(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024124891
(43)【公開日】2024-09-13
(54)【発明の名称】建物
(51)【国際特許分類】
E04H 1/02 20060101AFI20240906BHJP
D06F 57/12 20060101ALI20240906BHJP
【FI】
E04H1/02
D06F57/12 J
D06F57/12 N
D06F57/12 Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023032863
(22)【出願日】2023-03-03
(71)【出願人】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100149401
【弁理士】
【氏名又は名称】上西 浩史
(72)【発明者】
【氏名】安部 祥子
【テーマコード(参考)】
2E025
【Fターム(参考)】
2E025AA01
2E025AA03
2E025AA15
2E025AA22
(57)【要約】
【課題】 室内干しに係る作業を効率よく行うことができる建物を提供する。
【解決手段】 複数の階を有する住宅Hが、互いに隣り合う2つの階に跨る吹き抜け空間Fと、2つの階のうち、上方に位置する階の天井に敷設されたレール10であって、レールの一部分が吹き抜け空間F内に位置するレール10と、レール10に沿って移動可能な保持部20と、保持部20によって保持され、互いに分離した複数の竿片32を並べて構成された物干し竿30と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の階を有する建物であって、
互いに隣り合う2つの階に跨る吹き抜け空間と、
前記2つの階のうち、上方に位置する階の天井に敷設されたレールであって、該レールの一部分が前記吹き抜け空間内に位置するレールと、
前記レールに沿って移動可能な保持部と、
前記保持部によって保持され、互いに分離した複数の竿片を並べて構成された物干し竿と、を備えた建物。
【請求項2】
前記レールは、前記上方に位置する階に存在する2以上の空間を通過するように敷設されている、請求項1に記載の建物。
【請求項3】
それぞれの前記竿片の端部には、電磁石が設けられており、
隣り合う2つの前記竿片は、隣り合う2つの前記竿片の各々に設けられた前記電磁石の通電状態がオン状態であることにより、互いに接し、
それぞれの前記竿片に設けられた前記電磁石の通電状態を制御する制御装置をさらに備える、請求項1に記載の建物。
【請求項4】
前記制御装置は、それぞれの前記竿片に設けられた前記電磁石の通電状態を、前記竿片毎に個別に制御する、請求項3に記載の建物。
【請求項5】
前記レールは、前記レールの延出方向が屈曲したコーナー部を有し、
前記制御装置は、前記保持部が前記レールの前記コーナー部を移動する間、それぞれの前記竿片に設けられた前記電磁石の通電状態をオフ状態にする、請求項4に記載の建物。
【請求項6】
前記上方に位置する階には、衣服用の収納空間が存在し、
前記レールのうち、前記吹き抜け空間内に位置する部分とは異なる部分が、前記収納空間内に位置し、
前記制御装置は、前記保持部が前記レールのうち、前記収納空間内に位置する部分に沿って移動する間、複数の前記竿片のうちの1以上の前記竿片に設けられた前記電磁石の通電状態をオフ状態にする、請求項4に記載の建物。
【請求項7】
前記上方に位置する階には、前記吹き抜け空間を含む複数の空間が存在し、
前記制御装置は、前記複数の竿片のうち、1つ以上の竿片が前記複数の空間のうち、いずれかの空間に留まるように、前記複数の竿片のそれぞれに設けられた前記電磁石の通電状態を制御する、請求項4に記載の建物。
【請求項8】
前記保持部は、前記吹き抜け空間内に位置する間に前記吹き抜け空間内で昇降可能である、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の建物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の階を有する建物に係り、特に、洗濯物等の室内干しに適した構造を有する建物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、花粉等の付着を防止する目的、夜間に洗濯を行うという生活スタイル、あるいは、プライバシー保護等の観点から、洗濯物を建物内で干すこと、いわゆる室内干しを行う人が増えている。室内干しを行う上では、建物内において洗濯物を干すスペースを確保しつつ、洗濯物を効率よく乾かせるような構造を有する建物が求められる。
