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特開2024-124901定着装置およびそれを備えた画像形成装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024124901
(43)【公開日】2024-09-13
(54)【発明の名称】定着装置およびそれを備えた画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/20 20060101AFI20240906BHJP
【FI】
G03G15/20 555
G03G15/20 510
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023032879
(22)【出願日】2023-03-03
(71)【出願人】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100159385
【弁理士】
【氏名又は名称】甲斐 伸二
(74)【代理人】
【識別番号】100163407
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 裕輔
(74)【代理人】
【識別番号】100166936
【弁理士】
【氏名又は名称】稲本 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100174883
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 雅己
(74)【代理人】
【識別番号】100189429
【弁理士】
【氏名又は名称】保田 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100213849
【弁理士】
【氏名又は名称】澄川 広司
(72)【発明者】
【氏名】北見 憲治
(72)【発明者】
【氏名】山名 真司
【テーマコード(参考)】
2H033
【Fターム(参考)】
2H033AA02
2H033AA30
2H033BA26
2H033BA27
2H033BA31
2H033BA32
2H033BB03
2H033BB05
2H033BB06
2H033BB13
2H033BB14
2H033BB15
2H033BB29
2H033BB30
2H033BB39
2H033BE03
2H033CA03
2H033CA04
2H033CA05
2H033CA07
2H033CA27
2H033CA44
(57)【要約】
【課題】回転定着部材の軸線方向に異なった領域の定着温度が予熱開始から目標に達するまでに時間差があっても定着強度不足が生じないように制御する。
【解決手段】定着ヒータからの熱が供給される回転定着部材と、回転定着部材の軸線方向における中央および両端の領域をそれぞれ加熱する第1および第2の定着ヒータと、第1および第2の定着ヒータに供給する電力をそれぞれ制御する第1および第2の定着ヒータ制御回路と、中央および両端の領域の定着温度をそれぞれ検出する第1および第2の定着温度センサとを備え、第1および第2の定着ヒータ制御回路は、予熱の開始後中央および両端の領域の定着温度がそれぞれの予熱の目標に達するまでそれぞれの定着ヒータに電力を供給し、何れか一方の定着温度が予熱の目標に達し他方の定着温度が予熱の目標に未達の間は、一方の目標をより高い予熱完了待機温度に更新して制御を続ける定着装置。
【選択図】図5A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トナーを用紙に定着させるために定着ヒータからの熱が供給されかつ前記用紙を搬送するために回転する回転定着部材と、
前記回転定着部材の軸線方向における中央および両端の領域をそれぞれ加熱する第1および第2の定着ヒータと、
前記第1および第2の定着ヒータに供給する電力をそれぞれ制御する第1および第2の定着ヒータ制御回路と、
前記中央および両端の領域の定着温度をそれぞれ検出する第1および第2の定着温度センサとを備え、
前記第1および第2の定着ヒータ制御回路は、予熱の開始後前記中央および両端の領域の定着温度がそれぞれの予熱の目標に達するまでそれぞれの定着ヒータに電力を供給し、何れか一方の定着温度が予熱の目標に達し他方の定着温度が予熱の目標に未達の間は、前記一方の目標を前記予熱の目標より高い予熱完了待機温度に更新して、対応する定着ヒータの制御を続ける定着装置。
【請求項2】
前記定着温度が予熱の目標に達した方の定着ヒータ制御回路は、前記一方の定着温度が前記予熱の目標に達した時点で未達の方の定着温度と予熱の目標との差分の程度に応じて、その差分がより大きな場合により高い前記予熱完了待機温度とする請求項1に記載の定着装置。
【請求項3】
各定着ヒータ制御回路がプロセッサとメモリを含む回路であり、前記定着温度が予熱の目標に達した方の定着ヒータ制御回路は、前記予熱完了待機温度を前記メモリに予め格納されたデータテーブルを参照して決定する請求項2に記載の定着装置。
【請求項4】
前記予熱の完了後に開始されるジョブ実行において、各定着ヒータ制御回路はジョブ実行中の目標を予め定められたジョブ制御温度とするが、ジョブ実行開始から所定の期間であるオーバーシュート許容期間に限り前記目標を前記ジョブ制御温度以上かつ前記予熱完了待機温度以上のオーバーシュート許容温度とする請求項1に記載の定着装置。
