(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024124903
(43)【公開日】2024-09-13
(54)【発明の名称】荷受台昇降装置
(51)【国際特許分類】
B60P 1/44 20060101AFI20240906BHJP
【FI】
B60P1/44 J
B60P1/44 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023032881
(22)【出願日】2023-03-03
(71)【出願人】
【識別番号】000163095
【氏名又は名称】極東開発工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】弁理士法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲辻▼ 幹洋
(72)【発明者】
【氏名】更家 拓弥
(72)【発明者】
【氏名】樫本 有司
(72)【発明者】
【氏名】内山 弘樹
(57)【要約】 (修正有)
【課題】荷受台の動作開始時に、荷受台が急激に動作するのを抑制することができる荷受台昇降装置を提供することを目的とする。
【解決手段】荷受台昇降装置は、荷受台と、荷受台を昇降させるためのリフトシリンダと、油タンクから作動油を吐出する油圧ポンプと、油圧ポンプとリフトシリンダとを接続するメイン油路と、油圧ポンプを駆動する電動モータ43と、荷受台を上昇させる上昇指令信号を出力する上昇スイッチ19aと、メイン油路に設けられ、油圧ポンプからリフトシリンダに向かう下流方向への作動油の流れを規制する第1非励磁位置、及び下流方向への作動油の流れを許容する第1励磁位置の間で切り換えられる第1電磁弁51と、上昇スイッチ19aから上昇指令信号が入力されると、第1電磁弁51を第1励磁位置に切り換えた後に、電動モータ43への給電を開始する制御部70と、を備える。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷受台と、
前記荷受台を昇降させるためのリフトシリンダと、
油タンクから作動油を吐出する油圧ポンプと、
前記油圧ポンプと前記リフトシリンダとを接続するメイン油路と、
前記油圧ポンプを駆動する電動モータと、
前記荷受台を上昇させる上昇指令信号を出力する上昇スイッチと、
前記メイン油路に設けられ、前記油圧ポンプから前記リフトシリンダに向かう下流方向への作動油の流れを規制する第1非励磁位置、及び前記下流方向への作動油の流れを許容する第1励磁位置の間で切り換えられる第1電磁弁と、
前記上昇スイッチから前記上昇指令信号が入力されると、前記第1電磁弁を前記第1励磁位置に切り換えた後に、前記電動モータへの給電を開始する制御部と、を備える荷受台昇降装置。
【請求項2】
前記荷受台は、前記リフトシリンダから作動油が排出されることで、自重により下降可能であり、
前記荷受台を下降させる下降指令信号を出力する下降スイッチと、
前記第1電磁弁よりも前記油圧ポンプ側の前記メイン油路から分岐して前記油タンクに接続され、前記メイン油路において前記リフトシリンダから前記第1電磁弁を通過した作動油を前記油タンクに戻すための戻り油路と、
前記戻り油路に設けられ、前記メイン油路から前記油タンクへの作動油の流れを規制する第2非励磁位置、及び前記メイン油路から前記油タンクへの流れを許容する第2励磁位置の間で切り換えられる第2電磁弁と、
前記メイン油路において前記第1電磁弁よりも前記リフトシリンダ側に設けられ、前記下流方向への作動油の流れを許容するとともに前記リフトシリンダから前記油圧ポンプに向かう上流方向への作動油の流れを規制する第3非励磁位置、及び前記上流方向への作動油の流れを許容する第3励磁位置の間で切り換えられる第3電磁弁と、
前記第1電磁弁と前記第3電磁弁との間の前記メイン油路から分岐し、前記第1電磁弁を通過することなく前記戻り油路へ作動油を流すためのバイパス油路と、
をさらに備え、
前記制御部は、前記下降スイッチから前記下降指令信号が入力されると、前記第2電磁弁を前記第2励磁位置に切り換えるとともに、前記第3電磁弁を前記第3励磁位置に切り換える、請求項1に記載の荷受台昇降装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記上昇スイッチから前記上昇指令信号が入力されなくなると、前記電動モータへの給電を停止し、前記第1電磁弁を前記第1非励磁位置に切り換えるとともに、前記第2電磁弁を前記第2励磁位置に切り換えてから、所定時間が経過した後に、前記第2電磁弁を前記第2非励磁位置に切り換える、請求項2に記載の荷受台昇降装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記上昇スイッチから前記上昇指令信号が入力されると、前記第3電磁弁を前記第3非励磁位置としたまま、前記第1電磁弁を前記第1励磁位置に切り換える、請求項3に記載の荷受台昇降装置。
【請求項5】
前記荷受台を起伏回動させるための起伏シリンダと、
前記第1電磁弁よりも前記油圧ポンプ側の前記メイン油路から分岐して前記起伏シリンダに接続される分岐油路と、
前記荷受台を起立回動させる起立指令信号を出力する起立スイッチと、
前記分岐油路に設けられ、前記メイン油路から前記起伏シリンダへの作動油の流れを規制する第4非励磁位置、及び前記メイン油路から前記起伏シリンダへの作動油の流れを許容する第4励磁位置の間で切り換えられる第4電磁弁と、をさらに備え、
前記制御部は、前記起立スイッチから前記起立指令信号が入力されると、前記第4電磁弁を前記第4励磁位置に切り換えた後に、前記電動モータへの給電を開始する、請求項1に記載の荷受台昇降装置。
【請求項6】
荷受台と、
前記荷受台を起伏回動させるための起伏シリンダと、
油タンクから作動油を吐出する油圧ポンプと、
前記油圧ポンプと前記起伏シリンダとを接続する接続油路と、
前記油圧ポンプを駆動する電動モータと、
前記荷受台を起立回動させる起立指令信号を出力する起立スイッチと、
前記接続油路に設けられ、前記油圧ポンプから前記起伏シリンダへの作動油の流れを規制する第4非励磁位置、及び前記油圧ポンプから前記起伏シリンダへの作動油の流れを許容する第4励磁位置の間で切り換えられる第4電磁弁と、
