(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024124867
(43)【公開日】2024-09-13
(54)【発明の名称】安全確認システム
(51)【国際特許分類】
G08G 1/16 20060101AFI20240906BHJP
G08G 1/09 20060101ALI20240906BHJP
【FI】
G08G1/16 A
G08G1/09 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023032820
(22)【出願日】2023-03-03
(71)【出願人】
【識別番号】000002059
【氏名又は名称】シンフォニアテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】弁理士法人ATEN
(72)【発明者】
【氏名】西小野 寛明
(72)【発明者】
【氏名】水谷 友哉
(72)【発明者】
【氏名】溝口 英次
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 いずみ
【テーマコード(参考)】
5H181
【Fターム(参考)】
5H181AA07
5H181AA20
5H181BB04
5H181CC04
5H181CC12
5H181FF04
5H181FF05
5H181LL01
5H181LL04
5H181LL07
5H181LL08
5H181LL14
(57)【要約】
【課題】複数の車両が方向自由に走行可能な規定領域内での障害物等の情報を複数の車両で共有させて安全性を高めつつ、情報処理の迅速化を図ることができる安全確認システムを提供する。
【解決手段】空港のエプロン1内を、方向自由に走行可能な複数のGSE4の走行支援を行う安全確認システム10は、カメラ42と、GPS41と、カメラ42により取得した画像及びGPS41により取得したGSE4の位置情報に基づき、画像に含まれる障害物9の位置情報を算出する画像処理部431と、GSE管制11の制御部21のMAP作成部211とを備え、MAP作成部211は、基本平面マップ50に障害物9の位置情報を関連付けて生成した関連付マップ50´を各GSE4に送信する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め定められた規定領域内を、方向自由に走行可能な複数の車両の走行支援を行う、安全確認システムであって、
前記車両に搭載され、前記規定領域内の画像を取得可能な画像取得部と、
前記車両に搭載され、前記規定領域内の前記車両の位置情報を取得する位置情報取得部と、
前記車両に搭載され、前記画像取得部により取得した前記画像及び前記位置情報取得部により取得した前記車両の位置情報に基づき、前記画像に含まれる障害物の位置情報を算出する処理部と、
制御部と、を備え、
前記制御部は、前記規定領域の位置情報に少なくとも前記障害物の位置情報を関連付けて生成した関連付情報を、前記複数の車両に送信する、
又は、前記複数の車両の各処理部は、前記制御部から、前記複数の車両の各処理部で算出された前記障害物の位置情報を受信した後、前記規定領域の位置情報に少なくとも前記障害物の位置情報を関連付けた前記関連付情報を生成する、ことを特徴とする安全確認システム。
【請求項2】
前記関連付情報は、前記位置情報を二次元化したマップで示されることを特徴とする、請求項1に記載の安全確認システム。
【請求項3】
前記処理部は、
更に、前記画像取得部により取得した前記画像及び前記位置情報取得部により取得した前記車両の位置情報に基づき、
前記制御部又は前記処理部は、前記規定領域の位置情報に、
前記障害物の位置情報に基づき作成された障害物領域、
前記障害物がない位置情報に基づき作成された安全領域、
前記障害物領域及び前記安全領域にも含まれない未確認領域
を少なくとも関連付けた前記関連付情報を生成することを特徴とする、請求項1又は2に記載の安全確認システム。
【請求項4】
前記制御部は、
前記関連付情報に関連付けた前記障害物領域、前記安全領域、及び、前記未確認領域に応じて、前記複数の車両の走行速度制限を設定することを特徴とする、請求項3に記載の安全確認システム。
【請求項5】
前記制御部は、予め、前記規定領域の中で少なくとも前記障害物の位置情報との関連付けを不要とする不要位置情報を取得し、前記不要位置情報については前記規定領域の位置情報に関連付けないことを特徴とする、請求項1に記載の安全確認システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、予め定められた規定領域内を方向自由に走行可能な複数の車両の走行支援を行う安全確認システムに関する。
【背景技術】
【0002】
空港や港湾や工場などでは、搬送作業などの支援作業を行うための支援車両が配備されている。例えば、空港であれば、支援車両は、GSE(Ground Support Equipment)と呼ばれており、GSEにはボーディングブリッジ、ハイリフトローダ、ベルトローダ、トーイングトラクタ、給油車、空港電源車、パッセンジャーステップ、ドーリ等の様々な種類がある。
