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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024124850
(43)【公開日】2024-09-13
(54)【発明の名称】ダンプトラック
(51)【国際特許分類】
   B60P 1/16 20060101AFI20240906BHJP
   B60L 50/60 20190101ALI20240906BHJP
【FI】
B60P1/16 B
B60L50/60
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023032799
(22)【出願日】2023-03-03
(71)【出願人】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000442
【氏名又は名称】弁理士法人武和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大島 健史
(72)【発明者】
【氏名】山本 武男
【テーマコード(参考)】
5H125
【Fターム(参考)】
5H125AA12
5H125AB01
5H125AC12
5H125BA00
5H125BE05
5H125DD01
5H125EE51
(57)【要約】
【課題】タイヤ及び油圧ポンプを共通のモータで駆動させるダンプトラックにおいて、意図しない動作を防止する技術を提供する。
【解決手段】ダンプトラックは、タイヤ及び走行モータの間に配置されて、走行モータの駆動力をタイヤに伝達する伝達状態、及び走行モータの駆動力をタイヤに伝達しない非伝達状態に切り替え可能な走行クラッチと、走行クラッチの接続状態を検知するための走行クラッチセンサと、走行モータ及び走行クラッチを制御するコントローラとを備える。コントローラは、ダンプトラックの停車中に油圧機器を駆動する場合には、走行クラッチセンサの検知結果に基づいて走行クラッチが非伝達状態だと判定した後に(S22:Yes)、走行モータを駆動する(S26)。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤを回転可能に支持する車体フレームと、
前記車体フレームに着座して積荷を積載可能な着座姿勢、及び積荷を放出可能な放出姿勢に姿勢変化可能に前記車体フレームに支持された荷台と、
作動油が給排されることによって前記荷台を姿勢変化させるホイストシリンダと、
電力を蓄電する蓄電装置と、
前記蓄電装置から供給される電力によって、前記タイヤを回転させる駆動力を発生させる走行モータと、
前記走行モータの駆動力によって、前記ホイストシリンダを含む油圧機器に向けて作動油を圧送する油圧ポンプと、
前記タイヤ及び前記走行モータの間に配置されて、前記走行モータの駆動力を前記タイヤに伝達する伝達状態、及び前記走行モータの駆動力を前記タイヤに伝達しない非伝達状態に切り替え可能な走行クラッチとを備えるダンプトラックにおいて、
前記走行クラッチの接続状態を検知するための走行クラッチセンサと、
前記走行モータ及び前記走行クラッチを制御するコントローラとを備え、
前記コントローラは、前記ダンプトラックの停車中に前記油圧機器を駆動する場合には、前記走行クラッチセンサの検知結果に基づいて前記走行クラッチが前記非伝達状態だと判定した後に、前記走行モータを駆動することを特徴とするダンプトラック。
【請求項2】
請求項1に記載のダンプトラックにおいて、
前記コントローラは、前記ダンプトラックの走行を開始する場合には、前記走行クラッチセンサの検知結果に基づいて前記走行クラッチが前記伝達状態だと判定した後に、前記走行モータを駆動することを特徴とするダンプトラック。
【請求項3】
請求項1に記載のダンプトラックにおいて、
前記油圧ポンプから圧送された作動油を蓄圧するアキュームレータと、
前記アキュームレータに蓄圧された作動油を前記走行クラッチに供給する供給位置、及び前記走行クラッチから排出された作動油を作動油タンクに還流させる還流位置に切り替え可能な切替弁とを備え、
前記走行クラッチは、作動油が供給されて前記伝達状態となり、作動油が排出されて前記非伝達状態となり、
前記走行クラッチセンサは、前記切替弁及び前記走行クラッチの間の油圧を検知し、
前記コントローラは、
前記走行クラッチセンサで検知した油圧が閾値以上の場合に、前記走行クラッチが前記伝達状態だと判定し、
前記走行クラッチセンサで検知した油圧が前記閾値未満の場合に、前記走行クラッチが前記非伝達状態だと判定することを特徴とするダンプトラック。
【請求項4】
請求項1に記載のダンプトラックにおいて、
前記走行モータ及び前記油圧ポンプの間に配置されて、前記走行モータの駆動力を前記油圧ポンプに伝達する伝達状態、及び前記走行モータの駆動力を前記油圧ポンプに伝達しない非伝達状態に切り替え可能なポンプクラッチを備えることを特徴とするダンプトラック。
【請求項5】
請求項1に記載のダンプトラックにおいて、
前記タイヤは、第1タイヤ及び第2タイヤからなり、
前記走行モータは、前記蓄電装置から供給される電力によって、前記第1タイヤ及び前記第2タイヤをそれぞれ回転させる駆動力を発生させる第1走行モータ及び第2走行モータを有し、
前記油圧ポンプは、前記第1走行モータの駆動力によって、前記油圧機器に向けて作動油を圧送する第1油圧ポンプと、
前記第2走行モータの駆動力によって、前記油圧機器に向けて作動油を圧送する第2油圧ポンプとを有し、
前記走行クラッチは、
前記第1タイヤ及び前記第1走行モータの間に配置されて、前記第1走行モータの駆動力を前記タイヤに伝達する伝達状態、及び前記走行モータの駆動力を前記タイヤに伝達しない非伝達状態に切り替え可能な第1走行クラッチと、
