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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024124896
(43)【公開日】2024-09-13
(54)【発明の名称】サスペンションアーム
(51)【国際特許分類】
   B60G 7/00 20060101AFI20240906BHJP
【FI】
B60G7/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023032873
(22)【出願日】2023-03-03
(71)【出願人】
【識別番号】000241496
【氏名又は名称】豊田鉄工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106781
【弁理士】
【氏名又は名称】藤井 稔也
(72)【発明者】
【氏名】若尾 優志
(72)【発明者】
【氏名】柳谷 有範
(72)【発明者】
【氏名】宮下 長武
(72)【発明者】
【氏名】神谷 啓介
【テーマコード(参考)】
3D301
【Fターム(参考)】
3D301AA90
3D301AB13
3D301CA11
3D301DA08
3D301DA54
3D301DA89
3D301DA94
3D301DB54
(57)【要約】
【課題】空力特性を向上できるサスペンションアームを提供する。
【解決手段】ロアアーム30は、アーム本体40と、アーム本体40をインサートして成形される樹脂成形部60とを備える。アーム本体40は、底壁41と、第1側壁42A及び第2側壁42Bと、第1フランジ45Aとを有している。樹脂成形部60は、第1側壁42Aの外方側の面を被覆する第1側壁被覆部61と、第1フランジ45Aを被覆する第1フランジ被覆部62と、第1フランジ被覆部62から下方に突出するとともに第1側壁被覆部61に連なる第1突出部63とを有している。第1フランジ被覆部62には、対向方向において第1フランジ45Aの基端側に向かうほど上方に位置するように傾斜する第1傾斜面62aが設けられている。第1突出部63には、下方に向かうほど第1側壁被覆部61までの距離が徐々に小さくなるように湾曲した第1湾曲面63aが設けられている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アーム本体と、前記アーム本体をインサートして成形される樹脂成形部と、を備えるサスペンションアームであって、
前記アーム本体は、底壁と、前記底壁から上方に突出するとともに互いに対向する第1側壁及び第2側壁と、前記第1側壁の突出方向における先端部から前記第1側壁と前記第2側壁とが対向する対向方向において前記第2側壁とは反対側に突出するフランジと、を有しており、
前記樹脂成形部は、
前記第1側壁の外方側の面を被覆する第1側壁被覆部と、
前記フランジを被覆するフランジ被覆部と、
前記フランジ被覆部から下方に突出するとともに前記第1側壁被覆部に連なる突出部と、を有しており、
前記フランジ被覆部には、前記対向方向において前記フランジの基端側に向かうほど上方に位置するように傾斜する傾斜面が設けられており、
前記突出部には、下方に向かうほど前記第1側壁被覆部までの距離が徐々に小さくなるように湾曲した湾曲面が設けられている、
サスペンションアーム。
【請求項2】
前記フランジを第1フランジとし、前記フランジ被覆部を第1フランジ被覆部とし、前記傾斜面を第1傾斜面とするとき、
前記アーム本体は、前記第2側壁の突出方向における先端部から前記対向方向において前記第1側壁とは反対側に突出する第2フランジを有しており、
前記樹脂成形部は、前記第2フランジを被覆する第2フランジ被覆部を有しており、
前記第2フランジ被覆部には、前記対向方向において前記第2フランジの先端側に向かうほど下方に位置するように傾斜する第2傾斜面が設けられている、
請求項1に記載のサスペンションアーム。
【請求項3】
前記突出部を第1突出部とし、前記湾曲面を第1湾曲面とするとき、
前記樹脂成形部は、前記第2側壁の外方側の面を被覆する第2側壁被覆部と、前記第2フランジ被覆部から下方に突出するとともに前記第2側壁被覆部に連なる第2突出部と、
を有しており、
前記第2突出部には、下方に向かうほど前記第2側壁被覆部までの距離が徐々に小さくなるように湾曲した第2湾曲面が設けられている、