前記起立スイッチから前記起立指令信号が入力されると、前記第4電磁弁を前記第4励磁位置に切り換えた後に、前記電動モータへの給電を開始する制御部と、を備える荷受台昇降装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷受台昇降装置に関する。
【背景技術】
【0002】
貨物自動車等に装着され、荷物の積み降ろしに利用される荷受台昇降装置として、例えば特許文献1に記載されたものがある。特許文献1の荷受台昇降装置は、貨物自動車の荷箱の後方に配置された荷受台と、荷受台を昇降させるリフトシリンダと、リフトシリンダに作動油を供給する油圧ポンプと、油圧ポンプを駆動する電動モータと、油圧ポンプとリフトシリンダとの間の油路を開閉する電磁弁と、荷受台を昇降操作する操作スイッチと、を備えている。電動モータと電磁弁は、車載のバッテリから給電されるようになっている。
【0003】
電磁弁は、バッテリから給電されることによって、前記油路を閉鎖する非励磁位置から、前記油路を開放する励磁位置に切り換わる。荷受台の上昇時には、作業者が操作スイッチを操作すると、電磁弁が給電されて励磁位置に切り換わるとともに、電動モータが給電されて油圧ポンプを駆動する。これにより、油圧ポンプから前記油路を介してリフトシリンダに作動油が供給されるので、リフトシリンダが伸長作動して荷受台が上昇する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば、荷受台の上昇時には、電磁弁よりも電動モータのほうが消費電力が大きいため、電磁弁と電動モータに対して同時に給電すると、電動モータに全ての電気が流れる。電動モータに全ての電気が流れると、電磁弁が非励磁位置のまま、油圧ポンプから油路内へ作動油が吐出されるので、油圧ポンプと電磁弁との間の油路内で作動油の圧力が上昇してしまう。この状態で、電磁弁が遅れて励磁位置に切り換わると、高圧の作動油がリフトシリンダへ一気に流れ込み、荷受台が急激に上昇するおそれがある。
【0006】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、荷受台の動作開始時に、荷受台が急激に動作するのを抑制することができる荷受台昇降装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明は、荷受台と、前記荷受台を昇降させるためのリフトシリンダと、油タンクから作動油を吐出する油圧ポンプと、前記油圧ポンプと前記リフトシリンダとを接続するメイン油路と、前記油圧ポンプを駆動する電動モータと、記荷受台を上昇させる上昇指令信号を出力する上昇スイッチと、前記メイン油路に設けられ、前記油圧ポンプから前記リフトシリンダに向かう下流方向への作動油の流れを規制する第1非励磁位置、及び前記下流方向への作動油の流れを許容する第1励磁位置の間で切り換えられる第1電磁弁と、前記上昇スイッチから前記上昇指令信号が入力されると、前記第1電磁弁を前記第1励磁位置に切り換えた後に、前記電動モータへの給電を開始する制御部と、を備える荷受台昇降装置である。
【0008】
本発明によれば、上昇スイッチが操作されると、第1電磁弁が第1励磁位置に切り換わった後に、電動モータが給電されて駆動する。したがって、電動モータの駆動により油圧ポンプからメイン油路に作動油が吐出されるときには、第1電磁弁は既に第1励磁位置に切り換わっているため、油圧ポンプと第1電磁弁との間のメイン油路内で作動油の圧力が上昇するのを抑制することができる。これにより、荷受台の上昇開始時に、荷受台が急激に上昇するのを抑制することができる。
【0009】
(2)前記(1)の荷受台昇降装置において、前記荷受台は、前記リフトシリンダから作動油が排出されることで、自重により下降可能であり、前記荷受台を下降させる下降指令信号を出力する下降スイッチと、前記第1電磁弁よりも前記油圧ポンプ側の前記メイン油路から分岐して前記油タンクに接続され、前記メイン油路において前記リフトシリンダから前記第1電磁弁を通過した作動油を前記油タンクに戻すための戻り油路と、前記戻り油路に設けられ、前記メイン油路から前記油タンクへの作動油の流れを規制する第2非励磁位置、及び前記メイン油路から前記油タンクへの流れを許容する第2励磁位置の間で切り換えられる第2電磁弁と、前記メイン油路において前記第1電磁弁よりも前記リフトシリンダ側に設けられ、前記下流方向への作動油の流れを許容するとともに前記リフトシリンダから前記油圧ポンプに向かう上流方向への作動油の流れを規制する第3非励磁位置、及び前記上流方向への作動油の流れを許容する第3励磁位置の間で切り換えられる第3電磁弁と、前記第1電磁弁と前記第3電磁弁との間の前記メイン油路から分岐し、前記第1電磁弁を通過することなく前記戻り油路へ作動油を流すためのバイパス油路と、をさらに備え、前記制御部は、前記下降スイッチから前記下降指令信号が入力されると、前記第2電磁弁を前記第2励磁位置に切り換えるとともに、前記第3電磁弁を前記第3励磁位置に切り換えるのが好ましい。
【0010】
この場合、下降スイッチが操作されると、第2電磁弁及び第3電磁弁がそれぞれ第2励磁位置及び第3励磁位置に切り換わり、リフトシリンダからメイン油路及び戻り油路を介して油タンクに作動油が流れることで、荷受台は自重によって下降する。その際、作動油は、メイン油路において流路が狭い第3電磁弁及び第1電磁弁の両方を通過するので、油タンクへ流れにくくなり、荷受台の下降速度が遅くなってしまう。しかし、第3電磁弁を通過した作動油の一部は、バイパス油路に流れ込み、第1電磁弁を通過せずに戻り油路に流れ込む。これにより、荷受台の下降速度が遅くなるのを抑えることができる。
【0011】
(3)前記(2)の荷受台昇降装置において、前記制御部は、前記上昇スイッチから前記上昇指令信号が入力されなくなると、前記電動モータへの給電を停止し、前記第1電磁弁を前記第1非励磁位置に切り換えるとともに、前記第2電磁弁を前記第2励磁位置に切り換えてから、所定時間が経過した後に、前記第2電磁弁を前記第2非励磁位置に切り換えるのが好ましい。
【0012】
