の接触幅より搬送方向の外側に配置される、ことを特徴とする像加熱装置。
【請求項2】
前記複数の発熱体のうち、その発熱領域が前記第一の接触幅より搬送方向の外側に配置される前記1つの発熱体は、長手方向の最も端部を加熱する発熱体である、ことを特徴とする請求項1に記載の像加熱装置。
【請求項3】
前記複数の発熱体は、全ての発熱体の発熱領域が前記接触部の内側に配置されている、ことを特徴とする請求項1に記載の像加熱装置。
【請求項4】
前記加熱手段は、前記複数の発熱体のうち、長手方向の外側に発熱領域を有する発熱体ほど、搬送方向の外側に配置して、各発熱体の発熱領域の少なくとも一部を前記接触部の内側に配置した、ことを特徴とする請求項1に記載の像加熱装置。
【請求項5】
前記加熱手段は、前記複数の発熱体として、第一の発熱領域を有する第一の発熱体と、非発熱領域を挟んで前記第一の発熱領域よりも長手方向の長さが短い発熱領域を長手方向の両側に有するその他の発熱体と、を有し、
前記第一の発熱体を、前記その他の発熱体に比べて前記接触部の前記搬送方向の中央寄りに配置し、
前記その他の発熱体を、前記第一の発熱体を中心にして前記搬送方向の外側に配置した、ことを特徴とする請求項1に記載の像加熱装置。
【請求項6】
前記加熱手段が有する複数の発熱体は、前記発熱領域の長手方向の単位長さ当たりの電力が同じであり、
前記複数の発熱体は、前記搬送方向に直交する長手方向の長さが長い発熱領域を有する発熱体ほど、電力が高い、ことを特徴とする請求項5に記載の像加熱装置。
【請求項7】
前記加圧部材は、前記弾性層の外径が、前記長手方向の中央より端部の方が大きい、ことを特徴とする請求項1に記載の像加熱装置。
【請求項8】
前記加圧部材は、前記軸部の外径が、前記長手方向の端部より中央の方が大きい、ことを特徴とする請求項1に記載の像加熱装置。
【請求項9】
前記加熱手段は、前記複数の発熱体を記録材の搬送方向に並べた基板を有し、前記基板の前記ベルトと接触する面に前記複数の発熱体を設けた、ことを特徴とする請求項1に記載の像加熱装置。
【請求項10】
前記加熱手段は、各発熱体の長手方向の一方が独立した電極に接続され、他方が共通の電極に接続され、各発熱体が独立して給電可能な構成である、ことを特徴とする請求項1に記載の像加熱装置。
【請求項11】
記録材に画像を形成する画像形成部と、記録材に形成された画像を記録材に定着する定着部と、を有する画像形成装置であって、
前記定着部が請求項1乃至請求項10のいずれか1項に記載の像加熱装置である、ことを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録材に形成された画像を加熱する像加熱装置及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真装置・静電記録装置などの画像形成装置においては、シート状の記録材の上に未定着のトナー画像を形成し、そのトナー画像を定着装置により加熱・加圧して記録材上に定着している。
【0003】
従来の定着装置のうちの1つとして、加熱手段にセラミックヒータを使用した定着装置がある。この定着装置では、クイックスタート性(オンデマンド性)を有し、画像形成装置のスタンバイ時に、定着装置への電力供給を極力抑え、消費電力を少なくする省エネルギータイプの定着ベルト加熱方式が採用されている。定着ベルト加熱方式の定着装置は、加熱手段としてのセラミックヒータと、加圧部材としての加圧ローラとの間に定着ベルトを介在させて定着ニップ部を形成する。この定着ニップ部において、定着ベルトと加圧ローラとにより未定着トナー像を担持した記録材を挟持搬送しつつ、トナー像を熱と圧力で記録材に定着させる。
【0004】
ところが、近年の画像形成装置の定着装置は、更なる急速温度上昇によるウォームアップタイムの短縮と多様なサイズの記録材対応が求められてきている。ウォームアップタイム短縮のために前記ヒータの熱容量を小さくすると、記録材の最大幅に合わせた長さの発熱体のみでは、記録材が通過する通紙部領域に対して、記録材が通過しない非通紙部領域の温度が高くなり過ぎてしまう。
【0005】
そこで、記録材幅に合わせて給電を制御可能な複数の発熱体を備えるヒータが提案されている。特許文献1では、記録材の搬送方向に直交する長手方向に長さ(記録材幅)の異なる複数の発熱体を、記録材の搬送方向に並べて配置し、記録材幅に合わせて給電を制御することで、非通紙部領域の昇温を抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2021-96469号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記従来技術において、多くの記録材幅に対応する場合、ヒータの発熱体の数は増える方向になり、全ての発熱体を、ヒータと定着ベルトとの接触部の搬送方向内側に配置することが難しくなる。この場合、複数の発熱体のうち、前記接触部の搬送方向外側に配置された発熱体は、定着ベルトに対する熱伝達の距離が遠くなってしまい、熱伝達効率が低下してしまう。
【0008】