請求項2に記載のサスペンションアーム。
【請求項4】
前記第2フランジ被覆部には、前記第2フランジの先端側に向かうほど上方に位置するように傾斜する第3傾斜面が設けられており、
前記第3傾斜面は、前記第2傾斜面よりも前記対向方向において前記第1側壁に近い位置に設けられている、
請求項2または請求項3に記載のサスペンションアーム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サスペンションアームに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車等の車両は、車体と車輪とを連結するサスペンションアームを備えている。
特許文献1に記載のサスペンションアームは、本体部と、本体部に加硫接着されたカバーとを備えている。本体部は、底壁と、底壁から突出するとともに対向する一対の側壁とを有している。一対の側壁の先端部には、互いに反対側に突出するフランジが設けられている。
【0003】
カバーは、一対の側壁のうち車両前方に配置される側壁を前方から被覆する前半部を有している。前半部は、車両前方に配置される側壁に設けられたフランジを被覆している。前半部の断面形状は、概ね三角形状をなしているため、サスペンションアームの断面形状が流線型に近付く。これにより、カバーは、前方からの走行風の空気抵抗を減少させる整流部材として機能する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006-56463号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1では、カバーのうちフランジを被覆する部分の形状がサスペンションアームの空力特性に与える影響について具体的に言及されていない。このため、サスペンションアームの空力特性を向上する上では、改善の余地がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するためのサスペンションアームは、アーム本体と、前記アーム本体をインサートして成形される樹脂成形部と、を備えるサスペンションアームであって、前記アーム本体は、底壁と、前記底壁から上方に突出するとともに互いに対向する第1側壁及び第2側壁と、前記第1側壁の突出方向における先端部から前記第1側壁と前記第2側壁とが対向する対向方向において前記第2側壁とは反対側に突出するフランジと、を有しており、前記樹脂成形部は、前記第1側壁の外方側の面を被覆する第1側壁被覆部と、前記フランジを被覆するフランジ被覆部と、前記フランジ被覆部から下方に突出するとともに前記第1側壁被覆部に連なる突出部と、を有しており、前記フランジ被覆部には、前記対向方向において前記フランジの基端側に向かうほど上方に位置するように傾斜する傾斜面が設けられており、前記突出部には、下方に向かうほど前記第1側壁被覆部までの距離が徐々に小さくなるように湾曲した湾曲面が設けられている。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、サスペンションアームの一実施形態であるロアアームを示す断面図である。
図2図2は、図1のロアアームが適用される車両の懸架装置を示す概略図である。
図3図3は、図1のロアアームを示す斜視図である。
図4図4は、図1のロアアームを構成するアーム本体と補強部材とを分離して示す分解斜視図である。
図5図5は、図1のロアアームの底面を示す斜視図である。
図6図6は、図1のロアアームにおける第1フランジ被覆部を中心とした拡大断面図である。
図7図7は、図1のロアアームにおける第2フランジ被覆部を中心とした拡大断面図である。
図8図8は、ロアアームにおける第1傾斜面の傾斜面角度とCd値との関係を示すグラフである。
図9図9は、ロアアームにおける第1傾斜面の傾斜面角度とCl値との関係を示すグラフである。
図10図10は、ロアアームにおける第2傾斜面の傾斜面角度とCd値との関係を示すグラフである。
図11図11は、ロアアームにおける第2傾斜面の傾斜面角度とCl値との関係を示すグラフである。
図12図12は、ロアアームにおける第1湾曲面の曲率半径とCd値との関係を示すグラフである。
図13図13は、ロアアームにおける第1湾曲面の曲率半径とCl値との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図1図13を参照して、サスペンションアームを懸架装置のロアアームとして具体化した一実施形態について説明する。
