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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024124880
(43)【公開日】2024-09-13
(54)【発明の名称】締付バンド
(51)【国際特許分類】
   F16B 2/08 20060101AFI20240906BHJP
   F16L 33/025 20060101ALI20240906BHJP
【FI】
F16B2/08 R
F16L33/025
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023032839
(22)【出願日】2023-03-03
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-07-19
(71)【出願人】
【識別番号】390033709
【氏名又は名称】株式会社大洋発條製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100080746
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 武嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100217881
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 由美
(72)【発明者】
【氏名】橋本 大介
【テーマコード(参考)】
3H017
3J022
【Fターム(参考)】
3H017EA06
3J022EA42
3J022EB12
3J022EC17
3J022FB12
3J022GA03
3J022GA19
3J022GB45
3J022GB73
(57)【要約】
【課題】腐食環境下で使用しても応力腐食割れが生じにくく、安価な材料を使用することができる締付バンドを提供する。
【解決手段】円弧帯片状外端部1と円弧帯片状内端部2が重なり合った重なり部3を有し全体が閉円環状に形成され、かつ、縮径用塑性変形予定凸部4を有する締付バンドBである。重なり部3に於て、かしめ5をもって閉円環形状を保持する。かしめ5が、内端部2にラジアル外方へ突出状として形成された内円筒部6と、外端部1に形成された、内円筒部6に密接する外円筒部7とを、有するとともに、内円筒部6の外周の先端部位が外円筒部7の内周面に食込むラジアル外方膨出部を有する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円弧帯片状外端部(1)と円弧帯片状内端部(2)が重なり合った重なり部(3)を有し全体が閉円環状に形成され、かつ、縮径用塑性変形予定凸部(4)を有する締付バンド(B)であって、
上記重なり部(3)に於て、かしめ(5)をもって閉円環形状を保持し、
上記かしめ(5)が、上記内端部(2)にラジアル外方へ突出状として形成された内円筒部(6)と、上記外端部(1)に形成された、上記内円筒部(6)に密接する外円筒部(7)とを、有するとともに、上記内円筒部(6)の外周の先端部位が上記外円筒部(7)の内周面に食込むラジアル外方膨出部(G)を有することを特徴とする締付バンド。
【請求項2】
かしめ(5)の横断面の外径(D)と、バンド幅寸法(W)とを、 0.3・W≦D≦ 0.8・Wに設定した請求項1記載の締付バンド。
【請求項3】
上記重なり部(3)に於て、上記内端部(2)にラジアル外方突出状の位置決め用小突起(8)を設けるとともに、上記外端部(1)に上記位置決め用小突起(8)が嵌入係止可能な孔部(9)を形成した請求項1又は2記載の締付バンド。
【請求項4】
上記外端部(1)に、幅方向中央部がラジアル外方へ浮上がったブリッジ部(10)を有する気密用変形規制部(11)を形成し、
上記内端部(2)の先端に幅狭スライド部(12)を形成し、該幅狭スライド部(12)を、上記ブリッジ部(10)のラジアル方向内側に、ラジアル外方への変形を規制されつつスライド自在に構成するとともに、上記ブリッジ部(10)の両外側部(13)が相手部材(A)を締付けるように構成した請求項1又は2記載の締付バンド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、締付バンドに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば自動車用ブーツバンド等として用いられる締付バンドであって、バンドの一端と他端を重ねて環状とするとともに、バンドの内端部から起立させた引掛片を、ベルトの外端部に形成した孔部に引掛けて環状状態を保持する締付バンドが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11-37367号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1記載の締付バンドは、引掛部の断面積が小さく(板厚×幅寸法の約3分の1)、腐食環境下で使用すると引掛部周辺に応力腐食割れが生じやすい形状であって、高価な材料(例えばSUS304)を用いる必要がある。
