(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024124852
(43)【公開日】2024-09-13
(54)【発明の名称】プリント配線板の製造方法
(51)【国際特許分類】
H05K 3/46 20060101AFI20240906BHJP
H05K 1/03 20060101ALI20240906BHJP
【FI】
H05K3/46 B
H05K3/46 T
H05K1/03 610R
H05K1/03 610L
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023032801
(22)【出願日】2023-03-03
(71)【出願人】
【識別番号】000000066
【氏名又は名称】味の素株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 永吉
【テーマコード(参考)】
5E316
【Fターム(参考)】
5E316AA12
5E316AA32
5E316AA43
5E316CC09
5E316CC10
5E316CC12
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5E316CC32
5E316CC34
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5E316CC38
5E316CC39
5E316DD17
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5E316DD33
5E316FF03
5E316FF07
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5E316FF15
5E316GG15
5E316GG17
5E316GG23
5E316GG28
5E316HH26
5E316HH33
(57)【要約】
【課題】揮発性成分の量が多い樹脂組成物を含む樹脂組成物層と、酸素透過率の低い支持体とを備える樹脂シートを用いて、表面粗さが小さい絶縁層を備えるプリント配線板を製造する。
【解決手段】樹脂シートと内層基板とを樹脂組成物層が内層基板と接合するように積層する工程と、樹脂組成物層を熱硬化して絶縁層を形成する工程と、絶縁層にホールを形成する工程と、支持体を剥離する工程と、絶縁層を膨潤液で膨潤処理せずに酸化剤溶液で処理する工程と、をこの順で含む、プリント配線板の製造方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体と、当該支持体上に形成された樹脂組成物層と、を備える樹脂シートを用いてプリント配線板を製造する製造方法であって;
樹脂組成物層が、熱硬化性樹脂を含む樹脂組成物を含み;
前記製造方法が、
樹脂シートと内層基板とを、樹脂組成物層が内層基板と接合するように積層する工程と、
樹脂組成物層を熱硬化して、絶縁層を形成する工程と、
絶縁層にホールを形成する工程と、
支持体を剥離する工程と、
絶縁層を酸化剤溶液で処理する工程と、
を、この順で含み;
前記製造方法が、支持体を剥離する工程と、絶縁層を酸化剤溶液で処理する工程との間に、絶縁層を膨潤液で膨潤処理する工程を含まず;
支持体の酸素透過率が、15cc/m2・day以下であり;
樹脂組成物を190℃15分間の条件で加熱する乾燥試験を行った場合の質量減少率が、4質量%以上である、プリント配線板の製造方法。
【請求項2】
絶縁層を酸化剤溶液で処理した後に、絶縁層上に導体層を形成する工程を含む、請求項1に記載のプリント配線板の製造方法。
【請求項3】
導体層が、めっきによって形成される、請求項2に記載のプリント配線板の製造方法。
【請求項4】
樹脂組成物が、エポキシ樹脂を含む、請求項1に記載のプリント配線板の製造方法。
【請求項5】
樹脂組成物が、無機充填材を含む、請求項1に記載のプリント配線板の製造方法。
【請求項6】
膨潤液が、酸化剤を含まないアルカリ溶液である、請求項1に記載のプリント配線板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント配線板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント配線板は、各種電子機器に広く使用されている。プリント配線板には、電子機器の小型化、高機能化のために、回路配線の微細化及び高密度化が求められている。プリント配線板の製造方法としては、内層基板に絶縁層と導体層を交互に積み重ねるビルドアップ方式による製造方法が知られている。絶縁層は、例えば、内層基板上に、樹脂組成物を含む樹脂組成物層を形成し、樹脂組成物層を熱硬化させることにより形成される。内層基板上に樹脂組成物層を形成する方法としては、内層基板と樹脂組成物層を備える樹脂シートとを積層する方法が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
回路配線を微細化及び高密度化した場合、一般に、回路配線同士の間隙が狭くなるので、当該間隙に樹脂組成物を充填することの困難性が高まる。そこで、樹脂組成物層で回路配線を円滑に埋め込む観点から、積層時の樹脂組成物層の流動性を高めることが求められる。このように樹脂組成物層の流動性を高めるため、本発明者は、樹脂組成物に含まれる残留溶剤等の揮発性成分の量を多くして、樹脂組成物の溶融粘度を低くすることを試みた。
【0005】
また、プリント配線板の絶縁層には、ビアホール等のホールが形成されることがある。ホールは、例えば、レーザー加工機等の加工装置によって形成される。このとき、ホールの形成時には絶縁層に熱が加わり、当該熱によってホール周辺において絶縁層の酸化が進行することがある。このような酸化は、ハローイング現象の原因となりうるので、抑制することが望ましい。そこで、本発明者は、酸化を抑制する観点から、酸素透過率の低い支持体を備える樹脂シートを採用することを試みた。
【0006】
ところが、上述したように揮発性成分の量が多い樹脂組成物を含む樹脂組成物層と、酸素透過率の低い支持体とを備える樹脂シートを用いてプリント配線板を製造した場合、デスミア処理後の絶縁層の表面粗さが大きくなった。具体的には、絶縁層にホールを形成すると、当該ホール内にはスミア(樹脂残渣)が形成されうる。そこで、このスミアを除去するため、一般には、絶縁層を酸化剤溶液で処理することを含むデスミア処理が行われる。ところが、前記のように揮発性成分の量が多い樹脂組成物を含む樹脂組成物層と、酸素透過率の低い支持体とを備える樹脂シートを用いた場合、デスミア処理によって絶縁層が過剰に酸化されて、デスミア処理後の絶縁層の表面粗さが大きくなる傾向があった。絶縁層の表面粗さが大きい場合、当該絶縁層の表面に導体層によって微細且つ高密度な回路配線を形成することは難しい。
【0007】
本発明は、前記の課題に鑑みて創案されたもので、揮発性成分の量が多い樹脂組成物を含む樹脂組成物層と、酸素透過率の低い支持体とを備える樹脂シートを用いて、表面粗さが小さい絶縁層を備えるプリント配線板を製造できる製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、前記の課題を解決するべく鋭意検討した。その結果、本発明者は、ホール形成後に、支持体を剥離することと、絶縁層を膨潤液で膨潤処理することなく酸化剤溶液で処理することと、をこの順で含むプリント配線板の製造方法が、前記の課題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、下記のものを含む。
【0009】
[1] 支持体と、当該支持体上に形成された樹脂組成物層と、を備える樹脂シートを用いてプリント配線板を製造する製造方法であって;
樹脂組成物層が、熱硬化性樹脂を含む樹脂組成物を含み;
前記製造方法が、
樹脂シートと内層基板とを、樹脂組成物層が内層基板と接合するように積層する工程と、
樹脂組成物層を熱硬化して、絶縁層を形成する工程と、
絶縁層にホールを形成する工程と、
支持体を剥離する工程と、
絶縁層を酸化剤溶液で処理する工程と、
を、この順で含み;
前記製造方法が、支持体を剥離する工程と、絶縁層を酸化剤溶液で処理する工程との間に、絶縁層を膨潤液で膨潤処理することを含まず;
支持体の酸素透過率が、15cc/m2・day以下であり;
樹脂組成物を190℃15分間の条件で加熱する乾燥試験を行った場合の質量減少率が、4質量%以上である、プリント配線板の製造方法。
[2] 絶縁層を酸化剤溶液で処理した後に、絶縁層上に導体層を形成する工程を含む、[1]に記載のプリント配線板の製造方法。
[3] 導体層が、めっきによって形成される、[2]に記載のプリント配線板の製造方法。
[4] 樹脂組成物が、エポキシ樹脂を含む、[1]~[3]のいずれか一項に記載のプリント配線板の製造方法。
[5] 樹脂組成物が、無機充填材を含む、[1]~[4]のいずれか一項に記載のプリント配線板の製造方法。
[6] 膨潤液が、酸化剤を含まないアルカリ溶液である、[1]~[5]のいずれか一項に記載のプリント配線板の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、揮発性成分の量が多い樹脂組成物を含む樹脂組成物層と、酸素透過率の低い支持体とを備える樹脂シートを用いて、表面粗さが小さい絶縁層を備えるプリント配線板を製造できる製造方法を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明について実施形態及び例示物を示して説明する。ただし、本発明は、下記に示す実施形態及び例示物に限定されるものではなく、特許請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施されうる。
【0012】
<プリント配線板の製造方法の概要>
本発明の一実施形態に係るプリント配線板の製造方法では、樹脂シートを用いてプリント配線板を製造する。樹脂シートは、支持体と、当該支持体上に形成された樹脂組成物層と、を備える。樹脂組成物層は、熱硬化性樹脂を含む樹脂組成物を含む。また、支持体としては、特定の低い範囲の酸素透過率を有するものを用いる。さらに、樹脂組成物は、乾燥試験を行った場合の質量減少率が特定の多い範囲にあるものを用いる。
【0013】
本実施形態に係るプリント配線板の製造方法は、
樹脂シートと内層基板とを、樹脂組成物層が内層基板と接合するように積層する工程(I)と、
樹脂組成物層を熱硬化して、絶縁層を形成する工程(II)と、
絶縁層にホールを形成する工程(III)と、
支持体を剥離する工程(IV)と、
絶縁層を酸化剤溶液で処理する工程(V)と、
を、この順で含む。そして、この製造方法は、支持体を剥離する工程(IV)と、絶縁層を酸化剤溶液で処理する工程(V)との間に、絶縁層を膨潤液で膨潤処理することを含まない。
【0014】
支持体が特定の低い範囲の酸素透過率を有することで表されるように、樹脂シートの支持体は、酸素の透過を遮る能力に優れる。また、樹脂組成物の乾燥試験を行った場合の質量減少率が特定の多い範囲にあることで表されるように、樹脂組成物は揮発性成分を多く含む。そして、このような樹脂シートを用いながら、本実施形態に係る製造方法によれば、表面粗さが小さい絶縁層を備えるプリント配線板を製造できる。
【0015】
詳細には、前記の製造方法において、工程(III)でホールを形成したときにホール内にスミアが形成されうるが、そのスミアは、工程(V)において酸化剤溶液によって除去されることができる。そして、その工程(V)において酸化剤溶液は絶縁層のホール以外の部分にも接触しうるが、そのように酸化剤溶液が絶縁層に接触しても、当該絶縁層の表面の粗化は過剰には進行しない。したがって、表面粗さが小さい絶縁層を備えるプリント配線板を得ることができる。
【0016】
また、この製造方法によって製造されるプリント配線板では、通常、絶縁層と当該絶縁層上に形成される導体層との間の密着性を高めることができる。さらに、この製造方法においては、通常、内層基板が備える導体層(以下、適宜「内層導体層」ということがある。)を良好に埋め込めること、ハローイング現象を抑制できること、といった利点を得ることができる。
【0017】
特定の理論によって拘束されるものでは無いが、前記のような優れた利点を得られる仕組みを、本発明者は下記のように推察する。ただし、本発明の技術的範囲は、下記の仕組みによって制限されるものではない。
【0018】
樹脂組成物に乾燥試験を行った場合の質量減少率(以下「乾燥試験による質量減少率」ということがある。)は、当該樹脂組成物に含まれる揮発性成分の量に対応する。詳細には、樹脂組成物には溶剤等の揮発性成分が含まれうるところ、その揮発性成分は乾燥試験によって除去されうる。よって、乾燥試験による質量減少率は、乾燥試験によって除去された揮発性成分の量に相関を有し、したがって、乾燥試験前に樹脂組成物に含まれていた揮発性成分の量に相関を有する。具体的には、乾燥試験による質量減少率が多いほど、樹脂組成物に含まれていた揮発性成分が多いことを表す。また、一般に、溶剤等の揮発性成分を多く含むほど、樹脂組成物の溶融粘度は低い傾向がある。よって、乾燥試験による質量減少率が大きい樹脂組成物は、積層のために溶融した状態において高い流動性を有し、狭い間隙に円滑に進入することができる。そのため、その樹脂組成物を含む樹脂組成物層は、樹脂組成物によって充填されない空隙の形成を抑制できるので、内層基板が備える内層導体層を良好に埋め込める。
【0019】
また一般に、ホールの形成時には絶縁層には熱が加わるので、仮に絶縁層に酸素が浸入すると、絶縁層が酸化して劣化しうる。内層基板の表面に内層導体層が形成されている場合、ホール形成時の熱は内層基板の表面を伝わりやすいので、前記の劣化は、ホールの底部周辺において進行し易い。このように絶縁層が劣化した場合、酸化剤溶液による酸化処理を行うと、絶縁層の劣化した部分が意図せず除去されて、ホールの底部周辺で内層基板と絶縁層とが剥離するハローイング現象が生じることがあった。これに対し、本実施形態のように支持体の酸素透過率が低いと、支持体が酸素を効果的に遮るから、絶縁層へのホール形成時に、絶縁層の酸素を抑制できる。よって、絶縁層の劣化を抑制できるから、ハローイング現象を抑制できる。具体的には、ホールの底部周辺における内層基板と絶縁層との剥離の程度を小さくしたり、剥離を無くしたりできる。
【0020】
ただし、酸素透過率が低い支持体は、通常、高いガスバリア性を有する。よって、その支持体は、酸素以外のガスの透過率が低く、樹脂組成物中の揮発性成分の透過を妨げる傾向がある。したがって、樹脂組成物層を熱硬化して絶縁層を形成する工程において、樹脂組成物層内の揮発性成分が十分に除去されず、絶縁層に残留しうる。揮発性成分を含む絶縁層に対して、従来一般的であった膨潤処理及び酸化剤溶液処理を組み合わせたデスミア処理を行うと、酸化剤による絶縁層の酸化が過剰に進行することがある。本発明者の検討によれば、このように絶縁層の酸化が過剰に進行することが、絶縁層の表面粗さ大きくなる原因と考えられる。
【0021】
そこで、本実施形態に係る製造方法では、デスミア処理の際に、酸化剤溶液処理の前の膨潤処理を省略した。膨潤処理は、一般に、絶縁層を液体で膨潤させて、酸化剤溶液を進入し易くする。従来の樹脂シートを用いた場合、この膨潤処理を行わないと酸化剤溶液による絶縁層の酸化が十分に進行しないので、スミアの除去ができないとの事情があったことから、膨潤処理が行われていた。これに対し、本実施形態では、この膨潤処理を省略することにより、絶縁層に酸化剤溶液を進入し難くできるので、酸化剤溶液による酸化の程度を小さくできる。したがって、デスミア処理後の絶縁層の表面粗さを小さくすることができる。
【0022】
また、膨潤処理を省略した場合であっても、スミアの除去が可能であり、また通常は、十分なアンカー効果が得られる程度の凹凸を絶縁層の表面に形成することができる。したがって、絶縁層上に導体層を形成した場合、アンカー効果によって導体層が絶縁層に強固に定着できるから、それら導体層と絶縁層との間の密着性を高くすることができる。
【0023】
<樹脂シート>
本実施形態で用いる樹脂シートは、支持体と、当該支持体上に形成された樹脂組成物層と、を備える。
【0024】
(支持体)
支持体は、特定範囲の酸素透過率を有する。支持体の酸素透過率は、通常15cc/m2・day以下、好ましくは14.5cc/m2・day以下、より好ましくは14cc/m2・day以下である。下限は、通常0cc/m2・day以上であり、0.01cc/m2・day以上、0.05cc/m2・day以上、0.1cc/m2・day以上などであってもよい。支持体の酸素透過率が前記の範囲にある場合に、従来は、絶縁層の表面粗さが意図せず大きくなるという課題が生じており、本実施形態ではこの課題を解決することができる。また、通常、支持体の酸素透過率が前記の範囲にある場合、ハローイング現象を抑制することができる。
【0025】
支持体の酸素透過率は、酸素透過率測定装置を用いて、JIS K7126(等圧法)に準じ、23℃、50%RHの雰囲気下で測定する。ここで、%RHとは相対湿度を表す。具体的な測定方法は、後述する実施例の<支持体の酸素透過率の測定方法>に記載の方法を採用しうる。
【0026】
支持体は、前記範囲の酸素透過率を有するものであれば制限はないが、通常は、基材を備えるものを用いる。例えば、前記範囲の酸素透過率を有する基材を支持体として用いてもよい。この基材は、離型層を備えていてもよい。また、例えば、基材と、この基材上に形成されたバリア層とを備える支持体を用いてもよい。バリア層を備える支持体において、支持体が前記範囲の酸素透過率を有する場合、基材自体は前記範囲の酸素透過率を有する必要は無い。