(懸架装置10)
図2に示すように、懸架装置10は、車体100と車輪110との間に配置されるとともに、車体100に対して車輪110を揺動自在に支持している。懸架装置10は、路面から車輪110を介して車体100に伝達される衝撃を緩和するとともに、路面に対して車輪110を押し付けるように構成されている。
【0009】
懸架装置10は、アッパーアーム20と、ロアアーム30と、サスペンションスプリング70とを備えている。
アッパーアーム20及びロアアーム30は、車幅方向に延びている。アッパーアーム20は、ロアアーム30の上方に配置されている。アッパーアーム20及びロアアーム30は、車体100のフレーム101と、車輪110を支持する支持部材111とを連結している。
【0010】
サスペンションスプリング70は、上下方向に延びている。サスペンションスプリング70の下端部は、ロアアーム30に支持されている。
(ロアアーム30)
図3に示すように、ロアアーム30は、アーム本体40と、補強部材50と、樹脂成形部60とを有している。補強部材50は、アーム本体40に対して接合されている。樹脂成形部60は、アーム本体40及び補強部材50をインサートして成形されている。
【0011】
(アーム本体40)
図4に示すように、アーム本体40は、底壁41と、第1側壁42Aと、第2側壁42Bと、第1フランジ45Aと、第2フランジ45Bとを有している。底壁41は、車幅方向に延びる長尺状をなしている。第1側壁42A及び第2側壁42Bは、底壁41の両側縁から上方に突出するとともに互いに対向している。第1フランジ45Aは、第1側壁42Aの突出方向における先端部から第1側壁42Aと第2側壁42Bとが対向する対向方向において第2側壁42Bとは反対側に突出している。第2フランジ45Bは、第2側壁42Bの突出方向における先端部から上記対向方向において第1側壁42Aとは反対側に突出している。アーム本体40は、上方に開口している。
【0012】
アーム本体40は、第1側壁42A及び第2側壁42Bが車両の前方及び後方にそれぞれ位置するように配置される。
以降において、底壁41が延びる方向をX軸方向と称する。第1側壁42Aと第2側壁42Bとが対向する対向方向をY軸方向と称する。X軸方向とY軸方向との双方に直交する方向をZ軸方向と称する。X軸方向は、車幅方向と一致する方向である。Y軸方向は、車両の前後方向と一致する方向である。Z軸方向は、上下方向と一致する方向である。
【0013】
アーム本体40は、例えば、金属板をプレス加工することにより成形されている。アーム本体40の材料としては、高張力鋼などの金属材料が挙げられる。
底壁41のX軸方向における中間部41aは、その他の部分よりもY軸方向における幅が大きい。中間部41aのY軸方向における幅は、X軸方向における両側の部分ほど徐々に小さくなっている。底壁41の中間部41aは、Z軸方向から視て紡錘状をなしている。
【0014】
底壁41のうちX軸方向の両側において中間部41aに隣り合う部分は、X軸方向において直線状に延びている。
第1側壁42A及び第2側壁42Bは、Y軸方向において対称な形状をなしている。このため、以降では、第1側壁42Aの構成について説明することで、第2側壁42Bの構成についての説明を省略することがある。
【0015】
第1側壁42Aは、底壁41のX軸方向における全体にわたって延びている。第1側壁42AのX軸方向における一端部であって、後述する第1連結部47を構成する部分は、底壁41よりもX軸方向に突出している。
【0016】
図1に示すように、第1側壁42Aのうち中間部41aから突出する部分は、底壁41に連なる傾斜部43と、傾斜部43に連なる直線部44とを有している。
傾斜部43は、上方に向かうほどY軸方向において第2側壁42Bから離れるように傾斜している。
【0017】
直線部44は、Z軸方向において直線状に延びている。第1側壁42Aの直線部44及び第2側壁42Bの直線部44は、平行に延びている。
図4に示すように、第1フランジ45Aは、第1側壁42AのX軸方向における全体にわたって延びている。第2フランジ45Bは、第2側壁42BのX軸方向における全体にわたって延びている。
【0018】
