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特開2024-124887大梁と小梁の接合構造、及び大梁と小梁の接合方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024124887
(43)【公開日】2024-09-13
(54)【発明の名称】大梁と小梁の接合構造、及び大梁と小梁の接合方法
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/24 20060101AFI20240906BHJP
   E04B 1/58 20060101ALI20240906BHJP
【FI】
E04B1/24 Q
E04B1/58 506F
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023032853
(22)【出願日】2023-03-03
(71)【出願人】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】西 拓馬
(72)【発明者】
【氏名】吉田 文久
(72)【発明者】
【氏名】永峰 頌子
(72)【発明者】
【氏名】廣嶋 哲
(72)【発明者】
【氏名】清水 信孝
(72)【発明者】
【氏名】青柳 智
(72)【発明者】
【氏名】北岡 聡
(72)【発明者】
【氏名】寺沢 太沖
【テーマコード(参考)】
2E125
【Fターム(参考)】
2E125AA14
2E125AB01
2E125AC15
2E125AG03
2E125AG04
2E125BB01
2E125CA05
(57)【要約】
【課題】加工手間を軽減することが可能であり、梁せいが同じである大梁と小梁の接合に適用可能な、大梁と小梁の接合構造、及び大梁と小梁の接合方法を提供すること。
【解決手段】接合構造100は、大梁10と、大梁10と梁のせいが同じであり、大梁10の両側に配置され、大梁10と直交する一対の小梁20とを接合する、大梁10と小梁20の接合構造100であって、大梁10と直交し、大梁10の下フランジ13の下面13bの下に配置され、大梁10の両側に張り出す下側スプライスプレート40を備え、下側スプライスプレート40は、大梁10の下フランジ13に溶接され、一対の小梁20の下フランジ23は、下側スプライスプレート40の上に載置され、一対の小梁20の下フランジ23と下側スプライスプレート40は、ボルト接合されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
大梁と、前記大梁と梁のせいが同じであり、前記大梁の両側に配置され、前記大梁と直交する一対の小梁とを接合する、大梁と小梁の接合構造であって、
前記大梁と直交し、前記大梁の下フランジの下面の下に配置され、前記大梁の両側に張り出す下側スプライスプレートを備え、
前記下側スプライスプレートは、前記大梁の下フランジに溶接され、
前記一対の小梁の下フランジは、前記下側スプライスプレートの上に載置され、
前記一対の小梁の下フランジと前記下側スプライスプレートは、ボルト接合されていることを特徴とする、大梁と小梁の接合構造。
【請求項2】
前記大梁と直交し、前記大梁の上フランジの上面の上に載置され、前記大梁を跨いで前記大梁の両側に張り出し、前記一対の小梁の上フランジの上面の上に載置される上側スプライスプレートを備え、
前記一対の小梁の上フランジと前記上側スプライスプレートは、ボルト接合され、
前記上側スプライスプレートは、前記大梁の上フランジに接合されていないことを特徴とする請求項1に記載の大梁と小梁の接合構造。
【請求項3】
板厚方向が前記大梁の長手方向に沿うように配置され、前記大梁の上フランジの下面、ウェブの側面、及び、下フランジの上面に溶接され、前記大梁の両側に張り出す一対のガセットプレートを備え、
前記一対の小梁のウェブは、前記一対のガセットプレートにそれぞれボルト接合されていることを特徴とする請求項2に記載の大梁と小梁の接合構造。
【請求項4】
板厚方向が前記大梁の長手方向に沿うように配置され、前記大梁の上フランジの下面、ウェブの側面、及び、下フランジの上面に溶接され、前記大梁のウェブの両側に張り出す一対のスチフナと、
前記一対のスチフナを当該スチフナの板厚方向の両側から挟み、前記スチフナにボルト接合される一対のウェブ用のスプライスプレートと、を備え、
前記一対の小梁のウェブは、当該小梁のウェブの板厚方向の両側から、前記一対のウェブ用のスプライスプレートによって挟さまれ、当該一対のウェブ用のスプライスプレートにボルト接合されていることを特徴とする請求項2に記載の大梁と小梁の接合構造。