【請求項5】
前記オーバーシュート許容期間は、ジョブ実行により通紙される用紙のサイズと所定の枚数が通紙されるまでの期間とに応じた期間である請求項4に記載の定着装置。
【請求項6】
各定着ヒータ制御回路は、前記オーバーシュート許容期間が終了した後、目標を前記オーバーシュート許容温度から前記ジョブ制御温度へ段階的に変更する請求項4に記載の定着装置。
【請求項7】
前記中央および両端の領域は、前記軸線方向における用紙幅が最大のサイズよりも小さいサイズの用紙に対応して分割されたものである請求項1に記載の定着装置。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一つに記載の定着装置を備える画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、用紙の幅方向において異なる領域を加熱するための複数の定着ヒータを有する定着装置及びそれを備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
トナー像を形成して用紙に転写し定着させる定着装置を備えた画像形成装置が知られている。定着装置は、熱源である定着ヒータの熱をローラやベルトを介して用紙上のトナーに供給してトナーを溶融させ用紙に定着させる。定着ヒータとして、例えばハロゲンランプが多用されている。また、上述のローラやベルトをこの明細書で回転定着部材と呼ぶ。回転定着部材の温度(定着温度)が適切でなければ、トナーの溶融が不十分で十分な定着強度が得られなかったり(定着不良)、定着温度が高すぎて高温オフセットが発生したりするといった問題が起こり得る。そこで、定着温度の制御は、例えば定着ヒータへの通電をトライアック等の電力制御素子でオンおよびオフしあるいはオンデューティー(点弧の位相)を制御する。そして、回転定着部材の温度を定着温度センサで検出し、定着温度が目標に対して所定の範囲に温度を保つように電力制御素子を制御することが行われる。
【0003】
また、用紙の搬送方向に直交する幅方向において、異なる用紙幅に対応した領域を加熱するために複数の定着ヒータ配置したものがある。例えば、A4サイズ用紙の短辺にほぼ対応する中央領域の回転定着部材を加熱する第1の定着ヒータと、A3サイズ用紙の短辺にほぼ対応する両端領域の回転定着部材を加熱する第2の定着ヒータを配置したものである。A4サイズ用紙を縦送りする場合は中央領域のみを加熱し、A3サイズ用紙を縦送りする場合は中央領域および両端領域を加熱する。
【0004】
定着温度の制御に関して、次のものが知られている。定着装置は、未定着トナー像を担持する記録材と接触する回転部材と、回転部材の内部に配置され単位長さ当たりの発熱量が両端領域より中央領域の方が大きい第一のヒータと、単位長さ当たりの発熱量が中央領域より両端領域の方が大きい第二のヒータとを有する。また、中央領域の温度を検出する第一の温度検知部と、両端の非通紙領域の温度を検出する第二の温度検知部を有する。そして、予熱を開始するとき、中央領域の温度が第一の目標温度に到達するように第一のヒータへの通電を制御し、非通紙領域の温度が第二の目標温度に到達するように第二のヒータへの通電を制御する。しかし、初期温度が所定温度より低い場合は、中央領域の目標温度を第一の目標温度より高く設定し、非通紙領域の目標温度を第二の目標温度より低く設定する。そうすることで、初期温度にかかわらず予熱(ウォームアップ)終了後の定着動作で定着不良やホットオフセットが生じない温度分布にするものである(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009-053677号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
中央領域と両端領域を個別の定着ヒータで加熱し、個別の定着温度センサで温度検出して個別に電力制御する場合、予熱開始後一方領域の定着温度が目標に到達すると、制御回路は対応する定着ヒータへの電力をオフにするのが自然である。そうすることによって、予熱の目標に対して定着温度を所定の範囲内に収めることが可能である。定着ヒータがオフになっても、対応する領域の定着温度は熱容量のために応答が遅れしばらくしてから降下する。一方の定着温度が降下中に他方の定着温度が予熱の目標に到達すると、予熱が完了したものとしてジョブ実行(通紙)が開始される。一方の領域では定着温度の降下中に通紙が開始される。通紙が開始されて定着温度がジョブ実行中の目標を下回ると、制御回路は定着ヒータをオンする。しかし、熱容量のために応答が遅れ、定着温度はしばらくしてから上昇する。定着ヒータをオンしてからの応答遅れの期間中、通紙によって定着装置から熱が奪われる。応答遅れの期間中に定着温度が降下する程度によっては十分な定着強度が得られないことが起こりえる。予熱開始時の周囲温度や初期温度の違いによって、中央領域と両端領域のそれぞれの定着温度が目標に到達する時間差は異なる。その時間差を常にゼロにすることは容易なことでない。