そこで、本発明の目的は、ヒータが有する発熱体から定着ベルトへの熱伝達効率の低下を抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するための本発明の代表的な構成は、円筒状のベルトと、記録材の搬送方向に並べた複数の発熱体を有し、前記ベルトを加熱する加熱手段と、前記ベルトを介して前記加熱手段に対向して配置され、前記ベルトとの間に記録材を挟持する挟持部において前記加熱手段と前記ベルトとを接触させる接触部を形成する加圧ローラと、を備え、前記加熱手段の熱によって記録材に形成された画像を加熱する像加熱装置であって、前記加圧ローラは、軸部と、前記軸部の周囲に積層された、記録材の搬送方向に直交する長手方向の中央より端部の層厚が大きい弾性層と、を有し、前記挟持部の前記長手方向の端部における前記接触部の前記搬送方向の第二の接触幅が、前記挟持部の前記長手方向の中央部における前記接触部の前記搬送方向の第一の接触幅よりも大きい前記接触部を形成し、前記複数の発熱体は、前記搬送方向に直交する長手方向に分割され、前記搬送方向に重ならない位置に設けられた発熱領域を有し、前記加熱手段は、各発熱体の発熱領域の少なくとも一部を前記接触部の内側に配置し、前記複数の発熱体のうち、長手方向の中央よりも端部寄りの発熱領域を有する少なくとも1つの発熱体は、その発熱領域が前記接触部において長手方向の中央の第一の接触幅より搬送方向の外側に配置される、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、加熱手段が有する各発熱体の発熱領域の少なくとも一部を挟持部の内側に配置することによって、加熱手段が有する発熱体からベルトへの熱伝達効率の低下を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】画像形成装置
図2】(a)(b)定着器の概略断面図
図3】(a)(b)加圧ローラの概略断面図
図4】定着器におけるヒータの概略図
図5】(a)(b)ヒータとニップ幅の関係図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明の好適な実施の形態を例示的に詳しく説明する。ただし、以下の実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、それらの相対配置などは、本発明が適用される装置の構成や各種条件により適宜変更されるべきものであり、本発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0013】
(画像形成装置)
本実施例に係る画像形成装置について、図1を用いて説明する。図1は本実施例に係る画像形成装置の概略構成図である。
【0014】
図1に示すように、画像形成装置100は、記録材に画像を形成する画像形成部として、4つの画像形成ステーションを備えている。第一の画像形成ステーション(y)はイエロー、第二の画像形成ステーション(m)はマゼンタ、第三の画像形成ステーション(c)はシアン、第四の画像形成ステーション(k)はブラックの各色の画像形成を行う。
【0015】
なお、これらの画像形成ステーションの構成は、現像剤としてのトナーの色が異なる以外は同様の構成である。そのため、以降の説明では、代表としてイエローの画像形成ステーションの構成を説明し、その他の色の画像形成ステーションの説明は省略する。
【0016】
画像形成ステーション(y)において、101yは第一の像担持体である感光ドラム、102yは帯電ローラ、103yは露光装置、104yは現像器、105yは1次転写ローラ、106yは感光体クリーナを示している。107は第二の像担持体である中間転写ベルト、108は2次転写ローラ、110は中間転写ベルトクリーナを示している。111は給紙カセット、112はピックアップローラ、113は給紙ローラ、114はレジローラ、115、116、117、118は搬送ローラを示している。Eyは露光のレーザー光、Pは紙等の記録材を示している。
【0017】
画像形成装置全体の制御を行うCPU(不図示)が、記録材Pへの画像形成命令を受けることで、感光ドラム101y、現像器104y、2次転写ローラ108はそれぞれ駆動装置(不図示)によって図1に示す矢印方向に所定の速度で回転駆動される。
【0018】
感光ドラム101yはこの回転過程で、帯電ローラ102yにより所定の極性および電位に一様に帯電される。次に、帯電された感光ドラム101yは、画像信号に応じた露光装置103yからのレーザー照射により、感光ドラム101y上に静電潜像が形成される。その後、静電潜像が形成された感光ドラム101yは、現像位置において現像器104yによりトナーを用いてトナー像が現像される。感光ドラム101y上に形成されたトナー像は、1次転写部にて1次転写ローラ105yによって中間転写ベルト107に転写される。
【0019】
同様に、その他の画像形成ステーションにて各感光ドラム101上に現像された各色のトナー像は、各々1次転写ローラ105によって中間転写ベルト107に重ねて転写される。中間転写ベルト107上の4色のトナー像は、2次転写部に送られる。
【0020】
以上の過程において、感光ドラム101上および中間転写ベルト107上に残留したトナーは、それぞれ、感光体クリーナ106および中間転写ベルトクリーナ110によって掻き取られ、回収される。
【0021】
一方、給紙カセット111に収容された記録材Pは、ピックアップローラ112によって繰り出され、給紙ローラ113によって一枚ずつ給紙される。給紙された記録材Pは、レジストローラ114にて斜行が補正される。斜行補正された記録材Pは、レジストローラ114によって所定のタイミングで2次転写部に送られる。給紙ローラ113は記録材Pの重送防止、レジストローラ114は記録材Pの斜行防止のために備えられている。
【0022】
中間転写ベルト107上に重ねて転写された4色のトナー像は、2次転写部にて2次転写ローラ108によって記録材Pの表面に転写される。このとき、記録材Pは、中間転写ベルト107上のトナー像が2次転写ローラ108を通過するタイミングに合わせて、レジストローラ114によって2次転写部に送られる。中間転写ベルト107上の4色のトナー像は、高圧基板(不図示)により2次転写ローラ108に印加された電圧によって、記録材Pの表面に一括して転写される。