【0005】
そこで、本発明は、腐食環境下で使用しても応力腐食割れが生じにくく、安価な材料を用いることができる締付バンドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る締付バンドは、円弧帯片状外端部と円弧帯片状内端部が重なり合った重なり部を有し全体が閉円環状に形成され、かつ、縮径用塑性変形予定凸部を有する締付バンドであって、上記重なり部に於て、かしめをもって閉円環形状を保持し、上記かしめが、上記内端部にラジアル外方へ突出状として形成された内円筒部と、上記外端部に形成された、上記内円筒部に密接する外円筒部とを、有するとともに、上記内円筒部の外周の先端部位が上記外円筒部の内周面に食込むラジアル外方膨出部を有するものである。
また、かしめの横断面の外径Dと、バンド幅寸法Wとを、 0.3・W≦D≦ 0.8・Wに設定したものである。
【0007】
また、上記重なり部に於て、上記内端部にラジアル外方突出状の位置決め用小突起を設けるとともに、上記外端部に上記位置決め用小突起が嵌入係止可能な孔部を形成したものである。
また、上記外端部に、幅方向中央部がラジアル外方へ浮上がったブリッジ部を有する気密用変形規制部を形成し、上記内端部の先端に幅狭スライド部を形成し、該幅狭スライド部を、上記ブリッジ部のラジアル方向内側に、ラジアル外方への変形を規制されつつスライド自在に構成するとともに、上記ブリッジ部の両外側部が相手部材を締付けるように構成したものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の締付バンドによれば、応力腐食割れが生じにくく、安価な材料を使用することができる。さらに、塑性変形予定凸部を、その後、縮径変形させる際に、かしめの部位の強度が極めて大で、かつ、安定しているために、迅速に(縮径変形の)作業を安定して行うことが、可能である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施の一形態を示す正面図である。
図2】要部拡大平面図である。
図3】断面正面図である。
図4】かしめの製法を示す断面図である。
図5】かしめの製法を示す断面図である。
図6】使用状態を示す断面正面図である。
図7】ラジアル内方側から見た説明図である。
図8】ラジアル内方側から見た説明図である。
図9】力の作用を示す要部拡大断面図である。
図10】剪断力がはたらく断面を示す説明図である。
図11】従来例を示す要部断面図である。
図12】従来例の剪断力がはたらく断面を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図示の実施の形態に基づいて本発明を詳説する。
図1図3は、本発明の実施の一形態を示す。
本発明の締付バンドBは、例えば、自動車用ブーツバンド(等速ジョイントブーツバンド、ステアリングブーツバンド等)として用いられる。円弧帯片状外端部1と円弧帯片状内端部2が重なり合った重なり部3を有し全体が閉円環状に形成され、かつ、縮径用塑性変形予定凸部4を有する。縮径用塑性変形予定凸部4は、断面山型であって、中央部に凹部14を有する。
【0011】
重なり部3に於て、かしめ5をもって閉円環形状が保持される。かしめ5が、内端部2にラジアル外方へ突出状として形成された内円筒部6と、外端部1に形成された、内円筒部6に密接する外円筒部7とを、有する。さらに、図5図9に示すように、かしめ5は、内円筒部6の外周の先端部位が外円筒部7の内周面に食込むラジアル外方膨出部Gを有する。
【0012】
図3図6に示すように、重なり部3に於て、内端部2にラジアル外方突出状の位置決め用小突起8が設けられるとともに、外端部1に位置決め用小突起8が嵌入係止可能な孔部9が形成される。
【0013】
