(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024124907
(43)【公開日】2024-09-13
(54)【発明の名称】絶縁ホルダおよび蓄電デバイス
(51)【国際特許分類】
H01M 50/586 20210101AFI20240906BHJP
H01M 50/591 20210101ALI20240906BHJP
H01M 50/103 20210101ALI20240906BHJP
H01M 50/15 20210101ALI20240906BHJP
H01G 11/82 20130101ALI20240906BHJP
【FI】
H01M50/586
H01M50/591
H01M50/103
H01M50/15
H01G11/82
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023032886
(22)【出願日】2023-03-03
(71)【出願人】
【識別番号】520184767
【氏名又は名称】プライムプラネットエナジー&ソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117606
【弁理士】
【氏名又は名称】安部 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【弁理士】
【氏名又は名称】山根 広昭
(74)【代理人】
【識別番号】100130605
【弁理士】
【氏名又は名称】天野 浩治
(72)【発明者】
【氏名】鹿田 勝也
【テーマコード(参考)】
5E078
5H011
5H043
【Fターム(参考)】
5E078AA14
5E078AB01
5E078AB13
5E078AB14
5E078HA05
5E078HA23
5H011AA09
5H011KK01
5H043AA19
5H043CA04
5H043LA02
5H043LA21
(57)【要約】
【課題】ケース本体に電極体を挿入する際の絶縁ホルダの破損を抑制する。
【解決手段】ここに開示される絶縁ホルダ10は、蓄電デバイスの電極体20を収容する絶縁性の箱状体である。この絶縁ホルダ10は、平面矩形の底面部と、底面部から上方に延びた一対の正面部14と、底面部から上方に延びた一対の側面部16とを備えている。そして、この絶縁ホルダ10は、底面側に角部10Cが形成されており、当該角部10Cの近傍に溝部19が形成されている。かかる構成によると、絶縁ホルダ10の角部10Cとケース本体34とが干渉した際に、溝部19に沿って絶縁ホルダ10が折れ曲がり、内部側に向かって角部10Cが変形する。この結果、絶縁ホルダ10の角部10Cとケース本体34との干渉が解消されるため、ケース本体34との摩擦による絶縁ホルダ10の破損を抑制できる。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄電デバイスの電極体を収容する絶縁性の箱状体である絶縁ホルダであって、
幅方向に沿って略平行に延びる一対の第1辺と、奥行方向に沿って略平行に延びる一対の第2辺とを有する平面矩形の底面部と、
前記第1辺の各々から高さ方向の上方に延びた一対の正面部と、
前記第2辺の各々から高さ方向の上方に延びた一対の側面部と、
前記正面部と前記側面部との境界において前記高さ方向に沿って延びる4つの第3辺と、
前記第1辺と前記第2辺と前記第3辺とが交差した4つの角部と
を備えており、
前記4つの角部の少なくとも1つの近傍に溝部が形成されている、絶縁ホルダ。
【請求項2】
前記溝部は、前記底面部と前記正面部と前記側面部の各々に形成されている、請求項1に記載の絶縁ホルダ。
【請求項3】
前記溝部は、前記絶縁ホルダの外表面に形成されている、請求項1または2に記載の絶縁ホルダ。
【請求項4】
前記溝部は、前記角部に形成されていない、請求項1または2に記載の絶縁ホルダ。
【請求項5】
前記角部から前記溝部までの最短距離が1mm~3mmである、請求項1または2に記載の絶縁ホルダ。
【請求項6】
前記溝部における残肉厚が10μm~100μmである、請求項1または2に記載の絶縁ホルダ。
【請求項7】
電極体と、前記電極体を収容するケースと、前記電極体と前記ケースとの間に介在する絶縁ホルダとを備えた蓄電デバイスであって、
前記ケースは、
上面開口を有する箱状体であるケース本体と、
前記上面開口を塞ぐ封口板と
を備えており、
前記上面開口は、四隅にR部を有する平面矩形の開口部であり、
