(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024124858
(43)【公開日】2024-09-13
(54)【発明の名称】光合成微生物回収装置及び光合成微生物回収方法
(51)【国際特許分類】
C12M 1/26 20060101AFI20240906BHJP
C12N 1/02 20060101ALI20240906BHJP
C12N 1/12 20060101ALI20240906BHJP
C12M 1/00 20060101ALN20240906BHJP
【FI】
C12M1/26
C12N1/02
C12N1/12 C
C12M1/00 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023032809
(22)【出願日】2023-03-03
(71)【出願人】
【識別番号】000191009
【氏名又は名称】新東工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100161425
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 鉄平
(74)【代理人】
【識別番号】100211052
【弁理士】
【氏名又は名称】奥村 大輔
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 淳志
【テーマコード(参考)】
4B029
4B065
【Fターム(参考)】
4B029AA09
4B029AA27
4B029BB04
4B029CC01
4B029GA08
4B029GB05
4B029GB10
4B029HA09
4B029HA10
4B065AA83X
4B065AA84X
4B065AA85X
4B065AC09
4B065BA30
4B065CA46
(57)【要約】
【課題】光合成微生物を効率的に回収する。
【解決手段】
一側面に係る光合成微生物回収装置は、供給口及び排出口を有し、その内部に分離室を形成する分離槽と、光合成微生物を含む液体を供給口を介して分離室に供給する供給管と、を備え、分離槽は、分離室内で浮上した光合成微生物を分離室の上部に案内するように傾斜する上部傾斜面を有し、排出口は、上部傾斜面に沿って浮上し、分離室の上部に集められた光合成微生物を分離槽から排出する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
供給口及び排出口を有し、その内部に分離室を形成する分離槽と、
光合成微生物を含む液体を前記供給口を介して前記分離室に供給する供給管と、
を備え、
前記分離槽は、前記分離室内で浮上した前記光合成微生物を前記分離室の上部に案内するように傾斜する上部傾斜面を有し、
前記排出口は、前記上部傾斜面に沿って浮上し、前記分離室の上部に集められた前記光合成微生物を前記分離槽から排出する、光合成微生物回収装置。
【請求項2】
前記分離室の上部に集められた前記光合成微生物と前記液体との界面の位置を検出する界面計を更に備える、請求項1に記載の光合成微生物回収装置。
【請求項3】
前記分離室内で前記液体に微細気泡を供給する散気装置を更に備える、請求項1又は2に記載の光合成微生物回収装置。
【請求項4】
前記分離槽は、前記供給口と前記分離室に連通する連通口との間で延在する導入路を更に形成し、
前記排出口は、前記連通口よりも上方に配置されている、請求項1又は2に記載の光合成微生物回収装置。
【請求項5】
前記供給口は、前記排出口よりも上方に配置されている、請求項1又は2に記載の光合成微生物回収装置。
【請求項6】
前記供給管から前記供給口に供給される前記液体の流量を計測する流量計を更に備える、請求項1又は2に記載の光合成微生物回収装置。
【請求項7】
供給口及び排出口を有し、その内部に分離室を形成する分離槽を有する光合成微生物回収装置を用いて光合成微生物を回収する光合成微生物回収方法であって、
前記供給口から分離室内に前記光合成微生物を含む液体を供給する工程と、
前記光合成微生物を案内するように傾斜する上部傾斜面に沿って前記光合成微生物を前記分離室の上部に浮上させる工程と、
前記供給口から前記分離室内に前記液体を追加供給して、前記上部傾斜面に沿って浮上し、前記分離室の上部に集められた前記光合成微生物を前記排出口から排出する工程と、