【0003】
このような搬送作業などの支援作業を行うにあたっては、多種多数の支援車両が、同時間帯に予め定められた規定領域内を走行する場合がある。例えば、空港であれば、多種のGSEが、航空機の支援作業を短時間で行うため、同時間帯に空港のエプロン内を走行する。このとき、各支援車両の走行や支援作業を行う作業者の安全を確保するため、各支援車両を連携させつつ、各支援車両の走行管理を適切に行うことが求められる。
【0004】
この点、近年では人手不足への対応や工場の24時間稼働などに対応するため、搬送作業の自動化が求められ、自律運転が可能な支援車両や、遠隔操作が可能な支援車両が登場している。このような支援車両は、障害物や人や他の車両などを検知するセンサを搭載しているものもある。
【0005】
しかしながら、このような車両に搭載されたセンサの検知範囲は限られており、死角となる領域までは検知することができないという問題がある。
【0006】
これに対して、特許文献1~4には、広範な領域を走行可能な自動車(車両)を念頭に、自車両から見て死角になる物標(障害物など)の情報を他車両から取得することにより、車両の走行の安全を図るシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008-293099号公報
【特許文献2】特開2022-39434号公報
【特許文献3】特許第6949417号公報
【特許文献4】特許第6690194号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1~4に記載されているような一般的な自動車の場合、公道を走行することが想定されている。公道は法律や規格により整備され、自動車が走る場所や、人が通る場所などはある程度区画されており、障害物が発生するシチュエーションは比較的限られている。
一方、空港や港湾や工場など比較的広い敷地内では、車両や人が方向自由に行き来する。そのため、公道に比べて閉路で車両と人とが混在する状況が発生し易く、障害物が発生するシチュエーションは比較的多くなる。
【0009】
また、複数の車両間で、障害物や人や他の車両などの情報をリアルタイムで共有化するには、リアルタイムで変化する情報の送受信に関しては情報量をできるだけ小さくして、制御機器の負担を低減させる必要がある。
【0010】
そこで、本発明は、複数の車両が方向自由に走行可能な規定領域内での障害物等の情報を複数の車両で共有させる走行支援を行って安全性を高めつつ、情報処理の迅速化を図り、複数の車両での障害物等の情報のリアルタイムでの共有化を効率化することができる安全確認システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、予め定められた規定領域内を、方向自由に走行可能な複数の車両の走行支援を行う、安全確認システムであって、
前記車両に搭載され、前記規定領域内の画像を取得可能な画像取得部と、
前記車両に搭載され、前記規定領域内の前記車両の位置情報を取得する位置情報取得部と、
前記車両に搭載され、前記画像取得部により取得した前記画像及び前記位置情報取得部により取得した前記車両の位置情報に基づき、前記画像に含まれる障害物の位置情報を算出する処理部と、
制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記規定領域の位置情報に少なくとも前記障害物の位置情報を関連付けて生成した関連付情報を、前記複数の車両に送信する、
又は、前記複数の車両の各処理部は、前記制御部から、前記複数の車両の各処理部で算出された前記障害物の位置情報を受信した後、前記規定領域の位置情報に少なくとも前記障害物の位置情報を関連付けた前記関連付情報を生成することを特徴としている。
【0012】
複数の車両が方向自由に走行可能な規定領域内では、ある車両から見える障害物が、他の車両からは死角になる場合がある。
そこで、上記構成により、規定領域の位置情報に、ある車両から取得した障害物の位置情報を関連付けて生成した関連付情報を、他の車両に送信して、規定領域における障害物の位置情報を複数の車両において共有する、或いは、ある車両から取得した障害物の位置情報を、他の車両に送信して、受信した車両において、規定領域の位置情報に障害物の位置情報を関連付けた関連付情報を生成することにより、規定領域における障害物の位置情報を複数の車両において共有する。これにより、規定領域内を走行する複数の車両の走行支援を行い、安全性を高めることができる。
また、制御部は、画像取得部により取得した画像及び位置情報取得部により取得した車両の位置情報を直接取得するわけではなく、車両に搭載された処理部が画像取得部により取得した画像及び位置情報取得部により取得した車両の位置情報に基づき算出した、画像に含まれる障害物の位置情報に着目して取得することができる。