本開示は、以上のような事情を考慮してなされたものであって、異なった領域の定着温度が予熱開始から目標に達するまでに時間差があっても、定着強度の不足が生じないように制御するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、トナーを用紙に定着させるために定着ヒータからの熱が供給されかつ前記用紙を搬送するために回転する回転定着部材と、前記回転定着部材の軸線方向における中央および両端の領域をそれぞれ加熱する第1および第2の定着ヒータと、前記第1および第2の定着ヒータに供給する電力をそれぞれ制御する第1および第2の定着ヒータ制御回路と、前記中央および両端の領域の定着温度をそれぞれ検出する第1および第2の定着温度センサとを備え、前記第1および第2の定着ヒータ制御回路は、予熱の開始後、前記中央および両端の領域の定着温度がそれぞれの予熱の目標に達するまでそれぞれの定着ヒータに電力を供給し、何れか一方の定着温度が予熱の目標に達し他方の定着温度が予熱の目標に未達の間は、前記一方の目標を前記予熱の目標より高い予熱完了待機温度に更新して、対応する定着ヒータの制御を続ける定着装置を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本開示による定着装置において、第1および第2の定着ヒータ制御回路は、予熱の開始後、前記中央および両端の領域の何れか一方の定着温度が予熱の目標に達し他方の定着温度が予熱の目標に未達の間は、前記一方の目標を前記予熱の目標より高い予熱完了待機温度に更新して、対応する定着ヒータの制御を続けるので、回転定着部材の軸線方向に異なった領域の定着温度が予熱開始から目標に達するまでに時間差があっても、定着強度の不足が生じないように制御できる。
前記定着装置を備えた画像形成装置も同様の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】この実施形態に係る画像形成装置の構成を示す概略断面図である。
図2図1に示す画像形成装置が備える定着装置の構成を示す概略断面図である。
図3図1に示す画像形成装置の電気的構成を示す機能ブロック図である。
図4図2に示す定着装置の幅方向における中央領域および両端領域の具体的な一例を示す説明図である。
図5A図2および図4に示す定着装置の予熱中およびジョブ実行開始当初の定着温度推移の一例と制御目標を示すグラフである。
図5B図2および図4に示す定着装置の予熱中およびジョブ実行開始当初の定着温度推移の異なる一例と制御目標を示すグラフである。
図6図2および図4に示す定着装置の第1定着ヒータ制御回路が温度差Δ1に応じて決定する加算温度Sの例を示す説明図である。
図7図2および図4に示す定着装置のオーバーシュート許容期間終了後の定着温度推移の一例と制御目標を示すグラフである。
図8】オーバーシュート許容期間終了後に目標を変更する段階の具体例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を用いて本開示をさらに詳述する。なお、以下の説明は、すべての点で例示であって、本開示を限定するものと解されるべきではない。
≪画像形成装置≫
図1は、本発明の実施形態に係る画像形成装置100の構成を模式的に示す概略断面図である。
【0011】
画像形成装置100は、コピー機能、スキャナ機能、ファクシミリ機能およびプリンタ機能を有する複合機である。画像読取装置102で読み取った原稿の画像を外部に送信したり、画像読取装置102で読み取った原稿の画像または外部から受信した画像を、画像形成部101により用紙等の記録媒体上にカラーまたは単色で形成したりする。
【0012】
画像読取部130の上側には、画像読取部130に対して開閉自在に支持された原稿送り装置160(自動原稿搬送装置:ADF)が設けられている。原稿送り装置160は、1枚または複数枚の原稿を1枚ずつ順に搬送する。画像読取装置102は、原稿送り装置160により1枚ずつ搬送される原稿を読み取る。画像読取装置102は、原稿を載置する原稿載置台130Aと、原稿載置台130A上に載置された原稿を読み取る載置原稿読取機能とを備えている。画像読取部130は、走査光学系130Bを走査して原稿載置台130Aに載置された原稿を読み取るか、または原稿送り装置160で搬送される原稿を読み取って画像データを生成する。
【0013】
画像形成部101には、定着装置1、現像装置2、感光体ドラム3、ドラムクリーニング装置4、帯電器5、中間転写ベルト装置7、2次転写装置11、光走査装置12、給紙部18等が設けられている。
【0014】
画像形成部101では、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の各色を用いたカラー画像、または、単色(例えば、ブラック)を用いたモノクロ画像に応じた画像データが扱われる。画像転写部50には、4種類のトナー像を形成するための現像装置2、感光体ドラム3、ドラムクリーニング装置4および帯電器5が4つずつ設けられ、それぞれがブラック、シアン、マゼンタおよびイエローに対応付けられて、4つの画像ステーションPa、Pb、Pc、Pdが構成されている。
【0015】
光走査装置12は、感光体ドラム3の表面を露光して静電潜像を形成する。現像装置2は、感光体ドラム3の表面の静電潜像を現像して、感光体ドラム3の表面にトナー像を形成する。ドラムクリーニング装置4は、感光体ドラム3の表面の残留トナーを除去および回収する。帯電器5は、感光体ドラム3の表面を所定の電位に均一に帯電させる。上述した一連の動作によって、各感光体ドラム3の表面に各色のトナー像が形成される。