【0003】
特許文献1に記載の建物は、住宅の下階と上階とに亘って設けられた折り返し階段と、折り返し階段の上方に位置する小屋裏吹き抜け空間と、小屋裏吹き抜け空間に位置する第1物干し竿と、折り返し階段に設けられた腰壁と、作業床とステップとを備える。作業床は、折り返し階段の上方において腰壁に沿って設けられており、上階の床より高い位置に位置する。ステップは、上階の床と作業床とに渡って設けられている。住人は、作業床を足場にして、洗濯物を吊るしたハンガーを第1物干しに掛ける。これにより、階段の上り下りに支障を生じさせずに、十分な数の洗濯物を干すことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の建物においては、第1物干し竿に洗濯物を干すためにステップ及び作業床に向かって移動する必要がある。また、特許文献1に記載の建物では、小屋裏吹き抜け空間に位置する第1物干し竿に干した洗濯物が乾いた後に、その洗濯物を第1物干し竿から下ろして所定の収納場所まで運ぶことになるために、その作業に手間を要する。
【0006】
そこで、本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、室内干しに係る作業を効率よく行うことができる建物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題は、本発明の建物によれば、複数の階を有する建物であって、互いに隣り合う2つの階に跨る吹き抜け空間と、2つの階のうち、上方に位置する階の天井に敷設されたレールであって、レールの一部分が吹き抜け空間内に位置するレールと、レールに沿って移動可能な保持部と、保持部によって保持され、互いに分離した複数の竿片を並べて構成された物干し竿と、を備えることにより解決される。
【0008】
上記のように構成された本発明の建物では、室内干し用のスペースを確保し、建物内における物干し竿を建物内で調整することができる。また、物干し竿を複数の断片(竿片)に分割し、各竿片の位置を竿片毎に変えることができる。これにより、室内干しに係る作業を効率よく行うことができる。
【0009】
また、上記の建物において、レールは、上方に位置する階に存在する2以上の空間を通過するように敷設されていると、好適である。
上記の構成によれば、物干し竿を構成する複数の竿片の各々を、上方に位置する階に存在する2以上の空間のいずれかに配置させることが可能となる。これにより、室内干しに係る作業をより効率よく行うことができる。
【0010】
また、上記の建物において、それぞれの竿片の端部には、電磁石が設けられてもよい。また、隣り合う2つの竿片は、隣り合う2つの竿片の各々に設けられた電磁石の通電状態がオン状態であることにより、互いに接してもよい。そして、上記の建物は、それぞれの竿片に設けられた電磁石の通電状態を制御する制御装置をさらに備えると、より好適である。
上記の構成によれば、物干し竿を構成する複数の竿片の各々の状態を、竿片同士が連結している状態と、各竿片が独立して移動できる状態との間で切り替えることができる。これにより、各竿片の位置を自由に変えられるようになるため、室内干しに係る作業を効率よく行うことができる。
【0011】
また、上記の建物において、制御装置は、それぞれの竿片に設けられた電磁石の通電状態を、竿片毎に個別に制御すると、さらに好適である。
上記の構成によれば、各竿片の状態を個別に切り替えることができるため、各竿片の位置をより容易に変えられるようになり、室内干しに係る作業をより一層効率よく行うことが可能となる。
【0012】
また、上記の建物において、レールは、レールの延出方向が屈曲したコーナー部を有してもよい。制御装置は、保持部がレールのコーナー部を移動する間、それぞれの竿片に設けられた電磁石の通電状態をオフ状態にすると、なお一層好適である。
上記の構成によれば、保持部がレールのコーナー部を移動する間、物干し竿を構成する竿片の連結状態が解除されるため、保持部及び物干し竿がスムーズにコーナー部を移動することができる。
【0013】
また、上記の建物において、上方に位置する階には、衣服用の収納空間が存在してもよい。この場合、レールのうち、吹き抜け空間内に位置する部分とは異なる部分が、収納空間内に位置してもよい。そして、制御装置は、保持部がレールのうち、収納空間内に位置する部分に沿って移動する間、複数の竿片のうちの1以上の竿片に設けられた電磁石の通電状態をオフ状態にすると、より一段と好適である。