上昇スイッチが操作されなくなると、電動モータへの給電が停止するとともに第1電磁弁は第1非励磁位置に切り換わる。しかし、電動モータは、給電が停止されても惰性で動き続けるので、油圧ポンプと第1電磁弁との間のメイン油路内で作動油の圧力が上昇する場合がある。しかし、上記(3)の荷受台昇降装置では、上昇スイッチが操作されなくなると、第2電磁弁は所定時間の間、第2励磁位置となるので、前記所定時間の間に電動モータが惰性で動き続けても、油圧ポンプからメイン油路内に吐出された作動油は、戻り油路を介して油タンクに流れる。これにより、油圧ポンプと第1電磁弁との間のメイン油路内で作動油の圧力が上昇するのを抑制することができるので、上昇スイッチが再び操作されたときに、荷受台が急激に上昇するのを抑制することができる。
【0013】
(4)前記(3)の荷受台昇降装置において、前記制御部は、前記上昇スイッチから前記上昇指令信号が入力されると、前記第3電磁弁を前記第3非励磁位置としたまま、前記第1電磁弁を前記第1励磁位置に切り換えるのが好ましい。
【0014】
上記(3)の荷受台昇降装置において、第2電磁弁が所定時間だけ第2励磁位置となっている間に、油圧ポンプと第1電磁弁との間のメイン油路内から一定量の作動油が抜けてしまう。このため、上昇スイッチが再び操作されたときに、第1電磁弁及び第3電磁弁をそれぞれ第1励磁位置及び第3励磁位置に切り換えた場合、切り換え前(第3非励磁位置)の第3電磁弁よりもリフトシリンダ側のメイン油路内に閉じ込められていた作動油が、第3電磁弁よりも油圧ポンプ側に向かって逆流するおそれがある。このように作動油の逆流が発生すると、荷受台が瞬間的に下降してしまう。しかし、上記(4)の荷受台昇降装置では、上昇スイッチが再び操作されたときに、第3電磁弁は第3非励磁位置とされたまま、第1電磁弁が第1励磁位置に切り換わる。これにより、第3電磁弁よりもリフトシリンダ側のメイン油路内の作動油が、油圧ポンプ側に逆流するのを抑制することができる。その結果、荷受台が瞬間的に下降するのを抑制することができる。
【0015】
(5)前記(1)~(4)のいずれかの荷受台昇降装置は、前記荷受台を起伏回動させるための起伏シリンダと、前記第1電磁弁よりも前記油圧ポンプ側の前記メイン油路から分岐して前記起伏シリンダに接続される分岐油路と、前記荷受台を起立回動させる起立指令信号を出力する起立スイッチと、前記分岐油路に設けられ、前記メイン油路から前記起伏シリンダへの作動油の流れを規制する第4非励磁位置、及び前記メイン油路から前記起伏シリンダへの作動油の流れを許容する第4励磁位置の間で切り換えられる第4電磁弁と、をさらに備え、前記制御部は、前記起立スイッチから前記起立指令信号が入力されると、前記第4電磁弁を前記第4励磁位置に切り換えた後に、前記電動モータへの給電を開始するのが好ましい。
【0016】
この場合、起立スイッチが操作されると、第4電磁弁が第4励磁位置に切り換わった後に、電動モータが給電されて駆動する。したがって、電動モータの駆動により油圧ポンプからメイン油路を介して分岐油路に作動油が吐出されるときには、第4電磁弁は既に第4励磁位置に切り換わっているため、油圧ポンプと第4電磁弁との間の油路内で作動油の圧力が上昇するのを抑制することができる。これにより、荷受台の起立回動開始時に、荷受台が急激に起立回動するのを抑制することができる。
【0017】
(6)他の観点から見た本発明は、荷受台と、前記荷受台を起伏回動させるための起伏シリンダと、油タンクから作動油を吐出する油圧ポンプと、前記油圧ポンプと前記起伏シリンダとを接続する接続油路と、前記油圧ポンプを駆動する電動モータと、前記荷受台を起立回動させる起立指令信号を出力する起立スイッチと、前記接続油路に設けられ、前記油圧ポンプから前記起伏シリンダへの作動油の流れを規制する第4非励磁位置、及び前記油圧ポンプから前記起伏シリンダへの作動油の流れを許容する第4励磁位置の間で切り換えられる第4電磁弁と、前記起立スイッチから前記起立指令信号が入力されると、前記第4電磁弁を前記第4励磁位置に切り換えた後に、前記電動モータへの給電を開始する制御部と、を備える荷受台昇降装置である。
【0018】
本発明によれば、起立スイッチが操作されると、第4電磁弁が第4励磁位置に切り換わった後に、電動モータが給電されて駆動する。したがって、電動モータの駆動により油圧ポンプから接続油路に作動油が吐出されるときには、第4電磁弁は既に第4励磁位置に切り換わっているため、油圧ポンプと第4電磁弁との間の接続油路内で作動油の圧力が上昇するのを抑制することができる。これにより、荷受台の起立回動開始時に、荷受台が急激に起立回動するのを抑制することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の荷受台昇降装置によれば、荷受台の動作開始時に、荷受台が急激に動作するのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の実施形態に係る荷受台昇降装置が設けられた貨物自動車の側面図である。
【
図6】荷受台昇降装置の制御構成を示すブロック図である。
【
図7】上昇スイッチの上昇指令信号に基づいて制御部が実行する制御例を示すタイムチャートである。
【
図8】下降スイッチの下降指令信号に基づいて制御部が実行する制御例を示すタイムチャートである。
【
図9】起立スイッチの起立指令信号に基づいて制御部が実行する制御例を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る荷受台昇降装置10が設けられた貨物自動車1の側面図である。貨物自動車1は、車体2と、車体2上に搭載された荷箱3と、荷箱3の後部開口を開閉可能な開閉扉4と、を備えている。作業者は、開閉扉4を開放することで、荷箱3の後部開口から荷物を積み降ろしすることができる。車体2の後部には、いわゆる起立格納式の荷受台昇降装置10が設けられている。
【0022】
[全体構成]
図2は、荷受台昇降装置10の拡大側面図である。
図3は、荷受台昇降装置10の平面図である。
図2及び
図3において、荷受台昇降装置10は、荷受台11と、荷受台11を昇降させる昇降機構12と、荷受台11を起伏回動させる起伏機構13と、支持部14と、を備えている。