前記絶縁ホルダは、請求項1または2に記載の絶縁ホルダである、蓄電デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ここに開示される技術は、絶縁ホルダおよび当該絶縁ホルダを用いた蓄電デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池等の蓄電デバイスは、様々な分野において用いられている。例えば、蓄電デバイスは、発電素子である電極体と、当該電極体を収容する金属製のケースと、電極体とケースとの間に介在する絶縁ホルダとを備えている。また、この種の蓄電デバイスのケースは、上面開口を有する箱型のケース本体と、上面開口を塞ぐ封口板とを備えている。上記構成の蓄電デバイスの製造では、まず、絶縁性の箱状体である絶縁ホルダの内部に電極体を収容する。次に、絶縁ホルダで覆われた電極体を、上面開口からケース本体の内部に挿入する。そして、ケース本体の上面開口を封口板で封止する。これによって、電極体と絶縁ホルダがケース内に収容された蓄電デバイスが構築される。
【0003】
また、蓄電デバイス用の絶縁ホルダは、樹脂フィルムを折り曲げることで成形される。かかる絶縁ホルダに関する従来技術文献として、特許文献1~7が挙げられる。例えば、特許文献1に記載の製造方法は、所定の折線に沿ってハーフカット加工が施されたフィルム部材を用意する工程と、長辺に対応する折線に沿って山折する長辺折り工程と、第一短辺に対応する折線に沿って山折りし、垂線部に対応する折線に沿って谷折する短辺折り工程と、斜線部に対応する折線に沿って山折する斜折り工程と、折られたフィルム部材に電極体を挿入する組付け工程と、第二短辺に対応する折線に沿って山折りして電極体をフィルム部材で包む包み工程と、フィルム部材で包まれた電極体を電池ケースに収容する工程と、を含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-121496号公報
【特許文献2】特開2020-095836号公報
【特許文献3】特開2018-181435号公報
【特許文献4】特開2017-091792号公報
【特許文献5】特開2021-082464号公報
【特許文献6】特開2020-104186号公報
【特許文献7】特開2019-110036号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述の蓄電デバイスの製造では、電極体をケース本体の内部に挿入する際に、ケース本体との摩擦によって絶縁ホルダが破損することがある。これによって、電極体が露出すると、電極体とケースとが導通するおそれがある。従って、蓄電デバイスの製造では、絶縁ホルダの破損の有無を検出する工程が設けられている。そして、絶縁ホルダの破損が確認された蓄電デバイスは、廃棄処分や再利用に供される。しかしながら、上述した絶縁ホルダの破損が頻繁に生じると、生産効率や歩留まりが大きく低下する原因になり得る。
【0006】
ここに開示される技術は、上記事情に鑑みてなされたものであり、ケース本体に電極体を挿入する際の絶縁ホルダの破損を抑制する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
ここに開示される絶縁ホルダは、蓄電デバイスの電極体を収容する絶縁性の箱状体である。この絶縁ホルダは、幅方向に沿って略平行に延びる一対の第1辺と、奥行方向に沿って略平行に延びる一対の第2辺とを有する平面矩形の底面部と、第1辺の各々から高さ方向の上方に延びた一対の正面部と、第2辺の各々から高さ方向の上方に延びた一対の側面部と、正面部と側面部との境界において高さ方向に沿って延びる4つの第3辺と、第1辺と第2辺と第3辺とが交差した4つの角部とを備えている。そして、ここに開示される絶縁ホルダでは、4つの角部の少なくとも1つの近傍に溝部が形成されている。
【0008】
上述の通り、箱状の絶縁ホルダでは、底面側の四隅に4つの角部を有している。詳しくは後述するが、この絶縁ホルダの角部は、ケース本体への挿入の際に当該ケース本体と干渉しやすいため、摩擦による破損が頻繁に生じる。これに対して、ここに開示される絶縁ホルダでは、上記角部の近傍に溝部が形成されている。これによって、絶縁ホルダの角部とケース本体とが干渉した際に、溝部に沿って絶縁ホルダが折れ曲がり、絶縁ホルダの内部に向かって角部が変形する。この結果、絶縁ホルダの角部とケース本体との干渉が解消されるため、ケース本体との摩擦による絶縁ホルダの破損を抑制できる。
【0009】
ここに開示される絶縁ホルダの一態様では、溝部は、底面部と正面部と側面部の各々に形成されている。これによって、角部を囲むように溝部が形成されるため、角部とケース本体とが干渉した際に、絶縁ホルダの内部に向かって角部を変形させやすくなる。
【0010】