これにより、制御部が複数の車両から取得する情報量を小さくして、複数の車両における、障害物の位置情報のリアルタイムでの共有化を効率化することができる。
更には、制御部は、予め情報量が限定されている規定領域の位置情報に、障害物の位置情報を関連付けて生成した関連付情報を、複数の車両に送信することから、複数の車両における、規定領域における障害物の位置情報のリアルタイムでの共有化に資する。
【0013】
また、本発明は、上記安全確認システムにおいて、前記関連付情報が、前記位置情報を二次元化したマップで示されることを特徴としてもよい。
【0014】
上記構成によれば、複数の車両は、障害物の位置情報が関連付けられた関連付情報に基づき、規定領域に対応する二次元化されたマップ上での障害物の位置情報をリアルタイムで共有し、車両の運転手や作業者が障害物の位置情報を把握し易くすることができる。
また、複数の車両に送信する関連付情報は、規定領域(限られた領域)に対応する二次元化されたマップ(表示態様として単純化されている)における障害物の位置情報として送信されることから、複数の車両に送信する情報量の規格を小さくして、複数の車両における、障害物の位置情報のリアルタイムでの共有化に資する。
【0015】
また、本発明は、上記安全確認システムにおいて、
前記処理部が、
更に、前記画像取得部により取得した前記画像及び前記位置情報取得部により取得した前記車両の位置情報に基づき、
前記制御部又は前記処理部は、前記規定領域の位置情報に、
前記障害物の位置情報に基づき作成された障害物領域、
前記障害物がない位置情報に基づき作成された安全領域、
前記障害物領域及び前記安全領域にも含まれない未確認領域
を少なくとも関連付けた前記関連付情報を生成することを特徴としてもよい。
【0016】
上記構成によれば、予め定められた規定領域内を、障害物の存在を報知する障害物領域と、障害物がなく車両の走行に支障がない安全領域と、障害物の有無が未確認の未確認領域に分類することができる。これにより、規定領域内を走行する複数の車両の走行支援を行い、安全性を高めることができる。
【0017】
また、本発明は、上記安全確認システムにおいて、
前記制御部が、
前記関連付情報に関連付けた前記障害物領域、前記安全領域、及び、前記未確認領域に応じて、前記複数の車両の走行速度制限を設定することを特徴としてもよい。
【0018】
上記構成によれば、例えば、障害物領域であれば、障害物に注意するように車両の走行速度を遅くするような制限をかけ、一方で、安全領域であれば、車両の走行速度に制限をかけないような設定をすることにより、規定領域内を走行する複数の車両の走行支援を行い、安全性を高めることができる。
【0019】
また、本発明は、上記安全確認システムにおいて、
前記制御部が、予め、前記規定領域の中で少なくとも前記障害物の位置情報との関連付けを不要とする不要位置情報を取得し、前記不要位置情報については前記規定領域の位置情報に関連付けないことを特徴としてもよい。
【0020】
上記構成によれば、予め、規定領域の位置情報において、障害物と関連付けない領域(不要位置情報)を設定することができる。これにより、車両の走行支援を不要とする領域については関連付を行わないことから、制御部での処理の迅速化を図ることができる。
【発明の効果】
【0021】
複数の車両が方向自由に走行可能な規定領域内での障害物等の情報を複数の車両で共有させる走行支援を行って安全性を高めつつ、情報処理の迅速化を図り、複数の車両での障害物等の情報のリアルタイムでの共有化を効率化することができる安全確認システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図2】本実施形態の安全確認システムの構成を示すブロック図である。
【
図3】本実施形態の安全確認システムの一連の処理動作を示す動作フローである。
【
図5】本実施形態の関連付マップの一部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係る安全確認システムの実施形態について、空港のエプロン1を例示して以下に説明する。
【0024】
(空港のエプロン1)
図1に示すように、空港のエプロン1(予め定められた規定領域に相当)にはターミナルビル2が設けられている。ターミナルビル2には、複数のゲート3が設けられており、着陸した航空機100は所定のゲート3まで移動して停止する。複数のゲート3には、ボーディングブリッジ4Eが接続されている。ボーディングブリッジ4Eは、ゲート3から航空機100に乗客及び乗員を乗降させるための設備である。ボーディングブリッジ4Eが利用できない場合には、パッセンジャーステップ4Fを利用することもある。空港のエプロン1において航空機100が駐機している間、乗客及び乗員の乗降、貨物及び手荷物の搬出入、燃料の補充、機内外の清掃、機体設備の点検、除氷作業、電源の供給等、各種作業(地上支援作業)が行われる。そして、地上支援作業が完了して準備が整うと、航空機100は、空港のエプロン1に併設された滑走路(不図示)から離陸する。