【請求項5】
大梁と、前記大梁と梁のせいが同じであり、前記大梁の両側に配置され、前記大梁と直交する一対の小梁と、を接合する、大梁と小梁の接合方法であって、
前記大梁の下フランジには、前記大梁と直交し、前記大梁の下フランジの下面の下に配置され、前記大梁の両側に張り出す下側スプライスプレートが溶接されており、
前記下側スプライスプレートの上に、前記一対の小梁の下フランジを載置する工程と、
前記一対の小梁の下フランジと前記下側スプライスプレートをボルト接合する工程と、を含むことを特徴とする、大梁と小梁の接合方法。
【請求項6】
上側スプライスプレートを、前記大梁の上フランジの上面及び前記一対の小梁の上フランジの上面の上に載置する工程と、
前記一対の小梁の上フランジと前記上側スプライスプレートをボルト接合する工程を含むことを特徴とする請求項5に記載の大梁と小梁の接合方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大梁と小梁の接合構造、及び大梁と小梁の接合方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄骨造の建物では、大梁に対して小梁が接合されることにより、各階の床架構が形成される。大梁は、鉄骨柱に接合されて地震や風、床荷重等を負担する梁であり、小梁は、柱に対して直接接合されずに大梁に接合され、主に床荷重を支持して大梁に荷重を伝達する梁である。鉄骨柱に対して大梁は例えば剛接合され、大梁に対してその一方側もしくは両側から直交する小梁がピン接合されることにより、柱と大梁、小梁のそれぞれの部材が相互に接合される。
【0003】
大梁に対する小梁の接合は一般に、大梁のフランジとウェブに対してブラケットやガセットプレートを溶接接合しておき、ブラケット等と小梁を、スプライスプレートを介して高力ボルトにてボルト接合することにより行われる。ここで、ブラケットは、小梁と同寸法の形鋼材(H形鋼等)により形成され、大梁の例えば上フランジやウェブに対して溶接接合される。このように大梁に対してブラケットを接合するに際して、ブラケットの端部を大梁のフランジやウェブに当接するように加工する必要があり、この複雑な端部加工には手間と時間を要するといった課題がある。さらに、大梁と小梁の標準的な継手(標準継手)では、ブラケットの長さが長くなる傾向にあり(例えば柱芯から1m以上)、大梁の長手方向の対応位置の左右にブラケットが接合される場合も往々にしてあり、通常は工場にて大梁とブラケットを溶接接合した上でこのユニットを現場搬送することから、運搬効率が極めて悪いといった課題もある。
【0004】
ここで、特許文献1には、上記するブラケットを不要とした大梁と小梁の接合構造が提案されている。具体的には、小梁の上フランジは、大梁の上フランジの上面に重ねてボルト接合された上側接合プレートにおいて、大梁の上フランジから側方に突出する部分の下面にボルト接合され、小梁の下フランジは、大梁のウェブに溶接されてウェブから側方に突出する下側接合プレートの上面に重ねてボルト接合され、下側接合プレートは、大梁に接合されたリブ部材に下面が接合して補強され、リブ部材は平板状のプレートであり、大梁のウェブおよび下フランジに溶接により接合されて下側接合プレートの幅方向の中間に位置する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第6266269号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の大梁と小梁の接合構造は、大梁と、当該大梁よりも梁せいが小さい小梁とを接合する場合の構造であり、梁せいが同じである大梁と小梁とを接合する場合に適用できない。また、接合構造において、加工手間を軽減することが求められている。
【0007】
本発明は、加工手間を軽減することが可能であり、梁せいが同じである大梁と小梁の接合に適用可能な、大梁と小梁の接合構造、及び大梁と小梁の接合方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明による大梁と小梁の接合構造の一態様は、
大梁と、前記大梁と梁のせいが同じであり、前記大梁の両側に配置され、前記大梁と直交する一対の小梁とを接合する、大梁と小梁の接合構造であって、
前記大梁と直交し、前記大梁の下フランジの下面の下に配置され、前記大梁の両側に張り出す下側スプライスプレートを備え、
前記下側スプライスプレートは、前記大梁の下フランジに溶接され、