ここに開示される絶縁ホルダの一態様では、溝部は、絶縁ホルダの外表面に形成されている。これによって、溝部に沿って絶縁ホルダが折れ曲がりやすくなる。
【0011】
ここに開示される絶縁ホルダの一態様では、溝部は、角部に形成されていない。これによって、角部の強度低下を防止できる。
【0012】
ここに開示される絶縁ホルダの一態様では、角部から溝部までの最短距離が1mm~3mmである。これによって、電極体と絶縁ホルダの各々の破損を好適に防止できる。
【0013】
ここに開示される絶縁ホルダの一態様では、溝部における残肉厚が10μm~100μmである。これによって、絶縁ホルダの破損をより好適に防止できる。
【0014】
また、ここに開示される技術の他の側面として、蓄電デバイスが提供される。ここに開示される蓄電デバイスは、電極体と、電極体を収容するケースと、電極体とケースとの間に介在する絶縁ホルダとを備えている。この蓄電デバイスのケースは、上面開口を有する箱状体であるケース本体と、上面開口を塞ぐ封口板とを備えている。そして、ここに開示される蓄電デバイスの上面開口は、四隅にR部を有する平面略矩形の開口部である。また、絶縁ホルダは、上記構成の絶縁ホルダである。かかる構成の蓄電デバイスによると、絶縁ホルダの破損を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、一実施形態に係る二次電池の外観を模式的に示す斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1に示す二次電池の内部構造を模式的に示す縦断面図である。
【
図4】
図4は、一実施形態に係る絶縁ホルダを模式的に示す斜視図である。
【
図5】
図5は、
図4に示す絶縁ホルダを底面側から見た際の拡大斜視図である。
【
図6】
図6は、一実施形態に係る二次電池の製造におけるケース本体と絶縁ホルダとの位置関係を説明する平面視断面図である。
【
図7】
図7は、本実施形態に係る絶縁ホルダを構成するフィルムの平面図である。
【
図8】
図8は、
図7に示すフィルムの平面図の部分拡大図である。
【
図9】
図9は、他の実施形態に係る絶縁ホルダを底面側から見た際の拡大斜視図である。
【
図10】
図10は、従来の二次電池の製造におけるケース本体と絶縁ホルダとの位置関係を説明する平面視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しながら、ここで開示される技術のいくつかの好適な実施形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって、ここで開示される技術の実施に必要な事柄は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。ここで開示される技術は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。なお、本明細書において範囲を示す「A~B」の表記は、「A以上B以下」の意と共に、「Aを超える」および「B未満」の意を包含するものとする。
【0017】
なお、本明細書における「蓄電デバイス」とは、電解質を介して一対の電極(正極および負極)の間で電荷担体が移動することによって充放電反応が生じる装置を包含する概念である。すなわち、ここに開示される技術における蓄電デバイスは、リチウムイオン二次電池、ニッケル水素電池、ニッケルカドミウム電池等の二次電池や、リチウムイオンキャパシタ、電気二重層キャパシタ等のキャパシタなどを包含する。
【0018】
1.二次電池の構造
以下、ここに開示される技術の一実施形態として、絶縁ホルダを備えた二次電池について説明する。
図1は、一実施形態に係る二次電池の外観を模式的に示す斜視図である。
図2は、
図1に示す二次電池の内部構造を模式的に示す縦断面図である。
図3は、
図1に示すケース本体の平面図である。
図4は、一実施形態に係る絶縁ホルダを模式的に示す斜視図である。
図5は、
図4に示す絶縁ホルダから見た際の拡大斜視図である。
図6は、本実施形態に係る二次電池の製造におけるケース本体と絶縁ホルダとの位置関係を説明する平面図である。なお、図中の符号Xは幅方向を示しており、符号Yは奥行方向を示しており、符号Zは高さ方向を示している。さらに、符号L、R、F、Rr、U、Dは、それぞれ、左方、右方、前方、後方、上方、下方を示している。但し、これらの方向は、説明の便宜上定めたものであり、使用中や製造中の絶縁ホルダや蓄電デバイスの設置態様を限定することを意図したものではない。
【0019】
図1及び
図2に示すように、本実施形態に係る二次電池1は、電極体20と、ケース30と、絶縁ホルダ10とを備えている。以下、各部材について説明する。