【0023】
2次転写ローラ108によってトナー像が転写された記録材Pは、定着装置1に送られる。定着装置1は、記録材Pに形成された画像(トナー像)を記録材Pに定着する。
【0024】
画像が定着された記録材Pは、その後、搬送ローラ115、116、117、118を介して画像形成装置100の外部に排紙される。このようにして、カラー画像が形成された記録材Pを得る。
【0025】
以上説明した画像形成装置100による画像形成動作は、画像形成装置100の上面の操作部119、あるいはネットワークを経由して、ユーザからの指示によって行われる。また、この一連の画像形成動作は、操作部119、あるいはネットワークを経由した各入力信号に従って制御部としてのCPU(不図示)が制御している。
【0026】
(定着装置)
次に定着装置1について、図2(a)及び図2(b)を用いて説明する。図2(a)及び図2(b)は記録材Pの搬送方向に沿った定着装置1の概略断面図である。
【0027】
画像形成装置100は、記録材Pに形成された画像を加熱する像加熱装置として、前記定着装置(定着部)1を備えている。
【0028】
図2(a)及び図2(b)に示すように、定着装置1は、定着ヒータユニット2と、加圧ローラ3と、を備えている。記録材Pは、トナー像の定着時に定着ヒータユニット2と加圧ローラ3との間を挟持搬送される。
【0029】
図2(a)に示すように、定着ヒータユニット2は、セラミックヒータ(以下、「定着ヒータ」という)20と、横断面が半円弧桶形のヒータホルダ2bと、補強板金2cと、円筒形状の無端ベルトである定着フィルム2aと、を備えている。ヒータホルダ2bは、定着ヒータ20を支持する支持体である。補強板金2cは、逆U字形であり、加圧ローラ3により加圧された際に、定着ヒータユニット2が変形しないように設けられている。
【0030】
加熱手段としての定着ヒータ20は、複数の発熱体21~24と、前記複数の発熱体21~24を記録材Pの搬送方向に並べた基板25と、を備えている。基板25は、記録材Pの搬送方向に直交する幅方向を長手とする絶縁性、耐熱性、低熱容量の基板である。
【0031】
定着ヒータ20は、基板25の一方の面である定着フィルム2aと接触する面に複数の発熱体21~24を設けている。また発熱体21~24は、絶縁を確保するために保護ガラス26に覆われている。定着ヒータ20は、ヒータホルダ2bに固定して支持されている。
【0032】
さらに定着ヒータ20は、基板25の定着フィルム2aとの接触面側に、摺動層として厚さ10[μm]程度のポリイミド層を設けてもよい。この摺動層(ポリイミド層)により、定着フィルム2aと定着ヒータ20との摺擦抵抗を低減することで、駆動トルクの低減および定着フィルム2aの内面の磨耗を防止することができる。
【0033】
定着フィルム2aは、厚さ30[μm]のステンレスを円筒状に形成した基材上に、厚さ約300[μm]のシリコーンゴム層(弾性層)がリングコート法により形成されている。さらに弾性層上には、定着フィルム2aの最表面層として、厚さ20[μm]のPFA(テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)樹脂チューブが被覆された構造となっている。
【0034】
定着フィルム2aは、内面にグリスが塗布され、ヒータホルダ2bと定着フィルム2aの内面との摺動性の向上が図られている。
【0035】
なお、定着フィルム2aは、ステンレス以外に、ニッケル系金属材料や、ポリイミド等の耐熱樹脂などを円筒状の基材に用いてもよい。また、ポリイミド等の耐熱樹脂を基材として用いる場合には、摺動層としてのポリイミド層は必要なくなる。
【0036】
加圧ローラ3は、定着フィルム2aを介して定着ヒータ20に対向して配置されている。ここでは、加圧ローラ3は、定着ヒータユニット2の下方に設けられている。加圧ローラ3は、ステンレス製の芯金(軸部)3a上に、シリコーンゴム層(弾性層)3b、PFA樹脂チューブ(表層)3cを順に積層した多層構造の加圧部材である。この加圧ローラ3の芯金3aの両端部が装置フレームの側板(不図示)間に回転可能に軸受保持されている。
【0037】
ヒータホルダ2bは、耐熱性の高い液晶ポリマー樹脂で形成されており、定着ヒータ20を保持するとともに定着フィルム2aをガイドする役割を果たしている。ヒータホルダ2bの両端部は、不図示の加圧機構により総圧90~320[N]の力で加圧ローラ3の方向に付勢されている。その結果、定着ヒータ20の下面(加熱面とは反対側の面)が、定着フィルム2aを介して加圧ローラ3の弾性層に抗して所定の押圧力をもって圧接され、定着に必要な所定幅の定着ニップ部Nを形成する。言い換えれば、加圧ローラ3は、定着フィルム2aを介して定着ヒータ20に対向して配置されており、定着ヒータ20に定着フィルム2aを接触させ、定着フィルム2aとの間に記録材Pを挟持する挟持部(定着ニップ部N)を形成する。
【0038】
このような構成の定着装置1は、加圧ローラ3が、駆動系(不図示)により、記録材Pの搬送方向に回転駆動(図2では反時計回り)される。加圧ローラ3が回転駆動されることで、定着フィルム2aは、定着ヒータ20の基板表面に密着摺動して、ヒータホルダ2bの周囲を回動する。
【0039】
定着装置1は、定着温度を検出するための温度検出手段としてのサーミスタ2dを備える。サーミスタ2dは、熱源である定着ヒータ20の下面(加熱面)に対して上面(非加熱面)に設置されている。サーミスタ2dは、定着ヒータ20の中央温度を検出する機能を担っている。
【0040】
