IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本精機株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-車載表示機器の電源装置 図1
  • 特開-車載表示機器の電源装置 図2
  • 特開-車載表示機器の電源装置 図3
  • 特開-車載表示機器の電源装置 図4
  • 特開-車載表示機器の電源装置 図5
  • 特開-車載表示機器の電源装置 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024124847
(43)【公開日】2024-09-13
(54)【発明の名称】車載表示機器の電源装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 16/02 20060101AFI20240906BHJP
【FI】
B60R16/02 660K
B60R16/02 640K
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023032796
(22)【出願日】2023-03-03
(71)【出願人】
【識別番号】000231512
【氏名又は名称】日本精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮部 博之
(72)【発明者】
【氏名】關 裕也
(57)【要約】
【課題】 動作状態を適切に管理できる車載表示機器の電源装置を提供する。
【解決手段】 車載表示機器に電源を供給する車載表示機器の電源装置であって、差動信号に基づいてオン/オフ動作が切り替えられる電源部と、電源部の動作を制御する制御部と、を備え、制御部は、車載表示機器が動作中であることを示す動作信号が出力されている場合には、差動信号の値がオフを示していても、電源部の動作を継続させる。また、制御部は、作動信号の値がオフになった後、車載表示機器における終了処理が完了後に電源部の動作を停止させる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車載表示機器に電源を供給する車載表示機器の電源装置であって、
差動信号に基づいてオン/オフ動作が切り替えられる電源部と、
前記電源部の動作を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記車載表示機器が動作中であることを示す動作信号が出力されている場合には、前記差動信号の値がオフを示していても、前記電源部の動作を継続させる、車載表示機器の電源装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記差動信号の値がオフになった後、前記車載表示機器における終了処理が完了後に前記電源部の動作を停止させる、請求項1に記載の車載表示機器の電源装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記差動信号の値を監視して前記車載表示機器に与える監視部と、
前記差動信号に基づいて前記電源部のオン/オフ動作を切替える切替部と、を備え、
前記切替部は、前記差動信号の値がオフを示していても前記動作信号が出力されている場合には、前記電源部の動作を継続させる、請求項1に記載の車載表示機器の電源装置。
【請求項4】
前記監視部は、前記動作信号が出力されている場合に限り、前記差動信号の値を監視して前記車載表示機器に与える、請求項3に記載の車載表示機器の電源装置。
【請求項5】
前記車載表示機器は、前記監視部から与えられる前記差動信号の値がオフを示す場合には、前記動作信号の出力を維持した状態で終了処理を実行する、請求項4に記載の車載表示機器の電源装置。
【請求項6】
前記車載表示機器は、前記終了処理が完了すると、前記動作信号の出力を停止する、請求項5に記載の車載表示機器の電源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車載表示機器の電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
マイコンの動作時から電源オフシーケンス処理が終了するまでの間、電源のオン状態を継続させる車載用制御装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-160640号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方、ヘッドアップディスプレイなどの車載表示機器の電源装置として、車載の通信ユニットからPoC(Power over Coax)で送られる差動信号に重畳された電力により、電源のオン/オフ状態が制御される電源装置が知られている。しかしながら、差動信号のHigh電圧/Low電圧で電源のオン/オフ状態を直ちに切替える場合には、差動信号の切り替わりと同時に電源が失われるため、車載表示機器での終了シーケンスが守れなくなるという問題がある。また、ケーブルに重畳した電気的なノイズ等により、差動信号の値がHigh電圧からLow電圧に瞬間的に移行してしまう可能性がある。したがって、そのような場合にも電源のオン状態を維持する機能が必要となる。
【0005】
本開示は、動作状態を適切に管理できる車載表示機器の電源装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
1つの側面では、
車載表示機器に電源を供給する車載表示機器の電源装置であって、
差動信号に基づいてオン/オフ動作が切り替えられる電源部と、