【0016】
中間転写ベルト装置7は、中間転写ローラ6、無端状の中間転写ベルト71、中間転写駆動ローラ72、中間転写従動ローラ73およびクリーニング装置9を備えている。中間転写ローラ6は、各色に応じた4種類のトナー像を形成するようにそれぞれ4つずつ中間転写ベルト71の内側に設けられている。中間転写ローラ6は、感光体ドラム3の表面に形成された各色のトナー像を、周回移動する中間転写ベルト71に転写する。
【0017】
中間転写ベルト71は、中間転写駆動ローラ72および中間転写従動ローラ73に張架されている。画像形成装置100では、各感光体ドラム3の表面に形成された各色のトナー像を順次転写して重ね合わせて、中間転写ベルト71の表面にカラーのトナー像を形成する。クリーニング装置9は、用紙に転写されずに中間転写ベルト71の表面に残った廃トナーを除去および回収する。
【0018】
2次転写装置11は、2次転写ローラ11Aと中間転写ベルト71との間の転写ニップ部TNに、用紙搬送路21を通じて搬送されてきた用紙を挟み込んで搬送する。用紙は、転写ニップ部TNを通過する際に、中間転写ベルト71の表面のトナー像が転写されて定着装置1に搬送される。
【0019】
定着装置1は、回転定着部材として軸線まわりに回転する定着ベルト31および加圧ローラ32を備えている。定着装置1は、定着ベルト31および加圧ローラ32の間に、トナー像が転写された用紙を挟み込んで加熱および加圧し、トナー像を用紙に定着させる。なお、図1においては図示を省略しているが、定着装置1は、定着ベルト31および加圧ローラ32以外の構成部材も有している。この定着装置1の詳細については、後述する。
【0020】
給紙部18は、画像形成に使用する記録媒体としての例えば用紙を積載する給紙カセットを備えており、光走査装置12の下方に設けられている。用紙は、ピックアップローラ16によって給紙部18から引き出されて、用紙搬送路21に搬送される。用紙搬送路21に搬送された用紙は、2次転写装置11や定着装置1を経由して、排出ローラ17により排紙トレイ19に排出される。
【0021】
用紙搬送路21には、搬送ローラ13、レジストローラ14および排出ローラ17が配置されている。搬送ローラ13は、用紙の搬送を促す。レジストローラ14は、画像形成部101が用紙の画像形成を行うプロセススピードと等しい速度で、用紙を搬送する。このレジストローラ14は、給紙部18と2次転写装置11との間に設けられ、2次転写装置11でトナー像が用紙に転写されるように用紙の搬送タイミングを調節する。例えば、レジストローラ14は、給紙部18から搬送された用紙を挟持した状態で待機(一旦停止)させ、2次転写装置11と同期させて一定速度での用紙の搬送を開始する。このとき、レジストローラ14は、中間転写ベルト71の周速度と等しい周速度で回転される。中間転写ベルト71上のトナー像は、中間転写ベルト71と2次転写ローラ11Aとの間の転写ニップ部TNにおいて用紙に転写される。
【0022】
画像形成装置100は、用紙の表面だけでなく、裏面に画像形成を行う場合には、排出ローラ17で用紙の搬送方向が変えられ、反転搬送路22へと用紙が搬送される。反転搬送路22では、搬送ローラ15により用紙は表裏が反転された状態でレジストローラ14まで導かれる。画像形成装置100は、レジストローラ14に導かれた用紙を表面と同様にして裏面に画像形成し、排紙トレイ19に排出する。
【0023】
≪定着装置≫
図2は、本発明の実施形態に係る定着装置1の構成を示す概略断面図である。図2に示すように、定着装置1は、回転定着部材である定着ベルト31および加圧ローラ32を備えている。さらに、定着装置1は定着ベルト31の内側に、支持部材33、定着パッド34、摺動シート35、加熱部36、および反射板37を備えている。また、定着装置1には、定着温度検出部38としての第1定着温度センサ38A、第2定着温度センサ38Bを備えており、また剥離板39も備えている。
【0024】
定着ベルト31は、無端状のフレキシブルなベルトであり、略環状に形成されている。定着ベルト31は、例えば、ポリイミド等の合成樹脂またはニッケル等の金属によって形成された帯状の基材の表面に離型層を設けた構成を有する。定着ベルト31は、図2において紙面に対して垂直方向に沿った軸線を中心に回転可能に設けられている。定着ベルト31の内径は、例えば、30mmとされる。
【0025】
定着パッド34は、定着ベルト31の軸線方向に沿って延びる長板状に形成され、例えば合成樹脂により構成されている。定着パッド34の外周面(定着ベルト31に近接する側の面)には摺動シート35が設置されている。なお、定着パッド34の長さは、定着ベルト31の軸線方向の長さと略同等とされている。
【0026】
摺動シート35は定着ベルト31の内周面と摺接するように設けられている。摺動シート35の摺接面35aは、定着ベルト31の内周と接触するように定着パッド34が配置されている。定着ベルト31は回転運動を行うが、これに対して定着パッド34および摺動シート35は固定されており、摺接面35aを定着ベルト31が摺動する。摺動シート35の摺接面35aには、定着ベルト31との摩擦力を低減するための潤滑剤が塗布されていてもよい。
【0027】
