(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024124859
(43)【公開日】2024-09-13
(54)【発明の名称】揚げカス処理装置
(51)【国際特許分類】
B30B 9/06 20060101AFI20240906BHJP
B09B 3/32 20220101ALI20240906BHJP
A47J 37/12 20060101ALI20240906BHJP
B09B 101/70 20220101ALN20240906BHJP
【FI】
B30B9/06 C ZAB
B09B3/32
A47J37/12 391
B09B101:70
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023032810
(22)【出願日】2023-03-03
(71)【出願人】
【識別番号】598078746
【氏名又は名称】武州工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099357
【弁理士】
【氏名又は名称】日高 一樹
(74)【代理人】
【識別番号】100105418
【弁理士】
【氏名又は名称】平野 聖
(72)【発明者】
【氏名】市川 真也
【テーマコード(参考)】
4B059
4D004
【Fターム(参考)】
4B059AA01
4B059AD14
4B059BF10
4D004AA04
4D004AA50
4D004AB02
4D004CA03
4D004CA13
4D004CA14
4D004CB15
4D004CB43
4D004CB45
(57)【要約】
【課題】詰まりが生じることを抑制できる揚げカス処理装置を提供する。
【解決手段】筒状をなし内部空間Sに揚げカスを収容可能なケース2と、ケース2の一方開口2A側の近傍で内部空間Sの断面積を絞る絞り部材31と、ケース2内に収容された揚げカスをケース2の他方開口2B側から一方開口2A側に押し出すスライダ4と、を備える揚げカス処理装置1であって、絞り部材31は、絞り側端面315aと、絞り側端面315aよりも他方開口2B側に配置され他方開口2B側に凸をなす湾曲面316と、を有している。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状をなし内部空間に揚げカスを収容可能なケースと、
前記ケースの一方開口側の近傍で前記内部空間の断面積を絞る絞り部材と、
前記ケース内に収容された前記揚げカスを前記ケースの他方開口側から前記一方開口側に押し出すスライダと、を備える揚げカス処理装置であって、
前記絞り部材は、絞り側端面と、前記絞り側端面よりも前記他方開口側に配置され該他方開口側に凸をなす湾曲面と、を有していることを特徴とする揚げカス処理装置。
【請求項2】
前記絞り部材は、前記絞り側端面から前記湾曲面に向けて斜めに傾斜する傾斜面を有していることを特徴とする請求項1に記載の揚げカス処理装置。
【請求項3】
前記湾曲面の下端縁は、前記絞り部材の長手方向の半分の位置よりも前記他方開口側に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の揚げカス処理装置。
【請求項4】
前記絞り部材は、前記ケースの上面部に設けられた開口から前記内部空間内に突出するように配置されており、
前記湾曲面の上端縁は、前記絞り部材の高さ方向の半分の位置よりも上方に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の揚げカス処理装置。
【請求項5】
前記ケースの上面部の上方に上下方向に位置調整可能に配置される可動部材と、
前記可動部材に対して前記絞り部材を上下方向に接離可能に吊支する吊支部材と、
前記可動部材と前記絞り部材との間に配置され互いを離間方向に付勢する付勢部材と、を備え、
前記絞り部材は、前記ケースの上面部に設けられた開口から前記内部空間内に突出するように配置されていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の揚げカス処理装置。
