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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024124860
(43)【公開日】2024-09-13
(54)【発明の名称】触感呈示装置
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/01 20060101AFI20240906BHJP
【FI】
G06F3/01 560
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023032811
(22)【出願日】2023-03-03
(71)【出願人】
【識別番号】304036743
【氏名又は名称】国立大学法人宇都宮大学
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124800
【弁理士】
【氏名又は名称】諏澤 勇司
(74)【代理人】
【識別番号】100183438
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 泰史
(72)【発明者】
【氏名】石川 智治
(72)【発明者】
【氏名】三井 実
【テーマコード(参考)】
5E555
【Fターム(参考)】
5E555AA08
5E555BA08
5E555BB08
5E555BC04
5E555DA24
5E555FA00
(57)【要約】
【課題】ふわふわとした質感を特徴とする生地の触感を高精度に表現すること。
【解決手段】触感呈示装置1は、空気を出力するエアコンプレッサ30と、エアコンプレッサ30から出力された空気に基づき空気流を形成し、該空気流による触感を呈示する触感デバイス10と、を備える。触感デバイス10は、エアコンプレッサ30から出力された空気の流量を調整する流量調整ハンドル11と、流量調整ハンドル11によって流量が調整された空気を噴出し、空気流を形成する複数のエアノズル13と、複数のエアノズル13によって形成された空気流に対応する位置に設けられ、該空気流を通過させる複数の孔部14aが形成された鉄板14と、鉄板14の表面に設けられ、該空気流を外部に放出させるガーゼ16と、を備える。
【選択図】図2

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気を出力する空気発生装置と、
前記空気発生装置から出力された空気に基づき空気流を形成し、該空気流による触感を呈示する触感デバイスと、を備え、
前記触感デバイスは、
前記空気発生装置から出力された空気の流量を調整する流量調整部と、
前記流量調整部によって流量が調整された空気を噴出し、空気流を形成する複数のエアノズルと、
前記複数のエアノズルによって形成された空気流に対応する位置に設けられ、該空気流を通過させる複数の孔部が形成された板部と、
前記板部の表面に設けられ、該空気流を外部に放出させる布部と、を備える、触感呈示装置。
【請求項2】
前記板部の前記布部が設けられた領域の周囲に設けられた発熱部を更に備え、
前記板部は、金属を含んで構成されている、請求項1記載の触感呈示装置。
【請求項3】
前記空気流は、表現したい毛の長さが長いほど風速が速くなるように調整される、請求項1又は2記載の触感呈示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一態様は、触感呈示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、対象物の触感を表現する技術が知られている(例えば、特許文献1~4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-175867号公報
【特許文献2】特開2019-185313号公報
【特許文献3】特開2008-129835号公報
【特許文献4】特開2005-70843号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、上述した技術によっても、ふわふわとした質感を特徴とする生地の触感を高精度に表現することは困難である。
【0005】
本発明の一態様は上記実情に鑑みてなされたものであり、ふわふわとした質感を特徴とする生地の触感を高精度に表現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る触感呈示装置は、空気を出力する空気発生装置と、空気発生装置から出力された空気に基づき空気流を形成し、該空気流による触感を呈示する触感デバイスと、を備え、触感デバイスは、空気発生装置から出力された空気の流量を調整する流量調整部と、流量調整部によって流量が調整された空気を噴出し、空気流を形成する複数のエアノズルと、複数のエアノズルによって形成された空気流に対応する位置に設けられ、該空気流を通過させる複数の孔部が形成された板部と、板部の表面に設けられ、該空気流を外部に放出させる布部と、を備える。
