(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024124882
(43)【公開日】2024-09-13
(54)【発明の名称】座席用パーティション及び座席
(51)【国際特許分類】
B60N 3/00 20060101AFI20240906BHJP
B60N 2/90 20180101ALI20240906BHJP
【FI】
B60N3/00 Z
B60N2/90
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023032845
(22)【出願日】2023-03-03
(71)【出願人】
【識別番号】390021577
【氏名又は名称】東海旅客鉄道株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】309034490
【氏名又は名称】天龍工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096116
【弁理士】
【氏名又は名称】松原 等
(72)【発明者】
【氏名】横山 晃治
(72)【発明者】
【氏名】▲伊▼東 隼
(72)【発明者】
【氏名】西田 万里子
(72)【発明者】
【氏名】後藤 謙一
(72)【発明者】
【氏名】小池 和弘
【テーマコード(参考)】
3B087
3B088
【Fターム(参考)】
3B087DE10
3B088CA02
3B088CA03
3B088CA15
(57)【要約】
【課題】座席に取り付けたときには、仕切板が外力により位置ずれすることなく空間を左右に隔てることができ、座席から取り外したときには、着座機能を復旧できるようにする。
【解決手段】座席の座枠に取り付けられる座クッションに代えて該座枠に着脱可能に取り付けられる台座と、該台座に着脱可能に立設される仕切板とを含む。台座は、面ファスナーにより座枠に取り付けられることが好ましい。台座にその後面よりも後方へ突出する突出部材が設けられ、該突出部材が座席の背もたれの下に差し込まれることが好ましい。台座に周縁付きのテーブル又はドリンクホルダーが形成されることが好ましい。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
座席の座枠に取り付けられる座クッションに代えて該座枠に着脱可能に取り付けられる台座と、該台座に着脱可能に立設される仕切板とを含む座席用パーティション。
【請求項2】
台座は、面ファスナーにより座枠に取り付けられる請求項1記載の座席用パーティション。
【請求項3】
台座の背もたれ方向に突出部材が設けられ、該突出部材が座席の背もたれの下に差し込まれる請求項1又は2記載の座席用パーティション。
【請求項4】
台座の左右幅は座クッションの左右幅と同等であり、台座の厚みは座クッションの厚み以上である請求項1又は2記載の座席用パーティション。
【請求項5】
台座の上面に、周縁付きのテーブルが形成された請求項1記載の座席用パーティション。
【請求項6】
台座にその上面から窪んだドリンクホルダーが形成された請求項1又は5記載の座席用パーティション。
【請求項7】
ドリンクホルダーは台座の前端近傍に形成され、ドリンクホルダーの周壁のうち前側の一部が深さ方向に切り欠かれ、前方への開口部となっている請求項6記載の座席用パーティション。
【請求項8】
仕切板の下辺部が台座に形成されたスリットに差し込まれるとともに、下辺部に形成された係合溝に対し、台座に設けられた係合突起が係合することにより、仕切板の下端側が台座に着脱可能に固定される請求項1記載の座席用パーティション。
【請求項9】
仕切板の上端部は、背もたれの上端部を表裏両方から挟み込むブラケットにより、背もたれに着脱可能に固定される請求項1又は8記載の座席用パーティション。
【請求項10】
三人掛け座席における中間の座席の座枠に取り付けられる座クッションに代えて該座枠に台座が着脱可能に取り付けられ、該台座の左右方向中央部に空間を左右に仕切る仕切板が立設された座席。
【請求項11】
仕切板は、台座に着脱可能に立設された請求項10記載の座席。
【請求項12】
三人掛け座席は、中間の座席に位置する垂直軸の周りに回転可能である請求項10又は11記載の座席。
【請求項13】