【0025】
地上支援作業では、複数のGSE4(車両)が使用される。GSEとは、Ground Support Equipmentの略であり、地上支援装置を意味し、空港のエプロン1内を方向自由に走行可能な車両として配備されている。GSE4には様々な種類があるが、一例を挙げると、航空機100に給油するための給油車4A、乗客の手荷物を機内に搬出入するベルトローダ4B、トーイングトラクタ4C、貨物を機内に搬出入するハイリフトローダ4D、上述したボーディングブリッジ4E、乗員及び乗客を機内に直接乗降させるためのパッセンジャーステップ4F、コンテナやパレットを載せるためのドーリ4G、航空機100を牽引する航空機牽引車4H等がある。航空機牽引車4Hは、例えば、航空機100の離陸時に作業エリア101(後述)において停止している航空機100を滑走路まで牽引する。また、トーイングトラクタ4Cは、一又は複数のドーリ4Gを牽引する。ドーリ4Gは、動力機構を持たないGSEである。給油車4A、ベルトローダ4B、トーイングトラクタ4C、ハイリフトローダ4D、パッセンジャーステップ4F、ドーリ4G、航空機牽引車4Hは、空港のエプロン1内を走行する作業車両である。なお、各GSE4は、自動運転を行うものでもよく、作業者によって手動で操作されるものでもよい。
【0026】
また、
図1に示すように、GSE4による地上支援作業は、作業エリア101で主に行われる。また、複数のGSE4は、所定の待機場所102で待機している。なお、各GSE4は、待機場所102ではなく不図示のメンテナンス場や駐機場で待機していてもよいし、他の作業エリアから直接作業エリア101に移動してもよい。
【0027】
(安全確認システム10)
本実施形態の安全確認システム10を
図2に示す。安全確認システム10は、複数のGSE4と、GSE管制11と、管理者端末12と、複数の作業者端末13とを含むコンピュータ制御システムとして構成されている。
【0028】
(GSE4)
複数のGSE4は、GPS41(Global Positioning System)(位置情報取得部に相当)、カメラ42(画像取得部に相当)、画像処理部431及び走行制御部432を含む制御部43(処理部に相当)、MAP記憶部44、通信部45、表示部46を有している。
なお、GSE4の種類によっては、これらGPS41等の機器の一部又は全部を備えていない場合もある。例えば、ドーリ4Gや、作業者が押して移動させるタイプのパッセンジャーステップ4Fなどのように動力機構を持たないGSE4の場合、GPS41等の機器の全部を搭載していない場合もある。
【0029】
GPS41は、GSE4に搭載されており、例えば、GPS信号を受信して自己のGSE4の位置情報を取得する。GSE4の位置情報は、GPS以外の測位方式(たとえばGNSSやカメラ42で取得した画像を利用した測位方法(Visual SLAM)など)を用いて取得してもよい。
【0030】
カメラ42は、映像を含む画像を取得可能な撮影機器であり、GSE4に取り付けられて、GSE4の前方や周辺を撮影可能としている。なお、カメラ42としてはステレオカメラであってもよいし、搭載されるカメラ42は、GSE4の周りに複数設けてもよい。
【0031】
制御部43は、画像処理部431による、カメラ42で撮影された画像に含まれる障害物9(航空機、他のGSE4、人等)の位置情報を算出、走行制御部432によるGSE4の走行制御、その他、GSE4の管理制御を行う。
【0032】
画像処理部431は、GSE4に搭載され、カメラ42により取得した画像データ及びGPS41により取得した自己のGSE4の位置情報に基づき、画像に含まれる障害物9の位置情報を算出する。
【0033】
本実施形態では、画像処理部431は、画像解析により、カメラ42によって撮影された画像に含まれる障害物9を認識し、認識した障害物9の、自車に対する相対的な位置情報を取得する。また、画像処理部431は、GPS41により、GSE4におけるカメラ42の取付位置も考慮した自己のGSE4の位置情報を取得する。そして、画像処理部431は、カメラ42によって撮影された画像に含まれる障害物9の自車に対する相対的な位置情報、及び、自己のGSE4の位置情報(方角や角度も含む)に基づき、カメラ42によって撮影された画像に含まれる障害物9の位置情報を算出する。同様に、カメラ42によって撮影された画像に含まれ、障害物9がない領域の位置情報を算出する(詳細は後述)。
【0034】
走行制御部432は、詳細は後述するが、GSE4の速度制限を設定したり、自律走行可能なGSE4であればGPS41で取得した自己のGSE4の位置情報に基づいて、自律走行制御を行ったりする。
【0035】
MAP記憶部44は、通信部45を介してGSE管制11から送られてきた、関連付マップ50´(関連付情報に相当)等を記憶する。
【0036】
通信部45は、GSE管制11、更には、他のGSE4、管理者端末12、作業者端末13、空港で管理される他の管理システム(不図示)と通信可能である。