定着装置1は、サーモスタット2eを備える。サーモスタット2eは、定着ヒータ20の温度が所定温度(目標温度)に達するとバイメタルが反転して接点が開放される感温スイッチである。サーモスタット2eは、定着ヒータ20の温度が所定温度を超えると、接点が開放されて、定着ヒータ20への電力供給を遮断する機能を担っている。なお、定着ヒータ20に供給される電力は交流電力である。
【0041】
加圧ローラ3が回転駆動され、それに伴って円筒状の定着フィルム2aが従動回転状態になると、定着ヒータ20に通電(交流電力の供給)が行われる。そして、定着ヒータ20の温度が目標温度に到達して温度調整された状態になると、定着ニップ部Nに未定着トナー像を担持した記録材Pが導入される。
【0042】
定着ニップ部Nでは、記録材Pのトナー像を担持する面が定着フィルム2aの外面に密着する。記録材Pは、定着ニップ部Nにおいて定着フィルム2aとともに移動する。記録材Pが定着ニップ部Nで挟持されて搬送される過程において、定着ヒータ20からの熱が定着フィルム2aを介して記録材Pに付与される。定着ヒータ20からの熱により、未定着のトナー像が記録材P上に溶融定着される。定着ニップ部Nを通過した記録材Pは、定着フィルム2aから分離されて搬送される。
【0043】
また図2(b)は定着装置1のニップ部を説明するものである。定着フィルム2aの外面と加圧ローラ3との間に形成される定着ニップ部N(挟持部)に対し、定着フィルム2aの内面と定着ヒータ20とが接触する接触部としてのフィルムニップFが形成される。定着フィルム2aはヒータホルダ2bの形状により定着ヒータ20に対する接触幅が制限される。そのため、前記接触部としてのフィルムニップFの幅は、定着ヒータ20の短手幅よりも狭い幅となる。ここで、定着ヒータ20の短手幅とは、基板25の長手方向と直交する搬送方向の長さのことであり、フィルムニップFの幅(接触幅)とは、前記接触部の前記搬送方向の長さのことである。定着ヒータ20で発生した熱はフィルムニップFを経由して定着フィルム2aの内面から外面に伝達され、定着フィルム2aに密着した記録材Pに伝達される。
【0044】
なお、ここではフィルムニップFの幅(接触幅)が定着ヒータ(基板25)の短手幅より狭い構成を例示しているが、これに限定されるものではない。フィルムニップFの幅は図2(b)に示す範囲より広い範囲であっても良く、例えばフィルムニップFの幅が定着ヒータ20の幅と同じ幅であっても良い。ただし、フィルムニップFの幅は、定着ニップ部Nの幅(前記搬送方向の長さ)を超えることはない。
【0045】
(加圧ローラ)
次に、加圧ローラ3について図3(a)および図3(b)を用いて詳しく説明する。図3(a)および図3(b)は加圧ローラ3の概略断面図である。
【0046】
上述したように、定着装置1においては、定着フィルム2aを介して定着ヒータ20に圧接する加圧ローラ3の回転駆動により、定着フィルム2aを従動回転させ、記録材Pを搬送している。そのため、加圧ローラ3の径が定着ヒータ20からの熱で膨張して変化すると、加圧ローラ3によって搬送される記録材Pの搬送速度が変化することになる。これは、加圧ローラ3の熱膨張による径の変化に伴って、記録材Pの搬送速度が枚数を追うごとに変化するためである。これ以外に、加圧ローラ3の長手方向に関しても弾性層(ゴム層)の表面部に温度ムラが生じ、その外径が中央と端部で異なってくることに起因して、記録材Pの搬送速度が中央と端部で異なってくるためである。つまり、加圧ローラ3は、連続通紙を行うに従い、中央部の方が熱がこもり易く、端部は外気への放熱、加圧ローラ3を回転駆動するギアヘの伝熱などにより、端部に比べて中央部の外径が大きい、所謂クラウン形状となる。このような状態の加圧ローラ3で記録材Pを搬送すると、端部に比べて中央部の方が記録材Pの搬送速度が速いため、記録材に対して端部から中央部の方向に力が働き、記録材Pの中央部に搬送方向にならって紙シワが発生することになる。
【0047】
この紙シワは、記録材Pの剛性が弱くなる薄紙ほど顕著に発生してしまうのが一般的である。同様の理由で、高湿環境下に放置されることでも、記録材Pに含まれる水分量が多くなって記録材Pの剛性が低下することになり、紙シワの発生が顕著となってしまう。
【0048】
また、昨今、環境保護の観点から記録材の使用量の削減が望まれていることや、両面プリントを自動的に行える装置の普及などにより、両面プリントを行う機会が増えている。両面プリントでは、1面目が定着ニップ部を通過すると、記録材Pに熱が加わるため水分は蒸発するが、その際に記録材Pが変形(所謂カール)してしまう。そのため、2面目が定着ニップ部を通過する際にも紙シワが発生しやすくなる。
【0049】
そこで、この紙シワの発生を防止するために、加圧ローラ3の外径形状を、中央部よりも両端部の外径が大きい、所謂逆クラウン形状とする。これにより、加圧ローラ3は、連続通紙を行い熱膨張に伴う外径変化が発生しても、両端部の外径が中央部よりも大きいか若しくは同等となる。そのため、加圧ローラ70による記録材Pの搬送速度は、中央部より両端部の方が速いか若しくは同等となる。これにより、定着ニップ部Nにて挟持搬送されている記録材Pに対して、長手方向の両端部に向けて引っ張る力が働くことで、紙シワの発生を防止することができる。
【0050】
詳しくは、加圧ローラ3は、図3(a)および図3(b)に示すように、軸部としての芯金3aと、芯金3aの周囲に積層された弾性層としてのシリコーンゴム層3bと、を有している。
【0051】
ここでは、図3(a)に示すように、芯金71の形状を、中央部を最大径(直径)D1=14mmに形成し、両端に向かって徐々にテーパー状に小径化し、両端部を直径D2=11mmに形成している。この芯金3aの周囲に外径がD3=17mmとなるようにシリコーンゴム層72を設けている。さらに加圧ローラ3は、シリコーンゴム層3bの周囲に表層として、厚さ30[μm]のPFA樹脂チューブ3cを積層したものである。