【0027】
基材としては、例えば、プラスチック材料のフィルム、金属箔、離型紙が挙げられ、プラスチック材料のフィルム及び金属箔が好ましい。
【0028】
基材としてプラスチック材料のフィルムを使用する場合、プラスチック材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(以下「PET」と略称することがある。)、ポリエチレンナフタレート(以下「PEN」と略称することがある。)等のポリエステル、ポリカーボネート(以下「PC」と略称することがある。)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)等のアクリル、環状ポリオレフィン、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリエーテルサルファイド(PES)、ポリエーテルケトン、ポリイミド等が挙げられる。中でも、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートが好ましい。よって、基材としては、ポリエチレンテレフタレートフィルム及びポリエチレンナフタレートフィルムが好ましい。
【0029】
基材として金属箔を使用する場合、金属箔としては、例えば、銅箔、アルミニウム箔等が挙げられ、銅箔が好ましい。銅箔としては、銅の単金属の箔を用いてもよく、銅と他の金属(例えば、スズ、クロム、銀、マグネシウム、ニッケル、ジルコニウム、ケイ素、チタン等)との合金の箔を用いてもよい。
【0030】
基材は、離型層を備えていてもよい。離型層を備える基材は、当該離型層によって形成される離型面と、当該離型面とは反対側の非離型面とを有しうる。絶縁層からの支持体の剥離を円滑に行う観点から、通常、離型層は、基材の樹脂組成物層と接合する側に形成される。離型層は、離型剤によって形成できる。離型剤としては、例えば、アルキド樹脂、ポリオレフィン樹脂、ウレタン樹脂、及びシリコーン樹脂からなる群から選択される1種以上の離型剤が挙げられる。離型層を備える基材は、市販品を用いてもよい。
【0031】
離型層の厚みは、好ましくは10nm以上、より好ましくは30nm以上、さらに好ましくは50nm以上であり、好ましくは1000nm以下、より好ましくは500nm以下、さらに好ましくは300nm以下である。
【0032】
基材の厚みは、特に限定されないが、好ましくは5μm以上、より好ましくは10μm以上、さらに好ましくは20μm以上であり、好ましくは75μm以下、より好ましくは60μm以下、さらに好ましくは50μm以下である。離型層を備える基材を使用する場合、離型層を含む基材全体の厚みが上記範囲であることが好ましい。
【0033】
支持体は、バリア層を備えていてもよい。バリア層は、支持体のガスバリア性を高めて、当該支持体の酸素透過率を低くする役割を有する。離型層を備える基材を用いる場合、バリア層は、通常、基材の非離型面(離型層とは反対側の面)に形成される。
【0034】
バリア層としては、無機バリア層を用いてもよく、有機バリア層を用いてよい。無機バリア層としては、例えば、アルミニウム、銅等の金属箔;シリカ蒸着膜;窒化ケイ素膜;酸化ケイ素膜;酸化マグネシウム膜等が挙げられる。無機バリア層の形成方法としては、例えば、熱、プラズマ、紫外線等による化学気相成長法;蒸着、スパッタリング等による物理気相成長法等が挙げられる。また、有機バリア層としては、例えば、ポリビニルアルコール膜、エチレン-ビニルアルコール共重合体膜、ポリ塩化ビニリデン膜等が挙げられる。有機バリア層の形成方法としては、例えば、ダイコーター、コンマコーター、グラビアコーター、バーコーター等の塗布装置を用いて有機化合物を基材上に塗布する方法が挙げられる。バリア層は、1層のみを備える単層構造を有していてもよく、複数の層を備える複層構造を有していてもよい。例えば、無機バリア層と有機バリア層とを組み合わせて含むバリア層を用いてもよい。
【0035】
バリア層の厚みは、好ましくは0.05μm以上、より好ましくは0.1μm以上、さらに好ましくは0.15μm以上であり、好ましくは10μm以下、より好ましくは5μm以下、さらに好ましくは3μm以下である。
【0036】
基材とバリア層との間には、接着層が設けられていてもよい。接着層に使用しうる接着剤としては、例えば、水系接着剤、溶剤系接着剤、ホットメルト系接着剤、紫外線等の活性エネルギー線により硬化しうる活性エネルギー線硬化型接着剤、などが挙げられる。接着剤層の厚みは、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは0.3μm以上、さらに好ましくは0.5μm以上であり、好ましくは10μm以下、より好ましくは8μm以下、さらに好ましくは5μm以下である。
【0037】
支持体の総厚みは、好ましくは10μm以上、より好ましくは15μm以上、さらに好ましくは20μm以上であり、好ましくは80μm以下、より好ましくは70μm以下、さらに好ましくは60μm以下である。
【0038】
支持体は、樹脂組成物層と接合する面に、マット処理、コロナ処理、帯電防止処理等の表面処理を施してあってもよい。
【0039】
(樹脂組成物層)
樹脂組成物層は、熱硬化性樹脂を含む樹脂組成物を含み、好ましくは前記の樹脂組成物のみを含む。また、樹脂組成物層に含まれるこの樹脂組成物を190℃15分間の条件で加熱する乾燥試験を行った場合の質量減少率は、特定範囲にある。
【0040】
具体的には、樹脂組成物の乾燥試験による質量減少率は、通常4.0質量%以上、好ましくは4.5質量%以上、より好ましくは5.0質量%以上である。樹脂組成物の乾燥試験による質量減少率が前記の範囲にある場合に、従来は、絶縁層の表面粗さが意図せず大きくなるという課題が生じており、本実施形態ではこの課題を解決することができる。また、通常、樹脂組成物の乾燥試験による質量減少率が前記の範囲にある場合、内層基板が備える内層導体層を樹脂組成物層によって良好に埋め込むことができる。樹脂組成物の乾燥試験による質量減少率の上限は、特に制限はないが、絶縁層中のボイド(気泡)の形成を抑制する観点では、好ましくは10質量%以下、より好ましくは9.5質量%以下、更に好ましくは9質量%以下である。
【0041】
樹脂組成物の乾燥試験による質量減少率は、乾燥試験前に測定した樹脂組成物の質量w0と、乾燥試験を行った後に測定した当該樹脂組成物の質量w1とを用いて、下記式(M1)により計算できる。
質量減少率(%)={1-(w1/w0)}×100 (M1)
【0042】
また、測定結果に影響する程大きな質量変化を乾燥試験によっては生じない支持体を備える樹脂シートを用いる場合、その樹脂シートを試料として、樹脂組成物の乾燥試験による質量減少率を測定してもよい。この場合、乾燥試験前に測定した樹脂シートの質量W0と、乾燥試験を行った後に測定した当該樹脂シートの質量W1と、その樹脂シートに含まれる支持体の質量Wsとを用いて、下記式(M2)により質量減少率を計算できる。
質量減少率(%)={(W0-W1)÷(W0-Ws)}×100 (M2)
樹脂組成物の乾燥試験による質量減少率の具体的な測定方法は、後述する実施例の<樹脂組成物の質量減少率の測定方法>に記載の方法を採用しうる。
【0043】
樹脂組成物の乾燥試験による質量減少率は、樹脂組成物に含まれる溶剤等の揮発性成分の量に対応する。よって、質量減少率は、例えば、樹脂組成物に含まれる溶剤等の揮発性成分の量によって調整できる。
【0044】
樹脂組成物は、(A)熱硬化性樹脂を含む。(A)成分としての(A)熱硬化性樹脂の例としては、エポキシ樹脂、フェノール系樹脂、活性エステル系樹脂、ベンゾオキサジン系樹脂、シアネートエステル系樹脂、カルボジイミド系樹脂、酸無水物系樹脂、アミン系樹脂、チオール系樹脂、及び、ラジカル重合性樹脂などが挙げられる。(A)熱硬化性樹脂は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0045】
(A)熱硬化性樹脂は、エポキシ樹脂と、そのエポキシ樹脂と反応し結合して樹脂組成物を硬化させうる樹脂とを組み合わせて含むことが好ましい。エポキシ樹脂と反応し結合して樹脂組成物を硬化させうる樹脂を、以下「硬化剤」と呼ぶことがある。硬化剤としては、例えば、フェノール系樹脂、活性エステル系樹脂、シアネートエステル系樹脂、カルボジイミド系樹脂、酸無水物系樹脂、アミン系樹脂、ベンゾオキサジン系樹脂、チオール系樹脂などが挙げられる。硬化剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0046】
硬化剤の中でも、フェノール系樹脂、活性エステル系樹脂、及びベンゾオキサジン系樹脂が好ましく、フェノール系樹脂及び活性エステル系樹脂がより好ましく、本発明の効果を顕著に得る観点からは、特に活性エステル系樹脂が更に好ましい。エポキシ樹脂と活性エステル系樹脂とが反応して結合した場合、水酸基等の極性基を生じないので、低極性の硬化物を得ることができる。よって、誘電正接の低い絶縁層を得ることができる一方、酸化剤溶液によるスミアの除去が進行し難い。そのため、一般に、エポキシ樹脂と活性エステル系樹脂とを組み合わせて含む樹脂組成物を用いた場合にはスミアの除去のために過酷な条件で酸化剤溶液処理を行うことが求められるので、ハローイング現象が生じやすい。これに対し、本実施形態の製造方法によれば、絶縁層の表面粗さを抑制しながらも、ハローイング現象の抑制が可能である。
【0047】
エポキシ樹脂は、エポキシ基を有する硬化性樹脂を表す。エポキシ樹脂としては、例えば、ビキシレノール型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリスフェノール型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、tert-ブチル-カテコール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、線状脂肪族エポキシ樹脂、ポリブタジエン型エポキシ樹脂(ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂)、脂環式エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂、スピロ環含有エポキシ樹脂、シクロヘキサン型エポキシ樹脂、シクロヘキサンジメタノール型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、トリメチロール型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂、イソシアヌラート型エポキシ樹脂、フェノールフタルイミジン型エポキシ樹脂等が挙げられる。エポキシ樹脂は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0048】
エポキシ樹脂は、耐熱性に優れる硬化物を得る観点から、芳香族構造を含有するエポキシ樹脂を含むことが好ましい。芳香族構造とは、一般に芳香族と定義される化学構造であり、多環芳香族及び芳香族複素環をも含む。芳香族構造を含有するエポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリスフェノール型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、tert-ブチル-カテコール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、ビシキレノール型エポキシ樹脂、芳香族構造を有するグリシジルアミン型エポキシ樹脂、芳香族構造を有するグリシジルエステル型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、芳香族構造を有する線状脂肪族エポキシ樹脂、芳香族構造を有するポリブタジエン型エポキシ樹脂、芳香族構造を有する脂環式エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂、芳香族構造を有するスピロ環含有エポキシ樹脂、芳香族構造を有するシクロヘキサンジメタノール型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、芳香族構造を有するトリメチロール型エポキシ樹脂、芳香族構造を有するテトラフェニルエタン型エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0049】
樹脂組成物は、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂を含むことが好ましい。エポキシ樹脂の全量100質量%に対して、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂の割合は、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、更に好ましくは70質量%以上である。
【0050】
エポキシ樹脂には、温度20℃で液状のエポキシ樹脂(以下「液状エポキシ樹脂」ということがある。)と、温度20℃で固体状のエポキシ樹脂(以下「固体状エポキシ樹脂」ということがある。)とがある。樹脂組成物は、エポキシ樹脂として、液状エポキシ樹脂のみを含んでいてもよく、或いは固体状エポキシ樹脂のみを含んでいてもよく、或いは液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂とを組み合わせて含んでいてもよい。
【0051】
液状エポキシ樹脂としては、1分子中に2個以上のエポキシ基を有する液状エポキシ樹脂が好ましい。
【0052】
液状エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、エステル骨格を有する脂環式エポキシ樹脂、シクロヘキサン型エポキシ樹脂、シクロヘキサンジメタノール型エポキシ樹脂、及びポリブタジエン型エポキシ樹脂が好ましい。
【0053】
液状エポキシ樹脂の具体例としては、DIC社製の「HP4032」、「HP4032D」、「HP4032SS」(ナフタレン型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「828US」、「828EL」、「jER828EL」、「825」、「エピコート828EL」(ビスフェノールA型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「jER807」、「1750」(ビスフェノールF型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「jER152」(フェノールノボラック型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「630」、「630LSD」、「604」(グリシジルアミン型エポキシ樹脂);ADEKA社製の「ED-523T」(グリシロール型エポキシ樹脂);ADEKA社製の「EP-3950L」、「EP-3980S」(グリシジルアミン型エポキシ樹脂);ADEKA社製の「EP-4088S」(ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂);日鉄ケミカル&マテリアル社製の「ZX1059」(ビスフェノールA型エポキシ樹脂とビスフェノールF型エポキシ樹脂の混合品);ナガセケムテックス社製の「EX-721」(グリシジルエステル型エポキシ樹脂);ダイセル社製の「セロキサイド2021P」(エステル骨格を有する脂環式エポキシ樹脂);ダイセル社製の「PB-3600」、日本曹達社製の「JP-100」、「JP-200」(ポリブタジエン型エポキシ樹脂);日鉄ケミカル&マテリアル製の「ZX1658」、「ZX1658GS」(液状1,4-グリシジルシクロヘキサン型エポキシ樹脂)等が挙げられる。これらは、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0054】
固体状エポキシ樹脂としては、1分子中に3個以上のエポキシ基を有する固体状エポキシ樹脂が好ましく、1分子中に3個以上のエポキシ基を有する芳香族系の固体状エポキシ樹脂がより好ましい。
【0055】
固体状エポキシ樹脂としては、ビキシレノール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ナフタレン型4官能エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリスフェノール型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂、フェノールフタルイミジン型エポキシ樹脂が好ましい。
【0056】