【0023】
支持部14は、左右一対の固定枠15と、クロスメンバ16と、を有している。左右の固定枠15は、それぞれブラケット17を介して車体2に固定されている。クロスメンバ16は、車体2の下方において車幅方向(左右方向)に延びる角パイプ材からなる。クロスメンバ16は、左右の固定枠15に固定されている。
【0024】
左右の固定枠15には、それぞれ前後方向に延びるバンパアーム6の前端が固定されている。これら一対のバンパアーム6の前後方向の中間部は、ブラケット7を介して車体2に固定されている。一対のバンパアーム6の後端には、車幅方向に延びるリヤバンパ8が固定されている。
【0025】
図4は、昇降機構12を分解して示す側面図である。
図2~
図4において、昇降機構12は、補助リンク21、上アーム22、下アーム23、連結リンク24、及びリフトシリンダ25を有している。これらの構成部材21~25は、それぞれ車体2の車幅方向外側に一対設けられている。
【0026】
補助リンク21の上端は、固定枠15に固定されたブラケット26に対して、水平軸P1回りに回動可能に連結されている。荷受台11の昇降中において、補助リンク21に荷受台11等の重量が常時作用することで、補助リンク21は固定枠15に当接した状態(
図2に示す状態)で保持される。これにより、上アーム22及び下アーム23による平行リンク(後述)が維持される。
【0027】
上アーム22の一端は、補助リンク21の上部において、水平軸P1よりも下方に位置する水平軸P2回りに回動可能に連結されている。上アーム22の他端は、連結リンク24の上部において水平軸P3回りに回動可能に連結されている。左右の上アーム22の他端同士は、車幅方向に延びる連結部材27により連結されている。連結部材27は、例えば丸パイプ材からなる。
【0028】
下アーム23は、側面視において上アーム22よりも下側に配置され、かつ平面視において上アーム22よりも車幅方向外側に配置されている。下アーム23の一端は、固定枠15に固定されたブラケット28に対して、水平軸P4回りに回動可能に連結されている。下アーム23の他端は、連結リンク24の下部において水平軸P5回りに回動可能に連結されている。上アーム22及び下アーム23は、4つの水平軸P2~P5を結ぶ四角形が平行四辺形となる平行リンクを構成する。
【0029】
リフトシリンダ25は、単動式の油圧シリンダからなり、油室25a(
図5参照)を有している。リフトシリンダ25の先端は、補助リンク21の下部において、水平軸P6回りに回動可能に連結されている。リフトシリンダ25の基端は、上アーム22の他端側において、水平軸P7回りに回動可能に連結されている。リフトシリンダ25は、伸縮作動することで上アーム22にトルクを付与する。
【0030】
連結リンク24の上部には、荷受台11の基部11bが、前記水平軸P3回りに回動可能に連結されている。荷受台11は、荷箱3に対して積み降ろす荷物や、当該荷物を運搬する台車等が載置される載置面11aを有している。
【0031】
荷受台11の載置面11aの裏側には、起伏機構13が設けられている。起伏機構13は、左右一対の起伏シリンダ31を備えている。起伏シリンダ31は、単動式の油圧シリンダからなり、油室31a(
図5参照)を有している。起伏シリンダ31の基端は、荷受台11の裏側に連結されている、起伏シリンダ31の先端は、連結リンク24に連結されている。起伏シリンダ31は、伸縮作動することで荷受台11にトルクを付与する。
【0032】
以上の構成により、リフトシリンダ25を伸縮作動させると、上アーム22及び下アーム23は、平行リンクを維持しながら上下に回動する。具体的には、リフトシリンダ25を伸長作動させると、上アーム22及び下アーム23は、それぞれ水平軸P2,P4を中心として上方回動する。リフトシリンダ25を収縮作動させると、上アーム22及び下アーム23は、荷受台11の自重が作用することで、それぞれ水平軸P2,P4を中心として下方回動する。これにより、
図1に示すように、荷受台11は、上昇位置T1と下降位置T2との間で、載置面11aが水平となる水平姿勢を維持しながら昇降する。
【0033】
荷受台11が水平姿勢のまま下降位置T2まで下降すると、荷受台11の基部11b側が地面に接地する。この接地状態から、さらにリフトシリンダ25が収縮作動すると、補助リンク21は、水平軸P1を中心として
図2の反時計回り方向に少し回動する。これにより、上アーム22及び下アーム23の平行リンクが崩れ、荷受台11は、
図1に示すように、後ろ下がりに傾斜した傾斜姿勢T3となる。これにより、作業者は、地面と荷受台11の載置面11aとの間で、台車等をスムーズに移動させることができる。
【0034】
荷受台11を水平姿勢のまま上昇位置T1まで上昇させると、荷受台11の載置面11aは、荷箱3の床面3aと同一高さになる。これにより、作業者は、荷箱3の床面3aと荷受台11の載置面11aとの間で、台車等をスムーズに移動させることができる。以上より、リフトシリンダ25が伸縮作動することで、荷受台11は、上昇位置T1と傾斜姿勢T3との間で昇降する。
【0035】
図1及び
図2において、荷受台11が上昇位置T1にあるときに、起伏シリンダ31を伸縮作動させると、荷受台11は起伏回動する。具体的には、起伏シリンダ31を伸長作動させると、荷受台11は水平軸P3を中心として起立回動する。起伏シリンダ31を収縮作動させると、荷受台11は水平軸P3を中心として倒伏回動する。
【0036】
荷受台11は、上昇位置T1である倒伏姿勢T4と、載置面11aが略鉛直になる起立姿勢T5との間で起伏回動する。したがって、作業者は、荷物の積み降ろし作業が終了した後、開閉扉4を閉鎖して荷受台11を起立姿勢T5にすることで、貨物自動車1を走行させることができる。
【0037】
図3において、荷受台昇降装置10は、クロスメンバ16の長手方向の一端部(
図3の下側)に設けられたスイッチボックス18をさらに備えている。スイッチボックス18内には、荷受台11を昇降又は起伏回動させる指令信号を制御部70(