前記一対の小梁の下フランジは、前記下側スプライスプレートの上に載置され、
前記一対の小梁の下フランジと前記下側スプライスプレートは、ボルト接合されていることを特徴とする。
【0009】
本態様によれば、梁せいが同じである大梁と小梁の接合に適用できる。また、本態様によれば、下側スプライスプレートを介して、大梁と小梁をボルト接合することにより、簡素な構造として、加工手間を軽減することができる。また、本態様によれば、ブラケットの加工が不要であり、ブラケットの加工の際の手間がかからない。さらに、本態様では、切り欠き等の加工や、完全溶け込み溶接等が不要であることにより、施工に関する手間が大幅に軽減される。また、本態様では、大梁の下フランジに溶接された下側スプライスプレートの上に、小梁の下フランジを載せることができるため、施工時の作業性効率の向上を図ることができる。
【0010】
また、本発明の他の態様において、
前記大梁と直交し、前記大梁の上フランジの上面の上に載置され、前記大梁を跨いで前記大梁の両側に張り出し、前記一対の小梁の上フランジの上面の上に載置される上側スプライスプレートを備え、
前記一対の小梁の上フランジと前記上側スプライスプレートは、ボルト接合され、
前記上側スプライスプレートは、前記大梁の上フランジに接合されていないことを特徴とする。
【0011】
本態様によれば、大梁の上フランジと上側スプライスプレートとが接合されないことにより、施工時の手間が軽減される。また、本態様によれば、大梁の上フランジと上側スプライスプレートとが、ボルト接合されないことにより、上フランジにボルト孔を形成する必要がない。そのため、加工手間が軽減されると共に、開口部の欠損による強度低下がなく、断面欠損に対する検討が不要となる。また、本態様によれば、大梁の上フランジと上側スプライスとが、溶接されないことにより、溶接施工に伴う手間が削減される。
【0012】
また、本発明の他の態様において、
板厚方向が前記大梁の長手方向に沿うように配置され、前記大梁の上フランジの下面、ウェブの側面、及び、下フランジの上面に溶接され、前記大梁の両側に張り出す一対のガセットプレートを備え、
前記一対の小梁のウェブは、前記一対のガセットプレートにそれぞれボルト接合されていることを特徴とする。
【0013】
本態様によれば、大梁に溶接されたガセットプレートと小梁のウェブとをボルト接合することにより、簡素な構成として施工時の手間を軽減できる。
【0014】
また、本発明の他の態様において、
板厚方向が前記大梁の長手方向に沿うように配置され、前記大梁の上フランジの下面、ウェブの側面、及び、下フランジの上面に溶接され、前記大梁のウェブの両側に張り出す一対のスチフナと、
前記一対のスチフナを当該スチフナの板厚方向の両側から挟み、前記スチフナにボルト接合される一対のウェブ用のスプライスプレートと、を備え、
前記一対の小梁のウェブは、当該小梁のウェブの板厚方向の両側から、前記一対のウェブ用のスプライスプレートによって挟さまれ、当該一対のウェブ用のスプライスプレートにボルト接合されていることを特徴とする。
【0015】
本態様によれば、大梁に溶接されたスチフナと小梁のウェブとを、ウェブ用のスプライスプレートを介してボルト接合することにより、簡素な構成として施工時の手間を軽減できる。また、本態様によれば、一対のウェブ用のスプライスプレートを用いて、スチフナ及び小梁のウェブを板厚方向の両側から挟むように支持することができる。
【0016】
本発明による大梁と小梁の接合方法の一態様は、
大梁と、前記大梁と梁のせいが同じであり、前記大梁の両側に配置され、前記大梁と直交する一対の小梁と、を接合する、大梁と小梁の接合方法であって、
前記大梁の下フランジには、前記大梁と直交し、前記大梁の下フランジの下面の下に配置され、前記大梁の両側に張り出す下側スプライスプレートが溶接されており、
前記下側スプライスプレートの上に、前記一対の小梁の下フランジを載置する工程と、
前記一対の小梁の下フランジと前記下側スプライスプレートをボルト接合する工程と、を含むことを特徴とする。
【0017】
本態様によれば、梁せいが同じである大梁と小梁の接合に適用できる。また、本態様によれば、下側スプライスプレートを介して、ボルト接合することにより、簡素な構造として、加工手間を軽減することができる。また、本態様によれば、ブラケットの加工が不要であり、ブラケットの加工の際の手間がかからない。さらに、本態様では、切り欠き等の加工や、完全溶け込み溶接等が不要であることにより、施工に関する手間が大幅に軽減される。また、本態様では、大梁の下フランジに溶接された下側スプライスプレートの上に、小梁の下フランジを載せることができるため、施工時の作業性効率の向上を図ることができる。