を含む、光合成微生物回収方法。
【請求項8】
前記分離室の上部に集められた前記光合成微生物と前記液体との界面の位置を検出する工程と、
前記界面の位置に基づいて、前記分離槽に追加供給される前記液体の量を決定する工程と、
を更に含む、請求項7に記載の光合成微生物回収方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光合成微生物回収装置及び光合成微生物回収方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、光合成によって増殖する光合成微生物が注目されている。光合成微生物の一種である藻類は、栄養分を含む液体中で細胞分裂を繰り返すことで増殖する微細な植物プランクトンである。藻類は、成長が早く、培養しやすいため、様々な産業で利用可能な有機性資源として有効活用が期待されている。例えば、藻類は、食品、薬品、吸着材又は油の原料として利用される。
【0003】
この種の光合成微生物を培養液から回収するための技術として、特許文献1に記載の装置が知られている。特許文献1には、藻類を破砕する超音波破砕装置と、破砕された藻類を含む藻類液を曝気する円筒形の曝気分離槽と、曝気により浮上した藻類を付着するトラップと、藻類が除去された培養液を曝気分離槽から排出する流出口とを備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の装置では、一定量の藻類を回収する度にトラップを交換する必要があるため、大量の藻類を回収する際には頻繁なトラップの交換が要求される。トラップの交換回数の増加は回収コストの増加に繋がるため、この装置で大量の藻類を回収することは困難である。大量の藻類を回収するために、水面に浮上した藻類をレーキ又はオイルフェンスで引き寄せてから吸引して回収することも考えられるが、この手法では人力での作業が要求され、回収の手間が大きい。
【0006】
そこで本開示は、光合成微生物を効率的に回収することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一側面に係る光合成微生物回収装置は、供給口及び排出口を有し、その内部に分離室を形成する分離槽と、光合成微生物を含む液体を供給口を介して分離室に供給する供給管と、を備え、分離槽は、分離室内で浮上した光合成微生物を分離室の上部に案内するように傾斜する上部傾斜面を有し、排出口は、上部傾斜面に沿って浮上し、分離室の上部に集められた光合成微生物を分離槽から排出する。
【0008】
一側面に係る光合成微生物回収装置では、分離室で浮上した光合成微生物は上部傾斜面に沿って移動し、分離室の上部に集められる。分離室の上部に集められた光合成微生物は、排出口から排出される。すなわち、この光合成微生物回収装置では、光合成微生物の浮力を利用して液体中の光合成微生物を分離室の上部に集めてから回収することができるので、光合成微生物を効率的に回収することができる。
【0009】
一側面では、供給口及び排出口を有し、その内部に分離室を形成する分離槽を有する光合成微生物回収装置を用いて光合成微生物を回収する光合成微生物回収方法が提供される。この光合成微生物回収方法は、供給口から分離室内に光合成微生物を含む液体を供給する工程と、光合成微生物を案内するように傾斜する上部傾斜面に沿って光合成微生物を分離室の上部に浮上させる工程と、供給口から分離室内に液体を追加供給して、上部傾斜面に沿って浮上し、分離室の上部に集められた光合成微生物を排出口から排出する工程と、を含む。
【0010】
本態様に係る光合成微生物回収方法では、光合成微生物は上部傾斜面に沿って浮上し、分離室の上部に集められる。分離室に液体が追加供給されることにより、分離室の上部に集められた光合成微生物は排出口から排出される。本態様に係る光合成微生物回収方法では、光合成微生物の浮力を利用して液体中の光合成微生物を分離室の上部に集めてから回収することができるので、光合成微生物を効率的に回収することができる。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、光合成微生物を効率的に回収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】一実施形態に係る回収装置を概略的に示す図である。