【0037】
表示部46は、関連付マップ50´などGSE4の地上支援作業に必要な情報を表示するモニターである。
【0038】
(GSE管制11)
GSE管制11は、MAP作成部211及び報知部212を含む制御部21(制御部に相当)、通信部22を有している。GSE管制11は、通信部22を介して、複数のGSE4、管理者端末12、作業者端末13、更には、空港で管理される他の管理システム(不図示)と通信可能である。
【0039】
制御部21は、後述するMAP作成部211による関連付マップ50´の生成処理及び報知部212による報知処理、その他、GSE管制11の管理制御を行う。
【0040】
MAP作成部211は、後述する、安全領域51、障害物領域52、及び、未確認領域53が関連付けられた関連付マップ50´を逐次更新する(
図4参照)。
【0041】
報知部212は、空港のエプロン1で障害物9が認識された場合に、障害物9の周辺に存在するGSE4に対して、その障害物9の存在を報知する。報知部212は、例えば、GSE4等の表示部46に表示することで、又は、音声を発することで報知を行う。なお、報知部212は、本来その場所にあるはずのない障害物9(例えばコンテナなど)がある場合に、異常を管理者が携帯する管理者端末12や作業者が携帯する作業者端末13に報知してもよい。
【0042】
通信部22は、複数のGSE4、管理者端末12、作業者端末13、更には、空港で管理される他の管理システム(不図示)と通信可能である。
【0043】
(管理者端末12及び作業者端末13)
管理者端末12は、地上支援作業を行う複数のGSE4の総括管理を行う管理者が携帯する端末である。
作業者端末13は、航空機100の地上支援作業を行う作業者が携帯する端末である。
本実施形態では、GPSで現在地を特定可能であり、GSE管制11と通信可能なスマートフォンを用いている。
なお、管理者端末12及び作業者端末13は、管理者や作業者が各種情報を視認可能なディスプレイを備え、GSE管制11やGSE4等と通信可能であれば、どのような端末を用いてもよい(無線通信機、タブレット端末、スマートグラス、スマートウォッチなどのウェアラブル端末など)。
【0044】
(安全確認システムの処理動作)
次に、安全確認システム10による複数のGSE4の安全確認システムの処理動作を、
図3のチャートを参照しつつ以下に説明する。
【0045】
(1)GSE4では、GSE4に取り付けられたカメラ42が前方の画像を撮影し、撮影した画像データを画像処理部431に送信する。
【0046】
(2)また、GSE4では、GPS41により、(1)の処理でカメラ42が前方の画像を撮影した時点での、GSE4におけるカメラ42の取付位置も考慮した自己のGSE4の位置情報を取得する。そして、取得した自己のGSE4の位置情報を画像処理部431に送信する。
【0047】
(3)画像処理部431は、画像データに対する画像解析(物体検知アルゴリズムなど)により、カメラ42によって撮影された画像に含まれる障害物9を認識し、認識した障害物9の、自車に対する相対的な位置情報を取得する。そして、画像処理部431は、カメラ42によって撮影された画像に含まれる障害物9の自車に対する相対的な位置情報、及び、自己のGSE4の位置情報(方角や角度も含む)に基づき、カメラ42によって撮影された画像に含まれる障害物9の位置情報を算出する。
【0048】
更に、画像処理部431は、画像データに対する画像解析により、カメラ42によって撮影された画像に含まれ、障害物9がない領域(安全領域に相当)を認識し、認識した障害物9がない領域の、自車に対する相対的な位置情報を取得する。そして、画像処理部431は、カメラ42によって撮影された画像に含まれ、障害物9がない領域の自車に対する相対的な位置情報、及び、自己のGSE4の位置情報に基づき、カメラ42によって撮影された画像に含まれ、障害物9がない領域の位置情報を算出する。
【0049】
そして、制御部43は、通信部45を介して、GSE管制11に、上記画像処理部431により算出した、「カメラ42によって撮影された画像に含まれる障害物9の位置情報」及び「カメラ42によって撮影された画像に含まれ、障害物9がない領域の位置情報」を送信する。
【0050】
なお、この際、制御部43が、通信部45を介して、GSE管制11に送信する情報は、「カメラ42によって撮影された画像に含まれる障害物9の位置情報」及び「カメラ42によって撮影された画像に含まれ、障害物9がない領域の位置情報」に限らない。例えば、GSE4の識別情報(管理番号など)やGSE4の位置情報やGSE4に乗車している作業者の情報(社員番号など)を送信してもよい。ただし、画像データのように情報量が大きい情報をそのまま送信することは、GSE4及びGSE管制11において負荷がかかることから好ましくない。
【0051】
(4)MAP作成部211は、