アーム本体40は、スプリング収容部46と、第1連結部47と、第2連結部48とを有している。スプリング収容部46は、アーム本体40のX軸方向における中央部を構成している。第1連結部47及び第2連結部48は、スプリング収容部46のX軸方向における両端にそれぞれ連なっている。
【0019】
(スプリング収容部46)
スプリング収容部46は、中間部41aと、第1側壁42Aと、第2側壁42Bとによって、サスペンションスプリング70の下端部が収容される収容空間を形成している。
【0020】
スプリング収容部46における第1側壁42A及び第2側壁42Bは、Y軸方向において互いに反対側に膨出している。
スプリング収容部46の底部、すなわち中間部41aには、Z軸方向に貫通する貫通孔46aが設けられている。貫通孔46aは、円形状をなしている。
【0021】
(第1連結部47)
第1連結部47は、アーム本体40における車体100に連結される部分である。第1連結部47における第1側壁42A及び第2側壁42Bは、X軸方向において平行に延びている。第1連結部47における第1側壁42A及び第2側壁42Bは、底壁41のX軸方向における端縁よりもX軸方向に突出している。
【0022】
第1連結部47における第1側壁42A及び第2側壁42Bには、Y軸方向に貫通する第1連結孔47aがそれぞれ設けられている。第1連結部47は、第1連結孔47aに挿入された図示しない回転軸を介して車体100のフレーム101に対して回転可能に連結される。
【0023】
(第2連結部48)
第2連結部48は、アーム本体40における車輪110に連結される部分である。第2連結部48における第1側壁42A及び第2側壁42Bは、X軸方向において平行に延びている。
【0024】
第2連結部48における第1側壁42A及び第2側壁42Bには、Y軸方向に貫通する第2連結孔48aがそれぞれ設けられている。第2連結部48は、第2連結孔48aに挿入された図示しない回転軸を介して車輪110の支持部材111に対して回転可能に連結される。
【0025】
(補強部材50)
補強部材50は、平板状をなしている。補強部材50は、スプリング収容部46を上方から覆っている。補強部材50は、Z軸方向から視て紡錘状をなしている。
【0026】
補強部材50の材料としては、高張力鋼などの金属材料が挙げられる。
補強部材50は、スプリング収容部46における第1フランジ45A及び第2フランジ45Bの上面に対して、例えば溶接により接合されている。
【0027】
補強部材50のY軸方向における両端縁は、スプリング収容部46における第1フランジ45A及び第2フランジ45BのY軸方向における端縁よりも内側に位置している。
補強部材50には、サスペンションスプリング70が挿入される挿入孔50aが設けられている。挿入孔50aは、スプリング収容部46の収容空間に連通している。
【0028】
(樹脂成形部60)
図1に示すように、樹脂成形部60は、第1側壁被覆部61と、第1フランジ被覆部62と、複数の第1突出部63と、第2側壁被覆部64と、第2フランジ被覆部65と、複数の第2突出部66と、底壁被覆部67とを有している。
【0029】
樹脂成形部60は、補強部材50が接合されたアーム本体40が図示しない金型装置の内部にインサート品として配置された後、当該金型装置の内部に樹脂が充填されることにより成形されている。
【0030】
樹脂成形部60の材料としては、例えば、熱可塑性の樹脂材料が挙げられる。
(第1側壁被覆部61)
第1側壁被覆部61は、第1側壁42Aの外方側の面を被覆している。より詳しくは、第1側壁被覆部61は、第1側壁42Aの外方側の面のうち第1連結孔47a及び第2連結孔48aのそれぞれの周囲を除く部分を被覆している。第1側壁42Aの外方側の面は、第1側壁42Aにおける第2側壁42Bに対向する面とは反対側の面である。
【0031】
第1側壁被覆部61は、第1側壁42Aの傾斜部43を被覆する傾斜被覆部61aと、第1側壁42Aの直線部44を被覆する直線被覆部61bとを有している。傾斜被覆部61aは、第1側壁42Aの傾斜部43における外方側の面に沿って延びている。直線被覆部61bは、第1側壁42Aの直線部44における外方側の面に沿って延びている。
【0032】
第1側壁被覆部61は、第1側壁42AのX軸方向における両端をY軸方向における両側、及びX軸方向における一方側から被覆している。
(第1フランジ被覆部62)