【0052】
すなわち、芯金3aは、記録材Pの搬送方向に直交する長手方向の中央部の外径D1より端部の外径D2が小さい形状に形成されている。また、シリコーンゴム層3bは、記録材Pの搬送方向に直交する長手方向の中央部の層厚d1より端部の層厚d2が大きい形状に形成されている。
【0053】
ここで加圧ローラ3が温度上昇した場合に加圧ローラ3の体積膨張はシリコーンゴム層の熱膨張に依存するため、熱が付与されたときの加圧ローラ3の外径の形状としては、図3(b)に示すような逆クラウン形状となる。これにより、加圧ローラ3は、記録材Pを送る場合、長手方向の端部に向かって記録材を伸ばすような力が働くため、紙シワの発生を抑えることができる。熱が付与されたときの加圧ローラ3の外径は、中央部に比べて端部の外径が大きくなり、例えば中央部でD4=0.17mm、端部でD5=0.28mm、外径が大きくなる。これにより、定着フィルム2aの外面と加圧ローラ3との間に形成される定着ニップ部N(挟持部)は長手方向の中央部より端部の方がニップ幅が広くなる。
【0054】
加圧ローラ3は、定着フィルム2aとの間に記録材Pを挟持する定着ニップ部Nにおいて定着ヒータ20と定着フィルムとを接触させるフィルムニップFを形成する。そのため、定着ヒータ20と定着フィルム2aとの接触部であるフィルムニップFも、前記定着ニップ部Nと同様に、長手方向の中央部より端部の方がニップ幅(接触幅)が広くなる。
【0055】
すなわち、加圧ローラ3は、定着ニップ部Nの長手方向の端部におけるフィルムニップFの搬送方向の第二の接触幅が、定着ニップ部Nの長手方向の中央部におけるフィルムニップFの搬送方向の第一の接触幅よりも大きい前記フィルムニップFを形成する。
【0056】
フィルムニップFの第一の接触幅、第二の接触幅を図5(b)に示す。図5(b)に示すニップ幅D7が、定着ニップ部Nの長手方向の端部(N2)におけるフィルムニップFの搬送方向の第二の接触幅である。また図5(b)に示すニップ幅D6が、定着ニップ部Nの長手方向の中央部(N1)におけるフィルムニップFの搬送方向の第一の接触幅である。
【0057】
(定着ヒータ)
次に、定着ヒータ20について図4を用いて詳しく説明する。図4は本実施例における定着ヒータ20の詳細図である。
【0058】
定着ヒータ20は、記録材Pの搬送方向に並べた複数の発熱体21~24を有している。なお、ここでは、定着ヒータ20は4本の発熱体21~24を有する構成を例示しているが、本発明はこれに限らず、複数本の発熱体に適用できる。
【0059】
複数の発熱体21~24は、アルミナや窒化アルミ等のセラミックを素材とする基板25に対して、基板25の一方の面である定着フィルム2aと接触する面に設けられている。複数の発熱体21~24は、銀パラジウム(Ag/Pd)等で構成され、前記基板25の前記一方の面に印刷、焼成されている。
【0060】
そして定着ヒータ20は、各発熱体21~24が独立して給電可能な構成となっている。具体的には、定着ヒータ20の各発熱体21~24は、銀(Ag)等の導電体パターンを介して、長手方向の一方の端部が独立した電極31~34にそれぞれ接続され、他方の端部が共通の電極35に接続されている。更に発熱体21~24は、厚さ60~90[μm]の保護ガラス26で覆われている。
【0061】
複数の発熱体21~24は、それぞれ発熱領域21a~24aを有しており、各電極31~34から通電することで、通電された発熱体の発熱領域が点灯し発熱する。なお、各発熱体21~24は、それぞれ通電時に発熱しない非発熱領域21b~24bを有している。定着ヒータ20において、各発熱体21~24の発熱領域21a~24aは、以下のようにして、前記搬送方向に直交する長手方向に分割され、前記搬送方向に重ならない位置に設けられている。
【0062】
定着ヒータ20において、第一の発熱体21は、長手方向の両側が非発熱領域21b、21bに挟まれた1つの発熱領域21aを有する。その他の発熱体である第二の発熱体22、第三の発熱体23、第四の発熱体24は、それぞれ非発熱領域22b、23b、24bを挟んで長手方向の両側に発熱領域22a、23a、24aを有する。
【0063】
4本の発熱体21~24のうち、第一の発熱体21の発熱領域21aは長手方向の中央に配置されている。定着ヒータ20において、記録材Pの通過する長手方向の中央を中央点Aとし、図中に破線で示す。その他の発熱体22~24の各発熱領域22a~24aは、中央点Aから定着ヒータ20の長手方向の外側に向かって第一の発熱領域21aから順に、第二の発熱領域22a、第三の発熱領域23a、第四の発熱領域24aの順で配置されている。また、発熱体21~24(の発熱領域)は、中央点Aを基準として定着ヒータ20の長手方向において対称な形状とし、互いに長さと抵抗値、電力が異なる。
【0064】
第二の発熱体22の非発熱領域22bは、長手方向の長さが第一の発熱領域21aと同じである。そのため、中央点Aを基準として長手方向に対称な形状である第二の発熱体22の第二の発熱領域22aは、搬送方向において第一の発熱領域21aに重ならない。
【0065】
第三の発熱体23の非発熱領域23bは、長手方向の長さが第一の発熱領域21aとその両側の第二の発熱領域22aとを合わせた長さと同じである。そのため、中央点Aを基準として長手方向に対称な形状である第三の発熱体23の第三の発熱領域23aは、搬送方向において第一の発熱領域21aとその両側の第二の発熱領域22aに重ならない。
【0066】