【
図2】一実施形態に係る光合成微生物回収方法を示すフローチャートである。
【
図3】光合成微生物回収方法の一工程を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[本開示の実施形態の概要]
最初に、本開示の実施形態の概要を説明する。
【0014】
(条項1) 本開示の一側面に係る光合成微生物回収装置は、供給口及び排出口を有し、その内部に分離室を形成する分離槽と、光合成微生物を含む液体を供給口を介して分離室に供給する供給管と、を備え、分離槽は、分離室内で浮上した光合成微生物を分離室の上部に案内するように傾斜する上部傾斜面を有し、排出口は、上部傾斜面に沿って浮上し、分離室の上部に集められた光合成微生物を分離槽から排出する。この光合成微生物回収装置では、分離室で浮上した光合成微生物は上部傾斜面に沿って移動し、分離室の上部に集められる。分離室の上部に集められた光合成微生物は、排出口から排出される。すなわち、この光合成微生物回収装置では、光合成微生物の浮力を利用して液体中の光合成微生物を分離室の上部に集めてから回収することができるので、光合成微生物を効率的に回収することができる。
【0015】
(条項2) 条項1に記載の光合成微生物回収装置は、分離室の上部に集められた光合成微生物と液体との界面の位置を検出する界面計を更に備えてもよい。分離室の上部に集められた光合成微生物と液体との界面の位置を検出することにより、光合成微生物を排出口から排出するために分離槽内に追加供給すべき液体の量を決定することができる。
【0016】
(条項3) 条項1又は2に記載の光合成微生物回収装置は、分離室内で液体に微細気泡を供給する散気装置を更に備えてもよい。散気装置から分離室の液体に微細気泡を供給することにより、分離槽内での光合成微生物の浮上を促進することができる。
【0017】
(条項4) 条項1~3の何れか一項に記載の光合成微生物回収装置において、分離槽は、供給口と分離室に連通する連通口との間で延在する導入路を更に形成し、排出口は、連通口よりも上方に配置されていてもよい。
【0018】
(条項5) 条項1~4の何れか一項に記載の光合成微生物回収装置において、供給口は、排出口よりも上方に配置されていてもよい。供給口が排出口よりも上方に配置された場合には、分離槽内に液体を追加で供給したときに、水頭圧差を利用して上部領域に集められた光合成微生物を排出口から押し出すことができる。したがって、ポンプ等の外部装置を使用することなく、光合成微生物を回収することができる。
【0019】
(条項6) 条項1~5の何れか一項に記載の光合成微生物回収装置は、供給管から供給口に供給される液体の流量を計測する流量計を更に備えていてもよい。流量計を用いることにより、分離槽への液体の供給量を取得することができる。
【0020】
(条項7) 一側面に係る光合成微生物回収方法では、供給口及び排出口を有し、その内部に分離室を形成する分離槽を有する光合成微生物回収装置を用いて光合成微生物を回収される。この光合成微生物回収方法は、供給口から分離室内に光合成微生物を含む液体を供給する工程と、光合成微生物を案内するように傾斜する上部傾斜面に沿って光合成微生物を分離室の上部に浮上させる工程と、供給口から分離室内に液体を追加供給して、上部傾斜面に沿って浮上し、分離室の上部に集められた光合成微生物を排出口から排出する工程と、を含む。この光合成微生物回収方法では、光合成微生物は上部傾斜面に沿って浮上し、分離室の上部に集められる。分離室に混合液体が追加供給されることにより、分離室の上部に集められた光合成微生物は排出口から排出される。本態様に係る光合成微生物回収方法では、光合成微生物の浮力を利用して液体中の光合成微生物を分離室の上部に集めてから回収することができるので、光合成微生物を効率的に回収することができる。
【0021】
(条項8) 条項7に記載の光合成微生物回収方法は、分離室の上部に集められた光合成微生物と液体との界面の位置を検出する工程と、界面の位置に基づいて、分離槽に追加供給される液体の量を決定する工程と、を更に含んでもよい。この光合成微生物回収方法では、光合成微生物を排出口から排出するために追加供給されるべき液体の量を決定することができる。
【0022】
[本開示の実施形態の例示]