図1図3図6に示すように、外端部1に、幅方向中央部がラジアル外方へ浮上がったブリッジ部10を有する気密用変形規制部11が形成される。図7図8に示すように、内端部2の先端に幅狭スライド部12を形成し、幅狭スライド部12を、ブリッジ部10のラジアル方向内側に、ラジアル外方への変形を規制されつつスライド自在に構成するとともに、ブリッジ部10の両外側部13が(断面円環状)相手部材A(図6参照)を締付けるように構成する。
【0014】
図10に示すように、かしめ5の横断面の外径Dと、バンド幅寸法Wとを、 0.3・W≦D≦ 0.8・Wに設定する。D< 0.3・Wの場合、かしめ5の強度が不足して、(腐食環境下で使用時に)応力腐食割れする虞れがある。また、 0.8・W<Dの場合、バンドBの強度が不足する。
【0015】
次に、かしめ5の製法について説明する。図4に示すように、バンドBの一端(外端部1)と他端(内端部2)を重ねて、小突起8(図2図3図6参照)を孔部9に嵌入させて位置決めしつつ、全体を環状とする。外端部1と内端部2とを重ね合わせた環状のバンドBのラジアル外側を押出しピンCを有する割型Eにて受けた状態から、図5に示すように、環状のバンドBのラジアル内側からラジアル外方へ向けてポンチPを押圧することにより、内円筒部6と、内円筒部6に密接する外円筒部7とを、形成しつつ、かしめ5が形成される。かしめ5を形成する際、内円筒部6の一部が、周方向に押出されて、内円筒部6のラジアル外方へ膨出した膨出部Gが形成される。その次に、割型Eを少し開放して、押出しピンCにて押上げて、製品(締付バンドB)を取出す。
【0016】
本発明の締付バンドBの使用方法について説明する。図3に示す締付バンドBを、相手部材A(図6参照)に外嵌し、図示省略の工具にて、縮径用塑性変形予定凸部4を矢印Y方向(略周方向)に押圧して塑性変形させて、図6に示すように、締付バンドBを縮径変形させる。
【0017】
締付バンドBの使用時にかかる応力状態について説明する。締付バンドBの使用時には、図9に示すように、締付バンドBの径が拡大する方向へ力Fが作用する。そして、かしめ5に於ては、図10に示す円環状断面に剪断応力が生ずる。従来は、図11に示すように、バンドB0 の内端部20の一部を起立させて引掛片21を形成し、バンドB0 の外端部22に形成した孔部23に、倒立L字状の引掛片21を引掛ける構成であった。そして、力Fが作用した際、図12に示す長方形断面に剪断応力が生じていた。図10図12に示すように、本発明の締付バンドBは、従来の締付バンドB0 より力Fが作用する断面積が大きく、所定部分にかかる剪断応力が、従来の剪断応力より小さくなる。
【0018】
締付バンドBの使用状態での変形について説明する。従来は、力Fが作用することによって、図11に仮想線で示した如く、引掛片21が孔部23から抜ける方向へ(矢印21Zの如く)大きく変形していた。これに対し、本発明のかしめ5に於ては、図9図10に示すように、断面が円環状で剛性が高く、変形が少ない。
【0019】
なお、小突起8と孔部9との組合せは、かしめ形成の際にバンドBの外端部1と内端部2の相対位置を位置決めするのみでなく、締付バンドBの使用時に工具にて縮径用塑性変形予定凸部4を押圧する際、バンドBの外端部1が内端部2から浮上がることを防止する。また、本発明の締付バンドBは、ブーツバンド以外の用途に用いても良い。
【0020】
本発明は、設計変更可能であって、例えば、小突起8と孔部9を、複数対設けるも良い。
【0021】
以上のように、本発明は、円弧帯片状外端部1と円弧帯片状内端部2が重なり合った重なり部3を有し全体が閉円環状に形成され、かつ、縮径用塑性変形予定凸部4を有する締付バンドBであって、上記重なり部3に於て、かしめ5をもって閉円環形状を保持し、上記かしめ5が、上記内端部2にラジアル外方へ突出状として形成された内円筒部6と、上記外端部1に形成された、上記内円筒部6に密接する外円筒部7とを、有するとともに、上記内円筒部6の外周の先端部位が上記外円筒部7の内周面に食込むラジアル外方膨出部Gを有するので、腐食環境下で使用しても応力腐食割れが生じにくく、安価な材料(例えばSUS430)を使用することができる。
【0022】
さらに、塑性変形予定凸部4を、その後、縮径変形させる際に、かしめの部位の強度が極めて大で、かつ、安定しているために、迅速に(縮径変形の)作業を安定して行うことが、可能である。かつ、ラジアル外方膨出部Gが存在しているので、大きな外力が作用しても、内円筒部6と外円筒部7が分離する虞れが無い。また、容易に製造することができるので、例えば、スポット溶接にて環状状態を保持する場合と比較すると、60%コストダウンすることができる。
【0023】