【0018】
また、本発明の他の態様において、
上側スプライスプレートを、前記大梁の上フランジの上面及び前記一対の小梁の上フランジの上面の上に載置する工程と、
前記一対の小梁の上フランジと前記上側スプライスプレートをボルト接合する工程を含むことを特徴とする。
【0019】
本態様によれば、大梁の上フランジと上側スプライスプレートとが接合されないことにより、施工時の手間が軽減される。また、本態様によれば、大梁の上フランジと上側スプライスプレートとが、ボルト接合されないことにより、上フランジにボルト孔を形成する必要がない。そのため、加工手間が軽減されると共に、開口部の欠損による強度低下がなく、断面欠損に対する検討が不要となる。また、本態様によれば、大梁の上フランジと上側スプライスとが、溶接されないことにより、溶接施工に伴う手間が削減される。
【発明の効果】
【0020】
以上の説明から理解できるように、本発明によれば、加工手間を軽減することが可能であり、梁せいが同じである大梁と小梁の接合に適用可能な、大梁と小梁の接合構造、及び大梁と小梁の接合方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】第1実施形態に係る大梁と小梁の接合構造の一例を示す斜視図である。
図2】第1実施形態に係る大梁と小梁の接合構造の一例を大梁の途中位置から見た側面図である。
図3】第1実施形態に係る大梁と小梁の接合構造の一例を示す底面図である。
図4】第2実施形態に係る大梁と小梁の接合構造の一例を大梁の途中位置から見た側面図である。
図5】第2実施形態に係る大梁と小梁の接合構造の一例を示す底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、実施形態に係る大梁と小梁の接合方法について、添付の図面を参照しながら説明する。尚、本明細書及び図面において、実質的に同一の構成要素については、同一の符号を付することにより重複した説明を省く場合がある。
【0023】
[第1実施形態に係る大梁と小梁の接合]
図1図3を参照して、第1実施形態に係る大梁と小梁の接合構造の一例について説明する。図1は、第1実施形態に係る大梁と小梁の接合構造の一例を示す斜視図である。図2は、第1実施形態に係る大梁と小梁の接合構造の一例を大梁の途中位置から見た側面図である。図3は、第1実施形態に係る大梁と小梁の接合構造の一例を示す底面図である。各図において、互いに直交するX軸方向、Y軸方向、及びZ軸方向を示す矢印を図示する。X軸方向及びY軸方向は、水平方向に沿う。Z軸方向は、鉛直方向に沿う。
【0024】
図1図3に示す接合構造100は、梁せいが同じである大梁10と小梁20との接合構造である。接合構造100は、剛接合とみなせる構造性能を有する接合部を含む。平面視において、大梁10の両側に一対の小梁20が配置されている。大梁10は、Y軸方向に延設され、一対の小梁20はX軸方向に延設されている。大梁10及び一対の小梁20は、互いに直交するように配置されている。
【0025】
大梁10及び一対の小梁20は、H形鋼により形成される。大梁10は、ウェブ11、上フランジ12及び下フランジ13を有する。小梁20は、ウェブ21、上フランジ22及び下フランジ23を有する。上フランジ12の上面12aと、上フランジ22の上面22aとは、面一である。下フランジ13の下面13bと、下フランジ23の下面23bとは、面一である。
【0026】
接合構造100は、大梁10の上に配置された上側スプライスプレート30と、大梁10の下に配置された下側スプライスプレート40と、大梁10のウェブ11と接合される一対のガセットプレート50と、を備える。上側スプライスプレート30及び下側スプライスプレート40は、平面視において、大梁10と直交するように配置され、一対の小梁20の長手方向に沿って延設されている。上側スプライスプレート30及び下側スプライスプレート40の板厚方向は、Z軸方向に沿う。
【0027】
下側スプライスプレート40は、大梁10の下フランジ13の下面13bの下に配置されている。下側スプライスプレート40の上面40aは、下フランジ13の下面13bに当接する。
【0028】
下側スプライスプレート40は、大梁10の下フランジ13に溶接されている。下側スプライスプレート40の長手方向に沿う両端部が、下フランジ13の下面13bに溶接されている。溶接部Y1は、下側スプライスプレート40と下フランジ13との間の溶接線である。例えば、溶接部Y1は、隅肉溶接による溶接部である。
【0029】