【0020】
(1)ケース
ケース30は、内部空間30aを有する扁平な箱状の容器である。このケース30の内部空間30aには、電極体20が収容される。なお、ケース30は、一定以上の強度を有する金属製の部材であることが好ましい。ケース30の素材の一例として、アルミニウム、アルミニウム合金などの金属材料が挙げられる。そして、ケース30は、ケース本体34と封口板32を備えている。
【0021】
(a)ケース本体
ケース本体34は、上面開口34aを有する箱状体である。具体的には、ケース本体34は、長尺な矩形の板状部材である底部34bと、底部34bの長辺(幅方向Xに沿った辺)から上方Dに延在する一対の第1側壁34cと、底部34bの短辺(奥行方向Yに沿った辺)から上方Dに延在する一対の第2側壁34dとを備える。換言すると、第1側壁34cは、相対的に面積が大きい側壁である。一方、第2側壁34dは、相対的に面積が小さい側壁である。
【0022】
図3に示すように、ケース本体34の上面には、第1側壁34cと第2側壁34dに囲まれた平面矩形の上面開口34aが形成される。ここで、製造上の制約から、一般的なケース本体34では、上面開口34aの四隅にR部34rが形成される。具体的には、ケース本体34の製造では、金属材料の鋳塊(インゴット)を圧延成形する。この圧延成形されたケース本体34は、底部34bと第1側壁34cと第2側壁34dとが継ぎ目なく一体化されるため、各壁面の境界からガスや電解液が漏出することを防止できる。しかし、金属材料の圧延性を考慮すると、圧延成形で製造したケース本体34では、各壁面(例えば、第1側壁34cと第2側壁34d)の境界を直角に成形することは困難である。また、このR部34rは、第1側壁34cと第2側壁34dとの境界を補強するという機能も有している。これらの点から、一般的なケース本体34では、上面開口34aの四隅にR部34rが形成される。ここに開示される技術を限定するものではないが、この上面開口34aのR部34rの曲率半径Rの一例は、2mm~3mm程度である。
【0023】
(b)封口板
封口板32は、ケース本体34の上面開口34aを塞ぐ板状部材である。具体的には、
図2に示すように、封口板32は、ケース本体34の上面開口34aに嵌め込まれる。そして、この二次電池1の製造工程では、封口板32とケース本体34との境界を跨ぐように、封口板32とケース本体34の上面にレーザが照射される。そして、このレーザ溶接は、封口板32の外周縁(ケース本体34の内周縁)の全周に亘って行われる。これによって、ケース30の内部空間30aが密閉される。
【0024】
また、封口板32には、電極端子40が取り付けられている。電極端子40は、ケース30内の電極体20と電気的に接続された導電部材である。
図2に示す二次電池1では、封口板32の幅方向Xの両端部の各々に電極端子40が設けられている。この一対の電極端子40のうち、一方(
図2中の左方L側)の電極端子40は、電極体20の正極と接続される正極端子42である。また、他方(
図2中の右方R側)の電極端子40は、電極体20の負極と接続される負極端子44である。なお、
図2に示すように、電極端子40は、複数の導電部材を組み合わせた構造体であり、高さ方向Zに沿って延びている。具体的には、電極端子40の下端部を構成する集電部材40aは、ケース30の内部で電極体20と接続されている。一方、電極端子40の上端部を構成する外部端子40bは、ケース30の外部に露出している。そして、この集電部材40aと外部端子40bは、封口板32を貫通する軸部(図示省略)を介して電気的に接続される。
【0025】
(2)電極体
図2に示すように、電極体20は、ケース30の内部に収容されている。本実施形態では、ケース30の内部に1つの電極体20が収容されている。なお、電極体20の数は、特に限定されず、複数でもよい。例えば、電極体20は、セパレータを介して正極と負極とを積層することによって構成される。この正極は、正極芯体(アルミニウム箔など)と、当該正極芯体の表面に塗布された正極活物質層とを備えている。一方、負極は、負極芯体(銅箔など)と、当該負極芯体の表面に塗布され負極活物質層とを備えている。なお、電極体20を構成する各部材(正極、負極およびセパレータ等)の素材は、一般的な二次電池で使用され得る材料を特に制限なく使用でき、ここに開示される技術を限定するものではないため詳細な説明を省略する。
【0026】