【0007】
本発明の一態様に係る触感呈示装置では、空気発生装置から出力された空気に基づき、複数のエアノズルによって空気流が形成され、板部に形成された孔部及び布部を通過した空気流が布部の外部に放出される。布部に手の指が触れたユーザは、空気発生装置を用いて発生させた高圧の空気流による風圧と、布部の触感とを感じることとなる。布部を触った状態で空気流の風圧を受けることにより、例えば毛の長いタオルのような、ふわふわとした質感を有する生地の触感をユーザに呈示することができる。以上のように、本発明の一態様に係る触感呈示装置によれば、ふわふわとした質感を特徴とする生地の触感を高精度に表現することができる。
【0008】
上記触感呈示装置は、板部の布部が設けられた領域の周囲に設けられた発熱部を更に備え、板部は、金属を含んで構成されていてもよい。このような構成によれば、発熱部によって板部が加熱されることにより、板部上の布部、及び、布部を経て外部に放出される空気流が温められ、実際の生地に触れた際の温度感を表現することができる。これによって、ふわふわとした質感を特徴とする生地の触感をより高精度に表現することができる。
【0009】
空気流は、表現したい毛の長さが長いほど風速が速くなるように調整されていてもよい。発明者らは、空気流の風速を上げることにより毛の長い生地の触感を表現することができることを見出した。表現したい毛の長さが長いほど空気流の風速が速くされることにより、毛の長さを高精度に表現し、ふわふわとした質感を特徴とする生地の触感をより高精度に表現することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一態様に係る触感呈示装置によれば、ふわふわとした質感を特徴とする生地の触感を高精度に表現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本実施形態に係る触感呈示装置の構成図である。
図2図2は、図1に示される触感呈示装置に含まれる触感デバイスの側面図である。
図3図3は、触感デバイスの平面図である。
図4図4は、実物タオル触感の心理評価実験方法を説明する図である。
図5図5は、実物タオル触感の心理評価実験方法のフローチャートである。
図6図6は、実物タオル触感の心理評価実験結果を示す図である。
図7図7は、空気流による触感の心理評価実験に用いた空気流の条件を示す表である。
図8図8は、空気流による触感の心理評価実験方法を説明する図である。
図9図9は、空気流による触感の心理評価実験方法を説明する図である。
図10図10は、空気流による触感の心理評価実験方法のフローチャートである。
図11図11は、空気流による触感の心理評価実験結果を示す図である。
図12図12は、実物タオル及び空気流の触感マッチング実験方法を説明する図である。
図13図13は、タオルのパイル長毎の評価値を示す表である。
図14図14は、実物タオル及び空気流の触感マッチング実験方法のフローチャートである。
図15図15は、実物タオル及び空気流の触感マッチング実験結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態を詳細に説明する。なお、図面の説明においては同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。また、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、種々の変更をすることが可能である。
【0013】
[触感呈示装置の構成]
図1は、本実施形態に係る触感呈示装置1の構成図である。触感呈示装置1は、高圧の空気を噴出することにより生じる空気流による風圧と、シートヒータを用いて発生させた熱刺激とを用いて、毛(パイル)の長いタオルのようなふわふわとした質感をリアルに表現する装置である。すなわち、触感呈示装置1は、高圧の空気を噴出させると同時にその空気を温めることにより、例えばタオルのパイル触感を再現する装置である。図1に示されるように、触感呈示装置1は、触感デバイス10と、エアコンプレッサ30(空気発生装置)と、直流電源装置50と、を備えている。
【0014】
エアコンプレッサ30は、高圧の空気を出力する空気発生装置である。エアコンプレッサ30は、例えば設定された所定量の空気を継続的に出力する。エアコンプレッサ30から出力された空気は、チューブ20を介して、触感デバイス10に送り込まれる。
【0015】