以下、図面を参照しながら本開示の実施形態が詳細に説明される。図面の説明において同一要素には同一符号が付され、重複する説明は省略される。図面は、理解の容易化のため、一部を簡略化又は誇張して描いている場合があり、寸法比率及び角度等は図面に記載のものに限定されない。以下の説明において「上」「下」の語は、重力方向を基準としている。
【0023】
図1は、一実施形態に係る回収装置10を概略的に示す図である。回収装置10は、培養液3から光合成微生物2を分離して回収する光合成微生物回収装置である。回収装置10で回収される光合成微生物2は、例えば藻類である。藻類は、培養液3中で光合成を行って細胞分裂を繰り返すことで増殖する微細な植物プランクトンである。
【0024】
回収装置10によって回収される藻類としては、緑藻(クロレラ、クラミドモナス、ヘマトコッカス、ボトリオコッカス、ドナリエラ)、トレボキシア藻(パラクロレラ)、プラシノ藻、シアノバクテリア(スピルリナ、アルスロステラ、シネココッカス、シネコキスティス、ノストック)、ハプト藻(プレウロクリシス)、珪藻(キートケロス)、真眼点藻鋼(ナンノクロロプシス)、及び、ユーグレナが例示される。例えば、スピルリナは、500μm~600μmの長さを有する微細藻類であり、豊富な栄養素を含む食品の原料となる。
【0025】
図1に示すように、光合成微生物2は、培養液3を収容する培養槽1内で培養される。培養液3は、光合成微生物2を培養するための栄養分を含む液体である。培養液3には、例えば窒素、リン、カリウム、その他のミネラル成分が含まれる。培養液3は、培地とも呼ばれる。
【0026】
培養槽1の上部は、太陽光を取り込むために開放されている。光合成微生物2は、培養液3中で光合成を行って細胞分裂を繰り返し、増殖する。培養液3中で光合成微生物2が増殖することにより、光合成微生物2及び培養液3を含む混合液4が培養槽1内に生成される。培養槽1内には、混合液4を汲み上げるポンプP1が設けられている。
【0027】
図1に示すように、回収装置10は、分離槽11及び供給管12を備えている。分離槽11は、混合液4に含まれる光合成微生物2を培養液3から分離する。分離槽11は、導入管21及び本体部22を含んでいる。導入管21は、上下方向に延在する導入路31を画成する。導入管21の上端には、供給口33が形成されている。導入管21の下端には、連通口34が形成されている。導入路31は、供給口33と連通口34との間で延在し、培養槽1からの混合液4を後述する分離室32に導入する。
【0028】
本体部22は、連通口34を介して導入路31に連通する分離室32を画成する。分離室32は、培養液3から光合成微生物2を分離するための空間である。分離室32の容積は、導入路31の容積よりも大きい。本体部22には、排出口35が形成されている。一実施形態では、排出口35は、連通口34よりも上方に配置され、供給口33よりも下方に配置されている。
【0029】
供給管12は、培養槽1内の混合液4を分離槽11に供給する。供給管12の一端は、培養槽1内に配置されたポンプP1に接続されている。供給管12の他端は、分離槽11の供給口33に接続されている。供給管12には、流量計F1及びバルブV1が設けられている。流量計F1は、供給管12を流れる混合液4の流量を計測する。バルブV1が開放された状態でポンプP1が駆動されると、培養槽1内の混合液4が供給管12を通って供給口33から分離槽11内に供給される。
【0030】
一実施形態では、回収装置10は、排出管13、オーバーフロー管14、第1回収管15及び第2回収管16を更に備えている。排出管13の一端は、排出口35に接続されている。排出管13の他端は、後述する濾過装置25に接続されている。排出管13には、バルブV2及びバルブV3が設けられている。バルブV2及びバルブV3が開放されると、分離室32で分離された光合成微生物2が排出口35から排出される。
【0031】
オーバーフロー管14の一端は、導入路31に連通するように導入管21に接続されている。オーバーフロー管14の一端は、実質的に排出口35と同じ高さ位置で導入路31に接続されている。オーバーフロー管14の他端は、第2回収管16に接続されている。オーバーフロー管14には、流量計F2及びバルブV4が設けられている。流量計F2は、オーバーフロー管14を流れる混合液4の流量を計測する。