複数の三人掛け座席が前後に相互間隔をおいて配置され、それぞれの中間の座席に背もたれのリクライニング機能を不能化又は角度抑制する手段が設けられた請求項10又は11記載の座席。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、座席用パーティション及び座席に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、ウィルス等の感染を予防する対策が重要となっている。次に列挙するように、多数の座席を使用する乗物、ホール、屋外等においては、いくつかの対策が取られている。具体的には、新幹線の座席のようにそれぞれ独立したリクライニング式座席を横に複数列並べた座席では、着座者間に仕切板を設けることが既に知られている。しかしながら、いずれの対策も何らかの課題を伴う。
【0003】
(1)隣接する背もたれ間の隙間へ薄い仕切板を挟み込むもの(特許文献1)
・仕切板の固定を摩擦のみに頼らず、例えば背もたれの立体形状にあわせたスペーサを背もたれとの間に挟み、ベルトで固定した場合であっても、振動等によりベルトの緩みが発生し、スペーサ位置がずれる場合があり、仕切板の位置がずれやすい。また、着座時に頭部が固定ベルトに当たるため、快適性に課題がある。
・乗客の出入り等に伴い仕切板の横方向に外力が加わると、仕切板の向きが変わってしまう場合がある。対策として、仮に仕切板を縦長とし、下端を座面のクッション間の隙間へ差し込む場合、仕切板を挟んで一方のまたは両側の座席のリクライニング機能が低下する。
【0004】
(2)隣接する背もたれの境界部に着脱可能な挟み込み部で仕切板を取り付けるもの(特許文献2)
・挟み込み部における挟み込み力が弱い場合、上記(1)と同様に、仕切板の横方向の外力により、仕切板の向きが変わってしまいやすい。
【0005】
(3)ひじ掛から上方に設けた柱に仕切板を固定するもの(特許文献3)
仕切板としては、扇子のような展開・収納式のものや、軽量な段ボール紙を用いたものがある。
・身体・荷物の接触及び振動等により、仕切板の左右方向または回転軸方向に向きが変わってしまう場合がある。強固に固定する場合は、工具が必要となり、ひじ掛を破損させる恐れがある。
・ひじ掛自体が可動式の場合、ひじ掛を固定する構造が必要となる。また大きな荷重に耐えられるように作られていないことが多く、仕切板の最大重量も限られる。
【0006】
(4)座席間の隙間に立てた縦棒・横棒から、のぼり旗状にシート等を吊るもの(特許文献4)
・固定方法次第であるが、縦棒が回転軸に対して回転し、向きが変わる場合がある。
・縦棒の強固な固定に専用の治具や工具が必要になり、意匠性やリクライニング機能との両立に課題がある。
・空調や歩行者が起こす風等につれてシート等が揺らぎ、高級感の演出が困難である。
【0007】
(5)台座上や着座者の頭部周りに断面コの字状の簡易衝立を立てるもの(特許文献5)
・ノートパソコンの画面の覗き見防止となり、プライバシー保護機能を有するが、狭いため圧迫感がある。また飲物等を置く場所の確保も難しくなる。
【0008】
(6)座席間の隙間へ床面から垂直板を立てるもの(特許文献6)
・機動的な設置・撤去が困難である。
・座席の回転が物理的にできなくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2022-63184号公報
【特許文献2】実用新案登録第3228466号公報
【特許文献3】特許第6875769号公報
【特許文献4】実用新案登録第3229398号公報
【特許文献5】特開2022-26598号公報
【特許文献6】特開2022-92705号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで、本発明が解決しようとする主たる課題は、座席に仕切板を取り付けた際は、外力により仕切板の取付位置及び向きが変わることなく空間を左右に隔てることができ、座席から仕切板を取り外した際は、座席としての着座機能を有することができるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題を解決すべく検討を重ね、座席の座枠に取り付けられる座クッションに代えて該座枠に座席用パーティションを取り付け、空間を左右に隔てるという発想の飛躍のもと、本発明に至った。
【0012】
[1]座席の座枠に取り付けられる座クッションに代えて該座枠に着脱可能に取り付けられる台座と、該台座に着脱可能に立設される仕切板とを含む座席用パーティション。
【0013】
[2]台座は、面ファスナーにより座枠に取り付けられる[1]記載の座席用パーティション。
【0014】
[3]台座の背もたれ方向に突出部材が設けられ、該突出部材が座席の背もたれの下に差し込まれる[1]又は[2]記載の座席用パーティション。
【0015】
[4]台座の左右幅は座クッションの左右幅と同等であり、台座の厚みは座クッションの厚み以上である[1]、[2]又は[3]記載の座席用パーティション。
【0016】