溶接部Y1のX軸方向に沿う長さは、例えば、小梁20のY軸方向に沿う幅以上の長さである。溶接部Y1のX軸方向に沿う長さは、例えば、大梁10のX軸方向に沿う幅以下の長さである。隅肉溶接である溶接部Y1のサイズは、例えば、大梁10の下フランジ13の板厚、又は、下側スプライスプレート40の板厚のうち、薄い方の板厚の70%以上の大きさである。溶接部Y1のサイズは、Y軸方向に沿う脚長、又はZ軸方向に沿う脚長うち、短い方の値である。
【0030】
下側スプライスプレート40は、X軸方向において、大梁10の両側に張り出すように配置されている。小梁20の下フランジ23は、下側スプライスプレート40の上に載せられている。下側スプライスプレート40の上面40aは、小梁20の下フランジ23の下面23bと当接している。下フランジ23と下側スプライスプレート40とは、ボルト45を用いて、ボルト接合されている。ボルト45の径及び本数は、当業者であれば、適宜、設計できる。
【0031】
上側スプライスプレート30は、大梁10の上フランジ12の上面12aの上に配置されている。上側スプライスプレート30の下面は、上フランジ12の上面12aに当接する。上側スプライスプレート30は、上フランジ12の上に載せられているだけであり、大梁10と接合されていない。
【0032】
上側スプライスプレート30は、X軸方向において、大梁10の両側に張り出すように配置されている。上側スプライスプレート30は、小梁20の上フランジ22の上に載せられている。上側スプライスプレート30の下面は、小梁20の上フランジ22と当接している。上フランジ22と上側スプライスプレート30とは、ボルト35を用いて、ボルト接合されている。
【0033】
ガセットプレート50は、平面視において、大梁10から張り出すように、形成されている。ガセットプレート50の板厚方向は、大梁10の長手方向に配置されている。ガセットプレート50は、大梁10の上フランジ12の下面12b、ウェブ11の側面11a、及び、下フランジ13の上面13aに溶接されている。
【0034】
ガセットプレート50は、X軸方向において、上フランジ12及び下フランジ13よりも外側に張り出している。ガセットプレート50は、Y軸方向において、小梁20のウェブ21に重なるように配置されている。Y軸方向において、ガセットプレート50は、ウェブ21に当接している。ガセットプレート50とウェブ21とは、ボルト55を用いて、ボルト接合されている。ガセットプレート50は、小梁20の上フランジ22及び下フランジ23に接合されていない。
【0035】
次に、接合構造100に作用する曲げモーメントとせん断力に対する抵抗機構について説明する。
【0036】
小梁20が支持する床荷重により、接合構造100における上フランジ22と上側スプライスプレート30に対して一般に作用する曲げモーメントには、上フランジ22と上側スプライスプレート30をボルト接合するボルト35による曲げ抵抗機構により対抗する。この曲げモーメントは、Y軸回りのモーメントである。一方、接合構造100に一般に作用するせん断力には、ガセットプレート50とウェブ21をボルト接合するボルト55のせん断抵抗機構やガセットプレート50のせん断抵抗機構により対抗する。
【0037】
このように、曲げ抵抗機構とせん断抵抗機構を分離した明快な設計式の下での設計を実現でき、構造設計に際して新たな設計理論の構築を何ら要するものではない。
【0038】
次に、大梁10と小梁20の接合方法について説明する。大梁10と小梁20の接合方法は、大梁10と、大梁10と梁のせいが同じであり、大梁10の両側に配置され、大梁10と直交する一対の小梁20と、を接合する方法である。この大梁10と小梁20との接合方法により、接合構造100を構築することができる。
【0039】
大梁10と小梁20の接合方法では、まず、大梁10に対して下側スプライスプレート40を溶接する工程を行う。例えば、工場において、大梁10の下フランジ13に対して、下側スプライスプレート40を溶接する。下側スプライスプレート40は、平面視において、大梁10の長手方向と直交するように配置される。下側スプライスプレート40は、大梁10の下フランジ13の下面13bに当接するように配置され、大梁10の幅方向において両側に張り出すように配置されて、下フランジ13に溶接される。なお、ここでいう「下フランジ13の下面13b」は、建設現場に施工する際に下側に配置されるフランジの下側の面をいう。
【0040】