上記の構成によれば、一部の竿片を収納空間内に留めておくことができ、例えば、乾いた洗濯物が掛けられた竿片を衣服用の収納空間内に残すことで、その洗濯物を当該収納空間内に置くことができる。
【0014】
また、上記の建物において、上方に位置する階には、吹き抜け空間を含む複数の空間が存在してもよい。また、制御装置は、複数の竿片のうち、1つ以上の竿片が複数の空間のうち、いずれかの空間に留まるように、複数の竿片のそれぞれに設けられた電磁石の通電状態を制御すると、さらに一層好適である。
上記の構成によれば、上方に位置する階に存在する複数の空間のうち、いずれかの空間に一部の竿片を留めておくことができ、例えば、洗濯物を乾かすのに適した空間に1つ以上の竿片を残すことで、その竿片に掛けられた洗濯物を効率よく乾かすことができる。
【0015】
また、上記の構成において、保持部は、吹き抜け空間内に位置する間に吹き抜け空間内で昇降可能であると、益々好適である。
上記の構成によれば、吹き抜け空間において、保持部に保持された物干し竿を上下に移動させることができ、例えば、洗濯物を物干し竿に掛けたり、乾いた洗濯物を物干し竿から下ろしたりする場合には、保持部を下降させて物干し竿を下げることができる。また、洗濯物をレールに沿って移動させる場合には、保持部を上昇させて物干し竿を上方に移動させて、洗濯物が掛けられた物干し竿をレールに沿って移動させることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の建物によれば、室内干しに係る作業を効率よく行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1A】本発明の一つの実施形態に係る建物の1階の間取りを示す図である。
【
図1B】本発明の一つの実施形態に係る建物の2階の間取りを示す図である。
【
図2】吹き抜け空間における物干し構造を示す図である。
【
図3】本発明の一つの実施形態に係る建物におけるレールの敷設経路を示す図である。
【
図4】本発明の一つの実施形態に係る建物内で利用されるレール、保持部及び物干し竿を示す図である。
【
図7】本発明の一つの実施形態に係る制御装置を含む制御系統を示す図である。
【
図8】物干し竿を構成する複数の竿片の配置パターンの例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<<本発明の一つの実施形態に係る建物について>>
以下、本発明の一つの実施形態(以下、本実施形態)に係る建物について、添付の図面を参照しながら説明する。ここで、以下に説明する実施形態は、本発明の理解を容易にするための一例に過ぎず、本発明を限定するものではない。すなわち、本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得る。また、本発明には、その等価物が含まれることは勿論である。
【0019】
なお、図面では、説明を分かり易くするために幾分簡略化及び模式化して各部材を図示している。また、図中に示す各部材のサイズ(寸法)及び部材間の間隔等についても、実際のものとは異なっている。
また、以下に説明する各部材の位置、向き及び姿勢等は、特に断る場合を除き、各部材が使用されている状態にあるときの位置、向き及び姿勢等であることとする。
【0020】
また、以降の説明では、住宅を建物の一例として挙げることとする。ただし、本発明の建物は、その内部で洗濯物等が干されるもの、すなわち、室内干しが行われる建物であればよく、住宅以外の建物、例えば、施設、工場及び建屋等でもよい。
【0021】
本実施形態に係る住宅は、複数の階を有する住宅(以下、住宅H)であり、例えば、
図1A及び1Bに示すように、2階建ての住宅である。なお、住宅Hが有する階の数は、2以上であればよく、任意の数であってもよい。
【0022】
住宅Hにおいて互いに隣り合う2つの階、すなわち1階及び2階の各々には、
図1A及び1Bに示すように、複数の空間(具体的には、部屋及びスペース)が存在する。特に、上方に位置する階である2階には、衣服用の収納空間としてのウォークインクローゼットWが存在する。
【0023】
また、住宅Hには、