前記電源部の動作を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記車載表示機器が動作中であることを示す動作信号が出力されている場合には、前記差動信号の値がオフを示していても、前記電源部の動作を継続させる、車載表示機器の電源装置が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、動作状態を適切に管理できる車載表示機器の電源装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施例の電源装置の構成を示す図である。
図2】検出部の構成例を示す図である。
図3】監視部の構成例を示す図である。
図4】切替部の構成例を示す図である。
図5】電源装置の動作を示すタイミングチャートである。
図6】演算器における起動処理および終了処理に係る動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照しながら実施例について説明する。
【0010】
図1は、本実施例の電源装置の構成を示す図である。
【0011】
図1に示すように、本実施例の電源装置1は、演算器31を有する車載表示機器30(例えば、ヘッドアップディスプレイ)に、車載のバッテリー(不図示)から電源供給を行う電源部PUと、電源部PUの動作を制御する制御部10と、を備える。演算器31は、例えば、SoC(System-on-a-Chip)により構成される。
【0012】
図1に示すように、制御部10は、車載の通信ユニット(不図示)から出力される差動信号に重畳される電圧の値(以下、「差動電圧Δ」と記す)を検出して信号S0に変換する検出部11と、信号S0を監視し、監視結果を演算器31に与える監視部12と、信号S0に基づいて電源部PUのオン/オフ状態を切り替える切替部13と、を備える。なお、本実施例では、制御部10をハードウェア(電子回路)により構成しているが、これらの機能のすべてまたは一部をソフトウェアにより構成してもよい。
【0013】
図2は、検出部の構成例を示す図である。
【0014】
図2の例では、検出部11は、通信ユニットに接続されたラインL1およびラインL2を介して伝送される差動電圧Δを受けるN型のフォトトランジスタPTと、フォトトランジスタPTと連動してオン/オフするP型のトランジスタTr1とを備える。図2に示すように、ラインL1には、抵抗R1およびコンデンサC1からなる積分回路が、ラインL2には、抵抗R2およびコンデンサC2からなる積分回路が、それぞれ接続され、これらの積分回路を経由した差動電圧ΔがフォトトランジスタPTに入力される。なお、これらの積分回路は、差動電圧Δに重畳される電気的なノイズの影響を抑制するなどの機能を有する。
【0015】
本実施例では、差動電圧ΔのHigh/Lowが、それぞれ電源部PUのオン/オフ動作に対応している。
【0016】
差動電圧ΔがHigh、すなわちラインL1の電位がラインL2の電位よりも所定の閾値を越えて高い状態になると、フォトトランジスタPTがオンし、抵抗R3を介してフォトトランジスタPTに接続されたトランジスタTr1もオンする。したがって、検出部11から出力される信号S0は、トランジスタTr1を介してプルアップされ、Highとなる。
【0017】
差動電圧ΔがLow、すなわちラインL1の電位がラインL2の電位よりも所定の閾値を越えて低い状態になると、フォトトランジスタPTがオフし、抵抗R3を介してフォトトランジスタPTに接続されたトランジスタTr1もオフする。したがって、グランドに接続されたプルダウン抵抗R4により、検出部11から出力される信号S0はLowとなる。
【0018】
図3は、監視部の構成例を示す図である。
【0019】
図3の例では、監視部12は、信号S0が入力されるP型のトランジスタTr11と、演算器31からの保持信号HOLDが入力されるN型のトランジスタTr12と、抵抗R11と、抵抗R12と、を備えるAND回路として構成される。なお、本実施例では、保持信号HOLDがHighであるとき、車載表示機器30が動作中であることを示す動作信号が演算器31から出力されている状態に相当する。また、車載表示機器30が動作していないとき、保持信号HOLDは、Lowとなる。演算器31による保持信号HOLDの制御についてはさらに後述する。
【0020】
図3に示す監視部12では、信号S0がLowのとき、または保持信号HOLDがLowのとき、いずれも監視部12から出力される信号DETはLowとなる。信号S0と保持信号HOLDがともにHighのときに限り、監視部12から出力される信号DETは、Highとなる。
【0021】
監視部12は、保持信号HOLDをトリガとして、すなわち保持信号HOLDがHighのときに限り、信号S0を監視する機能を有する。監視部12は、保持信号HOLDがHighの間、信号S0(High/Low)に対応する信号DET(High/Low)を出力し、信号HOLDがLowのとき、信号DETはLowに維持される。
【0022】
図4は、切替部の構成例を示す図である。
【0023】
図4の例では、切替部13は、信号S0が入力されるダイオードD1と、演算器31からの保持信号HOLDが入力されるダイオードD2と、プルダウン抵抗R21と、を備えるOR回路として構成される。切替部13は、信号S0または保持信号HOLDのいずれかがHighのときに、Highとなる信号PWRを出力する。また、切替部13は、信号S0または保持信号HOLDの両者がLowのときに限り、信号PWRをLowとする。
【0024】