固体状エポキシ樹脂の具体例としては、DIC社製の「HP4032H」(ナフタレン型エポキシ樹脂);DIC社製の「HP-4700」、「HP-4710」(ナフタレン型4官能エポキシ樹脂);DIC社製の「N-690」(クレゾールノボラック型エポキシ樹脂);DIC社製の「N-695」(クレゾールノボラック型エポキシ樹脂);DIC社製の「HP-7200」、「HP-7200HH」、「HP-7200H」、「HP-7200L」(ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂);DIC社製の「EXA-7311」、「EXA-7311-G3」、「EXA-7311-G4」、「EXA-7311-G4S」、「HP6000」(ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂);日本化薬社製の「EPPN-502H」(トリスフェノール型エポキシ樹脂);日本化薬社製の「NC7000L」(ナフトールノボラック型エポキシ樹脂);日本化薬社製の「NC3000H」、「NC3000」、「NC3000L」、「NC3000FH」、「NC3100」(ビフェニル型エポキシ樹脂);日鉄ケミカル&マテリアル社製の「ESN475V」(ナフトール型エポキシ樹脂)、「ESN4100V」(ナフタレン型エポキシ樹脂);日鉄ケミカル&マテリアル社製の「ESN485」(ナフトール型エポキシ樹脂);日鉄ケミカル&マテリアル社製の「ESN375」(ジヒドロキシナフタレン型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YX4000H」、「YX4000」、「YX4000HK」、「YL7890」(ビキシレノール型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YL6121」(ビフェニル型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YX8800」(アントラセン型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YX7700」(フェノールアラルキル型エポキシ樹脂);大阪ガスケミカル社製の「PG-100」、「CG-500」;三菱ケミカル社製の「YL7760」(ビスフェノールAF型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YL7800」(フルオレン型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「jER1010」(ビスフェノールA型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「jER1031S」(テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂);日本化薬社製の「WHR991S」(フェノールフタルイミジン型エポキシ樹脂)等が挙げられる。これらは、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0057】
エポキシ樹脂として、液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂とを組み合わせて用いる場合、それらの質量比(液状エポキシ樹脂:固体状エポキシ樹脂)は、好ましくは20:1~1:20、より好ましくは10:1~1:10、特に好ましくは7:1~1:7である。
【0058】
エポキシ樹脂のエポキシ当量は、好ましくは50g/eq.~5,000g/eq.、より好ましくは60g/eq.~3,000g/eq.、さらに好ましくは80g/eq.~2,000g/eq.、特に好ましくは110g/eq.~1,000g/eq.である。エポキシ当量は、エポキシ基1当量あたりの樹脂の質量を表す。このエポキシ当量は、JIS K7236に従って測定することができる。
【0059】
エポキシ樹脂の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは100~5,000、より好ましくは250~3,000、さらに好ましくは400~1,500である。樹脂の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により、ポリスチレン換算の値として測定できる。
【0060】
樹脂組成物中のエポキシ樹脂の量は、樹脂組成物中の不揮発成分100質量%に対して、好ましくは1質量%以上、より好ましくは5質量%以上、更に好ましくは10質量%以上であり、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、更に好ましくは30質量%以下である。
【0061】
樹脂組成物中のエポキシ樹脂の量は、樹脂組成物中の樹脂成分100質量%に対して、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、更に好ましくは30質量%以上であり、好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下、更に好ましくは70質量%以下である。樹脂組成物中の樹脂成分とは、樹脂組成物中の不揮発成分のうち、無機充填材を除いた成分を表す。
【0062】
フェノール系樹脂としては、フェノール性水酸基を1分子中に1個以上、好ましくは2個以上有する化合物を用いうる。フェノール性水酸基とは、ベンゼン環、ナフタレン環等の芳香環に結合した水酸基をいう。フェノール系樹脂は、エポキシ樹脂と組み合わせて用いることが好ましい。エポキシ樹脂とフェノール系樹脂とを組み合わせて用いた場合、フェノール系樹脂は、エポキシ樹脂と反応して結合を形成し樹脂組成物を硬化させうるので、「フェノール系硬化剤」ということがある。
【0063】
耐熱性及び耐水性の観点から、ノボラック構造を有するフェノール系樹脂が好ましい。また、密着性の観点からは、含窒素フェノール系樹脂が好ましく、トリアジン骨格含有フェノール系樹脂がより好ましい。中でも、耐熱性、耐水性、及び密着性を高度に満足させる観点から、トリアジン骨格含有フェノールノボラック樹脂が好ましい。
【0064】
フェノール系樹脂の具体例としては、明和化成社製の「MEH-7700」、「MEH-7810」、「MEH-7851」、「MEH-8000H」;日本化薬社製の「NHN」、「CBN」、「GPH」;日鉄ケミカル&マテリアル社製の「SN-170」、「SN-180」、「SN-190」、「SN-475」、「SN-485」、「SN-495」、「SN-495V」、「SN-375」、「SN-395」;DIC社製の「TD-2090」、「TD-2090-60M」、「LA-7052」、「LA-7054」、「LA-1356」、「LA-3018」、「LA-3018-50P」、「LA-1356」、「TD2090」、「TD-2090-60M」;群栄化学社製の「GDP-6115L」、「GDP-6115H」、「ELPC75」等が挙げられる。フェノール系樹脂は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0065】
フェノール系樹脂の量の範囲は、樹脂組成物中の不揮発成分100質量%に対して、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、更に好ましくは1.0質量%以上であり、好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下、更に好ましくは5質量%以下である。
【0066】
フェノール系樹脂の量の範囲は、樹脂組成物中の樹脂成分100質量%に対して、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは1質量%以上、更に好ましくは5質量%以上であり、好ましくは40質量%以下、より好ましくは30質量%以下、更に好ましくは20質量%以下である。
【0067】
エポキシ樹脂のエポキシ基数を1とした場合、フェノール系樹脂のフェノール性水酸基数は、好ましくは0.05以上、より好ましくは0.1以上、更に好ましくは0.2以上であり、好ましくは1.5以下、より好ましくは1.0以下、更に好ましくは0.5以下である。「エポキシ樹脂のエポキシ基数」とは、樹脂組成物中に存在するエポキシ樹脂の不揮発成分の質量をエポキシ当量で割り算した値を全て合計した値を表す。また、「フェノール系樹脂のフェノール性水酸基数」とは、樹脂組成物中に存在するフェノール系樹脂の不揮発成分の質量をフェノール性水酸基当量で割り算した値を全て合計した値を表す。また、フェノール系水酸基当量とは、フェノール系水酸基1当量あたりの樹脂の質量を表す。
【0068】
活性エステル系樹脂としては、1分子中に1個以上の活性エステル基を有する化合物を用いうる。中でも、活性エステル系樹脂としては、フェノールエステル類、チオフェノールエステル類、N-ヒドロキシアミンエステル類、複素環ヒドロキシ化合物のエステル類等の、反応活性の高いエステル基を1分子中に2個以上有する化合物が好ましい。活性エステル系樹脂は、エポキシ樹脂と組み合わせた場合にエポキシ樹脂と反応して樹脂組成物を硬化させうるので、「活性エステル系硬化剤」ということがある。当該活性エステル系樹脂は、カルボン酸化合物及び/又はチオカルボン酸化合物とヒドロキシ化合物及び/又はチオール化合物との縮合反応によって得られるものが好ましい。特に耐熱性向上の観点から、カルボン酸化合物とヒドロキシ化合物とから得られる活性エステル系樹脂が好ましく、カルボン酸化合物とフェノール化合物及び/又はナフトール化合物とから得られる活性エステル系樹脂がより好ましい。カルボン酸化合物としては、例えば安息香酸、酢酸、コハク酸、マレイン酸、イタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ピロメリット酸等が挙げられる。フェノール化合物又はナフトール化合物としては、例えば、ハイドロキノン、レゾルシン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フェノールフタリン、メチル化ビスフェノールA、メチル化ビスフェノールF、メチル化ビスフェノールS、フェノール、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール、カテコール、α-ナフトール、β-ナフトール、1,5-ジヒドロキシナフタレン、1,6-ジヒドロキシナフタレン、2,6-ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシベンゾフェノン、トリヒドロキシベンゾフェノン、テトラヒドロキシベンゾフェノン、フロログルシン、ベンゼントリオール、ジシクロペンタジエン型ジフェノール化合物、フェノールノボラック等が挙げられる。ここで、「ジシクロペンタジエン型ジフェノール化合物」とは、ジシクロペンタジエン1分子にフェノール2分子が縮合して得られるジフェノール化合物をいう。
【0069】
具体的には、活性エステル系樹脂としては、ジシクロペンタジエン型活性エステル系樹脂、ナフタレン構造を含むナフタレン型活性エステル系樹脂、フェノールノボラックのアセチル化物を含む活性エステル系樹脂、フェノールノボラックのベンゾイル化物を含む活性エステル系樹脂が好ましく、中でもジシクロペンタジエン型活性エステル系樹脂、及びナフタレン型活性エステル系樹脂から選ばれる少なくとも1種であることがより好ましい。ジシクロペンタジエン型活性エステル系樹脂としては、ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル系樹脂が好ましい。
【0070】
活性エステル系樹脂の市販品としては、例えば、ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル系樹脂として、「EXB9451」、「EXB9460」、「EXB9460S」、「EXB-8000L」、「EXB-8000L-65M」、「EXB-8000L-65TM」、「HPC-8000L-65TM」、「HPC-8000」、「HPC-8000-65T」、「HPC-8000H」、「HPC-8000H-65TM」(DIC社製);ナフタレン構造を含む活性エステル系樹脂として「HP-B-8151-62T」、「HP-C-8151-62T」、「EXB-8100L-65T」、「EXB-8150-60T」、「EXB-8150-62T」、「EXB-9416-70BK」、「HPC-8150-60T」、「HPC-8150-62T」、「EXB-8」(DIC社製);りん含有活性エステル系樹脂として、「EXB9401」(DIC社製);フェノールノボラックのアセチル化物である活性エステル系樹脂として「DC808」(三菱ケミカル社製);フェノールノボラックのベンゾイル化物である活性エステル系樹脂として「YLH1026」、「YLH1030」、「YLH1048」(三菱ケミカル社製);スチリル基及びナフタレン構造を含む活性エステル系樹脂として「PC1300-02-65MA」(エア・ウォーター社製)等が挙げられる。活性エステル系樹脂は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0071】
活性エステル系樹脂の量の範囲は、樹脂組成物中の不揮発成分100質量%に対して、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは1質量%以上、更に好ましくは5質量%以上であり、好ましくは40質量%以下、より好ましくは30質量%以下、更に好ましくは20質量%以下である。
【0072】
活性エステル系樹脂の量の範囲は、樹脂組成物中の樹脂成分100質量%に対して、好ましくは1質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは20質量%以上であり、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、更に好ましくは30質量%以下である。
【0073】
エポキシ樹脂のエポキシ基数を1とした場合、活性エステル系樹脂の活性エステル基数は、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.2以上、更に好ましくは0.3以上であり、好ましくは1.5以下、より好ましくは1.0以下、更に好ましくは0.6以下である。「活性エステル系樹脂の活性エステル基数」とは、樹脂組成物中に存在する活性エステル系樹脂の不揮発成分の質量を活性エステル基当量で割り算した値を全て合計した値を表す。また、活性エステル基当量とは、活性エステル基1当量あたりの樹脂の質量を表す。
【0074】
ベンゾオキサジン系樹脂としては、1分子内中に1個以上、好ましくは2個以上のベンゾオキサジン環を有する化合物を用いうる。ベンゾオキサジン系樹脂は、エポキシ樹脂と組み合わせた場合にエポキシ樹脂と反応して樹脂組成物を硬化させうるので、「ベンゾオキサジン系硬化剤」ということがある。
【0075】
ベンゾオキサジン系樹脂の具体例としては、JFEケミカル社製の「JBZ-OP100D」、「ODA-BOZ」;昭和高分子社製の「HFB2006M」;四国化成工業社製の「P-d」、「F-a」などが挙げられる。ベンゾオキサジン系樹脂は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0076】
ベンゾオキサジン系樹脂の量の範囲は、樹脂組成物中の不揮発成分100質量%に対して、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、更に好ましくは1.0質量%以上であり、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、更に好ましくは2質量%以下である。
【0077】
ベンゾオキサジン系樹脂の量の範囲は、樹脂組成物中の樹脂成分100質量%に対して、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、更に好ましくは1質量%以上であり、好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下、更に好ましくは5質量%以下である。
【0078】
エポキシ樹脂のエポキシ基数を1とした場合、ベンゾオキサジン系樹脂のベンゾオキサジン環数は、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.02以上、更に好ましくは0.05以上であり、好ましくは1.0以下、より好ましくは0.5以下、更に好ましくは0.1以下である。「ベンゾオキサジン系樹脂のベンゾオキサジン環数」とは、樹脂組成物中に存在するベンゾオキサジン系樹脂の不揮発成分の質量をベンゾオキサジン環当量で割り算した値を全て合計した値を表す。また、ベンゾオキサジン環当量とは、ベンゾオキサジン環1当量あたりの樹脂の質量を表す。
【0079】
シアネートエステル系樹脂としては、1分子内中に1個以上、好ましくは2個以上のシアネート基を有する化合物を用いうる。シアネートエステル系樹脂は、エポキシ樹脂と組み合わせた場合にエポキシ樹脂と反応して樹脂組成物を硬化させうるので、「シアネートエステル系硬化剤」ということがある。シアネートエステル系樹脂としては、例えば、ビスフェノールAジシアネート、ポリフェノールシアネート、オリゴ(3-メチレン-1,5-フェニレンシアネート)、4,4’-メチレンビス(2,6-ジメチルフェニルシアネート)、4,4’-エチリデンジフェニルジシアネート、ヘキサフルオロビスフェノールAジシアネート、2,2-ビス(4-シアネート)フェニルプロパン、1,1-ビス(4-シアネートフェニルメタン)、ビス(4-シアネート-3,5-ジメチルフェニル)メタン、1,3-ビス(4-シアネートフェニル-1-(メチルエチリデン))ベンゼン、ビス(4-シアネートフェニル)チオエーテル、及びビス(4-シアネートフェニル)エーテル等の2官能シアネートエステル系樹脂;フェノールノボラック及びクレゾールノボラック等から誘導される多官能シアネートエステル系樹脂;これらシアネートエステル系樹脂が一部トリアジン化したプレポリマー;などが挙げられる。シアネートエステル系樹脂の具体例としては、ロンザジャパン社製の「PT30」及び「PT60」(フェノールノボラック型多官能シアネートエステル系樹脂)、「BA230」、「BA230S75」(ビスフェノールAジシアネートの一部又は全部がトリアジン化され三量体となったプレポリマー)等が挙げられる。
【0080】