第1フランジ被覆部62は、第1フランジ45Aを被覆している。第1フランジ被覆部62は、第1フランジ45AをZ軸方向における両側、及びY軸方向における一方側から被覆している。第1フランジ被覆部62は、第1フランジ45AをX軸方向における全体にわたって被覆している。
【0033】
スプリング収容部46においては、第1フランジ被覆部62は、第1フランジ45Aに加えて、第1フランジ45Aと補強部材50との接合部分を被覆している。
図6に示すように、第1フランジ被覆部62の上部には、第1傾斜面62aが設けられている。第1傾斜面62aは、Y軸方向において第1フランジ45Aの基端側、すなわち後方に向かうほど上方に位置するように傾斜している。
【0034】
第1傾斜面62aは、例えば、第1フランジ被覆部62のX軸方向における全体にわたって設けられている。
第1傾斜面62aは、第1フランジ45Aの先端部の上方から基端部の上方にわたって延びている。第1フランジ被覆部62の上面は、例えば、第1傾斜面62aのみによって構成されている。
【0035】
(第1突出部63)
図5に示すように、第1フランジ被覆部62の下部には、複数の第1突出部63がX軸方向に互いに間隔をおいて設けられている。複数の第1突出部63は、樹脂成形部60のうちスプリング収容部46を被覆する部分に設けられている。
【0036】
第1突出部63は、X軸方向を厚さ方向とする薄板状をなしている。
図6に示すように、第1突出部63は、下方に突出するとともに第1側壁被覆部61の直線被覆部61bに連なっている。したがって、第1突出部63は、第1フランジ被覆部62と直線被覆部61bとを連結している。
【0037】
第1突出部63には、第1フランジ被覆部62から離れるほど直線被覆部61bまでの距離が徐々に小さくなるように湾曲した第1湾曲面63aが設けられている。より詳しくは、第1湾曲面63aは、下方に向かうほどY軸方向における直線被覆部61bまでの距離が徐々に小さくなるように湾曲している。第1湾曲面63aは、X軸方向から視て円弧状をなしている。第1湾曲面63aの下端は、直線被覆部61bに段差無く連なっている。
【0038】
(第2側壁被覆部64)
図1に示すように、第2側壁被覆部64は、第2側壁42Bの外方側の面を被覆している。より詳しくは、第2側壁被覆部64は、第2側壁42Bの外方側の面のうち第1連結孔47a及び第2連結孔48aのそれぞれの周囲を除く部分を被覆している。第2側壁42Bの外方側の面は、第2側壁42Bにおける第1側壁42Aに対向する面とは反対側の面である。
【0039】
第2側壁被覆部64は、第2側壁42Bの傾斜部43を被覆する傾斜被覆部64aと、第2側壁42Bの直線部44を被覆する直線被覆部64bとを有している。傾斜被覆部64aは、第2側壁42Bの傾斜部43における外方側の面に沿って延びている。直線被覆部64bは、第2側壁42Bの直線部44における外方側の面に沿って延びている。
【0040】
第2側壁被覆部64は、第2側壁42BのX軸方向における両端をY軸方向における両側、及びX軸方向における一方側から被覆している。
(第2フランジ被覆部65)
第2フランジ被覆部65は、第2フランジ45Bを被覆している。第2フランジ被覆部65は、第2フランジ45BをZ軸方向における両側、及びY軸方向における一方側から被覆している。第2フランジ被覆部65は、第2フランジ45BをX軸方向における全体にわたって被覆している。
【0041】
スプリング収容部46においては、第2フランジ被覆部65は、第2フランジ45Bに加えて、第2フランジ45Bと補強部材50との接合部分を被覆している。
第2フランジ被覆部65の上部における後端部には、第2傾斜面65aが設けられている。第2傾斜面65aは、第2フランジ45Bの先端部の上方に位置している。第2傾斜面65aは、Y軸方向において第2フランジ45Bの先端側、すなわち車両の後側に向かうほど下方に位置するように傾斜している。第2傾斜面65aは、例えば、第2フランジ被覆部65のX軸方向における全体にわたって設けられている。
【0042】
第2フランジ被覆部65の上部における前端部には、第3傾斜面65bが設けられている。第3傾斜面65bは、第2フランジ45Bの基端部の上方に位置している。第3傾斜面65bは、第2傾斜面65aよりもY軸方向において第1側壁42Aに近い位置に設けられている。第3傾斜面65bは、Y軸方向において第2フランジ45Bの先端側、すなわち車両の後側に向かうほど上方に位置するように傾斜している。第3傾斜面65bは、例えば、第2フランジ被覆部65のX軸方向における全体にわたって設けられている。