また、かしめ5の横断面の外径Dと、バンド幅寸法Wとを、 0.3・W≦D≦ 0.8・Wに設定したので、応力腐食割れが生じにくく、安価な材料を使用することができる。
【0024】
また、上記重なり部3に於て、上記内端部2にラジアル外方突出状の位置決め用小突起8を設けるとともに、上記外端部1に上記位置決め用小突起8が嵌入係止可能な孔部9を形成したので、容易に所定位置にかしめ5を形成することができる。
【0025】
また、上記外端部1に、幅方向中央部がラジアル外方へ浮上がったブリッジ部10を有する気密用変形規制部11を形成し、上記内端部2の先端に幅狭スライド部12を形成し、該幅狭スライド部12を、上記ブリッジ部10のラジアル方向内側に、ラジアル外方への変形を規制されつつスライド自在に構成するとともに、上記ブリッジ部10の両外側部13が相手部材Aを締付けるように構成したので、高い気密性を有する。
【符号の説明】
【0026】
1 (円弧帯片状)外端部
2 (円弧帯片状)内端部
3 重なり部
4 縮径用塑性変形予定凸部
5 かしめ
6 内円筒部
7 外円筒部
8 位置決め用小突起
9 孔部
10 ブリッジ部
11 気密用変形規制部
12 幅狭スライド部
13 両外側部
A 相手部材
B (締付)バンド
D 外径
G 膨出部
W バンド幅寸法
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
【手続補正書】
【提出日】2023-06-05
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円弧帯片状外端部(1)と円弧帯片状内端部(2)が重なり合った重なり部(3)を有し全体が閉円環状に形成され、かつ、縮径用塑性変形予定凸部(4)を有する締付バンド(B)であって、
上記重なり部(3)に於て、かしめ(5)をもって閉円環形状を保持し、
上記かしめ(5)が、上記内端部(2)にラジアル外方へ突出状として形成された内円筒部(6)と、上記外端部(1)に形成された、上記内円筒部(6)に密接する外円筒部(7)とを、有するとともに、上記内円筒部(6)の外周の先端部位が上記外円筒部(7)の内周面に食込むラジアル外方膨出部(G)を有し、
上記外端部(1)に、幅方向中央部がラジアル外方へ浮上がったブリッジ部(10)を有する気密用変形規制部(11)を形成し、
上記内端部(2)の先端に幅狭スライド部(12)を形成し、該幅狭スライド部(12)を、上記ブリッジ部(10)のラジアル方向内側に、ラジアル外方への変形を規制されつつスライド自在に構成するとともに、上記ブリッジ部(10)の両外側部(13)が相手部材(A)を締付けるように構成したことを特徴とする締付バンド。
【請求項2】
かしめ(5)の横断面の外径(D)と、バンド幅寸法(W)とを、 0.3・W≦D≦ 0.8・Wに設定した請求項1記載の締付バンド。
【請求項3】
上記重なり部(3)に於て、上記内端部(2)にラジアル外方突出状の位置決め用小突起(8)を設けるとともに、上記外端部(1)に上記位置決め用小突起(8)が嵌入係止可能な孔部(9)を形成した請求項1又は2記載の締付バンド。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、締付バンドに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば自動車用ブーツバンド等として用いられる締付バンドであって、バンドの一端と他端を重ねて環状とするとともに、バンドの内端部から起立させた引掛片を、ベルトの外端部に形成した孔部に引掛けて環状状態を保持する締付バンドが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11-37367号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1記載の締付バンドは、引掛部の断面積が小さく(板厚×幅寸法の約3分の1)、腐食環境下で使用すると引掛部周辺に応力腐食割れが生じやすい形状であって、高価な材料(例えばSUS304)を用いる必要がある。
【0005】