カルボジイミド系樹脂としては、1分子内中に1個以上、好ましくは2個以上のカルボジイミド構造を有する化合物を用いうる。カルボジイミド系樹脂は、エポキシ樹脂と組み合わせた場合にエポキシ樹脂と反応して樹脂組成物を硬化させうるので、「カルボジイミド系硬化剤」ということがある。カルボジイミド系樹脂の具体例としては、テトラメチレン-ビス(t-ブチルカルボジイミド)、シクロヘキサンビス(メチレン-t-ブチルカルボジイミド)等の脂肪族ビスカルボジイミド;フェニレン-ビス(キシリルカルボジイミド)等の芳香族ビスカルボジイミド等のビスカルボジイミド;ポリヘキサメチレンカルボジイミド、ポリトリメチルヘキサメチレンカルボジイミド、ポリシクロヘキシレンカルボジイミド、ポリ(メチレンビスシクロヘキシレンカルボジイミド)、ポリ(イソホロンカルボジイミド)等の脂肪族ポリカルボジイミド;ポリ(フェニレンカルボジイミド)、ポリ(ナフチレンカルボジイミド)、ポリ(トリレンカルボジイミド)、ポリ(メチルジイソプロピルフェニレンカルボジイミド)、ポリ(トリエチルフェニレンカルボジイミド)、ポリ(ジエチルフェニレンカルボジイミド)、ポリ(トリイソプロピルフェニレンカルボジイミド)、ポリ(ジイソプロピルフェニレンカルボジイミド)、ポリ(キシリレンカルボジイミド)、ポリ(テトラメチルキシリレンカルボジイミド)、ポリ(メチレンジフェニレンカルボジイミド)、ポリ[メチレンビス(メチルフェニレン)カルボジイミド]等の芳香族ポリカルボジイミド等のポリカルボジイミドが挙げられる。カルボジイミド系樹脂の市販品としては、例えば、日清紡ケミカル社製の「カルボジライトV-02B」、「カルボジライトV-03」、「カルボジライトV-04K」、「カルボジライトV-05」、「カルボジライトV-07」及び「カルボジライトV-09」;ラインケミー社製の「スタバクゾールP」、「スタバクゾールP400」、「ハイカジル510」等が挙げられる。
【0081】
酸無水物系樹脂としては、1分子内中に1個以上、好ましくは2個以上の酸無水物基を有する化合物を用いうる。酸無水物系樹脂は、エポキシ基と組み合わせた場合にエポキシ樹脂と反応して樹脂組成物を硬化させうるので、「酸無水物系硬化剤」ということがある。酸無水物系樹脂の具体例としては、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルナジック酸無水物、水素化メチルナジック酸無水物、トリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸、ドデセニル無水コハク酸、5-(2,5-ジオキソテトラヒドロ-3-フラニル)-3-メチル-3-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸無水物、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ベンソフェノンテトラカルボン酸二無水物、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、オキシジフタル酸二無水物、3,3’-4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、1,3,3a,4,5,9b-ヘキサヒドロ-5-(テトラヒドロ-2,5-ジオキソ-3-フラニル)-ナフト[1,2-C]フラン-1,3-ジオン、エチレングリコールビス(アンヒドロトリメリテート)、スチレンとマレイン酸とが共重合したスチレン・マレイン酸樹脂などのポリマー型の酸無水物などが挙げられる。酸無水物系樹脂の市販品としては、例えば、新日本理化社製の「HNA-100」、「MH-700」、「MTA-15」、「DDSA」、「OSA」;三菱ケミカル社製の「YH-306」、「YH-307」;日立化成社製の「HN-2200」、「HN-5500」;クレイバレイ社製「EF-30」、「EF-40」「EF-60」、「EF-80」等が挙げられる。
【0082】
アミン系樹脂としては、1分子内中に1個以上、好ましくは2個以上のアミノ基を有する化合物を用いうる。アミン系樹脂は、エポキシ基と組み合わせた場合にエポキシ樹脂と反応して樹脂組成物を硬化させうるので、「アミン系硬化剤」ということがある。アミン系樹脂としては、例えば、脂肪族アミン類、ポリエーテルアミン類、脂環式アミン類、芳香族アミン類等が挙げられ、中でも、芳香族アミン類が好ましい。アミン系樹脂は、第1級アミン又は第2級アミンが好ましく、第1級アミンがより好ましい。アミン系樹脂の具体例としては、4,4’-メチレンビス(2,6-ジメチルアニリン)、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、m-フェニレンジアミン、m-キシリレンジアミン、ジエチルトルエンジアミン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジヒドロキシベンジジン、2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、3,3-ジメチル-5,5-ジエチル-4,4-ジフェニルメタンジアミン、2,2-ビス(4-アミノフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-(4-アミノフェノキシ)フェニル)プロパン、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス(4-(4-アミノフェノキシ)フェニル)スルホン、ビス(4-(3-アミノフェノキシ)フェニル)スルホン、等が挙げられる。アミン系樹脂の市販品としては、例えば、セイカ社製「SEIKACURE-S」;日本化薬社製の「KAYABOND C-200S」、「KAYABOND C-100」、「カヤハードA-A」、「カヤハードA-B」、「カヤハードA-S」;三菱ケミカル社製の「エピキュアW」;住友精化社製「DTDA」等が挙げられる。
【0083】
チオール系樹脂は、エポキシ樹脂と組み合わせた場合にエポキシ樹脂と反応して樹脂組成物を硬化させうるので、「チオール系硬化剤」ということがある。チオール系樹脂としては、例えば、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)、トリス(3-メルカプトプロピル)イソシアヌレート等が挙げられる。
【0084】
硬化剤の活性基当量は、好ましくは50g/eq.~3000g/eq.、より好ましくは100g/eq.~1000g/eq.、さらに好ましくは100g/eq.~500g/eq.、特に好ましくは100g/eq.~300g/eq.である。活性基当量は、活性基1当量あたりの樹脂の質量を表す。
【0085】
硬化剤の重量平均分子量(Mw)の範囲は、エポキシ樹脂の重量平均分子量(Mw)の範囲と同じでありうる。
【0086】
硬化剤の量の範囲は、樹脂組成物中の不揮発成分100質量%に対して、好ましくは1質量%以上、より好ましくは5質量%以上、更に好ましくは10質量%以上であり、好ましくは40質量%以下、より好ましくは30質量%以下、更に好ましくは20質量%以下である。
【0087】
硬化剤の量の範囲は、樹脂組成物中の樹脂成分100質量%に対して、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、更に好ましくは30質量%以上であり、好ましくは60質量%以下、より好ましくは50質量%以下、更に好ましくは40質量%以下である。
【0088】
エポキシ樹脂のエポキシ基数を1とした場合、硬化剤の活性基数は、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.2以上、更に好ましくは0.3以上であり、好ましくは5.0以下、より好ましくは4.0以下、特に好ましくは3.0以下である。「硬化剤の活性基数」とは、樹脂組成物中に存在する硬化剤の不揮発成分の質量を活性基当量で割り算した値を全て合計した値を表す。
【0089】
ラジカル重合性樹脂としては、エチレン性不飽和結合を有する化合物を用いうる。よって、ラジカル重合性樹脂は、エチレン性不飽和結合を含むラジカル重合性基を有しうる。ラジカル重合性基としては、例えば、ビニル基、アリル基、1-プロペニル基、3-シクロヘキセニル基、3-シクロペンテニル基、2-ビニルフェニル基、3-ビニルフェニル基、4-ビニルフェニル基等の不飽和炭化水素基;アクリロイル基、メタクリロイル基、マレイミド基(2,5-ジヒドロ-2,5-ジオキソ-1H-ピロール-1-イル基)等のα,β-不飽和カルボニル基等が挙げられる。ラジカル重合性樹脂が1分子内中に含むラジカル重合性基の数は、1個でもよいが、2個以上が好ましい。ラジカル重合性樹脂は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。好ましいラジカル重合性樹脂としては、アクリル系樹脂、スチリル系樹脂、アリル系樹脂、及び、マレイミド系樹脂が挙げられる。
【0090】
(A)熱硬化性樹脂の量の範囲は、樹脂組成物中の不揮発成分100質量%に対して、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、更に好ましくは30質量%以上であり、好ましくは80質量%以下、より好ましくは60質量%以下、更に好ましくは40質量%以下である。
【0091】
(A)熱硬化性樹脂の量の範囲は、樹脂組成物中の樹脂成分100質量%に対して、好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上、更に好ましくは90質量%以上であり、好ましくは98質量%以下、より好ましくは96質量%以下、更に好ましくは94質量%以下である。
【0092】
樹脂組成物は、任意の成分として、更に(B)無機充填材を含んでいてもよい。(B)成分としての(B)無機充填材は、通常、粒子の状態で樹脂組成物に含まれる。
【0093】
(B)無機充填材の材料としては、通常、無機化合物を用いる。(B)無機充填材の材料としては、例えば、シリカ、アルミナ、ガラス、コーディエライト、シリコン酸化物、硫酸バリウム、炭酸バリウム、タルク、クレー、雲母粉、酸化亜鉛、ハイドロタルサイト、ベーマイト、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化マンガン、ホウ酸アルミニウム、炭酸ストロンチウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸ビスマス、酸化チタン、酸化ジルコニウム、チタン酸バリウム、チタン酸ジルコン酸バリウム、ジルコン酸バリウム、ジルコン酸カルシウム、リン酸ジルコニウム、及びリン酸タングステン酸ジルコニウム等が挙げられる。これらの中でもシリカ、アルミナが好適であり、シリカが特に好適である。シリカとしては、例えば、無定形シリカ、溶融シリカ、結晶シリカ、合成シリカ、中空シリカ等が挙げられる。また、シリカとしては球形シリカが好ましい。(B)無機充填材は、1種類単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0094】
(B)無機充填材の市販品としては、例えば、日鉄ケミカル&マテリアル社製の「SP60-05」、「SP507-05」;アドマテックス社製の「YC100C」、「YA050C」、「YA050C-MJE」、「YA010C」、「SC2500SQ」、「SO-C4」、「SO-C2」、「SO-C1」;デンカ社製の「UFP-30」、「DAW-03」、「FB-105FD」;トクヤマ社製の「シルフィルNSS-3N」、「シルフィルNSS-4N」、「シルフィルNSS-5N」;太平洋セメント社製の「セルフィアーズ」、「MGH-005」;日揮触媒化成社製の「エスフェリーク」、「BA-1」などが挙げられる。
【0095】
(B)無機充填材の平均粒径の範囲は、好ましくは0.01μm以上、より好ましくは0.05μm以上、特に好ましくは0.1μm以上であり、好ましくは5μm以下、より好ましくは3μm以下、さらに好ましくは1μm以下である。
【0096】
(B)無機充填材の平均粒径は、ミー(Mie)散乱理論に基づくレーザー回折・散乱法により測定することができる。具体的には、レーザー回折散乱式粒径分布測定装置により、無機充填材の粒径分布を体積基準で作成し、そのメディアン径を平均粒径とすることで測定することができる。測定サンプルは、無機充填材100mg、メチルエチルケトン10gをバイアル瓶に秤取り、超音波にて10分間分散させたものを使用することができる。測定サンプルを、レーザー回折式粒径分布測定装置を使用して、使用光源波長を青色及び赤色とし、フローセル方式で無機充填材の体積基準の粒径分布を測定し、得られた粒径分布からメディアン径として平均粒径を算出しうる。レーザー回折式粒径分布測定装置としては、例えば堀場製作所社製「LA-960」等が挙げられる。
【0097】
(B)無機充填材の比表面積の範囲は、好ましくは1m2/g以上、より好ましくは2m2/g以上、特に好ましくは3m2/g以上である。上限に特段の制限は無いが、好ましくは60m2/g以下、50m2/g以下又は40m2/g以下である。比表面積は、BET法に従って、比表面積測定装置(マウンテック社製Macsorb HM-1210)を使用して試料表面に窒素ガスを吸着させ、BET多点法を用いて比表面積を算出することで測定できる。
【0098】
(B)無機充填材は、耐湿性及び分散性を高める観点から、表面処理剤で処理されていることが好ましい。表面処理剤としては、例えば、フッ素含有シランカップリング剤、アミノシラン系カップリング剤、エポキシシラン系カップリング剤、メルカプトシラン系カップリング剤、シラン系カップリング剤、アルコキシシラン、オルガノシラザン化合物、チタネート系カップリング剤等が挙げられる。表面処理剤は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を任意に組み合わせて用いてもよい。
【0099】
表面処理剤の市販品としては、例えば、信越化学工業社製「KBM403」(3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「KBM803」(3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「KBE903」(3-アミノプロピルトリエトキシシラン)、信越化学工業社製「KBM573」(N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「SZ-31」(ヘキサメチルジシラザン)、信越化学工業社製「KBM103」(フェニルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「KBM-4803」(長鎖エポキシ型シランカップリング剤)、信越化学工業社製「KBM-7103」(3,3,3-トリフルオロプロピルトリメトキシシラン)等が挙げられる。
【0100】
表面処理剤による表面処理の程度は、(B)無機充填材の分散性向上の観点から、特定の範囲に収まることが好ましい。具体的には、無機充填材100質量%は、0.2質量%~5質量%の表面処理剤で表面処理されていることが好ましく、0.2質量%~3質量%の表面処理剤で表面処理されていることがより好ましく、0.3質量%~2質量%の表面処理剤で表面処理されていることがさらに好ましい。
【0101】
表面処理剤による表面処理の程度は、無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量によって評価することができる。無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量は、無機充填材の分散性向上の観点から、0.02mg/m2以上が好ましく、0.1mg/m2以上がより好ましく、0.2mg/m2以上がさらに好ましい。一方、樹脂組成物の溶融粘度の上昇を抑制する観点から、1.0mg/m2以下が好ましく、0.8mg/m2以下がより好ましく、0.5mg/m2以下がさらに好ましい。
【0102】
(B)無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量は、表面処理後の無機充填材を溶剤(例えば、メチルエチルケトン(MEK))により洗浄処理した後に測定することができる。具体的には、溶剤として十分な量のMEKを表面処理剤で表面処理された無機充填材に加えて、25℃で5分間超音波洗浄する。上澄液を除去し、固形分を乾燥させた後、カーボン分析計を用いて無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量を測定することができる。カーボン分析計としては、堀場製作所社製「EMIA-320V」等を使用することができる。
【0103】
(B)無機充填材の量の範囲は、樹脂組成物の不揮発成分100質量%に対して、0質量%でもよく、0質量%より多くてもよく、好ましくは30質量%以上、より好ましくは40質量%以上、更に好ましくは50質量%以上であり、好ましくは80質量%未満、より好ましくは70質量%以下、更に好ましくは60質量%以下である。
【0104】
樹脂組成物は、任意の成分として、更に(C)硬化促進剤を含んでいてもよい。(C)成分としての(C)硬化促進剤には、上述した(A)~(B)成分に該当するものは含めない。(C)硬化促進剤は、(A)熱硬化性樹脂の硬化を促進させる硬化触媒としての機能を有する。
【0105】