【0043】
第2傾斜面65aと第3傾斜面65bとは、Y軸方向において隣接している。第2傾斜面65aと第3傾斜面65bとの境界部は、第2フランジ被覆部65のY軸方向における中央に位置している。第2フランジ被覆部65の上面は、例えば、第2傾斜面65a及び第3傾斜面65bのみによって構成されている。
【0044】
(第2突出部66)
第2フランジ被覆部65の下部には、複数の第2突出部66がX軸方向に互いに間隔をおいて設けられている。複数の第2突出部66は、樹脂成形部60のうちスプリング収容部46を被覆する部分に設けられている。複数の第2突出部66は、Y軸方向において複数の第1突出部63とそれぞれ同一の位置に設けられている。
【0045】
図7に示すように、第2突出部66は、下方に突出するとともに第2側壁被覆部64の直線被覆部64bに連なっている。したがって、第2突出部66は、第2フランジ被覆部65と直線被覆部64bとを連結している。
【0046】
第2突出部66には、第2フランジ被覆部65から離れるほど直線被覆部64bまでの距離が徐々に小さくなるように湾曲した第2湾曲面66aが設けられている。より詳しくは、第2湾曲面66aは、下方に向かうほどY軸方向における直線被覆部64bまでの距離が徐々に小さくなるように湾曲している。第2湾曲面66aは、X軸方向から視て円弧状をなしている。第2湾曲面66aの下端は、直線被覆部64bに段差無く連なっている。
【0047】
(底壁被覆部67)
図1及び図5に示すように、底壁被覆部67は、底壁41の外方側の面の全体を被覆している。底壁41の外方側の面は、底壁41の下面である。
【0048】
底壁被覆部67は、底壁41のX軸方向における両端部をZ軸方向における両側、及びX軸方向における一方側から被覆している。
図1に示すように、底壁被覆部67は、貫通孔46aの周縁部をZ軸方向における両側、及び貫通孔46aの内面側から被覆している。
【0049】
(シミュレーション結果)
第1傾斜面62aの傾斜面角度θ1、第2傾斜面65aの傾斜面角度θ2、及び第1湾曲面63aの曲率半径R1を変化させた場合のロアアーム30の空力特性について、シミュレーション結果を用いて説明する。本シミュレーションでは、車両の走行時に第1側壁42A側から第2側壁42B側に向かって空気が流れる場合におけるロアアーム30の空力特性について評価した。
【0050】
図6に示すように、本シミュレーションにおける傾斜面角度θ1は、X軸方向から第1フランジ被覆部62を視たときに、Y軸方向に延びる仮想軸線Vと第1傾斜面62aとがなす角度である。図7に示すように、傾斜面角度θ2は、X軸方向から第2フランジ被覆部65を視たときに、仮想軸線Vと第2傾斜面65aとがなす角度である。
【0051】
図8は、傾斜面角度θ1を0°~10°まで変化させた際のロアアーム30の抗力係数であるCd値(以下、単にCd値という)の変化を示すグラフである。
図8に示すように、傾斜面角度θ1が、大きくなるほどCd値が低減されることが確認された。本シミュレーションでは、傾斜面角度θ1が10°の場合にCd値が最も小さくなった。
【0052】
図9は、傾斜面角度θ1を0°~10°まで変化させた際のロアアーム30の揚力係数であるCl値(以下、単にCl値という)の変化を示すグラフである。
図9に示すように、傾斜面角度θ1が0°から5°に近付くほどCl値が低減され、傾斜面角度θ1が5°より大きくなるほどCl値が増加することが確認された。本シミュレーションでは、傾斜面角度θ1が5°の場合にCl値が最も小さくなった。なお、傾斜面角度θ1が10°の場合のCl値は、傾斜面角度θ1が0°の場合よりも大きくなった。
【0053】
図10は、傾斜面角度θ2を0°~10°まで変化させた際のCd値の変化を示すグラフである。
図10に示すように、傾斜面角度θ2が、大きくなるほどCd値が低減されることが確認された。本シミュレーションでは、傾斜面角度θ2が10°の場合にCd値が最も小さくなった。
【0054】
図11は、傾斜面角度θ2を0°~10°まで変化させた際のCl値の変化を示すグラフである。
図11に示すように、傾斜面角度θ2が10°に近付くほどCl値が低減されることが確認された。本シミュレーションでは、傾斜面角度θ2が10°の場合にCl値が最も小さくなった。
【0055】
図12は、曲率半径R1を10mm~50mmまで変化させた際のCd値の変化を示すグラフである。