図2に示すように、1階及び2階に跨る吹き抜け空間Fが設けられている。また、住宅Hにおいて、吹き抜け空間Fと隣接する外壁、詳しくは2階に位置する外壁には、採光用の窓Mが設けられている。これにより、吹き抜け空間Fの上部では、窓Mを透過した日光によって空気が温められる。また、1階で暖房機器等の使用によって温められた空気が吹き抜け空間F内に流入して上昇することで、吹き抜け空間Fの上部が温められる。
【0024】
なお、2階に存在する複数の空間は、吹き抜け空間Fを含んでいればよく、空間の数、及び各空間の用途については、特に限定されるものではない。また、2階における空間のレイアウトについても特に限定されない。
【0025】
住宅Hは、室内干しに適した構造を有しており、この構造により、
図2に示すように吹き抜け空間Fを利用して洗濯物を干すことができる。この結果、例えば、ベランダのような洗濯物を干すためのスペースを住宅Hの外に確保する必要がなくなる。
【0026】
また、住宅Hにおける室内干し用の構造では、洗濯物が掛けられる物干し竿30の位置を自由に変更することができる。これにより、住宅H内で洗濯物が乾きやすい場所にて洗濯物を干すことができる。また、乾いた洗濯物を物干し竿30(詳しくは、後述の竿片32)に掛けたままの状態でウォークインクローゼットWに置いておくことができる。これにより、洗濯物を取り込んでウォークインクローゼットWへ運ぶ手間を省略することができる。
【0027】
住宅Hにおける室内干し用の構造について説明すると、この構造は、
図2~6に示すように、レール10、保持部20、物干し竿30、及び昇降機構40を主たる構成要素として備えている。レール10は、
図2に示すように2階の天井に敷設されたレールであり、略水平方向に延出している。レール10の構造としては、住宅の天井に設置され公知のレール、例えば、ライトレール及びピクチャレール等と同様の構造が利用可能である。
【0028】
レール10の敷設経路は、特に限定されないが、本実施形態では、
図3に示すように、レール10が、2階に存在する2以上の空間(詳しくは、吹き抜け空間F、ウォークインクローゼットW及びオープンスペースS)のそれぞれを通過するように敷設されている。つまり、本実施形態では、
図3に示すように、レール10の一部分が、吹き抜け空間F内に位置しており、また、レール10のうち、吹き抜け空間F内に位置する部分とは異なる部分が、ウォークインクローゼットWに位置している。
【0029】
より詳しく説明すると、レール10は、
図3に示すように、互いに平行となるように敷設された第1レール部分12及び第2レール部分14とを有する。第1レール部分12は、その延出方向一端部が吹き抜け空間F内に位置し、且つ、他端部がオープンスペースS内に位置するように直線状に敷設されている。第2レール部分14は、その延出方向一端部がウォークインクローゼットW内に位置し、且つ、他端部がオープンスペースS内に位置するように直線状に敷設されている。
【0030】
また、レール10は、
図3に示すように、第1レール部分12及び第2レール部分14のそれぞれの、オープンスペースS側に位置する端部を連絡する第3レール部分16を有する。さらに、レール10は、
図3に示すように、第1レール部分12の延出方向中途箇所と第2レール部分14の延出方向中途箇所とを連絡する第4レール部分18を有する。
なお、
図3に示すケースでは、第3レール部分16及び第4レール部分18が、いずれもオープンスペースS内に位置している。
【0031】
以上のように本実施形態では、第1レール部分12と第2レール部分14とが、第3レール部分16及び第4レール部分18によって連結されており、また、これら4つのレール部分によって閉経路(方形状の経路)が構築されている。また、第1レール部分12と第3レール部分16又は第4レール部分18との接続部分、及び、第2レール部分14と第3レール部分16又は第4レール部分18との接続部分は、レール10のコーナー部10aをなしている。コーナー部10aは、レール10の延出方向が屈曲している部分である。
【0032】
なお、住宅Hが3以上の階を有し、吹き抜け空間Fが、3以上の階に跨って設けられている場合には、3以上の階のうち、最上階の天井にレール10が敷設されるとよい。
【0033】
保持部20は、
図2に示すように、物干し竿30を保持しながらレール10に沿って移動可能な機器である。保持部20は、
図4に示すように、レール10に沿ってレール10内を移動可能な移動部22、移動部22の直下に位置して移動部22に支持された一対の滑車部24と、一対の滑車部24の間に架設された架設部26と、架設部26から垂下した複数の支持ワイヤ28と、を有する。