【請求項6】
前記内部空間の高さが8mm~12mmに形成され、前記湾曲面の曲率半径が4mm~6mmに形成されていることを特徴とする請求項1に記載の揚げカス処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、揚げカスを圧縮して減容させるとともに、含有する油を搾る揚げカス処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
天ぷらやフライなどの揚げものを提供する飲食店や、総菜売り場などでは天ぷらやフライの揚げカスが大量に発生する。揚げカスをそのまま廃棄する場合、収容スペースの確保が困難である、廃棄コストの低廉化が難しい、自然発火火災の危険がある、等々の問題が指摘されていた。そこで、揚げカスを圧縮して減容させると共に、揚げカスに含有されている油を搾って有効に再利用する目的で揚げカス処理装置が用いられている。
【0003】
特許文献1に示される揚げカス処理装置は、ホッパーから供給された揚げカスを収容可能な圧縮室と、圧縮室の挿入口から挿入され出口に向けて圧縮室内の揚げカスを押し出すスライダと、出口近傍において圧縮室内の断面積を絞る搾油ダイスと、を備えている。搾油ダイスにおけるスライダ側の面は、圧縮室の上部内面から出口側に向けて斜め下方に延びる傾斜面となっている。また、搾油ダイスの底面と圧縮室の底面および側面との間は、最も圧縮室の断面積が絞られる絞り部となっている。
【0004】
スライダにより圧縮室内の揚げカスが出口に向けて押し出されると、揚げカスは搾油ダイスの傾斜面により絞り部に誘導され、絞り部を通過するときに圧縮されて含有されている油が搾油されるとともに減容される。搾油および減容された揚げカスは、圧縮室の出口から外部に排出されるとともに、搾油された油は、圧縮室の底板部に形成された貫通孔から外部に回収される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007-229731号公報(第10頁、第1図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1のような揚げカス処理装置にあっては、搾油ダイスの傾斜面により、圧縮前の揚げカスを絞り部に誘導できるようになっているが、該揚げカスが絞り部に到達する前に搾油ダイスの傾斜面と圧縮室の底面および側面との間で圧縮されてしまい、絞り部を通過し難くなり、詰まりが生じる虞があった。
【0007】
本発明は、このような問題点に着目してなされたもので、詰まりが生じることを抑制できる揚げカス処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、本発明の揚げカス処理装置は、
筒状をなし内部空間に揚げカスを収容可能なケースと、
前記ケースの一方開口側の近傍で前記内部空間の断面積を絞る絞り部材と、
前記ケース内に収容された前記揚げカスを前記ケースの他方開口側から前記一方開口側に押し出すスライダと、を備える揚げカス処理装置であって、
前記絞り部材は、絞り側端面と、前記絞り側端面よりも前記他方開口側に配置され該他方開口側に凸をなす湾曲面と、を有していることを特徴としている。
この特徴によれば、スライダによりケースの一方開口側に押し出された揚げカスは、面積の広い湾曲面に押し付けられながら絞り側端面とケース内面との間に向けて誘導されるため、揚げカスが絞り側端面とケース内面との間に到達する前に圧縮されにくく、詰まりが生じることを抑制できる。
【0009】
前記絞り部材は、前記絞り側端面から前記湾曲面に向けて斜めに傾斜する傾斜面を有していることを特徴としている。
この特徴によれば、揚げカスが湾曲面を通過し絞り側端面とケース内面との間に到達するまでに、傾斜面とケース内面との間で揚げカスを徐々に圧縮することができる。
【0010】
前記湾曲面の下端縁は、前記絞り部材の長手方向の半分の位置よりも前記他方開口側に配置されていることを特徴としている。
この特徴によれば、傾斜面を長手方向に大きく確保できる。
【0011】
前記絞り部材は、前記ケースの上面部に設けられた開口から前記内部空間内に突出するように配置されており、