図12に示すように、曲率半径R1が大きくなるほどCd値が低減されることが確認された。本シミュレーションでは、曲率半径R1が50mmの場合にCd値が最も小さくなった。
【0056】
図13は、曲率半径R1を10mm~50mmまで変化させた際のCl値の変化を示すグラフである。
図13に示すように、曲率半径R1が大きくなるほどCl値が増加することが確認された。
【0057】
Cl値が過度に負の値となる場合、車両の転がり抵抗が増加する要因となるため、Cl値は概ね0であることが好ましい。本シミュレーションでは、曲率半径R1が10mmの場合、Cl値は0よりも小さくなり、曲率半径R1が50mmの場合、Cl値は0よりも大きくなった。また、曲率半径R1が30mm程度の場合に、Cl値が概ね0となった。
【0058】
以上のことから、傾斜面角度θ1を5°、傾斜面角度θ2を10°、曲率半径R1を30mmに設定することにより、ロアアーム30の空力特性を効果的に向上できることが分かる。
【0059】
なお、第1フランジ被覆部62の下部では、第1フランジ被覆部62を上方に押し上げようとする空気の流れが生じる。このため、Cl値を低減する上で、第1フランジ被覆部62のY軸方向における長さは、第1フランジ45Aと補強部材50との溶接代を確保できる範囲内において短いことが好ましい。このことは、第2フランジ被覆部65についても同様である。
【0060】
本実施形態の作用及び効果について説明する。
(1)ロアアーム30は、アーム本体40と、アーム本体40をインサートして成形される樹脂成形部60とを備える。アーム本体40は、底壁41と、底壁41から上方に突出するとともに互いに対向する第1側壁42A及び第2側壁42Bと、第1側壁42Aの突出方向における先端部から対向方向において第2側壁42Bとは反対側に突出する第1フランジ45Aとを有している。樹脂成形部60は、第1側壁42Aの外方側の面を被覆する第1側壁被覆部61と、第1フランジ45Aを被覆する第1フランジ被覆部62と、第1フランジ被覆部62から下方に突出するとともに第1側壁被覆部61に連なる第1突出部63とを有している。第1フランジ被覆部62には、対向方向において第1フランジ45Aの基端側に向かうほど上方に位置するように傾斜する第1傾斜面62aが設けられている。第1突出部63には、下方に向かうほど第1側壁被覆部61までの距離が徐々に小さくなるように湾曲した第1湾曲面63aが設けられている。
【0061】
上記構成によれば、図6に矢印にて示すように、車両の走行時に第1側壁42A側から第2側壁42B側に向かって第1フランジ被覆部62の上方を通過する空気は、第1傾斜面62aに沿って斜め上方に流れる。これにより、空気が整流されるため、ロアアーム30に生じる抗力の増加を抑制できる。更に、第1傾斜面62aに沿って流れる空気によって、第1傾斜面62aが下方に向けて押さえ付けられる。これにより、ロアアーム30に生じる揚力の増加を抑制できる。
【0062】
また、図6に矢印にて示すように、第1側壁42A側から第2側壁42B側に向かって第1フランジ被覆部62の下方を通過する空気は、第1湾曲面63aに沿って斜め下方に流れる。これにより、空気が整流されるため、ロアアーム30に生じる抗力の増加を抑制できる。更に、空気が第1湾曲面63aに沿って斜め下方に流れるため、第1フランジ被覆部62を上方に押し上げようとする流れが生じにくくなる。これにより、ロアアーム30に生じる揚力の増加を抑制できる。
【0063】
以上のことから、ロアアーム30における空力特性を向上できる。
(2)アーム本体40は、第2側壁42Bの突出方向における先端部から対向方向において第1側壁42Aとは反対側に突出する第2フランジ45Bを有している。樹脂成形部60は、第2フランジ45Bを被覆する第2フランジ被覆部65を有している。第2フランジ被覆部65には、対向方向において第2フランジ45Bの先端側に向かうほど下方に位置するように傾斜する第2傾斜面65aが設けられている。
【0064】
上記構成によれば、図7に矢印にて示すように、車両の走行時に第1側壁42A側から第2側壁42B側に向かって第2フランジ被覆部65の上方を通過する空気は、第2傾斜面65aに沿って斜め下方に流れる。これにより、空気が整流されるため、ロアアーム30に生じる抗力の増加を抑制できる。更に、第2傾斜面65aに沿って流れる空気によって、第2傾斜面65aが下方に向けて押さえ付けられる。これにより、ロアアーム30に生じる揚力の増加を抑制できる。したがって、ロアアーム30における空力特性を向上できる。