次に、大梁10に対して、ガセットプレート50を溶接する工程を行う。大梁10のウェブ11に対して直交するように、ガセットプレート50を配置して、ガセットプレート50を大梁10に対して溶接する。例えば、工場において大梁10に対してガセットプレート50が溶接される。ガセットプレート50は、上フランジ12の下面12b、ウェブ11の側面11a、及び下フランジ13の上面13aに溶接される。ガセットプレート50は、大梁10の幅方向において、大梁10から張り出すように配置されている。
【0041】
なお、各工程の順番は、適宜入れ替えて実行してもよく、複数の工程が同時進行で実行されてもよい。下側スプライスプレート40及びガセットプレート50が溶接された大梁10は、現場に運搬されて柱に接合される。
【0042】
次に、下側スプライスプレート40の上に、一対の小梁20の下フランジ23を載置する工程を行う。大梁10の幅方向において、大梁10よりも張り出した下側スプライスプレート40の部分の上に、小梁20の下フランジ23を載置する。下側スプライスプレート40と下フランジ23は、Z軸方向に重ねられる。
【0043】
次に、一対の小梁20の下フランジ23と下側スプライスプレート40をボルト接合する工程を行う。ここでは、下フランジ23及び下側スプライスプレート40に形成されているボルト孔に対してボルト45を挿通して、ボルト接合を行う。
【0044】
次に、一対のガセットプレート50と小梁20のウェブ21をボルト接合する工程を行う。ここでは、ガセットプレート50及びウェブ21に形成されているボルト孔に対してボルト55を挿通して、ボルト接合を行う。
【0045】
次に、上側スプライスプレート30を、大梁10の上フランジ12の上面12a及び一対の小梁20の上フランジ22の上面22aの上に載置する工程を行う。ここでは、平面視において、大梁10の長手方向に対して、上側スプライスプレート30を直交するように配置する。大梁10の上フランジ12を跨いで、両側の小梁20の上フランジ22の上に、上側スプライスプレート30を載置する。
【0046】
次に、一対の小梁20の上フランジ22と上側スプライスプレート30をボルト接合する工程を行う。ここでは、上フランジ22及び上側スプライスプレート30に形成されているボルト孔に対して、ボルト35を挿通して、ボルト接合を行う。これらの各工程を行うことにより、大梁10に対して一対の小梁20を剛接合することができる。
【0047】
なお、上述したように、各工程の順番は、適宜変更してもよく、同時に実施してもよい。例えば、一対の小梁20の上フランジ22と上側スプライスプレート30をボルト接合する工程を行った後に、一対のガセットプレート50と小梁20のウェブ21をボルト接合する工程を行ってもよい。また、一対の小梁20のうち、一方の小梁20を大梁10に接合した後に、他方の小梁20を大梁10に接合してもよい。また、一対の小梁20を同時に、大梁10に接合してもよい。
【0048】
(第1実施形態に係る接合構造100の作用効果)
接合構造100は、大梁10と、大梁10と梁のせいが同じであり、大梁10の両側に配置され、大梁10と直交する一対の小梁20とを接合する、大梁10と小梁20の接合構造100であって、大梁10と直交し、大梁10の下フランジ13の下面13bの下に配置され、大梁10の両側に張り出す下側スプライスプレート40を備え、下側スプライスプレート40は、大梁10の下フランジ13に溶接され、一対の小梁20の下フランジ23は、下側スプライスプレート40の上に載置され、一対の小梁20の下フランジ23と下側スプライスプレート40は、ボルト接合されている。
【0049】
本態様によれば、梁せいが同じである大梁10と小梁20との接合に適用できる。本態様によれば、下側スプライスプレート40を介して、大梁10に対して一対の小梁20をボルト接合することにより、簡素な構造として、加工手間を軽減することができる。また、本態様によれば、従来技術に係るブラケットの加工が不要であり、ブラケットの加工の際の手間がかからない。さらに、本態様では、切り欠き等の加工や、完全溶け込み溶接等が不要であることにより、施工に関する手間が大幅に軽減される。また、本態様では、大梁10の下フランジ13に溶接された下側スプライスプレート40の上に、小梁20の下フランジ13を載せることができるため、施工時の作業性効率の向上を図ることができる。実施形態に係る接合構造100は、剛接合とみなせる構造性能を有する接合部である。
【0050】