前記湾曲面の上端縁は、前記絞り部材の高さ方向の半分の位置よりも上方に配置されていることを特徴としている。
この特徴によれば、ケースの上面部内面よりも上方に配置される絞り部材を小さくできる。
【0012】
前記ケースの上面部の上方に上下方向に位置調整可能に配置される可動部材と、
前記可動部材に対して前記絞り部材を上下方向に接離可能に吊支する吊支部材と、
前記可動部材と前記絞り部材との間に配置され互いを離間方向に付勢する付勢部材と、を備え、
前記絞り部材は、前記ケースの上面部に設けられた開口から前記内部空間内に突出するように配置されていることを特徴としている。
この特徴によれば、付勢部材の付勢力を一定の状態で、可動部材の上下位置を変更して絞り部材の内部空間内への突出量を調整することができるため、かかる調整作業が簡便である。
【0013】
前記内部空間の高さが8mm~12mmに形成され、前記湾曲面の曲率半径が4mm~6mmに形成されていることを特徴としている。
この特徴によれば、湾曲面をバランスよく形成できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施例における揚げカス処理装置を示す斜視図である。
【
図4】圧搾パンチの形状を示す
図2の要部拡大図である。
【
図5】(a)は圧搾パンチを基準位置よりも下降させた状態を示す概略図、(b)は圧搾パンチを基準位置よりも上昇させた状態を示す概略図である。
【
図6】揚げカスを圧縮する前の状態の揚げカス処理装置を示す概略図である。
【
図7】揚げカスを圧縮した状態の揚げカス処理装置を示す概略図である。
【
図8】揚げカスが圧搾プレートの下方を通過するときの状態を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明に係る揚げカス処理装置を実施するための形態を実施例に基づいて以下に説明する。
【実施例0016】
実施例に係る揚げカス処理装置につき、
図1から
図8を参照して説明する。以下、
図2の紙面手前側を揚げカス処理装置の正面側(前方側)とし、その前方側から見たときの上下左右前後方向を基準として説明する。
【0017】
図1に示されるように、揚げカス処理装置1は、天ぷらカスやフライカスなどの揚げカスを圧縮して減容させ廃棄コストを低減するとともに、含有する油を搾り出し再利用する目的で用いられる。
【0018】
揚げカス処理装置1は、ケース2と、絞り装置3と、スライダとしての圧搾プレート4(
図6および
図7)と、から主に構成されている。
【0019】
先ず、ケース2の構造について説明する。
図1~
図3に示されるように、ケース2は、左側に一方開口としての揚げカス排出口2Aが設けられ、右側に他方開口としての圧搾プレート挿入口2Bが設けられた金属製の筒状を成している。
【0020】
具体的には、ケース2は、下向きコ字状の第1部材21と、平板状の第2部材22と、から構成されている。第1部材21は、上板部211と、上板部211の前後端縁から下向きに延びる側板部212,213と、上板部211の左端から左方斜め下方に延びる傾斜板部214と、を有する。
【0021】
第1部材21の上板部211の右側、すなわち圧搾プレート挿入口2B側には、上下方向に貫通する貫通孔211aが設けられており、上板部211の左側、すなわち揚げカス排出口2A側には、上下方向に貫通する前後方向に長いスリット211bが設けられている。
【0022】
側板部212,213は略平行をなしている。側板部212,213の右端部には、下方に張り出す突出部212a,213aが設けられており、側板部212,213の下面と突出部212a,213aの左面とで段部が形成されている。
【0023】
第1部材21は、側板部212,213の下面が第2部材22の上面に載置され、突出部212a,213aの左面が第2部材22の右面に接触した状態で図示しない固定部材や溶接などにより互いに固定されている。すなわち、ケース2は、第1部材21と第2部材22とで囲まれた内部空間Sが形成されている。
【0024】