【0034】
移動部22は、レール10に係合された状態でレール10内をレール10に沿って移動可能な構成であれば制限なく利用することができ、その構成を採用した公知の機器を利用してもよい。また、移動部22は、モータ等の駆動力によって動く電動式の機器でもよく、あるいは、不図示の牽引ワイヤに接続されており当該牽引ワイヤがユーザ(例えば、住宅Hの居住者)によって牽引されることで動く手動型の機器でもよい。
【0035】
一対の滑車部24は、
図4に示すように、レール10の延出方向において互いに離間した状態で配置され、それぞれ、レール10の延出方向に沿う軸を中心に回転可能な状態で移動部22に支持されている。架設部26は、ワイヤによって構成され、レール10の延出方向に沿って一対の滑車部24の間に架設されている。詳しく説明すると、架設部26を構成するワイヤの一端部は、一方の滑車部24の外周面に固定されており、当該ワイヤの他端部は、もう一方の滑車部24の外周面に固定されている。
【0036】
複数の支持ワイヤ28のそれぞれは、
図4に示すように、その上端が架設部26に固定されており、且つ、その下端が物干し竿30(詳しくは、竿片32)に固定された状態で垂下している。支持ワイヤ28の本数は、物干し竿30を構成する竿片32の個数に応じて決められており、例えば、竿片32の個数のn倍(nは自然数)に設定されている。換言すると、各竿片32は、n本の支持ワイヤ28によって支持されており、厳密には吊り下げられている。
【0037】
また、一対の滑車部24が回転すると、これに連動して、複数の支持ワイヤ28の垂下量が変化する。例えば、各滑車部24が正方向に回転すると、支持ワイヤ28が巻き取られて垂下量が短くなり、各滑車部24が逆方向に回転すると、支持ワイヤ28が繰り出されて垂下量が長くなる。
なお、竿片32を支持することができ、且つ、滑車部24に巻き取られたり滑車部24から繰り出したりすることができるものであれば、特にワイヤには限定されず、紐又は帯等でもよい。
【0038】
物干し竿30は、保持部20によって保持され、保持部20がレール10に沿って移動する際には、保持部20と一体的にレール10に沿って移動する。したがって、物干し竿30、及び物干し竿30に掛けられた洗濯物は、レール10の敷設経路に沿って移動することができる。具体的には、物干し竿30及び洗濯物は、2階に存在する各空間(すなわち、吹き抜け空間F、ウォークインクローゼットW、及びオープンスペースS)に移動することができる。
【0039】
以上のように、本実施形態では、物干し竿30が保持部20とともにレール10に沿って2階の各空間を移動することができるので、住宅Hにおいて日当たりが良い場所に洗濯物を搬送して干すことができる。また、例えば、吹き抜け空間Fでは、その上部に温かい空気が存在するため、物干し竿30に掛けられた洗濯物を吹き抜け空間F内に配置すれば、効率よく洗濯物を乾かすことができる。また、来客の有無や各部屋の利用状況等に応じて、洗濯物を置く場所を自由に変更することができるので、人の通行の邪魔にならないように、または、人の視界に入らないように洗濯物を移動させることができる。
【0040】
また、本実施形態における物干し竿30は、
図5に示すように、互いに分離した複数の竿片32を並べて構成されている。つまり、本実施形態の物干し竿30は、複数の竿片32が列状に連なることで一本の棒状体をなす。
なお、物干し竿30を構成する竿片32の個数は、2個以上であれば任意の個数に決めることができる。
図5に示すケースでは、4個の竿片32によって物干し竿30が構成されている。
【0041】
各竿片32は、筒形状の断片であり、磁性体、具体的には金属からなり、より詳しくはステンレス製の筒状体(ポール)である。また、竿片32のサイズ(外径及び軸長)及び形状は、竿片32の間で揃っている。ただし、これに限定されず、竿片32の間で竿片32のサイズや形状が異なってもよい。また、各竿片32は、前述したように、n本の支持ワイヤ28によって支持されている。この構成に関して、例えば、2本以上の支持ワイヤ28によって支持されれば、各竿片32の支持状態を安定させることができる。
【0042】
また、それぞれの竿片32の端部には、電磁石34が設けられている。また、それぞれの竿片32の内部には、電磁石34の通電状態を切り替えるための制御回路36が設けられている(