(C)硬化促進剤の種類は、(A)熱硬化性樹脂の種類に応じて選択しうる。例えば、(A)熱硬化性樹脂がエポキシ樹脂を含む場合、エポキシ樹脂の硬化を促進できる(C)硬化促進剤を用いることが好ましい。そのような(C)硬化促進剤としては、例えば、リン系硬化促進剤、ウレア系硬化促進剤、グアニジン系硬化促進剤、イミダゾール系硬化促進剤、金属系硬化促進剤、アミン系硬化促進剤等が挙げられる。(C)硬化促進剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0106】
リン系硬化促進剤としては、例えば、テトラブチルホスホニウムブロマイド、テトラブチルホスホニウムクロライド、テトラブチルホスホニウムアセテート、テトラブチルホスホニウムデカノエート、テトラブチルホスホニウムラウレート、ビス(テトラブチルホスホニウム)ピロメリテート、テトラブチルホスホニウムハイドロジェンヘキサヒドロフタレート、テトラブチルホスホニウム2,6-ビス[(2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)メチル]-4-メチルフェノラート、ジ-tert-ブチルジメチルホスホニウムテトラフェニルボレート等の脂肪族ホスホニウム塩;メチルトリフェニルホスホニウムブロマイド、エチルトリフェニルホスホニウムブロマイド、プロピルトリフェニルホスホニウムブロマイド、ブチルトリフェニルホスホニウムブロマイド、ベンジルトリフェニルホスホニウムクロライド、テトラフェニルホスホニウムブロマイド、p-トリルトリフェニルホスホニウムテトラ-p-トリルボレート、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、テトラフェニルホスホニウムテトラp-トリルボレート、トリフェニルエチルホスホニウムテトラフェニルボレート、トリス(3-メチルフェニル)エチルホスホニウムテトラフェニルボレート、トリス(2-メトキシフェニル)エチルホスホニウムテトラフェニルボレート、(4-メチルフェニル)トリフェニルホスホニウムチオシアネート、テトラフェニルホスホニウムチオシアネート、ブチルトリフェニルホスホニウムチオシアネート等の芳香族ホスホニウム塩;トリフェニルホスフィン・トリフェニルボラン等の芳香族ホスフィン・ボラン複合体;トリフェニルホスフィン・p-ベンゾキノン付加反応物等の芳香族ホスフィン・キノン付加反応物;トリブチルホスフィン、トリ-tert-ブチルホスフィン、トリオクチルホスフィン、ジ-tert-ブチル(2-ブテニル)ホスフィン、ジ-tert-ブチル(3-メチル-2-ブテニル)ホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン等の脂肪族ホスフィン;ジブチルフェニルホスフィン、ジ-tert-ブチルフェニルホスフィン、メチルジフェニルホスフィン、エチルジフェニルホスフィン、ブチルジフェニルホスフィン、ジフェニルシクロヘキシルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリ-o-トリルホスフィン、トリ-m-トリルホスフィン、トリ-p-トリルホスフィン、トリス(4-エチルフェニル)ホスフィン、トリス(4-プロピルフェニル)ホスフィン、トリス(4-イソプロピルフェニル)ホスフィン、トリス(4-ブチルフェニル)ホスフィン、トリス(4-tert-ブチルフェニル)ホスフィン、トリス(2,4-ジメチルフェニル)ホスフィン、トリス(2,5-ジメチルフェニル)ホスフィン、トリス(2,6-ジメチルフェニル)ホスフィン、トリス(3,5-ジメチルフェニル)ホスフィン、トリス(2,4,6-トリメチルフェニル)ホスフィン、トリス(2,6-ジメチル-4-エトキシフェニル)ホスフィン、トリス(2-メトキシフェニル)ホスフィン、トリス(4-メトキシフェニル)ホスフィン、トリス(4-エトキシフェニル)ホスフィン、トリス(4-tert-ブトキシフェニル)ホスフィン、ジフェニル-2-ピリジルホスフィン、1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン、1,3-ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン、1,4-ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン、1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)アセチレン、2,2’-ビス(ジフェニルホスフィノ)ジフェニルエーテル等の芳香族ホスフィン等が挙げられる。
【0107】
ウレア系硬化促進剤としては、例えば、1,1-ジメチル尿素;1,1,3-トリメチル尿素、3-エチル-1,1-ジメチル尿素、3-シクロヘキシル-1,1-ジメチル尿素、3-シクロオクチル-1,1-ジメチル尿素等の脂肪族ジメチルウレア;3-フェニル-1,1-ジメチル尿素、3-(4-クロロフェニル)-1,1-ジメチル尿素、3-(3,4-ジクロロフェニル)-1,1-ジメチル尿素、3-(3-クロロ-4-メチルフェニル)-1,1-ジメチル尿素、3-(2-メチルフェニル)-1,1-ジメチル尿素、3-(4-メチルフェニル)-1,1-ジメチル尿素、3-(3,4-ジメチルフェニル)-1,1-ジメチル尿素、3-(4-イソプロピルフェニル)-1,1-ジメチル尿素、3-(4-メトキシフェニル)-1,1-ジメチル尿素、3-(4-ニトロフェニル)-1,1-ジメチル尿素、3-[4-(4-メトキシフェノキシ)フェニル]-1,1-ジメチル尿素、3-[4-(4-クロロフェノキシ)フェニル]-1,1-ジメチル尿素、3-[3-(トリフルオロメチル)フェニル]-1,1-ジメチル尿素、N,N-(1,4-フェニレン)ビス(N’,N’-ジメチル尿素)、N,N-(4-メチル-1,3-フェニレン)ビス(N’,N’-ジメチル尿素)〔トルエンビスジメチルウレア〕等の芳香族ジメチルウレア等が挙げられる。
【0108】
グアニジン系硬化促進剤としては、例えば、ジシアンジアミド、1-メチルグアニジン、1-エチルグアニジン、1-シクロヘキシルグアニジン、1-フェニルグアニジン、1-(o-トリル)グアニジン、ジメチルグアニジン、ジフェニルグアニジン、トリメチルグアニジン、テトラメチルグアニジン、ペンタメチルグアニジン、1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン、7-メチル-1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン、1-メチルビグアニド、1-エチルビグアニド、1-n-ブチルビグアニド、1-n-オクタデシルビグアニド、1,1-ジメチルビグアニド、1,1-ジエチルビグアニド、1-シクロヘキシルビグアニド、1-アリルビグアニド、1-フェニルビグアニド、1-(o-トリル)ビグアニド等が挙げられる。
【0109】
イミダゾール系硬化促進剤としては、例えば、2-メチルイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾール、1-シアノエチル-2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾリウムトリメリテイト、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾリウムトリメリテイト、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-ウンデシルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-エチル-4’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジンイソシアヌル酸付加物、2-フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール、2,3-ジヒドロ-1H-ピロロ[1,2-a]ベンズイミダゾール、1-ドデシル-2-メチル-3-ベンジルイミダゾリウムクロライド、2-メチルイミダゾリン、2-フェニルイミダゾリン等のイミダゾール化合物及びイミダゾール化合物とエポキシ樹脂とのアダクト体が挙げられる。イミダゾール系硬化促進剤の市販品としては、例えば、四国化成工業社製の「1B2PZ」、「2E4MZ」、「2MZA-PW」、「2MZ-OK」、「2MA-OK」、「2MA-OK-PW」、「2PHZ」、「2PHZ-PW」、「Cl1Z」、「Cl1Z-CN」、「Cl1Z-CNS」、「C11Z-A」;三菱ケミカル社製の「P200-H50」等が挙げられる。
【0110】
金属系硬化促進剤としては、例えば、コバルト、銅、亜鉛、鉄、ニッケル、マンガン、スズ等の金属の、有機金属錯体又は有機金属塩が挙げられる。有機金属錯体の具体例としては、コバルト(II)アセチルアセトナート、コバルト(III)アセチルアセトナート等の有機コバルト錯体、銅(II)アセチルアセトナート等の有機銅錯体、亜鉛(II)アセチルアセトナート等の有機亜鉛錯体、鉄(III)アセチルアセトナート等の有機鉄錯体、ニッケル(II)アセチルアセトナート等の有機ニッケル錯体、マンガン(II)アセチルアセトナート等の有機マンガン錯体等が挙げられる。有機金属塩としては、例えば、オクチル酸亜鉛、オクチル酸錫、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、ステアリン酸スズ、ステアリン酸亜鉛等が挙げられる。
【0111】
アミン系硬化促進剤としては、例えば、トリエチルアミン、トリブチルアミン等のトリアルキルアミン、4-ジメチルアミノピリジン、ベンジルジメチルアミン、2,4,6,-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)-ウンデセン等が挙げられる。アミン系硬化促進剤としては、市販品を用いてもよく、例えば、味の素ファインテクノ社製の「MY-25」等が挙げられる。
【0112】
(C)硬化促進剤の量の範囲は、樹脂組成物の不揮発成分100質量%に対して、0質量%でもよく、0質量%より多くてもよく、好ましくは0.001質量%以上、より好ましくは0.01質量%以上、更に好ましくは0.02質量%以上であり、好ましくは2質量%以下、より好ましくは1質量%以下、更に好ましくは0.5質量%以下である。
【0113】
(C)硬化促進剤の量の範囲は、樹脂組成物の樹脂成分100質量%に対して、0質量%でもよく、0質量%より多くてもよく、好ましくは0.001質量%以上、より好ましくは0.01質量%以上、更に好ましくは0.1質量%以上であり、好ましくは3質量%以下、より好ましくは1質量%以下、更に好ましくは0.5質量%以下である。
【0114】
樹脂組成物は、任意の成分として、更に(D)高分子樹脂を含んでいてもよい。(D)成分としての(D)高分子樹脂には、上述した(A)~(C)成分に該当するものは含めない。(D)高分子樹脂を用いる場合、樹脂組成物の成膜性を向上させて樹脂組成物層の形成を円滑に行ったり、絶縁層の柔軟性を高めたりできる。(D)高分子樹脂は、通常、当該(D)高分子樹脂以外の樹脂成分と相溶して樹脂組成物に含まれる。(D)高分子樹脂は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0115】
(D)高分子樹脂は、通常、大きい分子量を有する。具体的には、(D)高分子樹脂の重量平均分子量Mwは、通常は(A)熱硬化性樹脂の重量平均分子量より大きく、好ましくは5000より大きく、より好ましくは8000以上、更に好ましくは10000以上、更に好ましくは20000以上であり、好ましくは100000以下、より好ましくは70000以下、更に好ましくは60000以下、更に好ましくは50000以下である。(D)高分子樹脂の重量平均分子量Mwは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量である。
【0116】
(D)高分子樹脂としては、例えば、フェノキシ樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエステル樹脂等が挙げられる。中でも、ポリイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂及びフェノキシ樹脂から選ばれる少なくとも1種が好ましい。
【0117】
ポリイミド樹脂としては、イミド結合を含有する繰り返し単位を含む樹脂を用いることができる。このような樹脂としては、例えば、2官能性ヒドロキシル基末端ポリブタジエン、ジイソシアネート化合物及び四塩基酸無水物を反応させて得られる線状ポリイミド(特開2006-37083号公報記載のポリイミド)、ポリシロキサン骨格含有ポリイミド(特開2002-12667号公報及び特開2000-319386号公報等に記載のポリイミド)等の変性ポリイミドが挙げられる。ポリイミド樹脂は市販品を用いることができる。市販品としては、新日本理化社製の「リカコートSN20」及び「リカコートPN20」が挙げられる。
【0118】
ポリカーボネート樹脂としては、カーボネート構造を含有する繰り返し単位を含む樹脂を用いることができる。このような樹脂としては、ヒドロキシ基含有カーボネート樹脂、フェノール性水酸基含有カーボネート樹脂、カルボキシ基含有カーボネート樹脂、酸無水物基含有カーボネート樹脂、イソシアネート基含有カーボネート樹脂、ウレタン基含有カーボネート樹脂等が挙げられる。カーボネート樹脂は市販品を用いることができる。市販品としては、三菱瓦斯化学社製の「FPC0220」、旭化成ケミカルズ社製の「T6002」、「T6001」(ポリカーボネートジオール)、クラレ社製の「C-1090」、「C-2090」、「C-3090」(ポリカーボネートジオール)等が挙げられる。
【0119】
フェノキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA骨格、ビスフェノールF骨格、ビスフェノールS骨格、ビスフェノールアセトフェノン骨格、ノボラック骨格、ビフェニル骨格、フルオレン骨格、ジシクロペンタジエン骨格、ノルボルネン骨格、ナフタレン骨格、アントラセン骨格、アダマンタン骨格、テルペン骨格、及びトリメチルシクロヘキサン骨格からなる群から選択される1種類以上の骨格を有するフェノキシ樹脂が挙げられる。フェノキシ樹脂の末端は、フェノール性水酸基、エポキシ基等のいずれの官能基でもよい。フェノキシ樹脂の具体例としては、三菱ケミカル社製の「1256」及び「4250」(いずれもビスフェノールA骨格含有フェノキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YX8100」(ビスフェノールS骨格含有フェノキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YX6954」(ビスフェノールアセトフェノン骨格含有フェノキシ樹脂);日鉄ケミカル&マテリアル社製の「FX280」及び「FX293」;三菱ケミカル社製の「YL7500BH30」、「YX6954BH30」、「YX7553」、「YX7553BH30」、「YL7769BH30」、「YL6794」、「YL7213」、「YL7290」、「YL7553BH30」、及び「YL7482」;等が挙げられる。
【0120】
ポリビニルアセタール樹脂としては、例えば、ポリビニルホルマール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂が挙げられ、ポリビニルブチラール樹脂が好ましい。ポリビニルアセタール樹脂の具体例としては積水化学工業社製のエスレックBHシリーズ、BXシリーズ(例えばBX-5Z)、KSシリーズ(例えばKS-1)、BLシリーズ、BMシリーズ;等が挙げられる。
【0121】
ポリアミドイミド樹脂の具体例としては、東洋紡社製の「バイロマックスHR11NN」及び「バイロマックスHR16NN」が挙げられる。ポリアミドイミド樹脂の具体例としてはまた、日立化成社製の「KS9100」、「KS9300」(ポリシロキサン骨格含有ポリアミドイミド)等の変性ポリアミドイミドが挙げられる。
【0122】
ポリエーテルスルホン樹脂の具体例としては、住友化学社製の「PES5003P」等が挙げられる。
【0123】
ポリフェニレンエーテル樹脂の具体例としては、三菱ガス化学社製のオリゴフェニレンエーテル・スチレン樹脂「OPE-2St 1200」等が挙げられる。
【0124】
ポリスルホン樹脂の具体例としては、ソルベイアドバンストポリマーズ社製のポリスルホン「P1700」、「P3500」等が挙げられる。
【0125】
(D)高分子樹脂の量の範囲は、樹脂組成物の不揮発成分100質量%に対して、0質量%でもよく、0質量%より多くてもよく、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、更に好ましくは1質量%以上であり、好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下、更に好ましくは5質量%以下である。
【0126】
(D)高分子樹脂の量の範囲は、樹脂組成物の樹脂成分100質量%に対して、0質量%でもよく、0質量%より多くてもよく、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、更に好ましくは1質量%以上であり、好ましくは50質量%以下、より好ましくは30質量%以下、更に好ましくは10質量%以下である。
【0127】
樹脂組成物は、任意の成分として、更に(E)難燃剤を含んでいてもよい。(E)難燃剤には、上述した(A)~(D)成分に該当するものは含めない。(E)難燃剤としては、例えば、ホスファゼン化合物、有機リン系難燃剤、有機系窒素含有リン化合物、窒素化合物、シリコーン系難燃剤、金属水酸化物等が挙げられる。(E)難燃剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0128】