第四の発熱体24の非発熱領域24bは、長手方向の長さが第一の発熱領域21aとその両側の第二の発熱領域22aとさらにその両側の第三の発熱領域23aとを合わせた長さと同じである。そのため、中央点Aを基準として長手方向に対称な形状である第四の発熱体24の第四の発熱領域24aは、搬送方向において第一の発熱領域21aとその両側の第二の発熱領域22aとさらにその両側の第三の発熱領域23aに重ならない。
【0067】
なお、図4に示す定着ヒータにおける発熱体の発熱領域の長さおよび発熱領域の配置場所は例示であって、これに限定されるものではない。発熱体の発熱領域の長さおよび発熱領域の配置場所は、画像形成装置が対応できる複数の記録材の幅などに応じて、適宜決定する。
【0068】
そして定着ヒータ20の各発熱体21~24は、制御部(不図示)によって、定着ニップ部Nを通過する記録材Pの搬送方向と直交する長手方向の幅に応じた給電の制御が行われる。例えば記録材Pの搬送方向に直交する長手方向の幅(以下、長手幅という)がW1-1の場合、制御部は第一の発熱体21に対する給電を制御し、記録材の長手幅W1-1に対して記録材の端部の非通紙領域の昇温を抑制しつつ、通紙領域内の温度低下を防止する。このとき、制御部はその他の発熱体22~24は加熱しない(または非通紙領域を所望の温度に温調する制御を行うものとする)。次に記録材Pの長手幅がW1-2の場合、制御部は第一の発熱体21および第二の発熱体22に対する給電を制御し、記録材の長手幅W1-2における記録材の端部の非通紙領域の昇温を抑制しつつ、通紙領域内の温度低下を防止する。具体的には、第一の発熱体21によって長手方向の中央の温度を一定に保つ給電を基準とし、第二の発熱体22に対する給電は第一の発熱体21の給電に対する比率で制御する。このとき、その他の発熱体23~24は加熱しない(または非通紙領域を所望の温度に温調する制御を行うものとする)。同様にして、記録材の長手幅W1-3、W1-4おいて、記録材の長手幅の内側に位置する発熱体に対する給電を制御部によって制御することによって、記録材の端部の非通紙領域の昇温を抑制しつつ、通紙領域内の温度低下を防止する。
【0069】
ここでは発熱体22~24の給電を、発熱体21の給電に対する比率で決定するものとして説明したが、各発熱体の領域ごとに温度検出手段を設けて個別に制御しても良いものとする。
【0070】
定着ヒータユニット2を構成する定着ヒータ20において、発熱体によって発生した熱はフィルムニップFを介して直接、定着フィルム2aに伝達される。このとき、定着ヒータ20において、発熱体がフィルムニップFよりも外側にある場合、その発熱体は定着フィルム2aに接触していない。そのため、そのニップFよりも外側の発熱体によって発生した熱は、直接定着フィルム2aに伝達されずに、基板25を介して間接的に定着フィルム2aに伝達されることになる。
【0071】
そこで、本実施例に係る定着ヒータ20は、図5(b)に示すように構成している。本実施例に係る定着装置1について図5(b)を用いて詳しく説明する。本実施例に係る定着装置1について、図5(a)に示す比較例と比較しながら説明する。
【0072】
図5(a)および図5(b)は定着ニップ部NにおけるフィルムニップFのニップ幅と定着ヒータ20の発熱体21~24との関係を示す図である。図5(a)は比較例におけるフィルムニップFのニップ幅と定着ヒータ20の発熱体21~24との関係図である。図5(b)は本実施例におけるフィルムニップFのニップ幅と定着ヒータ20の発熱体21~24との関係図である。
【0073】
本実施例に係る加圧ローラ3は、図5(b)に示すように、定着ニップ部Nの長手方向の端部N2におけるフィルムニップFのニップ幅D7が、定着ニップ部Nの長手方向の中央部N1におけるフィルムニップFのニップ幅D6よりも大きい前記フィルムニップFを形成する。
【0074】
これに対し比較例では、図5(a)に示すように、加圧ローラ3の中央部と端部の外径が同じ場合を例示している。比較例に係る加圧ローラ3は、定着ニップ部Nの長手方向の端部N2におけるフィルムニップFのニップ幅D6が、定着ニップ部Nの長手方向の中央部N1におけるフィルムニップFのニップ幅D6と同じ前記フィルムニップFを形成する。
【0075】
図5(a)に示す比較例のように、加圧ローラ3の中央部と端部の外径が同じ場合には、定着ニップ部Nの中央部N1と端部N2におけるフィルムニップFのニップ幅D6がD6=4mmで等しくなる。定着ヒータ20が有する複数の発熱体21~24のすべてをニップ幅D6の内側に配置することは困難である。そのため、複数の発熱体21~24のうち、最も搬送方向の外側に配置された発熱体23を、熱伝達効率の悪いフィルムニップF(=ニップ幅D6)の外側に配置しなければいけなくなる。そのため、発熱体23は、他の発熱体に比べて、熱伝達効率が低下するため、発熱体の電力を高くする必要があり、定着ヒータとしての消費電力が増えることになる。
【0076】
一方、図5(b)に示す本実施例のように、加圧ローラ3の中央部より端部の外径が大きい場合には、定着ニップ部Nの中央部N1におけるフィルムニップFのニップ幅D6(4mm)よりも、定着ニップ部Nの端部N2におけるフィルムニップFのニップ幅D7(5mm)の方が大きくなる。すなわち、フィルムニップFのニップ幅D6、D7は、D6<D7という関係性になる。
【0077】
この構成において、本実施例では、前述したように、複数の発熱体21~24は、長手方向に分割され、搬送方向に重ならない位置に設けられた発熱領域21a~24aを有している。これにより、前述したフィルムニップFの関係性を有する構成において、各発熱体21~24の発熱領域21a~24aの少なくとも一部をフィルムニップF(のニップ幅D6,D7)の内側に配置することが可能になる。