図7参照)。そして、隣り合う2つの竿片32は、当該2つの竿片32の各々に設けられた電磁石34の通電状態がオン状態であることにより、互いに接する。反対に、隣り合う2つの竿片32は、当該2つの竿片32の各々に設けられた電磁石34の通電状態がオフ状態になると、互いに切り離されて、それぞれ、独立して動けるようになる。
【0043】
なお、本実施形態では、竿片32同士を接続するための手段として電磁石34を利用しているが、これに限定されるものではなく、竿片32同士を接続できる構造であれば自由に利用することができ、例えば、紐又は帯等によって竿片32同士を連結してもよい。あるいは、竿片32同士が係合爪や凹凸嵌合等によって着脱自在に接続されてもよい。
【0044】
昇降機構40は、保持部20を昇降させるためのものであり、ユーザの操作に応じて作動し、操作量に応じた量だけ保持部20を上下移動させる。そして、保持部20の昇降に伴って、保持部20に保持された物干し竿30、及び、物干し竿30に掛けられた洗濯物が上下移動する。また、本実施形態において、昇降機構40は、
図6に示すように保持部20が吹き抜け空間F内に位置する間に吹き抜け空間F内で昇降可能となるように構成されている。
【0045】
より具体的に説明すると、昇降機構40は、
図2に示すように、吹き抜け空間F内に設置された操作ハンドル42を備えている。この操作ハンドル42は、不図示の駆動力伝達部と連結しており、この駆動力伝達部は、保持部20が吹き抜け空間F内に位置するときに一対の滑車部24の一方と係合する。そして、駆動力伝達部と一方の滑車部24が係合した状態で、ユーザが操作ハンドル42を正方向に回転させると、その回転力が駆動力伝達部を介して滑車部24に伝達される。これにより、一対の滑車部24のそれぞれが正回転して、複数の支持ワイヤ28のそれぞれの垂下量が減少し、その結果、物干し竿30が吹き抜け空間F内で上昇する。
【0046】
反対に、駆動力伝達部と一方の滑車部24が係合した状態で、ユーザが操作ハンドル42を逆方向に回転させると、その回転力が駆動力伝達部を介して滑車部24に伝達される。これにより、一対の滑車部24のそれぞれが逆回転し、複数の支持ワイヤ28のそれぞれの垂下量が増加し、その結果、物干し竿30が吹き抜け空間F内で下降する。
【0047】
以上のように、保持部20が吹き抜け空間F内で昇降することにより、
図6に示すように物干し竿30を吹き抜け空間F内で上下移動させることができる。これにより、吹き抜け空間F内で物干し竿30を適切な位置まで下ろすことができる。この結果、ユーザは、吹き抜け空間Fの下部(つまり、1階の位置)で物干し竿30に洗濯物を容易に掛け、また、乾いた洗濯物を物干し竿30から容易に下ろすことができるようになる。また、
図1Aに示すように洗濯室が1階に在る場合に、洗濯物を洗濯室が在る1階から2階へ運ぶ必要がなく、その手間を省略することができる。
【0048】
なお、昇降機構40については、保持部20が吹き抜け空間F内に位置する間に吹き抜け空間F内で昇降させるものであれば制限なく利用可能であり、公知の構成を採用してもよい。例えば、ロールカーテンやロールスクリーン等に利用されている昇降機構の構成を用いてもよい。また、保持部20が吹き抜け空間F以外の空間内にて昇降させることができる構成であってもよい。
【0049】
また、本実施形態において、住宅Hには、
図7に示すコントローラ50が設けられている。コントローラ50は、物干し竿30を構成する複数の竿片32のそれぞれに設けられた電磁石34の通電状態を制御する制御装置である。具体的に説明すると、コントローラ50は、住宅H内において、各竿片32に備えられた制御回路36と無線形式で通信して、各竿片32に設けられた電磁石34の通電状態を、オン状態とオフ状態との間で切り替える。また、本実施形態において、コントローラ50は、それぞれの竿片32に設けられた電磁石34の通電状態を、竿片32毎に個別に制御する。すなわち、本実施形態では、物干し竿30を構成する複数の竿片32の各々の状態(詳しくは、電磁石34の通電状態)を、一個ずつ個別に制御することができる。
【0050】
以上のような機能を備えるコントローラ50が設けられることにより、物干し竿30を一本の棒体として利用するか、あるいは、個々の竿片32に分離させて利用するかを、その時点の状況に応じて決めることができる。例えば、物干し竿30を吹き抜け空間F内に移動させたり、あるいは、吹き抜け空間Fの外に移動させたりする場合、コントローラ50は、複数の竿片32のそれぞれに設けられた電磁石34の通電状態をオン状態にする。これにより、物干し竿30を一本の棒体として取り扱うことができ、棒体としての物干し竿30をスムーズに吹き抜け空間F内に配置し、また、吹き抜け空間Fの外にスムーズに出すことができる。