図2に示す電極体20の幅方向Xの一方の側縁には、正極接続部20Aが設けられている。また、電極体20の他方の側縁には、負極接続部20Bが設けられている。正極接続部20Aは、正極活物質層が塗布されていない正極芯体を束ねることによって構成される。一方、負極接続部20Bは、負極活物質層が塗布されていない負極芯体を束ねることによって構成される。正極端子42は、正極接続部20Aを介して電極体20の正極に接続される。また、負極端子44は、負極接続部20Bを介して電極体20の負極に接続される。
【0027】
なお、本実施形態に係る二次電池1では、電極体20の内部(正極と負極との極間)に電解液が浸透している。この電解液の成分は、一般的な二次電池で使用され得るものを特に制限なく使用でき、ここに開示される技術を限定するものではないため詳細な説明を省略する。なお、電解液の一部は、余剰電解液として電極体20の外部(電極体20とケース30との間)に存在していてもよい。これによって、電極体20の内部で電解液が分解された際に、余剰電解液を電極体20の内部に供給できる。
【0028】
(3)絶縁ホルダ
絶縁ホルダ10は、電極体20を被覆する絶縁部材である。製造後の二次電池1における絶縁ホルダ10は、電極体20とケース30との間に介在する(
図2及び
図6参照)。これによって、ケース30と電極体20との導通を防止できる。本実施形態に係る絶縁ホルダ10は、絶縁素材からなるフィルムF(
図7参照)を折り曲げることによって成形される。なお、絶縁ホルダ10の素材は、従来公知の絶縁素材を特に制限なく使用することができ、ここに開示される技術を限定するものではない。但し、材料コストや成形の容易さなどを考慮すると、絶縁ホルダ10は、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)などの樹脂材料で構成されていることが好ましい。また、絶縁ホルダ10の厚みは、75μm~200μmが好ましく、90μm~160μmがより好ましい。これによって、絶縁性と成形性を高いレベルで両立できる。
【0029】
図4に示すように、本実施形態に係る絶縁ホルダ10は、電極体20を収容する内部空間を有する箱状体である。以下、絶縁ホルダ10の詳細な構造について説明する。
【0030】
まず、
図4に示す絶縁ホルダ10の底面部12は、平面矩形の板状部材である。この底面部12は、幅方向Xに沿って略平行に延びる一対の第1辺10Xと、奥行方向Yに沿って略平行に延びる一対の第2辺10Yとを有している。なお、本明細書における「略平行」とは、一対の直線(辺)のなす角度が0.15°以下(好適には0.1°以下、より好適には0.05°以下)であることをいう。この一対の辺(第1辺10Xまたは第2辺10Y)のなす角度が小さくなるにつれて、絶縁ホルダ10を組み立てる際の各部材の寸法差が小さくなる傾向がある。
【0031】
次に、絶縁ホルダ10は、一対の正面部14を備えている。この一対の正面部14の各々は、底面部12の第1辺10Xの各々から高さ方向Zの上方Uに延びた矩形の板状部材である。この一対の正面部14は、電極体20を収納する内部空間を挟んで対向している(
図6参照)。また、絶縁ホルダ10は、一対の側面部16を備えている。この一対の側面部16の各々は、底面部12の第2辺10Yの各々から高さ方向Zの上方Uに延びた矩形の板状部材である。上記正面部14と同様に、側面部16も内部空間を挟んで対向している。そして、この絶縁ホルダ10では、正面部14と側面部16との境界に第3辺10Zが形成される。この第3辺10Zは、高さ方向Zに沿って延びる4つの稜線である。また、絶縁ホルダ10の上面には、正面部14と側面部16に囲まれた開口部18が形成される。絶縁ホルダ10の内部空間に電極体20を収容する際には、この開口部18から内部空間に電極体20が挿入される。
【0032】
また、本実施形態に係る絶縁ホルダ10は、第1係止部15と第2係止部13とを備えている。これによって、二次電池1の製造中に絶縁ホルダ10が展開することを抑制できる。具体的には、第1係止部15は、側面部16の前方F側の第3辺10Zから連続して形成された板状部材であり、高さ方向Zに沿って延びている。この第1係止部15の各々は、前方F側の正面部14の幅方向Xの両側縁部を覆うように折り曲げられている。これによって、奥行方向Yの外側(前方Fまたは後方Rr)に向かう正面部14の回動(展開)を規制できる。なお、第1係止部15は、前方F側の正面部14に熱溶着されているとより好ましい。これによって、絶縁ホルダ10の展開をより好適に防止できる。
【0033】