[5]台座の上面に、周縁付きのテーブルが形成された[1]~[4]のいずれか一項に記載の座席用パーティション。
【0017】
[6]台座にその上面から窪んだドリンクホルダーが形成された[1]~[5]のいずれか一項に記載の座席用パーティション。
【0018】
[7]ドリンクホルダーは台座の前端近傍に形成され、ドリンクホルダーの周壁のうち前側の一部が深さ方向に切り欠かれ、前方への開口部となっている[6]記載の座席用パーティション。
【0019】
[8]仕切板の下辺部が台座に形成されたスリットに差し込まれるとともに、下辺部に形成された係合溝に対し、台座に設けられた係合突起が係合することにより、仕切板の下端側が台座に着脱可能に固定される[1]~[7]のいずれか一項に記載の座席用パーティション。
【0020】
[9]仕切板の上端部は、背もたれの上端部を表裏両方から挟み込むブラケットにより、背もたれに着脱可能に固定される[1]~[8]のいずれか一項に記載の座席用パーティション。
【0021】
[10]三人掛け座席における中間の座席の座枠に、座クッションに代えて台座が着脱可能に取り付けられ、該台座の左右方向中央部に空間を左右に仕切る仕切板が立設された座席。
【0022】
[11]仕切板は、台座に着脱可能に立設された[10]記載の座席。
【0023】
[12]三人掛け座席は、中間の座席に位置する垂直軸の周りに回転可能である[10]又は[11]記載の座席。
【0024】
[13]複数の三人掛け座席が前後に相互間隔をおいて配置され、それぞれの中間の座席に背もたれのリクライニング機能を不能化又は角度抑制する手段が設けられた[10]、[11]又は[12]記載の座席。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、座席に仕切板を取り付けた際は、外力により仕切板の取付位置及び向きが変わることなく空間を左右に隔てることができ、座席から仕切板を取り外した際は、着座機能を有することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】
図1は実施例の座席用パーティションを取り付けた乗物用座席の斜視図である。
【
図2】
図2は同パーティションを取り付ける前の乗物用座席の斜視図である。
【
図3】
図3は同乗物用座席の中央の座席の座クッションを取り外したときの斜視図である。
【
図4】
図4は同パーティションの台座を示し、(a)は前側から見た斜視図、(b)は後側から見た斜視図、(c)は座枠に取り付けた時の側面図である。
【
図5】
図5は同台座を座枠に取り付けたときの斜視図である。
【
図6】
図6は仕切板の下端側を同台座に固定する過程を説明する、(a)は斜視図、(b)は側面図である。
【
図7】
図7は仕切板の下端部を取り付けたときの斜視図である。
【
図8】
図8は仕切板の上端側を背もたれに固定する過程を説明する、(a)は固定前の斜視図、(b)は固定前の側面図、(c)は固定後の斜視図である。
【
図9】
図9は同仕切板と前席との関係を示し、(a)は回転する前席のひじ掛の後部が同仕切板に接近するときの平面図、(b)は回転する前席のひじ掛の前部が同仕切板に接近するときの平面図、(c)は前席のリクライニングした背もたれと同仕切板との位置関係接を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
1.座席
座席は、一人掛け座席でもよいが、複数人掛け座席が好ましく、3人以上の奇数人掛け座席が最も好ましい。3人掛け座席の場合、その中間の座席にパーティションを設けることが好ましい。4人以上の複数人掛け座席の場合、1つおきの座席にパーティションを設けることが好ましい。複数人掛け座席は、座枠に複数の独立した座クッションを取り付けた連結型、及び座枠に連続した複数人分の座クッションを取り付けたベンチ型のいずれでもよい。
【0028】
座席の用途としては、特に限定されないが、乗物用座席(鉄道車両等の軌道走行車両、バス、航空機、船舶等の座席)、ホール用座席(劇場、屋内演奏場、映画館、集会場等の座席)、屋外用座席(競技場、屋外演奏場等の座席)を例示できる。
【0029】
2.座席用パーティション
座席用パーティションは、少なくとも台座と仕切板を含むが、さらに他の部材を含んでもよい。
【0030】
パーティションの材料は、特に限定されないが、軽量で好ましいものとして樹脂、厚紙、布等を例示できる。
【0031】
台座の前面は、座枠の前側を覆い隠すように下方へ延ばされた延長面となっていることが好ましい。
台座の前面の前後位置は、座クッションの前面の前後位置と合致する又は座クッションの前面位置より後ろにあることが好ましい。