【0032】
第1回収管15の一端は、分離室32に連通するように後述する分離槽11の底部41に接続されている。第1回収管15の他端は、第2回収管16に接続されている。第1回収管15には、ポンプP2及びバルブV5が設けられている。バルブV5が開放された状態でポンプP2が駆動されると、分離槽11内の混合液4が第1回収管15及び第2回収管16を通って培養槽1に戻される。
【0033】
第2回収管16の一端は、バルブV2とバルブV3との間で排出管13に接続されている。第2回収管16の他端は、培養槽1内に配置されている。第2回収管16には、バルブV6が設けられている。上記のように、第2回収管16には、第2回収管16の他端とバルブV3との間の位置においてオーバーフロー管14及び第1回収管15が接続されている。バルブV2,V6が開放され、バルブV3が閉鎖されると、分離槽11の排出口35から排出された混合液4が第2回収管16を通って培養槽1に戻される。第2回収管16は、供給管12から分離槽11内に混合液4を供給するときに、分離室32の空気を抜くための通気路としても機能する。
【0034】
分離槽11についてより詳細に説明する。分離槽11の本体部22は、下壁部36、上壁部37及び側壁部38を有する。下壁部36、上壁部37及び側壁部38は、分離室32を画成する。下壁部36は、底部41、第1下部傾斜面42及び第2下部傾斜面43を含む。第1下部傾斜面42は、導入管21の下端と底部41とを接続しており、底部41に近づくにつれて下方に傾斜している。第2下部傾斜面43は、底部41と側壁部38の下端とを接続しており、底部41に近づくにつれて下方に傾斜している。すなわち、底部41は、分離槽11の最底部を構成している。
【0035】
上壁部37は、上部傾斜面44及び平坦面45を含む。上部傾斜面44は、導入管21の下端と平坦面45とを接続している。上部傾斜面44は、平坦面45に近づくにつれて上方に傾斜している。水平面に対する上部傾斜面44の傾斜角θは、例えば30°以上60°以下である。平坦面45は、上部傾斜面44の上端から水平に延在し、側壁部38の上端に接続されている。平坦面45は、供給口33よりも下方に配置されている。なお、上壁部37は、平坦面45を含まず、上部傾斜面44の上端が側壁部38の上端に接続されていてもよい。上部傾斜面44の上端及び平坦面45の直下には、上部領域40が形成される。上部領域40は、分離室32の上部に位置する分離室32の一部である。上部領域40の容積は、分離室32の容積よりも十分に小さい。
【0036】
分離室32では、光合成微生物2の浮力によって混合液4中の光合成微生物2が浮上する。後述するように、分離室32内で浮上した光合成微生物2は、上部傾斜面44に沿って上方に移動し、分離室32の上部領域40に集められる。すなわち、上部傾斜面44は、分離室32で浮上した光合成微生物2を上部領域40に案内する。上部傾斜面44の傾斜角θを30°以上60°以下にすることにより、浮上する光合成微生物2を確実に上部傾斜面44に沿って上部領域40へ案内することができる。
【0037】
側壁部38は、上下方向に延在し、第2下部傾斜面43と平坦面45とを接続している。側壁部38の上部には、排出口35が形成されている。排出口35は、上部領域40に集められた光合成微生物2を排出するために、上部領域40に向けて開口している。なお、上述したように、供給口33は、排出口35よりも上方に配置されている。
【0038】
一実施形態では、回収装置10は、散気装置23及び界面計24、濾過装置25、受槽26及び制御装置27を更に備えている。散気装置23は、分離室32に配置されている。散気装置23は、微細気泡を発生するマイクロバブル発生器又は加圧気泡発生器である。散気装置23は、例えば不図示のブロアから空気を受け、分離室32の混合液4に10μm~500μm程度の径を有する微細気泡を供給する。散気装置23から供給される微細気泡は、分離室32内の光合成微生物2に浮力を付与して光合成微生物2の浮上を促進する。
【0039】
界面計24は、光学式又は超音波式の界面計である。界面計24は、分離室32に配置されており、分離室32内で浮上して上部領域40に集められた光合成微生物2と培養液3との界面の位置を検出する。
【0040】