支持部材33は、定着パッド34および摺動シート35を、定着ベルト31の内周面に押し当てながら支持する部材である。支持部材33は、例えば断面が略L字状に形成されており、定着パッド34が固定される長板状の固定部33Aと、固定部33Aの端部から立設される長板状の立設部33Bとを有している。
【0028】
加熱部36は、定着ベルト31を加熱する部材であって、定着ベルト31の軸線方向(図2において紙面に対し奥行き方向)に沿って延びるように設置されている。加熱部36は、例えば、ハロゲンランプ等のランプヒータである。ただしこれに限るものでなく、例えば誘導加熱の原理を適用したものであってもよい。例示の形態では、加熱部36は、定着ベルト31の軸線方向中央領域を加熱する第1定着ヒータ36Aと、定着ベルト31の軸線方向両端領域を加熱する第2定着ヒータ36Bとを含む。第1定着ヒータ36Aおよび第2定着ヒータ36Bのそれぞれの動作は、用紙Pの幅方向のサイズ等に応じて決定される。詳細は図4を用いて後述する。定着ベルト31は、これらの第1定着ヒータ36Aおよび第2定着ヒータ36Bによって、例えば200℃~250℃に加熱される。
【0029】
反射板37は、薄板状であって、支持部材33の加熱部36側の面を覆うように配置されている。定着ベルト31は、この反射板37により、効率よく加熱されるように構成されている。
【0030】
加圧ローラ32は、定着ベルト31を挟んで定着パッド34と対向する位置に配置されている。加圧ローラ32は、定着ベルト31の軸線方向に平行な回転軸を中心に回転し、定着ベルト31と略平行に延びるように配置されている。加圧ローラ32と定着ベルト31との間のニップ部Nでは、定着パッド34により定着ベルト31が加圧ローラ32に押圧される。加圧ローラ32は、例えばアルミニウム等の金属によって形成される円筒状の芯材の表面を、ゴム等の弾性材によって覆った構成とすることができる。
【0031】
加圧ローラ32には、図示しないモータ等の駆動源からの駆動力が、ギア等を介して伝達される。加圧ローラ32はこの駆動力を受けて回転駆動され、加圧ローラ32の回転駆動に伴って、定着ベルト31が加圧ローラ32の回転方向とは逆方向に従動回転する。用紙Pは、加圧ローラ32と定着ベルト31との間のニップ部Nを用紙搬送方向Sに沿って通過するものとなる。
【0032】
定着温度検出部38は、回転定着部材としての定着ベルト31の表面温度である定着温度を検出する。剥離板39は、ニップ部Nよりも用紙搬送方向Sの下流側に配置され、定着ベルト31に対する用紙Pの巻き付きを防止する。
なお、図2は回転定着部材として定着ベルト31を有する定着装置1を示しているが、本開示の範囲はそれに限るものでない。例えば、回転定着部材として中空の加熱ローラを用い、その内部に加熱部としての定着ヒータを配したローラ方式の定着ユニットも本開示の範囲に含まれる。
【0033】
≪画像形成装置の電気的構成≫
図3は、図1に示す画像形成装置100の電気的構成を示す機能ブロック図である。前記したように、画像形成装置100は、給紙部18から供給された用紙Pを、用紙搬送部20(用紙搬送路21および反転搬送路22)を介して画像形成部101(特に2次転写装置11や定着装置1)に搬送する。画像形成部101は、トナー像を形成して用紙Pに転写する。そのために、図3に示す給紙部18、用紙搬送部20および画像形成部101は、センサ類、モータをはじめとするアクチュエータ類を有している。定着装置1は、加熱部36、定着温度検出部38および定着ヒータ制御部40を有する。加熱部36は、上述の第1定着ヒータ36Aおよび第2定着ヒータ36Bを有する。定着温度検出部38は、第1定着温度センサ38Aおよび第2定着温度センサ38Bを有する。第1定着温度センサ38Aは、主として第1定着ヒータ36Aにより過熱される中央領域の定着温度を検出する。第2定着温度センサ38Bは、主として第2定着ヒータ36Bにより過熱される両端領域の定着温度を検出する。
【0034】
定着ヒータ制御部40は、第1定着ヒータ制御回路40Aおよび第2定着ヒータ制御回路40Bを有する。第1定着ヒータ制御回路40Aは、第1定着温度センサ38Aにより検出される定着温度が目標に対して所定の範囲に収まるように第1定着ヒータ36Aに供給する電力をオンおよびオフし、あるいは供給する電力のオンデューティーを調整する。同様に、第2定着ヒータ制御回路40Bは、第2定着温度センサ38Bにより検出される定着温度が目標に対して所定の範囲に収まるように第2定着ヒータ36Bに供給する電力をオン/オフあるいは位相制御する。定着ヒータ制御部40は、ハードウェアロジックで構成されてもよいが、プロセッサおよびメモリを含む回路で構成されてもよい。
【0035】
定着温度は、第1定着温度センサ38Aが検出する定着ベルト31の中央領域および第2定着温度センサ38Bが検出する両端領域のそれぞれの表面温度である。各定着ヒータ制御回路は、画像形成装置の動作の状態に応じて目標の定着温度を選択し適用する。後述するように、予熱中とジョブ実行中とでは異なる目標を適用する。さらに、予熱中でも状態に応じて異なる目標を適用する。ジョブ実行中も状態に応じて異なる目標を適用する。
【0036】