台座は、樹脂による中空構造体を本体としていることが好ましい。
【0032】
背もたれの上部に既設の頭部リネン取付用の面ファスナーを利用して、ブラケットを背もたれに係着することが好ましい。
【0033】
仕切板の後辺は、背もたれの前面の湾曲に沿うように湾曲していることが好ましい。
仕切板の前辺は、台座の前面よりも前にはみ出さないことが好ましい。
仕切板の前辺は、背もたれ側へ傾斜していることが好ましい。
仕切板は、樹脂による中空構造体を本体としていることが好ましい。
仕切板は、不透明、透明又は半透明のいずれであってもよい。
【実施例0034】
次に、本発明を具体化した実施例について、
図1~
図9を参照して説明する。但し、本発明は実施例に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で各部の構成や形状を任意に変更して実施することもできる。
【0035】
パーティションの取付先は乗物用座席1であり、
図2及び
図3に示すように、中間及びその両隣の計3つの座席2を結合した三人掛け座席である。三人掛け座席は、中間の座席2に位置する回転軸(図示略)の周りに回転可能である。そして、複数の三人掛け座席が前後に相互間隔をおいて配置されている。
【0036】
各座席2は座部3と背もたれ8とを含み、各座席2の両脇にひじ掛9を備える。
座部3は座枠4と座クッション5とからなる。座枠4の展張シート6の上面に取り付けられた面ファスナー7の一方と、座クッション5の下面に取り付けられた面ファスナー7の他方(図示略)との係着により、座クッション5は座枠4に着脱可能に取り付けられている。
背もたれ8はヘッドレストを含むものである。背もたれ8はリクライニング機能を備えている。
【0037】
本実施例の座席用パーティション10は、
図1に示すように、中間の座席2の座枠4に座クッション5に代えて着脱可能に取り付けられる台座20と、該台座20に着脱可能に立設される仕切板11とを含む。
【0038】
(台座20)
台座20は、
図4、
図5等に示すように、平面視で座クッション5と略同一の左右幅を有し、正面視で座クッション5と略同一又はやや大きい厚みを有する、樹脂による中空構造体を本体としている。樹脂による中空構造体であることにより、軽量化ひいては設置・撤去のしやすさ、清掃のしやすさに優れる。
【0039】
台座20の左右幅は、もともとの座クッション5の左右幅と同等である。台座20の厚みは、もともとの座クッション5の厚み以上である。これらにより、台座20の両側面が両隣の座クッション5により挟まれ、左右方向にずれ動きにくくなる。また、美観上の統一感も演出可能となる。
【0040】
台座20の下面に取着された面ファスナー7の他方と、前記座枠4側に取着された面ファスナー7の一方との係着により、台座20は座枠4に着脱可能に取り付けられている。前記のとおり、座クッション5は座枠4へ面ファスナー7で取り付け、交換作業性を向上させている。そこで、本構造を流用すべく、台座20の下面へ面ファスナー7の他方を設け、座クッション5を置き換えるように台座20を座枠4へ固定する。これにより、工具や治具なしに容易に台座20を設置・撤去できる。
【0041】
台座20の後面は、背もたれ8にほぼ密着させて取り付けられるため、後掲の小物類が台座20から後ろに落ちにくい。
また、
図4(b)(c)に示すように、台座20にその後面よりも後方へ突出する金属製の突出部材21が設けられ、該突出部材21を背もたれ8の下端の下に差し込んで滑り込ませる。この突出部材21の差し込みにより、台座20の前後移動および上方への浮き上がりを抑制し、さらには後掲の小物類が台座20から転がり出たとしても背もたれ8の間へ深く落ちないようにすることが可能である。
【0042】
(台座20の付加機能部)
台座20の上面(後述する差込口26の左右側)には、水平にしつつ浅く(例えば1~15mm)窪ませることにより四周縁付きのテーブル22が形成されている。スマートフォン、ノートパソコン、本などの小物類をテーブル22の上に置くことができ、またそれらが滑り落ちない。このように台座20がテーブル22を兼用するため利便性が確保される。
【0043】
台座20の一部(後述する差込口26の左右側)には、円形に深く窪んだドリンクホルダー23が形成されている。飲み物等が倒れないようにドリンクホルダー23に保持させることができる。ドリンクホルダー23の直径は、例えば車内販売の紙コップ等を納めることができる程度とし、ドリンクホルダー23の深さは、該紙コップを取り出しやすいよう紙コップ上部までは埋まらない程度とする。このように台座20がドリンクホルダー23を兼用するため利便性が確保されている。
【0044】