濾過装置25は、排出管13から排出された光合成微生物2を含む培養液3を濾過して、光合成微生物2を回収する。例えば、濾過装置25は、150メッシュ以上300メッシュ以下のスクリーン(濾過金網)を有する。光合成微生物2を含む培養液3がスクリーンを通過するときに、光合成微生物2がスクリーンに捕捉され、回収される。受槽26は、濾過装置25で回収された光合成微生物2を貯留する。
【0041】
制御装置27は、プロセッサ、記憶部、入力装置、表示装置等を備えるコンピュータであり、回収装置10の全体の動作を制御する機能を有する。制御装置27の記憶部には、制御装置27で実行される各種処理をプロセッサにより制御するための制御プログラムが格納されている。制御装置27は、流量計F1,F2、ポンプP1,P2、バルブV1~V6、散気装置23及び界面計24と通信可能に接続されている。制御装置27は、流量計F1,F2の計測値を受信すると共に、ポンプP1,P2及びバルブV1~V6に制御信号を送出して、ポンプP1,P2の動作、及び、バルブV1~V6の開閉状態を制御する。また、制御装置27は、散気装置23及び界面計24に制御信号を送出して、散気装置23及び界面計24の動作を制御する。
【0042】
次に、
図2~
図7を参照して、一実施形態に係る光合成微生物回収方法について説明する。
図2は、一実施形態に係る光合成微生物回収方法を示すフローチャートである。この光合成微生物回収方法は、回収装置10の制御装置27がポンプP1,P2、バルブV1~V6、散気装置23及び界面計24を制御することにより、実行される。後述する
図3~7において、バルブを示す図形のうち黒塗りされている図形は閉じられているバルブを示しており、バルブを示す図形のうち白抜きされている図形は開かれているバルブを示している。
【0043】
一実施形態に係る光合成微生物回収方法では、
図3に示すように、まずバルブV1,V2,V4,V6が開放され、バルブV3,V5が閉鎖される。そして、ポンプP1が作動され、培養槽1内の光合成微生物2及び培養液3を含む混合液4が分離槽11内に供給される(ステップST1)。混合液4の供給は、オーバーフロー管14から混合液4が排出されるまで継続される。
【0044】
分離室32が混合液4で満たされ、オーバーフロー管14から混合液4が排出されると、バルブV1が閉鎖され、分離槽11への混合液4の供給が停止される(ステップST2)。制御装置27は、例えば流量計F2によってオーバーフロー管14を混合液4が流れたことを検知したときに、バルブV1を閉鎖して混合液4の供給を停止する。このとき、オーバーフロー管14は排出口35と実質的に同じ高さ位置で導入路31に接続されているので、導入路31での混合液4の液面高さ、及び、分離室32での混合液4の液面高さは、排出口35の高さと同じになる。
【0045】
次に、
図4に示すように、バルブV3が開放され、バルブV2,V4,V6が閉鎖される。そして、分離室32で混合液4中の光合成微生物2を浮上させる(ステップST3)。光合成微生物2が十分な浮力を有する場合には、分離槽11内で混合液4を所定時間だけ放置することで光合成微生物2が浮上する。一実施形態では、
図4に示すように、散気装置23を作動させて、分離室32の混合液4に微細気泡52が供給されてもよい。微細気泡52は、混合液4中の光合成微生物2に付着し、光合成微生物2に浮力を与える。その結果、光合成微生物2の浮上が促進される。分離室32で浮上した光合成微生物2は、上部傾斜面44に沿って上方に移動し、上部領域40に案内される。すなわち、分離室32内で光合成微生物2が上部領域40に高密度に集められる。上部傾斜面44に沿って案内された光合成微生物2は、上部領域40で集積され、集積層50を形成する。
【0046】
次に、
図5に示すように、界面計24によって集積層50の界面(光合成微生物2と培養液3との界面)の位置が検出される(ステップST4)。集積層50の界面の位置は、例えば光の界面反射を検出することにより計測される。集積層50の厚みが大きくなると、集積層50の界面の位置は低くなる。したがって、集積層50の界面の位置に基づいて集積層50の厚みを求めることが可能である。
【0047】
次に、混合液4の追加供給量が決定される(ステップST5)。追加供給量は、上部領域40に集められた光合成微生物2を排出口35から排出するために分離槽11内に供給される混合液4の量である。追加供給量は、集積層50の界面の位置に基づいて決定される。例えば、集積層50の界面の位置が低くなるほど、追加供給量は増加する。