直流電源装置50は、触感デバイス10の後述するシートヒータ15(図2及び図3参照)に電流を流す電源装置である。直流電源装置50は、プラス線41及びマイナス線42を介して触感デバイス10のシートヒータ15に接続されている。
【0016】
触感デバイス10は、エアコンプレッサ30から出力された空気に基づき空気流を形成し、該空気流による触感を呈示するデバイスである。触感デバイス10は、例えば、W:39.5cm、D:28cm、H:36.5cm程度のサイズとされてもよい。図2は、触感デバイス10の側面図である。図3は、触感デバイス10の平面図である。図2及び図3に示されるように、触感デバイス10は、流量調整ハンドル11(流量調整部)と、エアチューブ12と、複数のエアノズル13と、鉄板14(板部)と、シートヒータ15(発熱部)と、ガーゼ16(布部)と、支持部17と、カバー部18と、を有している。
【0017】
カバー部18は、鉄板14を支持すると共に、支持部17に支持された部材である。カバー部18は、図2に示されるように、例えば透明な部材で構成されていてもよい。カバー部18の下面側には、複数(例えば4つ)のエアノズル13が設けられている。カバー部18は中空形状で形成されている。このため、エアノズル13から噴出された空気は、鉄板14方向に流れる。支持部17は、カバー部18を支持することにより、カバー部18に載置された鉄板14等の構成を支持する部材である。支持部17は、例えばカバー部18の下面側の四隅に設けれた脚部である。
【0018】
流量調整ハンドル11は、エアコンプレッサ30から出力された空気の流量を調整する。流量調整ハンドル11によって空気の流量が調整されることにより、流量が調整された後の空気がエアチューブ12を流れることとなる。なお、流量調整ハンドル11は、エアコンプレッサ30から出力された空気の流量を調整することができるものであれば、ハンドル形式以外の流量調整部に置き換えられてもよい。
【0019】
エアチューブ12は、流量調整ハンドル11と複数のエアノズル13とを繋ぐように延びており、流量調整ハンドル11によって流量が調整された空気を各エアノズル13に送り込むチューブである。エアチューブ12は、各エアノズル13に向かって延びるように、途中で分岐している。
【0020】
複数のエアノズル13は、流量調整ハンドル11によって流量が調整された空気を噴出し、空気流を形成するノズルである。エアノズル13は、エアチューブ12を介して流量調整ハンドル11から送り込まれた空気を鉄板14方向に向けて噴出する。空気流は、表現したい毛(タオルのパイル)の長さが長いほど風速が速くなるように、流量調整ハンドル11によって調整されてもよい。
【0021】
鉄板14は、複数のエアノズル13によって形成された空気流に対応する位置に設けられ、該空気流を通過させる複数の孔部14aが形成された部材である。孔部14aは、例えば、直径1mm、間隔5mm程度とされてもよい。具体的には、鉄板14は、平面視した際の中央部分が孔部14aの形成領域とされており、孔部14aの形成領域において上面にガーゼ16が設けられている。また、鉄板14におけるガーゼ16が設けられている領域の周囲には、シートヒータ15が設けられている(図3参照)。なお、鉄板14は、金属を含んで構成されたその他の板部に置き換えられてもよいし、金属以外の熱伝導率が高い部材で構成されたその他の板部に置き換えられてもよい。また、シートヒータ15が設けられていない構成においては、鉄板14は、金属以外のその他の板部に置き換えられてもよい。
【0022】
シートヒータ15は、鉄板14のガーゼ16が設けられた領域の周囲に設けられた発熱部である(図3参照)。シートヒータ15は、直流電源装置50からの電流に応じて発熱する。シートヒータ15が発熱することにより、鉄板14が温められ、間接的に、鉄板14の孔部14a及びガーゼ16を介して外部に送られる空気が温められる。シートヒータ15は、直流電源装置50に並列に接続された複数(例えば8つ)の部分に分割されていてもよい。
【0023】
ガーゼ16は、鉄板14の表面に設けられ、空気流を外部に放出させる布部である。ガーゼ16は、被験者によって触られる部分である。ガーゼ16は、鉄板14における孔部14aの形成領域(すなわち平面視した際の中央部分)に設けられている。ガーゼ16は、鉄板14の孔部14aを介して到達した空気流を外部に放出可能な大きさ・形状・数の空気孔が形成されている。なお、ガーゼ16は、空気流を外部に放出させることができる布部であれば、その他の布部に置き換えられてもよい。
【0024】
[触感呈示装置の作用効果]
次に、本実施形態に係る触感呈示装置1の作用効果について説明する。
【0025】