信号PWRは、電源部PUのオン/オフ動作を制御する信号であり、信号PWRがHighのときに電源部PUはオンし、信号PWRがLowのときに電源部PUはオフする。
【0025】
次に、本実施例の電源装置1の動作について説明する。
【0026】
図5は、電源装置の動作を示すタイミングチャート、図6は、演算器における起動処理および終了処理に係る動作を示すフローチャートである。
【0027】
まず、車載表示機器30への電源供給が開始される場合の動作について説明する。
【0028】
差動電圧ΔがLowからHighに移行すると、検出部11から出力される信号S0は、図5の時刻t0~時刻t1においてLowからHighに移行する。
【0029】
また、切替部13は信号S0に対応する、LowからHighに移行する信号SWRを出力する。これにより、電源部PUはオンし、電源部PUから演算器31を含む車載表示機器30に電源が供給される。
【0030】
演算器31に電源が供給されると、図6に示す処理が開始され、ステップS102では、演算器31における起動処理が実行される。起動処理が完了するまで、保持信号HOLDはLowに維持される。
【0031】
次に、起動処理(ステップS102)が完了すると、ステップS104において、演算器31は、保持信号HOLDをLowからHighに切り替え(図5の時刻t2)、処理をステップS106へ移行させる。これにより、図5に示すように、保持信号HOLDがLowからHighに切り替わるとともに、監視部12から出力される信号DETがLowからHighに切り替わる。
【0032】
ステップS106では、演算器31は、信号DETがLowであるか否か判断する。
【0033】
以上の処理により、車載表示機器30が起動し、差動電圧ΔがHighに維持されている間、ステップS106の判断は否定され、車載表示機器30の動作が継続される。
【0034】
次に、車載表示機器30への電源供給が停止される場合の動作について説明する。
【0035】
差動電圧ΔがHighからLowに移行すると、検出部11から出力される信号S0は、図5の時刻t3~時刻t4においてHighからLowに移行する。また、保持信号HOLDがHighに維持されているため、監視部12から出力される信号DETは、信号S0と同様にHighからLowに移行する。
【0036】
これにより、ステップS106の判断が肯定されるため、演算器31は、ステップS108へ処理を進める。
【0037】
ステップS108では、演算器31は、終了処理を実行する。このとき、終了処理が完了するまで、保持信号HOLDは、Highに維持されている。なお、終了処理の内容は任意であるが、例えば、車載表示機器30の動作終了に際して実行すべき終了シーケンスとして定められた車載の通信ユニットとの間での通信処理、データ格納処理などが、終了処理に含まれる。
【0038】
終了処理(ステップS108)が完了すると、演算器31は、ステップS110において、保持信号HOLDをHighからLowに切り替え(図5の時刻t5)、図6の処理を終了する。保持信号HOLDがHighからLowに切り替わると、切替部13から出力される信号PWRもHighからLowに切り替わるため、電源部PUがオフする。
【0039】
以上説明したように、本実施例では、検出部11により差動電圧Δを信号S0に変換しているので、切替部13において、信号S0の値に基づいて電源部PUをオン/オフすることができる。
【0040】
また、信号HOLDを用いて切替部13の動作を制御することにより、電源部PUをオン状態に保持することが可能となる。このため、差動電圧Δの値がオフを示した場合でも、演算器31が終了処理を完了するまでの間、電源を確保することができる。例えば、差動電圧Δに重畳するノイズに起因して信号S0が一時的にLowとなった場合や、車載表示機器30(演算器31)の起動処理の開始直後に差動電圧ΔがLowに切り替わった場合でも、車載表示機器30(演算器31)は電源を喪失することなく、必要な処理(例えば、起動処理や終了処理)を継続、完了できる。
【0041】
また、監視部12は、信号HOLDをトリガとして信号S0を監視する。すなわち、信号HOLDがHighであることを条件として演算器31に信号DETが与えられる。このため、車載表示機器30(演算器31)の起動前に演算器31に信号S0が直接、印加されて誤動作等が発生することが防止できる。例えば、図5における時刻t1から時刻t2の間で信号S0がLowに切り替わったとしても、信号DETはLowを維持するため、車載表示機器30における起動処理と終了処理とが正常に実行される。すなわち、図6のステップS102~S110の処理が正常に進行する。
【0042】
また、切替部13は、信号HOLDがLowになっていることを条件として、信号PWRをHighからLowに切り替えている。このため、電源部PUをオフにするタイミングを演算器31により制御できるので、車載表示機器30(演算器31)における終了処理が完了後に、電源部PUをオフすることができる。
【0043】
以上のように、本実施例の電源装置1によれば、電源部PUの動作状態を適切に管理できる。これにより車載表示機器30(演算器31)に対する適切な電源供給を確保できる。
【0044】
以上、実施例について詳述したが、特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された範囲内において、種々の変形及び変更が可能である。また、前述した実施例の構成要素を全部又は複数を組み合わせることも可能である。
【符号の説明】
【0045】
1 電源装置
10 制御部
11 検出部
12 監視部
13 切替部
30 車載表示機器
31 演算器
PU 電源部
図1
図2
図3
図4
図5
図6