また、ドリンクホルダー23は台座20の前端近傍に形成され、ドリンクホルダー23の周壁のうち前側の一部が深さ方向に切り欠かれて前方への開口部24となっている。この開口部24があることで、ドリンクホルダー23の底の清掃作業性が容易となる。
【0045】
台座20の前面(前側の側面)は、座枠4の前側を覆って隠すように下方へ延ばされた延長面25となっている。この延長面25により、前記開口部24からこぼれた水分等が座枠4の中へ入り込むことを防止し、また、両隣の座クッション5と形状が合うことで統一感を演出することが可能となる。
【0046】
台座20の前面の前後位置は、座クッション5の前面の前後位置と合致する又は座クッション5の前面より後方(20mm以内が好ましい)にある。このように、台座20の前面の前後位置が調整されていることにより、
図8(a)(b)に示すように、前方の乗物用座席1を回転させた際に該乗物用座席1の一部(例えばひじ掛9)が、台座20に干渉することがない。また、窓際座席への出入性等、平素のサービス品質を落とさずに、ビジネス利用時のニーズ及びプライバシー確保、ならびに他人と一定距離を空けたい社会心理に沿うことができる。また、工具や熟練を要さずに容易に設置・搬出入が可能であり、ご利用状況に応じて柔軟に設置・撤去できる。
【0047】
(仕切板11)
仕切板11は、板厚方向が左右幅方向となるように立てて配される樹脂による中空構造板である。樹脂による中空構造板であることにより、軽量化ひいては設置・撤去のしやすさ、清掃のしやすさに優れる。
【0048】
(仕切板11の下端側の固定)
仕切板11の下端側は、
図6、
図7等に示すように、次のようにして台座20に着脱可能に固定されている。
仕切板11の下端側には前後に延びる下辺部12が設けられ、下辺部12の左側面には、下方へ開口した縦溝と該縦溝の上端から前方へ水平に延びる横溝とからなる側面視逆L型の係合溝13が2つ相互に間隔をおいて形成され、下辺部12の右側面には、該係合溝13が1つ形成されている。係合溝13は、仕切板11(特に下辺部12)が真空成形された中空構造板である場合に形成しやすい。
台座20の本体の幅方向中央には、前後に延びる差込口26が形成されている。台座20は本体の内部に金属製の固定用フレーム30を含む(
図6(a)では枠外で固定用フレーム30の詳細を示している)。固定用フレーム30には、前記差込口26の直下で前後に延びるスリット31が形成されるとともに、スリット31の左内側面には、スリット31の幅途中まで突出した係合突起32が2つ相互に間隔をおいて設けられ、スリット31の右内側面には、該係合突起32が1つ設けられている。
そして、下辺部12を上から差込口26を経てスリット31に差し込み、その際に係合溝13の縦溝に係合突起32を通し、続いて下辺部12を後方へスライド移動させ、係合溝13の横溝をスライドさせてその奥に係合突起32をはめこむことにより、仕切板11の下端側が台座20に固定される。この固定は工具なしに容易に行うことができる。この固定構造により、身体・荷物の接触や振動等によって仕切板11の上方向への抜け及び、左右方向への位置ずれを防止することができる。
【0049】
下辺部12の一部(例えば係合溝13の縦溝の直上)に左右に突出する凸部14が設けられ、差込口26の一部に前記凸部14に対応する凹部27が設けられている。前記スライドを許容するように、凹部27は凸部14よりも前後に長く設けられている。これにより、下辺部12を差込口26を差し込む際の、係合溝13の縦溝と係合突起32との合致位置を分かりやすくすることができる。なお、下辺部12と差込口26とは、前後にわたり均一の幅でもよい。
【0050】
(仕切板11の上端側の固定)
仕切板11の上端側は、
図8等に示すように、次のようにしてブラケット40により背もたれ8に着脱可能に固定されている。
仕切板11の上端後部には、前側よりも後側が拡幅した形状の被係止部15が設けられている。
ブラケット40は、金属板又は樹脂板で側面視逆U字状に形成されており、背もたれ8の上端部を表裏両方から挟み込む構造である。ブラケット40の前壁には、正面視逆U字状で前側よりも後側が拡幅した形状の係止部41が設けられており、係止部41は被係止部15が抜けないように係止する形状となっている。
ブラケット40で背もたれ8の上端部を挟み込むとともに、係止部41で被係止部15を係止することにより、ブラケット40の前後方向、左右方向及び上方向のずれを防止し、仕切板11の上端側が背もたれ8に固定される。この固定により、身体・荷物の接触や振動等によって仕切板11の上端側が前後方向及び左右方向にずれることを防止することができる。
【0051】
また、