また、本態様によれば、大梁10の下フランジ13と下側スプライスプレート40との溶接部Y1は、長期荷重による大梁10の両側の曲げモーメントによる支圧力が釣り合うことにより、下側スプライスプレート40の自重(あるいは、下側スプライスプレート40と小梁20の自重)を保持できるだけの強度があればよい。これにより、溶接部Y1はショートビードにならない程度の溶接長(例えば40mm以上の溶接長)があれば、十分な耐力が確保されるため、本態様によれば、溶接部耐力などの検討は不要である。溶接部Y1の溶接長は、小梁20の幅以上であり、大梁10の幅以下である。
【0051】
また、接合構造100において、大梁10と直交し、大梁10の上フランジ12の上面12aの上に載置され、大梁10を跨いで大梁10の両側に張り出し、一対の小梁20の上フランジ22の上面22aの上に載置される上側スプライスプレート30を備え、一対の小梁20の上フランジ22と上側スプライスプレート30は、ボルト接合され、上側スプライスプレート30は、大梁10の上フランジ12に接合されていない。
【0052】
本態様によれば、大梁10の上フランジ12と上側スプライスプレート30とが接合されないことにより、施工時の手間が軽減される。また、本態様によれば、大梁10の上フランジ12と上側スプライスプレート30とが、ボルト接合されないことにより、上フランジ12にボルト孔を形成する必要がない。そのため、加工手間が軽減されると共に、開口部の欠損による強度低下がなく、断面欠損に対する検討が不要となる。また、本態様によれば、大梁10の上フランジ12と上側スプライスプレート30とが、溶接されないことにより、溶接施工に伴う手間が削減される。
【0053】
また、接合構造100において、板厚方向が大梁10の長手方向に沿うように配置され、大梁10の上フランジ12の下面12b、ウェブ11の側面11a、及び、下フランジ13の上面13aに溶接され、大梁10の両側に張り出す一対のガセットプレート50を備え、一対の小梁20のウェブ21は、一対のガセットプレート50にそれぞれボルト接合されている。
【0054】
本態様によれば、大梁10に溶接されたガセットプレート50と小梁20のウェブ21とをボルト接合することにより、簡素な構成として施工時の手間を軽減できる。上述したように、本態様によれば、ブラケットの加工が不要であり、ブラケットの加工の際の手間がかからない。さらに、本態様では、切り欠き等の加工や、完全溶け込み溶接等が不要であることにより、施工に関する手間が大幅に軽減される。
【0055】
(接合方法の作用効果)
本実施形態に係る接合方法は、大梁10と、大梁10と梁せいが同じであり、大梁10の両側に配置され、大梁10と直交する一対の小梁20と、を接合する、大梁10と小梁20の接合方法であって、大梁10の下フランジ13には、大梁10と直交し、大梁10の下フランジ13の下面13bの下に配置され、大梁10の両側に張り出す下側スプライスプレート40が溶接されており、下側スプライスプレート40の上に、一対の小梁20の下フランジ13を載置する工程と、一対の小梁20の下フランジ13と下側スプライスプレート40をボルト接合する工程と、を含む。
【0056】
本態様によれば、下側スプライスプレート40を介して、ボルト接合することにより、簡素な構造として、加工手間を軽減することができる。また、本態様によれば、ブラケットの加工が不要であり、ブラケットの加工の際の手間がかからない。さらに、本態様では、切り欠き等の加工や、完全溶け込み溶接等が不要であることにより、施工に関する手間が大幅に軽減される。また、本態様では、大梁10の下フランジ13に溶接された下側スプライスプレート40の上に、小梁20の下フランジ23を載せることができるため、施工時の作業性効率の向上を図ることができる。
【0057】
また、本実施形態に係る接合方法において、上側スプライスプレート30を、大梁10の上フランジ12の上面12a及び一対の小梁20の上フランジ22の上面22aの上に載置する工程と、一対の小梁20の上フランジ22と上側スプライスプレート30をボルト接合する工程を含む。
【0058】
本態様によれば、大梁10の上フランジ12と上側スプライスプレート30とが接合されないことにより、施工時の手間が軽減される。また、本態様によれば、大梁10の上フランジ12と上側スプライスプレート30とが、ボルト接合されないことにより、上フランジ12にボルト孔を形成する必要がない。そのため、加工手間が軽減されると共に、開口部の欠損による強度低下がなく、断面欠損に対する検討が不要となる。また、本態様によれば、大梁10の上フランジ12と上側スプライスプレート30とが、溶接されないことにより、溶接施工に伴う手間が削減される。
【0059】
[第2実施形態に係る大梁と小梁の接合]