【0078】
また複数の発熱体21~24のうち、長手方向の中央よりも端部寄りの発熱領域を有する少なくとも1つの発熱体は、その発熱領域がフィルムニップFにおいて長手方向の中央のニップ幅D6より搬送方向の外側に配置される。
【0079】
本実施例では、複数の発熱体21~24のうち、その発熱領域が第一の接触幅であるニップ幅D6より搬送方向の外側に配置される前記1つの発熱体は、長手方向の最も端部を加熱する発熱体24である。すなわち、本実施例では、複数の発熱体21~24のうち、長手方向の中央よりも端部寄りの発熱領域24aを有する発熱体24は、その発熱領域24aがフィルムニップFにおいて長手方向の中央のニップ幅D6より搬送方向の外側に配置される。
【0080】
本実施例では、図5(b)に示すように、複数の発熱体21~24は、全ての発熱体21~24の発熱領域21a~24aの少なくとも一部が、ニップ幅D6,D7を有する逆クラウン形状のフィルムニップFの内側に配置されている。そのため、複数の発熱体21~24のうち、最も搬送方向の外側に配置された発熱体24は、定着ニップ部Nの中央部N1におけるニップ幅D6の外側だが、端部N2におけるニップ幅D7の内側に入ることになる。
【0081】
また本実施例では、定着ヒータ20は、複数の発熱体21~24のうち、長手方向の外側に発熱領域を有する発熱体ほど、搬送方向の外側に配置している。したがって、本実施例では、図5(b)に示すように、複数の発熱体21~24を、第一の発熱体21を中心にして、発熱体22、23、24の順で搬送方向の外側に配置している。
【0082】
以上のように、定着ヒータ20が有する複数の発熱体21~24は、長手方向に分割され、搬送方向に重ならない位置に設けられた発熱領域21a~24aを有している。この構成の定着ヒータ20において、加圧ローラ3の中央部より端部の外径が大きいことを利用して、定着ヒータ20の発熱体21~24の配置をニップF内に収める。これにより、熱伝達効率の良い定着装置を実現することができる。
【0083】
なお、図5(b)に示す本実施例では発熱体21~24のうち、端部寄りの発熱体23,24の発熱領域23a,24aの一部分がニップ幅D7の内側に入るようにしているが、これに限定されない。例えば、発熱体全体がニップ幅D7の内側に入っていても構わない。
【0084】
また本実施例では、定着ヒータ20は、複数の発熱体21~24として、第一の発熱領域24aを有する第一の発熱体21と、非発熱領域22b~24bを挟んで第一の発熱領域24aよりも長手方向の長さが短い発熱領域22a~24aを長手方向の両側に有するその他の発熱体22~24と、を有する。そして、第一の発熱体21を、その他の発熱体22~24に比べてフィルムニップFの搬送方向の中央寄りに配置している。また、その他の発熱体22~24を、第一の発熱体21を中心にして搬送方向の外側に配置している。
【0085】
本実施例では、前述した配置構成において、各発熱体ごとの発熱領域の長手方向における単位長さ当たりの電力量は同じものであるとし、長手方向の長さが長い発熱体(発熱領域)ほど電力が高いものとする。
【0086】
すなわち、定着ヒータ20が有する複数の発熱体21~24は、発熱領域21a~24aの長手方向の単位長さ当たりの電力が同じである。そして、複数の発熱体21~24は、長手方向の長さが長い発熱領域を有する発熱体ほど、電力が高い。具体的には、発熱体21、22、23、24の順で、発熱領域の搬送方向の長さが長く、したがってその順で電力が高い。
【0087】
これにより、消費電力の大きい発熱体は定着フィルム2aに対する熱伝達効率が良くなり、定着フィルム2aを加熱するために必要な消費電力を抑制することができ、定着ヒータユニット2の全体として最大限効率の良い温調が可能となる。
【0088】
表1にヒータにおける発熱体と対応用紙サイズとの関係の具体例を示す。対応用紙サイズとは、各発熱体の制御によって通紙領域内の温度が所望の温度に温調される定型サイズの記録材の種類(紙種)を意味する。用紙幅は、対応用紙サイズにおいて定着ニップ部を通過する記録材の搬送方向に直交する幅方向の長さを意味する。発熱体全長は、通紙する用紙幅に対して通紙領域の温調のために給電する発熱体の長手方向(幅方向)の合計長である。また各発熱体21~24は、対応する用紙幅ごとに給電を変化させ、どの用紙幅の条件においても非通紙領域の昇温を所定の値以下に抑える制御を行われるものとする。
【0089】
一例として、対応用紙サイズがSTMT_R(139.7[mm])の場合は、複数の発熱体のうち、第一の発熱体21(170[mm])のみで通紙領域内を所望の温度に温調するように制御する。また、対応用紙サイズがA4R(210[mm])の場合は、第一の発熱体21(170[mm])と第二の発熱体22(60[mm])とで発熱体の全長を230[mm]とし、用紙(210[mm])の通紙領域内を所望の温度に温調するように制御する。
【0090】
【表1】
【0091】
ここで、本実施例の定着ヒータ20の構成による効果について、比較例を用いて説明する。
【0092】
本実施例の定着ヒータ20は、図5(b)に示すように、各発熱体21~24の発熱領域21a~24aの少なくとも一部を前記接触部(フィルムニップF)の内側に配置している。そして、複数の発熱体21~24のうち、長手方向の中央よりも端部寄りの発熱領域を有する少なくとも1つの発熱体(ここでは発熱体24)は、その発熱領域が前記接触部において長手方向の中央のニップ幅D6より搬送方向の外側に配置される。さらに複数の発熱体21~24を、電力が高い方から順に、定着ヒータ20と定着フィルム2aとの接触部(フィルムニップF)の前記搬送方向の中央寄りに配置している。