本実施形態に係る触感呈示装置1は、空気を出力するエアコンプレッサ30と、エアコンプレッサ30から出力された空気に基づき空気流を形成し、該空気流による触感を呈示する触感デバイス10と、を備える。触感デバイス10は、エアコンプレッサ30から出力された空気の流量を調整する流量調整ハンドル11と、流量調整ハンドル11によって流量が調整された空気を噴出し、空気流を形成する複数のエアノズル13と、複数のエアノズル13によって形成された空気流に対応する位置に設けられ、該空気流を通過させる複数の孔部14aが形成された鉄板14と、鉄板14の表面に設けられ、該空気流を外部に放出させるガーゼ16と、を備える。
【0026】
本実施形態に係る触感呈示装置1では、エアコンプレッサ30から出力された空気に基づき、複数のエアノズル13によって空気流が形成され、鉄板14に形成された孔部14a及びガーゼ16を通過した空気流がガーゼ16の外部に放出される。ガーゼ16に手の指が触れたユーザは、エアコンプレッサ30を用いて発生させた高圧の空気流による風圧と、ガーゼ16の触感とを感じることとなる。ガーゼ16を触った状態で空気流の風圧を受けることにより、例えば毛の長いタオルのような、ふわふわとした質感を有する生地の触感をユーザに呈示することができる。以上のように、本実施形態に係る触感呈示装置1によれば、ふわふわとした質感を特徴とする生地の触感を高精度に表現することができる。
【0027】
上記触感呈示装置1は、鉄板14のガーゼ16が設けられた領域の周囲に設けられたシートヒータ15を更に備えていてもよい。このような構成によれば、シートヒータ15によって鉄板14が加熱されることにより、鉄板14上のガーゼ16、及び、ガーゼ16を経て外部に放出される空気流が温められ、実際の生地に触れた際の温度感を表現することができる。これによって、ふわふわとした質感を特徴とする生地の触感をより高精度に表現することができる。
【0028】
空気流は、表現したい毛の長さが長いほど風速が速くなるように調整されていてもよい。発明者らは、空気流の風速を上げることにより毛の長い生地の触感を表現することができることを見出した。表現したい毛の長さが長いほど空気流の風速が速くされることにより、毛の長さを高精度に表現し、ふわふわとした質感を特徴とする生地の触感をより高精度に表現することができる。
【0029】
[実験例]
本実施形態に係る触感呈示装置1の効果等について、以下に示す実験例を参照して詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0030】
(実験1)
実物タオルの触感の心理評価について、実験を行った。本実験は、実物タオルのパイル長の違いで、触感評価がどのように変わるのかを明らかにすることを目的にしている。綿素材且つ20cm四方の実物タオルであって互いに異なるパイル長(1mm、2mm、3mm、4mm)を有する4種類の実物タオルを準備し、それぞれ、単極5段階尺度により、凹凸感、しっとり感、肌触りの良さ、及びふんわり感の各評価項目について評価した。被験者は、呈示されたタオルを手で撫でて、上記4項目について5段階評価を行った。被験者は、20代男性4名とした。タオルへの接触は利き手の手の平とし、触り方は、図4に示されるように、タオルの中心付近から4方向に偏りなく撫でるように触ることとした。4種類の実物タオルについて、ランダムに3回ずつ呈示し、合計で12回呈示した。
【0031】
図5は、実験1のフローチャートである。図5に示されるように、実験1では、まず、4種類のいずれかのタオルが被験者に呈示され(ステップS1)、被験者によって所定の撫で方でタオルが撫でられ(ステップS2)、触感に関する各項目(ふんわり感等)について5段階で評価された(ステップS3)。そして、同一の被験者に対して、12回(4種類×3回)タオルが呈示され12回評価が行われたか否かが判定され(ステップS4)、12回評価が行われていない場合には再度ステップS1の処理から実施され、行われている場合には実験を終了した。このような処理が、全ての被験者(4名)に対して実施された。
【0032】
図6は、実験1の結果を示す図である。図6において、横軸はタオルのパイル長(mm)を、縦軸は5段階評価で示される評価値を、それぞれ示している。図6に示されるように、凹凸感、しっとり感、肌触りの良さ、及びふんわり感の各評価項目について、いずれも、タオルのパイル長が長いほど、評価値が高くなった。このように、実験1によって、ふんわり感等の触感に関する評価は、タオルのパイル長との関連度が高いことが明らかになった。
【0033】
(実験2)
触感呈示装置1において生成される空気流による触感の心理評価について、実験を行った。本実験は、触感呈示装置1において生成される空気流の風速の違いによって、触感評価がどのように変わるのかを明らかにすることを目的にしている。触感呈示装置1の構成は、図1図3に示されるとおりである。触感呈示装置1は、エアコンプレッサ30から送られる高圧の空気流を鉄板14の孔部14aから噴出させて被験者の手の指側面に呈示すると同時に、直流電源装置50の電流によって温まるシートヒータ15により温度変化刺激を呈示することにより、タオルのふんわり感の提示を目指すものである。ガーゼ16が貼り付けられている鉄板14の表面温度は、人の肌温度を考慮して約37℃程度になるようにシートヒータ15により設定した。なお、触感呈示装置1においては、鉄板14の孔部14aにガーゼ16が貼り付けられていることにより、手に触感を呈示する際の布地感を向上させている。