(E)難燃剤としては、例えば、大塚化学社製の「SPH-100」、「SPS-100」、「SPB-100」、「SPE-100」(ホスファゼン類);伏見製薬所社製の「FP-100」、「FP-110」、「FP-300」、「FP-400」(ホスファゼン類);三光社製の「HCA-NQ」、「HCA-HQ」、「HCA-HQ-HST」(ホスフィン酸エステル(フェノール性水酸基含有));大八化学工業社製の「PX-200」、「PX-201」、「PX-202」、「CR-733S」、「CR-741」、「CR-747」(リン酸エステル)等が挙げられる。
【0129】
(E)難燃剤の量の範囲は、樹脂組成物の不揮発成分100質量%に対して、0質量%でもよく、0質量%より多くてもよく、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、更に好ましくは1質量%以上であり、好ましくは10質量%以下、より好ましくは6質量%以下、更に好ましくは3質量%以下である。
【0130】
(E)難燃剤の量の範囲は、樹脂組成物の樹脂成分100質量%に対して、0質量%でもよく、0質量%より多くてもよく、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、更に好ましくは1質量%以上であり、好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下、更に好ましくは5質量%以下である。
【0131】
樹脂組成物は、任意の不揮発成分として、更に(F)任意の添加剤を含んでいてもよい。(F)任意の添加剤としては、例えば、有機銅化合物、有機亜鉛化合物、有機コバルト化合物等の有機金属化合物;シリコーン系レベリング剤、アクリルポリマー系レベリング剤等のレベリング剤;ベントン、モンモリロナイト等の増粘剤;シリコーン系消泡剤、アクリル系消泡剤、フッ素系消泡剤、ビニル樹脂系消泡剤等の消泡剤;ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤等の紫外線吸収剤;尿素シラン等の接着性向上剤;トリアゾール系密着性付与剤、テトラゾール系密着性付与剤、トリアジン系密着性付与剤等の密着性付与剤;ヒンダードフェノール系酸化防止剤等の酸化防止剤;スチルベン誘導体等の蛍光増白剤;フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤等の界面活性剤;リン酸エステル系分散剤、ポリオキシアルキレン系分散剤、アセチレン系分散剤、シリコーン系分散剤、アニオン性分散剤、カチオン性分散剤等の分散剤;ボレート系安定剤、チタネート系安定剤、アルミネート系安定剤、ジルコネート系安定剤、イソシアネート系安定剤、カルボン酸系安定剤、カルボン酸無水物系安定剤等の安定剤、が挙げられる。(F)任意の添加剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0132】
樹脂組成物は、通常、上述した(A)~(F)成分といった不揮発成分に組み合わせて、更に揮発性成分として(G)溶剤を含んでいてもよい。(G)溶剤としては、通常、有機溶剤を用いる。有機溶剤の具体例としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸イソアミル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、γ-ブチロラクトン等のエステル系溶剤;テトラヒドロピラン、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジフェニルエーテル、アニソール等のエーテル系溶剤;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、エチレングリコール等のアルコール系溶剤;酢酸2-エトキシエチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチルジグリコールアセテート、γ-ブチロラクトン、メトキシプロピオン酸メチル等のエーテルエステル系溶剤;乳酸メチル、乳酸エチル、2-ヒドロキシイソ酪酸メチル等のエステルアルコール系溶剤;2-メトキシプロパノール、2-メトキシエタノール、2-エトキシエタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルカルビトール)等のエーテルアルコール系溶剤;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン等のアミド系溶剤;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド系溶剤;アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル系溶剤;ヘキサン、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶剤;ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、トリメチルベンゼン等の芳香族炭化水素系溶剤等を挙げることができる。(G)溶剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0133】
(G)溶剤の量は、樹脂組成物の乾燥試験による質量減少率が上述した特定の範囲になるように設定しうる。
【0134】
樹脂組成物層の厚さは、プリント配線板の薄型化の観点から、好ましくは100μm以下、より好ましくは80μm以下、更に好ましくは60μm以下、更に好ましくは40μm以下、更に好ましくは30μm以下、更に好ましくは25μm以下である。樹脂組成物層の厚さの下限は、特に限定されないが、通常、1μm以上、5μm以上、10μm以上等でありうる。
【0135】
樹脂組成物層は、通常、低い最低溶融粘度を有することができる。樹脂シートが備える樹脂組成物層の最低溶融粘度の範囲は、好ましくは10000poise以下、より好ましくは9000poise以下、更に好ましくは7000poise以下である。このように低い最低溶融粘度を有する樹脂組成物層によれば、内層基板が備える回路を樹脂組成物層によって良好に埋め込むことができる。最低溶融粘度の下限は、厚みのある絶縁層を円滑に形成する観点から、好ましくは500poise以上、より好ましくは1000poise以上である。
【0136】
樹脂組成物層の最低溶融粘度は、樹脂シートの樹脂組成物層から採取した試料を用いて、動的粘弾性測定装置を用いて測定できる。詳細には、開始温度60℃から200℃までの温度範囲で昇温速度5℃/分の条件で昇温して、測定温度間隔2.5℃、振動数1Hz、ひずみ5degの条件で試料の動的粘弾性率を測定して最低溶融粘度を求めることができる。
【0137】
樹脂組成物層を硬化させることにより、樹脂組成物の硬化物を含む絶縁層を形成することができる。前記の硬化の際、樹脂組成物層には熱が加えられて(A)熱硬化性樹脂等の不揮発成分が反応しうる。よって、樹脂組成物の硬化物は、樹脂組成物の不揮発成分又はその反応生成物を含みうる。前記の硬化物は、通常、低い誘電正接を有することができるので、その硬化物を含む絶縁層は、低い誘電正接を有することができる。一例において、絶縁層の誘電正接は、好ましくは0.030以下、より好ましくは0.020以下、更に好ましくは0.010以下である。下限は、特段の制限はなく、例えば、0.0001以上でありうる。
【0138】
絶縁層の誘電正接は、空洞共振摂動法により測定周波数5.8GHz、測定温度23℃にて測定できる。試料が硬化前の樹脂組成物層である場合、その樹脂組成物層を150℃30分間、及び、180℃で30分の順の加熱により熱硬化して絶縁層を得て、絶縁層の誘電正接を測定できる。
【0139】
(樹脂シートの製造方法)
樹脂シートは、例えば、樹脂組成物を用意することと、その樹脂組成物を含む樹脂組成物層を支持体上に形成することと、を含む方法によって製造できる。樹脂組成物は、例えば、樹脂組成物に含まれうる成分を混合することによって、製造することができる。通常は、(A)~(F)成分等の不揮発成分及び(G)溶剤を混合して、樹脂組成物を製造する。前記の成分は、一部又は全部を同時に混合してもよく、順に混合してもよい。各成分を混合する過程で、温度を適宜設定してもよく、よって、一時的に又は終始にわたって、加熱及び/又は冷却してもよい。また、各成分を混合する過程において、撹拌又は振盪を行ってもよい。
【0140】
用意した樹脂組成物が液状である場合、その樹脂組成物を支持体上に塗布することにより、樹脂組成物層を形成できる。また、必要に応じて、樹脂組成物と溶剤とを混合して液状樹脂組成物としての樹脂ワニスを調製し、その樹脂ワニスを支持体上に塗布して樹脂組成物層を形成してもよい。溶剤としては、樹脂組成物の成分として説明した(G)溶剤と同様のものが挙げられる。また、塗布後に乾燥を行ってもよい。
【0141】
樹脂組成物の塗布は、ダイコーターなどの適切な塗布装置を用いて行ないうる。
【0142】
乾燥は、加熱、熱風吹きつけ等の乾燥方法により実施してよい。乾燥条件は、前記の乾燥試験による質量減少率が上述した特定の範囲になるように設定しうる。例えば、50℃~150℃の範囲の乾燥温度で、所望の質量減少率が得られるように時間を調整して乾燥を行ってもよい。
【0143】
樹脂シートにおいて、樹脂組成物層の支持体と接合していない面(即ち、支持体とは反対側の面)には、支持体に準じた保護フィルムをさらに設けてもよい。保護フィルムの厚さは、特に限定されるものではないが、例えば、1μm~40μmである。保護フィルムを設けることにより、樹脂組成物層の表面へのゴミの付着及びキズ付きを抑制することができる。樹脂シートは、ロール状に巻きとって保存することが可能である。樹脂シートが保護フィルムを有する場合、保護フィルムを剥がすことによって使用可能となる。
【0144】
<工程(I).樹脂シートと内層基板との積層>
本実施形態に係るプリント配線板の製造方法は、樹脂シートと内層基板とを、樹脂組成物層と内層基板とが接合するように積層する工程(I)を含む。
【0145】
内層基板としては、通常、板状の部材を用いる。内層基板としては、例えば、ガラスエポキシ基板、金属基板、ポリエステル基板、ポリイミド基板、BTレジン基板、熱硬化型ポリフェニレンエーテル基板等が挙げられる。また、内層基板は、その片面又は両面に内層導体層を有していてもよく、この内層導体層はパターン加工されていてもよい。内層基材の片面または両面に形成された内層導体層(回路)を含む当該内層基板は「内層回路基材」ということがある。また、プリント配線板を製造する際に、さらに絶縁層及び/又は導体層が形成されるべき中間製造物も、前記の「内層基板」に含まれる。プリント配線板が部品内蔵回路板である場合、部品を内蔵した内層基板を使用してもよい。
【0146】
樹脂シートの樹脂組成物層は良好な埋め込み性を有するので、内層回路基材の表面の内層導体層を良好に埋め込むことができる。この利点を活用する観点から、内層回路基材が備える内層導体層は微細な回路を形成していることが好ましく、よって、その最小ライン/スペース比は、小さいことが好ましい。「ライン」とは、導体層の回路配線の幅を表し、「スペース」とは回路配線間の間隔を表す。内層回路基材の表面の内層導体層の最小ライン/スペース比の範囲は、好ましくは50μm/50μm以下(即ち、ピッチが100μm以下)、より好ましくは30μm/30μm以下、更に好ましくは20μm/20μm以下、更に好ましくは15μm/15μm以下、更に好ましくは10μm/10μm以下である。下限は、例えば、0.5μm/0.5μm以上でありうる。ピッチは、内層導体層の全体にわたって均一でもよく、不均一でもよい。内層導体層の最小ピッチは、例えば、100μm以下、60μm以下、40μm以下、36μm以下、又は30μm以下であってもよい。
【0147】
樹脂シートが保護フィルム層を備える場合には、保護フィルム層を剥離した後で、樹脂シートと内層基板との積層を行う。内層基板と樹脂シートの積層は、例えば、支持体側から樹脂シートを内層基板に加熱圧着することにより行うことができる。樹脂シートを内層基板に加熱圧着する部材(以下、「加熱圧着部材」ともいう。)としては、例えば、加熱された金属板(SUS鏡板等)又は金属ロール(SUSロール)等が挙げられる。加熱圧着部材を樹脂シートに直接プレスしてもよいが、内層基板の表面凹凸に樹脂シートが十分に追随するよう、耐熱ゴム等の弾性材を介してプレスするのが好ましい。
【0148】
内層基板と樹脂シートとの積層は、真空ラミネート法により実施してよい。真空ラミネート法において、加熱圧着温度は、好ましくは60℃~160℃、より好ましくは80℃~140℃の範囲である。また、加熱圧着圧力は、好ましくは0.098MPa~1.77MPa、より好ましくは0.29MPa~1.47MPaの範囲である。さらに、加熱圧着時間は、好ましくは15秒間~400秒間、より好ましくは20秒間~300秒間の範囲である。積層は、絶縁層におけるボイド(気泡)の形成を抑制する観点から、好ましくは圧力26.7hPa以下の減圧条件下で実施する。
【0149】
積層は、市販の真空ラミネーターによって行ってもよい。市販の真空ラミネーターとしては、例えば、名機製作所社製の真空加圧式ラミネーター、バッチ式真空加圧ラミネーター、ニッコー・マテリアルズ社製のバキュームアップリケーター、バッチ式真空加圧ラミネーター等が挙げられる。
【0150】
積層の後に、常圧下(大気圧下)、例えば、加熱圧着部材を支持体側からプレスすることにより、積層された樹脂シートの平滑化処理を行ってもよい。平滑化処理のプレス条件は、上記積層の加熱圧着条件と同様の条件とすることができる。平滑化処理は、市販のラミネーターによって行うことができる。なお、積層と平滑化処理は、上記の市販の真空ラミネーターを用いて連続的に行ってもよい。
【0151】
<工程(II).樹脂組成物層の熱硬化>
本実施形態に係るプリント配線板の製造方法は、工程(I)の後に、樹脂組成物層を熱硬化して絶縁層を形成する工程(II)を含む。
【0152】
樹脂組成物層の熱硬化条件は、樹脂組成物の種類等によって異なりうる。例えば、硬化温度は、好ましくは130℃以上、より好ましくは150℃、更に好ましくは160℃であり、好ましくは220℃以下、より好ましくは210℃以下、更に好ましくは200℃以下である。また、硬化時間は、好ましくは5分間以上、より好ましくは10分間以上、更に好ましくは15分間以上であり、好ましくは120分間以下、より好ましくは100分間以下、更に好ましくは90分間以下である。
【0153】
プリント配線板の製造方法は、樹脂組成物層を熱硬化させる前に、樹脂組成物層を硬化温度よりも低い温度にて予備加熱することを含んでいてもよい。予備加熱温度は、好ましくは50℃以上、より好ましくは60℃以上、さらに好ましくは70℃以上であり、好ましくは180℃以下、より好ましくは170℃以下、更に好ましくは160℃以下である。また、予備加熱時間は、好ましくは5分間以上、より好ましくは10分間以上、さらに好ましくは15分間以上であり、好ましくは150分間以下、より好ましくは130分以下、さらに好ましくは120分間以下である。
【0154】
前記の通り、樹脂組成物層を熱硬化させることにより、絶縁層が形成される。絶縁層の厚みの範囲は、通常、硬化前の樹脂組成物層の厚みの範囲と同じである。
【0155】
<工程(III).ホールの形成>
本実施形態に係るプリント配線板の製造方法は、工程(II)の後に、絶縁層にホールを形成する工程(III)を含む。工程(III)では、例えば、ホールとしてビアホールを形成する。ビアホールは、通常、層間の電気接続のために設けられ、絶縁層を貫通している。よって、ビアホールは、絶縁層の内層基板とは反対側の面に開口を有する。また、ビアホールの底部において、内層基板が露出しうる。通常は、ビアホールの底部において内層基板の内層導体層が露出するので、ビアホールの底面は内層導体層によって形成される。
【0156】
ホールは、絶縁層の特性に応じて、ドリル、レーザー、プラズマ等の方法によって形成しうる。例えば、支持体を通して絶縁層にレーザー光を照射して、当該絶縁層にホールを形成してもよい。ホールの開口の大きさは、搭載する部品の微細度で選択してもよく、開口径30μm~500μmの範囲が好ましい。ホールの開口径とは、別に断らない限り、ホールの開口の直径を表し、具体的には、絶縁層の内層基板とは反対側の面に開いたホールの開口の直径を表す。
【0157】
レーザー光源としては、例えば、炭酸ガスレーザー(以下、「CO2レーザー」ともいう)装置、YAGレーザー装置、エキシマレーザー装置等が挙げられる。中でも、加工速度、コストの観点から、炭酸ガスレーザー装置が好ましい。レーザー光源として炭酸ガスレーザー装置を使用する場合、一般に、9.3μm~10.6μmの波長のレーザー光が使用される。
【0158】
レーザー光の照射条件は、所望の深さ及び開口径を有するホールを形成できるように設定することが望ましい。一例において、ショット数は、通常1ショット~10ショットの範囲で選択される。加工速度を高めてプリント配線板の生産性を向上させる観点から、ショット数は少ない方が好ましく、1ショット~5ショットの範囲であることが好ましく、1ショット~3ショットの範囲であることがより好ましい。特に、CO2レーザー装置を用いる場合に、ショット数が前記範囲にあることが好ましい。ショット数が2ショット以上である場合、バーストモード、サイクルモードの何れのモードでレーザーを照射してもよい。
【0159】