図4に示されるような、記憶部(MAP作成部211に付属:不図示)に予め記憶させておいた、空港のエプロン1内の位置情報を二次元化した格子状の基本平面マップ50(規定領域の位置情報に相当)に対して、「カメラ42によって撮影された画像に含まれ、障害物9がない領域の位置情報」を安全領域51と規定して関連付け、また、「カメラ42によって撮影された画像に含まれる障害物9の位置情報」を障害物領域52と規定して関連付けた関連付マップ50´(関連付情報に相当)を生成する。
なお、基本平面マップ50の二次元化した格子状のマスの大きさは変更可能である。格子状のマスが小さければ、より精度が高くリアルタイム性に優れた関連付マップ50´を生成することができる。
また、基本平面マップ50の二次元化した格子状のマスに関連付ける、安全領域51及び障害物領域52の範囲は、カメラの画角(視野角)から範囲を決定しても良い。
【0052】
更に、MAP作成部211は、関連付マップ50´において、安全領域51又は障害物領域52にも含まれない領域を未確認領域53と規定して関連付ける。
【0053】
なお、MAP作成部211は、予め、基本平面マップ50の中で障害物9の位置情報との関連付けを不要とする不要位置情報を取得し、この不要位置情報については、関連付マップ50´を生成する際に、基本平面マップ50に安全領域51、障害物領域52、未確認領域53を関連付けないようにしてもよい。
例えば、不要位置情報として、ターミナルビル2や、予め進入が禁止されている航空機100の停止位置を設定した場合、基本平面マップ50に、ターミナルビル2の領域や、予め進入が禁止されている航空機100の停止位置の領域を予め表示し、安全領域51、障害物領域52、未確認領域53を関連付けないようにする。これにより、GSE4の走行支援を不要とする領域については安全領域51、障害物領域52、未確認領域53の関連付を行わないことから、制御部21での処理の迅速化を図ることができる。
【0054】
(5)制御部21は、通信部22を介して、空港のエプロン1等で地上支援作業をする複数のGSE4や管理者端末12や作業者端末13に、上記MAP作成部211で生成された、安全領域51、障害物領域52、及び、未確認領域53が関連付けられた関連付マップ50´を送信する。
【0055】
(6)GSE4は、通信部45を介して、MAP作成部211で生成された関連付マップ50´を受信して、MAP記憶部44に記憶し、記憶した関連付マップ50´を、表示部46にリアルタイムで表示する。
これにより、GSE4の運転手や作業者は、表示部46に表示された関連付マップ50´を確認することにより、障害物9の有無を判断して走行をすることができる。
【0056】
また、GSE4が自律走行可能なものであれば、走行制御部432が関連付マップ50´を参照して障害物9の有無を判断しつつ、走行補助或いは自律走行をさせてもよい。
具体的には、走行制御部432は、関連付マップ50´に関連付けられた、安全領域51、障害物領域52、及び、未確認領域53に応じて、各GSE4の走行速度を制限する。例えば、GSE4が、安全領域51に進入しようする際には最高速度を高速度に設定し、障害物領域52に進入しようする際には最高速度を低速度に設定し、未確認領域53に進入しようする際には最高速度を中速度に設定する。
これにより、空港のエプロン1内を走行する複数のGSE4の走行支援を行い、安全性を高めつつ、GSE4による地上支援作業の迅速化を図ることができる。
【0057】
上記のように(1)~(6)の処理を所定時間間隔で実行することにより、安全領域51、障害物領域52、及び、未確認領域53が関連付けられた関連付マップ50´を逐次更新して、各GSE4の表示部46や、管理者端末12及び作業者端末13のディスプレイに表示することができる。なお、(1)~(6)の処理の間隔は、便宜設定されるもので、間隔が短ければ、より精度が高くリアルタイム性に優れた関連付マップ50´を逐次更新することができる。
【0058】
(7)また、報知部212は、
図5に示すように、GSE4(4b)から「カメラ42によって撮影された画像に含まれる障害物9(例えば、人など)の位置情報」を受信したと判断した場合、その障害物9の位置情報、及び、各GSE4(4a、4c、4d等)から送信されてくる各GSE4の位置情報に基づき、その障害物9から所定距離範囲(予め任意に設定)に存在する、GSE4(4c)や管理者端末12や作業者端末13に対して、その障害物9の存在を報知する。この際、走行制御部432により、GSE4(4c)の最高速度を低速度に設定又は走行を停止させてもよい。
なお、報知部212が、GSE4から「カメラ42によって撮影された画像に含まれ、障害物9がない領域の位置情報」を受信したと判断した場合、障害物9がない領域の位置情報、及び、各GSE4から送信されてくる各GSE4の位置情報に基づき、障害物9がない領域から所定距離範囲に存在する、GSE4や管理者端末12や作業者端末13に対して、障害物9がない領域の存在(安全領域)を報知してもよい。この際、走行制御部432により、GSE4の最高速度を高速度に設定してもよい。