図6参照)に出力する操作部19が設けられている。操作部19は、荷受台11を上昇させるときに操作される上昇スイッチ19aと、荷受台11を下降させるときに操作される下降スイッチ19bと、荷受台11を起立回動させるときに操作される起立スイッチ19cと、を有している(
図6参照)。
【0038】
上昇スイッチ19aは、作業者により操作されると、制御部70に対して上昇指令信号を出力する。下降スイッチ19bは、作業者により操作されると、制御部70に対して下降指令信号を出力する。起立スイッチ19cは、作業者により操作されると、制御部70に対して起立指令信号を出力する。各スイッチ19a,19b,19cは、非保持型スイッチである。このため、各スイッチ19a,19b,19cは、作業者の手指により操作されている間だけ指令信号を出力し、作業者の手指が離れると指令信号を出力しなくなる。
【0039】
[油圧回路]
図5は、荷受台昇降装置10の油圧回路図である。
図5において、荷受台昇降装置10は、リフトシリンダ25及び起伏シリンダ31をそれぞれ伸縮作動させる油圧機構40をさらに備えている。油圧機構40は、油タンク41、油圧ポンプ42、電動モータ43、逆止弁44~46、絞り弁47A~47C、リリーフ弁48、複数の電磁弁50、及び複数の油路60を備えている。
【0040】
複数の油路60は、メイン油路61、分岐油路62、第1戻り油路63、第2戻り油路64、第1バイパス油路(バイパス油路)65、第2バイパス油路66、及び第3バイパス油路67により構成されている。
【0041】
メイン油路61は、油圧ポンプ42と各リフトシリンダ25の油室25aとを接続している。分岐油路62は、第1電磁弁51(後述)よりも油圧ポンプ42側のメイン油路61から分岐して各起伏シリンダ31に接続されている。本実施形態の分岐油路62は、メイン油路61の途中部61cから分岐し、各起伏シリンダ31の油室31aに接続されている。油圧ポンプ42から途中部61cまでのメイン油路61、及び分岐油路62は、油圧ポンプ42と各起伏シリンダ31とを接続する接続油路68を構成している。
【0042】
第1戻り油路63は、メイン油路61において各リフトシリンダ25から第1電磁弁51を通過した作動油を油タンク41に戻すための油路である。第1戻り油路63は、メイン油路61における第1電磁弁51よりも油圧ポンプ42側から分岐し、油タンク41に接続されている。本実施形態の第1戻り油路63は、メイン油路61における途中部61cよりも油圧ポンプ42側の途中部61bから分岐し、油タンク41に接続されている。第2戻り油路64は、分岐油路62の途中部62aから分岐し、第1戻り油路63の途中部63aに接続されている。
【0043】
第1バイパス油路65は、メイン油路61において、後述する第1電磁弁51と第3電磁弁53との間の途中部61dから分岐し、途中部61cに接続されている。第2バイパス油路66は、メイン油路61における途中部61bよりも油圧ポンプ42側の途中部61aから分岐し、第1戻り油路63における途中部63aよりも油タンク41側の途中部63bに接続されている。第3バイパス油路67は、分岐油路62の途中部62aから分岐し、第1戻り油路63の途中部63bに接続されている。
【0044】
油タンク41は、作動油を蓄えている。油圧ポンプ42は、油タンク41からメイン油路61に作動油を吐出し、リフトシリンダ25及び起伏シリンダ31にそれぞれ作動油を供給する。電動モータ43は、油圧ポンプ42を駆動する駆動源である。電動モータ43は、貨物自動車1のバッテリ(図示省略)から給電される。
【0045】
逆止弁44は、メイン油路61における途中部61a,61b同士の間に設けられている。逆止弁44は、メイン油路61における油圧ポンプ42側から途中部61b側への作動油の流れを許容し、メイン油路61における途中部61b側から油圧ポンプ42側への作動油の流れを規制している。
【0046】
逆止弁45は、第1バイパス油路65に設けられている。逆止弁45は、第1バイパス油路65における途中部61d側から途中部61c側への作動油の流れを許容し、第1バイパス油路65における途中部61c側から途中部61d側への作動油の流れを規制している。逆止弁46は、第2戻り油路64に設けられている。逆止弁46は、第2戻り油路64における途中部62a側から途中部63a側への作動油の流れを許容し、第2戻り油路64の途中部63a側から途中部62a側への作動油の流れを規制している。
【0047】
絞り弁47Aは、第1戻り油路63において、途中部63aよりもメイン油路61側に設けられている。絞り弁47Bは、第2戻り油路64に設けられている。絞り弁47Cは、第3バイパス油路67に設けられている。リリーフ弁48は、第2バイパス油路66に設けられている。第2バイパス油路66において、リリーフ弁48よりも油圧ポンプ42側の作動油は、その圧力がリリーフ弁48の設定圧に達すると、リリーフ弁48を通過して油タンク41側へ流れるようになっている。
【0048】
複数の電磁弁50は、それぞれ前記バッテリから給電される。複数の電磁弁50は、第1電磁弁51、第2電磁弁52、第3電磁弁53、第4電磁弁54、第5電磁弁55、及び第6電磁弁56により構成されている。第1電磁弁51、第2電磁弁52、第3電磁弁53は、第5電磁弁55、及び第6電磁弁56は、それぞれ逆止弁を内蔵している。第4電磁弁54は、一対の逆止弁を互いに逆向きにしたダブルチェック弁を内蔵している。
【0049】
第1電磁弁51は、メイン油路61における途中部61c,61d同士の間に設けられている。第1電磁弁51は、給電によって励磁されるソレノイド51aを有している。第1電磁弁51は、ソレノイド51aが励磁されていない第1非励磁位置と、ソレノイド51aが励磁された第1励磁位置との間で切り換わる。
【0050】
第1電磁弁51は、第1非励磁位置において、油圧ポンプ42からリフトシリンダ25に向かう方向(以下、下流方向という)への作動油の流れを規制するとともに、リフトシリンダ25から油圧ポンプ42に向かう方向(以下、上流方向という)への作動油の流れを許容する。第1電磁弁51は、第1励磁位置において、上流方向及び下流方向のどちらへも作動油の流れを許容する。なお、
図5において、第1電磁弁51内に示された矢印は、第1電磁弁51が第1励磁位置のときに作動油が流れる適切な方向を意味している(他の電磁弁50も同様)。