【0048】
次に、
図6に示すように、バルブV1が開放される。そして、ポンプP1が作動され、ステップST5で決定された追加供給量だけ分離槽11内に混合液4が供給される(ステップST6)。このとき、混合液4への混合液4の供給量は流量計F1を用いて検出される。バルブV2,V4が閉鎖されているので、分離槽11内に混合液4が追加供給されると、導入路31での混合液4の液面高さは、分離室32での混合液4の液面高さよりも高くなる。
【0049】
次に、
図7に示すように、排出管13のバルブV2が開放され、上部領域40に集められた光合成微生物2(集積層50)が分離槽11から排出される(ステップST7)。すなわち、バルブV2が開放されると、水頭圧差により導入路31の液面高さが排出口35の高さまで低下し、追加供給量の分だけ分離室32の培養液3が排出口35に向けて押し出される。その結果、上部傾斜面44に沿って浮上し、上部領域40に集められた光合成微生物2が培養液3と共に排出口35から排出される。排出口35から排出された光合成微生物2及び培養液3は、排出管13を通って濾過装置25へ送られる。
【0050】
次に、排出された光合成微生物2を含む培養液3が濾過装置25で濾過される(ステップST8)。培養液3が濾過装置25のスクリーンを通過するときに、光合成微生物2がスクリーンに捕捉され、回収される。回収された光合成微生物2は、受槽26に集められる。
【0051】
次に、
図8に示すように、バルブV5が開放される。そして、ポンプP2が作動され、光合成微生物2を回収した後に分離槽11内に残る培養液3が第1回収管15を通って培養槽1に回収される(ステップST9)。ここで、第1回収管15は底部41に接続されているので、分離槽11内の培養液3を残さずに培養槽1に戻すことができる。分離槽11内の培養液3が全て回収されると一実施形態に係る光合成微生物回収方法を終了する。
【0052】
以上説明したように、一実施形態に係る回収装置10では、分離室32で浮上した光合成微生物2が上部傾斜面44に沿って移動し、上部領域40に案内される。そして、供給口33から分離槽11内に混合液4が追加供給されることにより、上部領域40に集められた光合成微生物2が排出口35に向けて押し出され、排出口35から排出される。この回収装置10では、光合成微生物2の浮力を利用して分離槽11内の光合成微生物2を上部領域40に集めてから、まとめて回収するので、光合成微生物2を効率的に回収することができる。また、この回収装置10では、供給口33が排出口35よりも上方に配置されているので、水頭圧差を利用して上部領域40に集められた光合成微生物2を排出口35に押し出すことができる。したがって、ポンプ等の外部装置を使用せずに光合成微生物2を回収することができる。
【0053】
以上、種々の実施形態に係る回収装置10及び光合成微生物回収方法について説明してきたが、本発明は上述した実施形態に限定されることなく発明の要旨を変更しない範囲で種々の変形態様を構成可能である。すなわち、上述した実施形態は例示説明を目的とするものであり、本発明の範囲を制限するものではないことに留意すべきである。
【0054】
例えば、上記実施形態では、供給口33は、排出口35よりも上方に配置されているが、供給口33は、排出口35よりも下方に配置されていてもよい。この場合には、ポンプを用いて供給口33から混合液4を分離槽11内に圧入することで、上部領域40に集められた光合成微生物2を排出口35に押し出してもよい。
【0055】
また、上記実施形態から培養液3中で培養された光合成微生物2を回収しているが、回収装置10は、産業廃水に含まれる浮遊物質(SS:Suspended Solids)を除去するための回収装置であってもよい。なお、上述した種々の実施形態は、矛盾のない範囲で組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0056】
2…光合成微生物、3…培養液、10…回収装置、11…分離槽、12…供給管、13…排出管、23…散気装置、24…界面計、25…濾過装置、31…導入路、32…分離室、33…供給口、34…連通口、35…排出口、40…上部領域、44…上部傾斜面、F1,F2…流量計。