【0093】
これに対し、比較例では、図5(a)に示す複数の発熱体21~24のうち、1、2、4番目に電力が高い発熱体21、22、24を順にフィルムニップFの短手幅W2の中央寄りに配置している。そして、3番目に電力の高い第三の発熱体23をフィルムニップFの外側に配置している。なお、比較例の定着ヒータは、複数の発熱体21~24の前記搬送方向の並び順が異なるだけで、それ以外の構成は本実施例の定着ヒータ20と同様である。
【0094】
比較例の場合、記録材Pの用紙幅(長手幅)がW1-4の場合、制御部は全ての発熱体21~24に対する給電を制御する。このとき、比較例の定着ヒータでは、第三の発熱体23がフィルムニップFの外側に配置されている。そのため、比較例の定着ヒータでは、本実施例の定着ヒータに比べて、定着フィルム2aを所望の温度に保つために、消費電力がより多く必要になる。
【0095】
本実施例の定着ヒータ20は、複数の発熱体21~24を、各発熱体21~24の発熱領域21a~24aの少なくとも一部をフィルムニップFの内側に配置しているため、定着フィルム2aを所望の温度に保つために必要な電力が、比較例に比べて減少する。そのため、定着ヒータユニット2としての省エネ化が可能になる。
【0096】
さらに本実施例の定着ヒータ20は、複数の発熱体21~24を、電力が高い方から順に、フィルムニップFの前記搬送方向の中央寄りに配置しているため、定着フィルム2aを所望の温度に保つために必要な電力が、さらに減少する。そのため、定着ヒータユニット2としてのさらなる省エネ化が可能になる。
【0097】
また言い換えれば、同じ消費電力でより多くの熱を定着ヒータ20から定着フィルム2aに伝達することが可能になる。そのため、記録材Pが定着ニップ部Nを通過する際の定着フィルム2aの温度低下を防止することができ、定着フィルム2aの温度低下に伴う生産性低下を抑制することが可能になる。
【0098】
なお、前述した実施例では、加圧ローラ3は、弾性層であるシリコーンゴム層3bの層厚が、長手方向の中央部より端部の方が大きい構成を例示したが、これに限定されるものではない。例えば、加圧ローラ3は、弾性層であるシリコーンゴム層3bの外径が、長手方向の中央部より端部の方が大きい構成であっても良い。
【0099】
また前述した実施例では、加圧ローラ3は、軸部である芯金3aの外径が、長手方向の端部より中央部の方が大きい構成を例示したが、これに限定されるものではない。例えば、芯金の外径が、長手方向の端部と中央部で同じであって、弾性層であるシリコーンゴム層3bの外径が、長手方向の中央部より端部の方が大きい構成であっても良い。
【0100】
また前述した実施例では、複数の発熱体を発熱体21~24の4系統として説明したが、前記以外の系統数でもよいものとする。
【0101】
また前述した実施例では、各発熱体21~24の発熱領域の単位長さ当たりの電力を同じものとして説明したが、発熱体の材料など異なる手段によって各発熱体ごとの電力量を決め、電力の高い発熱体から順にフィルムニップFの内側に配置しても良いものとする。
【0102】
また、電力の高い発熱体21~24ほどフィルムニップFの前記搬送方向の中央寄りに配置する構成は、最も電力が高い発熱体21をフィルムニップFの前記搬送方向の中央に配置する構成に限定されるものではない。最も電力が高い発熱体21を、それよりも電力が低いその他の発熱体22~24に比べて、フィルムニップFの前記搬送方向の中央寄りに配置する構成であれば良く、前述した実施例と同様の効果が得られる。
【0103】
また、本発明を複数の感光ドラムを有する電子写真方式のフルカラーの画像形成装置に適用した例を説明したが、本発明はこれに限らず、各種方式の画像形成装置、単色の画像形成装置などにも適用できる。
【0104】
また前述した実施例では、画像形成装置としてプリンタを例示したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば複写機、ファクシミリ装置等の他の画像形成装置や、或いはこれらの機能を組み合わせた複合機等の他の画像形成装置であっても良い。また中間転写体を使用し、該中間転写体に各色のトナー像を順次重ねて転写し、該中間転写体に担持されたトナー像を記録材に一括して転写する画像形成装置を例示したが、これに限定されるものではない。記録材担持体を使用し、該記録材担持体に担持された記録材に各色のトナー像を順次重ねて転写する画像形成装置であっても良い。これらの画像形成装置に用いられる像加熱装置に本発明を適用することにより同様の効果を得ることができる。
【0105】
また前述した実施例では、像加熱装置としてプリンタや複写機等の画像形成装置に搭載される定着装置を例示した。しかしながら、本発明はこのような定着装置に限られるものではなく、例えば、記録材に形成された画像の光沢性を向上させる光沢付与装置等の像加熱装置にも適用できる。また、画像形成装置に搭載されない像加熱装置にも適用できる。
【符号の説明】
【0106】
F …フィルムニップ(接触部)
N …定着ニップ部(挟持部)
P …記録材
1 …定着装置
2 …定着ヒータユニット
2a …定着フィルム
2b …ヒータホルダ
2c …補強板金
2d …サーミスタ
2e …サーモスタット
3 …加圧ローラ(加圧部材)
3a …芯金(軸部)
3b …シリコーンゴム層(弾性層)
3c …樹脂チューブ(表層)
20 …定着ヒータ(加熱手段)
21~24 …発熱体
21a~24a …発熱領域
25 …基板
26 …保護ガラス
31~35 …電極
100 …画像形成装置
図1
図2
図3
図4
図5