【0051】
第2電磁弁52は、第1戻り油路63における途中部63a,63b同士の間に設けられている。第2電磁弁52は、給電によって励磁されるソレノイド52aを有している。第2電磁弁52は、ソレノイド52aが励磁されていない第2非励磁位置と、ソレノイド52aが励磁された第2励磁位置との間で切り換わる。
【0052】
第2電磁弁52は、第2非励磁位置において、メイン油路61(途中部61b)から油タンク41への作動油の流れを規制するとともに、油タンク41からメイン油路61への作動油の流れを許容する。第2電磁弁52は、第2励磁位置において、メイン油路61から油タンク41への作動油の流れ、及び油タンク41からメイン油路61への作動油の流れの両方を許容する。
【0053】
第3電磁弁53は、メイン油路61において、第1電磁弁51よりもリフトシリンダ25側に設けられている。本実施形態の第3電磁弁53は、メイン油路61において、途中部61dよりもリフトシリンダ25側に設けられている。第3電磁弁53は、給電によって励磁されるソレノイド53aを有している。
【0054】
第3電磁弁53は、ソレノイド53aが励磁されていない第3非励磁位置と、ソレノイド53aが励磁された第3励磁位置との間で切り換わる。第3電磁弁53は、第3非励磁位置において、下流方向への作動油の流れを許容するとともに、上流方向への作動油の流れを規制する。第3電磁弁53は、第3励磁位置において、上流方向及び下流方向のどちらへも作動油の流れを許容する。
【0055】
第4電磁弁54は、分岐油路62(接続油路68)において、途中部62aよりもメイン油路61側(途中部61c側)に設けられている。第4電磁弁54は、給電によって励磁されるソレノイド54aを有している。第4電磁弁54は、ソレノイド54aが励磁されていない第4非励磁位置と、ソレノイド54aが励磁された第4励磁位置との間で切り換わる。
【0056】
第4電磁弁54は、第4非励磁位置において、メイン油路61から起伏シリンダ31に向かう方向(以下、一方向という)、及び起伏シリンダ31からメイン油路61に向かう方向(以下、他方向という)のどちらへも作動油の流れを規制する。第4電磁弁54は、第4励磁位置において、一方向及び他方向のどちらへも作動油の流れを許容する。
【0057】
第5電磁弁55は、分岐油路62において、途中部62aよりも起伏シリンダ31側に設けられている。第5電磁弁55は、給電によって励磁されるソレノイド55aを有している。第5電磁弁55は、ソレノイド55aが励磁されていない第5非励磁位置と、ソレノイド55aが励磁された第5励磁位置との間で切り換わる。
【0058】
第5電磁弁55は、第5非励磁位置において、一方向への作動油の流れを許容するとともに、他方向への作動油の流れを規制する。第5電磁弁55は、第5励磁位置において、一方向及び他方向のどちらへも作動油の流れを許容する。
【0059】
第6電磁弁56は、第3バイパス油路67において、絞り弁47Cよりも分岐油路62側(途中部62a側)に設けられている。第6電磁弁56は、給電によって励磁されるソレノイド56aを有している。第6電磁弁56は、ソレノイド56aが励磁されていない第6非励磁位置と、ソレノイド56aが励磁された第6励磁位置との間で切り換わる。
【0060】
第6電磁弁56は、第6非励磁位置において、一方向への作動油の流れを許容するとともに、他方向への作動油の流れを規制する。第6電磁弁56は、第6励磁位置において、一方向及び他方向のどちらへも作動油の流れを許容する。
【0061】
[制御部]
図6は、荷受台昇降装置10の制御構成を示すブロック図である。
図6において、荷受台昇降装置10は、操作部19からの指令信号に基づいて、電動モータ43及び各電磁弁50を制御する制御部70をさらに備えている。制御部70は、荷受台昇降装置10のパワーユニット(図示省略)に設けられている。
【0062】
制御部70は、CPU等を有するコンピュータを備えて構成されている。制御部70の各機能は、前記コンピュータの記憶装置に記憶された制御プログラムがCPUにより実行されることで発揮される。制御部70には、上昇スイッチ19aの上昇指令信号、下降スイッチ19bの下降指令信号、及び起立スイッチ19cの起立指令信号がそれぞれ入力される。制御部70は、入力された上昇指令信号、下降指令信号、又は起立指令信号に基づいて、電動モータ43及び各電磁弁50への給電を制御する。
【0063】
[上昇指令信号に基づく制御例]
図7は、上昇スイッチ19aの上昇指令信号に基づいて制御部70が実行する制御例を示すタイムチャートである。
図5及び
図7において、全ての電磁弁50のソレノイド51a~56aが励磁されていない状態(
図5に示す状態)で、上昇スイッチ19aから制御部70に上昇指令信号が入力されると、制御部70は、その時点t1で第1電磁弁51への給電を開始し、第1電磁弁51のソレノイド51aを励磁させる。これにより、第1電磁弁51は第1励磁位置に切り換わるので、油圧ポンプ42からリフトシリンダ25の油室25aまでのメイン油路61では、作動油の下流方向への流れが許容された状態となる。
【0064】
次に、制御部70は、前記時点t1から所定時間(例えば数秒)が経過した時点t2で、電動モータ43への給電を開始する。これにより、電動モータ43が駆動し、油圧ポンプ42が作動油の吐出を開始する。油圧ポンプ42から吐出された作動油は、メイン油路61を通過し、リフトシリンダ25の油室25aに供給される。油室25aに作動油が供給されると、リフトシリンダ25が伸長作動し、荷受台11は上昇を開始する。
【0065】
以上の制御により、上昇スイッチ19aが操作されると、第1電磁弁51が第1励磁位置に切り換わった後に、電動モータ43が給電されて駆動する。したがって、電動モータ43の駆動により油圧ポンプ42からメイン油路61に作動油が吐出されるときには、第1電磁弁51は既に第1励磁位置に切り換わっているため、油圧ポンプ42と第1電磁弁51との間のメイン油路61内で作動油の圧力が上昇するのを抑制することができる。これにより、荷受台11の上昇開始時に、荷受台11が急激に上昇するのを抑制することができる。
【0066】