前記第2タイヤ及び前記第2走行モータの間に配置されて、前記第2走行モータの駆動力を前記第2タイヤに伝達する伝達状態、及び前記第2走行モータの駆動力を前記第2タイヤに伝達しない非伝達状態に切り替え可能な第2走行クラッチとを備えることを特徴とするダンプトラック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電装置に蓄電された電力で駆動するダンプトラックに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、鉱山からの二酸化炭素排出を抑制することを目的として、エンジンに代えて、蓄電装置に蓄電した電力で駆動するダンプトラックの開発が進められている。このようなダンプトラックでは、エンジンに代えて、油圧ポンプを駆動するための駆動源が必要になる。
【0003】
このような課題を解決するために、特許文献1の車両は、走行モータの駆動軸の一端に走行クラッチを介してタイヤが接続されると共に、駆動軸の他端にポンプクラッチを介して油圧ポンプが接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8-98323号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の構成では、走行クラッチの切断が不十分な状態で油圧ポンプを動作させると、車両が意図せずに走行してしまう可能性がある。
【0006】
本発明は、上記した実状に鑑みてなされたものであり、その目的は、タイヤ及び油圧ポンプを共通のモータで駆動させるダンプトラックにおいて、意図しない動作を防止する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は、タイヤを回転可能に支持する車体フレームと、前記車体フレームに着座して積荷を積載可能な着座姿勢、及び積荷を放出可能な放出姿勢に姿勢変化可能に前記車体フレームに支持された荷台と、作動油が給排されることによって前記荷台を姿勢変化させるホイストシリンダと、電力を蓄電する蓄電装置と、前記蓄電装置から供給される電力によって、前記タイヤを回転させる駆動力を発生させる走行モータと、前記走行モータの駆動力によって、前記ホイストシリンダを含む油圧機器に向けて作動油を圧送する油圧ポンプと、前記タイヤ及び前記走行モータの間に配置されて、前記走行モータの駆動力を前記タイヤに伝達する伝達状態、及び前記走行モータの駆動力を前記タイヤに伝達しない非伝達状態に切り替え可能な走行クラッチとを備えるダンプトラックにおいて、前記走行クラッチの接続状態を検知するための走行クラッチセンサと、前記走行モータ及び前記走行クラッチを制御するコントローラとを備え、前記コントローラは、前記ダンプトラックの停車中に前記油圧機器を駆動する場合には、前記走行クラッチセンサの検知結果に基づいて前記走行クラッチが前記非伝達状態だと判定した後に、前記走行モータを駆動することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、タイヤ及び油圧ポンプを共通のモータで駆動させるダンプトラックにおいて、意図しない動作を防止することができる。なお、上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施形態に係るダンプトラックの側面図である。
図2】ダンプトラックに搭載される駆動回路の回路図である。
図3】コントロールバルブを構成する油圧部品の配置図である。
図4】走行クラッチ及びポンプクラッチの状態を切り替えるための油圧回路を示す図である。
図5】ダンプトラックのハードウェア構成図である。
図6】車体制御処理のフローチャートである。
図7】停車中蓄圧処理のフローチャートである。
図8】走行中蓄圧処理のフローチャートである。
図9】走行処理のフローチャートである。
図10】荷台昇降処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明に係るダンプトラックの実施形態について、図面を用いて説明する。図1は、本実施形態に係るダンプトラック1の側面図である。なお、本明細書中の前後左右は、特に断らない限り、ダンプトラック1に搭乗して操作するオペレータの視点を基準としている。
【0011】
図1に示すように、本実施形態に係るダンプトラック1は、車体フレーム2と、車体フレーム2の前部の左右両端に回転可能に支持された一対の前タイヤ3L、3Rと、車体フレーム2の後部の左右両端に回転可能に支持された一対の後タイヤ4L、4Rと、車体フレーム2上に起伏可能に支持された荷台5と、ダンプトラック1を操作するオペレータが搭乗するキャブ6とを主に備える。
【0012】
一対の前タイヤ3L、3Rは、オペレータによるステアリング操作によって舵角が変わる操舵輪である。一方、一対の後タイヤ4L、4Rは、走行モータ13L、13R(図2参照)の駆動力が伝達されて回転する駆動輪である。なお、ダンプトラック1は、左右一対の後タイヤ4L、4Rそれぞれに独立して駆動力を伝達するために、左右一対の走行モータ13L、13Rを備える。
【0013】
荷台5は、ホイストシリンダ7の伸縮によって、車体フレーム2の後部のヒンジピン8を中心として、上下方向に起伏(姿勢変化)する。ホイストシリンダ7は、一端が車体フレーム2に接続され、他端が荷台5に接続され、油圧ポンプ18L、18R(図2参照)から作動油の供給を受けて伸縮する。そして、ホイストシリンダ7が伸長すると荷台5が起立して放土姿勢(放出姿勢)となり、ホイストシリンダ7が収縮すると荷台5が倒伏して着座姿勢となる。
【0014】
放土姿勢は、積載した積荷をダンプトラック1の後方に放出するときの荷台5の姿勢である。着座姿勢は、車体フレーム2に着座して、積荷を積載するときの荷台5の姿勢である。なお、荷台5に積載される積荷は土砂に限定されないが、土砂は積荷の代表例なので、以下、荷台5が土砂を積載するものとして説明する。
【0015】
キャブ6は、車体フレーム2の前端のデッキ9上の左端に配置されている。キャブ6は、ダンプトラック1を操作するオペレータが搭乗する運転室を形成している。そして、キャブ6の内部には、ダンプトラック1を動作させるための操作装置(図示省略)が配置されている。キャブ6に搭乗したオペレータが操作装置を操作することによって、ダンプトラック1が走行(加速、制動、旋回)し、荷台5が起伏する。操作装置は、例えば、アクセルペダル、ブレーキペダル、ステアリング、走行レバー、ホイストレバーを含む。
【0016】