第1部材21と第2部材22とが固定された状態にあっては、上板部211と第2部材22とが略平行をなす。本実施例では、内部空間Sの高さ寸法は、10mmに形成されている。尚、内部空間Sの高さ寸法は、自由に変更でき、好ましくは8mm~12mmである。
【0025】
第2部材22は、ケース2の底板部を構成している。この第2部材22は、第1部材21の上板部211よりも左右幅が小さく、かつ前後幅が大きくなっている。すなわち、第2部材22は、第1部材21よりも前後両側に張り出している。第2部材22における第1部材21よりも前後に張り出した部分を用いて、図示しない作業台などに接続可能になっている。尚、第2部材22は、上板部211の貫通孔211aの下方およびスリット211bの下方に亘って左右に延びている。
【0026】
また、第2部材22には、上下に貫通する油排出孔221が複数形成されている。
【0027】
第1部材21の上板部211の上面には、上板部211よりも板厚が厚い平板23がボルトナット5により固定されている。平板23には、上板部211の貫通孔211aおよびスリット211bに対応する貫通孔231およびスリット232が形成されている。貫通孔231およびスリット232は、貫通孔211aおよびスリット211bと上面視で同一形状をなしている。
【0028】
平板23における貫通孔231の上方には、筒状のホッパー6が接続されている(
図1および
図6,7参照)。尚、
図2~
図5では、説明の便宜上、ホッパー6の図示を省略している。
【0029】
第1部材21の貫通孔211aおよび平板23の貫通孔231は、ケース2の内部空間Sに処理前の揚げカス10(
図6参照)を供給する揚げカス供給口2Cを構成している。
【0030】
また、第1部材21のスリット211bおよび平板23のスリット232は、ケース2の内部空間Sに後述する圧搾パンチ31を挿入する圧搾パンチ挿入口2Dを構成している。
【0031】
また、平板23におけるスリット232の前後には、後述するボルト321,321が挿通可能な挿通孔233,233が形成されている(
図3参照)。この平板23における挿通孔233,233の上方には、ナット7,7が固着されている。
【0032】
次に、絞り装置3について説明する。
図1~
図3に示されるように、絞り装置3は、圧搾パンチ挿入口2Dを通じて内部空間S内に配置される絞り部材としての圧搾パンチ31と、圧搾パンチ31の内部空間S内への挿入深度を調整する調整手段32と、を主に備える。
【0033】
圧搾パンチ31は、圧搾パンチ挿入口2Dよりも僅かに小さく、上面視で圧搾パンチ挿入口2Dとほぼ同一形状をなしている。圧搾パンチ31は、内部空間S内に挿入されることで、内部空間Sの断面積を絞るように機能している。尚、圧搾パンチ31の具体的構造については後に詳述する。
【0034】
調整手段32は、前後一対のボルト321,321と、可動部材322と、吊支部材323,323と、付勢手段としてのコイルスプリング324,324と、から構成されている。
【0035】
前後一対のボルト321,321の下端部は、平板23の挿通孔233,233に挿入されているとともに、その上部がナット7,7に螺合されている。また、各ボルト321には、上下に離間して2つのナット325,326が螺合している。
【0036】
可動部材322は、上下に貫通する挿通孔322a,挿通孔322a’が前後に離間して4つ形成されている。前後両側の挿通孔322a,322aには、ボルト321,321が遊挿されている。すなわち、可動部材322は、ボルト321,321に対して上下方向に相対移動可能となっている。
【0037】
可動部材322は、各ボルト321における下方側のナット326に載置されているとともに、各ボルト321における上方側のナット325により上方への移動が規制されている。
【0038】
また、可動部材322の中央側の挿通孔322a’,322a’には、吊支部材323,323が遊挿されている。すなわち、吊支部材323,323は、可動部材322に対して上下方向に相対移動可能である。
【0039】
吊支部材323は、頭部323aと、頭部323aから下方に延びる小径の軸部323bと、を有する。軸部323bは、挿通孔322a’の上方から挿入されており、その下端部は圧搾パンチ31に固定されている。