レーザー光のエネルギーは、ショット数、ホールの深さ、及び支持体の厚みなどの条件にもよる。1ショット当たりのレーザー光のエネルギーは、ホールの形成を円滑に行う観点から、好ましくは0.25mJ以上、より好ましくは0.5mJ以上、更に好ましくは1mJ以上に設定される。レーザー光のエネルギーの上限は、過剰なエネルギーによる絶縁層のダメージを抑制する観点から、好ましくは20mJ以下、より好ましくは15mJ以下、さらに好ましくは10mJ以下である。特に、CO2レーザー装置を用いる場合に、エネルギーが前記範囲にあることが好ましい。
【0160】
レーザー光を用いたホールの形成は、市販のレーザー装置を用いて実施してもよい。市販の炭酸ガスレーザー装置としては、例えば、日立ビアメカニクス社製「LC-2E21B/1C」、HITACHI社製「LC-K212」、三菱電機社製「ML605GTWII」、松下溶接システム社製の基板穴あけレーザー加工機、などが挙げられる。
【0161】
ホールの形成時には、一般に、絶縁層に熱が加えられる。従来は、この熱によってホール周辺の絶縁層の酸化が進行することがありえた。これに対し、本実施形態では、酸素透過率が低い支持体で絶縁層を覆った状態でホールの形成を行うので、絶縁層への酸素の浸入を抑制でき、よって絶縁層の酸化を抑制できる。したがって、後述する工程(V)を行った場合に、ホールの底部周辺で絶縁層が酸化剤溶液に浸食されることを抑制できるから、ハローイング現象を抑制できる。
【0162】
<工程(IV).支持体の剥離>
本実施形態に係るプリント配線板の製造方法は、工程(III)の後に、支持体を剥離する工程(IV)を含む。通常は、支持体を引き剥がすことにより、当該支持体を剥離する。支持体を剥離することにより、回路基板と反対側の絶縁層の表面が露出する。
【0163】
<工程(V).酸化剤溶液処理>
本実施形態に係るプリント配線板の製造方法は、工程(IV)の後に、絶縁層を酸化剤溶液で処理する工程(V)を含む。上述した工程(III)において形成されたホール内には、一般に、「スミア」と呼ばれる樹脂残渣が形成される。工程(V)で絶縁層と酸化剤溶液とを接触させて酸化剤溶液処理を行うことにより、酸化剤溶液がホール内に進入してスミアを除去できる。また、通常は、酸化剤溶液と接触した部分の絶縁層が粗化されるので、回路基板と反対側の絶縁層の表面の表面粗さが大きくなる。さらに、本実施形態では、工程(III)におけるホール周辺の絶縁層の酸化が支持体によって抑制されるから、ハローイング現象は抑制される。工程(V)では、例えば、絶縁層を酸化剤溶液中に浸漬することによって前記の酸化剤溶液処理を行ってもよい。
【0164】
酸化剤としては、例えば、過マンガン酸カリウム及び過マンガン酸ナトリウム等の過マンガン酸塩が挙げられる。酸化剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。酸化剤溶液の酸化剤濃度は、好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上、更に好ましくは5質量%以上であり、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下である。
【0165】
酸化剤溶液の溶剤としては、水及び水溶液等の水系溶剤が好ましく、アルカリ水溶液が好ましい。アルカリ水溶液の溶質としてのアルカリ化合物としては、例えば水酸化ナトリウム等の、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物が挙げられる。アルカリ化合物の濃度は、好ましくは1質量%以上、より好ましくは2質量%以上、更に好ましくは3質量%以上であり、好ましくは10質量%以下、より好ましくは8質量%以下、更に好ましくは6質量%以下である。好ましい例において、酸化剤溶液は、酸化ナトリウムの水溶液に過マンガン酸カリウム、過マンガン酸ナトリウム等の過マンガン酸塩を溶解したアルカリ性過マンガン酸溶液が挙げられる。
【0166】
酸化剤溶液は、市販品を用いてもよい。酸化剤溶液の市販品としては、例えば、アトテックジャパン社製「コンセントレート・コンパクトCP」、「ドージングソリューション・セキュリガンスP」等のアルカリ性過マンガン酸溶液が挙げられる。
【0167】
酸化剤溶液の温度は、効率的にスミアの除去を行う観点から、好ましくは60℃以上、より好ましくは65℃以上、さらに好ましくは70℃以上であり、好ましくは95℃以下、より好ましくは90℃以下、さらに好ましくは90℃以下である。
【0168】
酸化剤溶液と絶縁層との接触時間は、好ましくは5分、より好ましくは10分、更に好ましくは15分であり、好ましくは40分、より好ましくは35分、更に好ましくは30分である。また、絶縁層と酸化剤溶液との接触中、酸化剤溶液に振動を与えてもよい。
【0169】
本実施形態においては、支持体の剥離後、絶縁層を膨潤液で膨潤処理する工程を行うことなく、絶縁層の酸化剤溶液による処理を実施する。よって、本実施形態に係るプリント配線板の製造方法は、支持体を剥離する工程(IV)と、絶縁層を酸化剤溶液で処理する工程(V)との間に、絶縁層を膨潤液で膨潤処理することを含まない。これにより、回路基板と反対側の絶縁層の表面の粗化の過剰な進行が抑制される。また、プリント配線板を製造するために行う工程数を従来よりも減らすことができる。さらに、絶縁層の表面粗さのバラツキの原因となりうる膨潤工程を省略できるから、通常、絶縁層の表面粗さの均一性を高めることができる。
【0170】
膨潤液は、具体的には、アルカリ溶液及び界面活性剤溶液を表す。ただし、これらのアルカリ溶液及び界面活性剤溶液のうち、酸化剤を含む溶液は、膨潤液には含めない。従来のデスミア処理では、酸化剤を含まないアルカリ溶液を膨潤液として用いて膨潤処理を行った後で、前記の酸化剤溶液と絶縁層とを接触させる酸化剤溶液処理を行うことが多かったが、その従来の方法において特に絶縁層の表面粗さが大きくなる傾向があった。よって、特に好ましい実施形態として、工程(IV)で支持体を剥離した後、酸化剤を含まないアルカリ溶液としての膨潤液で絶縁層を膨潤処理することなく、絶縁層を酸化剤溶液で接触する工程(V)を行うことが好ましい。
【0171】
なお、絶縁層が膨潤液で処理される膨潤処理は、通常は絶縁層を膨潤液中に浸漬することにより行われる。膨潤液の温度は、一般に30℃~90℃であり、膨潤を適度なレベルとする観点から、好ましくは40℃~80℃で行われる。膨潤液への浸漬時間は、一般に1分間~20分間であり、膨潤を適度なレベルとする観点から、好ましくは5分間~15分間で行われる。本明細書において、「絶縁層を膨潤液で膨潤処理する工程」とは、このような絶縁層の膨潤に必要とされる条件の範囲で絶縁層を膨潤液で処理することを表す。よって、本実施形態に係る製造方法は、「絶縁層を膨潤液で膨潤処理する工程を含まず」であるから、このような絶縁層の膨潤に必要とされる条件の範囲外で膨潤液による処理を行うことを含んでいてもよい。具体例を挙げると、本実施形態に係る製造方法は、温度が30℃未満(25℃未満、20℃未満、15℃未満、10度未満を含みうる)の膨潤液で絶縁層を処理することを含んでいてもよい。また、例えば、本実施形態に係る製造方法は、絶縁層が膨潤液に接触する時間(例えば、膨潤液への浸漬時間)が1分未満(50秒未満、40秒未満、30秒未満、15秒未満を含みうる)の範囲で、膨潤液で絶縁層を処理することを含んでいてもよい。膨潤との接触は絶縁層の表面粗さのバラツキの原因となりうるため、本実施形態に係る製造方法では、絶縁層を膨潤液に接触させないことがより好ましい。
【0172】
膨潤液としてのアルカリ溶液の具体例としては、アルカリ金属の水酸化物(例えば、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム)の水溶液などが挙げられる。また、市販の膨潤液としては、例えば、アトテックジャパン社製の「スウェリング・ディップ・セキュリガンスP(Swelling Dip Securiganth P)」、「スウェリング・ディップ・セキュリガンスSBU(Swelling Dip Securiganth SBU)」等が挙げられる。
【0173】
<工程(VI).中和処理>
本実施形態に係るプリント配線板の製造方法は、任意の工程として、絶縁層を中和液で処理する工程(VI)を含んでいてもよい。絶縁層の中和液による処理は、通常、工程(V)の後に行われる。絶縁層と中和液とを接触させることにより、工程(V)で用いた酸化剤溶液に含まれる酸化剤の塩等の残渣物を除却できる。工程(VI)では、例えば、絶縁層を中和液に浸漬することによって前記の処理を行ってもよい。
【0174】
中和液としては、酸性の水溶液を用いることが好ましい。中和液は市販品を用いてもよく、中和液の市販品としては、例えば、アトテックジャパン社製の「リダクションソリューション・セキュリガンスP」等が挙げられる。
【0175】
中和液の温度は、酸化剤の塩等の残渣物を効果的に除却する観点から、好ましくは20℃以上、より好ましくは25℃以上、さらに好ましくは30℃以上であり、好ましくは80℃以下、より好ましくは75℃以下、さらに好ましくは70℃以下である。
【0176】
中和液と絶縁層との接触時間は、酸化剤の塩等の残渣物を十分に除却する観点から、好ましくは1分間以上、より好ましくは2分間以上、さらに好ましくは3分間以上であり、好ましくは30分間以下、より好ましくは25分以下、さらに好ましくは20分以下である。また、絶縁層と中和液との接触中、中和液に振動を与えてもよい。
【0177】
<工程(VII).導体層の形成>
本実施形態に係るプリント配線板の製造方法は、任意の工程として、絶縁層上に導体層を形成する工程(VII)を含んでいてもよい。絶縁層上への導体層の形成は、通常、絶縁層を酸化剤溶液で処理する工程(V)の後に行われる。また、プリント配線板の製造方法が絶縁層を中和液で処理する工程(VI)を含む場合、絶縁層上に導体層を形成する工程(VII)は、通常、その工程(VI)の後に行われる。
【0178】
導体層は、導体材料によって形成できる。好ましい導体材料は、金、白金、パラジウム、銀、銅、アルミニウム、コバルト、クロム、亜鉛、ニッケル、チタン、タングステン、鉄、スズ及びインジウムからなる群から選択される1種以上の金属を含みうる。また、導体材料は、単金属であってもよく、合金であってもよい。合金としては、例えば、上記の群から選択される2種以上の金属の合金(例えば、ニッケル・クロム合金、銅・ニッケル合金及び銅・チタン合金)が挙げられる。中でも、導体層の形成の容易性、コスト、パターン加工の容易性の観点から、クロム、ニッケル、チタン、アルミニウム、亜鉛、金、パラジウム、銀若しくは銅の単金属、又はニッケル・クロム合金、銅・ニッケル合金、銅・チタン合金の合金が好ましく、クロム、ニッケル、チタン、アルミニウム、亜鉛、金、パラジウム、銀若しくは銅の単金属、又はニッケル・クロム合金の合金がより好ましく、銅の単金属が更に好ましい。
【0179】
導体層は、単層構造を有していてもよく、異なる種類の金属若しくは合金からなる単金属層又は合金層を2層以上含む複層構造を有していてもよい。導体層が複層構造を有する場合、絶縁層と接する層は、クロム、亜鉛若しくはチタンの単金属層、又はニッケル・クロム合金の合金層であることが好ましい。
【0180】
導体層は、めっきにより形成することが好ましい。例えば、セミアディティブ法、フルアディティブ法等の従来公知の技術により絶縁層の表面にめっきして、所期のパターンを有する導体層を形成することができる。導体層の「パターン」とは、別に断らない限り、厚み方向から見た導体層の形状を表す。製造の簡便性の観点から、セミアディティブ法により形成することが好ましい。以下、導体層をセミアディティブ法により形成する例を示す。
【0181】
絶縁層の表面に、無電解めっきによりめっきシード層を形成する。次いで、形成されためっきシード層上に、所望のパターンに対応してめっきシード層の一部を露出させるマスクを形成する。露出しためっきシード層上に、電解めっきにより金属層を形成した後、マスクを除去する。その後、不要なめっきシード層をエッチング等の除去方法により除去して、所望のパターンを有する導体層を形成することができる。
【0182】
本実施形態に係る製造方法は、埋め込み性に優れる樹脂組成物層を備えた樹脂シートを用いてプリント配線板を製造できるので、微細な回路を有するプリント配線板の製造が可能である。かかる利点を活用する観点から、工程(VII)で形成される導体層の最小ライン/スペース比は、小さいことが好ましい。絶縁層上に形成される導体層の最小ライン/スペース比の範囲は、内層回路基材の表面の内層導体層の最小ライン/スペース比の範囲と同じでありうる。また、導体層のピッチは、導体層の全体にわたって均一でもよく、不均一でもよい。さらに、導体層の最小ピッチの範囲は、内層回路基材の表面の内層導体層の最小ピッチの範囲と同じであってもよい。
【0183】
導体層の厚さは、プリント配線板のデザインによるが、一般に3μm~35μm、好ましくは5μm~30μmである。
【0184】
上述した工程は、2回以上繰り返し行ってもよい。例えば、工程(I)~(VII)による絶縁層及び導体層の形成を繰り返し行って、複層構造を有する多層プリント配線板を製造してもよい。
【0185】
<製造されるプリント配線板>
上述した製造方法によれば、内層基板及び絶縁層を備えるプリント配線板を製造できる。
【0186】
上述した製造方法によれば、工程(V)における絶縁層の酸化の過剰な進行を抑制できるから、表面粗さの小さい絶縁層を得ることができる。よって、プリント配線板の内層基板と反対側の絶縁層の面の表面粗さを、小さくすることができる。一例において、内層基板と反対側の絶縁層の面の算術平均粗さRaは、好ましくは200nm以下、より好ましくは180nm以下、更に好ましくは160nm以下である。このように算術平均粗さRaが小さい面には、微細な回路としての導体層を円滑に形成することができる。下限は、絶縁層と当該絶縁層上に形成される導体層との密着性を高くする観点から、好ましくは80nm以上、より好ましくは90nm以上、更に好ましくは100nm以上である。算術平均粗さRaは、別に断らない限り、ISO 25178に準拠して測定された値であり、Bruker社の非接触3次元白色光干渉型光学顕微鏡「Contour Elite-X / GT-X」を用いて測定できる。絶縁層の表面の算術平均粗さの具体的な測定方法は、後述する実施例で説明する方法を採用しうる。
【0187】
製造されたプリント配線板は、絶縁層上に導体層を備えていてもよい。通常、絶縁層と当該絶縁層上に形成された導体層との間の密着性を高くすることが可能である。前記の密着性は、絶縁層から導体層を引き剥がすために要するピール強度によって評価できる。一例において、前記のピール強度は、好ましくは0.35kgf/cm以上、より好ましくは0.36kgf/cm以上である。ピール強度は、絶縁層上に形成された導体層を1cm幅で剥がすために要する引張強度によって測定できる。ピール強度の具体的な測定方法は、後述する実施例で説明する方法を採用しうる。
【0188】
製造されたプリント配線板の絶縁層に形成されたホールからは、スミアを効果的に除去できる。よって、通常は、ホール内にはスミアが無いか、スミアがあるとしても当該スミアは小さい。一例において、ホールとしてビアホールを形成した場合、当該ビアホール底部の最大スミア長を小さくでき、好ましくはスミアを無くすことができる。具体例を挙げると、最大スミア長は、5μm以下でありうる。ここで、最大スミア長とは、ビアホールの底部に形成されるスミアのうち、最も長いスミアの長さを表す。最大スミア長は、ビアホールの底部を走査電子顕微鏡(SEM)で観察して測定できる。
【0189】
使用した樹脂シートの樹脂組成物層が優れた埋め込み性を有するので、通常、樹脂組成物層によって内層基板の表面にある内層導体層を十分に埋め込むことができる。よって、内層基板と絶縁層との間に空隙が形成されることを抑制できるので、製造されたプリント配線板の絶縁層内には、ボイド(気泡)の形成が抑制される。具体的には、絶縁層内のボイドの数を少なくでき、好ましくは絶縁層内のボイドを無くすことができる。
【0190】
使用した樹脂シートの支持体が小さい酸素透過率を有するので、通常、得られたプリント配線板においてはハローイング現象を抑制できる。具体的には、ホールの周囲において、絶縁層と内層基板との間の剥離を小さくすることができ、好ましくは絶縁層と内層基板との間の前記剥離を無くすことができる。前記の剥離によって形成される絶縁層と内層基板との間の隙間(剥離部)の寸法は、厚み方向に対して垂直な面内方向の寸法として、好ましくは180μm以下、より好ましくは150μm以下、更に好ましくは120μm以下である。
【0191】
<プリント配線板の用途>
上述したプリント配線板は、例えば、半導体装置の製造に用いることができる。半導体装置は、通常、プリント配線板と、当該プリント配線板に実装された半導体チップとを備える。上述した製造方法で製造されるプリント配線板は、回路配線としての導体層の微細化及び高密度化を実現することができるので、半導体装置を備えた電子機器の小型化、高機能化を実現することができる。
【0192】
半導体装置としては、電気製品(例えば、コンピューター、携帯電話、デジタルカメラ及びテレビ等)及び乗物(例えば、自動二輪車、自動車、電車、船舶及び航空機等)等に供される各種半導体装置が挙げられる。
【0193】
半導体装置は、プリント配線板の導通箇所に、半導体チップを実装することにより製造することができる。「導通箇所」とは、「プリント配線板における電気信号を伝える箇所」であって、その場所は表面であっても、埋め込まれた箇所であってもいずれでも構わない。また、半導体チップとしては、半導体を材料とする電気回路素子を用いうる。
【0194】