アクセルペダルは、ダンプトラック1の加速を指示する操作装置である。ブレーキペダルは、ダンプトラック1の制動を指示する操作装置である。ブレーキペダルは、例えば、走行モータ13L、13Rを回生ブレーキとして機能させるリタードブレーキペダルと、油圧ブレーキ16L、16Rを駆動する油圧ブレーキペダルとを含んでもよい。ステアリングは、ダンプトラック1の旋回方向を指示する操作装置である。走行レバーは、アクセルペダルが踏み込まれたときのダンプトラック1の進行方向(前進位置、後退位置、ニュートラル位置)を指示する操作装置である。ホイストレバーは、荷台5の起伏(着座姿勢、排土姿勢)を指示する操作装置である。
【0017】
また、デッキ9の下方には、ダンプトラック1を駆動する駆動回路10が配置されている。図2は、ダンプトラック1に搭載される駆動回路10の回路図である。駆動回路10は、例えば、蓄電装置11と、インバータ12L、12Rと、走行モータ13L、13Rと、走行クラッチ14L、14Rと、減速機15L、15Rと、油圧ブレーキ16L、16R(ブレーキ装置)と、作動油タンク17と、油圧ポンプ18L、18Rと、ポンプクラッチ19L、19Rと、コントロールバルブ(C/V)20と、アキュームレータ21と、油圧補機22とを主に備える。
【0018】
本実施形態では、後タイヤ4Rが第1タイヤの一例であり、後タイヤ4Lが第2タイヤの一例であり、走行モータ13Rが第1走行モータの一例であり、走行モータ13Lが第2走行モータの一例であり、走行クラッチ14Rが第1走行クラッチの一例であり、走行クラッチ14Lが第2走行クラッチの一例であり、油圧ポンプ18Rが第1油圧ポンプの一例であり、油圧ポンプ18Lが第2油圧ポンプの一例であり、ポンプクラッチ19Rが第1ポンプクラッチの一例であり、ポンプクラッチ19Lが第2ポンプクラッチの一例である。
【0019】
蓄電装置11は、インバータ12L、12Rを介して走行モータ13L、13Rに電気的に接続されている。そして、蓄電装置11は、蓄電した電力をインバータ12L、12Rを介して走行モータ13L、13Rに供給する。また、蓄電装置11は、例えば、充電ポストや架線から供給される電力、走行モータ13L、13Rによって発電された電力を蓄電する。蓄電装置11は、例えば、リチウムイオン電池、コンデンサ、キャパシタ、またはこれらの組み合わせである。
【0020】
インバータ12L、12Rは、蓄電装置11から放電された直流電力を、三相交流電力に変換して走行モータ13L、13Rに供給する。また、インバータ12L、12Rは、コントローラ40(図5参照)の制御に従って、走行モータ13L、13Rに供給する電力の大きさや供給方向を切り替える。これにより、走行モータ13L、13Rの回転速度や回転方向が切り替えられる。さらに、インバータ12L、12Rは、走行モータ13L、13Rが発電した三相交流電力を、直流電力に変換して蓄電装置11に蓄電させる。
【0021】
走行モータ13L、13Rは、インバータ12L、12Rを介して蓄電装置11から電力の供給を受けて、後タイヤ4L、4Rを回転させる駆動力を発生させる。また、走行モータ13L、13Rが発生させる駆動力は、油圧ポンプ18L、18Rを回転させるのにも利用される。さらに、走行モータ13L、13Rは、ダンプトラック1の制動時に回生電力を発電する。
【0022】
走行クラッチ14L、14Rは、走行モータ13L、13R及び後タイヤ4L、4R(より詳細には、走行モータ13L、13R及び減速機15L、15R)の間に配置されている。そして、走行クラッチ14L、14Rは、コントローラ40の制御に従って、伝達状態及び非伝達状態に切り替えられる。走行クラッチ14L、14Rの伝達状態は、走行モータ13L、13Rの駆動力(回転)を後タイヤ4L、4Rに伝達する状態である。走行クラッチ14L、14Rの非伝達状態は、走行モータ13L、13Rの駆動力を後タイヤ4L、4Rに伝達しない状態である。
【0023】
なお、走行クラッチ14L、14Rは、走行モータ13L、13R及び減速機15L、15Rの間に配置されることによって、減速機15L、15R及び後タイヤ4L、4Rの間に配置される場合と比較して、伝達トルクが小さくなる。その結果、走行クラッチ14L、14Rの小型化及び軽量化が実現され、安価に取得することができる。
【0024】
減速機15L、15Rは、伝達状態の走行クラッチ14L、14Rによって伝達される走行モータ13L、13Rの回転を減速して後タイヤ4L、4Rに伝達する。油圧ブレーキ16L、16Rは、油圧ブレーキペダルが踏み込まれた場合に、油圧ポンプ18L、18Rまたはアキュームレータ21から供給される作動油によって、後タイヤ4L、4Rを機械的に制動する。
【0025】
作動油タンク17は、油圧機器(例えば、ホイストシリンダ7、アキュームレータ21、油圧補機22など)に対して給排される作動油を貯留する。また、作動油タンク17は、貯留した作動油の油面が常に油圧ポンプ18L、18Rより鉛直上方に位置するように配置されるのが望ましい。
【0026】
油圧ポンプ18L、18Rは、ポンプクラッチ19L、19Rを介して伝達される走行モータ13L、13Rの駆動力によって、第1方向に回転する。これにより、作動油タンク17に貯留された作動油が油圧機器(より詳細には、コントロールバルブ20)に向けて圧送される。また、油圧ポンプ18L、18Rは、アキュームレータ21から作動油が供給されることによって、第1方向と逆向きの第2方向に回転する。さらに、油圧ポンプ18L、18Rは、コントローラ40の制御に従って、1回転当たりのポンプ容量を変更可能な可変容量型である。
【0027】
ポンプクラッチ19L、19Rは、走行モータ13L、13R及び油圧ポンプ18L、18Rの間に配置されている。そして、ポンプクラッチ19L、19Rは、コントローラ40の制御に従って、伝達状態及び非伝達状態に切り替えられる。ポンプクラッチ19L、19Rの伝達状態は、走行モータ13L、13Rの駆動力(回転)を油圧ポンプ18L、18Rに伝達する状態である。ポンプクラッチ19L、19Rの非伝達状態は、走行モータ13L、13Rの駆動力を油圧ポンプ18L、18Rに伝達しない状態である。