【0040】
また、頭部323aは、挿通孔322a’よりも大径をなし、可動部材322の上面における挿通孔322a’の縁部に係止されている。すなわち、圧搾パンチ31は、吊支部材323により可動部材322に吊支されている。
【0041】
コイルスプリング324は、吊支部材323の軸部323bに外挿されており、可動部材322と圧搾パンチ31との間にある程度圧縮された状態で配置されている。すなわち、コイルスプリング324は、可動部材322と圧搾パンチ31とを互いに離間させる方向に付勢している。
【0042】
図4に示されるように、圧搾パンチ31は、上面311と、左面312と、右面313と、下面314と、傾斜面315と、湾曲面316と、を備えている。
【0043】
上面311は、水平方向に平坦をなしている。左面312は、上面311の左端から垂直下方に平坦に延びている。右面313は、上面311の右端から垂直下方に平坦に延びている。右面313は、左面312よりも短寸である。下面314は、左面312の下端から右側に向けて平坦に延びており、上面311よりも短寸である。傾斜面315は、下面314の右端から右側上方に向けて傾斜して平坦に延びている。尚、傾斜面315の下端縁315aは、内部空間Sの断面積が最も絞られた絞り部を構成する絞り側端面として機能している。
【0044】
湾曲面316は、傾斜面315の右端と右面313の下端との間に設けられており、右側、すなわち圧搾プレート挿入口2B側に凸をなしている。詳しくは、本実施例の湾曲面316の曲率半径は5mmとなっている。尚、湾曲面316の曲率半径は4mm~6mmに形成されていることが好ましい。
【0045】
また、湾曲面316の下端縁316aは、圧搾パンチ31の左右中央部を通る垂直の仮想線Bよりも右側、すなわち圧搾プレート挿入口2B側に配置されている。
【0046】
また、湾曲面316の上端縁316bは、圧搾パンチ31の上下中央部を通る水平の仮想線Cよりも上方に配置されている。
【0047】
また、圧搾パンチ31の下面314と傾斜面315とでなす角部318の角度は、略170度となっている。すなわち、角部318の角度は180度に近くなっている。尚、角部318の角度は、150度~170度に形成されることが好ましい。
【0048】
尚、圧搾パンチ31の右面313と湾曲面316との境界部分、すなわち上端縁316b近傍は滑らかに連続しており、角部が形成されていない。
【0049】
次いで、圧搾パンチ31の位置調整について
図3および
図5を用いて説明する。
【0050】
図3は、圧搾パンチ31の基準位置を示している。圧搾パンチ31の基準位置にあっては、圧搾パンチ31の下面314が水平に延びる仮想線αの位置に配置されている。尚、圧搾パンチ31の下面314は、傾斜面315の下端縁315aと同じ高さである。
【0051】
図5(a)は、圧搾パンチ31の下面314を仮想線αよりも低い仮想線βの位置まで下げた状態を示している。圧搾パンチ31は、可動部材322とともに下側のナット326をボルト321に対して下降させた後、上側のナット325を下方に締め込むことで位置を下げることができる。このとき、可動部材322、吊支部材323,323、コイルスプリング324,324、および圧搾パンチ31が一体的に下方に移動するため、コイルスプリング324の付勢力が
図3の状態から変化しない。尚、湾曲面316の上端縁316bは、上板部211の下面よりも上方に配置される位置に調整されることが好ましい。
【0052】
図5(b)は、圧搾パンチ31の下面314を仮想線αよりも高い仮想線γの位置まで上げた状態を示している。圧搾パンチ31は、上側のナット325をボルト321に対して上昇させた後、可動部材322とともに下側のナット326をボルト321に対して上方に締め込むことで位置を上げることができる。このとき、可動部材322、吊支部材323,323、コイルスプリング324,324、および圧搾パンチ31が一体的に上方に移動するため、コイルスプリング324の付勢力が
図3の状態から変化しない。
【0053】
次に、揚げカス処理装置1を用いて実際に揚げカスを圧縮する手順を