そこで、本発明は、腐食環境下で使用しても応力腐食割れが生じにくく、安価な材料を用いることができる締付バンドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る締付バンドは、円弧帯片状外端部と円弧帯片状内端部が重なり合った重なり部を有し全体が閉円環状に形成され、かつ、縮径用塑性変形予定凸部を有する締付バンドであって、上記重なり部に於て、かしめをもって閉円環形状を保持し、上記かしめが、上記内端部にラジアル外方へ突出状として形成された内円筒部と、上記外端部に形成された、上記内円筒部に密接する外円筒部とを、有するとともに、上記内円筒部の外周の先端部位が上記外円筒部の内周面に食込むラジアル外方膨出部を有し、上記外端部に、幅方向中央部がラジアル外方へ浮上がったブリッジ部を有する気密用変形規制部を形成し、上記内端部の先端に幅狭スライド部を形成し、該幅狭スライド部を、上記ブリッジ部のラジアル方向内側に、ラジアル外方への変形を規制されつつスライド自在に構成するとともに、上記ブリッジ部の両外側部が相手部材を締付けるように構成したものである。
また、かしめの横断面の外径Dと、バンド幅寸法Wとを、 0.3・W≦D≦ 0.8・Wに設定したものである。
【0007】
また、上記重なり部に於て、上記内端部にラジアル外方突出状の位置決め用小突起を設けるとともに、上記外端部に上記位置決め用小突起が嵌入係止可能な孔部を形成したものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の締付バンドによれば、応力腐食割れが生じにくく、安価な材料を使用することができる。さらに、塑性変形予定凸部を、その後、縮径変形させる際に、かしめの部位の強度が極めて大で、かつ、安定しているために、迅速に(縮径変形の)作業を安定して行うことが、可能である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施の一形態を示す正面図である。
図2】要部拡大平面図である。
図3】断面正面図である。
図4】かしめの製法を示す断面図である。
図5】かしめの製法を示す断面図である。
図6】使用状態を示す断面正面図である。
図7】ラジアル内方側から見た説明図である。
図8】ラジアル内方側から見た説明図である。
図9】力の作用を示す要部拡大断面図である。
図10】剪断力がはたらく断面を示す説明図である。
図11】従来例を示す要部断面図である。
図12】従来例の剪断力がはたらく断面を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図示の実施の形態に基づいて本発明を詳説する。
図1図3は、本発明の実施の一形態を示す。
本発明の締付バンドBは、例えば、自動車用ブーツバンド(等速ジョイントブーツバンド、ステアリングブーツバンド等)として用いられる。円弧帯片状外端部1と円弧帯片状内端部2が重なり合った重なり部3を有し全体が閉円環状に形成され、かつ、縮径用塑性変形予定凸部4を有する。縮径用塑性変形予定凸部4は、断面山型であって、中央部に凹部14を有する。
【0011】
重なり部3に於て、かしめ5をもって閉円環形状が保持される。かしめ5が、内端部2にラジアル外方へ突出状として形成された内円筒部6と、外端部1に形成された、内円筒部6に密接する外円筒部7とを、有する。さらに、図5図9に示すように、かしめ5は、内円筒部6の外周の先端部位が外円筒部7の内周面に食込むラジアル外方膨出部Gを有する。
【0012】
図3図6に示すように、重なり部3に於て、内端部2にラジアル外方突出状の位置決め用小突起8が設けられるとともに、外端部1に位置決め用小突起8が嵌入係止可能な孔部9が形成される。
【0013】
図1図3図6に示すように、外端部1に、幅方向中央部がラジアル外方へ浮上がったブリッジ部10を有する気密用変形規制部11が形成される。図7図8に示すように、内端部2の先端に幅狭スライド部12を形成し、幅狭スライド部12を、ブリッジ部10のラジアル方向内側に、ラジアル外方への変形を規制されつつスライド自在に構成するとともに、ブリッジ部10の両外側部13が(断面円環状)相手部材A(図6参照)を締付けるように構成する。
【0014】
図10に示すように、かしめ5の横断面の外径Dと、バンド幅寸法Wとを、 0.3・W≦D≦ 0.8・Wに設定する。D< 0.3・Wの場合、かしめ5の強度が不足して、(腐食環境下で使用時に)応力腐食割れする虞れがある。また、 0.8・W<Dの場合、バンドBの強度が不足する。
【0015】
次に、かしめ5の製法について説明する。図4に示すように、バンドBの一端(外端部1)と他端(内端部2)を重ねて、小突起8(図2図3図6参照)を孔部9に嵌入させて位置決めしつつ、全体を環状とする。外端部1と内端部2とを重ね合わせた環状のバンドBのラジアル外側を押出しピンCを有する割型Eにて受けた状態から、図5に示すように、環状のバンドBのラジアル内側からラジアル外方へ向けてポンチPを押圧することにより、内円筒部6と、内円筒部6に密接する外円筒部7とを、形成しつつ、かしめ5が形成される。かしめ5を形成する際、内円筒部6の一部が、周方向に押出されて、内円筒部6のラジアル外方へ膨出した膨出部Gが形成される。その次に、割型Eを少し開放して、押出しピンCにて押上げて、製品(締付バンドB)を取出す。