【0028】
走行クラッチ14R及びポンプクラッチ19Rは、走行モータ13Rの両側に配置されている。より詳細には、走行モータ13Rの駆動軸は、走行モータ13Rの両側に突出している。そして、走行モータ13Rの駆動軸の一端には走行クラッチ14Rが接続され、他端にはポンプクラッチ19Rが接続されている。走行モータ13R、走行クラッチ14R、及びポンプクラッチ19Rの位置関係も同様である。
【0029】
図3は、コントロールバルブ20を構成する油圧部品の配置図である。コントロールバルブ20は、ポンプラインL1を通じて油圧ポンプ18L、18Rから供給された作動油を油圧機器に供給すると共に、油圧機器から排出された作動油をタンクラインL2を通じて作動油タンク17に還流させる。コントロールバルブ20は、油圧ポンプ18L、18R及び油圧機器の間に配置される複数の弁によって構成される。図3に示すように、コントロールバルブ20は、複数の方向切替弁27、28、29と、開閉弁30と、リリーフ弁31とで構成される。但し、コントロールバルブ20の具体的な構成は図3の例に限定されない。
【0030】
方向切替弁27は、コントローラ40の制御に従って、蓄圧位置A、ポンプ駆動位置B、バイパス位置Cに切り替え可能に構成されている。蓄圧位置Aは、ポンプラインL1を通じて油圧ポンプ18R、18Rから供給される作動油を供給ラインL3を通じてアキュームレータ21及び油圧補機22に供給する位置である。ポンプ駆動位置Bは、アキュームレータ21から排出された作動油を、ポンプラインL1を通じて油圧ポンプ18L、18Rに向けて供給する位置である。バイパス位置Cは、ポンプラインL1を通じて油圧ポンプ18L、18Rから供給される作動油を、供給ラインL3に供給せずに方向切替弁28、29に供給する位置である。
【0031】
方向切替弁28は、コントローラ40の制御に従って、ホイスト上げ位置D、ホイスト浮き位置E、ホイスト保持位置Fに切り替え可能に構成されている。ホイスト上げ位置Dは、バイパス位置Cの方向切替弁27を通じてポンプラインL1とボトムラインL5とを連通させ、ロッドラインL6とタンクラインL2とを連通させる位置である。ホイスト浮き位置Eは、ボトムラインL5とタンクラインL2とを連通させる位置である。ホイスト保持位置Fは、ホイストシリンダ7のロッド室及びボトム室に対する作動油の給排を遮断すると共に、ポンプラインL1をタンクラインL2にバイパスする位置である。
【0032】
方向切替弁29は、方向切替弁27のバイパス位置Cを通じてポンプラインL1に対して方向切替弁28とパラレル(並列)に接続されている。方向切替弁29は、コントローラ40の制御に従って、ホイスト上げ位置G、ホイスト下げ位置H、ホイスト保持位置Iに切り替え可能に構成されている。ホイスト上げ位置Gは、バイパス位置Cの方向切替弁27を通じてポンプラインL1とボトムラインL5とを連通させ、ロッドラインL6とタンクラインL2とを連通させる位置である。ホイスト下げ位置Hは、バイパス位置Cの方向切替弁27を通じてポンプラインL1とロッドラインL6とを連通させ、ボトムラインL5とタンクラインL2とを連通させる位置である。ホイスト保持位置Iは、ホイストシリンダ7のロッド室及びボトム室に対する作動油の給排を遮断すると共に、ポンプラインL1をタンクラインL2にバイパスする位置である。
【0033】
開閉弁30は、コントローラ40の制御に従って、供給ラインL3を閉塞する閉塞位置J、供給ラインL3を開放する開放位置Kに切り替え可能に構成されている。リリーフ弁31は、ポンプラインL1内の作動油の圧力が閾値を超えた場合に、ポンプラインL1内の作動油をタンクラインL2に排出する安全弁である。
【0034】
コントロールバルブ20は、方向切替弁27を蓄圧位置Aに切り替えることによって、ポンプラインL1を通じて油圧ポンプ18L、18Rから供給される作動油を、供給ラインL3を通じてアキュームレータ21に蓄圧することができる。コントロールバルブ20は、この状態から開閉弁30を開放位置Kに切り替えることによって、ポンプラインL1を通じて油圧ポンプ18L、18Rから供給される作動油を、供給ラインL3を通じて油圧補機22に供給することができる。さらに、油圧補機22から排出された作動油は、排出ラインL4及びタンクラインL2を通じて作動油タンク17に還流する。
【0035】
また、コントロールバルブ20は、方向切替弁27をポンプ駆動位置Bに切り替えることによって、アキュームレータ21から排出された作動油を、供給ラインL3及びポンプラインL1を通じて油圧ポンプ18L、18Rに供給する。さらに、コントロールバルブ20は、方向切替弁27をバイパス位置Cに切り替えることによって、ポンプラインL1を通じて油圧ポンプ18L、18Rから供給される作動油を、方向切替弁28、29にバイパスする。
【0036】
コントロールバルブ20は、方向切替弁27をバイパス位置Cに切り替え、方向切替弁28、29をホイスト上げ位置D、Gに切り替えることによって、ホイストシリンダ7のボトム室に作動油が供給され、ホイストシリンダ7のロッド室から作動油が排出される。これにより、荷台5は、着座姿勢から放土姿勢に向けて姿勢変化(すなわち、起立)する。
【0037】
コントロールバルブ20は、方向切替弁27をバイパス位置Cに切り替え、方向切替弁28をホイスト保持位置Fに切り替え、方向切替弁29をホイスト下げ位置Hに切り替えることによって、ホイストシリンダ7のボトム室から作動油が排出され、ホイストシリンダ7のロッド室に作動油が供給される。これにより、荷台5は、放土姿勢から着座姿勢に向けて姿勢変化(すなわち、倒伏)する。
【0038】
コントロールバルブ20は、方向切替弁27をバイパス位置Cに切り替え、方向切替弁28をホイスト浮き位置Eに切り替え、方向切替弁29をホイスト保持位置Iに切り替えることによって、ホイストシリンダ7のボトム室から作動油が排出されるのを許容する。これにより、荷台5は、自重によって放土姿勢から着座姿勢に向けて姿勢変化(すなわち、倒伏)することができる。
【0039】