一方、第2係止部13は、底面部12の第2辺10Yの各々から上方に延びる一対の板状部材である。そして、各々の第2係止部13は、側面部16の下部を覆うように折り曲げられている。これによって、奥行方向Yの後方Rrに向かう側面部16の回動(展開)を規制できる。また、第2係止部13は、底面部12と側面部16との境界部分(第2辺10Y)に隙間が生じることによる絶縁不良を抑制することもできる。なお、第2係止部13は、側面部16に熱溶着されていてもよい。これによって、絶縁ホルダ10の展開をより好適に防止できる。一方で、製造コストを考慮すると、第2係止部13は、側面部16に熱溶着されていない方が好ましい。
【0034】
ここで、箱状体である絶縁ホルダ10の底面側には、4つの角部10Cが形成されている。この角部10Cの各々は、第1辺10Xと第2辺10Yと第3辺10Zとが交差することによって形成される。そして、本実施形態に係る絶縁ホルダ10では、この角部10Cの近傍に溝部19が形成されている。具体的には、本実施形態に係る絶縁ホルダ10では、4つの角部10Cの各々の周囲に、当該角部10Cを囲む円環状の溝部19が形成されている。これによって、二次電池1の製造工程において、ケース本体34との摩擦による絶縁ホルダ10の破損が生じることを抑制できる。以下、従来の二次電池において絶縁ホルダが破損する原因を説明した後に、本実施形態に係る絶縁ホルダ10による破損抑制効果について説明する。
【0035】
図10は、従来の二次電池の製造におけるケース本体と絶縁ホルダとの位置関係を説明する平面視断面図である。上述の通り、通常のケース本体134の上面開口134aの四隅には、R部134rが形成される。一方で、箱状体である絶縁ホルダ110の底面側の四隅には、角部110Cが形成される。ここで、一般的な二次電池100では、電池性能の向上の観点から、電極体120とケース本体134の側壁(第1側壁134c、第2側壁134d)とが近接するように各部材の寸法を設計することが要求される。このような電極体120を収容できるように絶縁ホルダ110を設計すると、
図10に示すように、平面視において、ケース本体134のR部134rよりも外側に、絶縁ホルダ110の角部110Cが配置されることがある。このような場合に、ケース本体134の上面開口134aに電極体120を挿入すると、絶縁ホルダ110の角部110Cとケース本体134のR部134rとが干渉する。この状態で電極体120をさらに挿入すると、ケース本体134との摩擦によって絶縁ホルダ110の角部110Cが破損する。
【0036】
これに対して、本実施形態に係る絶縁ホルダ10では、
図5及び
図6に示すように、角部10Cの近傍に溝部19が形成されている。これによって、ケース本体34のR部34rと絶縁ホルダ10の角部10Cとが干渉した際に、絶縁ホルダ10が溝部19に沿って折れ曲がる。このとき、絶縁ホルダ10の角部10Cは、内部(換言すると電極体20側)に向かって変形するため、ケース本体34のR部34rとの干渉が解消される。このように、本実施形態に係る絶縁ホルダ10によると、ケース本体34との摩擦による角部10Cの破損を抑制できる。
【0037】
なお、本実施形態に係る絶縁ホルダ10では、
図5に示すように、底面部12と正面部14と側面部16の各々に溝部19が形成されている。換言すると、本実施形態における溝部19は、角部10Cを囲む円環状の溝部19である。これによって、ケース本体34のR部34rと絶縁ホルダ10の角部10Cとが干渉した際に、絶縁ホルダ10の各面(底面部12、正面部14、側面部16)が溝部19に沿って折れ曲がるため、絶縁ホルダ10の内部に向かって角部10Cを変形させやすくなる。
【0038】
なお、溝部19の位置は、ケース本体34のR部34rと電極体20の各々の寸法を考慮して設定することが好ましい。具体的には、平面視において正面部14の溝部19と側面部16の溝部19とを結ぶ直線L1(
図6参照)が電極体20よりも外側、かつ、ケース本体34のR部34rよりも内側に位置するように、溝部19の位置を調節することが好ましい。これによって、ケース本体34との摩擦による角部10Cの破損を抑制できると共に、変形後の絶縁ホルダ10(角部10C)との接触による電極体20の破損を防止できる。例えば、角部10Cから溝部19までの最短距離d1は、1mm以上が好ましく、1.5mm以上がより好ましい。これによって、絶縁ホルダ10の変形量が大きくなるため、R部34rとの干渉による角部10Cの破損を適切に抑制できる。一方、上記最短距離d1は、3mm以下が好ましく、2.5mm以下がより好ましい。これによって、電極体20と絶縁ホルダ10の各々の破損を好適に防止できる。
【0039】