【0051】
また、保持部20がレール10のコーナー部10aを移動する間、すなわち、物干し竿30がコーナー部10aに沿って移動する間には、コントローラ50は、それぞれの竿片32に設けられた電磁石34の通電状態をオフ状態にする。これにより、物干し竿30は複数の竿片32に分離し、竿片32同士を互いに切り離すことができるようになり、この結果、保持部20がコーナー部10aをスムーズに移動できるようになる。
【0052】
また、コントローラ50は、複数の竿片32のうち、1つ以上の竿片32が2階に存在する複数の空間のうち、いずれかの空間に留まるように、各竿片32に設けられた電磁石34の通電状態を制御することができる。
【0053】
具体的に説明すると、コントローラ50は、保持部20がレール10のうち、ウォークインクローゼットW内に位置する部分に沿って移動する間、複数の竿片32のうちの1以上の竿片32に設けられた電磁石34の通電状態をオフ状態する。これにより、
図8に示すように、一部の竿片32を、残りの竿片32から切り離してウォークインクローゼットWに留めておくことができる。ここで、電磁石34の通電状態がオフ状態になる竿片32は、例えば、乾いた洗濯物(衣服)が掛けられた竿片32等である。これにより、乾いた洗濯物を竿片32に掛けたままの状態でウォークインクローゼットWに収納することができ、洗濯物を取り込まずにウォークインクローゼットW内に置いておくことができる。
なお、洗濯物がハンガーによって物干し竿30(詳しくは、竿片32)に掛けられている場合には、そのハンガーを物干し竿30からウォークインクローゼットW内のハンガーバーへ移してもよい。
【0054】
コントローラ50による制御、すなわち、各竿片32における電磁石34の通電状態の切り替えは、例えば、住宅H内に設けられた不図示の制御パネルを通じてユーザが指示することで行われてもよい。あるいは、ユーザがスマートフォン又はタブレット端末にインストールされたアプリケーションプログラムを起動した場合に、これをトリガーとして、コントローラ50による制御が行われてもよい。あるいは、コントローラ50に人工知能(AI:Artificial Intelligence)が実装されており、住宅H内に設けられた人感センサ等の検出結果に基づいてコントローラ50による制御が自動的に行われてもよい。
【0055】
以上までに説明してきた室内干し構造によれば、住宅Hにおいて室内干しに係る一連の作業を効率よく行うことができる。具体的には、住宅H内において、洗濯物が掛けられた物干し竿30をレール10に沿って自由に移動させることができるため、洗濯物を2階における任意の空間にて干すことができる。特に、本実施形態の室内干し構造によれば、2階の中で最も日当たりが良い空間、例えば、吹き抜け空間Fを物干しスペースとして有効に活用し、洗濯物を効率よく乾かすことができる。
【0056】
また、物干し竿30が、互いに分離した複数の竿片32によって構成されているため、レール10のコーナー部10aにおいて物干し竿30をスムーズに移動させることができる。また、複数の竿片32の一部を分離することで、2階における一つの空間に、分離させた竿片32を留めておくことができるため、例えば、乾いた洗濯物が掛けられた竿片32をウォークインクローゼットWに残しておくことができる。
【0057】
さらに、昇降機構40が設けられていることで、吹き抜け空間F内において、保持部20及び物干し竿30を昇降させることができる。これにより、洗濯物を干す(乾かす)際には、洗濯物が掛けられた物干し竿30を吹き抜け空間Fの上部に配置して、洗濯物を効率よく乾かすことができる。他方、洗濯物を物干し竿30から下ろす場合、あるいは、新たな洗濯物を物干し竿30に掛ける場合には、物干し竿30を吹き抜け空間Fの下部まで下ろすことで、これらの作業を容易に行うことができる。
【符号の説明】
【0058】
10 レール
10a コーナー部
12 第1レール部分
14 第2レール部分
16 第3レール部分
18 第4レール部分
20 保持部
22 移動部
24 滑車部
26 架設部
28 支持ワイヤ
30 物干し竿
32 竿片
34 電磁石
36 制御回路
40 昇降機構
42 操作ハンドル
50 コントローラ
F 吹き抜け空間
H 住宅(建物)
M 窓
S オープンスペース
W ウォークインクローゼット