コントロールバルブ20は、方向切替弁27をバイパス位置Cに切り替え、方向切替弁28、29をホイスト保持位置F、Iに切り替えることによって、ホイストシリンダ7に対する作動油の給排を遮断すると共に、ポンプラインL1を通じて油圧ポンプ18L、18Rから供給される作動油を作動油タンク17に還流させる。
【0040】
アキュームレータ21は、油圧ポンプ18L、18Rから供給される作動油を圧縮して貯留(すなわち、蓄圧)する。また、アキュームレータ21は、蓄圧した作動油を走行クラッチ14L、14R、油圧ブレーキ16L、16R、油圧ポンプ18L、18R、ポンプクラッチ19L、19Rなどに供給する。油圧補機22は、作動油が供給されて動作する油圧機器の総称であって、例えば、冷却ファンを駆動するファンモータなどが該当する。
【0041】
図4は、走行クラッチ14L、14R及びポンプクラッチ19L、19Rの状態を切り替えるための油圧回路を示す図である。走行クラッチ14L、14R及びポンプクラッチ19L、19Rは、作動油が給排されることによって、伝達状態及び非伝達状態に切り替えられる。図4に示すように、ダンプトラック1は、走行クラッチ14L、14R及びポンプクラッチ19L、19Rの状態を切り替えるために、切替弁32、33と、圧力センサ34、35とを主に備える。なお、走行クラッチ14L、14R及びポンプクラッチ19L、19Rの状態を切り替えるための具体的な構成は、図4の例に限定されない。
【0042】
走行クラッチ14L、14Rは、例えば、一対の摩擦板14a、14bと、コイルバネ(付勢部材)14cとで構成される。摩擦板14aは、走行モータ13L、13Rと一体回転する。摩擦板14bは、後タイヤ4L、4R(減速機15L、15R)と一体回転する。また、摩擦板14bは、摩擦板14aに対して接離可能に構成されている。さらに、コイルバネ14cは、摩擦板14bを摩擦板14aから離間させる向きに付勢する。そして、走行クラッチ14L、14Rは、摩擦板14a、14bが接触することによって伝達状態となり、摩擦板14a、14bが離間することによって非伝達状態となる。
【0043】
走行クラッチ14L、14Rに作動油が供給されていないとき、コイルバネ14cの付勢力によって摩擦板14bが摩擦板14aから離間する。また、走行クラッチ14L、14Rに作動油が供給されると、コイルバネ14cの付勢力に抗して摩擦板14bが摩擦板14aに接触する。さらに、走行クラッチ14L、14Rから作動油が排出されると、コイルバネ14cの付勢力によって再び摩擦板14bが摩擦板14aから離間する。
【0044】
ポンプクラッチ19L、19Rは、例えば、一対の摩擦板19a、19bと、コイルバネ(付勢部材)19cとで構成される。摩擦板19aは、走行モータ13L、13Rと一体回転する。摩擦板19bは、油圧ポンプ18L、18Rと一体回転する。また、摩擦板19bは、摩擦板19aに対して接離可能に構成されている。さらに、コイルバネ19cは、摩擦板19bを摩擦板19aに接触させる向きに付勢する。そして、ポンプクラッチ19L、19Rは、摩擦板19a、19bが接触することによって伝達状態となり、摩擦板19a、19bが離間することによって非伝達状態となる。
【0045】
ポンプクラッチ19L、19Rに作動油が供給されていないとき、コイルバネ19cの付勢力によって摩擦板19bが摩擦板19aに接触する。また、ポンプクラッチ19L、19Rに作動油が供給されると、コイルバネ19cの付勢力に抗して摩擦板19bが摩擦板19aから離間する。さらに、ポンプクラッチ19L、19Rから作動油が排出されると、コイルバネ19cの付勢力によって再び摩擦板19bが摩擦板19aに接触する。
【0046】
切替弁32は、アキュームレータ21から走行クラッチ14Rに至るラインL7上に配置されている。切替弁32は、コントローラ40の制御に従って、供給位置L、還流位置Mに切り替え可能に構成されている。供給位置Lは、アキュームレータ21に蓄圧された作動油を走行クラッチ14L、14Rに供給する位置である。還流位置Mは、走行クラッチ14L、14Rから排出された作動油を作動油タンク17に還流させる位置である。すなわち、切替弁32が供給位置Lに切り替えられることによって、走行クラッチ14L、14Rに作動油が供給されて伝達状態になる。また、切替弁32が還流位置Mに切り替えられることによって、走行クラッチ14L、14Rから作動油が排出されて非伝達状態になる。
【0047】
切替弁33は、アキュームレータ21からポンプクラッチ19L、19Rに至るラインL8上に配置されている。切替弁33は、コントローラ40の制御に従って、供給位置N、還流位置Oに切り替え可能に構成されている。供給位置Nは、アキュームレータ21に蓄圧された作動油をポンプクラッチ19L、19Rに供給する位置である。還流位置Oは、ポンプクラッチ19L、19Rから排出された作動油を作動油タンク17に還流させる位置である。すなわち、切替弁33が供給位置Nに切り替えられることによって、ポンプクラッチ19L、19Rに作動油が供給されて非伝達状態になる。また、切替弁33が還流位置Oに切り替えられることによって、ポンプクラッチ19L、19Rから作動油が排出されて伝達状態になる。
【0048】
圧力センサ34は、切替弁32及び走行クラッチ14L、14Rの間のラインL7上に配置されている。そして、圧力センサ34は、ラインL7上の作動油の圧力(すなわち、油圧)を検知して、検知結果を示す圧力信号をコントローラ40に出力する。圧力センサ34は、走行クラッチ14L、14Rの状態を検知するための走行クラッチセンサの一例である。圧力センサ35は、切替弁33及びポンプクラッチ19L、19Rの間のラインL8上に配置されている。そして、圧力センサ35は、ラインL8上の作動油の圧力(すなわち、油圧)を検知して、検知結果を示す圧力信号をコントローラ40に出力する。圧力センサ35は、ポンプクラッチ19L、19Rの状態を検知するためのポンプクラッチセンサの一例である。
【0049】