次に、図4及び図5を参照して、第2実施形態に係る大梁と小梁の接合構造の一例について説明する。図4は、第2実施形態に係る大梁と小梁の接合構造の一例を大梁の途中位置から見た側面図である。図5は、第2実施形態に係る大梁と小梁の接合構造の一例を示す底面図である。図4及び図5に示される第2実施形態に係る接合構造100Bが第1実施形態に係る100と違う点は、ガセットプレート50に代えて、スチフナ60及びスプライスプレート50Bを備える点である。なお、第2実施形態の説明において第1実施形態と同様の説明は省略する。
【0060】
接合構造100Bは、一対のスチフナ60を備える。大梁10には、一対のスチフナ60が溶接されている。スチフナ60は板状を成し、スチフナ60の板厚方向は、大梁10の長手方向に沿う。スチフナ60は、上フランジ12の下面12b、ウェブ11の側面11a、及び、下フランジ13の上面13aに溶接されている。スチフナ60は、ウェブ11からX軸方向において両側に張り出すように配置されている。スチフナ60は、X軸方向において、上フランジ12及び下フランジ13よりも外側に張り出していない。スチフナ60は、例えば工場において、大梁10に対して溶接される。
【0061】
接合構造100Bは、一対のスプライスプレート50Bを備える。一対のスプライスプレート50Bは、一対のウェブ用のスプライスプレートの一例である。一対のスプライスプレート50Bは、大梁10の長手方向において、スチフナ60及び小梁20のウェブ21を両側から挟むように配置されている。スチフナ60及びウェブ21は、板厚方向の両側からスプライスプレート50Bによって挟まれている。
【0062】
スチフナ60及び一対のスプライスプレート50Bに形成されたボルト孔にボルトが挿通されて、スチフナ60及び一対のスプライスプレート50Bは、ボルト接合されている。同様に、小梁20のウェブ21及び一対のスプライスプレート50Bに形成されたボルト孔にボルト55が挿通されて、ウェブ21及び一対のスプライスプレート50Bは、ボルト接合されている。大梁10と小梁20は、スチフナ60及び一対のスプライスプレート50Bを介して、剛接合されている。
【0063】
(第2実施形態に係る接合構造100Bの作用効果)
このような第2実施形態に係る接合構造100Bは、上記の第1実施形態に係る接合構造100と同様の作用効果を奏する。接合構造100Bは、大梁10に溶接されたスチフナ60と、小梁20のウェブ21とを、スプライスプレート50Bを介してボルト接合する構造でもよい。
【0064】
尚、上記実施形態に挙げた構成等に対し、その他の構成要素が組み合わされるなどした他の実施形態であってもよく、ここで示した構成に本発明が何等限定されるものではない。この点に関しては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更することが可能であり、その応用形態に応じて適切に定めることができる。
【0065】
上記の実施形態に係る接合構造100では、大梁10の上フランジ12に対して、上側スプライスプレート30を接合しない場合について例示しているが、上側スプライスプレート30を大梁10の上フランジ12に接合してもよい。上側スプライスプレート30を上フランジ12に接合しない場合には、施工の手間を軽減できる。
【0066】
(変形例)
実施形態に係る接合構造100において、例えば、下側スプライスプレート40の上面40aと、大梁10の下フランジ13の側面とが隅肉溶接により接合されていてもよい。接合構造100において、下フランジ13の側面と小梁20の下フランジ23の端面との間の隙間に隅肉溶接による溶接部が形成されていてもよい。下フランジ13の側面は、大梁10の長手方向(Y軸方向)に延在する側面である。小梁20の下フランジ23の端面は、小梁20の長手方向(X軸方向)における端面であり、Y軸方向に沿う。下側スプライスプレート40の上面40aと、大梁10の下フランジ13の側面との溶接部は、Y軸方向に延び、この溶接部の溶接長は、例えば40mm以上であり、小梁20の幅以下である。
【符号の説明】
【0067】
100,100B:接合構造(大梁と一対の小梁の接合構造)
10:大梁
11:ウェブ(大梁のウェブ)
12:上フランジ(大梁の上フランジ)
13;下フランジ(大梁の下フランジ)
20:小梁
21:ウェブ(小梁のウェブ)
22:上フランジ(小梁の上フランジ)
23:下フランジ(小梁の下フランジ)
30:上側スプライスプレート
40:下側スプライスプレート
50:ガセットプレート
50B:スプライスプレート(ウェブ用のスプライスプレート)
60:スチフナ
X:X軸方向
Y:Y軸方向
Z:Z軸方向
図1
図2
図3
図4
図5