図8(c)に示すように、背もたれ8の背面の上部に、頭部リネン取り付け用の面ファスナー42の一方が設けられている場合には、この既存の面ファスナー42を活用して、ブラケット40の後壁の内面に設けた面ファスナー42の他方と係着させることにより、ブラケット40の固定力をより高めることができる。
【0052】
こうして仕切板11の下端側と上端側とを簡易かつ確実に固定することができる(左右方向に300Nの静荷重試験済)。
【0053】
(仕切板11の形状等)
仕切板11の後辺は、背もたれ8の前面の湾曲に沿うように湾曲しているので、背もたれ8の前面との間に隙間が生じにくい。
【0054】
仕切板11の前辺は、台座20の前面よりも前にはみ出さない形状となっている。これにより、
図9(a)(b)に示すように、前方の乗物用座席1を回転させた際に該乗物用座席1の一部(例えばひじ掛9)が、仕切板11に干渉することがない。
【0055】
仕切板11の前辺は、後方へ傾斜している。これにより、
図9(c)に示すように、前方の乗物用座席1の背もたれがリクライニングした際においても、背もたれの背面と仕切板11の前辺との間隔を確保でき、また、背もたれの背面と仕切板11の前辺とが平行に近い関係となるため通過しやすい空間ができ、座席への出入性が確保される。
【0056】
その他、仕切板11の形状・寸法は、背面台座上へノートパソコンを置いた際、隣からの視線の自然な遮断を実現できることが好ましい。以上のように、窓際座席への出入性等、平素のサービス品質を落とさずに、ビジネス利用時のニーズ及びプライバシー確保、ならびに他人と一定距離を空けたい社会心理に沿うことができる。
【0057】
(仕切板の透明性)
仕切板が不透明である場合、外部の光及び視線を完全に遮ることが可能である。
仕切板が透明である場合、圧迫感を軽減することが可能である。
仕切板が半透明である場合、圧迫感を軽減しつつ視線を適度に遮り、窓からの外光があれば柔らかく散乱させて室内を明るくする一助ともなる。
【0058】
(背もたれの工夫)
中間の座席2の背もたれのリクライニング機構に機械的なロックをかける部品(図示略)を付加する。これにより、パーティション板と台座を設置済みの中間席にて、いたずらで、また悪意なく背もたれを倒そうとしてそれらの破損等を防止することができる。
【0059】
以上のように構成された実施例の座席用パーティション10を乗物用座席1に取り付けるには、次の手順により行う。
(1)
図2及び
図3に示すように、乗物用座席1の中間の座席2の座クッション5を、面ファスナー7を引き剥がして、座枠4から取り外す。
(2)
図4及び
図5に示すように、台座20を、面ファスナー7により、該座枠4に取り付ける。このとき、台座20の左右の側面は、両隣の座席2の座クッション5の側面に挟まれ、左右方向の移動が規制される。また、突出部材21を背もたれ8の下端の下に差し込んで滑り込ませる。
(3)
図6及び
図7に示すように、仕切板11の下端側を、前記のとおり台座20に着脱可能に固定する。
(4)
図8及び
図1に示すように、仕切板11の上端側を、前記のとおり背もたれ8に着脱可能に固定する。これら(3)及び(4)の固定をひとつの作業で同時に果たそうとすると位置決め等の作業にかえって手間がかかることに即し、まず(3)の下端側を固定してから(4)の上端側を固定する。
【0060】
また、座席用パーティション10を使用しないときには、上記手順とは逆に、仕切板11の上端側の固定を外し、仕切板11の下側側の固定を外し、台座20を座枠4から取り外し、座クッション5を座枠4に取り付ければよい。この作業も、工具不要で容易にできる。仕切板11と台座20とは分離されるため、運搬・保管しやすい。
【0061】
実施例の座席用パーティション10によれば、すでに説明した作用効果に加え、次の作用効果が得られる。
(ア)三人掛け座席の大人一人が着座できる中間の座席2に、該座席2の左右方向中央部で仕切板11により空間を左右に仕切る座席用パーティション10が取着されていることにより、両隣の座席2への着座者との距離が確保されることに加え、間が遮蔽されるため、新型コロナウィルス、インフルエンザウィルス等の感染予防効果が高まる。プライバシーの保護効果も高まる。
(イ)また、着座者と座席用パーティション10との距離も確保されるため、着座者が座席用パーティション10に当たらず、圧迫感が無い。
【0062】
なお、本発明は前記実施例に限定されるものではなく、例えば次のように、発明の趣旨から逸脱しない範囲で適宜変更して具体化することができる。
(1)実施例の座席用パーティション10は、一人掛け座席や、二人掛け座席の一方に、着脱可能に取着して使用することもできる。