図5は、ダンプトラック1のハードウェア構成図である。ダンプトラック1は、コントローラ40を備える。コントローラ40は、CPU(Central Processing Unit)41と、メモリ42とを備える。メモリ42は、例えば、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、またはこれらの組み合わせで構成される。コントローラ40は、ROMまたはHDDに格納されたプログラムコードをCPU41が読み出して実行することによって、後述する処理を実現する。RAMは、CPU41がプログラムを実行する際のワークエリアとして用いられる。
【0050】
但し、コントローラ40の具体的な構成はこれに限定されず、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)などのハードウェアによって実現されてもよい。
【0051】
コントローラ40は、圧力センサ34、35、アクセルペダルセンサ43、ブレーキペダルセンサ44、走行レバーセンサ45、ホイストレバーセンサ46、荷台角度センサ47、及び蓄圧量センサ48から出力される各種信号に基づいて、蓄電装置11、インバータ12L、12R、油圧ブレーキ16L、16R、油圧ポンプ18L、18R、コントロールバルブ20、及び切替弁32、33の動作を制御する。
【0052】
アクセルペダルセンサ43は、アクセルペダルの踏込量を検知する。ブレーキペダルセンサ44は、油圧ブレーキペダルの踏込量を検知する。走行レバーセンサ45は、走行レバーの位置(前進位置、後退位置、ニュートラル位置)を検知する。ホイストレバーセンサ46は、ホイストレバーの倒伏方向(着座方向、排土方向)を検知する。荷台角度センサ47は、荷台5の角度(姿勢)を検知する。蓄圧量センサ48は、アキュームレータ21に蓄圧された作動油の量(蓄圧量)を検知する。なお、走行レバーセンサ45、ホイストレバーセンサ46は、それぞれレバーの位置を検出するものでなく、走行レバーによる前進、後進、ニュートラルの動作指令、ホイストレバーによる倒伏方向の動作指令を検出するものであってもよい。
【0053】
コントローラ40は、アクセルペダルセンサ43で検知されたアクセルペダルの踏込量に応じて、インバータ12L、12Rを制御して走行モータ13L、13Rの回転数を制御すると共に、走行レバーセンサ45で検知された走行レバーの位置に応じて、インバータ12L、12Rを制御して走行モータ13L、13Rの回転方向を制御する。また、コントローラ40は、ブレーキペダルセンサ44で検知された油圧ブレーキペダルの踏込量に応じて、油圧ブレーキ16L、16Rを制御してダンプトラック1を制動する。また、コントローラ40は、ホイストレバーセンサ46で検知されたホイストレバーの倒伏方向及び荷台角度センサ47で検知された荷台5の角度に応じて、ホイストシリンダ7を伸縮させて荷台5の姿勢を変化させる。
【0054】
次に、図6を参照して、コントローラ40の処理を説明する。図6は、車体制御処理のフローチャートである。コントローラ40は、ダンプトラック1の起動中に図6に示す車体制御処理を所定の時間間隔で繰り返し実行する。
【0055】
まず、コントローラ40は、蓄圧量センサ48で検知されたアキュームレータ21の蓄圧量と、予め定められた下限値とを比較する(S11)。そして、コントローラ40は、蓄圧量が下限値未満だと判定した場合に(S11:Yes)、ダンプトラック1が停車しているか否かを判定する(S12)。コントローラ40は、例えば、走行モータ13L、13Rのトルクが閾値トルク未満であり、且つ油圧ブレーキ16L、16Rが作動している場合に、ダンプトラック1が停車していると判定する。但し、ダンプトラック1が停車しているか否かの具体的な判断条件は前述の例に限定されず、走行レバーがニュートラル位置であることを条件に加えてもよい。
【0056】
次に、コントローラ40は、ダンプトラック1が停車中であると判定した場合に(S12:Yes)、図7に示す停車中蓄圧処理を実行する(S13)。一方、コントローラ40は、ダンプトラック1が停車中でないと判定した場合に(S12:No)、図8に示す走行中蓄圧処理を実行する(S14)。
【0057】
また、コントローラ40は、蓄圧量が下限値以上だと判定した場合に(S11:No)、走行レバーセンサ45によって走行レバーの位置を判定する(S15)。そして、コントローラ40は、走行レバーがニュートラル位置でない(すなわち、前進位置または後退位置)と判定した場合に(S15:No)、図9に示す走行処理を実行する(S16)。
【0058】
さらに、コントローラ40は、走行レバーがニュートラル位置だと判定した場合に(S15:Yes)、ホイストレバーセンサ46によってホイストレバーの操作が検知されたか否かを判定する(S17)。そして、コントローラ40は、ホイストレバーが操作されていると判定した場合に(S17:Yes)、図10に示す荷台昇降処理を実行する(S18)。一方、コントローラ40は、ホイストレバーが操作されていないと判定した場合に(S17:No)、ステップS13、S14、S16、S18の処理を実行せずに車体制御処理を終了する。
【0059】
図7は、停車中蓄圧処理のフローチャートである。停車中蓄圧処理は、ダンプトラック1の停車中にアキュームレータ21に作動油を蓄圧する処理である。
【0060】
まず、コントローラ40は、切替弁32を還流位置Mにすることによって、走行クラッチ14L、14Rを非伝達状態に切り替える(S21)。そして、コントローラ40は、圧力センサ34によって検知された油圧に基づいて、走行クラッチ14L、14Rが非伝達状態になったか否かを判定する(S22)。より詳細には、コントローラ40は、圧力センサ34で検知した油圧が閾値以上の場合に(S22:No)、走行クラッチ14L、14Rが伝達状態だと判定する。また、コントローラ40は、圧力センサ34で検知した油圧が閾値未満の場合に(S22:Yes)、走行クラッチ14L、14Rが非伝達状態だと判定する。
【0061】
次に、コントローラ40は、切替弁33を還流位置Oにすることによって、ポンプクラッチ19L、19Rを伝達状態に切り替える(S23)。そして、コントローラ40は、圧力センサ35によって検知された油圧に基づいて、ポンプクラッチ19L、19Rが伝達状態になったか否かを判定する(S24)。より詳細には、コントローラ40は、圧力センサ34で検知した油圧が閾値以上の場合に(S24:No)、ポンプクラッチ19L、19Rが非伝達状態だと判定する。また、コントローラ40は、圧力センサ35で検知した油圧が閾値未満の場合に(S24:Yes)、ポンプクラッチ19L、19Rが伝達状態だと判定する。