また、溝部19における残肉厚(絶縁ホルダ10の厚み-溝部19の深さ)は、100μm以下が好ましく、90μm以下がより好ましく、80μm以下がさらに好ましく、70μm以下が特に好ましい。溝部19における残肉厚が小さくなるにつれて、溝部19に沿った絶縁ホルダ10の変形が生じやすくなるため、ケース本体34との摩擦による角部10Cの破損をより好適に防止できる。一方、溝部19における残肉厚は、10μm以上が好ましく、20μm以上がより好ましく、30μm以上がさらに好ましく、40μm以上が特に好ましい。これによって、溝部19における強度を十分に確保できるため、溝部19を起点とした絶縁ホルダ10の破断を防止できる
【0040】
また、溝部19は、絶縁ホルダ10の外表面10aに形成されていることが好ましい。これによって、ケース本体34と角部10Cとが干渉した際に絶縁ホルダ10が溝部19に沿って内側(電極体20側)に折れ曲がりやすくなるため、ケース本体34との摩擦による角部10Cの破損をより好適に抑制できる。
【0041】
なお、溝部は、角部10C自体に形成されていない方が好ましい。角部10Cに溝部を形成すると、当該角部10Cの強度が大きく低下するため、溝部19に沿って絶縁ホルダ10が変形し始める前に、ケース本体34との摩擦によって角部10Cが破損するおそれがある。
【0042】
2.絶縁ホルダの製造方法
次に、本実施形態に係る絶縁ホルダ10を製造する方法について説明する。
図7は、本実施形態に係る絶縁ホルダを構成するフィルムの平面図である。
図8は、
図7に示すフィルムの部分拡大図である。
【0043】
本実施形態に係る絶縁ホルダ10を製造する際には、まず、
図7に示すようなフィルムFを準備する。
図7に示すように、このフィルムFは、平面矩形の底面部12を有している。そして、この底面部12の奥行方向Yの両側縁から平面矩形の正面部14が延びている。そして、一方の(
図7中の後方Rrの)正面部14の幅方向Xの両側縁から平面矩形の側面部16が延びている。次に、側面部16の幅方向Xの外側の側縁から第1係止部15が延びている。また、底面部12の幅方向Xの両側縁から第2係止部13が延びている。そして、上述した各部分の境界には、第1罫線M1~第4罫線M4が形成される。これらの罫線は、打ち抜き刃などを用いてフィルムFを部分的に薄肉化するハーフカット加工によって形成できる。
【0044】
また、
図8に示すように、本実施形態におけるフィルムFには、第1の溝部19a~第3の溝部19cの3種類の溝部が形成されている。これらのうち、第1の溝部19aは、第2係止部13の側縁13aと第1罫線M1と第2罫線M2と第4罫線M4とが公差した第1交点N1を囲むように、側面部16と正面部14と底面部12と第2係止部13に形成されている。また、第2の溝部19bは、第2係止部13の側縁13bと第1罫線M1と第4罫線M4と正面部14の側縁14aとが公差した第2交点N2を囲むように、第2係止部13と底面部12と正面部14とに形成されている。そして、第3の溝部19cは、第1係止部15の側縁15aと第3罫線M3と側面部16の底縁16aとが公差した第3交点N3を囲むように、第1係止部15と側面部16とに形成されている。また、
図8に示すように、第1の溝部19a~第3の溝部19cは、略円環状の溝部である。この第1の溝部19a~第3の溝部19cの各々は、半径が略同一になるように形成される。なお、これらの第1の溝部19a~第3の溝部19cも、上述した罫線と同様に、打ち抜き刃などを用いたハーフカット加工によって形成できる。
【0045】
そして、本実施形態に係る絶縁ホルダ10は、上記構成のフィルムFを折り曲げることによって成形される。具体的には、先ず、フィルムFを第1罫線M1に沿って折り曲げる。これによって、平面矩形の底面部12が形成されると共に、一対の正面部14が対向する。また、折り曲げた後の第1罫線M1は、第1辺10Xとなる。次に、フィルムFを第2罫線M2に沿って折り曲げる。これによって、一対の側面部16が対向して箱状の絶縁ホルダ10が形成される。そして、折り曲げた後の第2罫線M2は、第3辺10Zとなる。次に、フィルムFを第3罫線M3に沿って折り曲げる。これによって、第1係止部15が形成される。そして、この第1係止部15は、一対の正面部14の奥行方向Yの外側(前方F又は後方Rr)に向かう回動を規制する。また、折り曲げた後の第3罫線M3は、第3辺10Zとなる。次に、フィルムFを第4罫線M4に沿って折り曲げる。これによって、第2係止部13が形成される。そして、この第2係止部13は、一対の側面部16の後方Rrに向かう回動を規制する。また、折り曲げた後の第4罫線M4は、第2辺10Yとなる。以上の手順を経て、フィルムFが箱状に折り曲げられた絶縁ホルダ10が成形される。そして、成形後の絶縁ホルダ10では、上述した第1の溝部19a~第3の溝部19cの各々が厚み方向に重なる。これによって、絶縁ホルダ10の角部10Cを囲むように円環状の溝部19が形成される(
図5参照)。