【0059】
(効果)
上記空港のエプロン1内のように、法律や規則などで、車両が走行してもよい範囲や時間帯、立ち入りが許可されている作業者等が予め定められた規定領域では、効率的に支援作業を行うために、許可登録等されたGSE4や作業者のみが空港のエプロン1内を走行(移動)可能とされている。
そこで、航空機100への支援作業を行う際には、ある程度決まった複数のGSE4が、同時間帯に空港のエプロン1内を走行することから、上記安全確認システム10を使用して、基本平面マップ50に、GSE4(4a)から取得した障害物9(GSE4(4b~4d)からは、死角になる障害物9)の位置情報を関連付けて生成した関連付マップ50´を、他の複数のGSE4(4b~4d)等に送信して、空港のエプロン1における障害物9の位置情報を複数のGSE4等において共有することにより、空港のエプロン1内を走行する複数のGSE4の走行支援を行い、安全性を高めることができる。
【0060】
また、制御部21(MAP作成部211)は、カメラ42により取得した画像及びGPS41により取得したGSE4の位置情報を直接取得するわけではなく、GSE4に搭載された制御部43の画像処理部431がカメラ42により取得した画像及びGPS41により取得したGSE4の位置情報に基づき算出した、画像に含まれる障害物9の位置情報に着目して取得することができる。
これにより、制御部21のMAP作成部211が複数のGSE4から取得する情報量を小さくして、複数のGSE4における、障害物9の位置情報のリアルタイムでの共有化を効率化することができる。
更には、制御部21は、予め情報量が限定されている空港のエプロン1内の位置情報を二次元化した格子状の基本平面マップ50に対して、障害物9の位置情報を関連付けて生成した関連付マップ50´を、複数のGSE4に送信することから、複数のGSE4が、空港のエプロン1内における障害物9の位置情報をリアルタイムで共有化することができる。
【0061】
また、上記構成によれば、複数のGSE4は、障害物9の位置情報が関連付けられた関連付マップ50´に基づき、空港のエプロン1に対応する二次元化された、関連付マップ50´上での障害物9の位置情報をリアルタイムで共有し、GSE4の運転手や作業者が障害物9の位置情報を把握し易くすることができる。
また、複数のGSE4に送信する関連付マップ50´は、空港のエプロン1(限られた領域)に対応する二次元化された基本平面マップ50(表示態様として単純化されている)における障害物9の位置情報として送信されることから、複数のGSE4に送信する情報量の規格を小さくして、複数のGSE4における、障害物9の位置情報のリアルタイムでの共有化を効率化することができる。
【0062】
また、上記構成によれば、空港のエプロン1(限られた領域)を、障害物9の存在を報知する障害物領域52と、障害物9がなくGSE4の走行に支障がない安全領域51と、障害物9の有無が未確認の未確認領域53に分類することができる。これにより、空港のエプロン1内を走行する複数のGSE4の走行支援を行い、安全性を高めることができる。
【0063】
(変形例)
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は、これらの例に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な変更が可能である。
【0064】
(A)上記実施形態では、GSE管制11の制御部21のMAP作成部211で関連付マップ50´を生成しているが、必ずしもGSE管制11(MAP作成部211)において関連付マップ50´を生成する必要はない。関連付マップ50´は、各GSE4の制御部43において生成されてもよい。
例えば、GSE管制11の制御部21では、各GSE4の画像処理部431が算出した、「カメラ42によって撮影された画像に含まれる障害物9の位置情報」及び「カメラ42によって撮影された画像に含まれ、障害物9がない領域の位置情報」を逐次受信し、受信した、「カメラ42によって撮影された画像に含まれる障害物9の位置情報」及び「カメラ42によって撮影された画像に含まれ、障害物9がない領域の位置情報」を、通信部22を介して、空港のエプロン1等で地上支援作業をする複数のGSE4や管理者端末12や作業者端末13に、逐次送信してもよい。
この場合、各GSE4の制御部43は、GSE管制11の制御部21から、各GSE4の各制御部43で算出された「カメラ42によって撮影された画像に含まれる障害物9の位置情報」及び「カメラ42によって撮影された画像に含まれ、障害物9がない領域の位置情報」を逐次受信した後、MAP記憶部44に予め記憶させておいた、空港のエプロン1内の位置情報を二次元化した格子状の基本平面マップ50に対して、「カメラ42によって撮影された画像に含まれ、障害物9がない領域の位置情報」を安全領域51と規定して関連付け、また、「カメラ42によって撮影された画像に含まれる障害物9の位置情報」を障害物領域52と規定して関連付けた関連付マップ50´(関連付情報に相当)を生成する。更に、制御部43は、関連付マップ50´において、安全領域51又は障害物領域52にも含まれない領域を未確認領域53と規定して関連付ける。