【0062】
そして、コントローラ40は、圧力センサ34、35で検知した油圧が閾値未満の場合(S22:Yes&S24:Yes)、すなわち、走行クラッチ14L、14Rが非伝達状態で且つポンプクラッチ19L、19Rが伝達状態だと判定した場合に、ステップS25以降の処理に進む。
【0063】
次に、コントローラ40は、走行クラッチ14L、14Rが非伝達状態であると判定し、且つポンプクラッチ19L、19Rが伝達状態であると判定した場合に(S22:Yes&S24:Yes)、コントロールバルブ20を蓄圧位置(より詳細には、方向切替弁27を蓄圧位置A、開閉弁30を閉塞位置J)に切り替える(S25)。次に、コントローラ40は、走行モータ13L、13Rを所定の回転数で前進方向に回転させる(S26)。なお、油圧ポンプ18L、18Rのポンプ容量は、アキュームレータ21に作動油を蓄圧するのに適した値に設定されているものとする。
【0064】
これにより、走行モータ13L、13Rの前進方向の回転が伝達状態のポンプクラッチ19L、19Rを介して油圧ポンプ18L、18Rに伝達されて、油圧ポンプ18L、18Rを第1方向に回転させる。その結果、作動油タンク17に貯留された作動油は、油圧ポンプ18L、18RからポンプラインL1に圧送され、蓄圧位置Aの方向切替弁27を通じて供給ラインL3に供給され、アキュームレータ21に蓄圧される。一方、走行クラッチ14L、14Rは非伝達状態なので、走行モータ13L、13Rの駆動力は後タイヤ4L、4Rに伝達されない。そして、コントローラ40は、蓄圧量センサ48で検知されたアキュームレータ21の蓄圧量が予め定められた上限値に達するまで(S27:No)、ステップS21~S26の状態を維持する。上限値は、下限値より大きい値である。
【0065】
次に、コントローラ40は、アキュームレータ21の蓄圧量が上限値に達した場合に(S27:Yes)、走行モータ13L、13Rを停止させる(S28)。次に、コントローラ40は、切替弁32、33を供給位置L、Nにすることによって、走行クラッチ14L、14Rを伝達状態に切り替え(S29)、ポンプクラッチ19L、19Rを非伝達状態に切り替えて(S30)、停車中蓄圧処理を終了する。
【0066】
図8は、走行中蓄圧処理のフローチャートである。走行中蓄圧処理は、ダンプトラック1の走行中にアキュームレータ21に作動油を蓄圧する処理である。なお、停車中蓄圧処理と共通する処理の説明は省略し、相違点を中心に説明する。走行中蓄圧処理は、走行モータ13L、13Rが既に回転している点が停車中蓄圧処理と相違する。そして、走行中蓄圧処理は、停車中蓄圧処理のステップS21、S22、S26、S28、S29が省略され、ステップS23、S24、S25、S27、S30をこの順に実行する。
【0067】
図9は、走行処理のフローチャートである。走行処理は、走行レバー及びアクセルペダルの操作に応じて、ダンプトラック1を走行させる処理である。
【0068】
まず、コントローラ40は、切替弁32を供給位置Lにすることによって、走行クラッチ14L、14Rを伝達状態に切り替える(S31)。そして、コントローラ40は、圧力センサ34によって検知された油圧に基づいて、走行クラッチ14L、14Rが伝達状態になったか否かを判定する(S32)。但し、走行クラッチ14L、14Rが既に伝達状態の場合は、ステップS31の処理が省略される。
【0069】
次に、コントローラ40は、切替弁33を供給位置Nにすることによって、ポンプクラッチ19L、19Rを非伝達状態に切り替える(S33)。そして、コントローラ40は、圧力センサ35によって検知された油圧に基づいて、ポンプクラッチ19L、19Rが非伝達状態になったか否かを判定する(S34)。但し、ポンプクラッチ19L、19Rが既に非伝達状態の場合は、ステップS33の処理が省略される。また、ダンプトラック1の走行中に油圧機器を動作させる必要があるときは、ステップS33、S34に代えて、図7のステップS23、S24が実行される。
【0070】
次に、コントローラ40は、走行クラッチ14L、14Rが伝達状態であると判定し、且つポンプクラッチ19L、19Rが非伝達状態であると判定した場合に(S32:Yes&S34:Yes)、アクセルペダルセンサ43で検知されたアクセルペダルの踏込量に応じて、走行モータ13L、13Rを回転させる(S35)。なお、走行モータ13L、13Rの回転方向は、走行レバーの位置によって切り替えられる。これにより、ダンプトラック1は、走行レバーの位置に応じた方向に、アクセルペダルの踏込量に応じた速度で走行する。
【0071】
そして、コントローラ40は、走行レバーセンサ45で検知された走行レバーの位置がニュートラル位置になるまで(S36:No)、ステップS31~S35の状態を維持する。次に、コントローラ40は、走行レバーがニュートラル位置になったと判定した場合に(S36:Yes)、走行処理を終了する。なお、走行レバーがニュートラル位置になる前に、アクセルペダルの踏み込みが終了していて、走行モータ13L、13Rは既に停止しているものとする。
【0072】
図10は、荷台昇降処理のフローチャートである。荷台昇降処理は、ホイストシリンダ7を伸縮させることによって、荷台5を姿勢変化させる処理である。
【0073】
まず、コントローラ40は、切替弁32を還流位置Mにすることによって、走行クラッチ14L、14Rを非伝達状態に切り替える(S41)。そして、コントローラ40は、圧力センサ34によって検知された油圧に基づいて、走行クラッチ14L、14Rが非伝達状態になったか否かを判定する(S42)。次に、コントローラ40は、切替弁33を還流位置Oにすることによって、ポンプクラッチ19L、19Rを伝達状態に切り替える(S43)。そして、コントローラ40は、圧力センサ35によって検知された油圧に基づいて、ポンプクラッチ19L、19Rが伝達状態になったか否かを判定する(S44)。ステップS41~S44の処理は、図7のステップS21~S24と共通する。