【0065】
(3)樹脂成形部60は、第2側壁42Bの外方側の面を被覆する第2側壁被覆部64と、第2フランジ被覆部65から下方に突出するとともに第2側壁被覆部64に連なる第2突出部66と、を有している。第2突出部66には、下方に向かうほど第2側壁被覆部64までの距離が徐々に小さくなるように湾曲した第2湾曲面66aが設けられている。
【0066】
上記構成によれば、図7に矢印にて示すように、車両の走行時に底壁41側から上方に向かって第2フランジ被覆部65の下方を通過する空気は、第2湾曲面66aに沿って斜め上方に流れる。これにより、空気が整流されるため、ロアアーム30に生じる抗力の増加を抑制できる。更に、空気が第2湾曲面66aに沿って斜め上方に流れるため、第2フランジ被覆部65を上方に押し上げようとする流れが生じにくくなる。これにより、ロアアーム30に生じる揚力の増加を抑制できる。したがって、ロアアーム30における空力特性を向上できる。
【0067】
(4)第2フランジ被覆部65には、第2フランジ45Bの先端側に向かうほど上方に位置するように傾斜する第3傾斜面65bが設けられている。第3傾斜面65bは、第2傾斜面65aよりも対向方向において第1側壁42Aに近い位置に設けられている。
【0068】
上記構成によれば、図7に矢印にて示すように、車両の走行時に第1側壁42A側から第2側壁42B側に向かって第2フランジ被覆部65の上方を通過する空気は、第3傾斜面65bに沿って斜め上方に流れた後に第2傾斜面65aに沿って斜め下方に流れる。これにより、空気が整流されるため、ロアアーム30に生じる抗力の増加を抑制できる。更に、第3傾斜面65bに沿って流れる空気によって、第3傾斜面65bが下方に向けて押さえ付けられる。これにより、ロアアーム30に生じる揚力の増加を抑制できる。したがって、ロアアーム30における空力特性を向上できる。
【0069】
<変更例>
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0070】
・第3傾斜面65bは、第2フランジ被覆部65のX軸方向における一部に設けられていてもよい。
・第2フランジ被覆部65から第3傾斜面65bが省略されてもよい。
【0071】
・樹脂成形部60から第2突出部66が省略されてもよい。
・第2傾斜面65aは、第2フランジ被覆部65のX軸方向における一部に設けられていてもよい。
【0072】
・第2フランジ被覆部65から第2傾斜面65aが省略されてもよい。
・樹脂成形部60から第2フランジ被覆部65が省略されてもよい。この場合、アーム本体40から第2フランジ45Bが省略されてもよい。
【0073】
・第1傾斜面62aは、第1フランジ被覆部62のX軸方向における一部に設けられていてもよい。
・樹脂成形部60は、X軸方向に連続して延びる単一の第1突出部63を有するものであってもよい。
【0074】
・樹脂成形部60は、X軸方向に連続して延びる単一の第2突出部66を有するものであってもよい。
・ロアアーム30から補強部材50が省略されてもよい。
【0075】
・ロアアーム30は、懸架装置10のアッパーアーム20に対して適用されてもよい。
【符号の説明】
【0076】
V…仮想軸線
θ1,θ2…傾斜面角度
R1…曲率半径
10…懸架装置
20…アッパーアーム
30…ロアアーム
40…アーム本体
41…底壁
41a…中間部
42A…第1側壁
42B…第2側壁
43…傾斜部
44…直線部
45A…第1フランジ
45B…第2フランジ
46…スプリング収容部
46a…貫通孔
47…第1連結部
47a…第1連結孔
48…第2連結部
48a…第2連結孔
50…補強部材
50a…挿入孔
60…樹脂成形部
61…第1側壁被覆部
61a,64a…傾斜被覆部
61b,64b…直線被覆部
62…第1フランジ被覆部
62a…第1傾斜面
63…第1突出部
63a…第1湾曲面
64…第2側壁被覆部
65…第2フランジ被覆部
65a…第2傾斜面
65b…第3傾斜面
66…第2突出部
66a…第2湾曲面
67…底壁被覆部
70…サスペンションスプリング
100…車体
101…フレーム
110…車輪
111…支持部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13