図4は、図2に示す定着装置の幅方向における中央領域および両端領域の具体的な一例を示す説明図である。図4に示す例で、中央領域は、A4サイズ縦送りの用紙P1の幅にほぼ対応する領域である。A4サイズの用紙を縦送りする場合やA5サイズの用紙を横送りする場合は、中央領域を通過する用紙が定着装置1から熱を奪うので、第1定着ヒータ制御回路40Aが第1定着ヒータ36Aを用いて中央領域を加熱する。用紙が通過しない両端部は加熱しない。なお、定着装置1は、A3サイズ縦送りを幅方向の最大サイズとする。A3サイズの用紙P2を縦送りする場合やA4サイズの用紙を横送りする場合および予熱の際は、第1定着ヒータ制御回路40Aが第1定着ヒータ36Aを用いて中央領域を加熱し、さらに第2定着ヒータ制御回路40Bが第2定着ヒータ36Bを用いて両端領域を加熱する。
【0037】
なお、図4に示す例では、幅方向をA4サイズ縦送りの幅方向のサイズに対応する中央領域とそれより大きい両端領域の2つに分割しているが、幅方向を3つ以上の領域に分割する場合も本開示の範囲に含まれる。例えば、B4サイズの用紙を縦送りする場合の位置に対応して、図4に示す両端領域をさらに分割し第3の定着ヒータと専用の電力制御素子を追加してもよい。あるいは、B5サイズの用紙を縦送りする場合の位置に対応して、図4に示す中央領域をさらに分割して第4の定着ヒータと専用の電力制御素子を追加してもよい。幅方向を3つ以上の領域に分割した場合も、特定のサイズの用紙を通紙する際はその用紙に対応する用紙幅の領域を中央領域としてその領域を加熱し、その用紙が通紙されない両端の領域を長短領域として加熱しないようにする手法に変わりはない。幅方向の用紙サイズに応じて分割の位置が変わるだけである。よって、定着温度検出部38は中央領域と各サイズに共通の両端領域の2つだけで構成してもよい。定着ヒータ制御部40についても制御部分を中央領域用と両端領域用の2つの制御回路とし、定着ヒータを駆動する最終段の電力制御素子との接続を切り替え可能に構成し、用紙サイズに応じた1以上の電力制御素子を中央領域用の制御回路で駆動してもよい。
【0038】
≪予熱の定着温度制御≫
以下、電源がオンされてあるいは省電力モードが解除されてから画像形成装置100がジョブ実行を開始するまでの予熱における定着温度制御について述べる。なお、ここではジョブ実行が予約されており、定着装置1の予熱が完了すると画像形成装置100はジョブ実行を開始するものとする。予熱完了後、ジョブ実行の指示を待って待機する場合もあるが、ここでは待機がないものとする。通紙開始時の定着強度不足を防ぐうえで最も厳しい条件だからである。
【0039】
図5Aおよび図5Bは、図2および図4に示す定着装置の予熱中およびジョブ実行開始当初の定着温度推移の例と制御目標を示すグラフである。横軸は時間であり、縦軸は温度である。太い線は目標の温度を示し、細い曲線は第1定着温度センサ38Aおよび第2定着温度センサ38Bがそれぞれ検出する中央領域(以下、第1領域とおいう)および両端領域(以下、第2領域ともいう)の定着温度を示す。実線は第1領域に係る定着温度および目標であり、鎖線は第2領域に係る定着温度および目標である。予熱開始時の第1領域の目標と第2領域の目標は同一の温度Hである。なお、必ずしも同一である必要はないが、軸線方向に大きな温度差があると低い温度の領域へ熱が逃げてしまうので同一あるいは略同一が好ましい。定着温度が目標の温度Hより低い間、第1定着ヒータ制御回路40Aは、第1定着ヒータ36Aをオン、即ちフル点灯の100%のオンデューティーで通電するように制御し、最短時間で目標の温度Hに到達するように制御する。第2定着ヒータ制御回路40Bも同様である。
【0040】
図5Aに示す例では、第1領域の定着温度T1が時刻P1Aで目標の温度Hに到達する。しかし、第2領域の定着温度は時刻P1Aで目標の温度Hに到達しておらず、目標の温度HよりもΔ1だけ低い。そこで、第1定着ヒータ制御回路40Aは、第2領域の定着温度が目標の温度Hに到達するまで第1定着ヒータがオフにならないように、時刻P1Aの時点で第1領域の目標を温度Hよりも温度Sだけ高い値Hs1に更新する。この第1領域の新たな目標Hs1は、予熱完了待機温度である。初期の目標温度Hに加算する温度Sの値は、目標の温度Hとの温度差Δ1に応じて第1定着ヒータ制御回路40Aが決定することが好ましい。そうすれば、他方の第2領域も予熱の目標に達するまで一方の第1定着温度センサに対応する第1定着ヒータがオフにならない適切な目標として完了待機温度を適用して定着不良を防ぐことができる。
図6は、第1定着ヒータ制御回路40Aが温度差Δ1に応じて決定する加算温度Sの値の一例を示す説明図である。図6に示す例で、温度差Δ1に応じた加算温度Sは4つの値のうち何れかをとる。加算温度Sが何れの値をとるかは、温度差Δ1の大きで決まる。A~Dの値が温度差Δ1を4つの段階に分ける境界を定める。第1定着ヒータ制御回路40Aがプロセッサとメモリを含む回路で構成される場合、加算Sの値は、所定の範囲(図6に示す例で20℃)に収める。高温オフセットが発生しないことが経験的あるいは実験的に確認されている範囲である。図6に示す内容がプロセッサ参照可能なデータテーブルとしてメモリに格納されてもよい。A~Dの値は実験的に決定されてもよく、また固定された値でなく設定可能であってもよい。
図5Aに説明を戻す。時刻P1Aで、第1領域の目標が温度Hs1に更新された後も、第2領域の目標は、当初の目標である温度Hを維持する。時刻P2Aで第2領域の定着温度T2が目標の温度Hに到達すると、画像形成装置はジョブの実行、即ち通紙を開始する。