【0074】
次に、コントローラ40は、走行クラッチ14L、14Rが非伝達状態であると判定し、且つポンプクラッチ19L、19Rが伝達状態であると判定した場合に(S42:Yes&S44:Yes)、ホイストレバーセンサ46で検知されたホイストレバーの倒伏方向に応じて、コントロールバルブ20をホイスト上げ位置(より詳細には、方向切替弁27をバイパス位置C、方向切替弁28、29をホイスト上げ位置D、G)またはホイスト下げ位置(より詳細には、方向切替弁27をバイパス位置、方向切替弁28をホイスト保持位置F、方向切替弁29をホイスト下げ位置H)に切り替える(S45)。次に、コントローラ40は、アクセルペダルセンサ43で検知したアクセルペダルの踏込量に応じた回転数で、走行モータ13L、13Rを前進方向に回転させる(S46)。なお、油圧ポンプ18L、18Rのポンプ容量は、ホイストシリンダ7に作動油を供給するのに適した値に設定されているものとする。
【0075】
これにより、走行モータ13L、13Rの回転がポンプクラッチ19L、19Rを介して油圧ポンプ18L、18Rに伝達されて、作動油タンク17に貯留された作動油が油圧ポンプ18L、18RからポンプラインL1に圧送される。また、油圧ポンプ18L、18Rから圧送された作動油は、バイパス位置Cの方向切替弁27と、方向切替弁28、29とを通じてホイストシリンダ7のロッド室またはボトム室に供給される。その結果、ホイストシリンダ7が伸縮して、荷台5が姿勢変化する。一方、走行クラッチ14L、14Rは非伝達状態なので、走行モータ13L、13Rの駆動力は後タイヤ4L、4Rに伝達されない。そして、コントローラ40は、ホイストレバーセンサ46でホイストレバーの操作終了が検知されるか(S47:No)、荷台角度センサ47で荷台5が放土姿勢または着座姿勢への到達が検知されるまで(S48:No)、ステップS41~S46の状態を維持する。
【0076】
次に、コントローラ40は、ホイストレバーの操作が終了した場合(S47:Yes)、または荷台5が放土姿勢または着座姿勢に到達した場合に(S48:Yes)、走行モータ13L、13Rを停止させる(S49)。次に、コントローラ40は、切替弁32、33を供給位置L、Nにすることによって、走行クラッチ14L、14Rを伝達状態に切り替え(S50)、ポンプクラッチ19L、19Rを非伝達状態に切り替えて(S51)、停車中蓄圧処理を終了する。
【0077】
上記の実施形態によれば、例えば以下の作用効果を奏する。
【0078】
上記の実施形態によれば、ダンプトラック1の停車中に油圧ポンプ18L、18Rを駆動する場合に、圧力センサ34を用いて走行クラッチ14L、14Rが非伝達状態になったことを確認した後に(S22、S42)、走行モータ13L、13Rを回転させる(S26、S46)。これにより、走行クラッチ14L、14Rの状態変化が不十分で、ダンプトラック1が意図せずに走行するのを防止できる。
【0079】
また、上記の実施形態によれば、ダンプトラック1の走行を開始する場合に、圧力センサ34を用いて走行クラッチ14L、14Rが伝達状態になったことを確認した後に(S32)、走行モータ13L、13Rを回転させる(S35)。これにより、走行クラッチ14L、14Rの状態変化が不十分で、走行モータ13L、13Rが空回りするのを防止できる。
【0080】
また、上記の実施形態によれば、ダンプトラック1の走行時に油圧機器を動作させる必要がない場合に、ポンプクラッチ19L、19Rを非伝達状態にすればよい。これにより、走行モータ13L、13Rの駆動力が油圧ポンプ18L、18Rに伝達されることによる損失を防止することができる。但し、ポンプクラッチ19L、19Rは省略可能である。そして、油圧機器への作動油の供給が不要な場合は、油圧ポンプ18L、18Rのポンプ容量を最小にすると共に、コントロールバルブ20を還流位置(より詳細には、方向切替弁27をバイパス位置C、方向切替弁28、29をホイスト保持位置F、I)に切り替えてもよい。
【0081】
また、上記の実施形態によれば、左右の走行モータ13L、13Rそれぞれに、ポンプクラッチ19L、19Rを介して油圧ポンプ18L、18Rを接続したので、同じ量の作動油をコントロールバルブ20に供給するための走行モータ13L、13Rの負荷が半分になる。また、ダンプトラック1の走行中に油圧ポンプ18L、18Rを回転させる際に(図8のステップS25)、走行モータ13L、13Rの負荷の左右差がなくなる。その結果、左右の後タイヤ4L、4Rに瞬間的なトルク差が生じてダンプトラック1が蛇行したり、走行モータ13L、13Rの一方の寿命が短くなることを防止できる。但し、油圧ポンプ18L及びポンプクラッチ19Lと、油圧ポンプ18R及びポンプクラッチ19Rとのうち、一方を省略してもよい。
【0082】
上述した実施形態は、本発明の説明のための例示であり、本発明の範囲をそれらの実施形態にのみ限定する趣旨ではない。当業者は、本発明の要旨を逸脱することなしに、他の様々な態様で本発明を実施することができる。
【符号の説明】
【0083】
1 ダンプトラック
2 車体フレーム
3L,3R 前タイヤ
4L,4R 後タイヤ
5 荷台
6 キャブ
7 ホイストシリンダ
8 ヒンジピン
9 デッキ
10 駆動回路
11 蓄電装置
12L,12R インバータ
13L,13R 走行モータ
14L,14R 走行クラッチ
14a,14b,19a,19b 摩擦板
14c,19c コイルバネ
15L,15R 減速機
16L,16R 油圧ブレーキ
17 作動油タンク
18L,18R 油圧ポンプ
19L,19R ポンプクラッチ
20 コントロールバルブ
21 アキュームレータ
22 油圧補機
27,28,29 方向切替弁
30 開閉弁
31 リリーフ弁
32,33 切替弁
34,35 圧力センサ
40 コントローラ
41 CPU
42 メモリ
43 アクセルペダルセンサ
44 ブレーキペダルセンサ
45 走行レバーセンサ
46 ホイストレバーセンサ
47 荷台角度センサ
48 蓄圧量センサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10