前記時点t2の後、上昇スイッチ19aから制御部70に上昇指令信号が入力されなくなると、制御部70は、その時点t3で、第1電磁弁51及び電動モータ43への給電をそれぞれ停止する。これにより、第1電磁弁51は、ソレノイド51aの励磁が停止されて第1非励磁位置に切り換わるので、メイン油路61は、第1電磁弁51によって、作動油の下流方向への流れが規制された状態となる。この状態になると、リフトシリンダ25の油室25aに作動油が供給されなくなるので、リフトシリンダ25の伸長作動が停止し、荷受台11は上昇を停止する。
【0067】
また、第1電磁弁51が第1非励磁位置に切り換わると、メイン油路61における油圧ポンプ42から第1電磁弁51までの流路は、閉じた状態となる。しかし、電動モータ43は、給電が停止されても惰性で動き続けるので、油圧ポンプ42から吐出される作動油が、メイン油路61の閉じた流路(以下、閉流路という)に流れ込み、閉流路内で作動油の圧力が上昇するおそれがある。
【0068】
そこで、制御部70は、時点t3において第2電磁弁52への給電も開始する。これにより、第2電磁弁52は、ソレノイド52aが励磁されて第2励磁位置に切り換わる。そして、制御部70は、時点t3から所定時間(例えば数秒)が経過した時点t4で、第2電磁弁52への給電を停止する。これにより、第2電磁弁52は、ソレノイド52aの励磁が停止されて第2非励磁位置に切り換わる。
【0069】
以上の制御により、所定時間(t4-t3)の間、第2電磁弁52は第2励磁位置に維持されるので、メイン油路61の閉流路は、途中部61bから第1戻り油路63を介して油タンク41に接続された状態となる。したがって、所定時間(t4-t3)の間、メイン油路61の閉流路内の作動油は、第1戻り油路63を通過し、油タンク41に流れる。これにより、メイン油路61の閉流路内において、作動油の圧力が上昇するのを抑制することができる。なお、所定時間(t4-t3)は、電動モータ43が給電停止後に惰性で動き続ける時間以上に設定されるのが好ましい。
【0070】
上記のように時点t3において上昇停止した荷受台11の昇降位置が、上昇位置T1(
図1参照)よりも低い場合、再び上昇スイッチ19aが操作され、制御部70に上昇指令信号が入力される場合がある。
図7の制御例では、再び上昇スイッチ19aが操作されたときの上昇指令信号が、時点t5で制御部70に入力された場合を示している。
【0071】
ところで、時点t1において、制御部70は、第1電磁弁51への給電を開始しているが、これに加えて第3電磁弁53への給電を開始することも可能である。その場合、第3電磁弁53は、ソレノイド53aが励磁されて第3励磁位置に切り換わるが、メイン油路61における作動油の下流方向への流れは許容される。このため、その後に制御部70が、電動モータ43を駆動して荷受台11を上昇させることについて、特に問題が生じることはない。しかし、荷受台11が上昇停止した後の時点t5において、再び上昇スイッチ19aの上昇操作が行われたときに問題が生じる。
【0072】
具体的には、上記のように第2電磁弁52が所定時間(t4-t3)だけ第2励磁位置となっている間、メイン油路61の閉流路から一定量の作動油が油タンク41へ抜けてしまう。このため、時点t5において、上昇スイッチ19aが再び操作されたときに、第1電磁弁51及び第3電磁弁53がそれぞれ第1励磁位置及び第3励磁位置に切り換わると、切り換え前(第3非励磁位置)の第3電磁弁53よりもリフトシリンダ25側のメイン油路61内に閉じ込められていた作動油が、第3電磁弁53よりも油圧ポンプ42側に向かって逆流してしまう。このように作動油の逆流が発生すると、リフトシリンダ25の油室25aから作動油が排出され、荷受台11が瞬間的に下降するという問題が生じる。
【0073】
特に、電動モータ43は、時点t1~t2と同様に、時点t5から所定時間が経過した時点t6で給電されるので、油圧ポンプ42からメイン油路61へ作動油が流れるタイミング、つまり下流方向へ流れる作動油により前記逆流を阻止するタイミングが遅れてしまうので、前記問題がより生じやすくなる。
【0074】
そこで、本実施形態の制御部70は、上昇スイッチ19aから上昇指令信号が入力されると、その入力回数に関わらず、つまり時点t1及び時点t5のいずれの場合も、第3電磁弁53には給電せずに、第1電磁弁51への給電だけを開始する。これにより、時点t5では、第3電磁弁53が第3非励磁位置のまま、第1電磁弁51が第1励磁位置に切り換わるので、第3電磁弁53よりもリフトシリンダ25側のメイン油路61内の作動油が油圧ポンプ42側に逆流するのを抑制することができる。その結果、荷受台11が瞬間的に下降するのを抑制することができる。
【0075】
[下降指令信号に基づく制御例]
図8は、下降スイッチ19bの下降指令信号に基づいて制御部70が実行する制御例を示すタイムチャートである。
図5及び
図8において、全ての電磁弁50のソレノイド51a~56aが励磁されていない状態で、下降スイッチ19bから制御部70に下降指令信号が入力されると、制御部70は、その時点t11で、第2電磁弁52及び第3電磁弁53への給電をそれぞれ開始する。
【0076】
給電された第3電磁弁53は、ソレノイド53aが励磁されて第3励磁位置に切り換わるので、リフトシリンダ25の油室25aから逆止弁44までのメイン油路61では、作動油の上流方向への流れが許容された状態となる。また、給電された第2電磁弁52は、ソレノイド52aが励磁されて第2励磁位置に切り換わるので、第1戻り油路63では、メイン油路61の途中部61bから油タンク41への作動油への流れが許容された状態となる。
【0077】
これにより、リフトシリンダ25の油室25a内の作動油は、メイン油路61に排出され、メイン油路61の途中部61b及び第1戻り油路63を通過して油タンク41へ流れる。リフトシリンダ25の油室25aから作動油が排出されると、リフトシリンダ25が収縮作動し、荷受台11は、自重によって下降を開始する。
【0078】
荷受台11が下降するとき、リフトシリンダ25の油室25aからメイン油路61に排出された作動油は、流路が狭い第3電磁弁53及び第1電磁弁51の両方を通過する。このため、作動油が油タンク41へ流れにくくなり、荷受台11の下降速度が遅くなってしまう。