半導体チップの実装方法は、半導体チップが有効に機能しさえすれば、特に限定されない。例えば、ワイヤボンディング実装方法、フリップチップ実装方法、バンプなしビルドアップ層(BBUL)による実装方法、異方性導電フィルム(ACF)による実装方法、非導電性フィルム(NCF)による実装方法、等の方法を採用しうる。ここで、「バンプなしビルドアップ層(BBUL)による実装方法」とは、「半導体チップをプリント配線板の凹部に直接埋め込み、半導体チップとプリント配線板上の配線とを接続させる実装方法」のことである。
【実施例0195】
以下、実施例を示して本発明について具体的に説明する。ただし、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。以下の説明において、量を表す「部」及び「%」は、別途明示のない限り、それぞれ「質量部」及び「質量%」を意味する。また、特に指定が無い場合の温度条件及び圧力条件は、室温(25℃)及び大気圧(1atm)であった。
【0196】
<支持体の酸素透過率の測定方法>
以下に説明する実施例及び比較例において、支持体の酸素透過率は、酸素透過率測定装置(MOCON社製「OX-TRAN2/21」)を用いてJIS K7126(等圧法)に準じ、23℃、50%RHの雰囲気下で測定した。
【0197】
<樹脂組成物の質量減少率の測定方法>
以下に説明する実施例及び比較例において、樹脂組成物の質量減少率は、以下の方法で測定した。
樹脂シートを10cm×10cmにカットして、試験片を得た。この試験片の重量を測定して、乾燥前重量W0を得た。その後、試験片を、190℃で15分間加熱する乾燥試験を行った。乾燥試験後に試験片の重量を測定して、乾燥後重量W1を得た。また、前記の試験片に含まれる支持体の質量Wsを、別途用意した10cm×10cmの支持体を用いて測定した。下記式に基づき、乾燥試験による樹脂組成物層の質量減少率を計算した。ここで示す実施例及び比較例で使用した支持体の重量は乾燥試験によっては変化しないので、下記式による質量減少率の測定が可能である。
質量減少率(%)={(W0-W1)÷(W0-Ws)}×100
【0198】
<樹脂組成物の最低溶融粘度の測定方法>
樹脂シートの樹脂組成物層から樹脂組成物1.2gを採取し、18mmのペレット状の測定用サンプルを調製した。得られた測定用サンプルの最低溶融粘度を、動的粘弾性測定装置(ユー・ビー・エム社製「Rheosol-G3000」)にて測定した。具体的には、開始温度60℃から200℃までの温度範囲で昇温して測定用サンプルの動的粘弾性率を測定し、最低溶融粘度(poise)を算出した。測定条件は、昇温速度5℃/分、測定温度間隔2.5℃、振動数1Hz、ひずみ5degとした。
【0199】
<実施例1>
(1)樹脂ワニスの製造:
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱ケミカル社製「828US」、エポキシ当量約180g/eq.)10部、ビフェニル型エポキシ樹脂(三菱ケミカル社製「YX4000H」、エポキシ当量約190g/eq.)20部、及びビスフェノールAF型エポキシ樹脂(三菱ケミカル社製「YL7760」、エポキシ当量約238g/eq.)10部、ホスファゼン樹脂(大塚化学社製「SPH-100」)3部、及び、フェノキシ樹脂(三菱ケミカル社製「YL7553BH30」、固形分30質量%のMEKとシクロヘキサノンの1:1溶液)10部を、MEK60部に撹拌しながら加熱溶解させて、樹脂溶液を得た。
【0200】
樹脂溶液を室温にまで冷却した後、活性エステル系硬化剤(DIC社製「HPC-8000-65T」、活性基当量約223g/eq.、固形分65質量%のトルエン溶液)30部、フェノール系硬化剤(DIC社製「LA-3018-50P」、活性基当量約151g/eq.、固形分50%の2-メトキシプロパノール溶液)16部、ベンゾオキサジン化合物(JFEケミカル社製「ODA-BOZ」、ベンゾオキサジン環当量約218g/eq.)3部、硬化促進剤(4-ジメチルアミノピリジン(DMAP)、固形分5質量%のMEK溶液)4部、及び、アミン系シランカップリング剤(信越化学工業社製「KBM573」)で表面処理された球状シリカ(電気化学工業社製「UFP-30」、平均粒径0.3μm、比表面積30.7m2/g)110部を混合し、高速回転ミキサーで均一に分散した後に、カートリッジフィルター(ROKITECHNO社製「SHP020」)で濾過して、液状樹脂組成物としての樹脂ワニスを作製した。
【0201】
(2)樹脂シートの製造:
支持体として、離型面及び非離型面を有するPETフィルム(リンテック社製「AL5」、厚さ38μm)と、このPETフィルムの非離型面に均一に形成されたガスバリア層としてのシリカ蒸着膜とを備えるガスバリアフィルムを用意した。この支持体の酸素透過率を前記の方法で測定したところ、11cc/m2・day以下であった。該支持体の離型面上に、作製した樹脂ワニスを、乾燥後の樹脂組成物層の厚さが15μmとなるようにダイコーターにて均一に塗布し、80℃で乾燥して、支持体及び樹脂組成物層を備える樹脂シートを得た。塗布された樹脂ワニスの乾燥条件は、得られる樹脂シートの樹脂組成物層に含まれる樹脂組成物の質量減少率が8.5%になるように設定した。樹脂シートの樹脂組成物層から樹脂組成物を採取し、その最低溶融粘度を測定した。
【0202】
(3)粗化基板の製造:
(3-1)内層基板の準備:
両表面に銅層を有するガラス布基材エポキシ樹脂両面銅張積層板(銅層の厚さ18μm、基板の厚さ0.8mm、パナソニック電工社製「R1515A」)を内層基板として用意した。内層基板の両面を、マイクロエッチング剤(メック社製「CZ8100」)に浸漬することにより、銅層の表面の粗化処理を行った。
【0203】
(3-2)樹脂シートの積層:
樹脂シートを内層基板の両面に、樹脂組成物層が内層基板と接合するように積層した。積層は、真空加圧ラミネーター(名機製作所社製「MVLP-500」)を用いて行なった。また、この積層は、130℃にて30秒間真空吸引後、130℃、圧力0.7MPaの条件で、支持体上から、耐熱ゴムを介して60秒間圧着することにより実施した。次いで、大気圧下で、SUS鏡板を用いて、130℃、圧力0.54MPaの条件で90秒間熱プレスを行って、樹脂組成物層を平滑化した。
【0204】
(3-3)樹脂組成物層の熱硬化:
その後、150℃で30分間加熱し、次いで180℃で30分間加熱して、樹脂組成物層を熱硬化させた。樹脂組成物層の熱硬化によって絶縁層が形成された。
【0205】
(3-4)ビアホールの形成:
CO2レーザー加工機(HITACHI社製「LC-K212」)を使用して、パワー:1.35W、ショット数:2、開口径:50μmの条件で、支持体を通して絶縁層にレーザー光を照射して、ビアホールを形成した。
【0206】
(3-5)支持体の剥離:
その後、支持体を剥離して、絶縁層/内層基板/絶縁層の層構成を有する硬化基板Aを得た。
【0207】
(3-6)絶縁層のデスミア処理:
硬化基板Aの絶縁層に、デスミア処理を行った。デスミア処理としては、下記の湿式デスミア処理を実施した。
(湿式デスミア処理)
硬化基板Aを、酸化剤溶液(アトテックジャパン社製「コンセントレート・コンパクトCP」、過マンガン酸カリウム濃度約6%、水酸化ナトリウム濃度約4%の水溶液)に80℃で20分間浸漬した。次いで、硬化基板Aを、中和液(アトテックジャパン社製「リダクションソリューション・セキュリガントP」、硫酸水溶液)に40℃で5分間浸漬した。その後、硬化基板Aを80℃で15分間乾燥した。こうしてデスミア処理を施された硬化基板Aを、以下「粗化基板B」ということがある。
【0208】
(3-7)表面粗さの測定試験:
粗化基板Bの絶縁層表面の算術平均粗さRaを、Bruker社の非接触3次元白色光干渉型光学顕微鏡「Contour Elite-X / GT-X」を用いて測定した。測定は5か所で行い、その平均を計算した。
【0209】
(3-8)最大スミア長の測定:
粗化基板Bのビアホールの底部(ビアボトム)を走査電子顕微鏡(SEM)にて観察した。この観察で得られた画像から、ビアホール底部の壁面からの最大スミア長を測定した。最大スミア長は、ビアホールの底部に形成されるスミアのうち、最も長いスミアの長さを表す。
【0210】
(3-9)ハローイング現象の評価:
粗化基板Bを、ビアホールの底部の中心を通り厚み方向に平行な断面が得られるように削り出した。削り出しは、FIB(集束イオンビーム)を用いて行なった。得られた断面を電子顕微鏡によって観察して、ビアホールの底部の周囲において回路基板と絶縁層とが剥離した剥離部の寸法(厚み方向に対して垂直な面内方向の寸法)を測定した。剥離部の寸法が小さいほど、ハローイング現象を効果的に抑制できていることを表す。
【0211】
(4)導体層の形成:
(4-1)無電解めっき工程:
粗化基板Bの絶縁層の表面に導体層を形成するため、下記(a)~(f)の処理を含む無電解めっき工程(アトテックジャパン社製の薬液を使用した銅めっき工程)を行って、無電解銅めっき層(めっきシード層)を形成した。
【0212】
(a)アルカリクリーニング(絶縁層の表面の洗浄と電荷調整)
粗化基板Bの表面を、Cleaning Cleaner Securiganth 902(商品名)を用いて60℃で5分間洗浄した。
【0213】
(b)ソフトエッチング
粗化基板Bの表面を、硫酸酸性ペルオキソ二硫酸ナトリウム水溶液を用いて、30℃で1分間処理した。
【0214】
(c)プレディップ(Pd付与のための絶縁層表面の電荷の調整)
粗化基板Bの表面を、Pre. Dip Neoganth B(商品名)を用い、室温で1分間処理した。
【0215】
(d)アクティヴェーター付与(絶縁層表面へのPdの付与)
粗化基板Bの表面を、Activator Neoganth 834(商品名)を用い、35℃で5分間処理した。
【0216】
(e)還元(絶縁層に付与されたPdの還元)
粗化基板Bの表面を、Reducer Neoganth WA(商品名)とReducer Acceralator 810 mod.(商品名)との混合液を用い、30℃で5分間処理した。
【0217】
(f)無電解銅めっき工程(絶縁層の表面(Pd表面)にけるCuの析出)
Basic Solution Printganth MSK-DK(商品名)と、Copper solution Printganth MSK(商品名)と、Stabilizer Printganth MSK-DK(商品名)と、Reducer Cu(商品名)との混合液を用いて、粗化基板Bの表面を、35℃で15分間処理して、無電解銅めっき層を形成した。形成された無電解銅めっき層の厚さは1.0μmであった。
【0218】
(4-2)電解めっき工程:
無電解銅めっき層の形成後、粗化基板Bに150℃にて30分間加熱処理を行った。次いで、硫酸銅電解めっきを行い、無電解銅めっき層上に厚さ25μmの電解銅めっき層を形成して、無電解銅めっき層及び電解めっき層を含む導体層を得た。無電解銅めっき層と電解めっき層との合計厚さ(導体層の厚さ)は、約26.0μmであった。その後、190℃にて90分間加熱処理を行い、プリント配線板に相当するめっき密着性測定用のサンプル基板Cを得た。
【0219】
(4-3)めっき密着性の評価試験:
サンプル基板Cから1cm幅で導体層を剥がし、その時の引張強度をピール強度として測定装置(T.S.E社「AutoCom」)で測定した。導体層を剥がす操作は、剥離速度300mm/min.、剥離角度180°の条件で行った。測定は2回行い、その平均を計算した。
【0220】
<実施例2>
工程(3-6)において硬化基板Aの酸化剤溶液への浸漬時間を15分に変更したこと以外は実施例1と同じ方法により、粗化基板B及びサンプル基板Cの製造及び評価を行った。
【0221】
<実施例3>
工程(3-6)において硬化基板Aの酸化剤溶液への浸漬時間を25分に変更したこと以外は実施例1と同じ方法により、粗化基板B及びサンプル基板Cの製造及び評価を行った。
【0222】
<実施例4>
工程(3-3)において、樹脂組成物層の熱硬化を、130℃で30分間加熱し、次いで170℃で30分間加熱することによって行ったこと以外は実施例1と同じ方法により、粗化基板B及びサンプル基板Cの製造及び評価を行った。
【0223】
<実施例5>
工程(2)において、支持体上への樹脂ワニスの塗布後の乾燥条件を、得られる樹脂組成物層に含まれる樹脂組成物の質量減少率が5%になるように変更したこと以外は実施例1と同じ方法により、粗化基板B及びサンプル基板Cの製造及び評価を行った。
【0224】
<実施例6>
工程(2)において、支持体上への樹脂ワニスの塗布後の乾燥条件を、得られる樹脂組成物層に含まれる樹脂組成物の質量減少率が9.5%になるように変更したこと以外は実施例1と同じ方法により、粗化基板B及びサンプル基板Cの製造及び評価を行った。
【0225】
<実施例7>
工程(2)において、支持体を、離型面及び非離型面を有するPENフィルム(東洋紡社製、厚さ25μm)に変更した。この支持体の酸素透過率を前記の方法で測定したところ、14cc/m2・day以下であった。以上の事項以外は実施例1と同じ方法により、粗化基板B及びサンプル基板Cの製造及び評価を行った。
【0226】
<比較例1>
工程(3-6)における湿式デスミア処理において、酸化剤溶液に浸漬する前に硬化基板Aを膨潤液(アトテックジャパン社製「スウェリングディップ・セキュリガントP」、ジエチレングリコールモノブチルエーテル及び水酸化ナトリウムの水溶液)に60℃で5分間浸漬したこと以外は実施例1と同じ方法により、粗化基板B及びサンプル基板Cの製造及び評価を行った。
【0227】
<比較例2>
工程(3-6)における湿式デスミア処理において、酸化剤溶液に浸漬する前に硬化基板Aを膨潤液(アトテックジャパン社製「スウェリングディップ・セキュリガントP」、ジエチレングリコールモノブチルエーテル及び水酸化ナトリウムの水溶液)に60℃で10分間浸漬したこと以外は実施例1と同じ方法により、粗化基板B及びサンプル基板Cの製造及び評価を行った。
【0228】
<比較例3>
工程(2)において、支持体上への樹脂ワニスの塗布後の乾燥条件を、得られる樹脂組成物層に含まれる樹脂組成物の質量減少率が5%になるように変更した。
また、工程(3-6)における湿式デスミア処理において、酸化剤溶液に浸漬する前に硬化基板Aを膨潤液(アトテックジャパン社製「スウェリングディップ・セキュリガントP」、ジエチレングリコールモノブチルエーテル及び水酸化ナトリウムの水溶液)に60℃で5分間浸漬した。
以上の事項以外は、実施例1と同じ方法により、粗化基板B及びサンプル基板Cの製造及び評価を行った。
【0229】
<比較例4>
工程(2)において、支持体を、離型面及び非離型面を有するPENフィルム(東洋紡社製、厚さ25μm)に変更した。この支持体の酸素透過率を前記の方法で測定したところ、14cc/m2・day以下であった。
また、工程(2)において、支持体上への樹脂ワニスの塗布後の乾燥条件を、得られる樹脂組成物層に含まれる樹脂組成物の質量減少率が8.8%になるように変更した。
さらに、工程(3-6)における湿式デスミア処理において、酸化剤溶液に浸漬する前に硬化基板Aを膨潤液(アトテックジャパン社製「スウェリングディップ・セキュリガントP」、ジエチレングリコールモノブチルエーテル及び水酸化ナトリウムの水溶液)に60℃で5分間浸漬した。
以上の事項以外は、実施例1と同じ方法により、粗化基板B及びサンプル基板Cの製造及び評価を行った。
【0230】
<比較例5>
工程(2)において、支持体を、離型面及び非離型面を有するPENフィルム(東洋紡社製、厚さ25μm)に変更した。この支持体の酸素透過率を前記の方法で測定したところ、14cc/m2・day以下であった。
また、工程(2)において、支持体上への樹脂ワニスの塗布後の乾燥条件を、得られる樹脂組成物層に含まれる樹脂組成物の質量減少率が8.8%になるように変更した。
さらに、工程(3-6)における湿式デスミア処理において、酸化剤溶液に浸漬する前に硬化基板Aを膨潤液(アトテックジャパン社製「スウェリングディップ・セキュリガントP」、ジエチレングリコールモノブチルエーテル及び水酸化ナトリウムの水溶液)に60℃で10分間浸漬した。
以上の事項以外は、実施例1と同じ方法により、粗化基板B及びサンプル基板Cの製造及び評価を行った。
【0231】
<比較例6>
工程(2)において、支持体を、離型面及び非離型面を有するPETフィルム(リンテック社製「AL5」、厚さ38μm)に変更した。この支持体の酸素透過率を前記の方法で測定したところ、38cc/m2・day以下であった。
また、工程(2)において、支持体上への樹脂ワニスの塗布後の乾燥条件を、得られる樹脂組成物層に含まれる樹脂組成物の質量減少率が8.8%になるように変更した。
さらに、工程(3-6)において硬化基板Aの酸化剤溶液への浸漬時間を15分に変更した。
以上の事項以外は、実施例1と同じ方法により、粗化基板B及びサンプル基板Cの製造及び評価を行った。
【0232】
<結果>
前記の実施例及び比較例の結果を、下記の表に示す。以下の表において、各成分の量は、不揮発成分の質量を表す。また、以下の表において、「最低溶融粘度」は樹脂シートの樹脂組成物層から採取した樹脂組成物の最低溶融粘度を表し、「Ra」は、表面粗さの測定試験で測定された粗化基板Bの絶縁層表面の算術平均粗さの平均を表し、「Peel」は、めっき密着性の評価試験で測定されたサンプル基板Cにおいて測定された導体層を剥がすために要するピール強度の平均を表す。さらに、判定の欄において、算術平均粗さRaが200nm未満で且つピール強度が0.35kgf/cmより大きいものを「〇」と評価し、それ以外は「×」と評価した。
【0233】
【0234】