【0041】
第1定着ヒータ36Aおよび第2定着ヒータ36Bは、ほぼ同時に予熱の目標に到達するように選択される。しかし、現実には中央領域と両端領域とでは軸線方向の幅やニップ幅が異なり、第1定着ヒータ36Aと第2定着ヒータ36Bの消費電力、即ち発熱量は異なる。さらに、個々の定着ヒータの特性のバラツキ、個々の定着装置1のバラツキ、電源電圧の変動等の原因で両者が常に同時に予熱の目標に到達する保証はなく、むしろ前後する場合が多い。目標に到達する直前に加圧ローラ32にも熱を供給するために定着ベルト31および加圧ローラ32を空転させる制御も行われる場合が多い。空転時は、停止時に比べると加圧ローラ32に熱が奪われることによって、上述のバラツキによる目標到達までの時間差がさらに拡大する傾向がある。この態様によれば、第1および第2領域の何れかが先に予熱の目標に到達しても、先に到達した方の定着ヒータがオフになりまたはオンデューティーが抑制されてジョブ実行開始後の定着強度が得られないという事態を防ぐことができる。
【0042】
≪ジョブ実行開始後、オーバーシュート許容期間中の定着温度制御≫
ジョブの実行、即ち通紙が開始されると、通過する用紙によって定着装置1から熱が奪われる。それは、用紙が通過する領域の定着温度を降下させるように作用する。その一方で、支持部材33および定着ベルト31の熱容量のために、加熱部36から供給される熱が、用紙の通過するニップ部Nや定着ベルト31に伝わり、定着温度検出部38で検知されるまでに時間的な遅れ(応答遅れ)がある。そのために、定着温度が目標に達したことが検出されたことに応答して定着ヒータ制御部40が加熱部36への通電をオフ、即ち0%のオンデューティーまたはオンデューティーを100%未満に減少させても、しばらくの間、定着温度の上昇が続くオーバーシュート現象が発生する。その逆に、定着温度が目標を下回ったことが検出されて定着ヒータ制御部40が加熱部36への通電をオンし、あるいはオンデューティーを増加させても、しばらくの間、定着温度の降下が続くアンダーシュート現象が発生する。
【0043】
ジョブ実行中の定着温度制御は、通紙により奪われる熱とのバランスを考慮して予熱の目標温度Hよりやや高い温度Hに設定される。これが、ジョブ制御温度である。ジョブ制御温度Hは、通紙する用紙の枚数に応じた補正や雰囲気温湿度に応じた環境補正等を含んでもよい。ジョブ制御温度Hは、複数の用紙が所定の時間間隔で通過して定着装置1から奪われる熱と加熱部36から供給される熱が均衡した状態を基準に定められるのが通常である。ところが、予熱が終了してジョブ実行が開始された時刻P2Aでこのジョブ制御温度Hを目標に設定した場合、図5Aに示すように第1領域の定着温度T1はジョブ制御温度Hよりも高いので、第1定着ヒータ制御回路40Aは、第1定着ヒータ36Aをオフまたはオンデューティーを減少させる。すると、第1領域の温度下降が大きくなり、通紙が開始されるとそれによって奪われる熱量が供給される熱量を上回り、アンダーシュートが生じる期間に定着強度が確保できなくなる場合がある。即ち、通紙が開始されてから、例えば数枚の用紙が通過するまでの期間に定着強度が不足する可能性がある。このように、通紙が開始された後の過渡的な状態でジョブ制御温度Hを目標に適用するのは好ましくない場合がある。特に、1枚目の用紙が通過するまでに第1定着ヒータ36Aがオフすることがないようにしたい。また、通紙開始後の何枚かは定着装置n1の周囲が冷えており定着に必要な熱の供給が不足する傾向にある。
【0044】
この実施形態において、第1定着ヒータ制御回路40Aは、ジョブ実行開始後、所定の期間(時刻P2AからP3Aまでの期間)は目標をジョブ制御温度Hよりも高い温度Hm1に設定する。前記期間は、オーバーシュート許容期間であり、その期間の目標温度Hm1は、オーバーシュート許容温度である。オーバーシュート許容期間およびオーバーシュート許容温度は、通紙開始時の定着強度不足を防ぎ、かつ高温オフセットが生じることのないように実験的に設定すればよい。このようにすれば、予熱完了後に開始されるジョブ実行開始から所定の期間であるオーバーシュート許容期間に限り、第1および第2の定着温度センサの少なくとも何れかの検出温度が予熱完了待機温度以上になっても定着ヒータがオフにならない適切な目標を適用してジョブ実行開始時、即ち通紙開始時の定着強度不足を防ぐことができる。
【0045】
オーバーシュート許容期間は、U枚(Uは自然数)の用紙の通過に相当する期間として定められてもよい。U枚の具体的な値は通過する用紙のサイズに応じて定めればよいが、一例として30枚またはそれ以下である。第1定着ヒータ制御回路40Aがプロセッサとメモリを含む回路で構成される場合、オーバーシュート許容期間およびオーバーシュート許容期間の加算温度がプロセッサ参照可能なデータテーブルとしてメモリに格納されてもよい。このようにすれば、オーバーシュート許容期間は、通紙される用紙によって奪われる熱量に関連する用紙のサイズと通紙枚数に応じて適切な期間を定めておくことができる。
【0046】