図6および
図7を用いて概略的に説明する。尚、
図6および
図7では、説明の便宜上、ケース2が水平に配置されているように図示するが、実際には右側が左側よりも低くなるように僅かに傾斜して配置されている。
【0054】
図6に示されるように、ホッパー6には、圧縮前の揚げカス10が投入されている。圧搾プレート4が右側に移動した退避状態にあっては、圧縮前の揚げカス10がホッパー6から揚げカス供給口2Cを通じて内部空間S内に流入する。
【0055】
図7に示されるように、圧搾プレート4が左側に移動した圧縮状態にあっては、内部空間S内の圧縮前の揚げカス10が左側に押圧され、内部空間Sにおいて圧搾パンチ31の下方を通過するときに圧縮され、含有する油が搾り出され、圧縮後の揚げカス11として揚げカス排出口2Aから排出される。搾り出された油は、ケース2の底部に形成された油排出孔221を通じて外部で回収され、再利用される。
【0056】
次に、揚げカス10が圧搾プレート4の下方を通過するときの状態を
図7および
図8を用いて説明する。
【0057】
図7および
図8に示されるように、圧縮前の揚げカス10は、圧搾プレート4により左側に押圧されると、先ず圧搾パンチ31の湾曲面316に接触し、僅かに圧縮される(揚げカス10’となる)。尚、圧搾パンチ31の右面313は、ケース2における上板部211の下面よりも上方に配置されているため、揚げカス10は接触しない。
【0058】
湾曲面316は、右側上部が垂直に近く、左側下部に向かうにつれて徐々に水平に近づくように湾曲する形状をなしているので、揚げカス10は、湾曲面316の右側上部で左側の移動が規制されるとともに、それよりも左側下方の部位で圧搾パンチ31の傾斜面315とケース2の内面(すなわち上板部211の下面、側板部212の後面、側板部213の前面、第2部材22の上面)との間に向けて誘導される。加えて、湾曲面316は、平坦面に比べて面積が大きい。そのため、揚げカス10は、湾曲面316近傍で圧縮されにくくなっている。
【0059】
湾曲面316を通過した揚げカス10’は、湾曲面316の左側に形成された平坦な傾斜面315とケース2の内面とにより徐々に圧縮されながらさらに左側へ移動する(揚げカス10’’となる)。このとき、揚げカス10’’の状態(硬さや密度など)とコイルスプリング324,324の付勢力との関係によって圧搾パンチ31の上下位置が調整される。すなわち、揚げカス10’’の状態に応じて好適な付勢力が付与される。
【0060】
また、圧搾パンチ31の下面314と傾斜面315とでなす角部318の角度は180度に近くなっているため、左側に移動する揚げカス10’’が角部318に引っ掛かりにくい。
【0061】
その後、揚げカス10’’は、圧搾パンチ31における傾斜面315の下端縁315a近傍、すなわち内部空間Sの断面積が最も絞られた絞り部で大きく圧縮され、減容および搾油される。前記絞り部を通過した圧縮後の揚げカス11は、圧搾パンチ31の下面314とケース2の内面との間を通って左側に送られ、傾斜板部214により下方にガイドされながら揚げカス排出口2Aを通じて外部に排出される。
【0062】
以上説明したように、圧搾プレート4により左側に押し出された揚げカス10は、面積の大きい湾曲面316に押し付けられながら圧搾パンチ31の下端縁315aとケース2の内面との間に向けて誘導されるため、揚げカス10が圧搾パンチ31の下端縁315aとケース2の内面との間に到達する前に圧縮されにくく、詰まりが生じることを抑制できる。
【0063】
また、圧搾パンチ31の下端縁315aに到達するまでに平坦な傾斜面315とケース2の内面とで揚げカス10を徐々に圧縮することができる。また、角部318の角度が180度に近いため、角部318に揚げカス10’’が引っ掛かることを防止でき、円滑に排出することができる。
【0064】
また、圧搾パンチ31の右面313と湾曲面316との境界部分、すなわち上端縁316b近傍は滑らかに連続しており、角部が形成されていないため、上端縁316bが内部空間S内に配置されていても左側に移動する揚げカス10が上端縁316b近傍に引っ掛かり、左側への移動が規制されることが防止される。