【0065】
(B)上記実施形態では、カメラ42と画像処理部431により、障害物9の、自車(GSE4)に対する相対的な位置情報を取得しているが、レーザーや可視光や超音波等を照射することやマイクによって障害物9の、自車(GSE4)に対する相対的な位置情報を取得してもよい。
レーザー等は直進性が高い光であるため、夜間の暗さや昼間の強い日差しがある場合、大雨や濃霧などの悪天候の場合等においても、分散しにくい。このため、障害物9の、自車(GSE4)に対する相対的な位置情報を精度よく検出することができる場合がある。
マイクでは、ステレオマイクを使用して、人の話し声や足音、GSE4のエンジン音や走行音やインバータの作業音を検出して、障害物9の、自車(GSE4)に対する相対的な位置情報を取得してもよい。
【0066】
(C)上記実施形態では、関連付マップ50´を送信するGSE4を特に限定していないが、関連付マップ50´は、空港のエプロン1の作業エリア101内に入ろうとしているGSE4、もしくは作業エリア101内にすでに存在しているGSE4に限定して送信してもよい。
【0067】
(D)上記安全確認システム10では、障害物9が、人(他のGSE4や動物)など移動するものであれば、カメラ42により所定時間間隔で撮影される連続画像から、その移動する人の移動速度を算出し、その移動速度に応じた危険度をレベル分け(レベルが高い程危険度が高い)して、各GSE4に報知してもよい。例えば、障害物9が人の場合、人が立っているだけであればレベル1、人が歩いている場合であればレベル2、人が走ってきた場合であればレベル3などレベル分けをして、その危険度をレベルに応じて各GSE4に報知する。また、障害物9がGSE4の場合、GSE4が止まっているだけであればレベル1、GSE4が徐行、航空機100とフィッティング中であればレベル2、GSE4が走行している場合はレベル3などレベル分けをして、その危険度をレベルに応じて各GSE4に報知する。
なお、GSE4に乗車している作業者の情報(社員番号など)から作業者の熟練度(経験年数など)を加味してレベルに反映させてもよい。例えば、経験年数が短い作業者がGSE4に乗車している場合は、危険度を示すレベルを1加算して各GSE4に報知してもよい。
また、GSE4の制御部43が、危険度のレベルが高い(例えばレベル3以上と設定)と判断した場合には、GSE管制11を経由せずに、周辺のGSE4に直接報知(通信、光(パッシング)、音(クラクション)など)してもよい。
【0068】
また、障害物9が、他のGSE4などであれば、カメラ42により所定時間間隔で撮影される連続画像から、その移動するGSE4の移動方向を算出し、その移動方向に係る関連付マップ50´の安全領域51又は未確認領域53を障害物領域52に変更してもよい。
なお、移動方向の算出には、画像処理部431による画像解析から、GSE4の挙動(バックランプの点灯やウインカーの点滅など)を加味して算出してもよい。
【0069】
(E)画像取得部としてのカメラ42は、空港に固定設置され、空港のエプロン1を俯瞰的に撮影してもよい。例えば、画像取得部としてのカメラ42は、管制塔やターミナルビル2に取り付けられる。これによれば、空港のエプロン1内を広範囲に定点撮影可能である。このため、俯瞰画像として、空港のエプロン1内にある複数のGSE4をまとめて撮影できる。また、画像取得部としてのカメラ42は、空港のエプロン1内を飛行するドローンに設置されたものでもよい。また、画像取得部としてのカメラ42は、GSE4、及び、管制塔の両方に取り付けられていてもよい。
【0070】
(F)上記実施形態では、制御部43が「カメラ42によって撮影された画像に含まれる障害物9の位置情報」としてGSE管制11に送信する場合について説明したが、自己のGSE4を障害物9と判定し、自己のGSE4の位置情報を障害物9の位置情報としてGSE管制11に送信してもよい。
この場合、GSE管制11のMAP作成部211は、各GSE4から送信されてきたGSE4の位置情報を障害物9の位置情報として扱うことにより、基本平面マップ50に対して、GSE4の位置情報を障害物領域52と規定して関連付マップ50´に関連付ける。これにより、関連付マップ50´のGSE4の周辺のマスは、障害物領域52として表示されることになる。
【符号の説明】
【0071】
1 空港のエプロン
10 安全確認システム
4 GSE
41 GPS
42 カメラ
43 制御部
431 画像処理部
432 走行制御部
44 MAP記憶部
45 通信部
46 表示部
11 GSE管制
21 制御部
211 MAP作成部
212 報知部
22 通信部
12 管理者端末
13 作業者端末
9 障害物
50 基本平面マップ
50´ 関連付マップ
51 安全領域
52 障害物領域
53 未確認領域
100 航空機