【0034】
評価尺度は、実験1と同様に単極5段階尺度とした。評価項目は、実験1と同様に凹凸感、しっとり感、肌触りの良さ、及びふんわり感とした。互いに風速が異なる複数の空気流として、図7に示される8種類の空気流を用いた。空気流の風速は、実験室の温度を21±1℃、湿度を50%とした環境で、触感デバイス10から0.5cm離れた点で計測されたものである。
【0035】
図8(a)及び図8(b)に示されるように、触感デバイス10に対向するように被験者Uが立ち、図9に示されるように、被験者Uが、ガーゼ16に軽く手の平を押し当てて、ガーゼ16の左端から右端に向かって手を移動させる。被験者Uは、実験1と同様に20代男性4名とした。8種類の空気流について、ランダムに3回ずつ呈示し、合計24回呈示した。
【0036】
図10は、実験2のフローチャートである。図10に示されるように、実験2では、まず、8種類のいずれかの空気流が被験者に提示され(ステップS11)、被験者によって空気流が触れられ(ステップS12)、触感に関する各項目(ふんわり感等)について5段階で評価された(ステップS13)。そして、同一の被験者に対して、24回(8種類×3回)空気流が呈示され24回評価が行われたか否かが判定され(ステップS14)、24回評価が行われていない場合には再度ステップS11の処理から実施され、行われている場合には実験を終了した。このような処理が、全ての被験者(4名)に対して実施された。
【0037】
図11は、実験2の結果を示す図である。図11において、横軸は風速(m/s)を、縦軸は5段階評価で示される評価値を、それぞれ示している。図11に示されるように、凹凸感、しっとり感、肌触りの良さ、及びふんわり感の各評価項目について、概ね、風速が速くなるほど、評価値が高くなった。このように、実験2によって、ふんわり感等の触感に関する評価は、風速との関連度が高く、風速が速いほど評価値が高くなることが明らかになった。
【0038】
(実験3)
触感呈示装置1において生成される空気流により表現されるタオルの触感について、実験を行った。本実験は、触感呈示装置1において生成される空気流の風速変化と、それによって表現されるタオルの触感とのマッチング(一致度)について明らかにすることを目的にしている。実物タオルは実験1の4種類、空気流は実験2の8種類が用いられた。
【0039】
図12に示されるように、触感デバイス10の横にパイル長順に並べられたタオルを置き、被験者Uが、触感デバイス10のガーゼ16と、隣にあるタオルとを順番に触ることにより、空気流の触感に近いタオルを選択した。そして、選択結果と評価値とを対応付けた(図13参照)。図13に示されるように、被験者Uは、空気流の触感に近いタオルのパイル長そのものを選択してもよいし、2つのタオルのパイル長(例えば1mm及び2mm)の触感の中間であることを選択してもよいこととした。被験者は、20代男性7名とした。
【0040】
図14は、実験3のフローチャートである。図14に示されるように、実験3では、まず、8種類のいずれかの空気流が被験者に提示され(ステップS21)、被験者によって空気流が触れられ(ステップS22)、4種類のタオルの触感と比べて空気流の触感と近しいタオルが選択された(ステップS23)。そして、同一の被験者に対して、24回(8種類×3回)空気流が呈示され24回評価が行われたか否かが判定され(ステップS24)、24回評価が行われていない場合には再度ステップS21の処理から実施され、行われている場合には実験を終了した。このような処理が、全ての被験者(7名)に対して実施された。
【0041】
図15は、実験3の結果を示す図である。図15において、横軸は風速(m/s)を、縦軸はパイル長に応じた評価値を、それぞれ示している。図15に示されるように、概ね、空気流が速くなるほど、パイル長に応じた評価値が高くなった。このように、実験3によって、空気流の風速を上げることによって、パイル長が長い生地の触感を表現することができることが明らかになった。
【符号の説明】
【0042】
1…触感呈示装置、10…触感デバイス、11…流量調整ハンドル(流量調整部)、13…エアノズル、14…鉄板(板部)、14a…孔部、15…シートヒータ(発熱部)、16…ガーゼ(布部)、30…エアコンプレッサ(空気発生装置)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15