【0065】
また、湾曲面316の下端縁316aは、圧搾パンチ31の左右中央部を通る垂直の仮想線Bよりも圧搾プレート挿入口2B側に配置されているため、圧搾パンチ31の下面314および傾斜面315を左右方向に大きく確保できる。
【0066】
また、湾曲面316の上端縁316bは、圧搾パンチ31の上下中央部を通る水平の仮想線Cよりも上方に配置されているため、圧搾パンチ31における上板部211の下面よりも上方に配置される部分を小さくできる。
【0067】
また、圧搾パンチ31の内部空間S内への挿入深度を調整する調整手段32は、ケース2の上板部211の上方に上下方向に位置調整可能に配置される可動部材322と、可動部材322に対して圧搾パンチ31を上下方向に接離可能に吊支する吊支部材323,323と、可動部材322と圧搾パンチ31との間に配置され互いを離間方向に付勢するコイルスプリング324,324と、を備えている。これにより、コイルスプリング324,324の付勢力を一定の状態で、可動部材322の上下位置を変更して圧搾パンチ31の内部空間S内への突出量を調整することができるようになっている。
【0068】
これによれば、コイルスプリング324,324を自然状態に近い状態に設定し、コイルスプリング324,324の圧縮許容範囲を大きく確保することができる。そのため、揚げカス10の硬さや密度などに応じて好適な付勢力を付与することができる。
【0069】
言い換えれば、湾曲面316の上端縁316b近傍は滑らかに連続しており、上端縁316bが内部空間S内に配置されていても揚げカス10の移動が規制されることが防止されるため、上記のような調整手段32を用いることができ、かかる調整作業が簡便となる。
【0070】
また、本実施例では、内部空間Sの高さが10mmに形成され、湾曲面316の曲率半径が5mmに形成されているため、スリット211bを構成する内面と圧搾パンチ31との間に大きな隙間が形成されることを防止できるとともに、湾曲面316の長さを十分に確保することができる。すなわち、内部空間Sに対して湾曲面316をバランスよく形成できる。
【0071】
以上、本発明の実施例を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0072】
例えば、前記実施例では、ボルト321に対して可動部材322を相対移動させることで圧搾パンチ31の内部空間S内への挿入深度を調整する形態を例示したが、これに限られず、自由に変更できる。例えば、ケースに対して相対移動可能なボルトなどの進退機構を設け、進退機構に対して可動部材を固定し、ケースに対して進退機構を相対移動させることで絞り部材の内部空間内への挿入深度を調整するようになっていてもよい。
【0073】
また、前記実施例では、圧搾パンチ31の内部空間S内への挿入深度を調整可能である形態を例示したが、これに限られず、例えば、絞り部材は、ケースに対して固定的に設置されていてもよい。この場合、絞り部材のケースへの固定位置は自由に変更できる。例えば、内部空間の下方から上方に突出するようにケースの底板部の上面にとりつけられていてもよい。
【0074】
また、前記実施例では、ケース2が断面矩形状の筒状をなす形態を例示したが、断面形状が、円形や楕円形その他多角形などであってもよい。
【0075】
また、前記実施例では、圧搾パンチ31は、湾曲面316と下面314との間に1つの傾斜面315が設けられる形態を例示したが、これに限られず、2つ以上の傾斜面が設けられていてもよい。この場合、一の傾斜面が、ケースの他方開口側に隣接する他の傾斜面よりも揚げカスの搬送方向に沿って傾斜するようになっていればよい。また、傾斜面を設けず、湾曲面と絞り側端面とが直接連なっていてもよい。
【0076】
また、前記実施例では、湾曲面316が面一の曲面である形態を例示したが、凹凸が形成されていてもよい。例えば、揚げカスの押し出し方向に沿って延びる凹状溝が複数設けられていてもよい。
【0077】
また、前記実施例では、付勢手段としてのコイルスプリング324,324が設けられる形態を例示したが、板バネ等でもあってもよい。