【0016】
本発明の締付バンドBの使用方法について説明する。図3に示す締付バンドBを、相手部材A(図6参照)に外嵌し、図示省略の工具にて、縮径用塑性変形予定凸部4を矢印Y方向(略周方向)に押圧して塑性変形させて、図6に示すように、締付バンドBを縮径変形させる。
【0017】
締付バンドBの使用時にかかる応力状態について説明する。締付バンドBの使用時には、図9に示すように、締付バンドBの径が拡大する方向へ力Fが作用する。そして、かしめ5に於ては、図10に示す円環状断面に剪断応力が生ずる。従来は、図11に示すように、バンドB0 の内端部20の一部を起立させて引掛片21を形成し、バンドB0 の外端部22に形成した孔部23に、倒立L字状の引掛片21を引掛ける構成であった。そして、力Fが作用した際、図12に示す長方形断面に剪断応力が生じていた。図10図12に示すように、本発明の締付バンドBは、従来の締付バンドB0 より力Fが作用する断面積が大きく、所定部分にかかる剪断応力が、従来の剪断応力より小さくなる。
【0018】
締付バンドBの使用状態での変形について説明する。従来は、力Fが作用することによって、図11に仮想線で示した如く、引掛片21が孔部23から抜ける方向へ(矢印21Zの如く)大きく変形していた。これに対し、本発明のかしめ5に於ては、図9図10に示すように、断面が円環状で剛性が高く、変形が少ない。
【0019】
なお、小突起8と孔部9との組合せは、かしめ形成の際にバンドBの外端部1と内端部2の相対位置を位置決めするのみでなく、締付バンドBの使用時に工具にて縮径用塑性変形予定凸部4を押圧する際、バンドBの外端部1が内端部2から浮上がることを防止する。また、本発明の締付バンドBは、ブーツバンド以外の用途に用いても良い。
【0020】
本発明は、設計変更可能であって、例えば、小突起8と孔部9を、複数対設けるも良い。
【0021】
以上のように、本発明は、円弧帯片状外端部1と円弧帯片状内端部2が重なり合った重なり部3を有し全体が閉円環状に形成され、かつ、縮径用塑性変形予定凸部4を有する締付バンドBであって、上記重なり部3に於て、かしめ5をもって閉円環形状を保持し、上記かしめ5が、上記内端部2にラジアル外方へ突出状として形成された内円筒部6と、上記外端部1に形成された、上記内円筒部6に密接する外円筒部7とを、有するとともに、上記内円筒部6の外周の先端部位が上記外円筒部7の内周面に食込むラジアル外方膨出部Gを有するので、腐食環境下で使用しても応力腐食割れが生じにくく、安価な材料(例えばSUS430)を使用することができる。
【0022】
さらに、塑性変形予定凸部4を、その後、縮径変形させる際に、かしめの部位の強度が極めて大で、かつ、安定しているために、迅速に(縮径変形の)作業を安定して行うことが、可能である。かつ、ラジアル外方膨出部Gが存在しているので、大きな外力が作用しても、内円筒部6と外円筒部7が分離する虞れが無い。また、容易に製造することができるので、例えば、スポット溶接にて環状状態を保持する場合と比較すると、60%コストダウンすることができる。
【0023】
また、かしめ5の横断面の外径Dと、バンド幅寸法Wとを、 0.3・W≦D≦ 0.8・Wに設定したので、応力腐食割れが生じにくく、安価な材料を使用することができる。
【0024】
また、上記重なり部3に於て、上記内端部2にラジアル外方突出状の位置決め用小突起8を設けるとともに、上記外端部1に上記位置決め用小突起8が嵌入係止可能な孔部9を形成したので、容易に所定位置にかしめ5を形成することができる。
【0025】
また、上記外端部1に、幅方向中央部がラジアル外方へ浮上がったブリッジ部10を有する気密用変形規制部11を形成し、上記内端部2の先端に幅狭スライド部12を形成し、該幅狭スライド部12を、上記ブリッジ部10のラジアル方向内側に、ラジアル外方への変形を規制されつつスライド自在に構成するとともに、上記ブリッジ部10の両外側部13が相手部材Aを締付けるように構成したので、高い気密性を有する。
【符号の説明】
【0026】
1 (円弧帯片状)外端部
2 (円弧帯片状)内端部
3 重なり部
4 縮径用塑性変形予定凸部
5 かしめ
6 内円筒部
7 外円筒部
8 位置決め用小突起
9 孔部
10 ブリッジ部
11 気密用変形規制部
12 幅狭スライド部
13 両外側部
A 相手部材
B (締付)バンド
D 外径
G 膨出部
W バンド幅寸法