図5Aに示す例で、第1領域のオーバーシュート許容温度は、予熱完了待機温度Hs1よりもさらに温度M高い温度である。ジョブ実行中は、予熱中と異なり定着ベルト31および加圧ローラ32が回転しており、通紙もあるために支持部材33および定着ベルト31から熱が奪われる。よって、予熱完了待機温度より高い目標でも弊害が生じにくい。そのように高い目標温度を設定することによって、通紙開始後も第1定着ヒータ36Aがオフまたはオンデューティー抑制にならないようにしている。一方、第2定着ヒータ制御回路40Bは、ジョブ実行開始後のオーバーシュート許容期間中は、目標を予熱の目標温度Hよりも温度Nだけ高い温度Hn2に設定する。そのように設定することによって、第2領域が予熱の目標温度Hに到達して通紙が開始された後も第2定着ヒータ36Bがオフまたはオンデューティー抑制にならないようにしている。特に、1枚目の用紙が通過するまでに第2定着ヒータ36Bがオフすることがないようにしている。
【0047】
図5Aは、第1領域の定着温度が第2領域よりも先に予熱の目標に達した場合の例である。それに対して、図5Bは、第2領域の定着温度が第1領域よりも先に予熱の目標に達した場合の例である。その場合の制御も、図5Aに示す例と同様であり、第1領域と第2領域とが入れ替わるだけである。図5Bに示す時刻P1B、P2BおよびP3Bは、図5Aに示す時刻P1A、P2AおよびP3Aにそれぞれ対応する。図5Bに示す温度差Δ2は、図5Aに示す温度差Δ1に対応する。図5Bに示す加算温度OおよびPは、図5Aに示す加算温度MおよびNにそれぞれ対応する。図5Bに示す温度Ht2、Ho2およびHp1は、図5Aに示す温度Hs1、Hm1およびHn2にそれぞれ対応する。
【0048】
≪オーバーシュート許容期間終了後の定着温度制御≫
図7は、図2および図4に示す定着装置のオーバーシュート許容期間終了後の定着温度推移の一例と制御目標を示すグラフである。図7は、図5Aに対応する場合を示しているが、図5Bに対応する例も同様であり、図7から容易に理解できるであろう。図7に示すように、オーバーシュート許容期間が時刻P3Aで終了後時刻P4Aまでの期間に、第1定着ヒータ制御回路40Aは、オーバーシュート許容期間中の目標温度Hm1から終了後の目標温度Hへ段階的に変更する。そうすることによって、第1定着ヒータ36Aの過度のオフまたはオンデューティーの過度の抑制を避け、定着強度不足を防ぐようにする。このようにすれば、オーバーシュート許容期間の終了後、制御回路が目標をオーバーシュート許容温度からジョブ制御温度へ急激に低下させることによって生じ得る定着不良を防ぐことができる。
【0049】
第1定着ヒータ制御回路40Aが、目標の温度をHm1からHへ段階的に変更する際の変更の回数、1回に下げる温度、変更の時間間隔に対応する通紙枚数の例を図8に示す。図8に示す例では、変更の回数Q、1回に下げる温度Vおよび変更の間隔に対応する通紙枚数Wが、温度Hm1と温度Hとの温度差の程度に応じて決まる。第1定着ヒータ制御回路40Aがプロセッサとメモリを含む回路で構成される場合、図8に示す内容がプロセッサ参照可能なデータテーブルとしてメモリに格納されてもよい。温度差Δ3を4つの段階に分ける境界を定めるJ~Mの値は、実験的に決定されてもよく、また固定された値でなく設定可能であってもよい。
【0050】
なお、第2定着ヒータ制御回路40Bは、オーバーシュート許容期間が終了した時刻P3Aの時点でそれまでの目標であった温度Hn2をオーバーシュート許容期間終了後の目標温度Hへ一気に変更してもよい。両者の温度差は、温度Hm1と温度Hに比べると小さく、第1定着ヒータ36Aの過度のオフまたはオンデューティーの過度の抑制が生じにくいからである。
【0051】
本開示には、上述した複数の態様のうちの何れかを組み合わせたものも含まれると解されるべきである。
前述した実施の形態の他にも、本開示についての種々の変形例があり得る。それらの変形例は、本開示の範囲に属さないと解されるべきものではない。本開示に係る発明には、請求の範囲と均等の意味および本開示の範囲に属するすべての変形が含まれるべきである。
【符号の説明】
【0052】
1:定着装置、 2:現像装置、 3:感光体ドラム、 4:ドラムクリーニング装置、 5:帯電器、 6:中間転写ローラ、 7:中間転写ベルト装置、 9:クリーニング装置、 11:2次転写装置、 11A:2次転写ローラ、 12:光走査装置、 13:搬送ローラ、 14:レジストローラ、 15:搬送ローラ、 16:ピックアップローラ、 17:排出ローラ、 18:給紙部、 19:排紙トレイ、 20:用紙搬送部、 21:用紙搬送路、 22:反転搬送路、 31:定着ベルト,定着部材、 32:加圧ローラ、 33:支持部材、 33A:固定部、 33B:立設部、 34:定着パッド、 35:摺動シート、 36:加熱部、 36A:第1定着ヒータ、 36B:第2定着ヒータ、 37:反射板、 38:定着温度検出部、 38A:第1定着温度センサ、 38B:第2定着温度センサ、 39:剥離板、 40:定着ヒータ制御部、 40A:第1定着ヒータ制御回路、 40B:第2定着ヒータ制御回路、 50:画像転写部、 71:中間転写ベルト、 72:中間転写駆動ローラ、 73:中間転写従動ローラ
100:画像形成装置、 101:画像形成部、 102:画像読取装置、 130:画像読取部、 130A:原稿載置台、 130B:走査光学系、 160:原稿送り装置
P1,P2:用紙
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7
図8