【0046】
3.他の実施形態
以上、ここに開示される技術の一実施形態について説明した。なお、ここに開示される技術は、上記した実施形態に限定されるものではなく、種々の構成を変更した他の実施形態を包含する。以下、ここに開示される技術の実施形態の他の例について説明する。
【0047】
(1)溝部の形状
図5に示すように、上述の実施形態に係る絶縁ホルダ10では、角部10Cを囲む円環状の溝部19が形成されている。しかし、溝部19の形状は、上述の実施形態に限定されない。例えば、
図9に示すように、角部10Cを囲むように、直線的な溝部19を底面部12と正面部14と側面部16の各々に形成してもよい。かかる構成を採用した場合でも、角部10Cとケース本体とが接触した際に、各々の溝部19を起点とした絶縁ホルダ10の変形が生じるため、角部10Cの破損を抑制できる。
【0048】
(2)溝部を形成する面
また、
図5および
図9に示すように、上述の実施形態では、溝部19によって角部10Cが囲まれるように、底面部12と正面部14と側面部16の各々に溝部19を形成している。しかし、溝部は、角部の近傍に形成されていればよく、上述の実施形態に限定されるものではない。例えば、溝部は、絶縁ホルダの底面部と正面部と側面部の少なくとも1つの面に形成されていればよい。このような構成であっても、角部とケース本体とが接触した際に溝部を起点として絶縁ホルダが折れ曲がるため、角部の破損を抑制できる。但し、上述の実施形態のように、底面部12と正面部14と側面部16の各々に溝部19を形成すると絶縁ホルダ10の変形が生じやすくなるため、角部の破損をより好適に抑制できる。
【0049】
(3)溝部を形成する領域の数
上述の実施形態に係る絶縁ホルダ10では、
図4に示すように、4つの角部10Cの各々の近傍に溝部19が形成されている。しかし、絶縁ホルダに形成する溝部の数は、ここに開示される技術を限定するものではなく、必要に応じて適宜変更することができる。例えば、ケース本体の内部への電極体の挿入位置を調節すれば、幅方向の一方の端部においてのみケース本体と絶縁ホルダとが干渉するようにすることもできる。この場合には、ケース本体との干渉が生じる角部の近傍のみに溝部を形成すればよい。
【0050】
以上、ここに開示される技術を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。すなわち、ここに開示される技術は、以下の項目1~項目7に記載の形態を包含する。
【0051】
<項目1>
蓄電デバイスの電極体を収容する絶縁性の箱状体である絶縁ホルダであって、
幅方向に沿って略平行に延びる一対の第1辺と、奥行方向に沿って略平行に延びる一対の第2辺とを有する平面矩形の底面部と、
前記第1辺の各々から高さ方向の上方に延びた一対の正面部と、
前記第2辺の各々から高さ方向の上方に延びた一対の側面部と、
前記正面部と前記側面部との境界において前記高さ方向に沿って延びる4つの第3辺と、
前記第1辺と前記第2辺と前記第3辺とが交差した4つの角部と
を備えており、
前記4つの角部の少なくとも1つの近傍に溝部が形成されている、絶縁ホルダ。
【0052】
<項目2>
前記溝部は、前記底面部と前記正面部と前記側面部の各々に形成されている、項目1に記載の絶縁ホルダ。
【0053】
<項目3>
前記溝部は、前記絶縁ホルダの外表面に形成されている、項目1または2に記載の絶縁ホルダ。
【0054】
<項目4>
前記溝部は、前記角部に形成されていない、項目1~3のいずれか一項に記載の絶縁ホルダ。
【0055】
<項目5>
前記角部から前記溝部までの最短距離が1mm~3mmである、項目1~4のいずれか一項に記載の絶縁ホルダ。
【0056】
<項目6>
前記溝部における残肉厚が10μm~100μmである、項目1~5のいずれか一項に記載の絶縁ホルダ。
【0057】
<項目7>
電極体と、前記電極体を収容するケースと、前記電極体と前記ケースとの間に介在する絶縁ホルダとを備えた蓄電デバイスであって、
前記ケースは、
上面開口を有する箱状体であるケース本体と、
前記上面開口を塞ぐ封口板と
を備えており、
前記上面開口は、四隅にR部を有する平面矩形の開口部であり、
前記絶縁ホルダは、項目1~6のいずれか一項に記載の絶縁ホルダである、蓄電デバイス。
【符号の説明】
【0058】
1 二次電池
10 絶縁ホルダ
10C 角部
10X 第1辺
10Y 第2辺
10Z 第3辺
12 底面部
13 第2係止部
14 正面部
15 第1係止部
16 側面部
19 溝部
20 電極体
30 ケース
34 ケース本体
34a 上面開口
34b 底部
34c 第1側壁
34d 第2側壁
34r R部
40 電極端子