【0079】
しかし、本実施形態のメイン油路61には、その途中部61c,61d同士を接続して第1電磁弁51を跨ぐ第1バイパス油路65が設けられている。このため、油室25aからメイン油路61に排出されて第3電磁弁53を通過した作動油の一部は、第1バイパス油路65に流れ込み、メイン油路61の途中部61c,61bを通過して第1戻り油路63に流れ込む。つまり、第3電磁弁53を通過した作動油の一部は、第1電磁弁51を通過することなく油タンク41に流れるので、第1電磁弁51を通過する場合よりも油タンク41に速く流れる。これにより、荷受台11の下降速度が遅くなるのを抑えることができる。特に、荷受台11が下降位置T2から傾斜姿勢T3(
図1参照)まで下降(傾斜)するときに、その下降速度が最も遅くなるので、第1バイパス油路65に作動油を流すことが有効となる。
【0080】
[起立指令信号に基づく制御例]
図9は、起立スイッチ19cの起立指令信号に基づいて制御部70が実行する制御例を示すタイムチャートである。
図5及び
図9において、全ての電磁弁50のソレノイド51a~56aが励磁されていない状態で、起立スイッチ19cから制御部70に起立指令信号が入力されると、制御部70は、その時点t21で、第4電磁弁54への給電開始し、第4電磁弁54のソレノイド54aを励磁させる。これにより、第4電磁弁54は第4励磁位置に切り換わるので、分岐油路62においてメイン油路61の途中部61cから起伏シリンダ31の油室31aに向かう一方向への作動油の流れが許容された状態となる。
【0081】
次に、制御部70は、前記時点t21から所定時間(例えば数秒)が経過した時点t22で、電動モータ43への給電を開始する。これにより、電動モータ43が駆動し、油圧ポンプ42が作動油の吐出を開始する。油圧ポンプ42から吐出された作動油は、メイン油路61及び分岐油路62を通過し、起伏シリンダ31の油室31aに供給される。油室31aに作動油が供給されると、起伏シリンダ31が伸長作動し、荷受台11は起立回動を開始する。
【0082】
以上の制御により、起立スイッチ19cが操作されると、第4電磁弁54が第4励磁位置に切り換わった後に、電動モータ43が給電されて駆動する。したがって、電動モータ43の駆動により油圧ポンプ42からメイン油路61を介して分岐油路62に作動油が吐出されるときには、第4電磁弁54は既に第4励磁位置に切り換わっているため、油圧ポンプ42と第4電磁弁54との間の油路(メイン油路61及び分岐油路62)内で作動油の圧力が上昇するのを抑制することができる。これにより、荷受台11の起立回動開始時に、荷受台11が急激に起立回動するのを抑制することができる。
【0083】
[その他]
上記実施形態の荷受台昇降装置10は、起立格納式であるが、床下格納式や垂直昇降式などの他の種類の荷受台昇降装置であってもよい。上記実施形態では、メイン油路61の途中部61dから分岐する第1バイパス油路65は、メイン油路61の途中部61cに接続されているが、第1戻り油路63に接続されてもよい。上記実施形態の荷受台昇降装置10は、第1電磁弁51及び第3電磁弁53を備えているが、第3電磁弁53を備えずに、その第3非励磁位置にある逆止弁を、第1電磁弁51の第1励磁位置に内蔵してもよい。
【0084】
上記実施形態の第1バイパス油路65には、逆止弁45を設けているが、逆止弁45を設けなくてもよい。その場合、第1バイパス油路65は、メイン油路61の途中部61dから分岐し、第1戻り油路63において第2電磁弁52よりも油タンク41側に接続すればよい。これにより、荷受台11の上昇時に、油圧ポンプ42からメイン油路61の下流方向に向かう作動油が、第1バイパス油路65を通過してリフトシリンダ25へ供給されるのを防ぐことができる。
【0085】
上記実施形態の第1電磁弁51は、第1非励磁位置において、下流方向への作動油の流れのみを規制しているが、これに加えて上流方向への作動油の流れを規制してもよい。その場合、下流方向及び上流方向への作動油の流れを規制する具体構成としては、一対の逆止弁を互いに逆向きにしたダブルチェック弁を第1電磁弁51に内蔵してもよいし、第1電磁弁51内の流路を遮断する構成にしてもよい。
【0086】
上記実施形態の第1電磁弁51の第1励磁位置において、下流方向への作動油の流れを許容する構成は、
図5に示す構成に限定されるものではない。例えば、第1電磁弁51は、第1励磁位置において下流方向への作動油の流れを規制するとともに上流方向への作動油の流れを規制する逆止弁を内蔵してもよい。
【0087】
上記実施形態の第1電磁弁51において、上流方向への作動油の流れを許容する位置は、第1非励磁位置としているが、第1励磁位置としてもよいし、3位置以上に切り換え可能な電磁弁を用いて第1励磁位置以外の他の励磁位置としてもよい。その場合、前者及び後者のいずれにおいても、制御部70は、下降指令信号が入力されたときに、第1電磁弁51を第1励磁位置又は前記他の励磁位置に切り換えるように制御すればよい。
【0088】
上記実施形態において、油圧ポンプ42と起伏シリンダ31とを接続する接続油路68は、メイン油路61の一部と分岐油路62とによって構成されているが、これに限定されるものでない。例えば、分岐油路62の上流端を油圧ポンプ42に直接接続し、分岐油路62の途中部からメイン油路61を分岐させることにより、分岐油路62だけで接続油路68を構成してもよい。
【0089】
なお、今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味、及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0090】
10 荷受台昇降装置
11 荷受台
25 リフトシリンダ
31 起伏シリンダ
41 油タンク
42 油圧ポンプ
43 電動モータ
19a 上昇スイッチ
19b 下降スイッチ
19c 起立スイッチ
51 第1電磁弁
52 第2電磁弁
53 第3電磁弁
54 第4電磁弁
61 メイン油路
62 分岐油路
63 第1戻り油路(戻り油路)
65 第1バイパス油路(バイパス油路)
68 接続油路
70 制御部